特許第6842669号(P6842669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6842669粒子含浸装置及び粒子含浸不織布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842669
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】粒子含浸装置及び粒子含浸不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/413 20120101AFI20210308BHJP
   D04H 1/407 20120101ALI20210308BHJP
   D06C 29/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   D04H1/413
   D04H1/407
   D06C29/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-105970(P2017-105970)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-199883(P2018-199883A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392004314
【氏名又は名称】ユーシー・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】前原 一夫
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 亮
(72)【発明者】
【氏名】土濃塚 大雅
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−143163(JP,A)
【文献】 特表2016−534237(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0155766(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D06C 3/00−29/00
D06M 10/00−11/84,
16/00,
19/00−23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布の表面に散布された粒子を該不織布の内部に含浸させる粒子含浸装置であって、
表面に粒子が散布された前記不織布を載せる載置体と、
前記載置体の上方に設けられるとともに、前記載置体上に載せられる前記不織布の幅方向に延びる振動部材と、
前記振動部材に超音波振動を印加する振動子と、
前記振動部材を昇降させる昇降機構と、
前記不織布及び前記振動部材を前記不織布の幅方向と直交する表面方向に相対移動させる移動機構と、を備え、
前記載置体の上方には、前記不織布を送り出すための送りローラが回転可能で且つ昇降可能に設けられており、
前記移動機構により前記不織布及び前記振動部材が相対移動されるときに、前記昇降機構により前記振動部材が下降されて該振動部材で前記不織布が押圧されて圧縮されるとともに、前記振動子により前記振動部材に超音波振動が印加されることを特徴とする粒子含浸装置。
【請求項2】
不織布の表面に散布された粒子を該不織布の内部に含浸させる粒子含浸装置であって、
表面に粒子が散布された前記不織布を載せる載置体と、
前記載置体の上方に設けられるとともに、前記載置体上に載せられる前記不織布の幅方向に延びる振動部材と、
前記振動部材に超音波振動を印加する振動子と、
前記振動部材を昇降させる昇降機構と、
前記不織布及び前記振動部材を前記不織布の幅方向と直交する表面方向に相対移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構により前記不織布及び前記振動部材が相対移動されるときに、前記昇降機構により前記振動部材が下降されて該振動部材で前記不織布は厚さが40〜80%となるように押圧されて圧縮されるとともに、前記振動子により前記振動部材に超音波振動が印加されることを特徴とする粒子含浸装置。
【請求項3】
不織布の表面に散布された粒子を該不織布の内部に含浸させる粒子含浸装置であって、
表面に粒子が散布された前記不織布を載せる載置体と、
前記載置体の上方に設けられるとともに、前記載置体上に載せられる前記不織布の幅方向に延びる振動部材と、
前記振動部材に超音波振動を印加する振動子と、
前記振動部材を昇降させる昇降機構と、
前記不織布及び前記振動部材を前記不織布の幅方向と直交する表面方向に相対移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構により前記不織布及び前記振動部材が相対移動されるときに、前記昇降機構により前記振動部材が下降されて該振動部材で前記不織布が押圧されて圧縮されるとともに、前記振動子により前記振動部材に超音波振動が印加され、
前記昇降機構によって前記振動部材による前記不織布の圧縮量を調整可能としたことを特徴とする粒子含浸装置。
【請求項4】
前記振動部材は、その自由端側が前記不織布を線接触状に押圧する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粒子含浸装置。
【請求項5】
前記振動部材は、板状に形成されている請求項記載の粒子含浸装置。
【請求項6】
前記振動子は、前記載置体上に載せられた前記不織布の幅方向に沿って複数設けられている請求項1乃至のいずれか一項に記載の粒子含浸装置。
【請求項7】
前記移動機構は、前記載置体を備えるコンベアである請求項1乃至のいずれか一項に記載の粒子含浸装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の粒子含浸装置を用いて、前記不織布の内部に前記粒子が含浸された粒子含浸不織布を得ることを特徴とする粒子含浸不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子含浸装置に関し、さらに詳しくは、不織布の表面に散布された粒子を不織布の内部に含浸させる粒子含浸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の粒子含浸方法として、不織布の内部に粒子を含浸させる湿式含浸方法及び乾式含浸方法が一般に知られている。この湿式含浸方法では、通常、液体中に粒子を分散させ、その液体に不織布を浸すことで、粒子を不織布内に含浸させる。また、乾式含浸方法では、通常、不織布表面に粒子を塗布し、ローラで不織布を押し潰すことで、粒子を不織布内に含浸させる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、上記湿式含浸方法では、例えば、図8に示されるように、粉体(粒子)103が分散された水槽104A、脱水ロール104B及び乾燥炉104Cを備える含浸装置が用いられる。そして、ロールから引き出された不織布102が水槽104A内を通過して不織布102の内部へ粉体103が浸透され、水槽104A通過後に脱水ロール104Bにて過剰な水分を脱水し、その後、乾燥炉104Cを通過して不織布102の内部に残留した水分を蒸発させ、乾燥炉104C通過後に必要なサイズへ不織布102を裁断する。
【0004】
また、上記乾式含浸方法では、例えば、図9に示されるように、ベルトコンベア111A及び複数のローラ111Bを備える含浸装置が用いられる。これら各ローラ111Bは、不織布202を前方Dへ送り出す方向へ駆動するとともに、高さ調整が可能となっており、ローラ111Bとコンベアベルト間の隙間が不織布202の厚みよりも小さくなる状態で保持される。そして、連続体又は裁断された不織布202をコンベア111A上へ載せ、コンベア111Aの駆動によって不織布202が前方Dへ搬送され、その搬送中に粉体散布機111Cによって不織布202の表面に粉体203が散布され、その不織布202を粉体散布機111Cの前方に配置された複数のローラ111Bを通過させ、各ローラ111Bにより不織布202を圧縮させることで不織布202の表面上の粉体203を不織布202の内部へ含浸させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−136592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の湿式含浸方法では、粒子の含浸後に不織布の乾燥工程が必要となり、設備及び工程の大型化、乾燥エネルギー費のランニングコストがばかにならないなどのデメリットが多い。また、上記従来の乾式含浸方法では、必要なローラ本数が多い(例えば、50本等)ため、設備の大型化、それによる投資増加や設置スペースの増大、ローラとコンベアベルトとのクリアランス調整が非常にシビアであるなどの問題がある。特に、ローラ表面に粒子が付着してしまい不織布の内部への粒子の含浸性が低下してしまう。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、不織布の内部へ粒子を効果的に含浸させることができる小型且つ安価な構造の粒子含浸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、不織布の表面に散布された粒子を該不織布の内部に含浸させる粒子含浸装置であって、表面に粒子が散布された前記不織布を載せる載置体と、前記載置体の上方に設けられるとともに、前記載置体上に載せられる前記不織布の幅方向に延びる振動部材と、前記振動部材に超音波振動を印加する振動子と、前記振動部材を昇降させる昇降機構と、前記不織布及び前記振動部材を前記不織布の幅方向と直交する表面方向に相対移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構により前記不織布及び前記振動部材が相対移動されるときに、前記昇降機構により前記振動部材が下降されて該振動部材で前記不織布が押圧されて圧縮されるとともに、前記振動子により前記振動部材に超音波振動が印加されることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記振動部材は、その自由端側が前記不織布を線接触状に押圧することを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記振動部材は、板状に形成されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記振動子は、前記振動部材の長手方向に沿って複数設けられていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記移動機構は、前記載置体を備えるコンベアであることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記載置体の上方には、前記不織布を送り出すための送りローラが回転可能で且つ昇降可能に設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粒子含浸装置によると、表面に粒子が散布された不織布を載せる載置体と、載置体の上方に設けられるとともに、載置体上に載せられる不織布の幅方向に延びる振動部材と、振動部材に超音波振動を印加する振動子と、振動部材を昇降させる昇降機構と、不織布及び振動部材を不織布の幅方向と直交する表面方向に相対移動させる移動機構と、を備える。そして、移動機構により不織布及び振動部材が相対移動されるときに、昇降機構により振動部材が下降されて振動部材で不織布が押圧されて圧縮されるとともに、振動子により振動部材に超音波振動が印加される。これにより、超音波振動する振動部材が不織布を押圧して圧縮した状態で、不織布の表面にわたって振動部材が相対的に摺動することとなる。よって、振動部材の超音波振動が不織布の繊維及び粒子に伝播することで、振動部材への粒子の付着が抑制されつつ、不織布の表面の粒子が不織布の内部へ含浸される。さらに、不織布の圧縮量や振動部材の接触量を調整することで、不織布の下面側への振動伝播を抑制して不織布からの粒子の落下が抑制される。その結果、不織布の内部へ粒子を効果的に含浸させることができる。さらに、設備及び設備スペースの小型化、投資低減、乾燥のランニングコスト低減等が可能となる。
また、前記振動部材が、その自由端側が前記不織布を線接触状に押圧する場合は、振動部材により不織布の幅方向にわたって振動が均等に伝播される。
また、前記振動部材が、板状に形成されている場合は、振動部材の軽量化を図ることで不織布へ振動が効果的に伝播される。
また、前記振動子が、前記振動部材の長手方向に沿って複数設けられている場合は、振動部材により不織布の幅方向にわたって振動が均等に伝播される。
また、前記移動機構が、前記載置体を備えるコンベアである場合は、所定形状に裁断された不織布を容易に移動させることができる。
さらに、前記載置体の上方に、送りローラが回転可能で且つ昇降可能に設けられている場合は、回転駆動される送りローラにより不織布が積極的に送り出される。よって、不織布の移動が遅れたり滑ることにより、圧縮量や振動伝播に差が生じることを抑制できる。すなわち、不織布の内部へ粒子が更に均一に含浸される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】実施例に係る粒子含浸装置の側面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3図2の一部を断面とした要部拡大図である。
図4図2のIV矢視図である。
図5】上記粒子含浸装置の作用説明図であり、(a)は振動部材が待機位置に位置する状態を示し、(b)は振動部材が押圧位置に下降した状態を示し、(c)振動部材が待機位置に上昇した状態を示す。
図6】他の形態の振動部材を説明するための説明図であり、(a)は断面C字状の振動部材を示し、(b)は断面多角状の振動部材を示し、(c)は断面円形状の振動部材を示す。
図7】他の形態の粒子含浸装置を説明するための説明図である。
図8】従来の湿式含浸方法を説明するための説明図である。
図9】従来の乾式含浸方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
本実施形態に係る粒子含浸装置は、不織布(2)の表面に散布された粒子(3)を該不織布の内部に含浸させる粒子含浸装置(1)であって、表面に粒子が散布された不織布を載せる載置体(12)と、載置体の上方に設けられるとともに、載置体上に載せられる不織布の幅方向(W)に延びる振動部材(8、8A、8B、8C)と、振動部材に超音波振動を印加する振動子(9)と、振動部材を昇降させる昇降機構(10)と、不織布及び振動部材を不織布の幅方向と直交する表面方向に相対移動させる移動機構(13)と、を備える(例えば、図1図4等参照)。そして、移動機構(13)により不織布(2)及び振動部材(8、8A〜8C)が相対移動されるときに、昇降機構(10)により振動部材が下降されて振動部材で不織布が押圧されて圧縮されるとともに、振動子(9)により振動部材に超音波振動が印加される(例えば、図5等参照)。
【0013】
なお、上記不織布(2)の振動部材(8、8A〜8C)による圧縮量や振動部材の接触量は、特に限定されず、不織布の材質、大きさ、厚さ等に応じて適宜選択される。この不織布は、例えば、その厚さが40〜80%(好ましくは50〜70%)となるように押圧部材の押圧により圧縮されることができる。
【0014】
上記不織布(2)の材質、大きさ、厚さ等は特に問わない。この不織布は、例えば、繊維を含んでいることができる。この繊維としては、例えば、無機繊維(ガラス繊維、カーボン等の炭素繊維等)、有機繊維(植物繊維、動物繊維等の天然繊維)、熱可塑性樹脂繊維等が挙げられる。この植物性繊維としては、例えば、葉脈系植物繊維(例えば、アバカ、サイザル、アガベ等)、靭皮系植物繊維(例えば、フラックス、ジュート、ヘンプ、ケナフ、ラミー等)、木質系植物繊維(例えば、広葉樹及び針葉樹等から採取された植物繊維等)、その他の植物繊維(ココヤシ殻繊維、オイルパーム空果房繊維、稲わら繊維、麦わら繊維、タケ繊維、綿等)などが挙げられる。さらに、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0015】
上記不織布(2)のプレス成形後の用途としては、例えば、車両(自動車及び鉄道車両等)、航空機、船舶、建築等の各種分野における内装基材が挙げられる。具体的に、車両用内装基材の用途としては、例えば、自動車のドアトリム、アームレスト、オーナメントパネル、ピラーガーニッシュ、カウルサイドガーニッシュ、センターコンソール、オーバヘッドコンソール、サンバイザー、デッキボード(ラゲージボード)、パッケージトレイ、シートサイドガーニッシュ、アシストグリップ等が挙げられる。さらに、建築用内装基材の用途としては、例えば、ドア部材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥等)、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。
【0016】
上記粒子(3)の機能、形状、大きさ等は特に問わない。この粒子としては、例えば、発泡剤(膨張剤)、吸放湿性剤、消臭剤、芳香剤、防虫剤、抗菌剤等が挙げられる。この発泡剤は、例えば、加熱により軟化される殻壁に内包されていることができる。さらに、粒子の形状としては、例えば、粒状、細片状、異形状等が挙げられる。
【0017】
本実施形態に係る粒子含浸装置としては、例えば、上記振動部材(8、8A〜8C)は、その自由端側(8a)が不織布を線接触状に押圧する形態(例えば、図3及び図6等参照)が挙げられる。この振動部材(8、8A)は、例えば、板状に形成されていることができる(例えば、図3及び図6(a)等参照)。ここで、上記振動部材は、不織布の圧縮時に不織布からの反発力を受けるため、剛性の小さい形状(例えば、極めて薄い平板状等)では外力によって変形し易く、不織布の幅方向Wで一定の圧縮量を得ることができない。そのため、振動部材は、剛性が大きくなる形状(例えば、湾曲板状、屈曲板状等)に形成されることが好ましい。
【0018】
本実施形態に係る粒子含浸装置としては、例えば、上記振動子(9)は、振動部材(8、8A〜8C)の長手方向に沿って複数設けられている形態(例えば、図4等参照)が挙げられる。これら各振動子は、例えば、振動部材の長手方向の長さを等分する位置で振動部材に接続されていることができる。
【0019】
本実施形態に係る粒子含浸装置としては、例えば、上記移動機構(13)は、載置体(12)を備えるコンベア(25)である形態(例えば、図1等参照)が挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る粒子含浸装置としては、例えば、上記載置体(12)の上方には、不織布(2)を送り出すための送りローラ(27)が回転可能で且つ昇降可能に設けられている形態(例えば、図2等参照)が挙げられる。
【0021】
なお、上記実施形態で記載した各構成の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
【実施例】
【0022】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「不織布」として、所定形状(例えば、平面矩形状等)に裁断された不織布2を例示する(図1参照)。
【0023】
(1)粒子含浸装置の構成
本実施例に係る粒子含浸装置1は、図1に示すように、不織布2を搬送するためのベルトコンベア5と、ベルトコンベア5の上方に配置される周知の粒子散布機6と、を備えている。この粒子含浸装置1は、不織布2の搬送方向Dに沿って複数(図中4つ)配置される振動装置7を備えている。これら各振動装置7は、以下に述べる振動部材8、振動子9、及び昇降機構10を備えている。さらに、粒子含浸装置1は、表面に粒子3が散布された不織布2を載せる載置体12と、載置体12上の不織布2を不織布2の幅方向Wと直交する表面方向(具体的に、搬送方向D)に移動させる移動機構13と、を備えている。
【0024】
上記振動部材8は、図2図4に示すように、載置体12の上方に設けられているとともに、載置体12上に載せられる不織布2の幅方向Wに延びている。この振動部材8は、金属製で平板状に形成されている。また、振動部材8の上端側には、金属製で湾曲棒状の支持部材15の一端側が溶接等により固定されている。この支持部材15の他端側には、振動子9が溶接等により固定されている。そして、振動部材8は、その自由端側(下端側)8aが不織布2を線接触状に押圧する(図3参照)。
【0025】
上記振動子9は、支持部材15を介して振動部材8に超音波振動を印加する。この振動子9は、振動部材8の長手方向に沿って複数(図中2つ)設けられている(図4参照)。これら各振動子9は、振動部材8の長手方向の長さを等分する位置で振動部材8に支持部材15を介して接続されている。また、各振動子9には、振動子9を所定の周波数域で振動させる発振器17がケーブル18を介して接続されている(図4参照)。なお、本実施例では、支持部材15が湾曲棒状に形成されているため、振動子9により超音波振動が振動部材8に効果的に印加される。
【0026】
上記発振器17を制御する制御部(図示省略)は、振動子9から振動部材8に印加される超音波振動の周波数を所定範囲(例えば、33〜37kHz)で変化させる。そして、制御部は、振動部材8のインピーダンスが最も低下する周波数を検出し、その検出された周波数を中心発振周波数とした超音波振動を振動部材8に印加する。このような発振器17を採用することで、振動部材8により不織布2の幅方向Wにわたって振動が均等に伝播される。
【0027】
上記昇降機構10は、振動部材8(具体的に、振動装置7)を昇降させる。この昇降機構10は、フレーム20に設けられるシリンダ21を備えている。このシリンダ21のピストンロッド21aの先端側は、各振動子9に掛け渡される支持板22の中間部に取り付けられている。そして、シリンダ21のピストンロッド21aの伸縮により、振動部材8は、載置体12上の不織布2を押圧する押圧位置A1と、押圧位置A1の上方となる待機位置B1と、の間で昇降される(図2参照)。
【0028】
上記移動機構13は、周回可能なベルト24(即ち、載置体12)を備えるベルトコンベア25である。そして、ベルトコンベア25の周回駆動により、ベルト24上に載せられる不織布2が搬送方向Dに搬送される。
【0029】
上記載置体12の上方には、不織布2を送り出すための送りローラ27が回転可能で且つ昇降可能に設けられている。具体的に、送りローラ27は、フレーム20に一端側が揺動自在に支持された揺動部材28の他端側に回転自在に支持されている。この送りローラ27の支持軸には、モータ29(図4参照)の駆動軸が連結されている。このモータ29の駆動により、送りローラ27が不織布2を搬送方向Dに送り出すように回転駆動される(図3参照)。また、揺動部材28には、フレーム20に設けられたシリンダ30のピストンロッド30aの先端側が取り付けられている。このシリンダ30のピストンロッド30aの伸縮により、揺動部材28が揺動されて、送りローラ27は、載置体12上の不織布2を押圧する押圧位置A2と、押圧位置A2の上方となる待機位置B2と、の間で昇降される(図2参照)。なお、上記送りローラ27は、複数の振動部材8(即ち、振動装置7)に対応して複数設けられている(図1参照)
【0030】
(2)粒子含浸装置の作用
次に、上記構成の粒子含浸装置1の作用について説明する。図1に示すように、コンベア5上の一端側に不織布2が載せられ、コンベア5の周回駆動により不織布2が搬送方向Dに搬送され、その搬送中に粒子散布機6により不織布2の表面に粒子3が散布される。その後、表面に粒子3が散布された不織布2は、コンベア5からコンベア25に移送され、コンベア25の周回駆動により搬送方向Dに搬送され始める。このとき、振動部材8及び送りローラ27のそれぞれは、待機位置B1、B2に位置している。なお、本実施例では、不織布2の搬送方向Dの先端側には、粒子3が散布されず、その先端側は後工程で把持部として使用されるものとする。
【0031】
上記コンベア25での不織布2の搬送中に、図5(a)に示すように、不織布2の先端側が振動部材8及び送りローラ27の直下まで搬送されると、振動部材8及び送りローラ27が待機位置B1、B2から下降される。この下降時に振動部材8が振動子9により振動されるとともに、送りローラ27が回転駆動される。そして、振動部材8及び送りローラ27が押圧位置A1、A2まで下降すると、図5(b)に示すように、不織布2の先端側は、振動部材8及び送りローラ27で押圧されて圧縮されるとともに、送りローラ27により前方(即ち、搬送方向D)に向かって積極的に送り出される。なお、本実施例では、振動部材8の昇降は、センサ等による検知制御やタイマ制御等に基づいて行われるものとする。
【0032】
上記振動部材8の押圧による不織布2の圧縮時に、図3に示すように、振動部材8の振動が不織布2の表面及び内部まで伝播する。その高速振動によって、不織布2の繊維及び粒子3に慣性力が生じる。その慣性力が繊維と粒子3の付着力よりも大きくなると、粒子3が繊維から離れ、不織布2の内部へ含浸する。ここで、粒子3の不織布2への含浸割合は、振動部材8と不織布2との接触時間、不織布2の圧縮量、振動強さ等によって制御される。その後、コンベア25での不織布2の搬送により、不織布2の表面にわたって振動部材8及び送りローラ27が摺動すると、図5(c)に示すように、振動部材8の振動とともに送りローラ27の回転駆動が停止されて、振動部材8及び送りローラ27が元の待機位置B1、B2まで上昇されて、先頭の振動装置7及び送りローラ27による振動処理が終了する。その後、先頭の振動装置7及び送りローラ27による振動処理と略同様にして、先頭以降の振動装置7及び送りローラ27による振動処理が順次行われる(図1参照)。
【0033】
(3)実施例の効果
本実施例の粒子含浸装置1によると、表面に粒子3が散布された不織布2を載せる載置体12と、載置体12の上方に設けられるとともに、載置体12上に載せられる不織布2の幅方向Wに延びる振動部材8と、振動部材8に超音波振動を印加する振動子9と、振動部材8を昇降させる昇降機構10と、不織布2を不織布2の幅方向Wと直交する表面方向に移動させる移動機構13と、を備える。そして、移動機構13により不織布2が移動されるときに、昇降機構10により振動部材8が下降されて振動部材8で不織布2が押圧されて圧縮されるとともに、振動子9により振動部材8に超音波振動が印加される。これにより、超音波振動する振動部材8が不織布2を押圧して圧縮した状態で、不織布2の表面にわたって振動部材8が摺動することとなる。よって、振動部材8の超音波振動が不織布2の繊維及び粒子3に伝播することで、振動部材8への粒子3の付着が抑制されつつ、不織布2の表面の粒子3が不織布2の内部へ含浸される。さらに、不織布2の圧縮量や振動部材8の接触量を調整することで、不織布2の下面側への振動伝播を抑制して不織布2からの粒子3の落下が抑制される。その結果、不織布2の内部へ粒子3を効果的に含浸させることができる。さらに、設備及び設備スペースの小型化、投資低減、乾燥のランニングコスト低減等が可能となる。
【0034】
また、本実施例では、振動部材8は、その自由端側8aが不織布2を線接触状に押圧する。これにより、振動部材8により不織布2の幅方向Wにわたって振動が均等に伝播される。
【0035】
また、本実施例では、振動部材8は、板状に形成されている。これにより、振動部材8の軽量化を図ることで不織布2へ振動が効果的に伝播される。
【0036】
また、本実施例では、振動子9は、振動部材8の長手方向に沿って複数設けられている。これにより、振動部材8により不織布2の幅方向Wにわたって振動が均等に伝播される。
【0037】
また、本実施例では、移動機構13は、載置体12(具体的に、ベルト24)を備えるベルトコンベア2である。これにより、所定形状に裁断された不織布2を容易に移動させることができる。
【0038】
さらに、本実施例では、載置体12の上方には、送りローラ27が回転可能で且つ昇降可能に設けられている。これにより、回転駆動される送りローラ27により不織布2が積極的に送り出される。よって、不織布2の移動が遅れたり滑ることにより、圧縮量や振動伝播に差が生じることを抑制できる。すなわち、不織布2の内部へ粒子3が更に均一に含浸される。
【0039】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、平板状の振動部材8を例示したが、これに限定されず、例えば、図6(a)に示すように、断面C字状の振動部材8Aとしてもよい。また、例えば、図6(b)に示すように、下方に向かう尖端部を有する断面多角状の振動部材8Bとしてもよい。さらに、例えば、図6(c)に示すように、断面円形状(又は楕円形状)の振動部材8Cとしてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、支持部材15に固定される振動部材8を例示したが、これに限定されず、例えば、支持部材に回転自在に支持されるとともに、モータにより回転駆動される振動ローラ(振動部材)としてもよい。
【0041】
また、上記実施例では、振動部材8を水平方向に移動不可で且つ昇降可能に設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図7に示すように、振動部材8をスライド機構で水平方向に移動可能で且つ昇降機構10で昇降可能に設けるようにしてもよい。例えば、振動部材8は、待機位置C1から押圧位置C2まで下降された後、不織布2の表面にわたって押圧した状態で摺動するように押圧位置C3まで水平移動され、その後、待機位置C4に上昇してから待機位置C1に戻されることができる。この場合、不織布2は、例えば、固定的に配置される載置体12上に載せられていてもよいし、コンベア等により水平方向に搬送されてもよい。
【0042】
また、上記実施例では、ベルトコンベア25からなる移動機構13を例示したが、これに限定されず、例えば、ローラコンベア、チェーンコンベア等からなる移動機構としてもよい。
【0043】
また、上記実施例では、シリンダ21で駆動される昇降機構10を例示したが、これに限定されず、例えば、モータで駆動される昇降機構としてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、1本の振動部材に対して2つの振動子を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、1本の振動部材に対して1つ又は3つ以上の振動子を備えるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施例では、振動部材8及び送りローラ27を昇降させる各昇降機構を独立して備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、振動部材8及び送りローラ27を昇降させる兼用の昇降機構を備えるようにしてもよい。
【0046】
さらに、上記実施例では、所定形状に裁断された不織布2に対して粒子3を含浸させる粒子含浸装置1を例示したが、これに限定されず、例えば、ロールから引き出される連続体である不織布に対して粒子を含浸させる粒子含浸装置としてもよい。
【0047】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0048】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、不織布の内部に粒子を含浸させる技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0050】
1;粒子含浸装置、2;不織布、3;粒子、8,8A,8B,8C;振動部材、8a;自由端側、9;振動子、10;昇降機構、12;載置体、13;移動機構、25;ベルトコンベア、27;送りローラ、W;不織布の幅方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9