(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属製の薄板を溶接等を使用して接合した場合、その接合痕を完全に除去することが困難であり、吐水装置本体の外観を損ねてしまうという問題がある。例えば、金属製の薄板を溶接して吐水装置本体を形成した場合、その接合部には溶接ビードが形成される。この溶接ビードは研磨加工等により除去され、接合部の表面が平滑化されるものの、微細な凹凸が残存してしまい、接合部を完全に平滑化することは困難である。このような接合部に残る微細な凹凸は、溶接ビードを除去した後、めっき等を施したとしても、接合部の表面で反射される光が不連続になること等により、使用者には接合痕が認識されてしまう。これでは、スリムでデザイン性の高い吐水装置を形成したとしても、十分な高級感を与えることができない。
【0006】
従って、本発明は、金属製の薄板を接合して形成しながら、その接合痕が認識されにくく、高級感のある吐水装置を得ることができる吐水装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、金属製の薄板から吐水装置本体を形成する吐水装置の製造方法であって、薄型扁平な断面形状を有すると共に、屈曲した
吐水装置本体を構成するように、金属製の薄板から形成された複数の外観部品を準備する準備工程と、複数の外観部品の端面を互いに突き合わせて接合し、吐水装置本体を形成する接合工程と、吐水装置本体を構成する外観部品の少なくとも接合部に研磨加工を施す研磨工程と、を有し、外観部品の接合部のうちの少なくとも1つは、吐水装置本体の屈曲した部分の近傍に設けられ
、接合部において接合されている2つの外観部品は板厚が互いに異なり、研磨工程において2つの外観部品の間の段差を除去することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、準備工程において、金属製の薄板から形成された複数の外観部品が準備され、接合工程において、これらの外観部品の端面が互いに突き合わせて接合される。これにより、薄型扁平な断面形状の、屈曲した筒形の吐水装置本体が形成される。ここで、接合工程において接合される接合部のうちの少なくとも1つは、吐水装置本体の屈曲した部分の近傍に設けられている。次に、研磨加工において、形成された吐水装置本体の少なくとも接合部に研磨加工が施される。
【0009】
このように構成された本発明によれば、接合工程において接合される接合部が吐水装置本体の屈曲した部分の近傍に設けられているので、この接合部は使用者に認識されにくく、薄板の接合により吐水装置本体を形成しながら美観の優れた吐水装置を得ることができる。ここで、外観部品の間の接合部に残る微細な凹凸は、接合部の表面において反射される光の不連続性等によって認識されることが多い。しかしながら、吐水装置本体の屈曲した部分の近傍では、光の反射方向が屈曲により変化しているので、使用者には、微細な凹凸による反射方向の変化が屈曲によるものと認識され、板材の接合痕とは認識されにくく、吐水装置の美観を損ねることがない。
また、このように構成された本発明においては、接合部において接合される2つの外観部品の板厚が互いに異なるので、接合部においては常に板厚の厚い方が高くなる。このため、研磨工程においては、常に板厚の厚い方の外観部品を僅かに削って接合部を平滑にすれば良く、一律な作業により接合部を平滑にすることができる。この結果、研磨工程を効率的に行うことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、外観部品の接合部は、吐水装置本体の屈曲した部分の湾曲部
と直線部
の間に設けられている。
吐水装置に外力が作用した際、吐水装置本体の屈曲した部分には大きな応力が発生しやすく、特に、屈曲部のうち、湾曲した部分は応力が大きくなりやすい。上記のように構成された本発明によれば、外観部品の接合部が、吐水装置本体の屈曲した部分における湾曲部
と直線部
の間に設けられているので、使用者に接合部を認識されにくくしながら、応力が大きくなる湾曲部の中に接合部を設けるのを避けることができ、吐水装置本体に十分な強度を確保することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、接合部において接合されている2つの外観部品のうち、湾曲部を形成する外観部品は、直線部を形成する外観部品よりも板厚が厚く構成されている。
【0013】
接合部を僅かに削り、接合部とその近傍の外観部品の表面を滑らかに連続させる際、湾曲部を削る場合には、表面を僅かに削るだけで滑らかに連続させることができるのに対し、直線部を削る場合には表面の広い面積を削らなければ表面を滑らかに連続させることができない。上記のように構成された本発明によれば、湾曲部を形成する外観部品が、直線部を形成する外観部品よりも板厚が厚く構成されているので、接合部において湾曲部を形成する外観部品の方が常に高くなる。このため、接合部を平滑に研磨する際には、常に湾曲部を削ることとなり、外観部品の表面を僅かに削るだけで接合部を滑らかに連続させることができ、効率的に吐水装置本体を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吐水装置の製造方法によれば、金属製の薄板を接合して形成しながら、その接合痕が認識されにくく、高級感のある吐水装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態による吐水装置を備えた洗面台の斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施形態の吐水装置1は、カウンターボード4上に配置された洗面ボウル2に隣接して設置され、洗面ボウル2に向けて湯水(水又は湯)を吐出するように構成されている。
【0017】
本実施形態の吐水装置1は、カウンターボード4からほぼ垂直に立ち上がる垂直部1aと、この垂直部1aの上端からほぼ水平に延びる水平部1bから構成された概ね逆L字型の吐水装置であり、水平部1bの下面先端部に設けられた吐水口1cから吐水が為されるようになっている。また、吐水装置1は、極めて薄型で扁平な断面形状を有しており、スリムでスッキリとした外観を得ている。この吐水装置1により吐水を行う際には、使用者は、洗面ボウル2横に配置された操作部6を操作する。これにより、上水道に接続された水用電磁弁(図示せず)、及び給湯器に接続された湯用電磁弁(図示せず)が開弁され、これらを通過した水及び湯がサーモ水栓(図示せず)により適温に混合される。温度調整された湯水は吐水装置1の内部を通って先端の吐水口1cから洗面ボウル2に向けて吐出される。
【0018】
次に、
図2及び
図3を参照して、本発明の実施形態による吐水装置1の内部構造を説明する。
図2は吐水装置1の側面断面図であり、
図3は吐水装置1の分解斜視図である。
図2及び
図3に示すように、本実施形態による吐水装置1は、吐水装置本体8と、この吐水本体の内部に収容された2本の通水管10と、これらの通水管10に接続され、吐水部を形成する吐水部形成部材12と、吐水装置本体8内に配置された上部補強板14及び下部補強板16と、吐水装置本体8の下端に取り付けられたベース部材18と、を有する。
【0019】
吐水装置本体8は、プレス加工を施したステンレス製の板材から形成されており、全体として、逆L字型に屈曲された筒形に形成されている。また、吐水装置本体8は、その基端部においても前方に向けて屈曲されており、水平部よりも短いベース部が形成されている。さらに、吐水装置本体8の水平部における横断面は、上面側が直線であり、下面側が下方に向けて凸の弓形に形成され、ほぼ同一の断面形状が垂直部1aまで連続して、基端部を除くほぼ全体が同一の断面形状を有している。また、本実施形態において、吐水装置本体8の横断面は、幅55mm、高さ8.6mmの扁平薄型に構成されており、横断面が中央から両側の端部に向けて薄くなるように構成されているため、使用者には、さらに薄型の印象を与える。本実施形態の吐水装置1においては、吐水装置本体8を板材から構成することにより、このような極限的な薄さが実現されている。
【0020】
図3に示すように、吐水装置本体8は、5つの外観部品を組み合わせることにより形成されている。即ち、吐水装置本体8は、第1外観部品8a、第2外観部品8b、第3外観部品8c、及び第4外観部品8dから構成されている。これらの外観部品のうち、第2外観部品8b、第3外観部品8c、及び第4外観部品8dは溶接により互いに接合され前側外観部品9が形成される。この前側外観部品9を第1外観部品8aと結合されることにより、筒状の吐水装置本体8が形成される。
【0021】
第1外観部品8aは、ステンレス製の細長い平板を、所定の半径でL字型に湾曲させることにより形成されている。L字型の第1外観部品8aの内側の垂直及び水平の直線部分には結合用金具20が取り付けられている(
図1には、垂直部分の結合用金具のみ図示)。
【0022】
第2外観部品8bは、ステンレス製の細長い平板を、所定の半径でL字型に湾曲させると共に、幅方向中央が弓形に突出するように、幅方向にも湾曲させることにより形成されている。第2外観部品8bは、第1外観部品8aと合致する形態に形成され、第1外観部品8aと結合することにより、扁平薄型の断面形状を有する筒形の部材が形成される。また、L字型の第2外観部品8bの外側の垂直及び水平の直線部分には結合用金具22が取り付けられている(
図1には、水平部分の結合用金具のみ図示)。これらの結合用金具22が、第1外観部品8aの結合用金具20とスナップ嵌めされることにより、第1外観部品8aと第2外観部品8bが結合される。
【0023】
第3外観部品8cは全体として小さいL字型の部材であり、ステンレス製の平板を、プレス加工によりにL字型に湾曲させると共に、幅方向中央が弓形に突出するように、幅方向にも湾曲させることにより形成されている。第3外観部品8cの上端の端面は、第2外観部品8bの下端の端面と突き合わせた状態で溶接され、第2外観部品8bと一体化されている。このように、第2外観部品8bと第3外観部品8cの接合部は、吐水装置本体8の屈曲した部分の近傍に設けられている。また、第3外観部品8cの背面は第1外観部品8aの下端部と合致するように形成され、第3外観部品8cの底面はベース部材18と結合され、吐水装置本体8の基端部の屈曲した部分を構成する。
【0024】
第4外観部品8dは、ステンレス製の平板を、プレス加工により、幅方向中央が弓形に突出するように湾曲させることにより形成されている。また、第4外観部品8dには、吐水部形成部材12の一部を露出させるための矩形の開口24が形成されている。さらに、第4外観部品8dの後端の端面は、第2外観部品8bの先端の端面と突き合わせた状態で溶接され、第2外観部品8bと一体化されている。
【0025】
通水管10は、概ねL字型に屈曲された、湯水を導くための管材であり、吐水装置本体8の内部に2本平行に並べて挿通されている。これらの通水管10の先端(上端)は吐水部形成部材12に接続され、各通水管10によって導かれた湯水が吐水部形成部材12において合流され、吐出される。また、各通水管10の下端は吐水装置本体8の底面から突出しており、湯水の供給源からの配管が接続される。なお、本実施形態においては、給水源である1つのサーモ水栓(図示せず)から流出した湯水が2つに分岐され、これらが各通水管10に夫々接続されている。従って、各通水管10には、同一の給水源から供給された同質の湯水が夫々流入し、これらが単一の吐水口1cから吐出される。また、本実施形態においては、吐水装置1に湯水を供給する給水源はサーモ水栓(図示せず)であるが、給水源としては、上水道、給湯装置、シングルレバー式の湯水混合水栓、湯用及び水用の単水栓から夫々流出した湯及び水を合流管路等、任意の水源を給水源とすることができる。
【0026】
吐水部形成部材12は、吐水装置本体8の先端部の中に配置される樹脂製の部材であり、吐水装置本体8内部の断面形状に合致するように、上面が平面で、下面が弓形に膨らんだ板状の形態に形成されている。また、吐水部形成部材12の後端部には2本の通水管10が接続され、吐水部形成部材12の内部には各通水管10から供給された湯水を夫々分散させ、吐水口における流速を均一にする分散部が設けられている。また、吐水部形成部材12の下面には、4枚の細長い整流網28と、これらの整流網28を保持した吐水口形成部材30と、吐水部形成部材12と吐水口形成部材30の間に配置されるパッキン32が取り付けられている。なお、吐水部形成部材12の詳細な構成については後述する。
【0027】
上部補強板14は、吐水装置本体8の屈曲部の形状に合わせてL字型に屈曲された概ね長方形の金属板であり、吐水装置本体8の垂直部と水平部を接続する屈曲部を補強するように、その内部に配置されている。屈曲された上部補強板14の内側の面には、平行に3本のリブ14aが設けられ、これら3本のリブ14aの間に2本の通水管10が配置される。
【0028】
下部補強板16は、概ね正方形の金属板であり、吐水装置本体8の基端部を補強するように、その内部に配置されている。下部補強板16の前面側には、縦方向に平行に3本のリブ16aが設けられ、これら3本のリブ16aの間に2本の通水管10が配置される。
【0029】
ベース部材18は吐水装置本体8の底面に取り付けられる金属製の部材であり、吐水装置本体8の底面に取り付けられる概ね正方形の平板部18aと、この平板部18aの下面から下方に延びるように設けられている円筒部18bと、を有する。平板部18aには2つの貫通穴が設けられ、これらの貫通穴を通して各通水管10が円筒部18bの中に突出する。また、円筒部18bの外周面には雄ねじ山が設けられている。
図2に示すように、円筒部18bをカウンターボード4の取り付け穴に通し、取付ナット26を円筒部18bの雄ねじ山に螺合させることにより吐水装置本体8がカウンターボード4に取り付けられる。
【0030】
次に、
図4乃至
図6を参照して、吐水部形成部材12の内部構造を説明する。
図4は、本発明の実施形態による吐水装置1の先端部を拡大して示す拡大側面断面図である。
図5は、本発明の実施形態による吐水装置1の先端部を拡大して示す拡大平面断面図である。
図6は、本発明の実施形態による吐水装置1の先端部を
図5のVI−VI線に沿って切断した断面図である。
【0031】
まず、
図4に示すように、吐水装置1の先端部には吐水部形成部材12が内蔵されており、この吐水部形成部材12の下面には吐水口形成部材30が取り付けられ、この吐水口形成部材30は、第4外観部品8dに形成された開口24を介して外部に露出している。また、
図2に示すように、吐水部形成部材12は上面が平面であり、下面が弓形に膨らんだ板状の形態に形成されている。吐水部形成部材12の内部には、各通水管10から導かれた湯水を合流させ、吐水口1cに導く接続通水路が形成されている。
【0032】
一方、
図4及び
図5に示すように、吐水部形成部材12の後端面から前方に向けて延びるように、2本の通水管10を夫々接続するための2本の流入流路12aが平行に形成されている。本実施形態においては、各通水管10の内径と、各流入流路12aの湯水が流れる部分の内径はほぼ同一であり、ほぼ同一の流路断面積を有している。また、吐水部形成部材12の下面には、吐水口形成部材30を受け入れるための長円形断面の凹部12bが形成されている。凹部12bの奥部には切欠部12cが形成されており、各流入流路12aの先端は、切欠部12cを介して凹部12bの内部に連通している。また、各流入流路12aの相互間も切欠部12cを介して連通されている。
【0033】
吐水口形成部材30は、吐水部形成部材12に形成された凹部12bに嵌め込まれるように形成された樹脂製の部材である。
図3に示すように、吐水口形成部材30は、吐水部形成部材12の下面に合致する形状に湾曲された板状部30aと、この板状部30aを貫通するように形成された長円形断面の筒状部30bと、を有する。板状部30aの上面は、吐水部形成部材12の下面と当接するように配置され、板状部30aの下面が第4外観部品8dの開口24を介して外部に露出する。筒状部30bの下端の開口は、横方向に細長い、幅広の吐水口1cを形成している。なお、本実施形態においては、吐水口1cは、長さ40mm、幅4mmの長円形に構成されている。筒状部30bは、吐水部形成部材12の凹部12bとほぼ同一の形状に構成され、筒状部30bの上側の部分が凹部12bの中に嵌め込まれる。筒状部30bの外周面と凹部12bの内壁面との間にはパッキン32が配置され、それらの間の水密性が確保されている。また、筒状部30bの内部には、長円形に形成された4枚の整流網28が配置されている。
【0034】
図6に示すように、吐水口形成部材30の筒状部30b上端の、各流入流路12aと対向する側には、切欠部30cが形成されている。この切欠部30cは、長円形の筒状部30bの上縁の直線部分を切り欠くように形成され、各流入流路12aから流入した湯水は、切欠部30cと、凹部12bの最奥部の下向き壁面12eとの間の隙間を通って筒状部30bの内側に流入する。また、
図4に示すように、切欠部30cの表面は、筒状部30bの外側から内側に向けて高くなる傾斜面として形成されており、この傾斜により、各流入流路12aから流入した湯水の流路は下流側に向けて狭くされている。
【0035】
このような吐水部形成部材12の内部構成により、各通水管10から供給された湯水は、まず吐水部形成部材12の各流入流路12aに夫々流入する。各流入流路12aに流入した湯水は、流入流路12aの下流端の立上り壁面12d(
図4)に衝突し、吐水部形成部材12に設けられた切欠部12c(
図5)の中に流入して合流する。即ち、各通水管10から供給された湯水は、吐水部形成部材12内で下側の壁面から上方に立ち上がった立上り壁面12dに衝突して分散され、切欠部12cの中に流入する。
【0036】
切欠部12cに流入した湯水の流れは、吐水口形成部材30の筒状部30bに形成された切欠部30cの傾斜した壁面によって上方に向けられ、吐水部形成部材12の下向き壁面12eに衝突してさらに分散される。下向き壁面12eに衝突した湯水の流れは、さらに筒状部30bの内壁面に衝突してさらに分散される。これにより、2本の通水管10から供給された湯水の流れは、吐水部形成部材12の内部で種々の壁面に衝突して分散され、筒状部30bの内側では、ほぼ均一な流速を有するようになる。
【0037】
このように、吐水部形成部材12の内部に設けられた各壁面は、2本の通水管10から導かれた湯水を接続通水路の内部で分散させる「分散部」として機能している。筒状部30bの内側に流入した湯水は、筒状部30b内に配置された4枚の整流網28によって整流され、ほぼ均一な流速で吐水口1cから下方に向けて吐出される。このように、流入流路12aの下流端に設けられた、接続通水路の下側壁面から上方に向けて立ち上がる立上り壁面12d(
図4)、及び吐水口形成部材30の筒状部30b上端に形成された切欠部30cの傾斜した壁面(
図4)は、2本の通水管10から導かれた湯水の流れを分散させる「分散壁面」として機能する。
【0038】
また、
図6に示すように、筒状部30b上端の切欠部30cと下向き壁面12eの間の隙間からは、各流入流路12aの下流端の開口が見えている。即ち、流入流路12a(通水管10の流路断面)の下流方向への投影面は、その一部が立上り壁面12d(
図4)や吐水口形成部材30の筒状部30bと干渉しているが、残りの部分はこれらと干渉せず、切欠部30cと下向き壁面12eの間の隙間に位置する。このため、各通水管10から各流入流路12aを介して吐水部形成部材12内に流入した湯水は、その一部が立上り壁面12dや筒状部30bの外周面等の「分散壁面」に衝突するが、残りの部分はこれらに直接衝突することなく筒状部30bの内側に直接流入する。このため各通水管10から導かれた湯水は、流速が過度に低下されることなく分散され、適度な流速を維持すると共に、ほぼ均一な流速分布で吐水口1cから吐出される。
【0039】
次に、
図7を参照して、本発明の実施形態の吐水装置1の製造方法を説明する。
図7は、吐水装置1の製造方法において、第2外観部品8bと第3外観部品8cを接合する手順を模式的に示す説明図である。
【0040】
上述したように、本実施形態の吐水装置1における吐水装置本体8は、第2外観部品8b、第3外観部品8c及び第4外観部品8dを溶接して前側外観部品9を形成し、この前側外観部品9を第1外観部品8aと結合することにより構成されている(
図3)。まず、準備工程として、ステンレス製の薄板から形成された第1乃至第4外観部品を準備する。
【0041】
次に、
図7(a)に示すように第2外観部品8b及び第3外観部品8cを準備し、
図7(b)に示すように、第2外観部品8bの下側の端面と、第3外観部品8cの上側の端面を互いに突き合わせる。次に、
図7(c)に示すように、接合工程として、第2外観部品8bの端面と、第3外観部品8cの端面の突き合わせ部分を溶接して接合する。
図7(c)に示すように、第2外観部品8bと第3外観部品8cを溶接により接合すると、その接合部34にはビード34aが形成される。同様に、第2外観部品8bの上端と第4外観部品8dの後端も、それらの端面同士を突き合わせ、溶接により接合する。これにより、前側外観部品9が形成される。さらに、第3外観部品8cの底面にベース部材18の平板部18a(
図3)を嵌め込み、それらの間を溶接により接合する。なお、本実施形態においては、レーザ溶接により外観部品同士を接合しているが、各外観部品を鑞付等、他の方法によって接合することもできる。
【0042】
次に、
図7(d)に示すように、研磨工程として、第2外観部品8bと第3外観部品8cの接合部34に研磨加工を施し、接合工程において形成されたビード34aを除去すると共に、接合部34を平滑にする。同様に、他の接合部、及び接合により構成された中間部品(第2乃至第4外観部品及びベース部材18を接合したもの)全体を平滑に研磨して、前側外観部品9を完成させる(
図7(e))。
【0043】
ここで、平滑に仕上げられた表面では、その表面に存在する凹凸が極めて微細な場合でも、光の反射の不連続性等により使用者には凹凸の存在が容易に認識されてしまう。このため、接合部34に入念な研磨加工を施し、表面を平滑に仕上げた場合でも、接合部34を完全な連続面のように仕上げることは困難である。しかしながら、本実施形態においては、第2外観部品8bと第3外観部品8cの接合部34は、吐水装置本体8が基端部で屈曲している部分の近傍に設けられているため、接合部34に残る僅かな凹凸が目立ちにくくなっている。
【0044】
即ち、
図7(e)に示すように、第3外観部品8cは側面視において所定の半径で湾曲した湾曲面を有する一方、第2外観部品8bの下端部は側面視において直線の表面を有する。このように、第2外観部品8bと第3外観部品8cの接合部34は湾曲部から直線部への移行部分に設けられている。このような部分では、湾曲部から直線部への移行により光の反射状態が変化する。このため、接合部34に残存する僅かな凹凸による光の反射の不連続性が、湾曲部から直線部への移行による光の反射の変化の中に隠されてしまい、使用者には僅かな凹凸による光の反射の不連続性が認識されにくい。なお、第2外観部品8bと第4外観部品8dの接合部は側面視において直線同士の接合であるが、この接合部は吐水装置本体8の水平部分の下側に位置するため、使用者の目につきにくく、吐水装置1の外観が損なわれることはない。また、第3外観部品8cとベース部材18の接合部は、吐水装置本体8の底面にあり、使用者から見ることはできない。
【0045】
このように、研磨加工により前側外観部品9が完成された後、
図3に示すように、2本の通水管10を接続した吐水部形成部材12を前側外観部品9の上面から背面に沿うように配置する。さらに、上部補強板14及び下部補強板16を各通水管10の後ろ側の所定の箇所に配置する。次に、各部品を組み付けた前側外観部品9の上面から背面に沿うように第1外観部品8aを配置し、第1外観部品8aを前側外観部品9にスナップ留めすることにより吐水装置1が完成する。
【0046】
次に、本発明の実施形態による吐水装置1の作用を説明する。
まず、使用者が、洗面ボウル2横に配置された操作部6(
図1)を操作すると、水用電磁弁(図示せず)及び湯用電磁弁(図示せず)が開弁され、これらを通過した水及び湯がサーモ水栓(図示せず)により適温に混合される。サーモ水栓(図示せず)から流出した湯水は2つに分岐され、同一の給水源からの同質の湯水が、吐水装置1の下端から2本の通水管10に夫々流入する。各通水管10によって導かれた湯水は、吐水部形成部材12(
図4及び
図5)の流入流路12aに夫々流入する。
【0047】
流入流路12aに流入した湯水は、それらの下流端において分散壁面である立上り壁面12d(
図4)に衝突して左右に分散される(
図5の矢印)。また、湯水の流れは、吐水口形成部材30の切欠部30cの表面(分散壁面)によって上方に向けられ、吐水部形成部材12の内部の下向き壁面12eに衝突して分散されながら吐水口形成部材30の筒状部30b中に流入する(
図4の矢印)。また、各流入流路12aから流出した湯水の一部は、立上り壁面12dや切欠部30cの表面に直接衝突することなく筒状部30bの中に流入する。筒状部30bの中に流入した湯水は、筒状部30bの内壁面に衝突しながら、整流網28を通って、下方に向けて開口した吐水口1cから吐出される。このように、2本の通水管10から供給された湯水は、吐水部形成部材12の内部で衝突及び分散を繰り返しながら流速分布が均一にされる。このため、細長い吐水口1cから吐出される湯水は、透明感のある幅広の滝状(薄膜状)の整流となって流下する。
【0048】
本発明の実施形態の吐水装置1の製造方法によれば、接合工程(
図7(c))において接合される接合部34が吐水装置本体8の屈曲した部分の近傍に設けられているので、この接合部は使用者に認識されにくく、薄板の接合により吐水装置本体8を形成しながら美観の優れた吐水装置1を得ることができる。ここで、第2外観部品8bと第3外観部品8cの間の接合部34に残る微細な凹凸は、接合部34の表面において反射される光の不連続性等によって認識されることが多い。しかしながら、吐水装置本体8の屈曲した部分の近傍では、光の反射方向が屈曲により変化しているので、使用者には、微細な凹凸による反射方向の変化が屈曲によるものと認識され、板材の接合痕とは認識されにくく、吐水装置1の美観を損ねることがない。
【0049】
また、本実施形態の吐水装置1の製造方法によれば、第2外観部品8bと第3外観部品8cの接合部34が、吐水装置本体8の屈曲した部分における湾曲部から直線部への移行部分に設けられているので、使用者に接合部34を認識されにくくしながら、応力が大きくなる湾曲部の中に接合部34を設けるのを避けることができ、吐水装置本体8に十分な強度を確保することができる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、吐水装置本体8の基端部の、屈曲した部分の近傍に接合部34が設けられていたが、他の屈曲した部分に1つ又は複数の接合部を設けることもできる。また、上述した実施形態においては、本発明の吐水装置1の製造方法により、厚さ8.6mmの薄型の吐水装置1を形成していたが、厚さ12mm以上の、鋳造が可能な吐水装置の製造に本発明を適用することもできる。
【0051】
また、上述した実施形態においては、吐水口形成部材30の筒状部30bに形成された分散壁面である切欠部30cの表面は直線状に形成されていたが(
図6)、変形例として、切欠部の高さが各部で異なるように本発明を構成することもできる。
図8は、このように構成された変形例を示す
図6と同様の断面図である。
図8に示す変形例においては、吐水口形成部材30の切欠部40の上縁が、流入流路12aの出口と対向する部分では高く、その両側では低く形成されている。即ち、本変形例においては、切欠部40の上縁が、各流入流路12a(通水管10の流路断面)の下流方向への投影面と干渉する部分では高く、干渉しない部分では低く形成されている。
【0052】
このため、各流入流路12aから流出した湯水は、切欠部40の上縁の高い部分に衝突し、その両側の低い部分に広がるように分散される。即ち、切欠部40の上縁の、各流入流路12aの投影面と干渉しない部分では、切欠部40の上縁と下向き壁面12eとの間の隙間が大きくなるため、衝突した湯水は、隙間が大きい部分に分散されやすくなり、分散性を向上させることができる。
【0053】
さらに、上述した実施形態においては、第2外観部品8bと第3外観部品8cは同一の厚さを有し、これらが突き合わせられ溶接されていたが、変形例として、溶接される外観部品の板厚は異なっていても良い。
図9に示す変形例においては、まず、第2外観部品50bと、第2外観部品50bよりも板厚が厚い第3外観部品50cが準備され(
図9(a))、これらがその端面において突き合わせられ(
図9(b))、溶接される(
図9(c))。即ち、本変形例においては、湾曲部を形成している第3外観部品50cが直線部を形成している第2外観部品50bよりも板厚が厚く形成されている。この溶接により形成された接合部52にはビード52aが形成されると共に、板厚の相違のために段差54が形成される。ここで、接合部52に形成される段差54は、第2外観部品50bよりも第3外観部品50cの方が板厚が厚いため、常に第3外観部品50c側が突出した段差54となる。
【0054】
次いで、研磨工程において、
図9(d)に示すように、接合部52に形成されたビード52aを除去すると共に、第3外観部品50cの接合部52近傍を僅かに削って段差54を除去する。また、研磨工程において段差54を除去する際、削られた段差54の部分が第3外観部品50cの湾曲面と滑らかに連続するように第3外観部品50cの表面を研磨して研磨工程を終了する(
図9(e))。
【0055】
第2、第3外観部品を突き合わせて溶接により接合する場合、各外観部品の板厚が同じであると、溶接における接合誤差により僅かに第2外観部品側が突出する場合と、僅かに第3外観部品側が突出する場合が存在する。ここで、湾曲部において接合されている第3外観部品側が突出した場合には、第3外観部品の接合部近傍を削ることにより、容易に接合部を第3外観部品の湾曲面と滑らかに連続させることができる。一方、第2外観部品側が突出した場合には、第2外観部品を削って接合部を滑らかに連続させる必要があるが、このためには第2外観部品の直線部を長い距離に亘って削ることが要求され、接合部を滑らかに連続させるための研磨量が多くなる。
【0056】
本変形例においては、湾曲部において接合されている第3外観部品50cが厚く形成されているので、接合誤差がある場合でも常に第3外観部品50c側が第2外観部品50b側よりも突出した段差54が形成される。このため、研磨工程においては、常に板厚の厚い方の第3外観部品50cを僅かに削って接合部52を平滑にすれば良く、一律な作業により接合部52を平滑にすることができる。加えて、本変形例においては、接合工程において接合誤差が発生した場合でも、常に、湾曲部が形成されている第3外観部品50c側を研磨工程において少量研磨するだけで容易に接合部52を滑らかに連続させることができる。