特許第6842571号(P6842571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842571
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】スプライシング装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   H05K13/02 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-567458(P2019-567458)
(86)(22)【出願日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2018002246
(87)【国際公開番号】WO2019146033
(87)【国際公開日】20190801
【審査請求日】2020年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】辻 真弓
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光弘
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/167692(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/084796(WO,A1)
【文献】 特開2015−176970(JP,A)
【文献】 特開2014−225592(JP,A)
【文献】 特開2002−207286(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/001747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のキャリアテープをテープ搬送路に沿って互いに接近させる方向に搬送するキャリアテープ搬送装置と、
前記一対のキャリアテープの裏面に跨って貼り付けられるスプライシングテープを所定の間隔で配列されたベーステープを、前記一対のキャリアテープの搬送方向と交差する方向に搬送するベーステープ搬送装置と、
前記キャリアテープ搬送装置により前記テープ搬送路におけるスプライシング位置に位置決めされた前記一対のキャリアテープに前記スプライシングテープを貼り付けるテープ貼付装置と、
前記テープ貼付装置により前記スプライシングテープを貼り付けられた前記一対のキャリアテープを前記テープ搬送路から上方に持ち上げて前記スプライシングテープを前記ベーステープから剥離させる持ち上げ部と、
前記持ち上げ部が前記一対のキャリアテープを持ち上げる際に、前記ベーステープの上面のうち前記ベーステープの幅方向において前記スプライシングテープより両端側に位置する部位に接触することにより、前記一対のキャリアテープの持ち上げに伴う前記ベーステープの上方移動を規制する規制部と、
を備えるスプライシング装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記ベーステープの搬送方向において前記スプライシングテープが配置された範囲で前記ベーステープの上面に接触する、請求項1に記載のスプライシング装置。
【請求項3】
前記ベーステープは、配置される前記スプライシングテープを保持する粘着領域と、前記ベーステープの幅方向において前記粘着領域より両端側であって粘着性を有しない非粘着領域と、を有し、
前記規制部は、前記ベーステープの上面のうち前記非粘着領域のみに接触する、請求項1または2に記載のスプライシング装置。
【請求項4】
前記スプライシング装置は、前記スプライシング位置に位置決めされた前記一対のキャリアテープの裏面に跨った前記スプライシングテープを間に挟んで押し付ける裏面押付部材および表面押付部材をさらに備え、
前記規制部は、前記裏面押付部材の可動範囲および前記表面押付部材の可動範囲の外部に配置される、請求項1−3の何れか一項に記載のスプライシング装置。
【請求項5】
前記ベーステープは、前記一対のキャリアテープの表面に跨って貼り付けられる表面用スプライシングテープと、前記一対のキャリアテープの裏面に跨って貼り付けられる前記スプライシングテープである裏面用スプライシングテープとを所定の間隔で配列され、
前記スプライシング装置は、前記ベーステープのうち前記表面用スプライシングテープが配置された部位に係合した前記表面押付部材を旋回させて、前記表面用スプライシングテープを前記一対のキャリアテープの表面に対向させる旋回装置をさらに備え、
前記規制部は、前記旋回装置の可動範囲の外部に配置される、請求項4に記載のスプライシング装置。
【請求項6】
前記ベーステープには、配列された前記スプライシングテープを覆うカバーテープが貼り付けられ、
前記スプライシング装置は、前記ベーステープの搬送方向において前記カバーテープを剥離する剥離位置を規定するガイド部材をさらに備え、
前記規制部は、前記ガイド部材に一体に設けられる、請求項1−5の何れか一項に記載のスプライシング装置。
【請求項7】
スプライシング装置は、
前記テープ搬送路を形成される装置本体と、
前記装置本体に対して開閉される上部カバーと、をさらに備え、
前記持ち上げ部は、前記上部カバーに設けられ、前記上部カバーの閉状態において前記テープ搬送路の下方に位置し、前記上部カバーが閉状態から開状態とされると前記上部カバーとともに上昇することにより、前記一対のキャリアテープを前記テープ搬送路から上方に持ち上げる、請求項1−6の何れか一項に記載のスプライシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプライシング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプライシング装置は、多数の部品を収容するキャリアテープのスプライシングに用いられる。スプライシング装置は、例えば特許文献1に示すように、一対のキャリアテープの端部を突き合わせた状態でスプライシングテープを両面に貼り付けることにより、一対のキャリアテープをスプライシングする。スプライシングテープは、ベーステープに貼り付けられた状態で配置され、ベーステープの搬送によって供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/098630号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スプライシング装置は、スプライシング後の取り出し処理において、スプライシングテープが一対のキャリアテープおよびベーステープに貼り付けられた状態で、一対のキャリアテープを持ち上げる。これにより、スプライシングテープは、一対のキャリアテープに貼り付けられた状態を維持してベーステープから剥離される。スプライシング装置には、取り出し処理においてスプライシングテープの剥離の不良が発生しないように良好なスプライシング処理の実行が求められる。
【0005】
本明細書は、スプライシング処理においてスライシングテープをベーステープから良好に剥離することができるスプライシング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、一対のキャリアテープをテープ搬送路に沿って互いに接近させる方向に搬送するキャリアテープ搬送装置と、前記一対のキャリアテープの裏面に跨って貼り付けられるスプライシングテープを所定の間隔で配列されたベーステープを、前記一対のキャリアテープの搬送方向と交差する方向に搬送するベーステープ搬送装置と、前記キャリアテープ搬送装置により前記テープ搬送路におけるスプライシング位置に位置決めされた前記一対のキャリアテープに前記スプライシングテープを貼り付けるテープ貼付装置と、前記テープ貼付装置により前記スプライシングテープを貼り付けられた前記一対のキャリアテープを前記テープ搬送路から上方に持ち上げて前記スプライシングテープを前記ベーステープから剥離させる持ち上げ部と、前記持ち上げ部が前記一対のキャリアテープを持ち上げる際に、前記ベーステープの上面のうち前記ベーステープの幅方向において前記スプライシングテープより両端側に位置する部位に接触することにより、前記一対のキャリアテープの持ち上げに伴う前記ベーステープの上方移動を規制する規制部と、を備えるスプライシング装置を開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、持ち上げ部が一対のキャリアテープを持ち上げる際に、規制部によりベーステープの上方移動が規制される。これにより、スプライシングテープは、一対のキャリアテープに貼り付けられた状態を維持されるとともに、上方移動を規制されたベーステープから徐々に剥離される。結果として、スプライシング装置は、スプライシング処理においてスプライシングテープをベーステープから良好に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態におけるスプライシング装置の概要を模式的に示す正面図である。
図2】持ち上げ部の動作を模式的に示す側方図である。
図3】キャリアテープを示す平面図である。
図4】供給テープを示す平面図である。
図5】ガイド部材、規制部およびテープ貼付装置を示す斜視図である。
図6】ガイド部材、規制部および供給テープを示す上面図である。
図7図6におけるVII−VII断面図である。
図8】スプライシング処理の貼付処理における各部材の状態を示す断面図である。
図9】スプライシング処理の取り出し処理における各部材の状態を示す断面図である。
図10図9におけるX−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、スプライシング装置を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。スプライシング装置は、一対のキャリアテープの端部を突き合わせた状態でスプライシングテープを両側に貼り付けるけることにより、一対のキャリアテープをスプライシングする。一対のキャリアテープは、例えば一方が使用途中の旧テープであり、他方が補給用の新テープである。
【0010】
1.スプライシング装置10の構成
スプライシング装置10は、図1に示すように、装置本体11と、上部カバー12と、キャリアテープ搬送装置13と、切断装置14と、供給テープ搬送装置15と、テープ貼付装置16と、制御装置17とを備える。装置本体11は、全体形状としては直方体形状に形成される。装置本体11は、長手方向(図1の左右方向)の両側に、キャリアテープ90(図3を参照)を挿入される挿入口111がそれぞれ形成される。
【0011】
2つの挿入口111は、装置本体11の内部に形成されたテープ搬送路112により互いに連通する。テープ搬送路112は、スプライシング装置10の左右方向に延伸する溝である。テープ搬送路112は、それぞれの挿入口111から挿入されたスプライシングの対象である一対のキャリアテープ90を支持する。
【0012】
上部カバー12は、装置本体11に対して開閉されるカバー部材である。上部カバー12は、閉状態においてテープ搬送路112の上面を構成する。上部カバー12は、開状態においてスプライシングされた一対のキャリアテープ90を取り出し可能に開放する。本実施形態において、上部カバー12には、一対の持ち上げ部121が設けられる。一対の持ち上げ部121のそれぞれは、図2の実線にて示すように、上部カバー12の閉状態においてテープ搬送路112の下方に位置する。さらに、一対の持ち上げ部121は、図2の一点鎖線にて示すように、上部カバー12が閉状態から開状態とされると上部カバー12とともに上昇する。
【0013】
キャリアテープ搬送装置13は、2つの挿入口111から挿入された一対のキャリアテープ90をテープ搬送路112に沿ってそれぞれ搬送する。ここで、キャリアテープ90は、図3に示すように、多数の部品93を収納するテープ部材である。キャリアテープ90は、ベーステープ91と、カバーテープ92とを有する。ベーステープ91には、幅方向(図3の上下方向)の中央部にキャビティ911が形成される。
【0014】
キャビティ911は、底部を有する凹状に形成される。キャビティ911は、ベーステープ91の長手方向(図3の左右方向)に一定の間隔で形成される。それぞれのキャビティ911は、一つの部品93を収納する。また、ベーステープ91には、幅方向の一方側の縁部に送り穴912が形成される。送り穴912は、ベーステープ91の長手方向に一定の間隔で形成される。送り穴912は、キャリアテープ搬送装置13のスプロケット131の歯と係合し、キャリアテープ90の搬送に用いられる。
【0015】
カバーテープ92は、薄い膜状の高分子フィルムにより形成される。カバーテープ92の幅方向の両端部は、ベーステープ91の上面に接着される。これにより、カバーテープ92は、キャビティ911の開口部を閉塞する。これにより、ベーステープ91のキャビティ911に収納された部品93の脱落が防止される。
【0016】
キャリアテープ搬送装置13は、スプロケット131を回転させて、一対のキャリアテープ90をテープ搬送路112に沿って搬送する。これにより、キャリアテープ搬送装置13は、キャリアテープ90の切断箇所を切断位置Pcに位置決めする。また、キャリアテープ搬送装置13は、切断された一対のキャリアテープ90を互いに接近させる方向に搬送し、一対のキャリアテープ90のそれぞれの端部をスプライシング位置Psに位置決めする。上記の「スプライシング位置Ps」は、スプライシング装置10の左右方向の中央部に設けられた位置であり、一対のキャリアテープ90をスプライシングにより連結する位置である。
【0017】
切断装置14は、それぞれの挿入口111から挿入された一対のキャリアテープ90を所定の切断箇所で切断する。本実施形態において、切断装置14は、テープ搬送路112上の2箇所の切断位置Pcに対応してそれぞれ配置されたカッター141により、一対のキャリアテープ90を一連の動作で切断する。切断装置14は、切断処理により発生するキャリアテープ90の不要部分をダクト(図示しない)から廃棄する。
【0018】
供給テープ搬送装置15は、供給テープ80(図4を参照)を搬送するとともに、スプライシング処理において供給テープ80からスプライシングテープ83を貼り付け可能に露出させる。ここで、供給テープ80は、ベーステープ81とカバーテープ82(図4において破線で示す)との間に複数のスプライシングテープ83を挟んだ三層構造のテープ部材である。ベーステープ81は、所定の間隔で配列される一対のスプライシングテープ83を保持する粘着領域Atと、ベーステープ81の幅方向において粘着領域Atより両端側であって粘着性を有しない非粘着領域Anと、を有する。
【0019】
ベーステープ81の粘着領域Atには、表面用スプライシングテープ831および裏面用スプライシングテープ832の2つ(以下、単に「一対のスプライシングテープ83」と称する)を所定間隔で貼り付けられる。ベーステープ81の幅方向の両端部に位置する非粘着領域Anには、ベーステープ81の長手方向に沿って一定の間隔で複数の送り穴811を形成される。送り穴811は、供給テープ搬送装置15のベーステープ搬送装置151のスプロケット(図示しない)の歯と係合し、供給テープ80の搬送に用いられる。ベーステープ搬送装置151は、ベーステープ81を一対のキャリアテープ90の搬送方向(図1の左右方向)と交差する方向に搬送する。
【0020】
ベーステープ81は、ベーステープ81の幅方向に沿って位置決め穴812が形成される。位置決め穴812は、スプライシングの対象である一対のキャリアテープ90に対する供給テープ80の位置決めに用いられる。カバーテープ82は、ベーステープ81の粘着領域Atに貼り付けられた複数組のスプライシングテープ83を覆うように貼り付けられるフィルム部材である。カバーテープ82は、例えばカバーテープ82を挟む一対のローラを回転させるカバーテープ搬送装置152により搬送される。
【0021】
ここで、図5および図6に示すように、供給テープ搬送装置15には、装置本体11に対する所定位置にガイド部材153が設けられる。ガイド部材153は、ベーステープ81の搬送方向(図6の左右方向)においてカバーテープ82を剥離する剥離位置Peを規定する。剥離位置Peにおいてカバーテープ82がベーステープ81から剥離されると、一対のスプライシングテープ83は、一対のキャリアテープ90に対する接着面を上方に向けて露出し、且つスプライシング位置Psに位置決めされた一対のキャリアテープ90の両端部にそれぞれ跨った状態となる。
【0022】
テープ貼付装置16は、一対のキャリアテープ90の表面および裏面に一対のスプライシングテープ83を貼り付ける。具体的には、テープ貼付装置16は、一対のスプライシングテープを露出させた供給テープ80の一部を折り返す(図8を参照)。そして、テープ貼付装置16は、スプライシング位置Psに位置決めされた一対のキャリアテープ90の表面および裏面に一対のスプライシングテープ83を押し付ける。これにより、一対のスプライシングテープ83は、所定の押付力が加えられて一対のキャリアテープ90に接着した状態となる。
【0023】
その後に、一対のスプライシングテープ83は、スプライシング後の取り出し処理において、ベーステープ81からそれぞれ剥離されて、スプライシングされた一対のキャリアテープ90とともにスプライシング装置10から取り出される。一対のスプライシングテープ83の貼付処理、および取り出し処理の詳細については後述する。
【0024】
制御装置17は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置17は、予め設定されたプログラムやパラメータに基づいて、スプライシング処理を実行する。制御装置17は、スプライシング処理において、各種センサから出力される情報に基づいて、キャリアテープ90の搬送量や切断箇所などを適宜設定し、キャリアテープ搬送装置13や切断装置14の動作を制御する。
【0025】
2.テープ貼付装置16の詳細構成
テープ貼付装置16は、スプライシング位置Psに位置決めされた一対のキャリアテープ90の両面にそれぞれ跨った一対のスプライシングテープ83を間に挟んで押し付ける裏面押付部材20および表面押付部材30を備える。裏面押付部材20は、一対のキャリアテープ90の裏面に貼り付けられる裏面用スプライシングテープ832を押し付ける。表面押付部材30は、一対のキャリアテープ90の表面に貼り付けられる表面用スプライシングテープ831を押し付ける。
【0026】
裏面押付部材20は、図5に示すように、後述する第一昇降台42に固定される。裏面押付部材20は、スプライシング処理において裏面用スプライシングテープ832に接触し押付力を付与する。表面押付部材30は、後述する旋回装置50の旋回台54に固定される。表面押付部材30は、スプライシング処理において表面用スプライシングテープ831に接触し押付力を付与する。
【0027】
裏面押付部材20および表面押付部材30は、例えばウレタンなどの樹脂により形成され、一対のスプライシングテープ83に付与する押付力に応じて弾性変形する。裏面押付部材20および表面押付部材30には、複数のピン穴21,31がそれぞれ形成される。裏面押付部材20の複数のピン穴21には、旋回台54に設けられた第二位置決めピン55が挿入される。表面押付部材30の複数のピン穴31には、第一昇降台42に設けられた第一位置決めピン43が挿入される。
【0028】
テープ貼付装置16は、図5に示すように、駆動装置40を備える。駆動装置40は、スプライシング処理において、裏面押付部材20および表面押付部材30を移動させる。駆動装置40は、駆動源であるモータ(図示しない)により回転するカムドラム41を備える。カムドラム41は、キャリアテープ90の搬送方向に平行な軸線周りに回転可能に、装置本体11に支持される。カムドラム41は、制御装置17によりモータの駆動状態が制御されることによって回転速度や角度を制御される。
【0029】
カムドラム41の側面には、複数のカム面411が設けられている。複数のカム面411は、互いに異なる形状に形成され、第一昇降台42や第二昇降台44を昇降させるとともに、旋回装置50を駆動させる。第一昇降台42や第二昇降台44、旋回装置50は、カムドラム41の原点角度において初期状態にそれぞれ復帰する。第一昇降台42は、スプライシング位置Psの下部に配置される。
【0030】
第一昇降台42の上面には、裏面押付部材20を固定される。また、第一昇降台42の上面には、複数の第一位置決めピン43が設けられる。複数の第一位置決めピン43は、スプライシング処理において、裏面用スプライシングテープ832を貫通するベーステープ81の位置決め穴812(図3を参照)およびキャリアテープ90の送り穴912に係合する。
【0031】
旋回装置50は、裏面押付部材20に対して表面押付部材30を旋回させる。裏面押付部材20および表面押付部材30は、旋回装置50の駆動によって押付面が対向した状態と対向しない状態とを切り換えられる。旋回装置50は、ラック台51と、ラック52と、ピニオンギヤ53と、旋回台54と、第二位置決めピン55とを有する。
【0032】
ラック台51は、第二昇降台44に対する上下方向移動を規制され、且つ水平方向移動を許容されるように取り付けられる。ラック台51は、カムドラム41の回転により複数のカム面411の一つに係合するアーム(図示しない)が回転すると、水平方向に移動する。また、ラック台51は、第二昇降台44の昇降に伴って上下方向に移動する。
【0033】
ラック52は、ラック台51の上部に、水平方向に延伸するように固定される。ピニオンギヤ53は、第二昇降台44に回転可能に設けられる。ピニオンギヤ53は、ラック52と噛合し、ラック台51と一体的に移動するラック52の直動に伴って回転する。旋回台54は、ピニオンギヤ53を旋回中心として旋回可能に両端部を支持される。
【0034】
旋回台54には、表面押付部材30が固定される。また、旋回台54には、複数の第二位置決めピン55が設けられる。複数の第二位置決めピン55は、キャリアテープ90の搬送方向において、第一昇降台42の複数の第一位置決めピン43とは異なる位置にそれぞれ配置される。複数の第二位置決めピン55は、スプライシング処理において、表面用スプライシングテープ831に並んで形成されたベーステープ81の位置決め穴812(図4を参照)およびキャリアテープ90の送り穴912に係合する。
【0035】
上記のような構成によると、カムドラム41の回転に伴いラック台51がラック52と一体的に水平方向に移動する。そうすると、ラック52に噛合するピニオンギヤ53が回転し、ピニオンギヤ53の回転に伴って旋回台54が回転する。これにより、裏面押付部材20に対して表面押付部材30が回転する。結果として、表面押付部材30は、裏面押付部材20に対向した状態に切り換えられる。
【0036】
第二昇降台44は、裏面押付部材20に対向した状態の表面押付部材30を、旋回装置50の一部(ラック台51、ラック52、ピニオンギヤ53、旋回台54、および第二位置決めピン55)とともに一体的に相対移動可能に構成される。第二昇降台44は、スプライシング処理においてスプライシング位置Psの上部に配置される。第二昇降台44は、複数のカム面411の一つに係合する脚部(図示しない)とともに一体的に上下方向に移動する。
【0037】
3.スプライシング装置10によるスプライシング処理
スプライシング装置10によるスプライシング処理について図2図6図9を参照して説明する。なお、図7図9において、供給テープ80およびキャリアテープ90の厚みなどを誇張して示している(図10において同じ)。スプライシング処理は、主として、一対のキャリアテープ90を切断する切断処理と、切断後のキャリアテープ90にスプライシングテープ83を貼り付ける貼付処理と、スプライシング後の取り出し処理とにより構成される。以下では、スプライシング処理における貼付処理および取り出し処理について説明する。
【0038】
ここで、一対のキャリアテープ90の端部がスプライシング位置Psに位置決めされているものとする。この状態で、供給テープ搬送装置15の駆動により供給テープ80が搬送方向に移動されると、図6および図7に示すように、カバーテープ82が剥離位置Peにおいてベーステープ81から剥離されるとともにガイド部材153により折り返される。これにより、直後に実行される貼付工程において使用される一対のスプライシングテープ83のみが露出した状態となる。さらに、一対のスプライシングテープ83が搬送方向の所定位置に位置決めされる。
【0039】
具体的には、一対のキャリアテープ90の送り穴912、および裏面用スプライシングテープ832を貫通するベーステープ81の位置決め穴812は、第一位置決めピン43に係合可能な位置に位置決めされる。また、表面用スプライシングテープ831に並んで形成されたベーステープ81の位置決め穴812は、旋回装置50の第二位置決めピン55に係合可能な位置に位置決めされる。
【0040】
制御装置17は、カムドラム41を低速回転させる。これにより、先ず、第一昇降台42および第二昇降台44が上昇し、第一位置決めピン43および第二位置決めピン55がベーステープ81の位置決め穴812に係合する。次に、ラック台51が水平移動することにより旋回台54が回転し、裏面押付部材20に対して表面押付部材30が対向する状態となる。同時に、表面用スプライシングテープ831が一対のキャリアテープ90に跨った状態となる。
【0041】
制御装置17は、カムドラム41をさらに回転させる。これにより、第一昇降台42がさらに上昇するとともに、第二昇降台44および旋回台54が下降する。結果として、図8に示すように、一対のキャリアテープ90と一対のスプライシングテープ83は、裏面押付部材20と表面押付部材30との間に挟まれる。このとき、一対のスプライシングテープ83には、所定の押付力が付与され、一対のキャリアテープ90の裏面および表面に貼り付けられる。
【0042】
制御装置17は、カムドラム41をさらに回転させる。これにより、テープ貼付装置16の各部材が概ね逆順で動作する。結果として、図9に示すように、裏面押付部材20が初期位置に復帰するように移動し、第一位置決めピン43がベーステープ81の位置決め穴812から離脱する。また、表面押付部材30が初期位置に復帰するように移動し、表面用スプライシングテープ831がベーステープ81から剥離される。さらに、第二位置決めピン55がベーステープ81の位置決め穴812から離脱する。
【0043】
制御装置17は、上記のように一対のスプライシングテープ83の貼付処理が終了すると、スプライシング後の取り出し処理を実行する。この取り出し処理は、上部カバー12を閉状態から開状態へと切り換えて、装置本体11からスプライシングされた一対のキャリアテープ90を取り出し可能にする処理である。また、スプライシング装置10は、取り出し処理において、一対のキャリアテープ90をテープ搬送路112から上方に持ち上げる。
【0044】
取り出し処理における上記の持ち上げは、貼付処理の直後ではベーステープ81に張り付いた状態の裏面用スプライシングテープ832をベーステープ81から剥離する剥離処理に相当する。より具体的には、制御装置17は、取り出し処理において、上部カバー12を閉状態から開状態へと切り換えるように、上部カバー12のロックを解除する。これにより、上部カバー12は、装置本体11との間に配置された弾性部材(図示しない)の弾性力により開状態となる。
【0045】
上部カバー12に設けられた持ち上げ部121は、図2の一点鎖線にて示すように、上部カバー12が開状態とされると上部カバー12とともに上昇することにより、一対のキャリアテープ90をテープ搬送路112から上方に持ち上げる。このとき、ベーステープ81にはある程度の張力が付与されており、ベーステープ81から裏面用スプライシングテープ832が剥離される。剥離処理が終了すると、スプライシングされた一対のキャリアテープ90は、装置本体11と上部カバー12との間から取り出し可能な状態とされる。
【0046】
4.規制部154の構成および剥離処理における作用
剥離処理では、一対のキャリアテープ90が持ち上げられた際に、一対のキャリアテープ90から裏面用スプライシングテープ832が剥離することなく、ベーステープ81から裏面用スプライシングテープ832が剥離する必要がある。そのため、裏面用スプライシングテープ832は、キャリアテープ90との間の粘着力がベーステープ81との間の粘着力よりも大きくなるように管理されている。
【0047】
さらに、一対のスプライシングテープ83は、ベーステープ81との間の粘着力がカバーテープ82との間の粘着力よりも大きくなるように管理されている。これは、カバーテープ82をベーステープ81から剥離した際に、一対のスプライシングテープ83がカバーテープ82とともにベーステープ81から剥離することを防止するためのものである。そのため、ベーステープ81と裏面用スプライシングテープ832との間の粘着力は、カバーテープ82と一対のスプライシングテープ83との間の粘着力を上回る程度には確保される必要がある。
【0048】
しかしながら、供給テープ80の保管状態やスプライシング装置10の稼働環境、キャリアテープ90の裏面の汚れの状態などによっては、ベーステープ81と裏面用スプライシングテープ832との間の粘着力が剥離処理の結果に影響するおそれがある。そこで、本実施形態のスプライシング装置10は、裏面用スプライシングテープ832をベーステープ81から良好に剥離すべく規制部154を備える構成を採用する。
【0049】
本実施形態において、規制部154は、図5および図6に示すように、供給テープ搬送装置15のガイド部材153に一体に設けられる。規制部154は、ベーステープ81の幅方向(図6の上下方向)におけるガイド部材153の両端部からベーステープ81の搬送方向(図6の左右方向)にそれぞれ延伸する。本実施形態において、ガイド部材153および規制部154は、板状に形成された一体部材である。
【0050】
規制部154は、剥離処理においてベーステープ81の搬送方向において裏面用スプライシングテープ832が配置された範囲Lpでベーステープ81の上面に接触する。より具体的には、規制部154は、ガイド部材153が規定するカバーテープ82の剥離位置Peからベーステープ81の搬送方向に延伸する接触範囲Lrにおいてベーステープ81と接触し得る。また、規制部154は、ベーステープ81の上面のうち送り穴811が形成された非粘着領域Anのみに接触する。
【0051】
また、規制部154は、スプライシング処理において段階的に上昇をする裏面押付部材20の可動範囲、およびスプライシング処理において上昇、旋回、および下降をする表面押付部材30の可動範囲の外部に配置される。さらに、規制部154は、表面押付部材30を旋回させる旋回装置50の可動範囲の外部に配置される。このような構成により、規制部154は、スプライシング処理の実行中において裏面押付部材20、表面押付部材30、および旋回装置50に干渉しない位置(可動範囲の外部)に固定される。
【0052】
上記のような構成からなる規制部154は、図10に示すように、取り出し処理において持ち上げ部121が一対のスプライシングテープ83を持ち上げる際に、ベーステープ81の幅方向において裏面用スプライシングテープ832より両端側に位置する部位に接触する。これにより、規制部154は、裏面用スプライシングテープ832の持ち上げに伴うベーステープ81の上方移動を規制する。
【0053】
ここで、規制部154を有しない構成では、裏面用スプライシングテープ832を貼り付けられた一対のスプライシングテープ83が持ち上げられると、ベーステープ81に付与された張力によってベーステープ81の上方移動が規制される。そうすると、裏面用スプライシングテープ832は、ベーステープ81の幅方向に平行な長辺から短辺の中央に向かってベーステープ81から剥離される。
【0054】
これに対して、本実施形態のように規制部154を有する構成では、裏面用スプライシングテープ832を貼り付けられた一対のスプライシングテープ83が持ち上げられると、ベーステープ81の幅方向の両端部に接触する規制部154によりベーステープ81の上方移動が規制される。そうすると、裏面用スプライシングテープ832は、ベーステープ81の搬送方向に平行な短辺から長辺の中央に向かってベーステープ81から徐々に剥離される。
【0055】
上記のように、ベーステープ81に対する裏面用スプライシングテープ832の剥離の進行方向が異なると、裏面用スプライシングテープ832の剥離が開始してから終了するまでの時間が異なる。そのため、規制部154によりベーステープ81の上方移動が規制された態様では、裏面用スプライシングテープ832が単位時間あたりに剥離される量を少なくすることができる。よって、剥離処理において一対のキャリアテープ90から裏面用スプライシングテープ832を剥がすように作用する力を軽減できる。
【0056】
このような構成によると、一対のキャリアテープ90と裏面用スプライシングテープ832との間の粘着力がある程度低減しても良好な接着状態を維持することができる。このように、本実施形態のスプライシング装置10は、剥離処理において一対のキャリアテープ90の持ち上げに伴うベーステープ81の上方移動を規制する規制部154を備えることにより、剥離処理において裏面用スプライシングテープ832をベーステープ81から良好に剥離することができる。
【0057】
また、規制部154は、ベーステープ81において裏面用スプライシングテープ832が配置された範囲Lpを含む接触範囲Lrでベーステープ81と接触する。このような構成によると、規制部154がベーステープ81の搬送方向に十分な長さを確保され、確実にベーステープ81の上方移動を規制できる。
【0058】
また、規制部154は、ベーステープ81の上面のうち送り穴811が形成された非粘着領域Anのみに接触する。これにより、規制部154は、ベーステープ81の粘着領域Atに接触せずにベーステープ81の上方移動を規制する。よって、ベーステープ81から裏面用スプライシングテープ832を剥離した後にベーステープ81を搬送する際に、ベーステープ81に規制部154が粘着しない状態にできる。
【0059】
5.実施形態の変形態様
実施形態において、規制部154は、ベーステープ81において裏面用スプライシングテープ832が配置された範囲Lpを含む接触範囲Lrでベーステープ81と接触する。これに対して、規制部154は、ベーステープ81の上面のうちベーステープ81の幅方向において裏面用スプライシングテープ832より両端側に位置する部位に接触可能であれば、種々の接触範囲Lrを設定され得る。
【0060】
また、規制部154は、ベーステープ81の搬送に影響がないまたは小さいのであれば、ベーステープ81の粘着領域Atの一部に接触してもよい。但し、より確実にベーステープ81の搬送への影響を低減するという観点からは、実施形態にて例示した態様が好適である。
【0061】
さらに、規制部154は、裏面押付部材20や表面押付部材30などと干渉しない位置であれば、配置される位置を適宜設定される。実施形態において、規制部154は、ガイド部材153と一体に設けられる構成とした。これに対して、規制部154は、ガイド部材153とは別部材により構成されてもよい。但し、部品点数を低減するという観点からは、実施形態にて例示した態様が好適である。
【符号の説明】
【0062】
10:スプライシング装置、 11:装置本体、 112:テープ搬送路、 12:上部カバー、 121:持ち上げ部、 13:キャリアテープ搬送装置、 14:切断装置、 15:供給テープ搬送装置、 151:ベーステープ搬送装置、 152:カバーテープ搬送装置、 153:ガイド部材、 154:規制部、 16:テープ貼付装置、 17:制御装置、 20:裏面押付部材、 30:表面押付部材、 40:駆動装置、 50:旋回装置、80:供給テープ、 81:ベーステープ、 82:カバーテープ、 83:スプライシングテープ、 831:表面用スプライシングテープ、 832:裏面用スプライシングテープ、 90:キャリアテープ、 At:粘着領域、 An:非粘着領域、 Lr:接触範囲、 Pc:切断位置、 Ps:スプライシング位置
図1
図2
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図10