【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構「ビアスイッチの実現によるアルゴリズム・処理機構融合型コンピューティングの創出」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
BANNO, Naoki,A Novel Two-Varistors(a-Si/SiN/a-Si) Selected Complementary Atom Switch(2V-1CAS) for Nonvolatile Crossbar Switch with Multiple Fan-outs,2015 IEEE International Electron Devices Meeting TECHNICAL DIGEST,米国,IEEE,2015年,pp.2.5.1-2.5.4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御線は、前記入力線もしくは前記出力線の内の一つに接続する前記4端子スイッチの内の複数の前記4端子スイッチの前記抵抗変化素子の内の、前記入力線もしくは前記出力線の内の前記一つに接続する前記抵抗変化素子の組から先にオンする、請求項1記載のスイッチ回路。
前記制御線は、前記入力線もしくは前記出力線の内の一つに接続する前記4端子スイッチの内の複数の前記4端子スイッチの前記抵抗変化素子の内の、前記入力線もしくは前記出力線の内の前記一つに接続する前記抵抗変化素子とは別の前記抵抗変化素子の組から先にオフする、請求項1または2記載のスイッチ回路。
前記制御線は、前記入力線に接続する前記抵抗変化素子の組と前記出力線に接続する前記抵抗変化素子の組とを、組ごとに一斉にオンもしくはオフする、請求項1から3の内の1項記載のスイッチ回路。
前記4端子スイッチは、前記4端子スイッチが有する2つの前記抵抗変化素子が共にオンすることで前記入力線と前記出力線の信号伝達を可能とする、請求項1から4の内の1項記載のスイッチ回路。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のスイッチ回路の構成を示す図である。本実施形態のスイッチ回路1は、各々端子2つを有して直列接続する抵抗変化素子16と整流素子17とを有する2つのスイッチ12が直列接続する端子18bで接続している、複数の4端子スイッチ11を有する。さらに、2つのスイッチ12の抵抗変化素子16の直列接続する端子18bとは別の端子18aが各々接続する、少なくとも一方が複数存する、入力線13と出力線14とを有する。さらに、2つのスイッチ12の整流素子17の直列接続する端子18bとは別の端子18cに各々接続する制御線15を有する。さらに、制御線15は、入力線13と出力線14と共に、入力線13もしくは出力線14の内の一つに接続する4端子スイッチ11の内の複数の4端子スイッチ11の抵抗変化素子16の内の、入力線13に接続する抵抗変化素子16の組と出力線14に接続する抵抗変化素子16の組を、組ごとに順にオンもしくはオフする。
【0024】
本実施形態のスイッチ回路1によれば、マルチファンアウトに対応した複数のスイッチをスイッチさせる際に、スイッチ動作中のスイッチが接続している入力線もしくは出力線上でオン状態にある別のスイッチをなくすることができる。もしくはオン状態にある別のスイッチによる不要な電流を抑制することができる。これにより、寄生容量の影響によるスイッチ動作時間の遅延やリーク電流が抑制される。その結果、短いパルスでの高速なスイッチ動作が高い信頼性を有して可能となる。
【0025】
以上のように、本実施形態によれば、マルチファンアウトに対応した抵抗変化素子を用いたクロスバスイッチにおいて、高速で信頼性の高いスイッチ動作が可能なスイッチ回路を提供することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態のスイッチ回路2の構成を示す図である。また、
図3は、本実施形態のスイッチ回路2の4端子スイッチ21の構成を示す図である。
【0027】
スイッチ回路2は、複数の入力線23と、複数の出力線24と、入力線23と出力線24の交点ごとに設けられている複数の4端子スイッチ21と、4端子スイッチ21のオンオフを制御するための複数の制御線25と、を有するクロスバスイッチである。入力線23と出力線24は、信号を伝達する信号線である。
図2では、入力線23と出力線24は各々3つ設けられているが、これには限定されない。入力線23と出力線24は、少なくとも一方が複数存すればよい。また、制御線25は、入力線23と出力線24に沿って設けられているが、オンオフする4端子スイッチ21を指定し4端子スイッチ21のオンオフを制御することができれば、これには限定されない。
【0028】
スイッチ回路2は、所望の4端子スイッチ21を指定してオンオフするために、入力線23、出力線24、制御線25の内の所定の配線に所定のタイミングで所定の電圧を印加したり、接地したりすることのできるドライバ回路に接続している。
図2では、当該のドライバ回路の記載は省略されている。ドライバ回路については後述する。
【0029】
4端子スイッチ21は、
図3に示すように、各々端子2つを有して直列接続する抵抗変化素子26と整流素子27とを有する2つのスイッチ22が、直列接続する端子28bで接続している構成を有する。2つのスイッチ22の抵抗変化素子26の前記直列接続する端子28bとは別の端子28aは各々、入力線23と出力線24に接続する。また、2つのスイッチ22の整流素子27の前記直列接続する端子28bとは別の端子28cは各々、制御線25に接続する。
【0030】
4端子スイッチ21は、2つのスイッチ22の抵抗変化素子26が共にオンすることで、入力線23と出力線24の間での信号伝達を可能とする。
【0031】
制御線25は、入力線23と出力線24と共に、入力線23もしくは出力線24の内の一つに接続した4端子スイッチ21の内の複数の4端子スイッチ21の抵抗変化素子26を、オンもしくはオフする。このとき、前記の複数の4端子スイッチ21の抵抗変化素子26の内、入力線23に接続する抵抗変化素子26の組と、出力線24に接続する抵抗変化素子26の組とを、組ごとに順にオンもしくはオフする。
【0032】
抵抗変化素子26は、活性電極とイオン伝導層と不活性電極との積層構造を有する。活性電極はイオン伝導層に金属イオンを供給し、不活性電極は金属イオンを供給しない。両電極間に印加する電圧を制御することによりイオン伝導層中で金属架橋を形成、消滅させ、これにより両電極間の抵抗を低抵抗状態と高抵抗状態とで遷移させる。すなわち、イオン伝導層が抵抗変化層となる。低抵抗状態をオン状態、高抵抗状態をオフ状態とする。低抵抗状態と高抵抗状態は不揮発性であり、オンおよびオフの状態は電圧を印加しなくても保持される。
【0033】
2つのスイッチ22の抵抗変化素子26の各々は、不活性電極同士もしくは活性電極同士が端子28bで接続している。よって、入力線23と出力線24には、活性電極同士もしくは不活性電極同士が接続している。
【0034】
整流素子27は、双極性を有するダイオードである。整流素子27は、電極と整流層と電極との積層構造を有する。電極と整流層の間には、仕事関数が電極の仕事関数よりも小さく、比誘電率が整流層の比誘電率よりも大きいバッファ層を設けることによって、整流特性を改善することができる。
【0035】
整流素子27は、抵抗変化素子26をオンオフする際に、オンオフ対象の抵抗変化素子26以外の抵抗変化素子26への電流の流入を抑制する。また、抵抗変化素子26のオンオフを遷移させる際に電流制限を行う。また、抵抗変化素子26のオン時の抵抗値を調整する。さらに、入力線23と出力線24を介した信号伝達時に、オン状態にある4端子スイッチ21を介した回り込み電流(スニーク電流)を抑制する。
【0036】
図4Aは、抵抗変化素子26の活性電極(端子28a側)と不活性電極(端子28b側)の間の電流電圧特性を示す模式図である。不活性電極を接地し活性電極に正電圧を印加すると、活性電極を構成する金属がイオン化し、イオン伝導層中に注入される。注入された金属イオンは不活性電極側へマイグレーションし、不活性電極で電子を受け取ることで金属架橋としてイオン伝導層内に析出する。金属架橋で不活性電極と活性電極が接続することで、抵抗変化素子26は低抵抗状態(オン)に遷移する(電圧V3)。
【0037】
一方、不活性電極を接地し活性電極に負電圧を印加すると、金属架橋がイオン化して溶解し活性電極に回収される。これにより、不活性電極と活性電極の接続が切断することで、抵抗変化素子26は高抵抗状態(オフ)に遷移する(電圧−V3)。なお、抵抗状態は不揮発的であり、電圧印加を止めても低抵抗状態と高抵抗状態は保たれる。
【0038】
図4Bは、整流素子27の電極間(端子28bと端子28c間)の電流電圧特性を示す模式図である。整流素子27は、電極間に電圧を印加すると、整流層を介した非線形的、かつ正負極で対称な電流電圧特性を有する。低電圧領域では高抵抗を示す一方、印加電圧の増加に伴って指数関数的に電流が増加する。抵抗状態は揮発的であり、電圧印加を止めると低抵抗状態は解除され高抵抗状態となる。
【0039】
図4Cは、
図4Aの抵抗変化素子26と
図4Bの整流素子27の電流電圧特性を重ね合わせて示した模式図である。また、
図4Dは、スイッチ22の抵抗変化素子26と整流素子27の直列接続の電流電圧特性を示す模式図である。
図4Cの抵抗変化素子26の電流電圧特性は、端子28aと端子28b間の電流電圧特性を、整流素子27の電流電圧特性は、端子28bと端子28c間の電流電圧特性を、各々示す。また、
図4Dの直列接続の電流電圧特性は、端子28aと端子28c間の電流電圧特性を示す。
【0040】
図4Dにおいて、端子28cを接地し端子28aに正電圧を印加すると、
図4Cの整流素子27の抵抗が抵抗変化素子26の抵抗を上回る電圧V2に相当する電圧V2’までの過程では、高抵抗な整流素子27の電流電圧特性を示す。このためオフ状態での読み取り電圧である低電圧なV1’(
図4CのV1に相当)では、整流素子27の高抵抗な特性によりスニーク電流が抑制される。印加電圧がV2’以上の過程では、抵抗変化素子26の抵抗が整流素子27の抵抗を上回るようになり、抵抗変化素子26が低抵抗状態に遷移するV3’(
図4CのV3に相当)を含めて抵抗変化素子26の電流電圧特性を示す。印加電圧をV3’から下げてくる過程では、低抵抗状態にある抵抗変化素子26に比べて高抵抗な整流素子27の電流電圧特性を示す。
【0041】
一方、
図4Dにおいて、端子28cを接地し端子28aに負電圧を印加すると、−V3’(
図4Cの−V3に相当)までの過程では、抵抗変化素子26は低抵抗状態にあるため、抵抗の高い整流素子27の電流電圧特性を示す。−V3’で抵抗変化素子26が高抵抗状態に遷移すると、
図4Cの整流素子27の抵抗が抵抗変化素子26の抵抗を上回る電圧−V2に相当する電圧−V2’までの過程では、高抵抗な抵抗変化素子26の電流電圧特性を示す。印加電圧を−V2’からさらに下げる過程では、抵抗変化素子26に比べて高抵抗な整流素子27の電流電圧特性を示す。このためオフ状態での読み取り電圧である低電圧な−V1’(
図4Cの−V1に相当)では、整流素子27の高抵抗な特性によりスニーク電流が抑制される。
【0042】
スイッチ回路2の、マルチファンアウトに対応した、入力線23もしくは出力線24の内の一つに接続した4端子スイッチ21の内の複数の4端子スイッチ21の抵抗変化素子26をオンもしくはオフする方法を、以下に説明する。
【0043】
図5Aおよび
図5Bは、入力線23bに入力する信号を出力線24aと出力線24bとに出力するために、4端子スイッチ21bと4端子スイッチ21eとをオンする動作を説明するための図である。当該動作の開始に際しては、4端子スイッチ21a〜21iは高抵抗状態であり、入力線23a〜23cと出力線24a〜24cと制御線25a〜25fはハイインピーダンス状態であるとする。
【0044】
最初に、まず、
図5Aに示す4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子の組をオンし、続いて、
図5Bに示す4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子の組をオンする場合を説明する。
【0045】
まず、
図5Aに示すように、4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンする。すなわち、制御線25dと制御線25eを接地(GND)し、入力線23bに抵抗変化素子をオフからオンに遷移させるために十分な電圧Vp(プログラム電圧)を印加する。これにより入力線23bに接続する抵抗変化素子がオンする。なお、制御線25dと制御線25eに電圧−Vpを印加し、入力線23bを接地してもよい。
【0046】
このとき、例えば、最初に4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンし、次に4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンするとする。4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンするときには、4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子はオンしていないので、4端子スイッチ21bはオンしていない。よって、入力線23bと出力線24aとは4端子スイッチ21bにより電気的に分離されている。このため、4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンするときに入力線23bに電圧Vpを印加しても、4端子スイッチ21bが接続している出力線24aを充電する電流は流れない。
【0047】
なお、4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子と4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子とを、同時にオンしてもよい。
【0048】
続いて、
図5Bに示すように、4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子をオンする。すなわち、制御線25bを接地し、出力線24a、24bに電圧Vpを印加する。これにより出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子がオンする。なお、制御線25bに電圧−Vpを印加し、出力線24a、24bを接地してもよい。
【0049】
このとき、例えば、最初に4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子をオンし、次に4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオンするとする。4端子スイッチ21eの抵抗変化素子をオンするときには、4端子スイッチ21bの2つの抵抗変化素子はオンしていることから、4端子スイッチ21bはオンしている。しかしながら、4端子スイッチ21bの制御線25bに接続する整流素子によって、制御線25bと出力線24aとは電気的に分離されている。このため、4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオンするために制御線25bを接地しても、4端子スイッチ21bが接続している出力線24aを放電する電流は流れない。
【0050】
なお、4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子と4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子とを、同時にオンしてもよい。
【0051】
次に、まず、
図5Bに示す4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子をオンし、続いて、
図5Aに示す4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンする場合を説明する。
【0052】
まず、
図5Bに示すように、4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子をオンする。すなわち、制御線25bを接地し、出力線24a、24bに電圧Vpを印加する。これにより出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子がオンする。なお、制御線25bに電圧−Vpを印加し、出力線24a、24bを接地してもよい。
【0053】
このとき、例えば、最初に4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子をオンし、次に4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオンするとする。4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオンするときには、4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子はオンしていないので、4端子スイッチ21bはオンしていない。よって、入力線23bと出力線24aとは4端子スイッチ21bにより電気的に分離されている。このため、4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオンするときに出力線24bに電圧Vpを印加しても、4端子スイッチ21bが接続している出力線24aを充電する電流は流れない。
【0054】
なお、4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子と4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子とを、同時にオンしてもよい。
【0055】
続いて、
図5Aに示すように、4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンする。すなわち、制御線25dと制御線25eを接地し、入力線23bに電圧Vpを印加する。これにより入力線23bに接続する抵抗変化素子がオンする。なお、制御線25dと制御線25eに電圧−Vpを印加し、入力線23bを接地してもよい。
【0056】
このとき、例えば、最初に4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンし、次に4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンするとする。4端子スイッチ21eの抵抗変化素子をオンするときには、4端子スイッチ21bの2つの抵抗変化素子はオンしていることから、4端子スイッチ21bはオンしている。これにより、入力線23bと出力線24aとは電気的に接続されている。このため、4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンするために入力線23bに電圧Vpを印加すると、4端子スイッチ21bが接続している出力線24aを充電する電流が流れてしまう。
【0057】
よって、スイッチ回路2は、先に、4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子を順にオンし、続いて、4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子を順にオンする場合を含まない。
【0058】
なお、4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子と4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子とを、同時にオンしてもよい。これにより、前記のような、4端子スイッチ21bが接続している出力線24aを充電する電流を抑制することができる。
【0059】
スイッチ回路2では、以上のように、入力線23bに入力する信号を出力線24aと出力線24bとに出力する場合、まず入力線に接続する抵抗変化素子の組をオンし、続いて出力線に接続する抵抗変化素子の組をオンする。もしくは、入力線に接続する抵抗変化素子の組と出力線に接続する抵抗変化素子の組とを、組ごとに一斉にオンする。
【0060】
以上によりスイッチ回路2では、マルチファンアウトに対応した複数のスイッチをスイッチさせる際に、オン動作しているスイッチが接続している入力線もしくは出力線上でオン状態にある別のスイッチをなくすることができる。もしくはオン状態にある別のスイッチによる不要な電流を抑制することができる。
【0061】
これに対して、スイッチ回路2の方法とは異なり、始めに4端子スイッチ21bの2つの抵抗変化素子をオンし、次に4端子スイッチ21eの2つの抵抗変化素子をオンする方法の場合、4端子スイッチ21eをオンする時には既に4端子スイッチ21bがオンしている。このとき、4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオンするために入力線23bに電圧Vpを印加すると、既にオンしている4端子スイッチ21bを介して出力線24aを充電する電流が流れてしまう。一方で、4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオンする場合は、4端子スイッチ21bの制御線25bに接続する整流素子によって、制御線25bと出力線24aとは電気的に分離されている。このため、4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオンするために制御線25bを接地しても、出力線24aを放電する電流は流れない。
【0062】
以上のように、始めに4端子スイッチ21bの2つの抵抗変化素子をオンし、次に4端子スイッチ21eの2つの抵抗変化素子をオンする既知の方法では、4端子スイッチ21eをオンする時に既にオンしている4端子スイッチ21bを介して不要な電流が流れてしまう。このため、この既知の方法は、本実施形態のスイッチ回路2の方法とは区別される。
【0063】
図6Aおよび
図6Bは、入力線23a、23b、23cに入力する信号を出力線24bに出力するために、4端子スイッチ21d、21e、21fをオンする動作を説明するための図である。当該動作の開始に際しては、4端子スイッチ21a〜21iは高抵抗状態であり、入力線23a〜23cと出力線24a〜24cと制御線25a〜25fはハイインピーダンス状態であるとする。
【0064】
まず
図6Aに示すように、4端子スイッチ21d、21e、21fの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオンする。すなわち、制御線25a、25b、25cを接地し、出力線24bに抵抗変化素子をオフからオンに遷移させるために十分な電圧Vpを印加する。これにより出力線24bに接続する抵抗変化素子がオンする。なお、制御線25a、25b、25cに電圧−Vpを印加し、出力線24bを接地してもよい。
【0065】
ここで、4端子スイッチ21d、21e、21fの出力線24bに接続する抵抗変化素子の順でオンするとする。この場合、
図5Aで説明した理由と同じ理由により、4端子スイッチ21e、21fの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオンするときに、出力線24bに電圧Vpを印加しても、4端子スイッチ21dが接続している入力線23aを充電する電流は流れない。
【0066】
なお、4端子スイッチ21d、21e、21fの出力線24bに接続する抵抗変化素子を、同時にオンしてもよい。
【0067】
次に
図6Bに示すように、4端子スイッチ21d、21e、21fの入力線23a、23b、23cに接続する抵抗変化素子をオンする。すなわち、制御線25eを接地し、入力線23a、23b、23cに電圧Vpを印加する。これにより入力線23a、23b、23cに接続する抵抗変化素子がオンする。なお、制御線25eに電圧−Vpを印加し、入力線23a、23b、23cを接地してもよい。
【0068】
ここで、4端子スイッチ21d、21e、21fの入力線23a、23b、23cに接続する抵抗変化素子の順でオンするとする。この場合、
図5Bで説明した理由と同じ理由により、4端子スイッチ21e、21fの入力線23b、23cに接続する抵抗変化素子をオンするときに、制御線25eを接地しても、4端子スイッチ21dが接続している入力線23aを放電する電流は流れない。
【0069】
なお、4端子スイッチ21d、21e、21fの入力線23a、23b、23cに接続する抵抗変化素子を、同時にオンしてもよい。
【0070】
スイッチ回路2では、以上のように、入力線23a、23b、23cに入力する信号を出力線24bに出力する場合、まず出力線に接続する抵抗変化素子の組をオンし、続いて入力線に接続する抵抗変化素子の組をオンする。もしくは、出力線に接続する抵抗変化素子の組と入力線に接続する抵抗変化素子の組とを、組ごとに一斉にオンする。
【0071】
以上により、
図5Aと
図5Bで説明した理由と同じ理由により、マルチファンアウトに対応した複数のスイッチをオンする際に、スイッチ動作中のスイッチが接続している入力線もしくは出力線上でオン状態にある別のスイッチをなくすることができる。もしくはオン状態にある別のスイッチによる不要な電流を抑制することができる。
【0072】
図7Aおよび
図7Bは、入力線23bに入力する信号を出力線24a、24bに出力するためにオンしている4端子スイッチ21b、21eを、オフする動作を説明するための図である。当該動作の開始に際しては、4端子スイッチ21a〜21iの内の4端子スイッチ21b、21e以外は高抵抗状態であり、入力線23a〜23cと出力線24a〜24cと制御線25a〜25fはハイインピーダンス状態であるとする。
【0073】
最初に、まず、
図7Aに示す4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子をオフし、続いて、
図7Bに示す4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフする場合を説明する。
【0074】
まず、
図7Aに示すように、4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子をオフする。すなわち、制御線25bに抵抗変化素子をオンからオフに遷移させるために十分な電圧Vpを印加し、出力線24a、24bを接地する。これにより、出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子がオフする。なお、制御線25bを接地し、出力線24a、24bに電圧−Vpを印加してもよい。
【0075】
このとき、例えば、最初に4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子をオフし、次に4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオフするとする。4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子をオフするときには、4端子スイッチ21eはオンしている。しかしながら、4端子スイッチ21eの制御線25bに接続する整流素子によって、制御線25bと4端子スイッチ21eとは電気的に分離されている。このため、4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子をオンするために制御線25bに電圧Vpを印加しても、4端子スイッチ21eを介しての電流は流れない。
【0076】
なお、4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子と4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子とを、同時にオフしてもよい。
【0077】
続いて、
図7Bに示す4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフする。すなわち、入力線23bを接地し、制御線25d、25eに電圧Vpを印加する。これにより、入力線23bに接続する抵抗変化素子がオフする。なお、入力線23bに電圧−Vpを印加し、制御線25d、25eを接地してもよい。
【0078】
このとき、例えば、最初に4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフし、次に4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフするとする。4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフするときには、4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子はオフしている。よって、入力線23bと出力線24bとは電気的に分離されている。このため、4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフするために入力線23bを接地しても、出力線24bを放電する電流は流れない。
【0079】
なお、4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子と4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子とを、同時にオフしてもよい。
【0080】
次に、まず、
図7Bに示す4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフし、続いて、
図7Aに示す4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子をオフする場合を説明する。
【0081】
まず、
図7Bに示す4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフする。すなわち、入力線23bを接地し、制御線25d、25eに電圧Vpを印加する。これにより、入力線23bに接続する抵抗変化素子がオフする。なお、入力線23bに電圧−Vpを印加し、制御線25d、25eを接地してもよい。
【0082】
このとき、例えば、最初に4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフし、次に4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフするとする。4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフするときには、4端子スイッチ21eはオンしている。よって、入力線23bと出力線24bとは電気的に接続されている。このため、4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子をオフするために入力線23bを接地すると、出力線24bを放電する電流が流れてしまう。
【0083】
よって、スイッチ回路2は、先に、4端子スイッチ21b、21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子を順にオフし、続いて、4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子を順にオフする場合を含まない。
【0084】
なお、4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子と4端子スイッチ21eの入力線23bに接続する抵抗変化素子とを、同時にオフしてもよい。これにより、出力線24bを放電する電流を抑制することができる。
【0085】
続いて、
図7Aに示すように、4端子スイッチ21b、21eの出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子をオフする。すなわち、制御線25bに電圧Vpを印加し、出力線24a、24bを接地する。これにより、出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子がオフする。なお、制御線25bを接地し、出力線24a、24bに電圧−Vpを印加してもよい。
【0086】
このとき、例えば、最初に4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子をオフし、次に4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子をオフするとする。4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子をオフするときには、4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子はオンしている。しかしながら、4端子スイッチ21eの制御線25bに接続する整流素子によって、制御線25bと出力線24bとは電気的に分離されている。このため、4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子をオンするために制御線25bを接地しても、4端子スイッチ21eが接続している出力線24bを放電する電流は流れない。
【0087】
なお、4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子と4端子スイッチ21eの出力線24bに接続する抵抗変化素子とを、同時にオフしてもよい。
【0088】
以上のように、スイッチ回路2では、入力線23bに入力する信号を出力線24aと出力線24bとに出力するためにオンしている4端子スイッチ21b、21eをオフする場合、まず出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子の組をオフし、続いて入力線23bに接続する抵抗変化素子の組をオフする。もしくは、出力線24a、24bに接続する抵抗変化素子の組と入力線23bに接続する抵抗変化素子の組とを、組ごとに一斉にオフする。
【0089】
これによりスイッチ回路2では、マルチファンアウトに対応した複数のスイッチをオフする際に、オフ動作しているスイッチが接続している入力線もしくは出力線上でオン状態にある別のスイッチによる不要な電流を抑制することができる。
【0090】
これに対して、スイッチ回路2の方法とは異なり、始めに4端子スイッチ21bの2つの抵抗変化素子をオフし、次に4端子スイッチ21eの2つの抵抗変化素子をオフする方法の場合、4端子スイッチ21bをオフする時には4端子スイッチ21eがオンしている。このとき、4端子スイッチ21bの入力線23bに接続する抵抗変化素子を先にオフする場合、入力線23bを接地すると、オンしている4端子スイッチ21eを介して出力線24bを放電する電流が流れてしまう。一方で、4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子を先にオフする場合、4端子スイッチ21eの制御線25bに接続する整流素子によって、制御線25bと出力線24bとは電気的に分離されている。このため、4端子スイッチ21bの出力線24aに接続する抵抗変化素子をオンするために制御線25bを接地しても、出力線24bを放電する電流は流れない。
【0091】
以上のように、始めに4端子スイッチ21bの2つの抵抗変化素子をオフし、次に4端子スイッチ21eの2つの抵抗変化素子をオフする既知の方法では、4端子スイッチ21bをオフするときに、オンしている4端子スイッチ21eを介して電流が流れてしまう。このため、この既知の方法は、本実施形態のスイッチ回路2の方法とは区別される。
【0092】
本実施形態のスイッチ回路2では、以上のように、入力線もしくは出力線の内の一つに接続する4端子スイッチの内の複数の4端子スイッチの抵抗変化素子の内の、入力線に接続する抵抗変化素子の組と出力線に接続する抵抗変化素子の組の、順序を指定して組ごとにオンもしくはオフする。
【0093】
すなわち、入力線もしくは出力線の内の一つに接続する4端子スイッチの内の複数の4端子スイッチの抵抗変化素子の内の、前記の入力線もしくは出力線の内の前記一つに接続する抵抗変化素子の組から先にオンする。また、入力線もしくは出力線の内の一つに接続する4端子スイッチの内の複数の4端子スイッチの抵抗変化素子の内の、前記の入力線もしくは出力線の内の前記一つに接続する抵抗変化素子とは別の抵抗変化素子の組から先にオフする。
【0094】
また、本実施形態のスイッチ回路2では、入力線もしくは出力線の内の一つに接続する4端子スイッチの内の複数の4端子スイッチの抵抗変化素子の内の、入力線に接続する抵抗変化素子の組と出力線に接続する抵抗変化素子の組を、組ごとに一斉にオンもしくはオフする。
【0095】
以上により、本実施形態のスイッチ回路2によれば、マルチファンアウトに対応した複数のスイッチをスイッチさせる際に、スイッチ動作中のスイッチが接続している入力線もしくは出力線上でオン状態にある別のスイッチをなくすることができる。もしくはオン状態にある別のスイッチによる不要な電流を抑制することができる。これにより、寄生容量の影響によるスイッチ動作時間の遅延やリーク電流が抑制される。その結果、短いパルスでの高速なスイッチ動作が高い信頼性を有して可能となる。
【0096】
図8Aは、本実施形態のスイッチ回路2を用いた半導体装置の構成を示すブロック図である。半導体装置200は、多層銅配線を有する半導体集積回路20を有し、スイッチ回路2を多層銅配線内に組み込むことができる。また、半導体集積回路20はスイッチ回路2を動作させるドライバ回路3を設けることができる。半導体装置200は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタやバイポーラトランジスタを有するメモリ回路、マイクロプロセッサなどの論理回路、これらを同時に搭載した回路、などの半導体集積回路20を有する。半導体装置200はまた、樹脂や金属やセラミックなどでパッケージされていてもよい。
【0097】
図8Bは、スイッチ回路2を動作させるドライバ回路3の構成を示すブロック図である。ドライバ回路3は、入力線電圧印加回路4と、出力線電圧印加回路5と、制御線電圧印加回路6と、制御回路7とを有する。入力線電圧印加回路4と出力線電圧印加回路5と制御線電圧印加回路6は、各々、入力線と出力線と制御線へ、所定の電圧の印加や接地を行う。制御回路7は、入力線電圧印加回路4や出力線電圧印加回路5や制御線電圧印加回路6を制御して、入力線や出力線や制御線に、
図5Aや
図5Bや
図6Aや
図6Bや
図7Aや
図7Bで説明した本実施形態のスイッチ方法の電圧印加スキームを実現する。ドライバ回路3は、CMOSトランジスタと多層銅配線により作製される。
【0098】
また、半導体装置200に電子回路装置、光回路装置、量子回路装置、マイクロマシン、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などを接続することができ、スイッチ回路2を接続の際のスイッチとして用いることができる。また、本実施形態のスイッチ回路2は、スイッチ以外にも、不揮発性メモリとして用いることができる。
【0099】
図9は、本実施形態のスイッチ回路を用いた半導体集積回路の構成例を示す図である。半導体集積回路20’は、4端子スイッチ21を有するクロスバスイッチであるスイッチ回路2’と、これに接続するロジックブロックを有する。ロジックブロックは、例えば、スイッチ回路2’に接続したLUT(Look Up Table)を有する。LUTは、スイッチ回路2’により切り替えられた信号を入力し、入力した信号に対する値を出力するなどの信号の入出力を行うことができる。スイッチ回路2’はまた、隣接した別のクロスバスイッチへ信号を伝達する短距離信号線や、離れたクロスバスイッチへ信号を伝達する長距離信号線を有していてもよい。また、クロスバスイッチ同士の信号線間で信号を接続/切断するスイッチを有していてもよい。
【0100】
図10は、本実施形態のスイッチ回路を用いた半導体集積回路であるロジックブロックの構成例を示す図である。ロジックブロックは、ルックアップテーブルとDフリップフロップを有し、ルックアップテーブルは、ロジック構成を記憶するデータメモリを有する。データメモリは、4端子スイッチ21を有するスイッチ回路2の構成を用いることにより、不揮発性を実現することができ、消費電力を抑制することができる。
【0101】
図11は、本実施形態のスイッチ回路2を構成する4端子スイッチが、半導体集積回路に集積される際の具体的な構成例を示す断面図であるが、これには限定されない。
【0102】
4端子スイッチ122は、半導体基板101上の多層配線層の内部に形成される。多層配線層は、半導体基板101上に、層間絶縁膜102、Low−k膜103、層間絶縁膜104、バリア絶縁膜107、保護絶縁膜114、層間絶縁膜115、Low−k膜116、層間絶縁膜117、及びバリア絶縁膜121の順に積層した絶縁積層体を有する。多層配線層は、層間絶縁膜104及びLow−k膜103に形成された配線溝に第1バリアメタルA106a、第1バリアメタルB106bを介して第1配線A105a、第1配線B105bが埋め込まれている。
【0103】
多層配線層はまた、層間絶縁膜117及びLow−k膜116に形成された配線溝に第2配線A118a、第2配線B118bが埋め込まれている。さらに、層間絶縁膜115、保護絶縁膜114、第2ハードマスク膜113、及び第1ハードマスク膜112に形成された下穴にビアA119a、ビアB119bが埋め込まれている。第2配線A118aとビアA119a、及び第2配線B118bとビアB119bは、各々一体となっている。第2配線A118aとビアA119a、及び第2配線B118bとビアB119bの側面乃至底面は、第2バリアメタルA120a、及び第2バリアメタルB120bによって覆われている。
【0104】
多層配線層は、バリア絶縁膜107に形成された開口部で抵抗変化素子の活性電極(抵抗変化素子26の端子28aに相当し、以降、第1電極と呼ぶ)となる第1配線A105a及び第1配線B105b、第1配線A105a及び第1配線B105bに挟まれた層間絶縁膜104を有する。さらに、バリア絶縁膜107の開口部及び開口部の壁面乃至バリア絶縁膜107上に、イオン伝導層109、抵抗変化素子の不活性電極となる第2電極110(抵抗変化素子26の端子28bに相当)を有する。第1配線A105a(第1電極)とイオン伝導層109と第2電極110の組、及び第1配線B105b(第1電極)とイオン伝導層109と第2電極110の組は、各々抵抗変化素子を形成している。
【0105】
さらに、多層配線層は、整流素子の一方の電極を兼用する第2電極110(整流素子27の端子28bに相当)上に、整流層スタック108、及び整流素子のもう一方の電極である第3電極111(整流素子27の端子28cに相当)の順の積層を有する。第2電極110と整流層スタック108と第3電極111は、2つの抵抗変化素子上の各々に整流素子を形成している。さらに、第3電極111上に第1ハードマスク膜112及び第2ハードマスク膜113が形成されている。イオン伝導層109、第2電極110、整流層スタック108、第3電極111、第1ハードマスク膜112及び第2ハードマスク膜113の積層体の上面乃至側面は、保護絶縁膜114で覆われている。
【0106】
第1配線A105a及び第1配線B105bの一部を、抵抗変化素子の活性電極(第1電極)とすることで、製造工程を簡略化しながら、電極抵抗の低減が可能である。すなわち、既知の銅ダマシン配線プロセスに対して、少なくとも3枚のフォトマスクを用いる工程を追加するだけで、多層配線中へ抵抗変化素子と整流素子とを直列接続したスイッチを2つ有する4端子スイッチ122を形成することができる。これにより、電極抵抗の低減と低コスト化を同時に実現することができる。
【0107】
4端子スイッチ122は、バリア絶縁膜107に形成された開口部で、イオン伝導層109と第1配線A105a及び第1配線B105bが直接接している。このとき、イオン伝導層109の一部を構成する金属が第1配線A105a、第1配線B105bに拡散し、合金層を形成している。
【0108】
4端子スイッチ122は、第2電極110上に整流層スタック108を有し、整流層スタック108は上面で第3電極111に接している。第3電極111は2つの領域にエッチングによって電気的に分離されている。この際、整流層スタック108は第3電極111と同じく2つに分離されていても良いし、分離されていなくても良い。第3電極111上には第3電極111と同じく分離された第1ハードマスク膜112及び第2ハードマスク膜113が存在している。第2ハードマスク膜113は製造工程中に消滅しても良い。4端子スイッチ122は、第3電極111上でビアA119a及びビアB119bと第3電極111とが第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bを介して電気的に接続されている。
【0109】
4端子スイッチ122は、整流層スタック108を介して、第2電極110と第1配線A105aもしくは第1配線B105b間に電圧の印加、あるいは電流を流すことで、オン/オフの制御を行う。例えば、イオン伝導層109への第1配線A105a及び第1配線B105bを形成する金属から供給される金属イオンの電界拡散を利用して、オン/オフの制御を行う。この際、整流層スタック108における電流によってオン時の抵抗が決まる。
【0110】
半導体基板101は、半導体素子が形成された基板である。半導体基板101には、例えば、シリコン基板、単結晶基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、TFT(Thin Film Transistor)基板、液晶製造用基板等の基板を用いることができる。
【0111】
層間絶縁膜102は、半導体基板101上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜102には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜102は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0112】
Low−k膜103は、層間絶縁膜102、104間に存する誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等が用いられる。Low−k膜103には、第1配線A105a、第1配線B105bを埋め込むための配線溝が形成され、当該配線溝に第1バリアメタルA106a、第1バリアメタルB106bを介して第1配線A105a、第1配線B105bが埋め込まれている。
【0113】
層間絶縁膜104は、Low−k膜103上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜104には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜104は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜104には、第1配線A105a、第1配線B105bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第1バリアメタルA106a、第1バリアメタルB106bを介して第1配線A105a、第1配線B105bが埋め込まれている。
【0114】
第1配線A105a及び第1配線B105bは、層間絶縁膜104及びLow−k膜103に形成された配線溝に第1バリアメタルA106a及び第1バリアメタルB106bを介して埋め込まれた配線である。第1配線A105a及び第1配線B105bは、4端子スイッチ122の第1電極(活性電極)を兼ね、イオン伝導層109と直接接している。イオン伝導層A109aの上面は第2電極110(不活性電極)に直接接している。第1配線A105a及び第1配線B105bを構成する金属には、イオン伝導層109において拡散、イオン伝導可能な金属が用いられ、例えば、銅等を用いることができるが、これには限定されない。第1配線A105a及び第1配線B105bを構成する金属は、例えば、銅とアルミニウムなどとの合金でもよい。
【0115】
第1バリアメタルA106a、第1バリアメタルB106bは、第1配線A105a、第1配線B105bを形成する金属が層間絶縁膜104や下層へ拡散することを防止するために、配線の側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。第1バリアメタルA106a、第1バリアメタルB106bには、例えば、第1配線A105a、第1配線B105bが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、またはそれらの積層膜を用いることができる。
【0116】
バリア絶縁膜107は、第1配線A105a、第1配線B105bを含む層間絶縁膜104上に形成される。バリア絶縁膜107は、第1配線A105a、第1配線B105bを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防いだり、層間絶縁膜115中への第1配線A105a、第1配線B105bを形成する金属の拡散を防いだりする。さらに、第3電極111、整流層スタック108、第2電極110、イオン伝導層109の加工時にエッチングストップ層としての役割を有する。バリア絶縁膜107には、例えば、SiC膜、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、及びそれらの積層構造等を用いることができる。バリア絶縁膜107は、保護絶縁膜114及び第1ハードマスク膜112と同一材料であることが好ましい。
【0117】
イオン伝導層109は、高抵抗状態と低抵抗状態とで抵抗が遷移する膜である。第1配線A105a、第1配線B105b(活性電極)を形成する金属から生成される金属イオンの作用(拡散、イオン伝導、金属析出など)により、抵抗が変化する材料を用いることができる。低抵抗状態(オン)への抵抗変化を金属イオンの還元による電極間の金属架橋の形成で行い、高抵抗状態(オフ)への抵抗変化を金属架橋の消滅で行う場合、イオン伝導可能な膜が用いられる。
【0118】
イオン伝導層109は、第1配線A105a、第1配線B105bに接する金属酸化物のイオン伝導層と、第2電極110に接するポリマーのイオン伝導層との積層構造とすることができる。
【0119】
ポリマーのイオン伝導層は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成することができる。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。例えば、原料の供給量は10〜200sccm、ヘリウムの供給は原料気化器経由で500sccm供給することができるが、これには限定されない。
【0120】
金属酸化物のイオン伝導層は、第1配線A105a、第1配線B105bを形成する金属が、ポリマーのイオン伝導層を堆積している間の加熱やプラズマでポリマーのイオン伝導層中に拡散することを防止する。さらに、このとき、第1配線A105a、第1配線B105bが酸化され、ポリマーのイオン伝導層への拡散が促進されることを防止する。金属酸化物のイオン伝導層を形成する金属は、例えば、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、チタンなどである。これらの金属は、金属の成膜後、ポリマーのイオン伝導層の成膜チャンバー内の減圧下で酸素雰囲気に曝され、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンなどとなり、イオン伝導層109の一部となる。
【0121】
金属酸化物のイオン伝導層を形成する金属膜の好ましい膜厚は0.5〜1nmである。金属膜は、積層や単層とすることができる。金属膜の成膜はスパッタリングで行うことが好ましい。スパッタリングによりエネルギーを得た金属原子またはイオンは第1配線A105a、第1配線B105bに突入、拡散し、合金層を形成する。イオン伝導層A109は、第1配線A105a、第1配線B105b、第1配線A105a及び第1配線B105bに挟まれた層間絶縁膜104、バリア絶縁膜107の開口部に形成されているテーパ面、乃至バリア絶縁膜107上に形成される。
【0122】
第2電極110は、4端子スイッチ122の抵抗変化素子の不活性電極であり、イオン伝導層109と直接接している。第2電極110には、以下の2種類の金属の合金を用いることができる。一方は、第1配線A105a、第1配線B105bを形成する金属よりもイオン化しにくく、イオン伝導層109及びイオン伝導層B109bにおいて拡散やイオン伝導しにくい金属であるルテニウムである。もう一方は、第1配線A105a、第1配線B105bを形成する金属と密着性の良いチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどである。
【0123】
ルテニウムと合金化する金属は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)での標準生成ギブズエネルギーがルテニウムよりも負方向に大きい金属であることが望ましい。標準生成ギブズエネルギーがルテニウムより負方向に大きいチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムは、ルテニウムに比べて化学反応が自発的に起こりやすく反応性が高い。このため、ルテニウムと合金化することで、第1配線A105a、第1配線B105bを形成する金属で形成された金属架橋と第2電極110との密着性が向上する。
【0124】
一方、ルテニウムを含まないチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどの添加金属のみだと反応性が高くなってしまい、オフ状態に遷移しなくなる。オン状態からオフ状態への遷移は、金属架橋の酸化反応(溶解反応)によって進行する。第2電極110を構成する金属の標準生成ギブズエネルギーが、第1配線A105a、第1配線B105bを形成する金属よりも負方向に大きくなった場合、金属架橋の酸化反応よりも第2電極110を構成する金属の酸化反応が進行する。このため、オフ状態に遷移できなくなる。よって、第2電極110に使用する金属材料は、標準生成ギブズエネルギーが銅よりも負方向に小さいルテニウムと合金化する必要がある。
【0125】
さらに、第2電極110を構成する金属に金属架橋の成分である銅が混入すると、標準ギブズエネルギーが負方向に大きい金属を添加した効果が薄れるため、ルテニウムに添加する金属は銅および銅イオンに対してバリア性のある材料が好ましい。例えば、タンタル、チタンなどであり、特にチタンはオフへの遷移とオン状態の安定性に優れている。
【0126】
一方、添加金属の量は大きいほど、オン状態が安定化し、5at%程度の添加でも安定性が向上する。第2電極110をルテニウムとチタンの合金とし、チタンの含有率を20〜30at%とすることが好ましい。当該ルテニウム合金における、ルテニウムの含有率は、60at%以上90at%以下が望ましい。
【0127】
ルテニウム合金の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて合金を成膜する場合、ルテニウムと添加金属との合金ターゲットを用いる方法や、ルテニウムターゲットと添加金属のターゲットを同一チャンバー内で同時にスパッタリングするコスパッタ法がある。さらに、予め添加金属の薄膜を形成し、その上に、スパッタリング法を用いてルテニウムを成膜し、衝突原子のエネルギーで合金化するインターミキシング法がある。コスパッタ法およびインターミキシング法を用いると、合金の組成を変えることができる。インターミキシング法を採用する際には、ルテニウムの成膜を完了した後に、混合状態の均一化のために、400℃以下での熱処理を加えることが好ましい。
【0128】
また、第2電極110は、抵抗変化素子の不活性電極であるとともに、整流素子の一方の電極でもあることから、2層構造であることが望ましい。第2電極110は、イオン伝導層109と接する側をルテニウム合金とし、整流層スタック108に接する側を金属の窒化物とすることができる。特に大気中で安定で、酸化被膜を作り難く、酸素や銅イオンに対してバリア性を有するチタンやタンタルの窒化物が好ましい。酸化被膜が存在すると、整流素子のオン電流の減少や、酸化被膜の欠陥を起因とした絶縁破壊電圧の低下が生じる。
【0129】
窒化チタンや窒化タンタルは、ルテニウム合金の上層にスパッタリング法により真空一貫で成膜することができる。スパッタリング法を用いて窒化チタンや窒化タンタルを成膜する場合、窒素とアルゴンの混合ガスのプラズマを用いて金属ターゲットを蒸発させるリアクティブスパッタ法を用いることが好ましい。金属ターゲットより蒸発した金属は窒素と反応し、金属窒化物となって基板上に成膜される。
【0130】
窒化チタンや窒化タンタルをスパッタリング法で成膜する際、窒素ガスに対するアルゴンガスの割合を50%以上にすることが望ましい。特にチタンでは、窒素ガスに対するアルゴンガスの割合を50%以上とすることで、窒化チタン中の窒素の含有率を50%以下にできる。窒化チタンの窒素含有率が増加すると、比抵抗が増加し、電極と非晶質シリコン間におけるコンタクト抵抗が高くなる。窒化された金属で構成された電極において、窒素含有率を下げることでコンタクト抵抗が低減し、整流素子のオン時の電流が増加し、好適な整流特性に寄与する。
【0131】
整流層を有する整流層スタック108は双極性の整流効果を有し、印加電圧に対して電流が非線形的に増加する特性を有する。整流層スタック108はバッファ層である非晶質シリコン、整流層である窒化シリコン、バッファ層である非晶質シリコンの順で積層することで、優れた非線形性を生じる。
【0132】
バッファ層は、整流層である窒化チタンや窒化タンタルと第2及び第3電極層とのバンドオフセットを緩和し、オン時の電導性を向上させる。このため、バッファ層は、バッファ層の仕事関数が整流層である窒化チタンや窒化タンタルの仕事関数よりも大きいことが好ましい。さらに、バッファ層の仕事関数は第2及び第3電極の仕事関数より小さいことが好ましい。
【0133】
バッファ層は非晶質シリコンで構成されることができる。非晶質シリコンは、シランを原料ガスに用いたプラズマCVD法で堆積される。例えば、基板温度が350〜400℃の範囲に保持された300mmウェハ用平行平板プラズマCVDリアクターに、シランガスを100〜300sccm導入し、アルゴンガスを1〜2slpm、ヘリウムガスを1〜2slpmの範囲で導入する。さらに、圧力300〜600Pa、50〜200WのRF(Radio Frequency)電力をシャワーヘッドに印加することで、非晶質シリコン膜が堆積する。
【0134】
非晶質シリコンには、シリコン同士の共有結合が切れたダングリングボンドが発生しやすい。ダングリングボンドの一部はシランの水素で終端されるものの、終端されていないダングリングボンドは深いトラップ準位を形成する可能性がある。このトラップにキャリアが捕縛されるとオン電流の一部が制限される。成膜時にCVDリアクターに前記ガスに加えて水素ガスを導入することで、非晶質シリコンの水素化を促進できる。水素ガスを100sccm以上導入することで、ダングリングボンドの水素終端化が促進する。これにより、深いトラップ準位が減少してホッピング伝導が容易になりオン電流が向上する。
【0135】
整流層は、窒化シリコンで構成されることができる。窒化シリコンは、シランと窒素ガスを用いたプラズマCVD法で堆積される。例えば、基板温度が350〜400℃の範囲に保持された平行平板プラズマCVDリアクターに、シランガスを30sccm〜400sccm、窒素ガスを1000sccm導入する。さらに、圧力600Pa、200WのRF電力をシャワーヘッドに印加することで、窒化シリコン膜が堆積する。
【0136】
整流層は、整流素子の整流特性を担う層であり、低電圧印加時は絶縁性を、高電圧印加時は導電性を示す。高電圧印加時はトンネル効果によって電導性が発現するため、トンネル効果が発生する窒化シリコン膜は薄膜であることが望ましい。ただし、薄膜化しすぎるとリーク電流が増加するため、窒化シリコン膜の比抵抗は高いことが望ましい。そのため、窒化シリコン膜は、窒素含有率が高く、化学量論組成(ストイキオメトリ)に近い含有率を有する膜が望ましい。
【0137】
また、整流層は、バッファ層とのバンドオフセットが大きいと高電圧印加時にオン電流の一部を制限してしまう。このため、トンネル効果が発生する窒化シリコン膜とバッファ層との間に、トンネル効果が発生する窒化シリコン膜よりもバンドギャップが小さい別の窒化シリコン膜を配置することが望ましい。バンドギャップの調整は、窒化シリコン膜中の窒素の含有率を低減することによって行うことができる。
【0138】
具体的には、トンネル効果が発生する窒化シリコン膜の成膜時はCVDリアクターに導入するシランのガス流量を30sccm〜50sccm程度とし、バンドギャップの小さい窒化シリコン膜の成膜時はシランのガス流量を300sccmから400sccm程度とする。この時、窒素ガスの流量は1000sccmとする。これにより、トンネル効果が発生する窒化シリコン膜の窒素含有率を50%以上にでき、バンドギャップを調整する窒化シリコン膜の窒素含有率を50%以下にできる。なお、整流層とバッファ層の成膜は、大気暴露せずに、CVDリアクター内で連続的に成膜を行うことができる。
【0139】
第3電極111は、整流素子のもう一方の電極となる金属で、金属の窒化物で構成される。特に大気中で安定で、酸化被膜を作り難く、酸素や銅イオンに対してバリア性を有するチタンやタンタルの窒化物が好ましい。酸化被膜が存在すると、整流素子のオン電流の減少、酸化被膜の欠陥を起因とした絶縁破壊電圧の低下が生じる。
【0140】
窒化チタンや窒化タンタルは、スパッタリング法により真空一貫で成膜する。窒化する場合はチャンバー内に窒素を導入し、リアクティブスパッタリング法により窒化物を成膜する。スパッタリング法を用いて窒化チタンや窒化タンタルを成膜する場合、窒素とアルゴンの混合ガスのプラズマを用いて金属ターゲットを蒸発させるリアクティブスパッタ法を用いることが好ましい。金属ターゲットより蒸発した金属は、窒素と反応し、金属窒化物となって基板上に堆積する。
【0141】
窒化チタンや窒化タンタルをスパッタリング法で成膜する際、窒素ガスに対するアルゴンガスの割合を50%以上にすることが望ましい。特にチタンでは、窒素ガスに対するアルゴンガスの割合を50%以上とすることで、窒化チタン中の窒素の含有率を50%以下にできる。窒化チタンの窒素含有率が増加すると、比抵抗が増加し、電極と非晶質シリコン間におけるコンタクト抵抗が高くなる。窒化された金属で構成された電極において、窒素含有率を下げることでコンタクト抵抗が低減し、整流素子のオン時の電流が増加し、好適な整流特性に寄与する。
【0142】
第1ハードマスク膜112は、第3電極111、第2電極110、整流層スタック108、イオン伝導層109をエッチングする際のハードマスク膜兼パッシベーション膜となる膜である。第1ハードマスク膜112には、例えば、窒化シリコン膜、シリコン酸化膜等、それらの積層を用いることができる。第1ハードマスク膜112は、保護絶縁膜114、およびバリア絶縁膜107と同一材料を含むことが好ましい。
【0143】
第2ハードマスク膜113は、第3電極111、第2電極110、整流層スタック108、イオン伝導層109をエッチングする際のハードマスク膜となる膜である。第2ハードマスク膜113には、例えば、窒化シリコン膜、シリコン酸化膜等、それらの積層を用いることができる。
【0144】
4端子スイッチ122を形成するために、バリア絶縁膜107上にイオン伝導層109、第2電極110、整流層スタック108、第3電極111、第1ハードマスク膜112、第2ハードマスク膜113を成膜する。その後、2回のパターニングとエッチングを経て形成した第2ハードマスク膜113形状を4端子スイッチ122部に転写する要領で、2つの整流素子を1回のエッチング工程で分離して第2電極110上に形成する。2回のパターニングのうち、初めのパターニングで整流層スタック108を残す領域のレジストを残し、第2ハードマスク膜113の膜厚の一部を加工する。具体的には60%程度を加工する。その後、2回目のパターニングで整流層スタック108を残す領域を含む、4端子スイッチ122を形成する領域のレジストを残し、第2ハードマスク膜113の膜厚の残りを加工する。
【0145】
保護絶縁膜114は、4端子スイッチ122にダメージを与えることなく、さらにイオン伝導層109からの酸素の脱離を防ぐ機能を有する絶縁膜である。保護絶縁膜114には、例えば、窒化シリコン膜、炭窒化シリコン膜等を用いることができる。保護絶縁膜114は、第1ハードマスク膜112及びバリア絶縁膜107と同一材料であることが好ましい。同一材料である場合には、保護絶縁膜114とバリア絶縁膜107及び第1ハードマスク膜112とが一体化して、界面の密着性が向上し、4端子スイッチ122をより強固に保護することができるようになる。
【0146】
層間絶縁膜115は、保護絶縁膜114上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜115には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜115は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜115は、層間絶縁膜117と同一材料としてもよい。層間絶縁膜115には、ビアA119a、ビアB119bを埋め込むための下穴が形成されており、当該下穴に第2バリアメタルA120a、第2バリアメタルB120bを介してビアA119a、ビアB119bが埋め込まれている。
【0147】
Low−k膜116は、層間絶縁膜115、117間に存する誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)を用いることができる。Low−k膜116には、第2配線A118a、第2配線B118bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA120a、第2バリアメタルB120bを介して第2配線A118a、第2配線B118bが埋め込まれている。
【0148】
層間絶縁膜117は、Low−k膜116上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜117には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)などを用いることができる。層間絶縁膜117は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜117は、層間絶縁膜115と同一材料としてもよい。層間絶縁膜117には、第2配線A118a、第2配線B118bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA120a、第2バリアメタルB120bを介して第2配線A118a、第2配線B118bが埋め込まれている。
【0149】
第2配線A118a、第2配線B118bは、層間絶縁膜117及びLow−k膜116に形成された配線溝に、第2バリアメタルA120a、第2バリアメタルB120bを介して埋め込まれた配線である。第2配線A118a、第2配線B118bは、ビアA119a、ビアB119bと一体になっている。ビアA119a、ビアB119bは、層間絶縁膜115、及び保護絶縁膜114、第1ハードマスク膜112及び第2ハードマスク膜113に形成された下穴に、第2バリアメタルA120a、第2バリアメタルB120bを介して埋め込まれている。ビアA119a及びビアB119bは、第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bを介して第3電極111と電気的に接続されている。第2配線A118a、第2配線B118b及びビアA119a、ビアB119bには、例えば、銅を用いることができる。
【0150】
第2バリアメタルA120a、第2バリアメタルB120bは、第2配線A118a、第2配線B118b(ビアA119a、ビアB119bを含む)を形成する金属が層間絶縁膜115、117や下層へ拡散することを防止する。このために、第2バリアメタルA120a、第2バリアメタルB120bは、第2配線A118a、第2配線B118b、ビアA119a、ビアB119bの側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜とすることができる。例えば、第2配線A118a、第2配線B118b、ビアA119a、ビアB119bが銅を主成分とする金属の場合、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、またはそれらの積層膜とすることができる。
【0151】
バリア絶縁膜121は、第2配線A118a、第2配線B118bを含む層間絶縁膜117上に形成される絶縁膜である。バリア絶縁膜121は、第2配線A118a、第2配線B118b、を形成する金属(例えば、銅)の酸化を防いだり、第2配線A118a、第2配線B118bを形成する金属の上層への拡散を防いだりする役割を有する。バリア絶縁膜121には、例えば、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、及びそれらの積層構造等を用いることができる。
【0152】
以上の、
図11に示す、多層配線層の内部に形成された4端子スイッチ122によれば、
図4Aの抵抗変化素子の電流電圧特性や、
図4Bの整流素子の電流電圧特性や、
図4Dの抵抗変化素子と整流素子の直列接続の電流電圧特性を実現することができる。
【0153】
図11に示す構成の4端子スイッチを有し、入力線と出力線を20行と50列有するクロスバスイッチであるスイッチ回路により、本実施形態のスイッチ方法と既知のスイッチ方法(比較例)とでオン動作するときの、スイッチ回路に流れる電流量を比較した。ここでのスイッチ回路は、バッファなどの周辺回路を有せず、各信号線(入力線及び出力線)及び制御線を直接電流測定用パッドに接続し、オン動作の際の各配線に流れる電流を測定できるようにした。
【0154】
本実施形態のオン動作では、入力線に接続する複数の4端子スイッチの複数の抵抗変化素子において、まず入力線に接続する抵抗変化素子の組をオンし、続いて出力線に接続する抵抗変化素子の組をオンした。また、比較例である既知のオン動作では、一つの4端子スイッチの入力線に接続する抵抗変化素子をオンし、さらに出力線に接続する抵抗変化素子をオンした後に、次以降の4端子スイッチでも同様のオン動作を繰り返した。なお、オン動作に際しては抵抗変化素子を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させるために十分な電圧である3Vを印加した。
【0155】
図12は、本実施形態のスイッチ方法と既知のスイッチ方法(比較例)でのオン動作時の電流を比較した図である。縦軸はオン動作時に測定された電流値を、横軸はオン動作させた4端子スイッチ数を各々示す。本実施形態のスイッチ方法では、オン動作時の電流は小さく、スイッチ数を増しても電流値はさほど増加せず、スイッチ数9個でも正常なオン動作が可能であった。これに対して、比較例のスイッチ方法では、オン動作時の電流は大きく、スイッチ数を増すと電流は顕著に増加し、スイッチ数9個ではオン動作ができなかった。
【0156】
当該スイッチ回路では、各配線には100fF以上の寄生抵抗が存在している。このため、比較例のスイッチ方法でのオン動作の際には、既にオンした4端子スイッチを介して配線を充電もしくは放電するための電流が流れたことにより、
図12に示す結果が得られたものと理解される。以上のように、本実施形態のスイッチ方法によれば、スイッチ動作の際に不要な電流を抑制できることが確認された。
【0157】
図13A〜
図13Mは、本実施形態のスイッチ回路の4端子スイッチを半導体集積回路に集積する際の工程を説明するための断面図である。以下では、
図13A〜
図13Mを用いて、4端子スイッチを多層配線層内部に形成する工程の具体例について説明するが、これには限定されない。
【0158】
(工程1:
図13A)
半導体基板201(例えば、半導体素子が形成された基板)上に層間絶縁膜202(例えば、酸化シリコン膜、膜厚500nm)を堆積する。さらに、Low−k膜203として比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜、膜厚150nm)を堆積する。さらに、層間絶縁膜204として酸化シリコン膜(例えば、酸化シリコン膜、膜厚100nm)を堆積する。さらに、フォトリソグラフィ法(フォトレジスト形成、ドライエッチング、フォトレジスト除去を含む)を用いて、層間絶縁膜204及びLow−k膜203に配線溝を形成する。さらに、当該配線溝に第1バリアメタルA206a、第1バリアメタルB206b(例えば、窒化タンタル/タンタル、膜厚5nm/5nm)を介して第1配線A205a、第1配線B205b(例えば、銅)を埋め込む。
【0159】
層間絶縁膜202、204は、プラズマCVD法によって形成することができる。第1配線A205a、第1配線B205bの形成では、例えば、まず、PVD(Physical Vapour Deposition)法によって第1バリアメタルA206a、第1バリアメタルB206b(例えば、窒化タンタル/タンタルの積層膜)を形成する。次に、PVD法で銅シードを形成した後、電解めっき法によって銅を配線溝内に埋設する。さらに、150℃以上の温度での熱処理後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法によって配線溝内以外の余剰の銅を除去することで形成することができる。
【0160】
このような一連の銅配線の形成方法は、当該技術分野における一般的な手法を用いることができる。ここで、CMP法とは、多層配線形成プロセス中に生じるウェハ表面の凹凸を、研磨液をウェハ表面に流しながら回転させた研磨パッドに接触させて研磨することによって平坦化する方法である。溝に埋め込まれた余剰の銅を研磨することによって埋め込み配線(ダマシン配線)を形成したり、層間絶縁膜を研磨したりすることで、平坦化を行うことができる。
【0161】
(工程2:
図13B)
第1配線A205a、第1配線B205bを含む層間絶縁膜204上にバリア絶縁膜207(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚30nm)を形成する。ここで、バリア絶縁膜207は、プラズマCVD法によって形成することができる。バリア絶縁膜207の膜厚は、10nm〜50nm程度であることが好ましい。
【0162】
(工程3:
図13C)
バリア絶縁膜207上にハードマスク膜222(例えば、酸化シリコン膜、膜厚40nm)を形成する。このとき、ハードマスク膜222は、ドライエッチング加工におけるエッチング選択比を大きく保つ観点から、バリア絶縁膜207とは異なる材料であることが好ましく、絶縁膜であっても導電膜であってもよい。ハードマスク膜222には、例えば、酸化シリコン膜、シリコン窒化膜、窒化チタン、チタン、タンタル、窒化タンタル等を用いることができ、また、窒化シリコン/酸化シリコン膜の積層膜を用いることができる。
【0163】
ハードマスク膜222上に開口部を有するフォトレジストマスク(図示省略)を形成し、当該フォトレジストマスクを用いてドライエッチングすることによりハードマスク膜222に開口部を形成する。その後、酸素プラズマアッシング等によってフォトレジストマスクを除去する。このとき、ドライエッチングは必ずしもバリア絶縁膜207の上面で停止している必要はなく、バリア絶縁膜207の内部にまで到達していてもよい。
【0164】
(工程4:
図13D)
ハードマスク膜222をマスクとして、ハードマスク膜222の開口部から露出するバリア絶縁膜207をエッチバック(ドライエッチング)することにより、バリア絶縁膜207に開口部を形成する。これにより、バリア絶縁膜207の開口部から第1配線A205a、第1配線B205bを露出させる。その後、窒素およびアルゴンの混合ガスを用いたプラズマに曝すことで、第1配線A205a、第1配線B205bの露出面に形成された酸化銅を除去するとともに、エッチバック時に発生したエッチング副生成物などを除去する。
【0165】
バリア絶縁膜207のエッチバックでは、反応性ドライエッチングを用いることで、バリア絶縁膜207の開口部の壁面をテーパ面とすることができる。反応性ドライエッチングでは、エッチングガスとしてフッ化炭素を含むガスを用いることができる。ハードマスク膜222は、エッチバック中に完全に除去されることが好ましいが、絶縁材料である場にはそのまま残存してもよい。また、バリア絶縁膜207の開口部の平面視での形状は、例えば円形とし、円の直径は30nmから500nmとすることができる。
【0166】
(工程5:
図13E)
第1配線A205a、第1配線B205bを含むバリア絶縁膜207上にイオン伝導層209を形成する。まず、1nmのジルコニウムをスパッタリング法で堆積する。ジルコニウムはポリマーイオン伝導層成膜時に酸化され、イオン伝導層209の一部を形成する。この際、第1配線A205a、第1配線B205bのイオン伝導層209に接している箇所にジルコニウムが拡散し、合金層が自発的に形成される。さらに、350℃の温度で真空環境下にてアニールを行うことで、合金層の厚さを厚くすることができる。アニールは2分程度が好ましい。
【0167】
さらに、ポリマーイオン伝導層としてシリコン、酸素、炭素、水素を含むSiOCH系ポリマー膜をプラズマCVDによって形成する。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。原料の供給量は10〜200sccm、ヘリウムの供給は原料気化器経由で500sccm、別ラインで反応室に直接500sccm供給する。バリア絶縁膜507の開口部は大気暴露によって水分などが付着しているため、ポリマーイオン伝導層の堆積前に250℃から350℃程度の温度にて、減圧下で熱処理を加えて脱ガスしておくことが好ましい。
【0168】
イオン伝導層209上に第2電極210の下層として、ルテニウムとチタンの合金を10nmの膜厚でコスパッタ法にて形成する。この際、ルテニウムターゲットとチタンターゲットは同一チャンバー内に存在し、同時にスパッタリングすることで合金膜を堆積する。この際、ルテニウムターゲットへの投入電力を150W、チタンターゲットへの投入電力を50Wとすることで、ルテニウムとチタンの合金中のルテニウムの含有率を75at%とする。このルテニウム合金は抵抗変化素子の不活性電極となる。
【0169】
また、第2電極210の上層としてルテニウム合金上に窒化チタンを5nm〜10nmの膜厚でリアクティブスパッタ法にて形成する。この際、チタンターゲットへの投入電力を500W〜1kWとし、窒素ガスとアルゴンガスをチャンバー内に導入してスパッタリングする。この際、窒素の流量とアルゴンの流量を2:1とすることで、窒化チタン中のチタンの含有率を50at%以上とする。
【0170】
第2電極210上に整流層スタック208として、非晶質シリコン、窒化シリコン、非晶質シリコンをこの順に基板温度が350〜400℃の範囲に保持されたプラズマCVDによって成膜する。それぞれの膜厚は5nm以下が望ましい。例えば非晶質シリコンを2nm、窒化シリコンを1nm成膜する。成膜は、プラズマを着火した状態で、投入するガスを切り替えることで連続的に成膜する。
【0171】
非晶質シリコンは、シランガスを100〜300sccm導入し、アルゴンガスを1〜2slpm、ヘリウムガスを1〜2slpmの範囲で導入し、圧力300〜600Pa、50〜200WのRF電力をシャワーヘッドに印加することで堆積する。成膜時にCVDリアクターに前記ガスに加えて水素ガスを導入することで非晶質シリコンの水素化を促進できる。
【0172】
窒化シリコンの形成には、シランガスを200sccm、窒素ガスを1000sccm導入し、圧力600Pa、200WのRF電力をシャワーヘッドに印加することで窒素化シリコン膜を堆積することができる。
【0173】
窒化シリコン膜は整流素子の整流特性を担い、低電圧印加時は絶縁性を、高電圧印加時は導電性を有する。高電圧印加時はトンネル効果によって電導性が発現するため、トンネル効果を発生する窒化シリコン膜は薄膜であることが望ましい。ただし、薄膜化しすぎるとリーク電流が増加するため、窒化シリコン膜の比抵抗は高いことが望ましい。そのため、窒化シリコン膜は窒素含有率が高く、化学量論組成(ストイキオメトリ)に近い含有率を有する膜が望ましい。
【0174】
また、整流層とバッファ層とのバンドオフセットが大きいと高電圧印加時にオン電流の一部を制限してしまう。このため、整流層であるトンネル効果が発生する窒化シリコン膜とバッファ層との間に、トンネル効果が発生する窒化シリコン膜よりもバンドギャップが小さい窒化シリコン膜を配置することが望ましい。バンドギャップの調整は窒化シリコン膜中の窒素の含有率を低減することによって行う。具体的には、トンネル効果を発生する窒化シリコン膜成膜時はCVDリアクターに導入するシランのガス流量を30sccm程度とし、バンドギャップの小さい窒化シリコンの成膜時はシランのガス流量を200sccmから400sccm程度とする。整流層とバッファ層の成膜は大気暴露せず、CVDリアクター内で連続的に成膜を行う。整流層スタック208は例えばバンドギャップの小さい窒化シリコン0.25nm、トンネル効果が発生する窒化シリコン0.5nm、バンドギャップの小さい窒化シリコン0.25nmの積層とすることができる。
【0175】
整流層スタック208上に第3電極211として、窒化チタンを15nm〜25nmの膜厚でリアクティブスパッタ法にて形成する。この際、チタンターゲットへの投入電力を500W〜1kWとし、窒素ガスとアルゴンガスをチャンバー内に導入してスパッタリングする。この際、窒素の流量とアルゴンの流量を2:1とすることで、窒化チタン中のチタンの含有率を50at%以上とする。
【0176】
(工程6:
図13F)
第3電極211上に第1ハードマスク膜212(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚30nm)、及び第2ハードマスク膜213(例えば、酸化シリコン膜、膜厚100nm)をこの順に積層する。第1ハードマスク膜212及び第2ハードマスク膜213は、プラズマCVD法を用いて成膜することができる。第1ハードマスク膜212及び第2ハードマスク膜213は当該技術分野における一般的なプラズマCVD法を用いて形成することができる。
【0177】
また、第1ハードマスク膜212と第2ハードマスク膜213とは、異なる種類の膜であることが好ましく、例えば、第1ハードマスク膜212を窒化シリコン膜とし、第2ハードマスク膜213を酸化シリコン膜とすることができる。このとき、第1ハードマスク膜212は、後述する保護絶縁膜214、およびバリア絶縁膜207と同一材料であることが好ましい。また、第1ハードマスク膜212は、SiH
4/N
2の混合ガスの高密度プラズマでのプラズマCVD法によって形成することができる、高密度な窒化シリコン膜などを用いることが好ましい。
【0178】
(工程7:
図13G)
第2ハードマスク膜213上に4端子スイッチの整流素子部をパターニングするためのフォトレジスト223をフォトリソグラフィ法により形成する。
【0179】
(工程8:
図13H)
フォトレジスト223をマスクとして、第2ハードマスク膜213の一部をドライエッチングし、その後、酸素プラズマアッシングと、有機剥離を用いてフォトレジストを除去する。フォトレジスト223が形成されていない箇所はエッチングにより膜厚が減り、フォトレジスト223が形成されている箇所は膜厚が減らない。エッチング膜厚は30nm〜70nm程度が望ましい。具体的にはエッチング膜厚は60nm、フォトレジスト223が形成されている箇所の第2ハードマスク膜213の残膜厚は100nm、フォトレジスト225が形成されていない箇所の第2ハードマスク膜213の残膜厚は40nm程度が望ましい。
【0180】
(工程9:
図13I)
加工された第2ハードマスク膜213上に4端子スイッチ素子部をパターニングするためのフォトレジスト224をフォトリソグラフィ法により形成する。
【0181】
(工程10:
図13J)
フォトレジスト224をマスクとして、第2ハードマスク膜213の残りをドライエッチングし、その後、酸素プラズマアッシングと、有機剥離を用いてフォトレジストを除去する。フォトレジスト223およびフォトレジスト224の両者とも形成されなかった箇所はドライエッチング後に第1ハードマスク膜212が露出している。第2ハードマスク膜213は2段階のドライエッチングで加工されており、4端子スイッチの整流素子部の箇所の残膜厚は100nm、4端子スイッチの整流素子形成箇所以外の残膜厚は40nm、それ以外の残膜厚は0nmである。第1ハードマスク膜212が露出している箇所は、第1ハードマスク膜212がドライエッチングされていないことが望ましいが、数nm程度エッチングされていても良い。
【0182】
(工程11:
図13K)
第2ハードマスク膜213をマスクとし、加工された第2ハードマスク膜213の形状を下層に転写する要領で、第1ハードマスク膜212、第3電極211、整流層スタック208、第2電極210、イオン伝導層209を連続的にドライエッチングする。これにより、4端子スイッチが形成される。4端子スイッチ形成箇所では、整流素子形成箇所のみ第2ハードマスク膜213、第1ハードマスク膜212、第3電極211が残っている。ここで第2ハードマスク膜213は除去されていても良い。
【0183】
4端子スイッチ形成箇所の整流素子が形成されない箇所は、第2ハードマスク膜213、第1ハードマスク膜212、第3電極211はエッチングされて除去される。工程7及び工程9でフォトレジスト223及びフォトレジスト224が形成されなかった箇所は第2電極210及びイオン伝導層209までエッチングで除去されている。ドライエッチング後、バリア絶縁膜207は数nm程度であればエッチングされていても良い。
【0184】
例えば、第3電極211及び第2電極210の上層が窒化チタンの場合にはCl
2系のRIEで加工することができ、第2電極210の下層がルテニウムとチタンの合金の場合には、Cl
2/O
2の混合ガスでRIE加工することができる。整流層スタック208は、第3電極211及び第2電極210と同じCl
2系のRIEで、第3電極211及び第2電極210と共に加工できる。
【0185】
また、イオン伝導層209のエッチングでは、下面のバリア絶縁膜207上でドライエッチングを停止させる必要がある。例えば、イオン伝導層209をシリコン、酸素、炭素、水素を含むSiOCH系ポリマー膜とし、バリア絶縁膜207を窒化シリコン膜や炭窒化シリコン膜とする。この場合には、CF
4系、CF
4/Cl
2系、CF
4/Cl
2/Ar系などの混合ガスでエッチング条件を調節することでRIE加工することができる。
【0186】
以上のようなハードマスクRIE法を用いることで、抵抗変化素子部をレジスト除去のための酸素プラズマアッシングに曝すことなく、抵抗変化素子部を加工することができる。また、加工後に酸素プラズマによって酸化処理する場合には、レジストの剥離時間に依存することなく酸化プラズマ処理を照射することができるようになる。
【0187】
(工程12:
図13L)
第1ハードマスク膜212、第2ハードマスク膜213、第3電極211、整流層スタック208、第2電極210、イオン伝導層209を含むバリア絶縁膜207上に保護絶縁膜214(例えば、窒化シリコン膜、もしくは炭窒化シリコン膜、20nm)を堆積する。保護絶縁膜214は、プラズマCVD法によって形成することができるが、成膜前には反応室内で減圧下に維持する必要があり、このときイオン伝導層209の側面から酸素が脱離し、イオン伝導層のリーク電流が増加するという問題が生じる。これを抑制するためには、保護絶縁膜214の成膜温度を400℃以下とすることが好ましい。さらに、成膜前に減圧下で成膜ガスに曝されるため、還元性のガスを用いないことが好ましい。例えば、SiH
4/N
2の混合ガスを高密度プラズマによって、基板温度400℃で形成した窒化シリコン膜などを用いることが好ましい。
【0188】
(工程13:
図13M)
保護絶縁膜214上に、層間絶縁膜215(例えば、酸化シリコン膜)、Low−k膜216として比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜、膜厚150nm)、層間絶縁膜217(例えば、酸化シリコン膜)をこの順に堆積する。さらに、第2配線A218a、第2配線B218b用の配線溝、およびビアA219a、ビアB219b用の下穴を形成する。さらに、銅デュアルダマシン配線プロセスを用いて、当該配線溝及び当該下穴内に第2バリアメタルA220a、第2バリアメタルB220b(例えば、窒化タンタル/タンタル)を介して第2配線A218a、第2配線B218b(例えば、銅)及びビアA219a、ビアB219b(例えば、銅)を同時に形成する。その後、ビアA219a、ビアB219bを含む層間絶縁膜217上にバリア絶縁膜221(例えば、窒化シリコン膜)を堆積する。
【0189】
ビアA219a、ビアB219bの形成は、下層配線形成と同様のプロセスを用いることができる。層間絶縁膜215、Low−k膜216及び層間絶縁膜217はプラズマCVD法で形成することができる。4端子スイッチによって形成される段差を解消するため、層間絶縁膜215を厚く堆積し、CMPによって層間絶縁膜215を削り込んで平坦化し、層間絶縁膜215を所望の膜厚としてもよい。
【0190】
ビアA219a、ビアB219b用の下穴は、同時にパターニングされたフォトマスクにより同時にエッチングされて形成される。第1ハードマスク膜212及び第2ハードマスク膜213はビアA219a及びビアB219b形成時にエッチングされ除去される。この結果、ビアA219a及びビアB219bは直接第3電極211に接続する。ビアA219a、ビアB219bのエッチングは、窒化チタンルテニウム合金に対してエッチングレートが遅いフルオロカーボン系のエッチングガスを用いることで、第3電極211でストップすることができる。
【0191】
以上の工程により、4端子スイッチを多層配線層内部に形成することができる。
【0192】
以上のように本実施形態のスイッチ回路2によれば、マルチファンアウトに対応した複数のスイッチをスイッチさせる際に、スイッチ動作中のスイッチが接続している入力線もしくは出力線上でオン状態にある別のスイッチをなくすることができる。もしくはオン状態にある別のスイッチによる不要な電流を抑制することができる。これにより、寄生容量の影響によるスイッチ動作時間の遅延やリーク電流が抑制される。その結果、短いパルスでの高速なスイッチ動作が高い信頼性を有して可能となる。
【0193】
以上のように、本実施形態によれば、マルチファンアウトに対応した抵抗変化素子を用いたクロスバスイッチにおいて、高速で信頼性の高いスイッチ動作が可能なスイッチ回路を提供することができる。
【0194】
本発明は上記の実施形態に限定されることなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0195】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載可能であるが、以下の構成には限られない。
(付記1)
各々端子2つを有して直列接続する抵抗変化素子と整流素子とを有する2つのスイッチが前記直列接続する前記端子で接続している、複数の4端子スイッチと、
2つの前記スイッチの前記抵抗変化素子の前記直列接続する前記端子とは別の前記端子が各々接続する、少なくとも一方が複数存する、入力線と出力線と、
2つの前記スイッチの前記整流素子の前記直列接続する前記端子とは別の前記端子に各々接続する制御線と、を有し、
前記制御線は、前記入力線と前記出力線と共に、前記入力線もしくは前記出力線の内の一つに接続する前記4端子スイッチの内の複数の前記4端子スイッチの前記抵抗変化素子の内の、前記入力線に接続する前記抵抗変化素子の組と前記出力線に接続する前記抵抗変化素子の組を、組ごとに順にオンもしくはオフする、スイッチ回路。
(付記2)
前記制御線は、前記入力線もしくは前記出力線の内の一つに接続する前記4端子スイッチの内の複数の前記4端子スイッチの前記抵抗変化素子の内の、前記入力線もしくは前記出力線の内の前記一つに接続する前記抵抗変化素子の組から先にオンする、付記1記載のスイッチ回路。
(付記3)
前記制御線は、前記入力線もしくは前記出力線の内の一つに接続する前記4端子スイッチの内の複数の前記4端子スイッチの前記抵抗変化素子の内の、前記入力線もしくは前記出力線の内の前記一つに接続する前記抵抗変化素子とは別の前記抵抗変化素子の組から先にオフする、付記1または2記載のスイッチ回路。
(付記4)
前記制御線は、前記入力線に接続する前記抵抗変化素子の組と前記出力線に接続する前記抵抗変化素子の組とを、組ごとに一斉にオンもしくはオフする、付記1から3の内の1項記載のスイッチ回路。
(付記5)
前記4端子スイッチは、前記4端子スイッチが有する2つの前記抵抗変化素子が共にオンすることで前記入力線と前記出力線の信号伝達を可能とする、付記1から4の内の1項記載のスイッチ回路。
(付記6)
前記抵抗変化素子は、金属架橋による抵抗変化層を有する、付記1から5の内の1項記載のスイッチ回路。
(付記7)
前記整流素子は、双極性の整流層を有する、付記1から6の内の1項記載のスイッチ回路。
(付記8)
前記整流層は、非晶質シリコンと窒化シリコンとを含む、付記7記載のスイッチ回路。
(付記9)
付記1から8の内の1項記載のスイッチ回路を有する半導体集積回路を有する半導体装置。
(付記10)
前記半導体集積回路は配線層を有し、前記スイッチ回路は前記配線層内に設けられている、付記9記載の半導体装置。
(付記11)
各々端子2つを有して直列接続する抵抗変化素子と整流素子とを有する2つのスイッチが前記直列接続する前記端子で接続している、複数の4端子スイッチと、
2つの前記スイッチの前記抵抗変化素子の前記直列接続する前記端子とは別の前記端子が各々接続する、少なくとも一方が複数存する、入力線と出力線と、
2つの前記スイッチの前記整流素子の前記直列接続する前記端子とは別の前記端子に各々接続する制御線と、を有するスイッチ回路のスイッチ方法において、
前記入力線もしくは前記出力線の内の一つに接続する前記4端子スイッチの内の複数の前記4端子スイッチの前記抵抗変化素子の内の、前記入力線に接続する前記抵抗変化素子の組と前記出力線に接続する前記抵抗変化素子の組を、組ごとに順にオンもしくはオフする、スイッチ方法。
(付記12)
前記入力線もしくは前記出力線の内の一つに接続する前記4端子スイッチの内の複数の前記4端子スイッチの前記抵抗変化素子の内の、前記入力線もしくは前記出力線の内の前記一つに接続する前記抵抗変化素子の組から先にオンする、付記11記載のスイッチ方法。
(付記13)
前記入力線もしくは前記出力線の内の一つに接続する前記4端子スイッチの内の複数の前記4端子スイッチの前記抵抗変化素子の内の、前記入力線もしくは前記出力線の内の前記一つに接続する前記抵抗変化素子とは別の前記抵抗変化素子の組から先にオフする、付記11または12記載のスイッチ方法。
(付記14)
前記入力線に接続する前記抵抗変化素子の組と前記出力線に接続する前記抵抗変化素子の組とを、組ごとに一斉にオンもしくはオフする、付記11から13の内の1項記載のスイッチ方法。
(付記15)
前記4端子スイッチが有する2つの前記抵抗変化素子が共にオンすることで前記入力線と前記出力線の信号伝達を可能とする、付記11から14の内の1項記載のスイッチ方法。
(付記16)
前記抵抗変化素子は、金属架橋による抵抗変化層を有する、付記11から15の内の1項記載のスイッチ方法。
(付記17)
前記整流素子は、双極性の整流層を有する、付記11から16の内の1項記載のスイッチ方法。
(付記18)
前記整流層は、非晶質シリコンと窒化シリコンとを含む、付記17記載のスイッチ方法。
【0196】
この出願は、2017年4月11日に出願された日本出願特願2017−078050を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。