(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、戸外或いは遠隔地におけるCT装置の稼働には、安定した商用電力の供給が得られず、バッテリー駆動を前提とする使用環境に対応しなければならない。CT装置からの発熱に起因する検査室内や検査車両内部の温度上昇を抑制することのみならず、太陽光その他自然エネルギーに頼らざるを得ない場合においても、CT装置自体の電力消費の削減とエネルギーロスの削減が本発明における主たる解決すべき課題である。
【0005】
従来のCT装置の小型化を阻害する要因の一つは、ガントリの小型・軽量化が困難な点にある。検出器、検出器信号処理回路、X線源、X線源駆動制御回路、空冷ファン等がガントリ内で回転する構造が一般的であるが、X線源、X線源駆動制御回路、空冷ファン等は高重量であり、これらを直径80cm以上の円周上において回転させる場合の慣性モーメントや重量物の回転に伴う振動、騒音等を抑制し装置全体に及ぼす弊害を最小限にする必要がある。慣性モーメントは、回転体の重量、及び回転半径の二乗に比例するため、上述の回生抵抗に生ずる発熱もこれらに比例する。そのため、回生抵抗に生ずる発熱を削減するためには、モータに逆起電力を生じにくくするか、慣性モーメントを小さくする必要がある。
【0006】
また検出器等がガントリの内部で体軸方向を中心に毎秒1〜2回転程度の速度で回転する。そのため、検出器等の出力信号を外部に読み出すためにスリップリングと呼ばれる機械的接触手段により信号の送受信、或いは電力の授受を行っている。スリップリングによる電気的接続を確実にするには、回転数を低く抑え、かつ検出器からの出力信号線本数を少なくする必要がある。信号線本数を少なくするためには、パラレル信号をシリアル化しスリップリングを介し読み出す方法が採用されている。しかし、大量の撮像データをシリアル伝送すると伝送周波数が上昇するため、高速のラインバッファ素子など専用半導体素子を開発する必要があり、さらに伝送周波数の上昇に伴う消費電力や発熱の増大も避けられない。また、X線源等対する電力供給が問題となる。近年、スライス幅の拡大に伴い、X線源の大型化により供給すべき電流量も増大する傾向にある。その結果、スリップリングやブラシの表面研磨や部材の定期的交換等のメンテナンスが必須となっている。さらに設置するための建屋や床の強度、或いは空調設備を含めた専用の電源設備等にも新たな設計仕様が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ガントリ内の回転部は撮影終了後においても慣性モーメントによりしばらく回転を続けようとする。上述の如く、回転部はタイミングベルトを介し、駆動モータと連動している。そのため、慣性モーメントにより回転部が回転を続けると、モータに起電力を生ずる。従来、このようにして発電された電力を回生抵抗に接続することにより、ジュール熱として周囲に放散していた。このようなジュール熱を抑制するため、本発明では、駆動モータを回転させる慣性モーメントを削減する構造を考案した。即ち、ガントリ内の回転部を、クラッチ構造を介した二つの回転部(ドライブ回転部と自由回転部)から構成し、撮影終了後にドライブ回転部と自由回転部との連動を解消し、自由回転部の慣性モーメントが駆動モータに加わることを回避する構造とした。慣性モーメントは、回転部の質量に比例するので、自由回転部を切り離すことにより、ドライブ回転部の慣性モーメントが減少するからである。また、光源、検出器等の質量の大きい構成部材を自由回転部に搭載することにより、さらにドライブ回転部の質量を削減できる。また、慣性モーメントは、回転半径の二乗に比例して増大するので、ドライブ回転部の半径を自由回転部の半径よりも小さく設定することが望ましい。このように、撮影終了後、ドライブ回転部から自由回転部を開放することにより、ドライブ回転部にタイミングベルトを介し連結した駆動モータに発生する起電力を抑制できるが、さらに、ドライブ回転部に比べ慣性モーメントの大きい自由回転部、或いは回転部を取り囲む固定部に回生ブレーキ回路を設けることにより、自由回転部の慣性モーメントを電気エネルギーとして回収し再利用する。即ち、体軸方向を中心軸として回転する回転部をガントリの内部に有するCT装置であって、回転部は動力の伝達元となるドライブ回転部と、この動力の伝達先となる自由回転部から構成されるクラッチ構造を有し、かつドライブ回転部はタイミングベルトを介し回転部の外部に設置された駆動モータと連動したCT装置とする。なおクラッチ構造には、噛み合いクラッチ、摩擦クラッチ、遠心クラッチ、電磁クラッチ等がある。なお、定められた一方向のみトルクを伝達するワンウエイクラッチ、或いはフライホイールと呼ばれる構成も知られている。
【0008】
ワンウエイクラッチ構造の一例として、上記ドライブ回転部が上記自由回転部に伝達する動力の伝達方向が一方向であるラチェット構造からなるCT装置とする。或いは、上記自由回転部の円環状の周囲に複数のリング状の電極(所謂、スリップリング構造)を有し、この複数のリング状の電極それぞれに対し電気的に接触する複数の端子を上記自由回転部の外周を取り囲む固定部に有するCT装置とする。
【0009】
また、好ましくは、上記ドライブ回転部の回転モーメントが上記自由回転部の回転モーメントよりも小さいCT装置とする。或いは、上記ドライブ回転部の重量が上記自由回転部の重量よりも小さいCT装置とする。或いは、上記自由回転部の内部に光源、この光源を駆動制御する光源駆動制御回路、検出器、この検出器を駆動及びこの検出器の出力信号を処理する検出器駆動回路及び信号処理回路を有するCT装置とする。さらに、上記自由回転部の内部に二次電池、回転部インターフェースを有し、上記回転部を取り囲む固定部の内周にこの回転部インターフェースとの間で信号又は電力の授受を行うホストインターフェースを有するCT装置とする。
【0010】
上記自由回転部の内部に少なくとも光源、該光源を駆動制御する光源駆動制御回路、二次電池を内蔵し、上記自由回転部の円環状の部分に沿って複数の誘導コイルを有し、かつ自由回転部の周囲を取り囲む固定部の内周に誘導コイルに対向する複数の永久磁石を有し、さらに誘導コイル、及び上記二次電池に接続した回生ブレーキ回路を有するCT装置とする。或いは、上記自由回転部の内部に少なくとも光源、該光源を駆動制御する光源駆動制御回路、二次電池を内蔵し、かつ自由回転部の外周に沿って複数の永久磁石を有し、自由回転部の周囲を取り囲む固定部の内周に上記永久磁石に対向する複数の誘導コイルを有し、この誘導コイルに接続した回生ブレーキ回路を上記固定部に有するCT装置とする。
【0011】
上記回生ブレーキ回路は、上記誘導コイルに接続したAC−DCコンバータ、このAC−DCコンバータに接続したキャパシタ、このキャパシタ或いは二次電池に接続したDC−DCコンバータからなるCT装置とする。好ましくは、上記DC−DCコンバータが双方向DC−DCコンバータであり、さらにこの双方向DC−DCコンバータの上記二次電池が接続されていない他の一端にDC−ACコンバータを接続したCT装置とする。好ましくは、上記回生ブレーキ回路に電気二重層キャパシタを設ける。
【0012】
上記ガントリの中空部に被検体を導き入れる寝台装置を有するCT装置とする。或いは、上記ガントリを載せる架台、架台上においてガントリを中心軸の方向に移動させる駆動部を有するCT装置とする。好ましくは、ガントリを中心軸方向に移動させるための駆動手段をガントリの内部に設ける。また、回転部を回転させる駆動モータをガントリの内部に設ける。或いは、架台の上部にクレードルを有し、かつクレードルに上記ホストインターフェースを有するCT装置とする。
【0013】
上記回転部の内部に光源、光源を駆動制御する光源駆動制御回路、これらを駆動するための二次電池を内蔵し、回転部に回転部インターフェースを有し、かつ固定部の内周に沿って検出器、検出器を駆動及び検出器の出力信号を処理する検出器駆動回路及び信号処理回路を有し、さらに回転部インターフェースとの間で信号又は電力の授受を行うホストインターフェースを有するCT装置とする。好ましくは、光源に対し、回転部の回転中心を挟んで対向する部分に、光源からの出射光を透過する開口部を設けたCT装置とする。
【0014】
回転部インターフェースとホストインターフェースが所定位置において機械的に接触することにより電気的に接続するようにする。或いは、回転部インターフェースとホストインターフェースが所定位置において互いに近接し非接触状態において電磁場の相互作用により電気的に接続する非接触インターフェースとする。
【0015】
ガントリが架台上を移動可能なCT装置であって、ガントリがクレードルに退避中において、カートリッジ構造の二次電池構造であり、かつクレードルのガントリ収納部にカートリッジホルダーを設けた構造とする。このカートリッジ構造の二次電池構がガントリ収納部に収納されるとカートリッジホルダーに結合する構造とする。ガントリ収納部から離れた後に二次電池がガントリ収納部に残り充電が行われる。さらにガントリの内部の二次電池を有しない第二の二次電池挿入スペースを有し、対向するクレードルのガントリ収納部内のカートリッジホルダーには充電済みの二次電池が第二のカートリッジホルダーに取り付けられた構造とする。ガントリがガントリ収納部に収納されたときに充電済みの二次電池をガントリ内の二次電池挿入スペースに挿入することができる。これにより、使用後の二次電池をクレードルに戻すと同時に、充電済みの二次電池をガントリに供給できる構造とする。
【0016】
好ましくは、二次電池にはリチウムイオン電池を用いる。また、画像メモリには大容量の半導体メモリ、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、或いはNAND型フラッシュメモリ等の半導体不揮発メモリを用いる。光源はX線光源、或いは近赤外(NIR)光源とする。好ましくは、光源がX線光源であって、X線光源における電子ビーム発生部をカーボンナノ構造体により形成する。検出器は、シリコン半導体検出器であって、かつシリコン半導体検出器にはAD変換回路が形成された構造とする。或いは、検出器を光電子増倍管型検出器、アバランシェホトダイオード(APD)型検出器、又はフォトンカウンティング型検出器のいずれかとする。好ましくは、検出器の上部に放射線遮蔽光ファイバープレート、或いは放射線遮蔽光ファイバープレートの上部にさらに放射線シンチレータを積層した構造とする。
【0017】
回生ブレーキを用いた場合の駆動方法であって、回転部の回転開始後、ガントリの移動を開始する。次に、X線照射による被検体の撮像が開始される。検出器アレーから得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリに記録される。撮像終了後、回転部の回転運動エネルギーが誘導コイルに逆起電力を生じさせ電気エネルギーとして回収し、キャパシタ又は二次電池を充電しつつ回転運動は減速する。ガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェースからホストインターフェースを介し画像メモリに記録されたデータが読み出される。並行して二次電池を充電し、一連のシーケンスが完了し待機状態となる。さらに好適には、ガントリの所定位置停止後、再度撮像開始時に、カートリッジ構造の使用済みの二次電池を切り離し、カートリッジ構造の既に充電済みの二次電池を装着するステップを加える。
【0018】
ラチェット構造を用いた場合の駆動方法であって、一方の回転部が他方の回転部にトルクが加わる方向に回転開始後、或いは同時にガントリ又は寝台の移動を開始する。次に、X線照射による撮像が開始される。検出器アレーから得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリに記録される。撮像終了後、一方の回転部(ドライブ回転部)の回転トルクを減少或いは停止すると、他方の回転部(自由回転部)は、一方の回転部との結合が解かれ空転する。他方の回転部内の回生ブレーキにより、回転運動エネルギーが誘導コイルに逆起電力を生じさせ電気エネルギーとして回収し、キャパシタ又は二次電池を充電しつつ他方の回転部の回転運動は減速する。他方の回転部の回転停止後、ガントリ又は寝台は所定位置に停止し、回転部インターフェースからホストインターフェースを介し画像メモリに記録されたデータが読み出される。また、並行して二次電池を充電し、一連のシーケンスが完了し待機状態となる。さらに好適には、ガントリ又は寝台の所定位置停止後、再度撮像開始時に、カートリッジ構造の使用済みの二次電池を切り離し、カートリッジ構造の既に充電済みの二次電池を装着するステップを加える。
【0019】
回転部の内部に組み込まれるX線発生部、検出器アレー、画像メモリ、二次電池をは脱着可能なカートリッジ構造とする。また、第一のX線発生部と第二のX線発生部、及びこれらに中心方向に対向する位置に第一の検出器アレー、及び第二の検出器を有する構造とする。第一の検出器アレーと第二の検出器アレーは、Z軸(体軸)方向にずれたシフト配置としてもよい。また、第一のX線発生部と第二のX線発生部は、同時にX線を照射しても或いは時間差を置いて照射してもよい。さらに、第一のX線発生部と第二のX線発生部は異なる管電圧(波長)とする。
【0020】
ガントリ又は寝台の体軸方向の移動、或いはガントリの撮像動作を制御する制御信号を無線通信により送受信する無線インターフェースを撮像装置の制御部と、少なくともガントリ、架台、寝台、或いはクレードルのいずれかに設ける。
【0021】
ガントリを2台架台上に搭載し、さらにクレードル部も2台有する構造とする。さらに、一方のクレードル部は、被験者及び寝台が通り抜けられるようにドーナツ形の中空構造とする。ガントリを複数台、例えばX線CT検査用ガントリとポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)検査用ガントリの組み合わせ、X線CT検査用ガントリと近赤外拡散光イメージング用ガントリを組み合わせた複合撮像装置とする。
【0022】
被験者、或いは測定対象物を載せ、又は保持するための寝台等の保持手段を架台と一体的に形成した構造とする。また、ガントリの体軸方向における移動を補助するためのガイドレールを架台に設ける。また、ガントリの移動中に被験者或いは被測定物がガントリに接触することを防止するための保護カバーをガントリの移動方向に沿って架台に設けた構造とする。好ましくは光源、検出器、画像メモリ、二次電池のいずれかが回転部から着脱可能なカートリッジ構造とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来、CT装置内部において生ずる回生抵抗に起因する発熱を抑制することが可能になる。加えて、回生抵抗により活用できなかった慣性モーメントを電気エネルギーとして回収することが可能になる。その結果、例えば、回転部内に内蔵した二次電池の小型化、充電時間の短縮、或いは充電後の撮影回数を増加させることができる。加えて、装置の小型・軽量化、及び低消費電力化が実現し、CT装置を設置するスペース、建物及び電源、空調設備等の建設コストを大幅に削減できるようになる。また、高感度の検出器を使用できるので、被験者の放射線被ばく量を低減することが容易になる。さらにスリップリングやブラシ等を不要にする構造により、定期的な部品交換やメンテナンス等の常時機器の性能を最適に保つための年間維持経費を大幅に削減できるようになる。また、病院内の手術室や入院病棟であっても、事故等で運び込まれた救急患者或いは重症患者等が検査等まで移動せずに医師がベッドサイドで迅速に初期診断と治療方針を決定することが容易になる。このようにCT装置の小型・軽量化、及び低消費電力化により、一般車両等により移動可能なCTを実現し、遠隔地や災害発生地域等における迅速かつ的確な初期診断にも寄与する。
【実施例】
【0025】
本発明では、ガントリ或いは寝台の移動方向、即ち「体軸方向」をZ軸、Z軸に垂直な面をX−Y平面と定義する。実施例に係るCT装置100(例えばX線CT装置)の、特にガントリの内部にある回転部分について、
図1を用いて説明する。
図1(a)は実施例に係る撮像装置100の特にガントリ内の回転部分をZ軸方向からみた平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)における破線部分39Rの構造を説明するための一部拡大図である。本実施例では、回転部が二つの部分(23−1と23−2)から構成され、一方の回転部(本図では23−1)には、タイミングベルト21が装着され、他方(本図では23−2)は、クラッチ構造の一種であるラチェット構造により回転部(23−1)と機械的に連動する構造となっている。そこで、本発明では、駆動モータ19にかけられたタイミングベルト21が装着された回転部(23−1)をドライブ回転部と呼び、他方の回転部(23−2)を自由回転部と呼ぶことにする。即ち、
図2(1)に示すように、回転部23−1の周囲には爪40が取り付けられており、回転部23−1が図面上、右回転すると回転部23−2の内周にある溝に引っ掛かり、トルクを伝達することができる。これに対し、回転部23−1が停止或いは左回転すると、爪40は回転部23−2の内周にある溝を乗り越えてトルクを伝達することができずに空転する。なお、ここで示した爪座ラチェット構造以外にも、ボールラチェット構造等、適宜最適な構造を選択することができる。ラチェット構造は、一般に、一方向にのみ動力が伝達されるが、その他のクラッチ構造では、必要に応じて動力の伝達方向を選択できる方式もある。後述するように、光源や検出器を搭載した回転部(23−2)の回転方向を正回転、及び逆回転させたい場合に有効である。
【0026】
図1(c)は、
図1(a)の回転部を中心軸1に対し反対方向から見た平面図である。自由回転部23−2には、検出器アレー31、検出器周辺回路33、検出器駆動制御回路41、光源25、光源駆動回路29が取り付けられている。自由回転部23−2の外周上にはリング状電極6S(スリップリングとも呼ばれる)があり、自由回転部23−2を取り囲む固定部24にはリング状電極6Sに接触する凸型接続端子4Sが取り付けられている。後述するように、スリップリング方式の代わりに、非接触方式による電力や信号の授受、或いは回転部の静止時に回転部と固定部の端子間において電気的に接続する方式であっても良い。
【0027】
図2(a)は、ガントリ5の内部の自由回転部23−2をZ軸方向からみた平面図であり、ドライブ回転部23−1は図示していない。
図2(b)及び
図2(c)は、
図2(a)における破線部分39の構造を説明するための一部拡大図である。回転部23−2には、X線発生部25、二次電池27、光源駆動回路29、検出器アレー31、信号増幅・アナログデジタル(AD)変換回路及び信号走査・制御回路等を含む検出器周辺回路33、検出器駆動制御回路41、非接触インターフェース2−2、及び図示していないデジタル信号処理回路とパラレルシリアル変換回路等を内蔵している。以下に説明するように、自由回転部23−2の内部又はガントリ内の固定部に回生ブレーキ回路50を内蔵し、かつ回転部23−2又は固定部24のいずれかの周囲に電磁誘導コイル、及び電磁誘導コイルに対向する永久磁石を有しており、この電磁誘導コイルに誘起される起電力を回収するのが回生ブレーキ回路50である。
【0028】
図2(b)の構造(39−1)は、例えば、固定部24の側に永久磁石(34−1)のN極とS極が交互にリング状に並んでいる。これに対し、自由回転部(23−2)側は、鉄心(32−1)に誘導コイル(36−1)が巻き付けられており、従って、回転部の内部に回生ブレーキ回路50を有している。他方、
図2(c)の構造(39−2)は、例えば、自由回転部(23−2)側に永久磁石(34−2)のN極とS極が交互にリング状に並んでいる。これに対し、固定部24の側は、鉄心(32−2)に誘導コイル(36−2)が巻き付けられているため、固定部24の側に回生ブレーキ回路50を設けてもよい。自由回転部23−2の内部における二次電池或いは後述する電気二重層キャパシタに電気エネルギーを蓄積するのであれば、
図2(b)の構造が好ましい。
図2(b)の構造の構造では、自由回転部23−2が後述するタイミングベルトを介し外部モータにより強制的に回転させられている場合にも誘導コイル(36−1)には起電力が生じるため、二次電池27を充電することが可能であり、上記の強制的な回転終了後も回転が止まるまで誘導コイル(36−1)に生じる回転エネルギーを二次電池或いは後述する電気二重層キャパシタに回収することができるからである。
【0029】
なお、永久磁石には、例えばネオジウム磁石を使うことができる。後述するように、撮影動作が終了すればガントリ内部の回転部の回転運動は不要であるが、機械的に停止或いは回生抵抗によるジュール熱放散に期待するまでもなく、自由回転部23−2の慣性モーメントを電気エネルギーに変換することができれば、省エネルギー効果が得られる。本実施例では、自由回転部23−2に光源その他部材を搭載し、ドライブ回転部23−1の質量を最小化することが可能であり、また自由回転部23−2の回転半径をドライブ回転部23−1の回転半径よりも大きくすることにより、より大きな慣性モーメントを回生ブレーキ回路50により電気エネルギーとして再利用することができる。CT装置においては、回転(撮像モード)と停止(待機モード)を頻繁に繰り返すので、自由回転部23−2の回転運動エネルギー回収効果は顕著であり、特に回転部の回転数を上昇させて高速スキャンを行う場合にはさらにその効果が高まる。
【0030】
本実施例における回生ブレーキ50について
図2(d)を用いて以下に説明する。本発明に係るCT装置は、回転部23−1、23−2の回転開始後に撮像動作に入り、撮像終了後にドライブ回転部23−1は早い段階で回転を停止するが、自由回転部23−2はその回転が徐々に減速する。既に説明したように、一度の撮像動作において回転開始と回転停止を短時間内に繰り返し行うので、自由回転部23−2の回転運動エネルギーを有効に活用することは二次電池の消耗を軽減し、省エネルギーにも貢献する。
図2(d)は回生ブレーキ50を説明するため回路構成図である。二次電池27には双方向DC−DCコンバータ42の一端が接続されている。さらに、DC−ACコンバータを介し、誘導コイル36に接続している。他方、誘導コイル36からはAC−DCコンバータを介しキャパシタ、好適には電気二重層キャパシタ44につながり、さらに双方向DC−DCコンバータ42につながっている。回転部23の回転運動エネルギーを誘導コイル36に発生した逆起電力に変換し、電気二重層キャパシタ44を充電する。また、双方向DC−DCコンバータ42を介し二次電池27を充電することもできる。
【0031】
一般に、キャパシタのエネルギー回収効率は90%以上であり、二次電池充電時のエネルギー回収効率60%前後に比べると高効率である。特に、本実施例のように回転部23が減速し(回収し)、すぐにまた回転部23を回転(放電)させる場合などに好適である。なお、双方向DC−DCコンバータ42には、降圧チョッパ回路と昇圧チョッパ回路を組み合わせた回路方式、或いはDSP(Digital Signal Processor)とADコンバータを用いたPWM(Pulse Width Modulation)方式等を用いることができる。なお、本構成の場合、回転部23の内部に有する二次電池27を電源として交流電圧を発生させ電磁誘導コイル36−1に印加し回転部23を回転させる場合は、回転部23を回転子、ガントリ5の固定部側を固定子とするダイレクトドライブ(DD)モータとして用いることも可能である。
【0032】
図3を用いて、CT装置200の回転部23の内部構造、特に電気回路部分について詳しく説明する。既に(
図2(a))において説明したように、自由回転部23−2の内部には、前述の回生ブレーキ回路50に加え、光源、例えばX線発生部25、高電圧制御回路29、検出器アレー31、検出器周辺回路33、検出器駆動制御回路41、後述するデジタル信号処理回路、画像メモリ35、二次電池27、回転部インターフェース2−2を有する。回転部インターフェース2−2は、非接触インターフェースであっても、導電性の電極による電気的接点であってもよい。X線発生部25から出射されたX線ビーム26が寝台3に載せられた被験者を透過し、検出器アレー31に到達する。なお、回転部23−1,23−2の回転時における重量バランスを調整する重量バランス調整部を設けてもよい。好適には、X線発生部25にカーボンナノチューブ(CNT)等のカーボンナノ材料を電界電子放出源とするX線発生装置を用いてもよい。カーボンナノ材料を冷陰極材料として用いているので、予熱が不要であり従来のX線管を用いた場合に比べ、小型・低消費電力化が可能になり、高電圧制御回路29の小型化や冷却ファンの小型化或いは冷却ファンそのものを不要にできるからである。なお、本実施例では、自由回転部23−2の内部に検出器アレー31が内蔵されている構造について説明したが、後述するように、検出器アレー31が自由回転部23−2の内部ではなく、回転部23を取り巻く固定部24の内周部の全周に亘って配置した構造であってもよい(
図4等)。この場合には、検出器周辺回路の一部、画像メモリ、ホストインターフェース等がガントリ内の固定部に配置される。
【0033】
図3(a)は自由回転部23−2の内部、特に検出器31とその周辺回路33を説明するための回路ブロック図である。
図3(a)における周辺回路33には、検出器駆動制御回路41、信号増幅・アナログデジタル(AD)変換回路43、信号走査・制御回路45、デジタル信号処理回路47、パラレルシリアル変換回路49等を含んでいる。図示するように、検出器アレー31には、複数の検出器ユニット30が円弧状に、或いはスライス数を増やすためにZ軸方向にも規則的に並んでいる。検出器ユニット30には、従来のTFT型の検出器に加え、例えば、小型の電子増倍型検出器(例えば、浜松ホトニクス社製「マイクロPMT素子」等)やアバランシェ効果(APD)を利用した増幅型検出器、フォトンカウンティング型検出器等を用いることができる。また、アナログデジタル(AD)変換回路をオンチップ化したCMOS型或いはCCD型検出器を使用することができ、高速かつ低ノイズの読み出しが実現する。或いは、複数の検出器アレーの位置合わせ精度が高く、軽量化が容易なCMOS型検出器を使用することもできる(例えば、特許文献2)。これらの検出器ユニットは高感度、或いは低ノイズであるため、X線照射(被ばく)量を減少させ、或いは短時間パルス照射によるZ軸方向の高速走査が容易になる。また、後述するように、X線照射面積を拡大する必要がなければ、X線発生部に必要な高電圧電流を増大させることもない。また回転部23−1、23−2のZ軸方向の薄型化による軽量化に加え、特に電界電子放出源として使用するカーボンナノ材料の安定性や耐久性を向上させることもできる。
【0034】
検出器アレー31から出力される検出器信号は、信号増幅・AD変換回路43によりデジタルデータ(例えば16ビット)に変換され、信号走査・制御回路45を経由してデジタル信号処理回路47に送られ必要な画像処理が加えられる。デジタル信号処理回路47から送られた画像データを直接記録するために回転部23の内部に画像メモリ35を内蔵している。パラレルシリアル変換せずにバスライン38を介し直接画像メモリ35にパラレル記録することができるので、高速書き込みが可能になる。画像メモリ35には、磁気記録媒体も使用できるが、記録速度、及び信頼性の観点から、DRAMやNAND形フラッシュメモリ等の半導体メモリが好適である。他方、撮像終了後であって、回転部23−2の回転停止後に画像データを画像メモリ35から読み出す場合には、撮像時と異なりリアルタイムで読み出す必要がないので、パラレルシリアル変換回路49により、シリアルデータとして、回転部インターフェース2−2に出力すれば良い。シリアル化することにより、ホストインターフェース2−1における端子数を減らせる効果も有する。ホストインターフェース2−1と回転部インターフェース2−2からなる電気的接続手段においては、自由回転部23−2の回転部インターフェース2−2の内部に複数のコネクタがあり、その形状が凹状の受け構造である(凹型接続端子6)。他方、ホストインターフェース2−1の側には凸型接続端子4が同数あり、接続端子4を凹型接続端子6に挿入することにより電気的接続が可能になる。従来の動的機械的(摺動)接点であるスリップリングを使用した場合とは異なり、自由回転部23−2の静止時おいて内部に記録・蓄積した画像データを回転部インターフェース2−2からホストインターフェース2−1に読み出す。そのため、スリップリング使用時の弊害を解消でき、かつ自由回転部23−2の高速回転、例えば毎秒5回転以上の高速回転も容易になる。このように、回転部23−1,23−2の回転速度の高速化により、体軸(Z軸)方向におけるスキャン速度を高速化できるため、スライス数を増やすことなくX線被ばく量を軽減することができる。
【0035】
図3(b)は自由回転部23−2の内部にあるX線発生部25と光源駆動回路29を説明するためのブロック図である。X線発生部25は、カーボンナノ材料電子ビーム発生冷陰極25Cと陽極ターゲット25Aから構成されている。光源駆動回路29は、電圧昇圧回路29−1と高電圧制御回路29−2から構成されている。好適には、光源駆動回路29は、スイッチング電源及びパワー半導体を用いることにより、トランスレスの小型・軽量・低消費電力の高電圧電源部とする。二次電池27には、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。このように、リチウムイオン電池27の直流電圧を光源駆動回路29により昇圧し、かつタイミングコントロールされた高電圧パルスをX線発生部25に印加することができる。なお、リチウムイオン電池27は、図示していない電池残量検知回路及び充電回路により、回転部23の静止時において回転部インターフェース2−2とホストインターフェース2−1を介し充電される。
【0036】
図3(c)は
図2に示したラチェット構造を用いたCT装置(200)場合の駆動方法を説明するためのフローチャートである。図示するように、ドライブ回転部23−1が自由回転部23−2にトルクが加わる方向に回転を開始し、その後或いは同時に寝台又はガントリの移動を開始する。次に、X線照射による撮像が開始される。検出器アレーから得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリに記録される。後述するように、デジタルデータは、パラレルシリアル変換するまでもなく、パラレルデータのまま画像メモリに記録することができる。撮像終了後、ドライブ回転部23−1の回転トルクを減少或いは停止すると、自由回転部23−2は、ドライブ回転部23−1との結合が解かれ空転する。自由回転部23−2の内部には、回生ブレーキ回路50があるため、既に説明したように、回転運動エネルギーが誘導コイルに逆起電力を生じさせ電気エネルギーとして回収し、キャパシタ又は二次電池を充電しつつ自由回転部23−2の回転運動は減速する。最終的にガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェースからホストインターフェースを介し画像メモリに記録されたデータが読み出され、図示していない操作・制御部において画像の再構成処理後、モニター上に撮影情報が表示される。また、並行して二次電池を充電し、一連のシーケンスが完了し待機状態となる。なお、図示していないが、後述するように、上記のガントリが所定位置に停止し、再度撮像開始時(フローチャートの最初のステップ)に戻るときに、使用済みの二次電池を切り離し、既に充電済みの二次電池を装着するステップを加えることもできる。
【0037】
図4(a)は実施例に係るCT装置300の、特にガントリ内の構造をZ軸方向からみた平面図であり、同図(b)はガントリ部のX軸又はY軸方向から見た断面図である。
図4(a)に示すように、本実施例では、自由回転部23−2の内部にX線光源部25m、二次電池27m、高電圧制御回路29m、前述の回生ブレーキ回路50等を内蔵し、他方、円環状の固定部24の内部には全円周上に取り付けられた多数の検出器ユニット30を内蔵している。固定部24は、ガントリの外周部5−2に固定されている。また、ドライブ回転部23−1を回転させるためのモータ19、タイミングベルト21が破線で図示されている。本構造は、所謂ニューテット・ローテート方式のCT装置と類似しているが、回転部23−1、23−2の高速回転により、検出器30或いは検出器ユニットの体(Z)軸方向のユニット数、或いは画素数の拡大要求が厳しくないため、回転部23−1、23−2の回転時に固定部24をX線ビームに対し退避しない場合であっても再構成画像におけるアーチファクト等の悪影響が生じ難い。なお、X線光源部25m、二次電池27m、高電圧制御回路29m、画像メモリ35m、検出器駆動制御回路41mは着脱が容易なカートリッジ構造であるため、稼働率の改善、撮像時間の延長、メンテナンス負荷の軽減等が実現する。
【0038】
図4(b)を用いさらに詳しく説明する。ガントリ5−2の内部には、固定部24及び自由回転部23−2が図示されている。自由回転部23−2の内部に取り付けられたX線発生部25mの配置は、図示するように、検出器ユニット30に対し、Z軸に対し右方向にオフセットしている。さらにX線出射方向は、Z軸に対し垂直方向ではなく、対向する位置にある検出器ユニット30に照射するようにZ軸方向に傾斜するように角度が付けられている。従来、Z軸(体軸)方向における検出器ユニット30の数が増大すると、Z軸方向における検出器ユニット30のZ軸方向の位置により、X線の入射角度の差が大きくなる。しかし、本発明では回転部23−2の回転数を増大し、ガントリのZ軸方向の移動速度を高速化することが容易なため、検出器ユニット30のZ軸(体軸)方向の幅或いは個数を少なくすることが容易になった。
【0039】
図4(c)は、上記実施例の変形例に係るCT装置310の、特にガントリ5−2の内部構造を説明するための断面図である。ガントリ5−2の内部には、固定部24及び自由回転部23−2が図示されている。
図4(b)に示した構造と異なる点は、X線光源25mを内蔵する回転部23−2の直径が、固定部の24の内周部の直径よりも小さく、従って、X線光源25mから発したX線が固定部24に妨げられずに検出器30に到達する。本構造は、所謂ステーショナリー・ローテート方式のCT装置と類似しているが、従来の構造、例えば、ブラシからスリップリングに対し高速かつ滑らせながら大きな電流を流すと、接触面が発熱し焼き付きの原因となるばかりでなく、スパーク等による発光現象により検出器30が誤った光電変換を行うため、特に高速スキャン(撮像)には適さない構造である。本構造では、X線光源25mの回転中心の中心軸を挟んで対向する部分の自由回転部23−2が、X線光源25mから発したX線の光路上にあるため何らかの影響を与える可能性がある。
【0040】
この課題を解決した構造について、
図5を用い以下に説明する。
図5(a)は、実施例に係るCT装置400の、特にガントリ内の構造を説明するZ軸方向からみた平面図である。上述の通り、自由回転部23−2の外周を取り巻くように固定部24が組み合わされている。固定部24の内周には、図示していない検出器が全周にわたって配置されている。自由回転部23−2には、X線発生部25mと図示していない光源駆動回路や二次電池等を内蔵している。自由回転部23−2には、破線で示す開口部28が形成されており、X線ビーム26の強度や進行方向に及ぼす影響を軽減している。開口部28は、必ずしもすべての部材を取り除いた状態(空気のみ)である必要はなく、例えば、X線透過率の高い樹脂製の保護カバーが残されていてもよい。
図5(b)は、ガントリ内の構造をX軸又はY軸方向から開口部28を見た場合の断面図である。固定部24の内周に沿って検出器30が配置され、開口部28を通過したX線ビームが検出器30に到達する。なお、検出器30の上方にX線を遮蔽するファイバーオプティックプレート或いはX線シンチレータ等を積層しても良い。
【0041】
図5(c)は、
図5(a)における破線部Bの構造を説明するためのZ軸方向から見た拡大図である。固定部24の環状部に沿って、検出器30の長手方向がZ軸に平行になるように密接に並べられている。
図5(d)は、同じ部位をX線発生部25mの方から開口部28を見たときの平面図である。自由回転部23−2に形成された開口部28により、固定部24に取り付けられた複数の検出器30の受光面、或いは画素アレーがX線による露光を可能にしている。
【0042】
実施例に係るCT装置500をX軸方向から見た側面図を
図6(a)に示す。CT装置500は、寝台3−1、及びこれを支えかつ移動させる寝台移動支持部(3−2)、と円環状の空洞部有するガントリ5から構成されている。既に説明したように、ガントリ5の内部には回転可能な回転部23−1(図示せず)、23−2があり、その回転中心軸1はZ軸、即ち体軸方向に平行である。回転部23−2の周囲には固定部24がボールベアリング等(図示せず)を介し組み合わされている。また、回転部23−2の内部には既に説明したように、回生ブレーキ回路50を内蔵している。回転部23−2と固定部24との間における破線で囲まれた部分Aについて以下に説明する。なお、図示していないを操作・制御部及び表示(モニター)部があり、画像描出回路及びソフトウエア等により再構成された断層像等がモニター上に表示される。
【0043】
図6(b)は、CT装置500をZ軸方向から見た平面図である。ガントリ5の円環状の部分の内部には、回転中心軸1の周囲を回転する回転部23−1,23−2がベアリングを介し取り付けられている。さらにドライブ回転部23−1を回転させるためのタイミングベルト21と回転部駆動モータ19が取り付けられている。
図6(c)は、
図6(a)における要部Aの拡大図であり、自由回転部23−2の側面部には、金属電極からなる回転部インターフェース6−1が形成されている。回転部インターフェース6−1は、凸型接続端子4からなるホストインターフェースと対向する位置にあるので、回転部23の静止時において互いに接触することにより電気的に接続することができる。なお、好適には凸型接続端子4と回転部インターフェース6−1が対向する位置で停止するようにするため、ホール素子等を用いた位置センサ等(図示せず)を使用することができる。或いは、回転部インターフェース6−1を回転部23−2の側面の円環状全周にわたりリング状に形成すれば、回転部23−2の静止位置によらず電気的接続が可能である。
【0044】
実施例に係るCT装置600について、
図7を用いて以下に説明する。
図7(a)は、CT装置600をX軸方向から見た側面図である。CT装置600は、架台7、及びこれを支える架台支持部(9−1、9−2)、その上部にZ軸方向に移動可能なガントリ5が載せられた構造からなる。ガントリ5の内部には回転可能な回転部23−1,23−2があり、その回転中心軸1が図示されている。なお、図示していないを操作・制御部及び表示(モニター)部があり、画像描出回路及びソフトウエア等により再構成された断層像等がモニター上に表示される。ガントリ5をZ軸方向に移動させるための駆動部及び車輪15を内蔵したガントリ移動台車11がガントリ5の下部に取り付けられている。また、以下に詳述するように、ガントリ内の回転部23−2と架台7との間において電気信号又は電力の授受を行う電気的接続手段が架台の上部(2−1)とガントリ内の回転部側(図示せず)に有する。被験者その他の測定対象物を載せるために寝台3がガントリ5の中空部内をZ軸方向に挿入されている。撮影中はガントリ5のみがZ軸方向に移動し、被験者は寝台3と共に寝台3の上で静止しているので、堅牢かつ精密な被験者移動制御手段は不要である。そのため、CT装置600自体の軽量化が可能になる。後述するように、ガントリの体軸(Z軸)方向における走査速度を高速化しても、被験者の身体的・精神的負荷や不安を回避できる効果も有する。
【0045】
図7(b)は、CT装置600をY軸方向から見た平面図である。ガントリ5が架台7の上を移動するためにガントリ移動用レール13が架台7の上部に2本設けられている。ガントリ移動用レール13及び車輪15が金属等の導電性材料であれば、ガントリ移動台車11の内部にある駆動用モータ17に電力を供給し、或いはガントリ移動台車11との間において制御信号等の授受が可能になる。上述の如く、ガントリ内の回転部23−2と架台7との間において電気信号又は電力の授受を行う電気的接続手段であるホストインターフェース2−1を架台の上部、即ちガントリ5の移動範囲の終点にある所定位置に配置している。本実施例では、寝台3が架台支持部9−1、及び9−2の上部に取り付けられているが、取り外すことも容易である。そのため、寝台3の代わりに他の形状の被験者保持手段を用いても良い。また、寝台3を取り除いて、ガントリ3を架台7から取り外すことも容易であるため、ガントリ5のメンテナンスや交換にも好都合であり、さらに異なる撮像特性、例えば、光源エネルギー(波長)の異なる光源を搭載したガントリに取り換えることも容易になる。
【0046】
図7(c)は、CT装置600をZ軸方向から見た平面図である。ガントリ5の内部には、回転中心軸1の周囲を回転する回転部23−1,23−2がベアリング(図示せず)等を介し取り付けられている。さらにドライブ回転部23−1(図示せず)を回転させるためのタイミングベルト21がガントリ移動台車11の内部にあるガントリ回転部駆動モータ19に取り付けられている。回転部23−2の内部には既に説明したように、回生ブレーキ回路50を内蔵している。また、回転部23−2は、回転部インターフェース2−2を有しているので、回転部23−2の静止時においてホストインターフェース2−1と対向する位置において電気的に接続することができる。なお、好適にはホストインターフェース2−1と回転部インターフェース2−2が対向する位置で停止するようにするため、ホール素子等を用いた位置センサ等(図示せず)を使用することができる。また、ガントリ5をZ軸方向に移動させるためのガントリ移動台車駆動モータ17をガントリ移動台車11の内部に有している。駆動のための電源は、既に説明したように、ガントリ移動用レール13から供給することもできるが、ガントリ移動台車11の内部に二次電池を内蔵することもできる。
【0047】
また、ガントリ5をZ軸方向に移動させるための移動手段として、後述するように(
図8(a)等)、架台支持部9−1或いは9−2側からけん引する構造であってもよい。本構造により、ガントリ内の回転部23の回転手段を移動可能なガントリ移動台車11等に配置したので、従来と異なり、ガントリ部を撮像装置本体に固定させる必要が無く、ガントリ部の移動、取り外し等が容易になる。なお、回転部23の構造については既に他の実施例において詳しく説明したので省略する。本実施例においても、回転部23−2の内部に検出器アレー31が内蔵されている構造について説明したが、検出器アレー31が回転部23−2の内部ではなく、回転部23−1,23−2を取り巻くガントリ5の内周部の全周に亘って配置した構造であってもよい。
【0048】
図8(a)は、実施例に係るCT装置700のX軸方向からみた側面図である。既に説明した実施例と異なる部分について以下に詳述する。
図8(a)に示すように、CT装置700には、架台7からY軸方向に直立する部分9−3があり、これをクレードルと呼ぶ。クレードル9−3は、ガントリ5を待機させるスペース(破線部37)があり、ガントリ5の回転部23−2の回転部インターフェース2−2が非接触のインターフェース構造12から構成され、ホストインターフェース2ー1が非接触のインターフェース構造10から構成されている。これらは互いに対向して近接した状態で非接触の給電、即ち回転部23−2の内部のリチウムイオン電池への充電、及び回転部23−2とホスト側との間でデータや信号の授受を行う。回転部インターフェース側の12とホストインターフェース側の10が互いに回転中心軸1の方向に近接し対向する構造を例示している。本構造により、ガントリ5がZ軸方向に移動する方向において非接触インターフェース12が非接触のインターフェース10に近接することができる。ガントリ5の内部には回転部23−2があり、回転中心軸1の周囲を回転するが、その駆動方法は
図7(c)において説明した構造と同様に、回転部回転モータ19、及びタイミングベルト21(図示せず)による回転である。回転部23−2の内部には既に説明したように、回生ブレーキ回路50を内蔵している。後述するように、回転部23−2を回転子、これを取り囲むガントリ5の内周を固定子とするダイレクトドライブ(DD)モータ構造としても良い。また、ガントリ移動用レール13から給電されない場合は、ガントリ内に二次電池(図示せず)を内蔵することもできる。他方、架台支持部9−1又はクレードル9−3、及び架台7の内部に設けたガントリけん引モータ14、及びガントリけん引ベルト8によりガントリ5を体軸(Z軸)方向に移動させる実施例を開示している。
【0049】
クレードル9−3のガントリ収納部37の内部には、上記の非接触ホストインターフェース10以外に、試料保持部20が設けられている。試料とは、例えば、回転部23−2の内部の検出器や光源部が正常に機能しているか否かを事前にテストするための被測定物であって標準サンプル、或いはファントムと呼ばれるものである。また、クレードル内に回転部23−2の検査或いは校正を目的とする検査プローブ(図示せず)を設けても良い。さらに、例えば、収納部37の内部には、ガントリ5の内部の温度を下げるため、冷却ガス、例えば、空気や窒素ガスの供給口16があり、他方、回転部23−2には供給口16と嵌合する開口部18が設けられている。このように、クレードル9−3には、ガントリの安定駆動、或いは安全性や性能等の維持管理に必要な機能を付加することができる
【0050】
図8(b)は非接触インターフェース部(10及び12)における電磁誘導方式のワイヤレス給電に係る回路構成の一例を説明するためのブロック図である。図示するように、ホストインターフェース側(10)の回路構成は、商用電源を直流に変換するAC/DCコンバータ、高周波の方形波を出力する高周波インバータ、これを正弦波に変換する波形変換回路、安全確保のための絶縁トランス等を介し一次コイルL1につながっている。他方、二次コイルL2は、高周波を直流に戻す整流平滑回路、逆流素ダイオード等を介し、負荷、例えば二次電池等に接続している。他方、制御信号或いは画像データ等の送受信には、例えば、近接場磁界結合にもとづくワイヤレス通信方式(図示せず)を使用する。データ転送速度をギガ(G)ビット/秒程度の高速化が可能だからである。なお、上記ワイヤレス給電とワイヤレス通信を同一のコイル、或いはアンテナを使用して行う方式であってもよい。
【0051】
図8(c)、(d)は、さらに上記実施例の変形例に係るガントリ部5とクレードル9−4の構造を説明するための断面図である。即ち、ガントリ部5がクレードル部に退避している状態において、ガントリ内の二次電池の見かけ上の充電時間を短縮することが可能な構造を開示するものである。
図8(c)に示すように二次電池は、後述するように(
図10(a)等)、カートリッジ構造の二次電池27mであり、挿入スペース27fに挿入されている。他方、クレードル9−4のガントリ収納部37には、カートリッジホルダー22が設けられており、ガントリ5がガントリ収納部37に収納されると二次電池27mがカートリッジホルダー22に結合する。その後、ガントリ5がガントリ収納部37から離れる時に二次電池27mがガントリ収納部37に残り、充電が行われる。
図8(d)は、
図8(c)を90度回転した場合の断面図であり、ガントリ部5の内部の第二の二次電池挿入スペース27fには二次電池27mが挿入されておらず、他方、クレードル9−4のガントリ収納部37の内部のカートリッジホルダー22には充電済みの二次電池27mが取り付けられている。そのため、ガントリ5がガントリ収納部37に収納されたときに充電済みの二次電池27mをガントリ内の二次電池挿入スペース27fに挿入することができる。言い換えると、使用後の二次電池27mをクレードル9−4に戻すと同時に、充電済みの二次電池27mをガントリ5に供給することにより、二次電池27mの充電完了を待たずに、ガントリ部5が次の撮像動作を開始できる。その結果、二次電池の見かけ上の充電時間を短縮でき、検査に要する時間を短縮し装置の稼働効率を向上させることができる。
【0052】
図9(a)は、本実施例に係るCT装置の他の駆動方法を説明するためのフローチャートである。図示するように、寝台又はガントリの移動及び回転部の回転開始後、X線照射による撮像が開始される。この場合、ガントリを所定位置まで、或いは寝台を移動させた後に、回転部の回転を開始する方法と、回転部の回転を開始し所定の回転数に達した後に寝台又はガントリの移動を開始する方法がある。また、破線矢印で示すように、ガントリ、或いは寝台のZ軸(正)方向の移動による撮像を終了後に、ガントリ、或いは寝台の移動方向を反転させZ軸(負)方向の移動による撮像を行う撮像方法が考えられる。さらに、寝台又はガントリ移動方向の反転時に、回転部の回転方向を反転させる方法と回転部の回転方向を変えない方法(正転)がある。
【0053】
図9(b)は、寝台又はガントリのZ軸方向の移動及び回転部の回転に伴うX線ビームの螺旋状の移動軌跡を説明するための斜視図である。これに、回転部(23−1,23−2)の回転の回転方向を加えた軌跡が
図9(c)、及び(d)である。たたし、図面の簡略化のため、三次元的な斜視図ではなく、二次元的な模式図である。破線部はいずれもガントリの移動方向を反転させた場合の軌跡である。
図9(c)の場合は、回転部の回転も反転させているので、互いの軌跡の間を補完するような軌跡になっている。これに対し、
図9(d)の場合は、回転部23の回転方向を反転していないので、互いの軌跡が交差している。いずれが好ましいかは、画像の再構成アルゴリズム、或いは所謂、アーチファクトの出現状況により最適な方法を選択することができる。すでに説明したように、検出器アレー31から得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリ35に記録される。
図3(b)に示したように、デジタルデータは、パラレルシリアル変換するまでもなく、パラレルデータのまま画像メモリに35に記録することができる。撮像終了後、ガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェース2−2からホストインターフェース2−1を介し画像メモリ35に記録されたデータが読み出され、操作・制御部(図示せず)において画像の再構成処理後、モニター上に表示される。また、並行してリチウムイオン電池27を充電し、一連の駆動シーケンスを完了し待機状態となる。
【0054】
図10(a)、及び(b)は、実施例に係る撮像装置800のガントリ部分を説明するためのX方向、及びZ軸方向からみた断面図(a)と平面図(b)である。
図10(a)は、特に回転部23−2をX軸方向からみた断面図である。回転部23−2の内部に組み込まれる構成要素であるX線発生部25mは、ターゲット部材の劣化や電子ビーム発生冷陰極材料、本実施例ではカーボンナノ材料の消耗等により、使用頻度に応じた交換が必要である。同様に、検出器アレー31mも、使用する半導体部品等の放射線損傷、或いは積層するX線シンチレータ材料の湿度依存性などの理由から交換が必要になる場合がある。そこで本実施例では、カートリッジ構造のX線発生部25mと検出器アレー31mにより、回転部23−2から脱着可能とした。図示するように、回転部23−2にはカートリッジ構造のX線発生部25mと検出器アレー31mが挿入されるスペース25fと31f(いずれも破線部)が形成されている。カートリッジ構造は、X線発生部と検出器アレーに限定されず、既に説明したように記録容量増大に対応するため画像メモリ35、或いは二次電池27をカートリッジ構造とすることもできる。
【0055】
図10(b)は、実施例に係るCT装置800の回転部23−2をZ軸方向から見た平面図である。回転部23−2の内部には既に説明したように、回生ブレーキ回路50を内蔵している。本実施例では、カートリッジ構造の二次電池27mに加え、第一のX線発生部25と第二のX線発生部25−2、及びこれらに中心軸1を介し対向する位置に第一の検出器アレー31、及び第二の検出器アレー31−2を有する。検出器アレー31と検出器アレー31−2は、Z軸方向にずれた位置に、即ちシフトさせて配置してもよい。また、X線発生部25とX線発生部25−2は、同時にX線を照射しても時間差を置いて照射してもよい。さらに、X線発生部25とX線発生部25−2には異なる管電圧(波長)を印加し、マルチ分光解析を行うことができる。
【0056】
図10(c)は、他の実施例に係る撮像装置900のX軸方向から見た側面図である。本実施例では、ガントリ部が2台(ガントリ5とガントリ5−2)架台7上に搭載されている。さらに、クレードル部も2台(9−3と9−4)有しており、特にクレードル9−4は、被験者及び寝台(図示せず)が通り抜けられるようにドーナツ形の中空構造になっている。ガントリを複数台、例えばX線CT検査用ガントリとPET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)検査用ガントリの組み合わせや、X線CT検査用ガントリと近赤外拡散光イメージング用ガントリの組み合わせのように、異なる検査を一台の撮像装置で実現することが可能になる。さらに、ガントリの移動中に被験者或いは被測定物がガントリに接触することを防止するための保護カバー51をガントリの移動方向に沿って架台に設けた構造となっている。また、複数のガントリ部は、個々に駆動する場合、或いは互いに連動して駆動させることもできる。なお好適には、ガントリ部が体軸方向に移動中に回転部或いはガントリ部から出力される信号、例えば、被験者の透視画像をモニターできるようにするため、無線通信インターフェースをガントリ部又は回転部と操作・制御部との間に有する構造としても良い。
【課題】CT装置における消費電力の削減を削減し、さらに内部発熱に起因する温度上昇を抑制し、さらに装置本体の小型、軽量化によりCT装置の移動や設置を容易にし、遠隔地や病院外における医療サービスの普及と充実を図る。
【解決手段】ガントリ内の回転部を、クラッチ構造を介した二つの回転部(ドライブ回転部と自由回転部)から構成し、光源、検出器等を自由回転部に搭載する。撮影終了後、ドライブ回転部から自由回転部を開放することにより、ドライブ回転部にタイミングベルトを介し連結した駆動モータに発生する起電力を抑制する。さらに、自由回転部の慣性モーメントを回生ブレーキ回路により電気エネルギーに変換し再利用する。