【実施例】
【0022】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「不織布」として、所定形状(例えば、平面矩形状等)に裁断された不織布2を例示する(
図1参照)。
【0023】
(1)粒子含浸装置の構成
本実施例に係る粒子含浸装置1は、
図1に示すように、不織布2を搬送するためのベルトコンベア5と、ベルトコンベア5の上方に配置される周知の粒子散布機6と、を備えている。この粒子含浸装置1は、不織布2の搬送方向Dに沿って複数(図中4つ)配置される振動装置7を備えている。これら各振動装置7は、以下に述べる振動部材8、振動子9、及び昇降機構10を備えている。さらに、粒子含浸装置1は、表面に粒子3が散布された不織布2を載せる載置体12と、載置体12上の不織布2を不織布2の幅方向Wと直交する表面方向(具体的に、搬送方向D)に移動させる移動機構13と、を備えている。
【0024】
上記振動部材8は、
図2〜
図4に示すように、載置体12の上方に設けられているとともに、載置体12上に載せられる不織布2の幅方向Wに延びている。この振動部材8は、金属製で平板状に形成されている。また、振動部材8の上端側には、金属製で湾曲棒状の支持部材15の一端側が溶接等により固定されている。この支持部材15の他端側には、振動子9が溶接等により固定されている。そして、振動部材8は、その自由端側(下端側)8aが不織布2を線接触状に押圧する(
図3参照)。
【0025】
上記振動子9は、支持部材15を介して振動部材8に超音波振動を印加する。この振動子9は、振動部材8の長手方向に沿って複数(図中2つ)設けられている(
図4参照)。これら各振動子9は、振動部材8の長手方向の長さを等分する位置で振動部材8に支持部材15を介して接続されている。また、各振動子9には、振動子9を所定の周波数域で振動させる発振器17がケーブル18を介して接続されている(
図4参照)。なお、本実施例では、支持部材15が湾曲棒状に形成されているため、振動子9により超音波振動が振動部材8に効果的に印加される。
【0026】
上記発振器17を制御する制御部(図示省略)は、振動子9から振動部材8に印加される超音波振動の周波数を所定範囲(例えば、33〜37kHz)で変化させる。そして、制御部は、振動部材8のインピーダンスが最も低下する周波数を検出し、その検出された周波数を中心発振周波数とした超音波振動を振動部材8に印加する。このような発振器17を採用することで、振動部材8により不織布2の幅方向Wにわたって振動が均等に伝播される。
【0027】
上記昇降機構10は、振動部材8(具体的に、振動装置7)を昇降させる。この昇降機構10は、フレーム20に設けられるシリンダ21を備えている。このシリンダ21のピストンロッド21aの先端側は、各振動子9に掛け渡される支持板22の中間部に取り付けられている。そして、シリンダ21のピストンロッド21aの伸縮により、振動部材8は、載置体12上の不織布2を押圧する押圧位置A1と、押圧位置A1の上方となる待機位置B1と、の間で昇降される(
図2参照)。
【0028】
上記移動機構13は、周回可能なベルト24(即ち、載置体12)を備えるベルトコンベア25である。そして、ベルトコンベア25の周回駆動により、ベルト24上に載せられる不織布2が搬送方向Dに搬送される。
【0029】
上記載置体12の上方には、不織布2を送り出すための送りローラ27が回転可能で且つ昇降可能に設けられている。具体的に、送りローラ27は、フレーム20に一端側が揺動自在に支持された揺動部材28の他端側に回転自在に支持されている。この送りローラ27の支持軸には、モータ29(
図4参照)の駆動軸が連結されている。このモータ29の駆動により、送りローラ27が不織布2を搬送方向Dに送り出すように回転駆動される(
図3参照)。また、揺動部材28には、フレーム20に設けられたシリンダ30のピストンロッド30aの先端側が取り付けられている。このシリンダ30のピストンロッド30aの伸縮により、揺動部材28が揺動されて、送りローラ27は、載置体12上の不織布2を押圧する押圧位置A2と、押圧位置A2の上方となる待機位置B2と、の間で昇降される(
図2参照)。なお、上記送りローラ27は、複数の振動部材8(即ち、振動装置7)に対応して複数設けられている(
図1参照)
【0030】
(2)粒子含浸装置の作用
次に、上記構成の粒子含浸装置1の作用について説明する。
図1に示すように、コンベア5上の一端側に不織布2が載せられ、コンベア5の周回駆動により不織布2が搬送方向Dに搬送され、その搬送中に粒子散布機6により不織布2の表面に粒子3が散布される。その後、表面に粒子3が散布された不織布2は、コンベア5からコンベア25に移送され、コンベア25の周回駆動により搬送方向Dに搬送され始める。このとき、振動部材8及び送りローラ27のそれぞれは、待機位置B1、B2に位置している。なお、本実施例では、不織布2の搬送方向Dの先端側には、粒子3が散布されず、その先端側は後工程で把持部として使用されるものとする。
【0031】
上記コンベア25での不織布2の搬送中に、
図5(a)に示すように、不織布2の先端側が振動部材8及び送りローラ27の直下まで搬送されると、振動部材8及び送りローラ27が待機位置B1、B2から下降される。この下降時に振動部材8が振動子9により振動されるとともに、送りローラ27が回転駆動される。そして、振動部材8及び送りローラ27が押圧位置A1、A2まで下降すると、
図5(b)に示すように、不織布2の先端側は、振動部材8及び送りローラ27で押圧されて圧縮されるとともに、送りローラ27により前方(即ち、搬送方向D)に向かって積極的に送り出される。なお、本実施例では、振動部材8の昇降は、センサ等による検知制御やタイマ制御等に基づいて行われるものとする。
【0032】
上記振動部材8の押圧による不織布2の圧縮時に、
図3に示すように、振動部材8の振動が不織布2の表面及び内部まで伝播する。その高速振動によって、不織布2の繊維及び粒子3に慣性力が生じる。その慣性力が繊維と粒子3の付着力よりも大きくなると、粒子3が繊維から離れ、不織布2の内部へ含浸する。ここで、粒子3の不織布2への含浸割合は、振動部材8と不織布2との接触時間、不織布2の圧縮量、振動強さ等によって制御される。その後、コンベア25での不織布2の搬送により、不織布2の表面にわたって振動部材8及び送りローラ27が摺動すると、
図5(c)に示すように、振動部材8の振動とともに送りローラ27の回転駆動が停止されて、振動部材8及び送りローラ27が元の待機位置B1、B2まで上昇されて、先頭の振動装置7及び送りローラ27による振動処理が終了する。その後、先頭の振動装置7及び送りローラ27による振動処理と略同様にして、先頭以降の振動装置7及び送りローラ27による振動処理が順次行われる(
図1参照)。
【0033】
(3)実施例の効果
本実施例の粒子含浸装置1によると、表面に粒子3が散布された不織布2を載せる載置体12と、載置体12の上方に設けられるとともに、載置体12上に載せられる不織布2の幅方向Wに延びる振動部材8と、振動部材8に超音波振動を印加する振動子9と、振動部材8を昇降させる昇降機構10と、不織布2を不織布2の幅方向Wと直交する表面方向に移動させる移動機構13と、を備える。そして、移動機構13により不織布2が移動されるときに、昇降機構10により振動部材8が下降されて振動部材8で不織布2が押圧されて圧縮されるとともに、振動子9により振動部材8に超音波振動が印加される。これにより、超音波振動する振動部材8が不織布2を押圧して圧縮した状態で、不織布2の表面にわたって振動部材8が摺動することとなる。よって、振動部材8の超音波振動が不織布2の繊維及び粒子3に伝播することで、振動部材8への粒子3の付着が抑制されつつ、不織布2の表面の粒子3が不織布2の内部へ含浸される。さらに、不織布2の圧縮量や振動部材8の接触量を調整することで、不織布2の下面側への振動伝播を抑制して不織布2からの粒子3の落下が抑制される。その結果、不織布2の内部へ粒子3を効果的に含浸させることができる。さらに、設備及び設備スペースの小型化、投資低減、乾燥のランニングコスト低減等が可能となる。
【0034】
また、本実施例では、振動部材8は、その自由端側8aが不織布2を線接触状に押圧する。これにより、振動部材8により不織布2の幅方向Wにわたって振動が均等に伝播される。
【0035】
また、本実施例では、振動部材8は、板状に形成されている。これにより、振動部材8の軽量化を図ることで不織布2へ振動が効果的に伝播される。
【0036】
また、本実施例では、振動子9は、振動部材8の長手方向に沿って複数設けられている。これにより、振動部材8により不織布2の幅方向Wにわたって振動が均等に伝播される。
【0037】
また、本実施例では、移動機構13は、載置体12(具体的に、ベルト24)を備えるベルトコンベア2である。これにより、所定形状に裁断された不織布2を容易に移動させることができる。
【0038】
さらに、本実施例では、載置体12の上方には、送りローラ27が回転可能で且つ昇降可能に設けられている。これにより、回転駆動される送りローラ27により不織布2が積極的に送り出される。よって、不織布2の移動が遅れたり滑ることにより、圧縮量や振動伝播に差が生じることを抑制できる。すなわち、不織布2の内部へ粒子3が更に均一に含浸される。
【0039】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、平板状の振動部材8を例示したが、これに限定されず、例えば、
図6(a)に示すように、断面C字状の振動部材8Aとしてもよい。また、例えば、
図6(b)に示すように、下方に向かう尖端部を有する断面多角状の振動部材8Bとしてもよい。さらに、例えば、
図6(c)に示すように、断面円形状(又は楕円形状)の振動部材8Cとしてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、支持部材15に固定される振動部材8を例示したが、これに限定されず、例えば、支持部材に回転自在に支持されるとともに、モータにより回転駆動される振動ローラ(振動部材)としてもよい。
【0041】
また、上記実施例では、振動部材8を水平方向に移動不可で且つ昇降可能に設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、
図7に示すように、振動部材8をスライド機構で水平方向に移動可能で且つ昇降機構10で昇降可能に設けるようにしてもよい。例えば、振動部材8は、待機位置C1から押圧位置C2まで下降された後、不織布2の表面にわたって押圧した状態で摺動するように押圧位置C3まで水平移動され、その後、待機位置C4に上昇してから待機位置C1に戻されることができる。この場合、不織布2は、例えば、固定的に配置される載置体12上に載せられていてもよいし、コンベア等により水平方向に搬送されてもよい。
【0042】
また、上記実施例では、ベルトコンベア25からなる移動機構13を例示したが、これに限定されず、例えば、ローラコンベア、チェーンコンベア等からなる移動機構としてもよい。
【0043】
また、上記実施例では、シリンダ21で駆動される昇降機構10を例示したが、これに限定されず、例えば、モータで駆動される昇降機構としてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、1本の振動部材に対して2つの振動子を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、1本の振動部材に対して1つ又は3つ以上の振動子を備えるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施例では、振動部材8及び送りローラ27を昇降させる各昇降機構を独立して備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、振動部材8及び送りローラ27を昇降させる兼用の昇降機構を備えるようにしてもよい。
【0046】
さらに、上記実施例では、所定形状に裁断された不織布2に対して粒子3を含浸させる粒子含浸装置1を例示したが、これに限定されず、例えば、ロールから引き出される連続体である不織布に対して粒子を含浸させる粒子含浸装置としてもよい。
【0047】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0048】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。