(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記感熱素子及びリード部材の接合部を一対の絶縁性フィルムで両面から挟んで封止した状態での総厚寸法は、230μm以下あることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ。
前記絶縁性フィルムにおける前記基材層の少なくとも内側の面に前記熱融着層が形成されて介在していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の温度センサ。
前記感熱素子における電極層は、高融点金属を主成分とする活性層と、この活性層上に形成された高融点金属を主成分とするバリア層と、このバリア層上に形成された低融点金属を主成分とする接合層とから構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の温度センサ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る温度センサについて
図1乃至
図20を参照して説明する。なお、各図では、各部材を認識可能な大きさとするために、説明上、各部材の縮尺を適宜変更している。また、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
[第1の実施形態]
【0011】
第1の実施形態について
図1乃至
図16を参照して説明する。
図1は感熱素子が絶縁性フィルムにより絶縁被覆されている温度センサの状態を示し、
図2及び
図3は感熱素子を示し、
図4乃至
図8は感熱素子を絶縁性フィルムにより絶縁被覆する状態を示している。
図9は感熱素子とリード部材との接合状態を示す変形例であり、
図10及び
図11は感熱素子の別の実施形態を示している。また、
図12乃至
図14は温度センサを示し、
図15及び
図16は温度センサの製造方法を示している。
本実施形態の温度センサは、
図1に示すように感熱素子10、リード部材20及び絶縁性フィルム30を備えている。
【0012】
図2及び
図3を併せて参照して示すように、感熱素子10は、表面実装型のものであり、絶縁性基板11と、電極部として一対の電極層12a、12bと、感熱膜13と、保護膜14とを有している。
【0013】
感熱素子10は、感熱抵抗素子であり、具体的には薄膜サーミスタである。感熱素子10は、略直方体形状に形成されており、横の寸法が1.0mm、縦の寸法が0.5mmであり、総厚寸法が100μmである。形状及び寸法は、特段制限されるものではなく、用途に応じて適宜選定することができるが薄型小型化されている。
【0014】
絶縁性基板11は、略長方形状をなしていて、絶縁性のジルコニア、窒化ケイ素、アルミナ又はこれらの少なくとも1種の混合物等のセラミック材料を用いて形成されている。この絶縁性基板11は厚み寸法が100μm以下、好ましくは、50μm以下に薄型化されて形成されている。また、絶縁性基板11の曲げ強度は690MPa以上であり、セラミック材料の焼成後の平均粒径は0.1μm〜2μmとなっている。このように平均粒径の範囲を設定することにより、690MPa以上の曲げ強度を確保することができ、薄型化された絶縁性基板11の作製時における割れを抑制することが可能となる。また、絶縁性基板11の厚み寸法が薄いため熱容量を少なくすることができる。
【0015】
一対の電極層12a、12bは、絶縁性基板11上に形成されており、感熱膜13が電気的に接続される部分であり、所定の間隔を有して対向するように配置されている。詳しくは、一対の電極層12a、12bは、金属薄膜をスパッタリング法等の薄膜形成技術によって厚み寸法1μm以下に成膜して形成されるものであり、その金属材料には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属やこれらの合金、例えば、Ag−Pd合金等が適用される。
【0016】
なお、一対の電極層12a、12bは、後述するリード部材が溶接により接合される部分であり、低融点金属として金(Au:融点1064℃)、銀(Ag:融点961℃)、銅(Cu:融点1085℃)又はこれらの少なくとも1種を主成分として含む合金を用いるのが好ましい。また、電極層12a、12bは、本実施形態においては、感熱膜13の膜下に形成しているが、感熱膜13の膜上又は膜中に形成してもよい。
【0017】
感熱膜13は、感熱薄膜であり、負の温度係数を有する酸化物半導体からなるサーミスタの薄膜である。感熱膜13は、前記電極層12a及び12bの上に、スパッタリング法等の薄膜形成技術によって成膜して電極層12a及び12bを跨ぐように形成され、電極層12a及び12bと電気的に接続されている。
【0018】
感熱膜13は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等の遷移金属元素の中から選ばれる2種又はそれ以上の元素から構成され、スピネル型結晶構造を有する複合金属酸化物を主成分として含むサーミスタ材料で構成される。また、特性向上等のために副成分が含有されていてもよい。主成分、副成分の組成及び含有量は、所望の特性に応じて適宜決定することができる。
【0019】
保護膜14は、感熱膜13が形成された領域を覆うとともに、前記電極層12a、12bの少なくとも一部が露出するように露出部121a、121bを形成して電極層12a、12bを覆っている。保護膜14は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等をスパッタリング法等の薄膜形成技術によって成膜して形成したり、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス及びホウケイ酸鉛ガラス等を印刷法によって形成したりすることができる。
【0020】
以上のような感熱素子10には、一対のリード部材20a、20bが溶接により接合されて電気的に接続されている。リード部材20a、20bは、化学エッチングやプレス等の手段で形成された弾性を有する弾性体であって、板状の薄い細幅の金属板であり、リードフレームである。また、リード部材20の厚さ寸法は100μm以下、好ましくは30μm程度である。
【0021】
詳しくは、リード部材20a、20bは、接合部21a、21bと、この接合部21a、21bから一体的に延出されるリード部22a、22bとを有して形成されている。接合部21a、21bは、感熱素子10の電極層12a、12bに溶接により接合される部分であり、電極層12a及び電極層12bが並んで配置される方向と直交する方向に配置されている。リード部22a、22bは、接合部21a、21bから外側へ折曲し、接合部21a、21bと平行する方向に延出している。感熱素子10の電極層12a、12bに接合される接合部21a、21bの幅寸法は、リード部22a、22bの幅寸法より細幅に形成されている。この接合部21a、21bの先端部に感熱素子10が接合されて架橋状に接続されるようになっている。
【0022】
リード部材20a、20bは、低融点金属、すなわち、融点が1300℃以下の金属から形成されていて、例えば、リン青銅、コンスタンタン、マンガニン等の銅を主成分に含む銅合金が用いられている。
【0023】
感熱素子10の電極層12a、12bとリード部材20a、20bとを例えば、レーザー溶接によって接合する場合、リード部材20a、20bの融点は1300℃以下であるからレーザー光等で加熱し溶融しても融点の1300℃以上の温度にならない。したがってセラミック基板の融点1600℃〜2100℃を超えることがないため、感熱素子10の電極層12a、12bや電極層12a、12b直下の絶縁性基板11の損傷を抑制してリード部材20a、20bを接合することができる。また、この場合、バンプ等の付加材料を用いないので、接続(接合)箇所に付加材料が実質的に付加された状態で接合されることなく、厚さ寸法が大きくなることがなく、また、熱容量も増加することなく、熱応答性を高速にすることが可能となる。
【0024】
従来、上記のようなリード部材には、ステンレス、コバール、ニッケル合金等の鉄系の金属が用いられている。この鉄系の金属は、融点が高く、例えば、ステンレス、コバールはいずれも鉄系の合金であることから鉄の融点1538℃程度まで温度上昇してしまうことがある。このような高融点金属のリード部材にレーザ溶接用のレーザ光を照射すると、リード部材及びその周囲が高温に熱せられて、絶縁性基板(例えば、アルミナ基板)が損傷を受けやすくなるという問題が発生する。また、はんだでの接合では、温度サイクルを考慮した耐熱温度が150℃以下となり、200℃以上の耐熱性の確保ができない問題がある。
【0025】
上記本実施形態の構成によれば、200℃以上の耐熱性を確保することができ、このような問題を解決することができる。なお、リード部材は、断面が円形状の丸線の線材又は平角線で形成してもよく、この場合は、外径寸法又は厚み寸法が100μm以下に形成される。好ましくは、50μm以下に薄型化されて形成されている。このような線材の場合、引張強度の強い銅銀合金線などを用いるのがよい。
【0026】
図1に示すように、感熱素子10にリード部材20a、20bが接続された状態において、一対の絶縁性フィルム30a、30bによって、少なくとも感熱素子10及びリード部材20の接合部21a、21bが両面側から挟んだ状態で封止され被覆されている。
【0027】
図4及び
図5を参照して、絶縁性フィルム30a、30bによって感熱素子10及びリード部材の接合部20を封止して絶縁被覆する状態について説明する。
図4は絶縁性フィルム30a、30bによって被覆する前の状態を示し、
図5は被覆した後の状態を示している。
【0028】
図4に示すように絶縁性フィルム30は、基材が熱硬化性のポリイミド樹脂材料から形成されていて、略長方形状の半透明のフィルムであり、厚さ寸法は100μm以下であり、具体的には、12.5μmのものを用いている。また、絶縁性フィルム30は、電気的絶縁性、高い剛性、耐熱性や耐油性を有している。
【0029】
具体的には、絶縁性フィルム30は、熱硬化性の基材層31と、この熱硬化性の基材層31の両表面に形成された熱可塑性の熱融着層32とで構成された3層構造となっている。基材層31は熱的に安定したポリイミド樹脂からなっており、熱反応後の安定した状態の層である。一方、熱可塑性の熱融着層32は同様にポリイミド樹脂であるが、熱可塑性の状態の層である。つまり、基材層31は熱的に安定状態の層であり、熱融着層32は熱的な反応性のある熱可塑の層である。また、熱融着層32の厚みは約2μmであり極めて薄い層である。このように基材層31の両表面には熱融着層32を有する構成となっている。
【0030】
これらの構成材料を用いて、一対の絶縁性フィルム30a、30bを熱プレスによってラミネート加工が可能となっている。このような絶縁性フィルム30a及び30bの間に、リード部材20a、20bが接続された感熱素子10を挟むように配置して熱プレスする。なお、図示上、感熱素子10の感熱膜13側を下側にして示している。
【0031】
この方法で確実に封止して絶縁を確保するには、リード部材20a、20bに溶接にて接合された感熱素子10としての薄膜サーミスタが極めて薄い状態でないと、約2μmと極めて薄い熱融着層32の材料で熱プレスで封止する場合大きな気泡等
が発生し絶縁性能の確保が難しくなる。
【0032】
図5に示すように熱プレスによって、絶縁性フィルム30a及び30bの内側の各熱融着層32が軟化溶融し熱融着する。したがって、感熱素子10及びリード部材の接合部20は、一対の絶縁性フィルム30a、30bによって熱融着された状態で両面から挟まれて封止されて密着して絶縁被覆される。この感熱素子10が絶縁被覆された状態での総厚寸法は、250μm以下、好ましくは100μm以下にすることができる。このような両面に熱可塑性の熱融着層32を構成にすることで被検知体に容易に貼り付けることも可能となる。
【0033】
なお、熱融着層32は、少なくとも一表面(内側の面)に形成されていればよい。また、絶縁性フィルムを構成する材料は、熱可塑性の材料としてはポリイミド樹脂には限定されない。より絶縁性能を向上させる方法として、ポリイミド樹脂と比較して柔らかい材料であってもよい。この場合、例えば、ポリアミド樹脂を用いることで形状追従性が改善し、ポリイミド樹脂と比較して気泡等がより小さくなる利点がある。
【0034】
なお、一対の絶縁性フィルム30a、30bは、部材の共通化を可能とするため同じ形状や寸法関係であることが好ましい。しかし、必ずしも同じ形状や寸法関係である必要はなく、形状等が相違していてもよい。また、絶縁性フィルム30a、30bを生体適合性を有する材料で構成することにより、上記のような感熱素子を医療機器の分野に好適に用いることができる。ポリイミド樹脂は生体適合性の確認された材料である。
【0035】
以上のように絶縁性フィルム30a、30bは、熱プレスする場合、基材層31は軟化溶融しないので、熱可塑性の熱融着層32のみを軟化溶融の反応をさせて熱融着することができる。このため感熱素子10を確実に封止して絶縁被覆することができる。
【0036】
次に、
図6に示すように熱硬化性フイルム35を用いた場合の変形例(実施例1)について説明する。絶縁性フィルム30a、30bの間に熱硬化層として熱硬化性フイルム35を介在させたものである。熱硬化性フイルム35の厚み寸法は40μm以下が好ましい。
【0037】
本実施例の場合、絶縁性フィルム30a、30bは、熱硬化性の基材層31の一層から形成されている。基材層31は熱反応後の安定した状態の層である。また、熱硬化性フイルム35は、熱プレスによって軟化溶融し、絶縁性フィルム30a、30b及び感熱素子10を一体化して、感熱素子10を封止して絶縁被覆するようになっている。なお、熱硬化性フイルム35は熱的に安定している絶縁性フィルム30a、30bのいずれか一方に層を形成して接合された材料としてもよい。
【0038】
従来の方法では、厚み寸法が約40μmの熱硬化性又は熱可塑性フイルムを2枚用いて、リード部材にはんだ等で接合された感熱素子を上下で挟む構成にしていた。この場合、はんだの接合材料(付加材料)の影響で薄くすることが困難なため、厚み寸法が約40μmもの熱硬化性又は熱可塑性フイルムを2枚を用いないと気泡の少ない良好な封止ができなかった。
本実施例によれば、薄型化して感熱素子10を確実に封止して絶縁被覆することができる。
【0039】
熱硬化性フイルム35は、赤外線放射率の高い熱硬化性フィルム35を介在させてもよい。熱硬化性フィルム35はフィラーを含有したエポキシ樹脂であり赤外線領域の放射率を90%以上とすることができる。このようなことから熱硬化性フィルム35を介在させることにより、感熱素子10の受光エネルギーが大きくなり赤外線に対する感度の向上を図ることができる。
【0040】
次に、
図7及び
図8を参照して金属箔36を用いた場合の変形例(実施例2)について説明する。少なくとも一方の絶縁性フィルム30a、30bの外表面に例えば、アルミニウム材料から形成された金属箔36を設けるものである。この金属箔36は絶縁性フィルム30aの外側の熱融着層32に熱プレスによって熱融着される。なお、金属箔36は、両方の絶縁性フィルム30a、30bの外表面に設けるようにしてもよい。
【0041】
本実施例によれば、金属箔36によって、赤外線は反射されるので外乱の赤外光の影響を軽減して正確な温度の検知が可能となる。さらに、両面に金属箔36を設けることにより赤外光の影響を軽減して空気温の測定に適した温度センサを構成することが可能となる。
【0042】
続いて、
図9を参照して、感熱素子10とリード部材20との接合における変形例について説明する。リード部材20a、20bの接合部21a、21bの先端部は、他の部分に比較して厚さ寸法を薄くした凹部23a、23bがハーフエッチング等の手段によって形成されている。この凹部23a、23bに感熱素子10が配置され、感熱素子10の電極層12a、12bとリード部材20a、20bの接合部21a、21bとが溶接によって電気的に接続される。
【0043】
さらに、感熱素子の別の実施形態について
図10(実施形態1)及び
図11(実施形態2)を参照して説明する。格別言及しない場合には、既述の感熱素子10の構成と同じである。
(実施形態1)
【0044】
図10に示すように本実施形態では、電極層12a、12bの露出部と接続され、絶縁性基板11上に形成された一対の外電極部12c、12dを備えている。この外電極部12c、12dは、リード部材20a、20bの接合部21a、21bが溶接により接合される部分であり、低融点金属として金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)又はこれらの少なくとも1種を主成分として含む合金が用いられている。
(実施形態2)
【0045】
本実施形態の感熱素子10は、電極部12c、12dを多層膜で形成し、絶縁性基板11の損傷を抑制してリード部材20a、20bの接合部21a、21bを溶接によって接合することができるものである。
【0046】
図11に示すように感熱素子10は、絶縁性基板11と、絶縁性基板11上に形成された一対の電極層12a、12bと、一対の電極層12a、12bの各々に対して電気的に接続された電極部12c、12dと、絶縁性基板11上に形成された感熱膜13と、感熱膜13上に形成された保護膜14とを備えている。電極部12c、12dは、絶縁性基板11上で感熱膜13を挟んで対向するように一対設けられる。一対の電極部12c、12dの各々は、絶縁性基板11上に形成された電極層12a、12bを介して感熱膜13に対して電気的に接続されている。
【0047】
電極部12c、12dは、多層膜であり、機能的に3つの層を有している。すなわち、電極部12c、12dは、絶縁性基板11上に形成され、高融点金属を主成分とし、接着性のある活性層15と、活性層15上にそれと一体の層又は独立の層として形成された高融点金属を主成分とするバリア層16と、バリア層16上に形成された低融点金属を主成分とする接合層17と、を含んでいる。ここでいう高融点とは、低融点金属の融点よりも高いことを意味する。
【0048】
活性層15は、絶縁性基板11の表面に被着して形成され、セラミック等の材料の絶縁性基板11と電極部12c、12dとの間の接着強度を高め、リード部材20a、20bbが電極部12c、12dに接合された際に優れた引張強度を実現できる機能を有している。加えて、活性層15は、その融点が高いという条件を満たし、具体的には1300℃以上、好ましくは1400℃以上の融点を有している。この様な材料は電極部12c、12dに対してリード部材20a、20bを接合する溶接工程時に溶融しない特徴をあわせ持つことができる。活性層15の上記機能及び上記条件を満たす材料は、チタン、クロム、ジルコニウム、タングステン、モリブデン、マンガン、コバルト、ニッケル、タンタルのいずれか、又はそれらの合金若しくは酸化物である。例えば、チタンは、その融点が1688℃であるから、その純金属を用いることができる。他方、例えば、マンガンはその融点が1246℃であるから、特殊な形態では酸化物である酸化マンガン(融点1945℃)の形態で用いることができる。
【0049】
特に従来は、十分な引張強度を確保するためにリード部材20a、20bとの接合箇所に数10μmの厚さを有する銀ペーストや金バンプ等の熱ダメージを軽減する付加材料を配置し、さらにガラス保護層を設ける必要があった。一方、本実施形態では、電極部12c、12dに活性層15を設けることで、バンプ、銀ペースト及びガラス保護層のいずれも設けることなく、薄い構成で十分な引張強度を実現できるようになっている。
【0050】
活性層15の厚さは、特に制限はないが、接着機能を保持できる範囲で可及的に小さな膜厚にすることが可能であり、例えば、金属のチタンの場合は0.01μmまで薄くすることができる。チタンのような活性金属は、活性が極めて高いために極薄の薄膜でも接着性のある機能膜として機能することができる。
【0051】
高融点金属を主成分とするバリア層16は、電極部12c、12dへのリード部材20a、20bの接合工程の際に融点に到達しないように工程を管理することで、工程中に溶融することなくバリア層として機能する。この機能を果たすうえで、高融点金属のバリア層16は、その融点が少なくとも1300℃以上、好ましくは1400℃以上である条件を満たしている。この条件に適う好適な材料は、白金、バナジウム、ハフニウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、タングステン、モリブデン、ニッケル、タンタルのいずれか、又はそれらの合金である。因みに、白金の融点は1768℃、モリブデンの融点は2622℃である。
【0052】
高融点金属のバリア層16は、一般的には、活性層15の上に重なる独立した層として形成される。例えば、チタンからなる活性層15の上に、白金からなる高融点金属のバリア層16が形成される。もっとも、高融点金属のバリア層16は、活性層15と同一材質又は一体の層として形成されてもよい。
【0053】
例えばモリブデンからなる活性層15の上に、同じくモリブデンからなる高融点金属のバリア層16が一体又は別々に成膜される構成も可能である。この場合、活性層15と高融点金属のバリア層16とは、同一のプロセスで形成される。
【0054】
高融点金属のバリア層16の厚さ寸法も、特に制限はないが、この実施形態では、0.1〜0.4μmとしている。これは、膜厚が0.1μmよりも薄くなってしまうと、合金化によって融点が下がり、溶接工程時に溶融してしまう可能性があるためである。例えば、白金を材質とする場合は高価な材料であるため、極力薄くすることが望ましく、最適な厚み寸法は例えば、0.15μmとすることができる。
【0055】
接合層17は、高融点金属のバリア層16の上に重なる独立の層として成膜されている。接合層17は、接合電極部16に対するリード部材20a、20bの溶接工程において、溶融することによりリード部材20a、20bとの接合構造を形成する。このとき、高融点金属はバリア層16の合金化部分以外は全く溶融しない。溶接工程では、リード部材20a、20bを介して外部から熱又はエネルギー、例えばレーザ溶接、スポット溶接、パルスヒート等のエネルギーが供給されると、接合層17が速やかに溶融する。このように接合層17は、リード部材20a、20bと溶融接合により溶接する機能を有している。この機能を奏するうえで、低融点金属の接合層17は、その融点が1300℃より低いことを条件としている。この条件を満たす好適な低融点金属の材料は、金(融点1064℃)、銀(融点961℃)及び銅(融点1085℃)の少なくとも一つを主成分として含む純金属又は合金である。
【0056】
接合層17の厚さも、特に制限はないが、この実施形態では、可能な限り膜厚を薄くすることが可能であり、例えば、金を材質とする場合は0.1〜0.4μmまで薄くすることができる。
【0057】
以上の3つの層のそれぞれの膜厚が活性層15が0.01μm、バリア層0.15μm及び接合層0.2μmとすると電極部12c、12dの総厚みは0.36μmと極めて薄くすることができる。このように容易に1μm以下の膜厚で構成できる
【0058】
続いて上記構成を有する感熱素子10の電極部12c、12d(接合層17)に対して、リード部材20a、20bが溶接により接合される形態について説明する。
【0059】
電極部12c、12dの接合層17には、接合加工を受けることによりリード部材20a、20bが接合される。ここで電極部12c、12dに対してリード部材20a、20bが受ける接合加工には各種溶接が広く採用可能である。このような溶接には、例えば、接触接合である抵抗溶接、超音波溶接、摩擦溶接等や、非接触接合であるレーザ溶接、電子ビーム溶接等が広く含まれる。
【0060】
リード部材20a、20bは、電極部12c、12dに対して、接合層17を介して溶接される。リード部材20a、20bは、リード部材20a、20bの溶接工程において、高融点金属のバリア層16を全く又は殆ど溶かさずに、外から供給される熱又はエネルギー(例えば、レーザ光のエネルギー)を吸収して接合層17を加熱して、接合層17と共に溶融し、又は接合層17のみを溶融して溶接する機能を有している。この条件を満たすうえで好適な材料は、低融点金属の金、銀及び銅を主成分として有する金属又は合金であり、特に適した合金はリン青銅、ベリリウム銅、黄銅、白銅、洋白、コンスタンタン、銅銀合金、銅鉄合金、銅金合金である。因みに、リン青銅は、融点が1000℃であり、コンスタンタンは、融点が1225℃〜1300℃である。
【0061】
次に、リード部材20a、20bが接続され、絶縁性フィルム30a、30bによって被覆された感熱素子10が取り付けられた温度センサ40について
図12乃至
図14を参照して説明する。
図12は温度センサの平面図であり、
図13は温度センサの側面図であり、
図14は温度センサの裏面図である。温度センサは、非接触形の温度センサであり、近接非接触温度センサである。例えば、複写機やプリンタ等の定着装置に使用される加熱ローラの表面温度を検知し、加熱ローラの温度制御を行うために用いられる。
【0062】
温度センサ40は、保持体としてのホルダ41と、一対の導電性部材である細幅金属板42a、42bと、感熱素子10とを備えている。なお、上述のリード部材20a、20b及び絶縁性フィルム30a、30bは、ホルダ41の寸法に合うように適宜切断されて寸法が調整されている。
【0063】
ホルダ41は、絶縁性の樹脂材料によって横長の略直方体形状に形成されていて、その略中央部に長方形状の開口部41aを有して枠状に形成されている。また、ホルダ41の長手方向の一端側には、引掛け孔部41bが形成されており、他端側にはねじ孔41cが形成されている。この引掛け孔部41b及びねじ孔41cは、例えば、温度センサ40を定着装置に取付ける場合に用いられる。さらに、他端側には、一対の溝部41d、41eが形成されており、この溝部41d、41eには、一対の外部引出線43a、43bが配設されるようになっている。外部引出線43a、43bは、具体的には、絶縁被覆されたリード線である。
【0064】
ホルダ41には、一対の細幅金属板42a、42bが固定されて保持されている。細幅金属板42a、42bは、化学エッチングやプレス等の手段で形成された弾性を有する弾性体であって、低融点金属から形成されていて、例えば、リン青銅、コンスタンタン、マンガニン等の銅を主成分に含む銅合金が用いられている。細幅金属板42a、42bは、ホルダ41にインサート成形等の手段によって保持されている。
【0065】
詳しくは、細幅金属板42a、42bは、ホルダ41の両側壁41f、41gに長手方向に沿うように配設された固定部421a、421bと、この固定部421a、421bの一端側から開口部41aへそれぞれ互いに対向するように延出した環状部422a、422bとを有している。この環状部422a、422bにリード部材20a、20bのリード部22a、22bが溶接等によって接合されている。これによって絶縁性フィルム30a、30bで被覆された感熱素子10は、開口部41a内に位置されるようになる。したがって、枠状のホルダ41が形成する開口部41aである空間部に感熱素子10は位置される。なお、固定部421a、421bの他端側は、ホルダ41に埋設され、外部引出線43a、43bに接続されている。この外部引出線43a、43bは、図示しないコネクタ等を介して定着装置等の装置側に接続されるようになっている。
【0066】
次に、
図15及び
図16を参照して温度センサの製造方法の一例について説明する。リード部材20に感熱素子10を溶接により接合し、その後、感熱素子10及びリード部材20の接合部21a、21bを一対の絶縁性フィルム30a、30bによって両面側から挟んで、一対の絶縁性フィルム30a、30bを熱融着し、感熱素子10を絶縁被覆して温度センサ40を作製する。
【0067】
図15に示すように、リード部材の素材としてリードフレーム素材2と、感熱素子10と、絶縁性フィルム30a、30bとを用意する。リードフレーム素材2は、銅を主成分に含む銅合金を化学エッチング等により成形したものであり、このリードフレーム素材2から複数のリード部材20を作製できる。リードフレーム素材2は、リード部材20が横方向に並べられて両側の連結部材としての帯状部2a、2bにより連結されている状態である。
【0068】
まず、
図16(a)に示すように、感熱素子10を図示しない冶具に設置し、感熱素子10の電極層12a、12bの位置にリード部材20の接合部21a、21bを配置する(配置工程)。次いで、電極層12a、12bと接合部21a、21bとをレーザ溶接等により溶接して接合する(溶接工程)。続いて、リードフレーム素材2の両側の連結部材としての帯状部2a、2bを切断し除去する(切断工程)。これにより、
図16(b)に示すように、感熱素子10にリード部材20が電気的に接続された部材が作製される。その後、
図16(c)及び(d)に示すように、絶縁性フィルム30a、30bの間に前記部材を挟むようにしてヒータープレートの金型Mに配置し熱プレスする(熱プレス工程)。この熱プレスにより絶縁性フィルム30a及び30bの内側の各熱融着層32が軟化溶融し熱融着する。
【0069】
以上のような工程で、一対の絶縁性フィルム30a、30bが熱融着して、感熱素子10及びリード部材20の接合部21a、21bを絶縁被覆することができる。
[第2の実施形態]
【0070】
次に、第2の実施形態について
図17乃至
図20を参照して説明する。
図17は温度センサの斜視図を示し、
図18は温度センサの断面図を示している。また、
図19はリード部材と感熱素子とが接合されている状態を示し、
図20は感熱素子が絶縁性フィルムにより絶縁被覆されている状態を示している。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0071】
本実施形態の温度センサは、赤外線温度センサであり、被検知体からの赤外線を非接触で検知して、被検知体の温度を測定する非接触形の温度センサである。第1の実施形態と同様に、感熱素子とリード部材とを溶接により接合し、感熱素子及びリード部材の接合部を一対の絶縁性フィルムで両面から挟んで被覆する形態である。
【0072】
図17及び
図18に示すように、赤外線温度センサ50は、保持体としてのケース52と、赤外線検知用感熱素子10a及び温度補償用感熱素子10bと、リード部材20と、絶縁性フィルム30とを備えている。
【0073】
ケース52は、第1のケース53と第2のケース54とから構成されている。第1のケース53は、図示上、上側へ突出する略直方体形状の本体部53aと、この本体部53aの周囲に形成された略長方形状のフランジ部53bとを備えている。本体部53aには、赤外線を導く導光部55及び赤外線を遮蔽する遮蔽部56が形成されている。
【0074】
導光部55は、前面側に開口部53bを有して側壁53c及び区画壁53dによって略直方体形状の筒状に形成されている。区画壁53dは、導光部55と遮蔽部56との境界部に位置して導光部55と遮蔽部56とを仕切る役目をなしている。
【0075】
遮蔽部56は、導光部55隣接して配置されており、区画壁53dを軸として導光部55と略対称の形態に形成されている。遮蔽部56は、遮蔽壁56aを図示上、上側に有して側壁53c及び区画壁53dによって略直方体形状の空間部56bが形成されている。また、遮蔽壁56aと対向する背面側は開口されている。
【0076】
第2のケース54は、図示上、下側へ突出する略直方体形状の本体部54aと、この本体部54aの周囲に形成された略長方形状のフランジ部54bとを備えている。本体部54aは、第1のケース53における本体部53aの背面側の形状と略合致する形態に形成されていて、内側には前記導光部55と遮蔽部56に対応して連続するような空間部54cが形成されるようになっている。
【0077】
図19に示すようにリード部材20は、赤外線検知用感熱素子10a及び温度補償用感熱素子10bを接続するための配線経路を構成するように形成されていて、リード部材20の終端には外部引出端子20cが形成されている。この外部引出端子20cには外部引出線が接続される。
【0078】
第1の実施形態と同様に、リード部材20は、化学エッチングやプレス等の手段で形成された弾性を有する弾性体であって、板状の薄い細幅の金属板であり、リードフレームである。このリード部材20には、赤外線検知用感熱素子10a及び温度補償用感熱素子10bが溶接により接合されて電気的に接続される。
【0079】
赤外線検知用感熱素子10aは、被検知体からの赤外線を検知して、被検知体の温度を測定する。温度補償用感熱素子10bは、周囲温度を検知して、周囲温度を測定する。これら赤外線検知用感熱素子10a及び温度補償用感熱素10bは、少なくとも略等しい温度特性を有する感熱素子で構成されている。
【0080】
図20に示すように、赤外線検知用感熱素子10a及び温度補償用感熱素子10bが溶接により接合されたリード部材20は、一対の絶縁性フィルム30a、30bによって、少なくとも赤外線検知用感熱素子10a、温度補償用感熱素子10b及びリード部材の接合部20が両面側から挟んだ状態で被覆される。
【0081】
この赤外線検知用感熱素子10a、温度補償用感熱素子10b及びリード部材の接合部21a、21bを挟んで被覆した絶縁性フィルム30は、第1のケース53と第2のケース54とが組合わされ結合されることによって、第1のケース53のフランジ部53bと第2のケース54のフランジ部54bとの間に介在され固定されるようになっている。また、この場合、赤外線検知用感熱素子10aは、導光部55に対応する位置に配設され、温度補償用感熱素子10bは、遮蔽部56に対応する位置に配設されるようになる。したがって、赤外線検知用感熱素子10a及び温度補償用感熱素子10bは、ケース52が形成する空間部に位置される。
【0082】
このような赤外線温度センサ50において、被検知体の表面から放射された赤外線は、導光部55における開口部53bから入射し、導光部55に導かれて導光部55を通過し絶縁性フィルム30に到達する。この絶縁性フィルム30に到達した赤外線は、絶縁性フィルム30に吸収されて熱エネルギーに変換される。
【0083】
変換された熱エネルギーは、赤外線検知用感熱素子10aに伝達され、赤外線検知用感熱素子10aの温度を上昇させる。赤外線検知用感熱素子10aと温度補償用感熱素子10bとは、ほぼ等しい温度特性を有しているので、被検知体からの赤外線によって赤外線検知用感熱素子10aの抵抗値が変化する。このため、赤外線検知用感熱素子10aと温度補償用感熱素子10bとは、周囲の温度変化に対して同じように変化し、熱的外乱に対する影響を防ぐことができ、被検知体からの赤外線による温度変化を確実に検出することが可能となる。
なお、第1の実施形態で説明した変形例や感熱素子の別の実施形態等は、この第2の実施形態においても適用できるのは勿論のことである。
【0084】
以上説明してきた各実施形態における近接非接触温度センサ40及び赤外線温度センサ50は、複写機やプリンタ等
の定着装置、移動体通信端末やパソコン等の情報通信機器、映像機器、民生用機器及び自動車用電装機器等の電子機器の温度検知のため各種装置に備えられ適用することができる。格別適用される装置が限定されるものではない。
【0085】
本発明の実施形態によれば、薄型化するとともに絶縁性を確保して信頼性を向上することができる温度センサ40、50、これら温度センサ40、50を備えた装置を提供することが可能となる。
【0086】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。