(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作業品質情報が前記第二対基板作業の良好な前記実施状況を意味する場合に、前記データ補正部は、前記許容差を拡げ、または前記基準値を変移させる、請求項1に記載の対基板作業機。
前記データ判定部は、前記電子部品を撮像して得た画像データに前記部品データを用いた画像処理を施して前記実測データを取得する撮像画像処理部を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の対基板作業機。
前記形状データは、前記電子部品の縦寸法および横寸法、前記電子部品の厚み寸法、前記電子部品の外観色、ならびに、前記電子部品がもつ接続電極の配置データの少なくとも一項目を含む、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の対基板作業機。
前記対基板作業機は、部品装着具を用いて部品供給装置から前記電子部品を採取し、前記基板の所定の装着位置に装着するという装着作業を前記対基板作業として実施する部品装着機であり、
前記第二対基板作業機は、前記部品装着機の前記下流側に配置されて、前記基板に装着された前記電子部品の装着状態を検査するという検査作業を前記第二対基板作業として実施する基板検査機である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の対基板作業機。
前記作業品質情報は、前記検査作業における不合格の発生比率を表す工程能力指数、前記誤差の平均値、前記誤差のうちの正側最大誤差、および前記誤差のうちの負側最大誤差の少なくとも一項目からなる前記統計処理情報を含む、請求項8に記載の対基板作業機。
前記第二対基板作業機は、部品装着具を用いて部品供給装置から前記電子部品を採取し、前記基板の所定の装着位置に装着するという装着作業を前記第二対基板作業として実施する部品装着機であり、
前記対基板作業機は、前記部品装着機の前記下流側に配置されて、前記基板に装着された前記電子部品の装着状態を検査するという検査作業を前記対基板作業として実施する基板検査機である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の対基板作業機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.部品装着機1(実施形態の対基板作業機)の構造
実施形態の対基板作業機の一例である部品装着機1について、
図1〜
図7を参考にして説明する。
図1は、実施形態の対基板作業機の一例である部品装着機1の主要部の構造を示す斜視図である。
図1の左上から右下に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向であり、右上から左下に向かう方向が部品装着機1の前後方向となるY軸方向である。部品装着機1は、部品の装着作業を繰り返して実施する。部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、部品カメラ5、制御部6(
図2、
図3参照)、および機台10などで構成されている。
【0013】
基板搬送装置2は、第1ガイドレール21および第2ガイドレール22、一対のコンベアベルト、ならびにクランプ装置などで構成される。第1ガイドレール21および第2ガイドレール22は、機台10の上部中央を横断してX軸方向に延在し、かつ互いに平行するように機台10に組み付けられる。第1ガイドレール21および第2ガイドレール22の直下に、互いに平行に配置された一対のコンベアベルトが並設される。一対のコンベアベルトは、コンベア搬送面に基板Kを戴置した状態で輪転して、基板Kを機台10の中央部に設定された装着実施位置に搬入および搬出する。また、機台10の中央部のコンベアベルトの下方にクランプ装置が設けられる。クランプ装置は、基板Kを複数の押し上げピンで押し上げて水平姿勢でクランプし、装着実施位置に位置決めする。
【0014】
部品供給装置3は、部品装着機1の前側に着脱可能に装備される。部品供給装置3は、デバイスパレット35上に複数のフィーダ装置31が列設されて構成される。フィーダ装置31は、本体32と、本体32の前側に設けられた供給リール33と、本体32の後端上部に設けられた部品取り出し部34とを備える。供給リール33には、多数の部品が所定ピッチで封入されたキャリアテープが巻回保持される。このキャリアテープが所定ピッチで送り出されると、部品は、封入状態を解除されて部品取り出し部34に順次送り込まれる。
【0015】
部品移載装置4は、一対のY軸レール41、Y軸移動台42、Y軸モータ43、X軸移動台44、X軸モータ45、装着ヘッド46、ロータリツール47、Z軸モータ48、および部品側視カメラ49などで構成される。一対のY軸レール41は、機台10の後部から前部の部品供給装置3の上方にかけて配設される。Y軸移動台42は、一対のY軸レール41に装荷されている。Y軸移動台42は、Y軸モータ43からボールねじ機構を介して駆動され、Y軸方向に移動する。X軸移動台44は、Y軸移動台42に装荷されている。X軸移動台44は、X軸モータ45からボールねじ機構を介して駆動され、X軸方向に移動する。
【0016】
装着ヘッド46は、X軸移動台44の前側に配設されている。装着ヘッド46は、ロータリツール47を下側に有する。
図1には省略されているが、ロータリツール47の下側に、複数本の吸着ノズルが環状に配置されている。ロータリツール47の回転により、複数本の吸着ノズルのうちの1本が選択されて、動作位置にセットされる。動作位置にセットされた吸着ノズルは、Z軸モータ48に駆動されて昇降する。また、吸着ノズルは、負圧の供給によって部品取り出し部34から部品を吸着し、正圧の供給によって部品を基板Kに装着する。吸着ノズルに代わる部品装着具として、部品を挟持する挟持式部品装着具が用いられてもよい。
【0017】
部品側視カメラ49は、X軸移動台44の下側に配設されている。部品側視カメラ49は、装着ヘッド46の複数本の吸着ノズルが吸着した部品を側方から撮像する。取得された画像データは、画像処理されて、部品の吸着状態および厚み寸法などが確認される。部品側視カメラ49は、部品を撮像して得た画像データに部品データ65(後述)を用いた画像処理を施して実測データを取得する撮像画像処理部に該当する。なお、撮像画像処理部として、部品側視カメラ49を用いずに、後述の部品カメラ5だけを用いてもよい。
【0018】
部品移載装置4は、吸着装着サイクルを繰り返すことによって、装着作業を進める。吸着装着サイクルについて詳述すると、部品移載装置4の装着ヘッド46は、部品供給装置3に移動して複数本の吸着ノズルでそれぞれ部品を吸着する。次に、装着ヘッド46が部品カメラ5の上方に移動すると、複数の部品の吸着状態が撮像される。その次に、装着ヘッド46は、基板Kに移動して複数の部品を装着し、装着が終了すると再び部品供給装置3に戻る。
【0019】
部品カメラ5は、基板搬送装置2と部品供給装置3との間の機台10の上面に、上向きに設けられている。部品カメラ5は、装着ヘッド46の複数本の吸着ノズルが部品取り出し部34で部品を吸着して基板Kに移動する途中の状態を撮影する。これにより、部品カメラ5は、複数本の吸着ノズルにそれぞれ保持された部品を一括して撮像できる。取得された画像データは、画像処理されて、部品の吸着状態や部品の縦寸法および横寸法、接続電極の配置などが確認される。部品カメラ5は、部品側視カメラ49と同様、撮像画像処理部に該当する。
【0020】
制御部6は、基板の種類ごとのジョブデータを保持して、装着作業を制御する。ジョブデータは、装着作業の詳細な手順や方法などを記述したデータである。制御部6は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および部品カメラ5に各種の指令を送信する。また、制御部6は、これらの装置から動作状況に関する情報を受信する。例えば、制御部6は、部品供給装置3における部品の供給状況の情報を受信して、部品のメーカやロットなどの変更を認識する。制御部6は、単一のコンピュータ装置で構成されてもよく、複数のコンピュータ装置に機能分散されて構成されてもよい。さらに、制御部6は、複数のコンピュータ装置の階層構造によって構成されてもよい。
【0021】
2.対基板作業ライン9の全体構成
図2は、部品装着機1を含む対基板作業ライン9の全体構成を模式的に示した図である。例示された対基板作業ライン9は、5台の対基板作業機によって構成されている。具体的に、対基板作業ライン9は、半田印刷機91、半田検査機92、部品装着機1、基板検査機94、およびリフロー機95が列設されて構成される。
【0022】
半田印刷機91は、基板Kの所定位置にペースト状の半田を印刷する印刷作業を繰り返して実施する。半田印刷機91は、基板搬送装置、回路パターンが刻設されて基板K上に載置されるスクリーン、およびスクリーン上を移動して半田を塗布するスキージなどで構成される。半田検査機92は、基板K上の半田の印刷状態の良否を判定する半田検査作業を繰り返して実施する。半田検査機92は、例えば、基板搬送装置、印刷された半田を撮像して画像データを取得する撮像カメラ、および画像データを画像処理して良否を判定する画像判定部などで構成される。
【0023】
基板検査機94は、基板Kに装着された部品の装着状態を検査する検査作業を繰り返して実施する。基板検査機94は、基板搬送装置、基板Kに装着された部品を撮像する検査用カメラ、および検査制御部97などで構成される。リフロー機95は、ペースト状の半田を加熱して溶解させた後に冷却するリフロー作業を繰り返して実施する。これにより、半田付け部分が確かなものとなって装着作業が終了し、基板Kが生産される。リフロー機95は、例えば、基板搬送装置、加熱装置、冷却装置、および温度調整装置などで構成される。
【0024】
上記した対基板作業ライン9の構成は変更可能であり、それぞれの対基板作業機の構造も変更可能である。対基板作業ライン9の総合的な動作を管理するために、ホストコンピュータ99が設けられる。ホストコンピュータ99は、通信線98を用いて半田印刷機91、半田検査機92、部品装着機1、基板検査機94、およびリフロー機95に接続され、個別にデータ通信を行う。部品装着機1の制御部6と基板検査機94の検査制御部97の間は、ホストコンピュータ99を介した双方向のデータ転送が可能となっている。
【0025】
3.部品装着機1の制御の構成
次に、部品装着機1の制御の構成について説明する。
図3は、部品装着機1の制御の構成、および基板検査機94の制御の構成を示すブロック図である。部品装着機1の制御部6は、データ保持部61、データ判定部62、品質情報取得部63、およびデータ補正部64を含む。また、基板検査機94の検査制御部97は、データ保持部971、検査判定部972、および品質情報集計部973を含む。
【0026】
データ保持部61は、基板Kに装着される部品の部品データ65をメモリ66に保持する。部品データ65は、部品の形状に関する形状データを含む。形状データは、部品の本体および接続電極の外観色、部品の縦寸法、横寸法、および厚み寸法、ならびに、接続電極の配置データなどの項目からなる。接続電極の配置データは、例えば、リードやバンプの形状および大きさ、リードやバンプと部品中心との相対位置関係などの項目からなる。外観色のデータは、部品側視カメラ49および部品カメラ5で取得された画像データを画像処理する際に、部品の本体および接続電極の形状を検出する用途に用いられる。外観色以外の形状データは、部品の種類の誤りや部品の変形などの不良の判定に用いられる。
【0027】
さらに、部品データ65は、吸着ノズルに吸着された部品の位置関係を表す姿勢データを含む。姿勢データは、吸着ノズルに対する部品のずれ量、回転量、傾斜角度などの項目からなる。姿勢データは、部品の吸着状態の良否の判定に用いられる。
【0028】
部品データ65の形状データおよび姿勢データは、基準値および許容差を含んで設定される。基準値および許容差は、データ補正部64によって自動的に補正される可能性がある。部品データ65の基準値の初期値として、例えば、規格や仕様書などに規定されている標準値、理想値、真値などが設定される。一方、部品データ65の許容差は、高い信頼性を確保するために、厳しく設定される。つまり、許容差の初期値として、規定されている最大許容差よりも狭い範囲が設定される。
【0029】
データ判定部62は、装着作業の中で部品を観測して取得した実測データと、部品データ65の基準値との差分が許容差の範囲内に収まっているか否かを判定する。実測データは、部品の形状に関する形状実測データ、および吸着された部品の位置関係に関する姿勢実測データを含む。形状実測データおよび姿勢実測データは、部品側視カメラ49および部品カメラ5で取得された画像データの画像処理によって得られる。差分が許容差の範囲内に収まってない場合、データ判定部62は、部品の形状不良または吸着姿勢の不良と判定する。不良と判定された部品は、基板Kに装着されず、廃棄される。
【0030】
品質情報取得部63は、データ判定部62が不良を判定したときに動作する。品質情報取得部63は、ホストコンピュータ99を介して、基板検査機94の検査作業の作業品質情報Qi(後述)を取得する。基板検査機94は、部品装着機1の下流側に配置された別種の第二対基板作業機に該当し、検査作業は第二対基板作業に該当する。
【0031】
データ補正部64は、検査作業の作業品質情報Qiに応じて、部品データ65の基準値および許容差の少なくとも一方を補正する。作業品質情報Qiが検査作業の良好な実施状況を意味する場合に、データ補正部64は、許容差を拡げ、または基準値を変移させる。データ補正部64は、データ判定部62が不良と判定した状況を分析するとともに、作業品質情報Qiの良好さの程度も参考にして、適切な補正方法を決定することが好ましい。
【0032】
なお、作業品質情報Qiが検査作業の良好でない実施状況を意味する場合に、データ補正部64は、許容差を狭める補正を行うが、必ずしも補正を行わなくてもよい。また、データ補正部64は、対基板作業ライン9で生産する基板Kの種類が変更されたときに、部品データ65の基準値および許容差を初期値に戻す。
【0033】
一方、基板検査機94の検査制御部97のデータ保持部971は、検査に用いる検査用部品データ975をメモリ976に保持する。検査用部品データ975は、部品の形状に関する形状データ、および基板K上の部品の装着位置に関する位置データを含む。検査用部品データ975の形状データの項目は、部品装着機1の部品データ65と異なっていてもよい。例えば、接続電極の外観色および配置データの項目は、検査に用いられないため、検査用部品データ975に含まれなくともよい。検査用部品データ975の位置データは、指定された装着位置のX軸座標値およびY軸座標値、部品の回転角などの項目からなる。
【0034】
検査用部品データ975は、検査作業時に良否の判定基準として用いられる。検査用部品データ975の形状データおよび位置データも、基準値および許容差を含んで設定される。検査用部品データ975の基準値および許容差は、部品装着機1の部品データ65と異なっていてもよい。例えば、検査用部品データ975のうちの部品の縦寸法および横寸法の許容差は、多くの場合に、部品装着機1の部品データ65よりも狭い範囲とされる。
【0035】
検査判定部972は、検査用カメラが取得した画像データに画像処理を実施して、部品の形状および装着位置の実測データを求める。さらに、検査判定部972は、これらの実測データを検査用部品データ975と比較して、部品の形状の良否および装着位置の良否を判定する。検査判定部972は、最終的に、基板Kを単位として合格および不合格を判定する。品質情報集計部973は、検査判定部972の判定結果を集計して、検査作業の作業品質情報Qiを求める。作業品質情報Qiは、形状誤差情報、位置誤差情報、および統計処理情報の少なくともひとつを含む。
【0036】
形状誤差情報は、部品の形状の実測データと、検査用部品データ975の形状データの基準値との誤差を表す。位置誤差情報は、部品の装着位置の実測データと、検査用部品データ975の位置データの基準値との誤差を表す。統計処理情報は、複数の形状誤差情報、および複数の位置誤差情報の少なくとも一方を統計的に処理した情報である。統計処理情報として、工程能力指数CPK、誤差の平均値、誤差のうちの正側最大誤差、および誤差のうちの負側最大誤差などを例示できる。
【0037】
工程能力指数CPKは、検査作業における不良の発生比率を表す指数である。例えば、基板Kの或る検査項目の実測データのばらつきが正規分布に従うと仮定する。このとき、正規分布の標準偏差の6倍の範囲と、検査用部品データ975の許容差の範囲とが一致しているときに、工程能力指数CPKは1となる。換言すると、工程能力指数CPK=1は、不良の発生頻度0.27%を意味する。工程能力指数CPKが1よりも大きければ、不良の発生頻度は0.27%よりも低くなる。逆に、工程能力指数CPKが1よりも小さければ、不良の発生頻度は0.27%よりも高くなる。
【0038】
4.部品装着機1の動作および作用
次に、部品装着機1の動作および作用について、不良の発生状況を例示しながら説明する。
図4は、部品装着機1の動作を説明する制御部6の動作フローのフローチャートである。
図4のステップS1で、制御部6は、装着作業の対象となる基板Kを搬入する。次のステップS2で、制御部6のデータ補正部64は、基板Kの種類が変更されたか否か判定し、変更された場合には動作フローの実行をステップS3に進める。ステップS3で、データ補正部64は、部品データ65の基準値R3(後述)および許容差V2(後述)を初期の基準値R1(後述)および許容差V1(後述)に戻す。
【0039】
ステップS2で基板Kの種類が変更されていない場合、およびステップS3の実行後、制御部6は、動作フローの実行をステップS4に進めて、吸着装着サイクルを実行する。次のステップS5で、データ判定部62は、吸着装着サイクルの際に部品の形状不良または吸着姿勢の不良が発生したか否か判定する。多くの場合に不良は発生せず、データ判定部62は、動作フローの実行をステップS6に進める。
【0040】
ステップS6で、制御部6は、所定の全部品の装着が終了したか否か判定する。未装着の部品が残っている場合、制御部6は、動作フローの実行をステップS4に戻して、ステップS4、ステップS5、およびステップS6からなるループを繰り返す。全部品の装着が終了すると、制御部6は、動作フローの実行をステップS6からステップS7に進める。ステップS7で、制御部6は、全部品が装着された基板Kを搬出する。この後、制御部6は、動作フローの実行をステップS1に戻して、次の基板Kの装着作業に移る。
【0041】
ステップS5で不良が発生した場合、データ判定部62は、動作フローの実行をステップS11に分岐させる。
図5は、部品装着機1の吸着装着サイクルにおける不良の発生状況を例示した図である。
図5には、吸着装着サイクルの際の実測データの一項目のばらつき状況を表す分布DA、および分布DBが示されている。また、
図5には、部品データ65の初期の基準値R1および初期の許容差V1が示されている。許容差V1の範囲は、基準値R1の正側および負側に等幅で設定され、かつ規格や仕様書などに規定されている最大許容差Vmaxよりも狭い。
【0042】
ここで、部品装着機1の制御部6は、装着作業時の実測データを蓄積して、統計的に分析する。具体例で説明すると、当初は部品供給装置3の或るフィーダ装置31からAメーカの部品が供給されていた。そのときの実測データは、
図5に実線で示される分布DAのばらつきを有した。分布DAにおいて、実測データのピークP1は基準値R1に重なり、実測データの全数が許容差V1の範囲内に収っている。したがって、Aメーカの部品が供給されている間、不良は発生しなかった。
【0043】
ところが、Aメーカの部品が消費されて無くなり、Bメーカの部品が補給されて供給されるようになった。その後の実測データは、
図5に破線で示される分布DBのばらつきを示した。分布DBにおいて、実測データのピークP2は、分布DAと同様、基準値R1に重なっている。しかしながら、Bメーカの部品品質のばらつきが大きいことに起因して、分布DBにおける実測データのばらつきは、分布DAよりも広がっている。その結果、
図5にXPまたはXNで示されるように、許容差V1を逸脱する実測データが発生して不良が発生した。
【0044】
不良が発生した場合のステップS11で、制御部6は、不良と判定されて今回装着できなかった部品のリカバリ処理を設定する。例えば、制御部6は、次回以降の吸着装着ステップのいずれかで今回装着できなかった部品を装着するように変更設定する。または、制御部6は、今回装着できなかった部品を装着する吸着装着ステップを追加してもよい。次のステップS12で、品質情報取得部63は、基板検査機94の検査作業の作業品質情報Qiを取得する。
【0045】
図6は、基板検査機94の作業品質情報Qiを例示した図である。
図6には、検査作業の或る検査項目の実測データの分布の状況が示されている。また、
図6には、検査用部品データ975の基準値Rtおよび許容差Vtが示されている。許容差Vtの範囲は、基準値Rtの正側および負側に等幅で設定されている。
【0046】
本実施形態において、作業品質情報Qiとして、部品装着機1で発生した不良に関連する検査項目の工程能力指数CPKが用いられる。そして、検査作業の実施状況が良好であるか否かを区分する境界として、工程能力指数CPK=1.0が定められている。工程能力指数CPK=1.0の場合の実測データの分布は、
図6に実線で示される。これに限定されず、工程能力指数CPK=1.0以外が境界に設定されてもよく、また、基板Kの合格および不合格の判定に関する工程能力指数CPKが用いられてもよい。
【0047】
検査作業の実施状況が良好であることを示す工程能力指数CPK=1.3の場合の実測データの分布は、
図6に一点鎖線で示される。この場合、実測データの分布は、許容差Vtの範囲の限界付近には殆ど存在せず、基準値Rt寄りに密集している。つまり、検査作業の作業品質が良好であって、大きな余裕が有り、高い信頼性が担保されている。他方、検査作業の実施状況が良好でないことを示す工程能力指数CPK=0.7の場合の実測データの分布は、
図6に破線で示される。この場合、実測データの分布は、許容差Vtの範囲を逸脱し、YP、YNで示されるような不良が発生する。つまり、検査作業の作業品質が良好でなく。結果として不合格の基板Kが発生する。
【0048】
図4の動作フローに戻り、ステップS13で、データ補正部64は、作業品質情報Qiが良好であるか否かを判定する。作業品質情報Qiが良好である場合のステップS14で、データ補正部64は、許容差V1を拡げ、または基準値R1を変移させる補正値を決定する。このとき、作業品質情報Qiが良好であって、高い信頼性が担保されている。したがって、補正を行っても、検査作業の作業品質は、余裕の範囲内で良好に維持される。このため、データ補正部64は、作業品質情報Qiの良好さの程度に対応して、補正値の変化幅を決定することが好ましい。さらに、データ補正部64は、統計的な分析で得られた不良発生時の分布DBも参考にして、補正値を決定できる。
【0049】
例えば、工程能力指数CPK=1.3の場合には大幅な補正が可能である。しかしながら、工程能力指数CPK=1.1の場合には、良好であるとはいえ、補正値の変化幅は小さく限定される。また例えば、不良発生時の分布DBは、Bメーカの部品の実態を表し、ばらつきの大きいことが不良の原因であることを示している。したがって、データ補正部64は、基準値R1を維持し、許容差V1を許容差V2に拡げる補正を決定できる。
【0050】
また、
図7に示される不良発生時の分布DCの場合についても説明する。
図7は、部品装着機1の吸着装着サイクルにおける別の不良の発生状況を例示した図である。
図7に実線で示されるAメーカの部品の分布DAは、
図5を再掲したものである。これに対して、破線で示されるCメーカの部品の分布DCは、部品品質のムラに起因して、ピークP3が基準値R1よりも正側に変移している。また、分布DCのばらつきの程度は、分布DAと同等である。つまり分布DCの波形は、分布DAの波形を正側に移動したものとなっている。この場合も、データ補正部64は、Cメーカの部品の実態に合わせた補正を行う。すなわち、データ補正部64は、基準値R1を正側に変移させてピークP3に対応する基準値R3とし、かつ許容差V1の範囲幅を維持しつつ正側に移動させる。
【0051】
なお、分布DBや分布DCに例示された不良の原因は、部品のメーカの変更に限定されない。つまり、部品のロットの変更や、部品のその他の属性、例えば生産時期の差異や部品保持媒体の変更などが不良の原因となる場合もある。また、データ補正部64は、基準値R1および許容差V1の両方を同時に補正することもできる。ただし、どのような不良に対してどのような補正を行うにしても、許容差(V1、V2)の両端が最大許容差Vmaxから逸脱しない範囲内とする必要がある。
【0052】
次のステップS15で、データ補正部64は、メモリ66内の部品データ65の基準値R1および許容差V1の少なくとも一方を書き換えて補正を実行し、動作フローの実行をステップS6に合流させる。部品データ65が補正されたことにより、以降は、BメーカやCメーカの部品であっても不良の発生が減少して、部品の廃棄が減少する。加えて、装着作業の作業効率が低下しない。
【0053】
一方、ステップS13で作業品質情報Qiが良好でない場合、データ補正部64は、動作フローをステップS16に進める。このとき、作業品質情報Qiが良好でないので、検査作業の判定に余裕がなく、高い信頼性が担保されていない。このため、データ補正部64がむやみに部品データ65を補正すると、不合格の基板Kの多発が懸念される。そこで、データ補正部64は、許容差V1を狭めることだけを許容して、許容差V1を狭めた補正値を決定する。その後、データ補正部64は、動作フローの実行をステップS15に合流させる。
【0054】
上記したように、基板検査機94の作業品質情報Qiが良好でない場合に、不良の発生した部品装着機1では、部品データ65の許容差V1が狭められる。これにより、部品装着機1における部品の廃棄は増加し得るが、基板検査機94における不合格の基板Kが減少する。
【0055】
なお、補正が不十分あるいは過剰である場合に、ステップS5からステップS11への分岐が複数回発生してもよい。この場合、ステップS14が複数回実行されて、部品データ65の補正が徐々に適正化される。あるいは、ステップS14で許容差V1を拡げる補正、およびステップS16で許容差V1を狭める補正が実行され、許容差V1の補正が収斂して適正化される。
【0056】
部品装着機1によれば、部品を観測して取得した実測データと、部品データ65の基準値R1との差分が許容差V1の範囲内に収まっていない不良の発生時に、下流側の基板検査機94の検査作業の実施状況に関する作業品質情報Qiを取得し、作業品質情報Qiに応じて基準値R1および許容差V1の少なくとも一方を補正する。これによれば、部品データ65をむやみに補正するのでなく、作業品質情報Qiを考慮して高い信頼性を担保できる範囲内で部品データ65を自動補正するので、不良を低減できる。
【0057】
特に、部品のメーカやロットなどが変更された場合の部品品質のばらつきやムラに対して、上記の効果が顕著となる。また、従来オペレータによって実施されていた部品データ65の補正が自動で行われるので、省力化が実現される。加えて、装着作業が継続されるので、生産効率が低下しない。
【0058】
5.実施形態の応用および変形
なお、実施形態で説明した工程能力指数CPKに代え、誤差の平均値や正側最大誤差EP、負側最大誤差EN(
図6参照)などの統計情報を作業品質情報Qiとしてもよい。これらの統計情報は、検査作業の作業品質と因果関係を有するので、作業品質情報Qiとして適正である。また、ステップS13で作業品質情報Qiが良好でない場合のステップS16は省略されてもよい。つまり、作業品質情報Qiが良好である場合に、ステップS14およびステップS15を実行してステップS6に合流し、作業品質情報Qiが良好でない場合にステップS13から直接ステップS6に合流する動作フローであってもよい。
【0059】
さらに、基板検査機94を実施形態の対基板作業機とし、部品装着機1を上流側の別種の第二対基板作業機とする態様も可能である。この態様では、基板検査機94の検査作業で取得した実測データと、検査用部品データ975の基準値Rtとの差分が許容差Vtの範囲内に収まっていない場合に、検査制御部97は、部品装着機1の装着作業の実施状況に関する作業品質情報を取得する。作業品質情報は、具体的には、吸着装着サイクルの際の部品の形状不良または吸着姿勢の不良の発生に関する情報となる。検査制御部97は、装着作業の実施状況に応じて、検査用部品データ975の基準値Rtおよび許容差Vtの少なくとも一方を補正する。つまり、装着作業が高い信頼性を担保している場合に、検査用部品データ975の自動補正によって検査の判定基準を部品の実態に合わせ、不合格の基板Kを減少させることができる。実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。