(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シャフト上部側に配置されると共に長手方向が機械幅方向とされたスリット状の導風路を備え、該導風路の入口側から出口側に向かうにしたがって機械方向に沿う開口幅が広げられ、前記導風路の入口側から前記出口側へ向けてエアと共にフィラメントが供給される第1シャフト部と、
シャフト下部側に配置され、入口側が前記第1シャフト部の出口側に連通されると共に出口側が前記フィラメントを捕集する捕集部に対向して配置され、当該入口側の機械方向に沿う開口幅が、前記第1シャフト部の出口側の機械方向に沿う開口幅より拡げられかつ該入口側から前記出口側に向かうにしたがって機械方向に沿う開口幅が広げられた第2シャフト部と、
前記第1シャフト部の出口側と前記第2シャフト部の入口側との接続部に設けられ、前記第1シャフト部の機械方向に沿う中心線に対して前記第2シャフト部の機械方向に沿う中心線を機械方向に沿う方向の一側に偏寄させて当該第1シャフト部の出口側と当該第2シャフト部の入口側とを接続する段差部と、
を含んで構成された拡散シャフトを備えた、不織布の製造装置。
【背景技術】
【0002】
スパンボンド不織布などの不織布は、医療、衛生資材、土木資材及び包装資材等に多用されている。スパンボンド不織布は、熱可塑性樹脂を溶融紡糸したフィラメントに対して冷却風を用いた冷却処理、及び延伸風を用いた延伸処理を行った後、捕集媒体上に拡散させながら捕集堆積させることで得られるウエブから製造される。
【0003】
特許文献1には、水平方向における横断面が矩形状とされ、フィラメント走行方向において次第に横断面が縮小された冷却室、冷却室に接続され排出口における壁体に段状凹陥部が形成された延伸ノズル、及び延伸ノズルに接続された繊維載置装置を有し、空気力学的に延伸された合成樹脂フィラメントから紡糸繊維帯片を製造する装置が開示されている。特許文献1は、水平方向において矩形状の横断面を有し、縦方向においてヴェンチュリー環状の流域、およびディフューザー出口を有するジェットポンプの形態を有し、繊維帯片載置フィルタベルトを挟んでディフューザー出口に対向された吸気管により自由空気吸入口から吸引される空気量が調整されるようにしている。
【0004】
特許文献2には、多数のノズルを有するノズル板体、処理シャフト、搬送ユニット及び搬送コンベアを有し、処理シャフト及び搬送ユニットを処理空気が流入し、ノズル板体のノズル孔から無端繊維が流入されると共に空気と繊維の混合の形の無端繊維群として搬送コンベアに向かう放出運動により処理シャフト中に流入され、搬送ユニットが無端繊維群用の中央の流入導管及びこれに次ぐ、搬送コンベアまで伸長するディフューザ導管を具備し、放出運動とそれに重複するフリース形成運動が強制付与され、上記双方の導管が搬送コンベアベルトの走行方向を横切る方向に延びる熱可塑性樹脂無端繊維からスピンフリースウェブを製造する装置が開示されている。特許文献2では、導入導管および/またはディフューザ導管は空気と繊維の混合用に用いられ、導管の幅にわたり搬送コンベアベルトの走行方向を横切って伸長する導管中に空気を追加導入するための流通スリット形状の、並びに導管から空気を放出するための流出スリットの形状の空力学的等分配装置を具備し、付加的に追加給送されるべき流量および流出させるべき空気の流量を空気と繊維の混合中における繊維の等分配に影響を与える目的で制御ないし調整されるようにしている。また、特許文献2は、流入導管および/またはディフューザ導管の内部表面が導管縦断面における表面近傍に障害部材を具備し、その流動方向に対して後方に渦巻き領域が形成されるようにしている。
【0005】
特許文献3には、フィラメントを形成する紡糸口金が設けられ、紡糸口金の下流にはフィラメントを冷却する処理空気を供給される冷却室があり、フィラメントを延伸する延伸ユニットが冷却室に接続されており、冷却室と延伸ユニットの間の接続領域が閉鎖されて、延伸ユニットは通路壁が延伸通路の長さの少なくとも一部上に分岐される延伸通路を有し、延伸ユニットでは、分岐延伸通路部分の上流端において追加的空気は、フィラメント束が機械方向において幅広く形成される条件により延伸通路に注入されていて、スパンボンドウエブのフィラメントを沈積させる沈積装置が設けられた、フィラメントから形成されたスパンボンドを製造する装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献3では、延伸ユニットの下流には沈積ユニットがあり、沈積ユニットが上流ディフューザと隣接下流ディフューザから成り、周囲空気入口スリットが上流ディフューザと下流ディフューザの間に設けられている記載がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、不織布の品質に関わる重要な特性として、均一性及び強度がある。例えば、特許文献2では、メッシュ寸法が均一な不織布を得ることを目的としているが、均一性が高い不織布では、フィラメントの絡みが不足し、強度が低下してしまうことがある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、均一性が損なわれるのを抑制しながら強度の向上が図られた不織布が得られる不織布の製造装置及び不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本開示の不織布の製造装置は、シャフト上部側に配置されると共に長手方向が機械幅方向とされたスリット状の導風路を備え、該導風路の入口側から出口側に向かうにしたがって機械方向に沿う開口幅が広げられ、前記導風路の入口側から前記出口側へ向けてエアと共にフィラメントが供給される第1シャフト部と、シャフト下部側に配置され、入口側が前記第1シャフト部の出口側に連通されると共に出口側が前記フィラメントを捕集する捕集部に対向して配置され、当該入口側の機械方向に沿う開口幅が、前記第1シャフト部の出口側の機械方向に沿う開口幅より拡げられかつ該入口側から前記出口側に向かうにしたがって機械方向に沿う開口幅が広げられた第2シャフト部と、
前記第1シャフト部の出口側と前記第2シャフト部の入口側との接続部に設けられ、前記第1シャフト部の機械方向に沿う中心線に対して前記第2シャフト部の機械方向に沿う中心線を機械方向に沿う方向の一側に偏寄させて当該第1シャフト部の出口側と当該第2シャフト部の入口側とを接続する段差部と、を含んで構成された拡散シャフトを備える。
【0011】
本開示の不織布の製造方法は、シャフト上部側に配置されると共に長手方向が機械幅方向とされたスリット状の導風路を備え、該導風路の入口側から出口側に向かうにしたがって機械方向に沿う開口幅が広げられ、前記導風路の入口側から前記出口側へ向けてエアと共にフィラメントが供給される第1シャフト部、シャフト下部側に配置され、入口側が前記第1シャフト部の出口側に連通されると共に出口側が前記フィラメントを捕集する捕集部に対向して配置され、当該入口側の機械方向に沿う開口幅が、前記第1シャフト部の機械方向に沿う開口幅より拡げられかつ該入口側から前記出口側に向かうにしたがって機械方向に沿う開口幅が広げられた第2シャフト部、及び前記第1シャフト部の出口側と前記第2シャフト部の入口側との接続部に設けられ、前記第1シャフト部の機械方向に沿う中心線に対して前記第2シャフト部の機械方向に沿う中心線を機械方向に沿う方向の一側に偏寄させて当該第1シャフト部の出口側と当該第2シャフト部の入口側とを接続する段差部を備えた拡散シャフトを用い、前記第1シャフト部の入口側からエアと共にフィラメントを供給し、前記第2シャフト部の出口側から噴出されるフィラメントを前記捕集部において捕集堆積して、不織布が製造されるウエブを生成する、ことを含む。
【0012】
本開示に係る不織布の製造装置及び製造方法は、熱可塑性樹脂を溶融させた溶融樹脂から複数のフィラメントを紡出する紡出部、紡出した複数のフィラメントを冷却する冷却部、及び複数のフィラメントを延伸する延伸部を含み、延伸した複数のフィラメントを拡散させながら捕集部において捕集堆積してウエブを生成する。延伸部と捕集部との間には、拡散シャフトを設け、拡散シャフト内を通るエア(噴出風)を機械方向に拡散させて、拡散シャフトの下方側の開口から捕集部へ噴き出すことで、均一性の高いウエブが生成されるようにしている。
【0013】
拡散シャフトは、第1シャフト部及び第2シャフト部を備え、第2シャフト部は、入口側の機械方向に沿う開口幅が第1シャフト部の出口側の機械方向に沿う開口幅よりも拡げられている。また、第1シャフト部の出口側と第2シャフト部の入口側とは、段差部により接続されている。第1シャフト部から第2シャフト部へ導入される噴出風には、段差部を通ることで、内部に速度変動が促進されて速度変動が大きくなる領域が生じる。拡散シャフトの第2シャフト部内を噴出風により搬送される複数のフィラメントは、噴出風の速度変動が大きい領域が生じることでフィラメント同士の絡みが促進される。これにより、フィラメントの絡みが多くなったウエブが得られ、このウエブから生成される不織布は、フィラメントの絡みが多くなっていることで強度が向上される。
【0014】
拡散シャフトに設ける段差部は、第1シャフト部と第2シャフト部との間において開口幅を機械方向に沿って拡げることで、第2シャフト部内において噴出風の速度変動を促進し得る形状であれば良く、機械方向側及び機械方向とは反対方向側の少なくとも一方側に設けられれば良い。
【0015】
また、本開示において、前記段差部は、機械方向側及び機械方向とは反対方向側の各々に、機械幅方向に沿って連続して設けられていても良い。
【0016】
更に、本開示において第2シャフト部は、機械方向に沿う開口幅が入口側から出口側へ向けて徐々に広くなるように形成されていても良い。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本開示によれば、噴出風となるエアにより拡散シャフト内を搬送されるフィラメントに絡みが生じるのを促進できるので、フィラメントの絡みにより強度が向上された不織布を得ることができる、という効果がある。従って、本開示によれば、均一性が損なわれるのを抑制しながら強度の向上が図られた不織布が得られる不織布の製造装置及び不織布の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態の一例を詳細に説明する。
図1には、本実施の形態に係る不織布の製造装置10の要部を示している。本実施の形態に係る製造装置10は、スパンボンド不織布の製造に用いられる。なお、以下の説明において、MD(machine direction)方向は、機械方向を示し、CD(cross machine direction)方向は、MD方向と交差する幅方向(機械幅方向)を示し、UP方向は、上下方向の上方を示している。
【0020】
製造装置10は、スパンボンド不織布に用いる熱可塑性樹脂が溶融された溶融樹脂を紡糸してフィラメントを生成する紡出部12、フィラメントに対して冷却処理を行う冷却部14、及びフィラメントに対して延伸処理する延伸部16を備える。また、製造装置10は、冷却処理及び延伸処理されたフィラメントを捕集して、不織布となるウエブを得る捕集部18、及び捕集部18へ向けてフィラメントを噴き出す拡散部20を備える。
【0021】
紡出部12は、複数の紡糸ノズルが配列された紡糸口金22を備え、紡糸口金22に溶融樹脂導入管24が接続されている。紡出部12では、溶融樹脂導入管24から紡糸口金22に溶融樹脂が導入されることで複数の紡糸ノズルからフィラメントを紡出する。これにより、紡出部12は、CD方向に配列された複数のフィラメントを導出する。冷却部14は、紡糸された複数のフィラメントが導入される冷却室26を備え、冷却室26に冷却風供給ダクト28が接続されている。冷却部14は、冷却室26に導入された複数のフィラメントを、冷却風供給ダクト28から供給される冷却風により冷却する。
【0022】
延伸部16は、開口断面がCD方向(
図1では、紙面表裏方向)に長くMD方向に短い挟幅とされて上下方向に延びる延伸シャフト30を備える。延伸部16の延伸シャフト30には、冷却部14から複数のフィラメントが導入される。延伸部16は、複数のフィラメントと共に導入される冷却風或いは冷却風とは別に延伸シャフト30内に供給される空気風を延伸風とし、冷却部14から導入されたフィラメントを延伸しながら導出する。
【0023】
捕集部18は、メッシュ或いはパンチングメタルなどにより形成された捕集媒体としての移動帯32、及び移動帯32の下方に設けられた図示しない吸引手段を備える。また、拡散部20は、拡散シャフト36を備える。拡散シャフト36は、上方側の開口が延伸部16の延伸シャフト30の下端側の開口に向けられており、下方側の開口が捕集部18の移動帯32の捕集面32A上に向けられている。
【0024】
拡散シャフト36には、冷却及び延伸された複数のフィラメントが延伸シャフト30から導入される。拡散部20は、複数のフィラメントと共に延伸シャフト30から拡散シャフト36に導入される延伸風或いは延伸風とは別に拡散シャフト36に導入される空気風を噴出風とし、噴出風により複数のフィラメントを搬送し、拡散シャフト36の下方側の開口からフィラメントを移動帯32の捕集面32Aへ向けて噴き出す。捕集部18は、移動帯32の捕集面32Aに噴き出されるフィラメントを、吸引手段により吸引しながら捕集面32A上に捕集して、不織布となるウエブを生成する。
【0025】
拡散シャフト36には、スリット状の導風路が形成されている。拡散シャフト36の導風路は、内部の開口幅(MD方向に沿う開口幅)が下方へ向けて拡がるように形成され、拡散シャフト36内を通過する噴出風がMD方向に沿って拡がる(拡散)ようにしている。これにより、製造装置10では、複数のフィラメントが拡散部20の拡散シャフト36内を通過する際に拡散されて、捕集部18の捕集面32A上に噴き出されて堆積される。なお、製造装置10は、拡散シャフト36の下端と移動帯32の捕集面32Aとの距離が数十mmから百mmまでの範囲とされ、拡散シャフト36から噴き出された後にフィラメントが必要以上に拡散するのが抑えられるようにしている。また、製造装置10は、溶融樹脂を紡糸して複数のフィラメントを生成し、生成した複数のフィラメントを冷却処理及び延伸処理して捕集する公知の構成を適用することができる。
【0026】
図2及び
図3Aには、拡散部20の拡散シャフト36を示している。
図1から
図3Aに示すように、拡散シャフト36は、第1シャフト部としての上部シャフト38及び第2シャフト部としての下部シャフト40を含む。また、拡散シャフト36には、上部シャフト38と下部シャフト40との接続部分に段差部42が設けられている。拡散シャフト36は、上部シャフト38よりも下部シャフト40の方が上下方向に沿う長さが長くされており、段差部42は、拡散シャフト36の上下方向の中間部よりも上方側に形成されている。
【0027】
図2に示すように、上部シャフト38は、壁部44Aと壁部44BとがMD方向に沿って対で配置され、また、CD方向に一対の側壁部44Cが配置されている。上部シャフト38は、壁部44A、44B及び一対の側壁部44Cにより、上端の開口38A及び下端の開口38Bの開口断面が、MD方向に狭く、CD方向に長い長尺矩形の筒体形状に形成されている。
【0028】
図2及び
図3Aに示すように、上部シャフト38は、上端の開口38Aの開口幅(MD方向に沿う開口幅)及び開口長さ(CD方向に沿う開口長さ)が、延伸シャフト30(
図1参照)の下端部の図示しない開口に合わせられ、延伸シャフト30から導出される複数のフィラメントが導入される。なお、上部シャフト38は、壁部44A、44Bが互いに平行とされていても良く、開口38Aから開口38Bへ向けて開口幅が徐々に大きくなるように僅かに傾斜されていても良い。本実施の形態では、開口38Aから開口38Bへ向けて開口幅が徐々に大きくなるように壁部44A、44Bを傾斜させており、これにより、上部シャフト38は、下端の開口38Bの開口幅が上端の開口38Aの開口幅よりも僅かに大きくなっている。
【0029】
図2に示すように、下部シャフト40は、壁部46Aと壁部46BとがMD方向に沿って対で配置され、また、CD方向に一対の側壁部46C(
図2では、一方のみを図示)が配置されている。下部シャフト40は、壁部46A、46B及び一対の側壁部46Cにより、上端の開口40A及び下端の開口40Bの開口断面が、MD方向に狭く、CD方向に長い長尺矩形の筒体形状に形成されている。
【0030】
この下部シャフト40は、上端の開口40Aが上部シャフト38の開口38Bに対向され、下端の開口40Bが捕集部18の移動帯32に対向されている。また、
図2及び
図3Aに示すように、下部シャフト40は、開口40Aから40Bへ向けて開口幅が徐々に大きくなるように壁部46A、46Bが傾斜されている。これにより、下部シャフト40は、上端の開口40Aから下端の開口40Bへ向けて開口幅が徐々に大きくされて、下端の開口40Bの開口幅が上端の開口40Aの開口幅よりも大きくされている。なお、下部シャフト40は、少なくとも上端の開口40Aから下端の開口40Bへ向けて開口幅が狭くならなければ良く、下部シャフト40は、上端の開口40Aから下端の開口40Bへ向けて開口幅が変化しない構成であっても良い。
【0031】
一方、
図3Aに示すように、拡散シャフト36は、上部シャフト38の下端の開口38Bの開口幅Wuより下部シャフト40の上端の開口40Aの開口幅Wdが大きくされている(Wu<Wd)。
図2及び
図3Aに示すように、段差部42には、連結壁部48A、48Bが設けられており、連結壁部48A、48Bの各々は、上下方向と交差する方向(水平方向)に沿って配置されている。また、段差部42では、上部シャフト38の側壁部44Cの下端と下部シャフト40の側壁部46Cの上端とが一体的に連結されている。
【0032】
段差部42では、連結壁部48Aにより上部シャフト38のMD方向側の壁部44Aの下端部と下部シャフト40のMD方向側の壁部46Aの上端部とが連結されて閉塞されている。また、段差部42では、連結壁部48Bにより上部シャフト38の壁部44Bの下端部と下部シャフト40の壁部46Bの上端部とが連結されて閉塞されている。これにより、拡散シャフト36は、上部シャフト38内と下部シャフト40内とが連通され、且つ段差部42において上部シャフト38側から下部シャフト40側へMD方向に沿う開口幅が大きくされている。即ち、段差部42は、壁部44AからMD方向に壁部46Aが突出されて段差が形成され、壁部44BからMD方向とは反対方向へ壁部46Bが突出され、CD方向に連続する段差が形成されている。
【0033】
また、拡散シャフト36は、連結壁部48Aの幅寸法(MD方向寸法)が連結壁部48Bの幅寸法より大きくされている。これにより、拡散シャフト36は、下部シャフト40がMD方向に偏寄されて上部シャフト38に連結されている。
【0034】
拡散シャフト36は、段差部42において開口幅が拡げられており、段差部42における開口幅の変化(変化率)は、上部シャフト38における開口幅の変化に比して大きくされていると共に、下部シャフト40における開口幅の変化に比して大きくされている。
【0035】
次に、本実施の形態に係る製造装置10に設けた拡散部20の作用を説明する。
拡散部20には、拡散シャフト36が設けられ、紡糸されて冷却処理及び延伸処理されて延伸部16の延伸シャフト30から導出されたフィラメントが拡散シャフト36に導入される。また、拡散シャフト36には、噴出風が導入される。拡散シャフト36は、上部シャフト38と下部シャフト40とが連結されて形成され、上部シャフト38の開口38Aから下部シャフト40の開口40Bへ向けて開口幅が、MD方向に沿う方向へ拡幅されている。
【0036】
拡散部20では、拡散シャフト36内に導入された噴出風が拡散シャフト36内で拡散されて開口40Bから噴き出される。また、拡散シャフト36に導入されたフィラメントは、噴出風により拡散されて捕集部18に設けられている移動帯32の捕集面32Aへ向けて拡げられて噴き出される。これにより、製造装置10は、移動帯32の捕集面32Aに、フィラメントが均一に拡散されて堆積される。
【0037】
ところで、拡散シャフト36には、段差部42が設けられている。段差部42は、水平方向に沿って配置された連結壁部48A、48Bにより上部シャフト38の壁部44A、44Bと下部シャフト40の壁部46A、46Bとを連結している。拡散シャフト36は、段差部42が設けられていることで上部シャフト38内における開口幅の変化及び下部シャフト40内における開口幅の変化に比べ、段差部42において開口幅が大きく変化されている。
【0038】
ここで、
図3Aには、二点鎖線の矢印により拡散シャフト36における噴出風の流れの概略を示している。また、
図3Bには、比較対象とする拡散シャフト100を示している。拡散シャフト100は、壁部102Aと壁部102BとがMD方向に沿って対で配置され、また、CD方向に一対の側壁部102C(
図3Bでは、一方のみを図示)が配置されている。また、拡散シャフト100は、開口断面が上方側から下方側へ向けて徐々に拡がるように壁部102A、102Bが傾斜された筒体形状に形成され、上端に開口38Aが設けられ、下端に開口40Bが設けられている。即ち、拡散シャフト100は、段差部42が設けられていない点で拡散シャフト36と相違する。
【0039】
拡散シャフト100では、開口38Aから導入された噴出風が、拡散シャフト100の開口幅の拡がりに応じてMD方向に拡げられて開口40Bから噴き出される。また、噴出風の速度は、壁部102A、102B及び側壁部102Cの内面との間の摩擦等及び開口幅の拡がりに応じて減少する速度変動が生じるが、拡散シャフト100では、速度変動が抑制される。従って、拡散シャフト100では、噴出風の速度変動が抑えられているので、拡散シャフト100内を噴出風により搬送される複数のフィラメント同士が絡むのが抑制される。
【0040】
これに対して、
図3Aに示すように、拡散シャフト36では、段差部42に水平方向に延設された連結壁部48A、48Bが設けられており、段差部42を通過した噴出風(噴出風の主流を二点鎖線の矢印で示す)に拡がりが生じる。噴出風は、拡がりが生じることで全体に速度変動が生じる。拡散シャフト36では、上部シャフト38及び下部シャフト40よりも開口幅の変化の大きい段差部42が設けられ、段差部42において噴出風に拡がりが生じることで、噴出風には、周囲の速度変動よりも速度変動が促進される領域が生じる。噴出風により搬送される複数のフィラメントには、僅かながらフィラメント同士に絡みが生じ、噴出風内において速度変動が周囲より促進された領域が生じることで、噴出風により搬送されるフィラメント同士の絡みが促進される。
【0041】
これにより、段差部42が設けられた拡散シャフト36から噴出されるフィラメントは、段差部42が設けられていない拡散シャフト100から噴出されるフィラメントに比べ絡みが多くなる。従って、捕集部18の捕集面32Aには、絡みが多いフィラメントが堆積されたウエブが生成される。
【0042】
一般に、不織布は、フィラメントの絡みが多くなっていることで、フィラメントの絡みが少ない場合に比べて強度が高くなる。従って、製造装置10は、拡散シャフト36に段差部42が設けられていることで、強度の高い不織布を生成することができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、連結壁部48Aの幅寸法(MD方向寸法)を連結壁部48Bの幅寸法より大きくすることで、上部シャフト38に対して下部シャフト40をMD方向に偏寄させた拡散シャフト36を例に説明したが、拡散シャフトは、これに限るものではない。
【0044】
図4A〜
図4Cには、拡散シャフト36とは異なる形状の拡散シャフトを示している。
図4Aに示される拡散シャフト50には、上部シャフト38と下部シャフト40との間に段差部52が設けられており、段差部52には、水平方向に配置された連結壁部54が設けられている。拡散シャフト50は、上部シャフト38の壁部44Bと下部シャフト40の壁部46Bとが連結されている。また、拡散シャフト50は、上部シャフト38の壁部44Aの下端と下部シャフト40の壁部46Aの上端とが、段差部52の連結壁部54により連結されている。
【0045】
これにより、拡散シャフト50の段差部52は、壁部44Aの内面と壁部46Aの内面との間に形成される段差により開口幅が拡げられ、段差部52を通過する噴出風がMD方向側に拡がる。従って、拡散シャフト50は、下部シャフト40内で拡散される噴出風に速度変動が促進される領域が生じ、噴出風の速度変動が促進されることでフィラメントの絡まりが促進される。従って、拡散シャフト50を用いることで強度の高い不織布の製造が可能となる。
【0046】
また、段差部は、同等の幅寸法の連結壁部によりMD方向及びMD方向とは反対方向に段差を形成して上部シャフト38と下部シャフト40とを連結するものであっても良い。即ち、拡散シャフトは、第1シャフト部と第2シャフト部との接続部において、MD方向及びMD方向とは反対方向の少なくとも一方向に向けて開口幅が拡がる段差部が形成されたものであれば良い。
【0047】
図4Bに示す拡散シャフト56は、段差部58により上部シャフト38と下部シャフト40とが接続されている。段差部58には、幅寸法が同等の連結壁部60A、60B及び連結側壁部60Cが用いられ、連結壁部60A、60Bが水平方向に対して下部シャフト40側が下方側となるように傾斜されて配置されている。段差部58では、連結側壁部60Cにより上部シャフト38の側壁部44Cと下部シャフト40の側壁部46Cとが連結されている。また、段差部58では、上部シャフト38の壁部44Aと下部シャフト40の壁部46Aとが連結壁部60Aにより連結され、上部シャフト38の壁部44Bと下部シャフト40の壁部46Bとが連結壁部60Bにより連結されている。
【0048】
拡散シャフト56の段差部58における連結壁部60A、60Bの傾斜(上部シャフト38における噴出風の方向に対する傾き)は、連結壁部60A、60Bの間における開口幅の変化が噴出風に速度変動を促進させうる傾斜となっている。このように形成される拡散シャフト56は、段差部58を通過した噴出風に速度変動が促進された領域が生じることで、フィラメントに絡みが生じるのを促進することができ、強度の高い不織布の製造が可能となる。
【0049】
図4Cに示す拡散シャフト62は、上部シャフト38と下部シャフト40との間に段差部64が設けられており、段差部64により上部シャフト38と下部シャフト40とが接続されている。なお、拡散シャフト62では、上部シャフト38の下端の開口38Bに対して、上端の開口38Aの開口幅が狭められている。
【0050】
拡散シャフト62の段差部64には、MD方向側に連結壁部66Aが設けられ、MD方向とは反対側に連結壁部66Bが設けられている。連結壁部66A、66Bの上側には、下方へ向けて凸となる円弧状の湾曲部68Aが配置されて、連結壁部66A、66Bの下側には、上方へ向けて凸とされた円弧状の湾曲部68Bが配置されている。連結壁部66Aは、湾曲部68A、68Bが連結されて形成されている。段差部64には、湾曲部68Aの凸面側が対向されて連結壁部66A、66Bが配置されている。また、段差部64には、CD方向側に対で連結側壁部66Cが設けられており、連結壁部66A、66Bは、連結側壁部66Cにより連結されている。
【0051】
段差部64では、上部シャフト38の壁部44Aと下部シャフト40の壁部46Aとが連結壁部66Aにより連結され、上部シャフト38の壁部44Bと下部シャフト40の壁部46Bとが連結壁部66Bにより連結されている。また、段差部64では、連結側壁部66Cにより上部シャフト38の側壁部44Cと下部シャフト40の側壁部46Cとが連結されている。
【0052】
このように、拡散シャフト62の段差部64は、内面が曲面とされた連結壁部66A、66Bが用いられており、開口幅は、上端から下端へ向けて拡がるように変化されていると共に、開口幅の変化率が上側部分及び下側部分よりも中間部分で大きくされている。これにより、拡散シャフト62においても、段差部64を通過した噴出風に速度変動が促進される領域が生じ、フィラメントに絡みが生じるのを促進することができ、強度の高い不織布の製造が可能となる。
【0053】
さらに、以上の説明では、MD方向側及びMD方向とは反対側の少なくとも一方について、CD方向の全域に段差を形成しているが、これに限らず、MD方向側とMD方向とは反対側とに交互に段差部を形成しても良い。
図5には、この一例としての拡散シャフト70を示している。
【0054】
拡散シャフト70は、第2シャフト部としての下部シャフト72を備え、上部シャフト38と下部シャフト72とが段差部74において連結されている。下部シャフト72は、MD方向側に壁部76が配置され、MD方向と反対方向側に壁部78が配置されている。また、下部シャフト72は、CD方向側に一対の側壁部80が配置され、側壁部80により壁部76、78が連結され、下端が開口40Bとされた略筒体状に形成されている。段差部74は、MD方向側(壁部76側)に設けられた第1の段差部としての段差部74A、及びMD方向とは反対方向側(壁部78側)に設けられた第2の段差部としての段差部74Bを含んでいる。
【0055】
下部シャフト72の壁部76は、上端が上部シャフト38の壁部44Aの下端に接する縦壁82Aと、上端が上部シャフト38の壁部44Aの下端よりもMD方向へ離された縦壁82BとがCD方向に交互に配置され、互いに隣接する縦壁82A、82Bが側壁82Cにより連結されている。段差部74Aは、壁部44Aの下端と壁部76の縦壁82Bの上端とが、水平方向に配置された連結壁部84Aによって連結されて形成されている。これにより、拡散シャフト70には、CD方向に沿って予め定められた間隔で段差部74Aが形成されている。
【0056】
また、下部シャフト72の壁部78は、上端が上部シャフト38の壁部44Bの下端に接する縦壁86Aと、上端が上部シャフト38の壁部44Bの下端よりもMD方向と反対方向へ離された縦壁86BとがCD方向に交互に配置され、互いに隣接する縦壁86A、86Bが側壁86Cにより連結されている。
【0057】
段差部74Bは、上部シャフト38の壁部44Bの下端と壁部78の縦壁86Bの上端とが水平方向に配置された連結壁部84Bにより連結されて形成されている。これにより、拡散シャフト70は、CD方向に沿って予め定められた間隔で段差部74Bが形成されている。また、壁部78は、縦壁86Aが壁部76の縦壁82Bに対向され、縦壁86Bが壁部76の縦壁82Aに対向されている。これにより、拡散シャフト70は、段差部74Aと段差部74BとがCD方向に沿って交互に形成されている。
【0058】
このように形成された拡散シャフト70は、噴出風の速度変動を促進させるように開口幅が変化する段差部74A、74Bを上部シャフト38と下部シャフト72との間に有している。これにより、拡散シャフト70は、フィラメントに絡みが生じるのを促進することができて、強度の高い不織布の製造が可能となる。また、拡散シャフト70は、MD方向側の段差部74AとMD方向とは反対側の段差部74Bとが、CD方向に沿って交互に設けられていることで、CD方向に沿うフィラメントの絡まり具合に変化が生じるのを抑制することができ、均一性及び強度の高い不織布を製造できる。
【0059】
2016年3月30日に出願された日本国特許出願2016-068805号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。