【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼展示日 平成30年11月7日 ▲2▼展示会名、開催場所 第2回〔関西〕学校施設・サービス展 インテックス大阪(大阪府大阪市住之江区南港北1−5−102)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記端末に対して行われる、充電及びディスクイメージ又はその更新データの配信は、いずれも、充電機能と双方向通信機能とを併有する、単一のインターフェースを介して行われる請求項1記載の端末貸出システム。
前記給電制御サーバーは、前記端末を施錠しつつ保管するための端末格納部を複数有する端末ロッカーと、前記端末の施錠状態を管理する機能を更に具備する請求項3記載の端末貸出システム。
端末貸出情報及び返却済みの前記端末の充電又はストレージの更新情報を表示するための情報表示部を有する請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の端末貸出システム。
前記予約管理サーバーは、前記端末格納部に保管されている前記端末のうち、充電及びオペレーティングシステムのディスクイメージ又はその更新データの配信が完了している前記端末のみを貸出対象とする請求項4、5及び7のいずれか1項記載の端末貸出システム。
前記予約管理サーバーは、ユーザーが予約時に指定する、前記端末の動作環境に関する情報に基づいて貸出時刻前までに前記端末のストレージの状態を更新させる機能を有する請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の端末貸出システム。
前記端末管理サーバーは、返却時点でのオペレーティングシステムのディスクイメージをバックアップする機能を具備する請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の端末貸出システム。
前記端末管理サーバーは、ユーザーから返却された前記端末のディスクイメージを保存すると共に、前記ユーザーによる貸出情報及び動作環境に関する情報とを関連づけて記録する手段を更に具備し、
前記予約管理サーバーが次回の貸出予約を受けた際には、前記ディスクイメージが復元された前記端末を前記貸出予約の日時までに準備する手段を更に具備する請求項11記載の端末貸出システム。
前記給電制御サーバーは、前記端末格納部に前記端末が返却される際に、前記ケーブルが適切に前記端末に接続されたことを検知した後に前記端末格納部を施錠する請求項4記載の端末貸出システム。
前記給電制御サーバーは、前記端末格納部から前記端末が取り出される際に、前記ケーブルが適切に前記端末から取り外されたことを検知した後に前記端末格納部を解錠する請求項4、請求項13又は請求項14記載の端末貸出システム。
請求項3における「充電の要否」又は請求項5における「ストレージの更新の要否」の判断を、予め定められたスケジュールに従って繰り返すことを特徴とする端末貸出システム。
前記端末ロッカーの筐体は、前記端末を載置した状態で筐体の外部に引き出し可能なレール状のトレイが設けられていることを特徴とする請求項4、請求項13、請求項14、請求項15又は請求項16記載の端末貸出システム。
前記端末貸出システムは、貸出時にはユーザーを認証し、返却時には前記端末を識別することにより、貸出を行うのか返却を行うのかを問い合わせないこと特徴とする請求項1乃至請求項18のいずれか1項記載の端末貸出システム。
前記端末貸出システムは、前記端末の貸出操作及び返却操作をガイドする音声ガイダンスを具備することを特徴とする請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の端末貸出システム。
前記端末貸出システムは、前記端末の貸出操作及び返却操作をガイドする発光部を前記端末格納部近傍に具備することを特徴とする請求項4、請求項13、請求項14、請求項15、請求項16又は請求項18記載の端末貸出システム。
前記端末貸出システムは、前記発光部により、返却時に前記端末のサイズに応じて適切なサイズの端末格納部への収納を促すことを特徴とする請求項21記載の端末貸出システム。
前記端末貸出システムは、返却時にオペレーティングシステムの起動と停止動作を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項22のいずれか1項記載の端末貸出システム。
前記端末の返却時に少なくとも1度前記端末を起動してシステムが正常に起動したことを確認してすぐにシャットダウンすることを特徴とする請求項1乃至請求項23のいずれか1項記載の端末貸出システム。
前記給電制御サーバーは、前記端末を施錠しつつ保管するための端末格納部を複数有する端末ロッカーと、前記端末の施錠状態を管理する機能を更に具備する請求項2記載の端末貸出システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、多数の端末を収納するための収納器具、例えばロッカーのような鍵付きの収納スペースで区切られた端末格納部1つにつき1台の端末を格納し、貸し出し中であるか返却済みであるか貸出状態を管理する機能と共に、返却から次の貸出までの待機中にオペレーティングシステム等の更新と充電を自動的に行うことができるシステムを設計することとした。また、このシステムを前提として想定しうる問題点は、以下のとおりである。
【0006】
第1に、起動中又は充電中の端末は、発熱を伴う。そのため、多数の端末を一度に起動すれば当然に発熱量も大きくなる。例えば、近年の典型的なノートパソコンは、急速充電に対応するため、1台当たりの最大消費電力が100Wに達することもある。この場合、例えば、商用電源の1回路である1500W(100V、15A)以内で安全に使用するためには、同時に起動又は充電できる端末の台数を15台以下に制限しなければならない。特に、ロッカーのような密閉された空間内であれば火災の危険性もある。だからといって、大がかりな冷却機構を採用することも、コストがかかり、非現実的である。
【0007】
さらに、充電式の電池は充電を繰り返すと電池の性能が劣化したり寿命(繰り返し充放電回数)が低下することが知られている。そのため、端末が満充電ではないからといって必ずしも充電するべきとは限らない。
【0008】
すなわち、収納器具全体としてみた場合、
・待機中の各端末の充電状態を監視して充電完了後に安全に給電を停止すること、及び、
・充電中の端末の台数に上限を設け、上限台数を越える端末については通電せず待機状態とすること、
が不可欠となる。
【0009】
これらは、多数の端末に供給するために必要な電力が、利用可能な商用電源の供給量を越えている場合、例えば、商用電源1回路しか利用できない場所に多数の収納器具を設置する場合に、特に重要な要件となる。
【0010】
第2に、返却された端末をそのまま次のユーザに貸し出すと、情報漏えい等の問題が生じるおそれがある。そのため、端末が返却されたときには、少なくとも貸し出し前の状態に戻す(復元)作業が必要となる。さらに、返却後にストレージの状態に変更を加える必要が生じる場合(具体的には、例えば、オペレーティングシステムやセキュリティソフトなどの更新、初期状態へのロールバックといったことが考えられる。)も想定され、この場合、順次その作業を進めることも必要となる。
【0011】
ところが、ネットワークに常時接続された状態で固定して設置される端末とは異なり、貸出端末として供される端末の場合、システムの更新は容易ではない。これは、非通電状態の端末をリモートでかつ選択的に起動しなければならないからである。また、ネットワークインターフェースに無線で接続する場合は、ネットワーク帯域が不足しがちであると共に、接続も不安定となりやすい。有線接続の場合は、端末にLANケーブル等が確実に接続される必要がある。
【0012】
この点、例えば、オペレーティングシステムを単にアップデートするだけであれば、端末を通電状態にしてオペレーティングシステムを起動し、パッチを当てるだけで対応は可能である。しかし、端末ごとに個別に繰り返しパッチを当てると、更新後は端末ごとに異なるディスク状態になってしまうため、多数の端末を安定運用するという用途には適さない。すなわち、「システムの更新」とは、「OSのアップデートや、設定の変更」だけでなく、「OSのインストール」や「前のユーザの利用履歴の消去(復元作業)により、多数の端末ディスクの状態を統一する作業」なども含まれる広い概念である。
【0013】
そのため、実際の運用の問題として、返却時には必要なケーブル類が正しくかつ確実に、端末に接続される必要がある。万一、充電ケーブルが正しく接続されていなければ、充電が開始できず、通信ケーブルが正しく接続されていなければ、システムの更新等も、できないからである。さらに、充電ケーブルと通信ケーブルが別々に分かれている場合、複数のケーブルを接続させる必要があり、それによりユーザーに過大な負担を強いることになる。ユーザーがうっかり接続するのを忘れたり接続が不確実であったりするリスクも無視できない。接続を繰り返す間にケーブル類やコネクタ等を損傷してしまうリスクもある。これらの問題は、いずれも長期間の無人運用を妨げる要因となる。その一方で、上述のとおり、充電ケーブルに接続された全ての端末が直ちに充電状態や通電状態に移行するようなシステムは、電源回路及び発熱の観点から、避けなければならない。
【0014】
しかも、より多くの端末を貸し出すことができる拡張性の高いシステムが好ましい。ここでいう拡張性とは、1つの拠点で多数の端末を貸し出せるシステムであること、及び、そのような拠点を多数設けることにも対応できるシステムであること、とを含む。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、貸出管理業務及びメンテナンス業務を効率よく行うことができる端末貸出システムを提供すること、具体的には、上述した技術的課題の少なくとも1つを解決することを主たる技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る端末貸出システムは、
端末の貸出予約情報を管理する予約管理サーバーと、
前記端末に対してオペレーティングシステムのディスクイメージ又はその更新データを配信する端末管理サーバーと、
前記貸出予約情報と前記端末の充電状態及びディスクイメージ又はその更新データの配信状況に関する情報等に基づいて前記端末格納部の給電状態を管理する給電制御サーバーと、
を具備することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、給電制御サーバーが、同時に充電可能な端末の台数や、同時に起動可能な端末の台数を制限することができ、システム全体として見た総消費電力を制限することで、端末の発熱量を安全な水準に抑えられる利点がある。なお、無人管理を行う場合には、「端末を施錠しつつ保管するための端末格納部を有する端末ロッカー」を備えてもよく、この場合、給電制御サーバーに端末格納部の施錠状態を管理させることもできる。ロッカーの機能は、端末を物理的に安全に保管すること、すなわち、意図しない持ち出しを防止することにある。この点、例えば、図書館の書棚と図書館司書のように、端末の保管場所と貸出返却の管理を行う最小限の人手とが確保できれば、ロッカーのような物理的な保管設備やその施錠状態を管理するためだけの「ロッカー制御サーバー」なる構成は、不要となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る端末貸出システムによれば、貸出管理業務及びメンテナンス業務を効率よく行うことができる端末貸出システムを提供することができる。なお、「効率よく」とは、主に貸し手であるシステム管理者側の人的負担を最小限にできることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
(全体構成)
図1は、端末貸出システムの実施形態を示す全体構成図である。この例では、端末貸出システム10は、主に、端末貸出管理装置100と、端末ロッカー20とから構成される。端末貸出管理装置100は、予約管理サーバー50と給電制御サーバー60と端末管理サーバー70などを有している。そして、制御用イーサースイッチ1及び通信用イーサースイッチ2を介して相互にローカル・エリア・ネットワークで端末ロッカー20に接続される構成を有する。その他の構成として、タッチパネル式の表示部12a、カードリーダー12b、端末Cに付したQRコード(登録商標)を読み取るためのカメラ12cや、音声ガイダンス機能を提供するための図示しないスピーカーなどを備えた操作部12や、インターネットへのアクセスを行うための無線LANのアクセスポイント13などが設けられていてもよい。
【0021】
端末ロッカー20は、端末Cを物理的に保管するロッカーとしての機能(文字通り、施錠され取り出しが制限される)を果たすほか、多数の端末を一度に起動又は充電することによる電源回路への負荷を防止するため、充電ケーブルが接続されている場合でも、通電を行うか否かを端末ごとに切り替える制御を行う。また、端末ロッカー20は、ネットワークスイッチを介して各端末を外部のネットワーク(インターネット等)に接続されており、ネットワークを通じて予約管理サーバー50、給電制御サーバー60、端末管理サーバー70などと接続されている。
【0022】
なお、
図1に示す端末貸出管理装置100は、全てのサーバー類(すなわち、端末管理サーバー70、給電制御サーバー60及び予約管理サーバー50)が、端末ロッカー20の近く(物理的な意味でのローカル・エリア・ネットワーク内)に設置されているように記載されているが、十分なネットワーク帯域と信頼性が確保できる場合は、クラウドや他の拠点などの、端末ロッカーとは異なる場所に設置してもよい。
【0023】
(端末ロッカー)
図2は、端末ロッカー20を示す概略構成図である。端末ロッカー20は、内部に端末Cを保管するための装置であり、端末格納部21を複数有する。また、端末格納部21に隣接して端末管理ボックス22が設けられる。さらに、1つの端末ロッカー20につき、1つの端末ロッカー制御部28が紐付けられる。但し、1つの端末ロッカー制御部28が複数の端末ロッカー20を制御する構成であってもよい。端末ロッカー制御部28は、各端末に給電するための電源を分配する分電盤の役割と、LANケーブルを分岐するスイッチングハブの役割とを備えたものである。分岐したLANケーブルと電源ラインはそれぞれの端末管理ボックス22に送られ、ここで1本のケーブルに結合されて端末に接続されることになる。
【0024】
図2−3は、試作した端末ロッカー20の天板を外して撮影した端末ロッカー制御部28である。紙面下側に見える装置がスイッチングハブ53であり、紙面上側に見える装置が分電盤54が設けられている。なお、スイッチングハブ53は、
図1及び
図1−2に示される制御用イーサースイッチ1と通信用イーサースイッチ2の両方の役割を1つの装置で担っている。試作した1つの端末ロッカー20の大きさは、例えば、幅900mm、高さ450mm、奥行き450mm〜500mm程度である。
【0025】
図2−2は、端末ロッカー20の試作品を前面上方から撮影した写真である。端末ロッカー20の天板の上には表示部12aとカードリーダー12bとカメラ12cなどを備えた操作部12が設けられ、さらに、端末ロッカー20には、図示しないスピーカーが接続されている。
【0026】
1つの端末ロッカー制御部28にいくつの端末ロッカー20を紐付けるかは、短時間に効率よく大勢のユーザーに貸し出す上で重要な考慮要素となる。余りに多くの端末を1つの端末ロッカーに保管すると、貸出時や返却時にユーザーが行列を作って待ち時間が発生することも想定されるからである。
【0027】
−端末管理ボックス22について−
通常、駅などで利用されているICカード認証で課金も可能な公衆ロッカーを例に取ると、1人分のロッカーに1つ、鍵と鍵のセンサーとケーブル(ケーブルは、主には、センサーやLEDあるいは、鍵制御信号などの信号線である)が必要となる。一般的なロッカーの場合、1人分のロッカーに対してケーブルが少なくとも10本(5対)必要となり、それが20人分、あるいは50人分ずつ、グループに分けて複数設置されている例が多い。このように、大量のケーブルによって配線が複雑になることを避けるため、各種の信号線を多数の端末に分配するための「端子盤」を用いることで、信号線を集約し、整理することが一般的である。しかし、「端子盤」を用いたとしても、信号線の本数が多いことは、メンテナンス性を下げ、コスト高となりやすいというデメリットがある。
【0028】
そこで、本発明の実施形態においては、端末管理ボックス22を各端末に1つ設ける用意することで、端子盤による信号線の集約を必要としない構成を採用している。端末管理ボックス22の構成については
図5及び
図5−2を参照して後述する。端末管理ボックス22を用いて各ロッカーの制御をそれぞれの端末管理ボックス22が行うことで、端子盤が不要となり、構成の自由度が増す。また、端子盤が不要になることで、端末管理ボックス22の構成もまた大幅に簡素化される。また、端末ロッカー制御部28に、電源ライン及びLANケーブルの分岐以外の機能を持たせることなく給電制御サーバー60が端末管理ボックス22を直接ネットワーク(LAN)を通じて制御できるため、給電制御サーバー60と端末ロッカー制御部28の機能を分離できる利点がある。
【0029】
図4は、端末ロッカー制御部28の構成を説明する概略図である。
端末ロッカー制御部28は、電源タップ31、UPS32、AC/DCコンバータ33、NFB(No Fuse Breaker)34、制御用イーサ−スイッチ35、通信用イーサ−スイッチ36、端末管理ボックス制御電源37、電源回路部30が設けられる。
【0030】
電源回路部30は、電源回路は各端末管理ボックス22を通じて端末Cに電力を供給するための電源回路であり、端末購入時に付属されるACアダプタを利用してもよいし、専用の電源回路を端末ロッカー制御部28内に1つ乃至は複数設けて各端末管理ボックス22に分配供給してもよい。なお、端末ロッカー制御部28の主な役割は、電源線とLAN配線を端末管理ボックス22の台数分に分岐することであるから、電源回路が端末ロッカー制御部28の外部に設置されていてもよい。
【0031】
電源回路部30には、電源回路に直列にSSR(Solid State Relay)などのリレー回路が設けられることが好ましい。
【0032】
このように、電源回路にSSRなどのリレー回路を配置することは、商用電源接続時の突入電流を抑えることができる利点がある。
【0033】
一方、全ての端末に対して一律に電源を供給すると、発熱や電源回路の容量オーバーとなる恐れがあることから、端末の電源状態を確認しながら通電/遮断を端末ごとに切り替える必要がある。この制御は、複数の端末に紐付けられた「端末ロッカー制御部28」ではなく、給電制御サーバー60がそれぞれの端末格納部21に隣接するそれぞれの端末管理ボックス22を通じて行う。端末管理ボックス22は、ネットワーク経由でWoL(Wake on LAN) により端末を起動できない場合でも、Wake on Power Supply機能を利用して、リモートで端末を起動することもできるようになる利点もある。端末管理ボックス22の構成や動作については、
図5を参照して後述する。
【0034】
端末ロッカー制御部28内にある全てのケーブル(1.制御用ネットワーク、2.通信用ネットワーク、3.端末用電源、4.SSR制御信号、5.給電制御部用電源)が、端末ロッカー制御部28の直下に配置される多数の端末管理ボックス22(
図2,
図3)に接続され、2.通信用ネットワーク及び3.端末用電源は、いずれもケーブル23を介して端末に接続される。
【0035】
図4に破線で示される電源回路部30は、端末ロッカー制御部と隣接した位置に配置される。この例では、電源回路部30は端末ロッカー制御部28の底面に配置され、その直下に多数の端末管理ボックス22が配置される。端末管理ボックス制御電源37は、電源分配をするためのDC電源の分配回路であり、ここから給電される各種スイッチングハブ(制御用及び通信用イーサースイッチ1、2)、そして各端末管理ボックス22内の機器(給電制御部及び電気錠など)への電源供給は、UPS32によりバックアップされている。従って、この実施例の構成によれば、停電時にも一定時間は鍵管理ができる。なお、通信用イーサースイッチ2をUPS32に接続する必要性は低いが、端末ロッカー制御部28内で直流電源を取り出すには通信用イーサースイッチ2の電源入力部等をここにつなぐしかないため、このような接続としている。
【0036】
図6は、端末ロッカー制御部28のデータ信号系統に関する機能ブロック図を示している。各端末管理ボックス22が制御用イーサースイッチ1及び通信用イーサースイッチ2とそれぞれ接続されている様子を示している。
【0037】
図7は、端末ロッカー制御部28の電源系統に関する機能ブロック図である。電源タップ31で分岐した電源が電源回路部30を通じて直流電源に変換され、各端末管理ボックス22を通じて各端末へと送られる。端末管理ボックス22(具体的には、後述する給電制御部41)から送られるリレー制御信号(SSR制御信号)に基づいて、通電するか否かが決定される。
【0038】
−端末管理ボックス22について−
図5は、端末管理ボックス22の機能ブロックを示している。紙面左側が端末ロッカー制御部28と接続される5つの電源ライン又はデータラインを表す。すなわち、図中の信号線に付された番号は、
図4で説明した5つのケーブルの番号(1.制御用ネットワーク、2.通信用ネットワーク、3.端末用電源、4.SSR制御信号、5.給電制御部用電源)と対応する。
【0039】
また、電源回路から供給される端末用電源ライン3には、電流計40が接続される。電流計40は給電制御部41と接続され、測定値は給電制御部41に送られる。給電制御部41は、Linux(登録商標)や組み込みOSなどが内蔵されたいわゆるIoT用の制御装置(マイコン等)であり、IPアドレスが付与されて、端末管理ボックス22の隣に併設された端末格納部21に保管されている端末Cへの給電を制御するために用いられる。また、制御用ネットワーク(信号ライン1)を通じて他の端末管理ボックスや各種サーバーと制御に必要なデータのやりとりを行う。PDコントローラー42は、端末Cの通電状態を制御するほか、端末Cのインターフェースを制御する働きを有する。
【0040】
具体的には、充電ケーブルが接続された端末Cの充電状態を調査することにより端末Cを起動する際に必要とする消費電力を算出する。各端末管理ボックス22にはそれぞれ給電制御部41が設けられ、それぞれの給電制御部41にIPアドレスが付与されている。給電制御サーバー60は、PDコントローラー42を通じて、端末Cの充電状態を取得するために端末Cを起動したり、消費電力に関する調査を行ったりすることができるので、全ての端末管理ボックス22を通じて全ての端末の状態を調査・把握することにより、システム全体としての端末Cの消費電力を制御することが可能となる。このようにして、各端末を起動した際に前記各端末が消費しうる最大電力に基づき給電を開始するか否かを判断した上で給電を開始する給電制御機構を構成する。なお、端末Cに接続されたケーブルに給電がされているときに、端末側でのチェック機構により充電が必要であると判断された場合に限り、端末Cへの充電が開始する。
【0041】
なお、端末Cの給電開始は、「SSRの制御により通電されていること」と「PDコントローラー42が給電をする設定になっていること」の双方を条件とすることが、好ましい。その理由は、前者は「商用電源接続時の突入電源を防ぐこと」が主目的であるのに対し、後者は「総消費電力が所定値を超えないようにすること」が主目的であるため、制御の内容・目的が異なるからである。そして、給電制御部41の要求に対して給電制御サーバー60が許可を出すかどうかにより、最大給電電力を超えないように制御される。
【0042】
給電制御部41の主な役割は上記の通りであるが、さらに、端末格納部21に端末Cが返却される際に、ケーブル23の先端にあるコネクタ23aが適切に端末Cに接続されたことを検知するまで端末格納部21を施錠できないようにする制御を給電制御部41が行うように構成してもよい。このようにすれば、ユーザーが誤ってケーブルの接続を忘れたり、正しく接続できなかったりすることがなくなる。同様に、貸出の際、すなわち、端末格納部21から端末Cが取り出される際に、ケーブルが適切に端末Cから取り外されたことを検知した後に端末格納部21を解錠するようにしてもよい。ケーブルが取り外される前に解錠するとケーブルを破損する恐れがあるが、そのような人為的なミスを防止できる。
【0043】
図5に示す電源ライン5は、端末管理ボックス制御電源37から供給される直流電源であり、給電制御部41に電力を供給するための電力線である。
【0044】
端末格納部21又は端末管理ボックス22のいずれかには、温度センサー43を設けて端末Cの温度をモニタリングしたり、接触センサー44 により、端末Cが適正な位置に格納されているかどうかを検知したりしてもよい。
【0045】
端末管理ボックス22には、端末Cの取り出しを制限できる状態にするためのロック機構24や、端末Cのサイズに合わせて奥行きと高さを調整するための移動式の棒25(25a,25b)、隣接する端末格納部21に保管される端末Cに関する種々の情報(例えば、充電状態・更新状態・予約の有無など)を表示するための情報表示部26が設けられていてもよい。
【0046】
−構成例−
図5−2は、
図5に示すブロック図の実際の構成例を表す。USB−TypeCの場合、データは Tx/Rx及びD+/D−と表現され、電源は Vcc、制御信号は CC1/CC2と表現される。LEDは端末管理ボックス22の内部の基板などに設置されるが、発光部は端末管理ボックス22の筐体から露出して外部から視認できるように配置される。このことを表すため、
図5−2においてはLEDは、端末管理ボックス22の境界線上に配置している。
【0047】
図5における給電制御部41は、
図5−2では、NanoPiと呼ばれる小型ボードコンピュータを用いて構成した。Linux(登録商標)を搭載しかつ高速通信可能なネットワークインターフェースを搭載しているため、給電制御部41として機能させることができる。なお、
図5と
図5−2とで電流計40の位置が異なっているのは、
図5に示すように、当初の設計段階では直流電源側に配置し、試作機においては
図5−2のようにTypeCケーブル側に配置したためである。給電制御部41に流れ込む電流を計測し、PDコントローラーで給電電力を制御する構成であるには変わりなく、最終的にはいずれかの構成が採用されることになると考えられる。
【0048】
−端末格納部21について−
この端末格納部21に端末Cが保管されると、施錠状態、すなわち、端末Cの取り出しを制限できる状態にすることができる。なお、「端末C」とは、上述のとおり、「バッテリーを搭載し持ち運びの容易なコンピューター」であれば、どのようなものでもよい。典型例としては、ノートパソコンやタブレットなどが該当する。端末ロッカー20は、1拠点内の端末貸出システム10に少なくとも1台必要であるが、
図1に示すように複数台設置することにより、1拠点内で貸し出すことができる端末数を増やすことができる。また、それぞれの端末格納部21には、充電及びオペレーティングシステムのディスクイメージ又はその更新データを配信するためのケーブル23が端末管理ボックス22から配設されている。
【0049】
図3(A)は、端末ロッカー20の端末格納部21に端末Cを保管した状態を示す斜視図である。この図に示すように、それぞれの端末格納部21に隣接して、端末管理ボックス22が併設される。端末格納部21と端末管理ボックス22とは、一対一に対応し、両者は同数である。このようにすると、端末Cのどこにケーブル23を接続するべきかを端末管理ボックス22にシールを貼る等で明記しやすいため、管理が非常にやりやすくなる。端末管理ボックス22の上部からケーブル23をつり下げて、端末Cにケーブル23の端部のコネクタ23aが接続される構成を採用してもよい。
【0050】
図3(B)は、端末Cを取り外した(すなわち、貸し出し中)の状態を示す斜視図である。この図に示すように、端末Cからコネクタ23aが取り外された状態では、端末管理ボックス22の上部からケーブル23が垂れ下がったままにしていればよい。このような構成にすれば、多数の端末格納部21が設けられる場合でも、端末Cを収納する際にケーブル23が邪魔にならず、非常に使い勝手がよい。別の方法としては、ケーブル23を巻取り式にしてもよい。
【0051】
ここで、ケーブル23は、例えば、「USB−TypeC」タイプのコネクタ23aで接続される「USB3.1 PD」という規格に基づくインターフェースを備えることが好ましい。このインターフェースによれば、充電と双方向のデータ通信の両方を行うことができ、充電ケーブルとデータ通信ケーブル(例えばLANケーブル)を別々に接続する必要がないためである。すなわち、ケーブルは、例えば、USB−TypeCケーブル(以下、「USB−Cケーブルともいう。」)のような、USB3.1 PD又はその上位互換、或いはこれに類する充電とデータ通信が可能なインターフェースの両方が可能な単一のインターフェースに接続されるケーブルであることが好ましい。
【0052】
なお、「USB3.1 PD」インターフェースに含まれるPDの文字は、Power Deliveryの頭文字二字を意味する。USB−PDの最大電力プロファイルは、最大100W(通常20V/5A)までの電源供給が可能である。このため、急速充電にも対応できる。そして、管理対象である端末の充電状態及び充電台数を監視しながら順次効率よく充電していくことが可能となる。
【0053】
USB3.1 PDインターフェースでは、外部からの制御により端末の電源を入れオペレーティングシステムを起動することもでき、さらに起動後は外部とのデータ通信も可能となる。なにより、1本のケーブルが接続されているだけで、端末Cを保管中に、次の貸し出しのために必要な充電とオペレーティングシステム等の更新が全て実施できる。
【0054】
ところで、各ユーザーがそれぞれの端末を使用した直後は、端末の使用を通じて貸出前の状態からハードディスクの状態は貸出前の状態から変更されていることが通常である。このような状態で、それぞれの端末のオペレーティングシステムにパッチを当てたり、セキュリティーソフトのアップデートなどを行うと、ハードディスクの状態は端末毎に異なってくる。従って、「更新」は、復元操作を含むものとする。例えば、アップデートの前に、ユーザーが端末を使用したことにより追加されたデータを消去する場合を含む。
【0055】
なお、USB3.1 PD TypeCケーブルを搭載していない端末の場合、バッテリーの充電のためのケーブルとデータ通信用のインターフェース(例えば、LANケーブル)等に接続するケーブルとを、それぞれ接続することが必要となる場合もある。また、端末の起動後はリモート接続により必要な作業(オペレーティングシステムの更新等)を行ったあと、リモート接続でシャットダウンが可能となるが、外部からリモートアクセスで任意のタイミングで電源を投入するには、Wake on LANなどの設定が必要となり、ケーブルは最低でも2本(電源ケーブルとLANケーブル)接続しなければならない。また、充電状態の監視がオペレーティングシステムが起動している状態でしか行えないため、実施可能であるが非効率的であるといえる。データ通信用のインターフェースとしては、USB2.0或いはe−SATA等の外部インターフェースも考えられるが、これらのインターフェースを通じて一般に電源投入はできず、また、ケーブルの接続などユーザーに多くの作業を要求することになるため、現実的とは言えない。
【0056】
(端末格納部21の改良)
開発当初、端末Cを保管するロッカーの外観形状は、
図2、
図3(A)及び
図3(B)に示すような形状を想定していたが、この構成では端末Cを筐体から取り出す際にはための最初の操作が「端末Cをつまんで引き出す」という、片手での操作になりるため、両手で端末Cを丁寧に取り扱うことが難しい。片手で端末Cを全部引き出してしまうと、端末Cが筐体から抜け出た際に端末Cの全荷重による下向きの力が片手で不安定につまんだ指先に一気に加わり、端末Cを落下して破損するおそれがある。
【0057】
そこで、
図3−2(A)及び
図3−2(B)に示すような、レール式に改良した。
図3−2(A)は、改良された端末格納部(単体)を示す概略構成図である。
図3−2(B)は端末格納部21の端末トレイ21aを引き出した様子を示す図である。
すなわち、端末ロッカーの筐体に複数のレール式のトレイが設けられており、レールが筐体に収まった状態で施錠可能である。このような構成によれば、端末Cをロッカーから取り出す際には、ユーザーが先ず、第1の動作としてレールを水平に引き出し、次いで、第2の動作として両手で端末Cをしっかりと持った状態で端末Cを持ち上げるという、「2Way」の動作が自然に促される。
【0058】
(予約管理サーバー)
予約管理サーバー50は、端末格納部21に保管された端末Cの貸出予約情報を管理する。例えば、予約管理に必要な情報をインターネットを通じてユーザーから取得するほか、端末ロッカー20で取得された各端末の充電状態に関する情報、及び、各端末のオペレーティングシステムのディスクイメージの配信又はその更新データの配信の進捗状況などを元に、貸出可能な日時を計算する。
【0059】
本発明において、「予約管理」とは、貸出の予約だけでなく、貸出時のユーザー認証や、返却時の処理動作を含んでいてもよい。逆に、単に貸出可能な「残台数」のみを管理する場合も「予約管理」として扱うものとする。また、「予約管理サーバー」は、貸出時にユーザーを認証する仕組みを提供するシステムを指し、必ずしもインターネットやイントラネットなどのネットワークを介して操作するものである必要はない。端末の空きがあるものをその場で予約してすぐに貸し出すのであれば、貸出時にその場で個人を認証するだけもよい。ユーザー認証は、既存の認証システム、例えば、学生証や交通系カードなど、すでに利用されているNFC(近距離無線通信)技術を利用したICカードによる認証システムを用いても良いし、ユーザー名とパスワードで認証するようにしてもよい。但し、ICカードのみの認証では、他人のICカードで認証された場合に対応できないため、予めパスワードやメール・ショートメッセージによる認証を追加するなど、既知の多重認証方式を用いてセキュリティーを高めてもよい。
【0060】
ところで、「予約管理」に関連して、貸出時は「誰に」その端末を貸し出したのかを管理することが極めて重要であるのに対して、返却時には、貸し出した端末が返却されたことが重要であって、「誰が」返却操作を行ったのかは、必ずしも重要ではないとも考えられる。すなわち、貸出時にはユーザーを認証し、返却時には端末を識別するシステムとすることもできる。例えば、端末の本体表面部分にQRコード(登録商標)を貼り付けておき、ロッカーの操作端末等にQRコード(登録商標)読み取り装置を設けておくことで「端末」を識別する。こうすれば、返却時には、端末を返却した人が誰であれ、少なくとも貸し出した端末のうちのどの端末が返却されたかを識別することができる。ユーザーは、返却時にはICカードを携帯している必要はなく、或いは、他人に返却を依頼することもできる。このように、貸出時と返却時における個人認証と端末識別に、非対称性があってもよい。なお、端末を識別する仕組みとしてQRコード(登録商標)を例に挙げたが、端末自体にタグのようなものを貼り付けたり、バーコードを赤外線センサーなどで読み取るようにしてもよく、端末を識別する仕組みであれば、既知の方法を用いることができる。この場合、「予約管理サーバー50」は、個人を認証する仕組み(例えばICカードリーダー)と、端末を識別する仕組み(例えばQRコード(登録商標)リーダー)を具備することとなる。なお、大勢のユーザーに効率よく貸出と返却を行うためには、端末ロッカー20ごとに1つ、あるいは少数の端末ロッカーのグループに1つ、設けられていることが好ましい。よって、「予約管理サーバー」は、一台のサーバーのみで構成されている必要はなく、予約管理サーバーと予約時に個人認証や端末の識別を行う操作端末がロッカー毎に設けられているような態様を含む。
【0061】
−ガイダンス機能−
本システムでは、貸出時には、端末のロックを解除して端末を端末ロッカー20から取り出す前に、端末Cに接続されているケーブル23を抜いた後、端末をロッカーから引き出して取り出す操作が必要となる。また、返却時には、逆に、端末を識別し、レールを引き出して端末を載せ、レールをロッカーに押し戻してロックしたあと、端末Cにケーブル23を接続するといった、比較的手数のかかる一連の操作が必要となる。ケーブル23に関して言えば、上記の通り、本システムの好ましい実施形態では充電とデータ通信機能を兼ね備えた1本のUSB−TypeCケーブルにまとめられて簡素化されてはいるが、複数の端末Cを並べて保管するロッカーの場合、誤って隣のケーブル23を接続することは、避けなければならない。従って、初めて操作するユーザーに対しても適切に次の操作手順を案内する仕組みを設けておくことが好ましい。
【0062】
そこで、予約管理サーバー50は、端末の貸出操作及び返却操作を音声で案内する音声ガイダンス機能を具備すると共に、端末格納部21ごとに1つ以上の発光部が設けられ、点灯・消灯・点滅するように構成されている。貸出時に個人を認証しているため、音声ガイダンスに関してユーザーの好みに言語や音声を予め選択しておくことで、よりユーザーフレンドリーなシステムを構築することができる。また、音声ガイダンスと連動する発光部の点滅等によって、ユーザーが貸出操作や返却操作の際に迷うことがなくなる。特に、返却時に最も注意しなければならない点は、(1)正しく端末格納部に返却すること、(2)正しくケーブルを接続すること、の2点である。
【0063】
この点、音声ガイダンスと発光部の点滅等によって、ユーザーに適切な操作方法を案内することができる。さらに、発光部は、端末の状態(充電中、メンテナンス中、貸出可能)などを示すことも可能である。上記のような構成によれば、短時間に多数の端末の貸出から返却までを無人で管理でき、かつ、端末の貸出を受けるユーザーにとっても、次になすべき動作を的確に指示する分かりやすいインターフェースを提供することができる。
【0064】
なお、返却時におけるガイダンスとして、別途考慮すべき点がもう1つ存在する。本システムを前提とする場合、原理的には貸出時とは異なるロッカーに返却することが可能であるが、乗り捨て可能なレンタル式自転車で生じうる問題と同様に、過度に自由度を認めると端末が偏った場所に集まってくることになり、システム提供者側による再配置のための負担が大きくなる。従って、すぐ隣に設置されたロッカーなど、ある程度近くのロッカーの中であれば貸出時とは異なる返却先を選択できる自由を与えるような運用はユーザーとシステム管理者の双方にとってメリットがあるシステムと考えられる。
【0065】
一方、端末のサイズについても、本システムにおいては、充電やオペレーティングシステムのメンテナンスといった観点では、異なるサイズ(例えば13インチ、15インチなど)の端末で変わるところがないため、それらを混在させて同一筐体のロッカーに格納することが可能である。しかし、盗難防止という観点からは、小さいサイズの端末を保管するロッカーにはロッカーをロックしている際の端末の不正な取り出しを制限するアジャスターなどの金具類が当然に必要となる。しかし、貸出時と異なるロッカーに返却する場合、空きはあるのにアジャスターが適合しないために返却できないといった不便をユーザーにかけるおそれもある。このような問題に対しても、音声ガイダンスと発光部による案内は、近隣の返却可能なロッカーにユーザーを誘導する際に非常に有用である。
【0066】
(給電制御サーバー)
給電制御サーバー60は、給電制御部41の要求に対して最大給電電力を越えないように制御する端末Cへの給電制御する機能を提供する。そして、貸出予約情報と端末Cの充電状態及びディスクイメージ又はその更新データの配信状態に関する情報に基づいて端末格納部21の施錠状態を管理する機能を有する。また、給電制御サーバー60は、全ての端末管理ボックス22を通じて全ての端末の状態を調査・把握して、システム全体としての端末の消費電力を制御する。
給電制御サーバー60は、端末管理ボックス22に設けられたロック機構24を制御するための制御信号などを発することにより、端末ロッカー20における端末格納部21の施錠を管理する機能をさらに具備することもできる。
【0067】
上述したUSB−PDインターフェースの規格においては、ケーブルが接続された際にPDコントローラ42と端末Cとが相互に認証・ネゴシエーションを行うことを通じて、「どちらが給電側、どちらが受電側になるか」、「給電時の電圧値や電流値」といった情報を相互に検討し決定する。そのため、充電時の消費電力は端末付属のACアダプタにより決定されるものではなく、ケーブル接続時にUSB−PD規格をベースとした相互通信の結果により決定される。本発明においては、例えば、1つの端末ロッカー全体として500W消費して良いと設定されている中、すでに8台の端末が60W消費するという設定で給電を開始している際には、9台目の端末に対しては、例えば「15W(5V/3A)であれば給電可能である」といった給電開始前のネゴシエーションが行われる。(なお、給電する際の電力値は予めいくつかの設定が事前に取り決められていて、任意の電力で取り出せるものではない。一例として、「5V/3A(15W)、9V/3A(27W)、15V/3A(45W)、20V/2.25A(45W)」といった設定がされているアダプタなどがある。このような事情により、「電力の割当要求を受けた段階でSSRを通電状態にする」、「端末を充電するべきと判断したとき(場合によっては上述のとおり通電するだけで端末が起動する設定となる場合も有るため)には、コントローラを制御して実際に給電する」といった2段階の制御を行うことを想定している。
【0068】
すなわち、給電制御サーバー60は、給電制御部41の要求に対して許可を出すかを判断し、最大給電電力を超えないように制御する。
【0069】
(端末管理サーバー)
端末管理サーバー70は、端末格納部21に保管された端末Cに対して各端末Cのストレージ(ハードディスクやSSDなど)にオペレーティングシステムのディスクイメージやその更新データを配信する。なお、更新データとは、オリジナルのディスクイメージからの差分データ或いは直近の貸出時点からの増分データなど、ストレージへの変更データを指す。この更新データには、貸出中にユーザーが作成したデータやオペレーティングシステムの更新(セキュリティ・アップデート)、セキュリティソフトウェアのウィルスパターンデータの更新、その他、アプリケーションソフトの追加や更新など、各端末のストレージに対するあらゆる変更データが含まれる。また、更新は、「復元」を含む。
【0070】
端末管理サーバー70により更新データの配信を行う際には、端末管理サーバー70は、各拠点に少なくとも1台設けることが好ましい。しかし、十分なネットワーク帯域と信頼性が確保できるのであればクラウドや他の拠点などの、端末ロッカーとは異なる場所に設置してもよい。或いは、管理対象となる端末の台数を多くするには、各拠点内に1つ又は複数の中継サーバーを設けてもよい。このような拡張性は、端末管理サーバー70の特徴をそのまま利用することができる。逆に、「復元のみ」でよい場合には配信を必要としないので、端末管理サーバー70を省略することも可能である。
さらに、端末貸出管理装置を構成する他のサーバー類(予約管理サーバー50、給電制御サーバー60)についても、クラウドや他の拠点などの、端末ロッカーとは異なる場所に設置してもよい。
【0071】
以上のように、上記実施形態の構成によれば、充電とオペレーティングシステムのディスクイメージ及びその更新データの配信とを人手を介することなく行うことができ、長期間に亘り安定して貸出管理業務及びメンテナンス業務を行うことができる。
【0072】
(実施例1)
図1−2は、端末ロッカー20を複数並置して本システムを構築した例を示している。この例では、それぞれの端末ロッカー20に1つ、操作部12が設けられる。操作部12は、タッチパネル式の表示部12a、カードリーダー12b、端末Cに付したQRコード(登録商標)を読み取るためのカメラ12cや、音声ガイダンス機能を提供するための図示しないスピーカーなどを備える。
【0073】
端末ロッカー20は、5台分の端末格納部を備える。端末ロッカー20は、格納台数分の端末格納部21と端末管理ボックス22とを同数並置して備える。また、1つの端末ロッカー20は1つの端末ロッカー制御部28を備え、スイッチングハブ1,2を介して予約管理サーバー50、給電制御サーバー60、端末管理サーバー70などとネットワークを通じて接続されている。
【0074】
上記の通り、端末管理ボックス22は給電制御部(
図5、
図5−2の41)を備えており、給電制御サーバー60と通信することで、給電制御が可能である。このため、より多くの端末格納部を備える構成も原理的には可能である。しかし、端末ロッカー20があまりに多くの台数を格納する構成にすると、第1に貸出や返却の際に混雑することが予想される。第2に、電源容量に対して負荷が大きくなりすぎることから、給電制御機能によって充電の待ち時間が長くなる恐れもある。ネットワーク負荷も同様であるから、メンテナンス作業の待ち時間が長くなる恐れがある。第3に、少ない台数であれば当然低コストで製造することができる。これらはいずれも、電源やネットワークといった実際の設置環境や、用途(例えば、何人に貸し出すのか、どのような利用態様を想定しているのか)といった点を総合的に考慮して設計すればよい。
【0075】
(実施例2)
端末格納部21の主な機能は端末Cの貸出管理業務(すなわち、端末Cの保管と貸出を管理すること)を人手を介さず行うことであるが、端末Cの貸出管理業務については人手を介して行う運用とすることも可能である。施錠状態をシステム的に管理することを必要としない利用環境(例えば、窓口で人手を介して管理する場合が想定される。)においては、上述したような「端末を施錠しつつ保管するための端末格納部を有する端末ロッカー」や「端末格納部の施錠状態を制御するロッカー制御サーバー」は、必須の構成ではない。これらの構成を省くことにより、システム全体の大幅なコストダウンが可能となる利点がある。この場合、端末Cの貸出管理業務を行うために常駐する管理人などが必要となるが、そのような場合であっても、メンテナンス業務については端末Cにケーブルを抜き差しするだけでよく、「システムの更新」のような、仮に人手を介して行えば高度な専門知識を要しかつ長時間を要する面倒な作業は一切不要である。すなわち、システム管理者側の作業負担は非常に格段に小さくなる。
例えば、
図15は、第1の実施形態において説明した端末貸出システム10の他の例(実施例2)を示している。端末ロッカー20は存在せず、また、各種サーバー(予約管理サーバー50、給電制御サーバー60、及び端末管理サーバー70)は、1つのサーバーに集約されている。さらに、スイッチングハブもまた、本来は制御用イーサースイッチ1と通信用イーサースイッチ2とを分ける構成が望ましいが、共通化している。このように、目的に応じて不要な構成要素を除いたり複数のサーバー機能やスイッチングハブなどを適宜統合したりすることで、システム全体の大幅な簡素化とコストダウンが可能となる。
【0076】
[第2の実施形態]
つぎに、各構成の処理フローについて説明する。
【0077】
図8は、端末管理ボックス22の処理フローを示している。同図において、「返却フェイズ」が終了してから「貸し出し処理」に入るまでの間、端末Cはロックされた状態となり、「調査フェイズ」及び「充電・管理フェイズ」の間のみ、給電されている。
【0078】
先ず、貸し出し処理を行うと、給電制御サーバー60からの信号を受けてロック機構24が作動し、ケーブルを引き抜くことでロック機構24が解錠される。貸し出し中は情報表示部26に貸し出し中であることを表示すると共に、予約管理サーバー50は当該端末を貸し出し中の状態として記録する。
【0079】
次いで、端末Cが端末格納部21に返却されると返却フェイズに移行する。給電制御部41は、一先ず給電待機状態(給電停止状態)とする。そして、給電制御部41が他の端末Cの給電状態を調査し(調査フェイズ)、次いで給電解除状態とする。PDコントローラ42を通じて端末Cの充電状態を確認する。
【0080】
なお、USB3.1PDインターフェースの仕様におけるオプショナルの機能として、端末の電源が切れている状態でも、充電状態の監視ができるとされている。端末Cの電源が切れている状態で返却される返却フェイズにおいてもこのオフラインでの充電状態の監視機能を利用して充電状態を検出できるときには、電源を入れることなく直接充電状態を調査する。利用できない場合は一旦端末Cを起動してオペレーティングシステムの機能により電源状態を調査すればよい。
【0081】
充電又はオペレーティングシステムの更新が必要であると判断された場合、要充電フラグ又は要更新を1にして給電を開始する。
【0082】
図8−2(A)〜(D)は、貸出フェイズの処理フローを説明するための写真である。はじめに、カードリーダー12bにICカードをかざすことでユーザーの個人認証を行う(
図8−2(A))。
図8−2(B)に示すように表示部12aにはユーザーに対して次の操作を促すガイダンスが表示されると共に、スピーカー及び端末管理ボックス22に設けられた発光部(いずれも図示を省略)の色や点滅等によってもユーザーが操作を迷わないように配慮されている。ガイダンスに従ってケーブル23の先端にあるコネクタ23aを引き抜くと端末Cのロックが外され、端末トレイ21aを引き出せるようになる(
図8−2(C)、(D))。
【0083】
図9は、返却フェイズの処理フロー図である。この処理フロー図のように、「端末を適切な場所に収納し、ケーブルを接続しないと、端末のロック機構が作動せず、返却扱いとならないようにしてもよい。
【0084】
図9−2は、返却フェイズの処理フローを説明するための写真である。端末Cには端末を一意に特定するQRコード(登録商標)が貼り付けられ、端末ロッカー20のカメラ52にかざすとQRコード(登録商標)によって端末Cが一意に特定される仕組みとなっている。端末Cが識別されると、ロックが解除されてトレイが矢印の方向に引き出され、端末Cを収納できる状態になる(
図9−2(B))。次に、端末Cをトレイに戻してレールを端末格納部21に押し戻した後、ケーブル23の先端にあるコネクタ23aを端末Cに接続すると、返却処理が終了し、表示部12aにその旨が表示され、同時に音声ガイダンスでもその旨が通知される。
図10は、調査フェイズの処理フロー図である。
図11は、充電・管理フェイズのフロー図である。
図12は、貸出処理のフロー図である。ここでは、ケーブルを外すことで、端末ロック機構が解除されるトリガーとなる制御を行っている。
図13(A)は、給電待機時の処理フロー図である。
図13(B)は、給電解除時の処理フロー図である。
図14は、貸出待機フェイズの処理フロー図である。
【0085】
ここで、「貸出待機状態の端末」の処理について説明する。端末Cは、端末ロッカー20内に格納して放置すれば、バッテリーは自然放電により消耗する。また、一旦「ストレージの更新が不要」と判断された端末に対しても、その後、「予約が変更される」ことや、「新たなバージョンが配信可能状態となった」といった事情の変化により、事後的に配信の必要性が生じることもある。
この点に着目し、
図14においては、予め定められたスケジュールに従って、例えば一定時間ごとに「充電状態」や「新規ディスクの有無・予約の変化」などを確認し、なんらかの作業が必要と判断した際には充電や更新といった処理を行っている。
【0086】
−返却フェイズについて−
返却時に端末の損傷があるかどうかを確認する仕組みを設けることは重要であると考えられる。しかし、「端末の損傷」には、物理的な損傷(例えば、キーボードがとれている、筐体や画面が割れている、)といったものと、オペレーティングシステムが起動しない、システムファイルが破壊された、といったソフトウェア的な損傷とがある。これらの全てのチェックに多くの時間をかけるほど、ユーザーの待ち時間が長くなり、返却に長時間を要するため、ユーザーフレンドリーなシステムとは言えない。また、無人運用を前提とする場合、物理的な損傷のチェックは返却時にユーザーにしてもらわなければならず、破損部の見逃しや虚偽報告も想定しておかなければならず、あるいは、悪意はなくても損傷の程度によっては人により判断が分かれることも想定される。
【0087】
このような問題を解決するための方法として、端末の返却時に1度だけ端末を起動してシステムが正常に起動したことを確認してすぐにシャットダウンするという方法が考えられる。システムが正常に起動すれば、仮に、システムの起動には影響しないファイルの一部が破損したり消去されていても、ディスクイメージはサーバーから再度配布できるため、事後的に修復することができるからである。また、ケーブル接続後直ちに起動とシャットダウンを行えば、ユーザーの返却処理に要する待ち時間は最小限に抑えられる。一方、物理的な破損の確認は、返却時に行わず、貸出時に行うという方法が考えられる。すなわち、貸出時に目視で確認できる物理的損傷がある場合、直ちに返却して別の端末を貸し出すようにすればよい。ユーザーは、筐体のヒビや欠けなど、実際の使用には支障がないような比較的小さな損傷であっても、破損した端末を利用したくないという心理から、より積極的に物理的な損傷のある端末を申告することが期待されるからである。