(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記内側壁部のうち、前記長手方向において隣接する前記内側壁部は、前記第2壁部との間に隙間を形成した前記内側壁部よりも、前記第2壁部との間に隙間を設けない前記内側壁部の方が、設置状態における下側端部がより下側に位置する、請求項1又は2に記載の水中設置システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、以下では説明の便宜のために図示した直交座標系を用いて説明を行う。xは、後述する水中設置物の奥行き方向を示す。yは、奥行き方向xと直交する水平方向を示す。zは、水中設置物の高さ方向を示す。
【0011】
図1〜
図4は本発明の第1実施形態に係る水中設置システムの説明に供する図である。本実施形態に係る水中設置システム100は、ナマコ等の水生生物の養殖のために
図1に示すような漁港の湾部と海洋との境界に位置する開口部付近に水中設置物10を設置する。水中設置物10によって、漁港の湾部を海洋との間に境界を設け、漁港を養殖場所として利用することができる。例えば、養殖場所でナマコを養殖する場合、
図1に示す採苗器Sにてナマコを採苗し、数週間後、採苗器Sを養殖領域内に配置した蛇籠J上に設置する。養殖領域内には蛇籠Jの他にナマコ等を成育させるドーム状のブロックBLが設置され、ナマコはブロックBL等に移動したりして、成長する。そして、翌年にはエアーリフトブイで浮上させた蛇籠Jを曳航し、漁場にナマコの種苗を放流する。本実施形態に係る水中設置システム100は、上記したナマコ等の養殖場所を形成する際に用いられる。
【0012】
本実施形態に係る水中設置システム100は、
図1〜4を参照して概説すれば、水底に載置される載置部20、半閉空間37を形成する包囲部30、半閉空間37への液体の流れ込みを規制する規制部40を備えた水中設置物10を有する。また、水中設置システム100は、水中設置物10と接続され、半閉空間37に気体を供給する気体供給部50を有する。以下、詳述する。
【0013】
(水中設置物)
水中設置物10は、コンクリート等で形成される構造物である。載置部20は、水中設置物10の下部に設けられ、漁港等の開口部付近の海底に載置される。載置部20は、
図2において直線的な形状に構成しているが、海底等の水底に安定して設置できれば、具体的な形状はこれに限定されず、曲線形状、又は直線と曲線とを含む形状によって構成してもよい。また、水中設置物10は、載置部20によって平坦な略水平面に設置することができるが、半閉空間37に液体の充填されていない空間を形成できれば、上記に限定されない。水中設置物10は、平坦な略水平面以外にも傾斜した面や表面に凸凹のある不規則な面にも設置できる。
【0014】
包囲部30は、
図2、3に示すように載置部20から連続して設けられ、水生生物が侵入可能な開口部36を設けた半閉空間37を載置部20の上方に形成する。包囲部30は、載置部20から水面に向かって延在する第1壁部31と、第1壁部31における水面側の端部から少なくとも水平方向yに延在する第2壁部32と、第2壁部32における第1壁部31とは逆側の端部から水底に向かって延在し、第1壁部31と共に開口部36を形成する第3壁部33と、を備える。また、包囲部30は、第1壁部31、第2壁部32、及び第3壁部33が延在する奥行き方向xにおける両端部に位置し、開口部36を形成する側壁部34を備える。
【0015】
第1壁部31は、水中設置物10の水平方向yにおいて規制部40と対向するように位置する。第1壁部31は、
図2の高さ方向zにおいて肉厚が一定となってはいないが、半閉空間37に侵入した水生生物が半閉空間37から逃げることを困難にできれば、肉厚は一定であってもよい。
【0016】
第2壁部32は、水中設置物10の半閉空間37における上部壁面を形成する。ここで、本明細書において第2壁部32が「少なくとも水平方向に延在する」とは、包囲部30によって半閉空間37が形成できればよく、第2壁部32は
図3において水平方向yに延在しているが、これに限定されない。第2壁部32は、上記以外にも第1壁部31の上部端から斜めに傾斜した方向に延在してもよい。
【0017】
第3壁部33は、第2壁部32における第1壁部31とは逆側の端部から水底に向かって延在し、第1壁部31と共に開口部36を形成する。第3壁部33は、第1壁部31と第2壁部32によって半閉空間37を形成することから、
図3に示す第2壁部32の左側端部から水底に向かうように延在する。第3壁部33は、
図3において第2壁部32の端部から左斜め下方に向かって略45度の方向に延在するように構成している。しかし、半閉空間37を形成できれば、延在方向は
図3に限定されず、上記以外にも例えば高さ方向zの下方に向かって垂直に延在してもよい。
【0018】
側壁部34は、
図2に示すように奥行き方向xにおける両端部に形成される壁面であり、開口部36を形成する。側壁部34は、本実施形態において第2壁部32の奥行き方向xにおける端部から第3壁部33の下側端部の位置まで延在して形成している。側壁部34には、
図3に示すように後述する気体供給部50の配管52を取り付ける開口穴35が設けられる。
【0019】
半閉空間37は、包囲部30において水生生物が侵入しうる部位を開口部36として設け、その他の部位(第1壁部31、第2壁部32、第3壁部33、側壁部34)が周囲から隔てられた空間を意味する。本実施形態において半閉空間37は、
図3に示す二点鎖線で示す境界Bまで海水等が存在し、それよりも上部は気体供給部50によって空気等の気体を充填して構成している。
【0020】
規制部40は、載置部20の水平方向yにおいて第1壁部31と反対側に設けられ、半閉空間37への液体の流れ込みを規制する。規制部40は、
図3に示すように載置部20から水面に向かって延在し、第3壁部33の下側端部と間隔を空けるように形成された壁面を備える。規制部40の壁面は、
図3に示すように載置部20において第1壁部21が接続する端部とは逆側の端部から略上方に向かって延在する。
図3において規制部40の上側の端部は、包囲部30の第3壁部33の下側端部と略同等の高さとなるように構成している。
【0021】
図2、3の矢印で示す水平方向yに向かって海流が発生した際に海底の砂が巻き上げられて水中設置物10の半閉空間37の内部に侵入する事態が起こり得る。これについて規制部40は、海流に対して障壁として存在するかのように機能することで、
図3における第3壁部33よりも左側から砂等が載置部20に堆積することを抑制できる。
【0022】
(気体供給部)
気体供給部50は、水中設置物10と接続され、半閉空間37に気体を供給する。気体供給部50は、
図1に示すように漁港における開口部付近の陸地に設置される。気体供給部50は、半閉空間37に供給する気体を発生させる発生部51と、発生部51で生じた気体を半閉空間37に導く配管52と、を備える。
【0023】
発生部51は、本実施形態においてエアーポンプにて構成している。発生部51にて発生した空気は配管52等を介して水中設置物10の半閉空間37に導かれる。配管52は側壁部34に設けた開口穴35に取り付けられる。配管52には不図示のシール部材が設けられ、周囲からの海水等の液体が半閉空間37に侵入することを防止する。配管52は、断面が中空円形状のSUS等によって構成しているが、発生部51で生じた気体を半閉空間37にまで導ければ、具体的な構成はこれに限定されない。また、
図1に示すように漁港の開口部付近を複数の水中設置物10によって塞ぐ場合、隣接する水中設置物10同士の開口穴35には不図示の逆止弁が取り付けられる。これにより、半閉空間37の上部に空気等からなる気体層が形成され、ナマコ等が上部に移動し、養殖場所から逃げることを防止する。
【0024】
以上のように第1実施形態に係る水中設置システム100は、水底に設置される載置部20、載置部20から連続して設けられ水生生物が侵入可能な開口部36を設けた半閉空間37を載置部20の上方に形成する包囲部30、及び載置部20に設けられ、半閉空間37への液体の流れ込みを規制する規制部40を備える水中設置物10と、水中設置物10と接続され、半閉空間37に気体を供給する気体供給部50と、を有する。
【0025】
ナマコ等の水生生物は、あくまで水中を移動し、空気等のみからなる液体のない空間を移動することができない。そのため、上記のように載置部20の上方に形成した半閉空間37に気体供給部50から気体を供給することによって、半閉空間37に気体層を形成し、ナマコ等の水生生物が載置部20から上方に移動することを抑制又は防止できる。よって、漁港の開口部のような場所に水中設置システム100を設置することで、ナマコ等の水生生物が水中設置物10を設置した領域から上方へと移動し、これによって他の領域へと移動することを抑制又は防止できる。
【0026】
また、包囲部30は載置部20から水面に向かって延在する第1壁部31と、第1壁部31における水面側の端部から少なくとも水平方向yに向かって延在する第2壁部32と、第2壁部32における第1壁部31と接続された逆側の端部から水底に向かって延在し、載置部20と共に開口部36を形成する第3壁部33と、を備える。また、規制部40は、載置部20から水面に向かって延在し、第3壁部33と間隔を空けるように形成された壁面を備える。
【0027】
そのため、上述のように水中における略水平方向yに水流が生じた際に第3壁部33の外方から液体が流れ込み、半閉空間37内に液体が侵入して気体層38が減少又は消滅することを防止できる。また、規制部40の壁面によって、砂等が載置部20に堆積することをも防止できる。
【0028】
(第2実施形態)
図5〜
図8は、第2実施形態に係る水中設置システムについての説明に供する図である。本実施形態は第1実施形態と比べて水中設置物における規制部の構成が特に異なるため、規制部について主に説明し、気体供給部等のその他の共通する構成についての説明を省略する。
【0029】
第2実施形態に係る水中設置物10aは、
図5、6に示すように水底に設置される載置部20と、半閉空間37aを形成する包囲部30aと、包囲部30aに設けられ半閉空間37aへの液体の流れ込みを規制する規制部40aと、を備える。載置部20、包囲部30aの第1壁部31〜開口穴35、及び気体供給部50は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0030】
載置部20は、
図5に示すように奥行き方向xに断面が一様な長尺状に構成される。規制部40aは、
図7に示すように半閉空間37aの長手方向(奥行き方向xに相当)において所定間隔で設けられる内側壁部41、42を備える。
【0031】
内側壁部41、42は、包囲部30の半閉空間37aにおいて海水等の液体が奥行き方向xに流通することを阻害するように形成される。内側壁部41、42は、本実施形態において第1壁部31から第3壁部33に向かってほぼ水平方向yに沿うように延在する。しかし、半閉空間37aにおける液体の流通を阻害できれば、内側壁部の延在方向は上記に限定されない。内側壁部は、
図7に示すように上方の端部が第2壁部32と接続される第1内側壁部41と、第2壁部32との間に隙間43を形成した第2内側壁部42と、を備える。
【0032】
第1内側壁部41及び第2内側壁部42は、奥行き方向xにおいて気体供給部50によって半閉空間37aに供給された気体を流通させる流路を形成する。第1内側壁部41は、
図7に示すように下側端部44が第2内側壁部42の下側端部45よりも高さ方向zに高い位置となるように形成される。
【0033】
第1内側壁部41及び第2内側壁部42は、不等沈下等によって水中設置物10aが
図8に示すように水中で姿勢を崩し、それにより半閉空間37aに進入したナマコ等が逃げ出さないように半閉空間37aに流入する液体の流通を阻害する。第1内側壁部41及び第2壁部32との間に隙間43を設けた第2内側壁部42は、所定の間隔毎に設けられ、
図7、8では奥行き方向xに交互に設けている。
【0034】
半閉空間に規制部を設けない比較例に係る水中設置物の場合、
図9に示すように不等沈下によって水中設置物の姿勢が傾くと、半閉空間には高さの低い方から海水等が容易に侵入して高さの高い方へと行き渡り、半閉空間の気体層は容易に減少又は消滅してしまう。
【0035】
本実施形態に係る水中設置物10aでは、第2内側壁部42と第2壁部32との間に隙間43を設け、第1内側壁部41の下側端部44が第2内側壁部42の下側端部45より高く形成することによって、流体の流路が奥行き方向xにジグザグに形成される。そのため、不等沈下等が発生しても
図8に示すように第1内側壁部41及び第2内側壁部42によって半閉空間37aに液体が流通することを抑制し、気体層が減少又は消滅することを抑制できる。
【0036】
以上のように、第2実施形態に係る水中設置物10aでは載置部20が水底に沿って長尺状に形成され、半閉空間37aには第1壁部31から第3壁部33に延在する内側壁部41、42が長手方向に複数設けられる。複数の内側壁部41、42のうち、内側壁部42は、第2壁部32との間に隙間43を設けるように構成している。これにより、不等沈下等により水中設置物10aが傾いて半閉空間37aに液体が侵入したとしても、内側壁部41、42が半閉空間37aにおける液体の流通を抑制する。特に、内側壁部42は液体が流通しうる隙間43が第2壁部32との間に位置するため、海水等を半閉空間37aに流通しにくくでき、半閉空間37aにおける気体層が減少することを抑制できる。
【0037】
また、内側壁部42は、奥行き方向xにおいて内側壁部41と交互に設けられる。そのため、半閉空間37a内に液体が侵入し、隙間43を通過してもその隣には隙間43のない内側壁部41が配置され、液体が容易に半閉空間37aの長手方向に流通することを抑制することができる。
【0038】
また、内側壁部41、42のうち、第2壁部32との間に隙間43を設けない内側壁部41は第2壁部32との間に隙間43を備える内側壁部42の下側端部45よりも下側端部44がより下方に位置する。これにより、半閉空間37aにおいて液体が比較的高い水深まで存在していても気体が流通しうるスペースを用意しやすくして気体層を減少しにくくすることができ、水生生物が上方に移動することを抑制又は防止できる。
【0039】
なお、本実施形態は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。上記では第1実施形態において水中設置物10が載置部20から水面に向かって延在する規制部40を備え、第2実施形態において水中設置物10aが半閉空間37aにおいて第1壁部31から第3壁部33に向かって延在する内側壁部41、42を備えると説明した。しかし、之に限定されず、規制部40及び規制部40aをいずれも備える場合も本実施形態に含まれる。
【0040】
また、上記以外にも水中設置物及び水中設置システムが規制部40又は規制部40aを有さない(
図5の外観及び
図4の内部構造参照)場合も本発明の一実施形態に含まれる。また、開口穴35は、側壁部34に設けると説明したが、気体供給部50の配管52を取り付けて半閉空間37に液体の充填されていない空間を形成できればこれに限定されない。開口穴35は、上記以外にも第1壁部31、第2壁部32、又は第3壁部33の少なくともいずれか一つに設けてもよい。