(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
【0012】
<0.背景>
まず、実施形態について説明する前に、本願発明者等が本願発明に想到した背景等について説明する。
【0013】
エンコーダには、アブソリュートパターンを有する2つのスリットトラックで反射又は透過した光を2つの受光アレイでそれぞれ受光し、各受光アレイからアブソリュート信号をそれぞれ出力するように構成されたものがある。このエンコーダでは、2つの受光アレイから互いに180°位相が異なるアブソリュート信号がそれぞれ出力される。これにより、検出パターンの変化点等の不安定な領域でない方のアブソリュートパターンから得られる信号を選択して絶対位置を特定することが可能となり、検出精度の向上を図っている。
【0014】
ところで、エンコーダにおいては、受光アレイを備えたセンサ部がスリットトラックを備えたスケールに対して適正位置から光軸周りの周方向にずれて配置される場合がある。例えば、回転子が固定子に対して回転する回転型モータにおける回転子の回転位置、回転速度、回転加速度の少なくとも1つを検出する回転型(ロータリタイプ)のエンコーダにおいては、センサ部がディスクに対して適正位置からディスクの周方向に位置ずれして取り付けられたような場合である。また例えば、可動子が固定子に対して移動するリニアモータにおける可動子の位置、速度、加速度の少なくとも1つを検出する直線型(リニアタイプ)のエンコーダにおいては、可動子の固定子に対するガタつき等によりセンサ部がリニアスケールに対して光軸周りの周方向に位置ずれしたような場合である。このような場合、センサ部の受光素子はスケールのスリットに対して傾いて対向することとなる。その結果、2つの受光アレイから出力されるアブソリュート信号に位相ずれが生じ、絶対位置の検出精度に影響を与える可能性がある。
【0015】
ここで、本願発明者等の検討によれば、2つの受光アレイのそれぞれを、第1アブソリュート信号を出力する複数の第1受光素子と、第1アブソリュート信号と180°位相が異なる第2アブソリュート信号を出力する複数の第2受光素子とが、スケールの測定方向に交互に配置されるように構成すると共に、それら2つの受光アレイを光源の光軸を挟むように配置することで、上記センサ部の位置ずれによる影響を低減できることが知見された。これらの事情に想到した本願発明者等は、更に鋭意研究を行った結果、以下で説明する実施形態に係るエンコーダ等に想到した。以下、この実施形態について詳細に説明する。なお、ここで説明した課題や効果等は、以下で説明する実施形態のあくまで一例であって、さらなる作用効果等を該実施形態が奏することは言うまでもない。
【0016】
なお、以下で説明する実施形態に係るエンコーダは、回転型と直線型の両方のタイプのエンコーダに適用可能であるが、以下では回転型のエンコーダを例に挙げて説明する。直線型のタイプのエンコーダに適用する場合には、センサ部で測定する対象を回転ディスクからリニアスケールに変更するなど適切な変更を加えることにより可能であるので、詳しい説明は省略する。
【0017】
<1.サーボシステム>
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態に係るサーボシステムの構成について説明する。
図1に示すように、サーボシステムSは、サーボモータSMと、制御装置CTとを有する。サーボモータSMは、エンコーダ100と、モータMとを有する。
【0018】
モータMは、エンコーダ100を含まない動力発生源の一例である。モータMは、回転子(図示省略)が固定子(図示省略)に対して回転する回転型モータであり、回転子に固定されたシャフトSHを軸心AX周りに回転させることにより、回転力を出力する。
【0019】
なお、モータM単体をサーボモータという場合もあるが、本実施形態では、エンコーダ100を含む構成をサーボモータSMという。なお、以下では説明の便宜上、サーボモータSMが、位置や速度等の目標値に追従するように制御されるモータである場合について説明するが、例えばエンコーダの出力を表示のみに用いる場合等、エンコーダが付設さえされていれば、サーボシステム以外に用いられるモータをも含むものである。
【0020】
また、モータMは、例えば位置データ等をエンコーダ100が検出可能なモータであれば、特に限定されるものではない。また、モータMは、動力源として電気を使用する電動式モータである場合に限定されるものではなく、例えば、油圧式モータ、エア式モータ、蒸気式モータ等の他の動力源を使用したモータであってもよい。以下では、モータMが電動式モータである場合について説明する。
【0021】
エンコーダ100は、モータMのシャフトSHの回転力出力側とは反対側に連結される。但し、必ずしも反対側に限定されるものではなく、エンコーダ100はシャフトSHの回転力出力側に連結されてもよい。エンコーダ100は、シャフトSH(回転子)の位置を検出することにより、モータMの位置(回転角度ともいう。)を検出し、その位置を表す位置データを出力する。
【0022】
エンコーダ100は、モータMの位置に加えて又は代えて、モータMの速度(回転速度、角速度等ともいう。)及びモータMの加速度(回転加速度、角加速度等ともいう。)の少なくとも一方を検出してもよい。この場合、モータMの速度及び加速度は、例えば、位置を時間で1又は2階微分したり検出信号(例えば後述するインクリメンタル信号)を所定の時間カウントするなどの処理により検出することが可能である。以下では、エンコーダ100が検出する物理量は位置であるとして説明する。
【0023】
制御装置CTは、エンコーダ100から出力される位置データを取得して、当該位置データに基づいて、モータMの回転を制御する。従って、モータMとして電動式モータが使用される本実施形態では、制御装置CTは、位置データに基づいてモータMに印加する電流又は電圧等を制御することにより、モータMの回転を制御する。さらに、制御装置CTは、上位制御装置から上位制御信号を取得して、上位制御信号に表された位置等を実現可能な回転力がモータMのシャフトSHから出力されるように、モータMを制御することも可能である。なお、モータMが、油圧式、エア式、蒸気式などの他の動力源を使用する場合には、制御装置CTは、それらの動力源の供給を制御することにより、モータMの回転を制御することが可能である。
【0024】
<2.エンコーダ>
次に、本実施形態に係るエンコーダ100について説明する。
図2に示すように、エンコーダ100は、ディスク110と、光学モジュール120と、信号処理部130とを有する。
【0025】
ここで、エンコーダ100の構造の説明の便宜上、上下等の方向を以下のように定め、適宜使用する。
図2において、ディスク110が光学モジュール120と面する方向、つまりZ軸正の方向を「上」とし、Z軸負の方向を「下」とする。但し、この方向はエンコーダ100の設置態様によって変動するものであり、エンコーダ100の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0026】
(2−1.ディスク)
ディスク110は、スケールの一例である。ディスク110は、
図3に示すように円板状に形成され、ディスク中心Oが軸心AXとほぼ一致するように配置される。ディスク110は、モータMのシャフトSHに連結され、シャフトSHの回転により回転する。なお、本実施形態では、モータMの回転を測定するための測定対象の例として、円板状のディスク110を例に挙げて説明するが、例えば、シャフトSHの端面などの他の部材を測定対象として使用することも可能である。また、
図2に示す例では、ディスク110がシャフトSHに直接連結されているが、ハブ等の連結部材を介して連結されてもよい。
【0027】
図3に示すように、ディスク110は、複数のスリットトラックSA1,SI1,SI2,SA2を有する。ディスク110はモータMの駆動と共に回転するが、光学モジュール120は、ディスク110の一部に対向しつつ固定して配置される。従って、スリットトラックSA1,SI1,SI2,SA2と、光学モジュール120とは、モータMの駆動に伴い、互いに測定方向(
図3に示す矢印Cの方向。以下適宜「測定方向C」と記載する。)に相対移動する。
【0028】
ここで、「測定方向」とは、光学モジュール120でディスク110に形成された各スリットトラックを光学的に測定する際の測定方向である。本実施形態のように測定対象がディスク110である回転型のエンコーダにおいては、測定方向はディスク110のディスク中心Oを中心とした円周方向に一致する。一方、例えば測定対象がリニアスケール等であるリニア型のエンコーダにおいては、測定方向はリニアスケールに沿った直線方向に一致する。
【0029】
各スリットトラックSA1,SI1,SI2,SA2は、ディスク110の上面にディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成される。各スリットトラックは、トラックの全周にわたって、測定方向Cに沿って並べられた複数の反射スリット(
図4における斜線ハッチング部分)を有する。1つ1つの反射スリットは、光源121から出射された光を反射する。
【0030】
ディスク110は、例えば金属等の光を反射する材質により形成される。そして、ディスク110の表面における光を反射させない部分に反射率の低い材質(例えば酸化クロム等)をエッチングや塗布等により配置することで、配置されない部分に反射スリットが形成される。なお、光を反射させない部分をスパッタリング等により粗面として反射率を低下させることで、反射スリットが形成されてもよい。
【0031】
なお、ディスク110の材質や製造方法等については特に限定されるものではない。例えば、ディスク110をガラスや透明樹脂等の光を透過する材質で形成することも可能である。この場合、ディスク110の表面に光を反射する材質(例えばクロム等)を蒸着等によって配置することにより、反射スリットを形成可能である。
【0032】
なお、本明細書における「スリット」とは、ディスク110に形成され、光源121から出射された光に対し反射(反射型回折を含む)、透過(透過型回折を含む)等の作用を与える領域である。このスリットが上記測定方向に沿って所定のパターンを有するように複数配置されることで、各スリットトラックが構成されている。本実施形態では、各スリットが反射スリットである場合を一例として説明する。
【0033】
スリットトラックは、ディスク110の上面において幅方向(
図3に示す矢印Rの方向。以下適宜「幅方向R」と記載する。)に4本併設される。なお、「幅方向」とは、ディスク110の半径方向、すなわち測定方向Cと略垂直な方向であり、この幅方向Rに沿った各スリットトラックの長さが各スリットトラックの幅に相当する。4本のスリットトラックは、幅方向Rの内側から外側に向けて、SA1,SI1,SI2,SA2の順に同心円状に配置される。各スリットトラックについてより詳細に説明するために、ディスク110の光学モジュール120と対向する領域近傍の部分拡大図を
図4に示す。
【0034】
図4に示すように、スリットトラックSA1,SA2が有する複数の反射スリットは、測定方向Cに沿ってアブソリュートパターンを有するように、ディスク110の全周に配置される。
【0035】
なお、「アブソリュートパターン」とは、後述する光学モジュール120が有する受光アレイが対向する角度内における反射スリットの位置や割合等が、ディスク110の1回転内で一義に定まるようなパターンである。つまり、例えば、
図4に示すアブソリュートパターンの例の場合、モータMがある角度位置となっている場合に、対向した受光アレイの複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンの組み合わせが、その角度位置の絶対位置を一義に表すことになる。なお、「絶対位置」とは、ディスク110の1回転内での原点に対する角度位置をいう。原点は、ディスク110の1回転内での適宜の角度位置に設定され、この原点を基準としてアブソリュートパターンが形成される。
【0036】
本実施形態のアブソリュートパターンによれば、モータMの絶対位置を、受光アレイの受光素子数のビットにより、一次元的に表すことができる。しかし、アブソリュートパターンは、この例に限定されるものではない。例えば、受光素子数のビットにより多次元的に表すパターンであってもよい。また、所定のビットパターン以外にも、受光素子で受光する光量や位相などの物理量が絶対位置を一義的に表すように変化するパターンや、アブソリュートパターンの符号系列が変調を施されたパターン等であってもよく、その他、様々なパターンであってもよい。
【0037】
本実施形態では、同様のアブソリュートパターンが、測定方向Cにおける同じ位置に、2本のスリットトラックSA1,SA2として形成される。つまり、スリットトラックSA1とスリットトラックSA2において、各スリットの周方向両端の位置(測定方向Cの位置)はそれぞれ一致している。
【0038】
一方、スリットトラックSI1,SI2が有する複数の反射スリットは、測定方向Cでインクリメンタルパターンを有するように、ディスク110の全周に配置される。
【0039】
「インクリメンタルパターン」とは、
図4に示すように、所定のピッチで規則的に繰り返されるパターンである。ここで、「ピッチ」とはインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSI1,SI2における各反射スリットの配置間隔をいう。
図4に示すように、スリットトラックSI1のピッチはP1であり、スリットトラックSI2のピッチはP2である。インクリメンタルパターンは、複数の受光素子による検出の有無それぞれをビットとして絶対位置を表すアブソリュートパターンと異なり、少なくとも1以上の受光素子による検出信号の和により、1ピッチ毎又は1ピッチ内のモータMの位置を表す。従って、インクリメンタルパターンは、モータMの絶対位置を表すものではないが、アブソリュートパターンに比べると非常に高精度に位置を表すことが可能である。
【0040】
本実施形態では、スリットトラックSI1のピッチP1は、スリットトラックSI2のピッチP2よりも長く設定される。例えば、P1=2×P2となるように各ピッチが設定されている。すなわち、スリットトラックSI2の反射スリットの数はスリットトラックSI1の反射スリットの数の2倍となっている。しかしながら、このスリットピッチの関係は、この例に限定されるものではなく、例えば、3倍、4倍、5倍など様々な値を取り得る。
【0041】
なお、本実施形態では、スリットトラックSA1,SA2の反射スリットの測定方向Cにおける最小長さは、スリットトラックSI1の反射スリットのピッチP1と一致する。その結果、スリットトラックSA1,SA2に基づくアブソリュート信号の分解能は、スリットトラックSI1の反射スリットの数と一致する。
【0042】
(2−2.光学モジュール)
光学モジュール120は、センサ部の一例である。光学モジュール120は、
図2及び
図5に示すように、ディスク110と平行な基板BAとして形成される。光学モジュール120は、ディスク110の回転に伴い、スリットトラックSA1,SI1,SI2,SA2に対して測定方向Cで相対移動する。なお、光学モジュール120は必ずしも一枚の基板として構成される必要はなく、複数の基板として構成されてもよい。この場合、それらの基板が集約して配置されていればよい。また、光学モジュール120は基板状でなくともよい。
【0043】
光学モジュール120は、
図2及び
図5に示すように、基板BAのディスク110と対向する面上に、光源121と、複数の受光アレイPA1,PI1,PI2,PA2とを有する。
【0044】
図3に示すように、光源121は、スリットトラックSI1とスリットトラックSI2との間に対向する位置に配置される。そして、光源121は、光学モジュール120の対向する位置を通過する4つのスリットトラックSA1,SI1,SI2,SA2の対向した部分に光を出射する。
【0045】
光源121としては、照射領域に光を照射可能な光源であれば特に限定されるものではないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)が使用可能である。光源121は、特に光学レンズ等が配置されない点光源として構成され、発光部から拡散光を出射する。なお、「点光源」という場合、厳密な点である必要はなく、設計上や動作原理上、略点状の位置から拡散光が発せられるものとみなせる光源であれば、有限な面積を有する出射面から光が発せられてもよい。また、「拡散光」は、点光源から全方位に向かって放たれる光に限定されず、有限の一定の方位に向かって拡散しつつ出射される光を含む。すなわち、ここでいう拡散光には、平行光よりも拡散性を有する光であれば含まれる。このように点光源を使用することにより、光源121は、対向した位置を通過する4つのスリットトラックSA1,SI1,SI2,SA2にほぼ均等に光を照射することが可能である。また、光学素子による集光・拡散を行わないので、光学素子による誤差等が生じにくく、スリットトラックへの光の直進性を高める事が可能である。
【0046】
複数の受光アレイPA1,PI1,PI2,PA2は、光源121の周囲に配置され、対応付けられたスリットトラックの反射スリットで反射された光を各々受光する複数の受光素子(
図5のドットハッチング部分)を有する。複数の受光素子は、
図5に示すように、測定方向Cに沿って並べられる。1つ1つの受光素子としては、例えばフォトダイオードを使用することができる。但し、フォトダイオードに限定されるものではなく、光源121から出射された光を受光して電気信号に変換可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0047】
なお、光源121から出射される光は拡散光である。従って、光学モジュール120上に投影されるスリットトラックの像は、光路長に応じた所定の拡大率εだけ拡大されたものとなる。つまり、
図4及び
図5に示すように、スリットトラックSA1,SI1,SI2,SA2それぞれの幅方向Rの長さをWSA1,WSI1,WSI2,WSA2とし、それらの反射光が光学モジュール120に投影された形状の幅方向Rの長さをWPA1,WPI1,WPI2,WPA2とすると、WPA1,WPI1,WPI2,WPA2は、WSA1,WSI1,WSI2,WSA2のε倍の長さとなる。なお、本実施形態では、
図5に示すように、各受光アレイの幅方向中心位置と各スリットの光学モジュール120への投影形状の幅方向中心位置とが略一致し、各スリットの光学モジュール120への投影形状の幅方向Rの長さが各受光アレイの受光素子の幅方向Rの長さよりも所定量だけ大きくなるように設定されている。この所定量は、光学モジュール120が光軸周りの周方向に位置ずれして取り付けられた場合でも各受光アレイが各スリットの投影形状の内側に存在するように、適宜の値に設定されている。
【0048】
同様に、光学モジュール120における測定方向Cも、ディスク110における測定方向Cが光学モジュール120に投影された形状、つまり拡大率εの影響を受けた形状となる。理解が容易になるように、
図2に示すように光源121の位置における測定方向Cを例に挙げて、具体的に説明する。ディスク110における測定方向Cは、軸心AXを中心とした円状になる。これに対して、光学モジュール120に投影された測定方向Cの中心は、光源121の光軸Opからディスク110の径方向に距離εLだけ離隔した位置となる。距離εLは、軸心AXと光軸Opとの間の距離Lが拡大率εで拡大された距離である。この位置を
図2では、概念的に測定中心Osとして示している。従って、光学モジュール120における測定方向Cは、光軸Opから当該光軸Opと軸心AXとが乗るライン上を軸心AX方向に距離εL離れた測定中心Osを中心とし、距離εLを半径とするライン上となる。
【0049】
図4及び
図5では、ディスク110及び光学モジュール120の各々における測定方向Cの対応関係を、円弧状のラインLcd,Lcpで表す。
図4に示すラインLcdは、ディスク110上の測定方向Cに沿った線を表す一方、
図5に示すラインLcpは、基板BA上の測定方向Cに沿った線(ラインLcdが光学モジュール120上に投影された線)を表す。
【0050】
図2に示すように、光学モジュール120とディスク110との間のギャップ長をGとし、光源121の基板BAからの突出量をΔdとした場合、拡大率εは、下記(式1)で示される。
ε=(2G−Δd)/(G−Δd)・・・(式1)
【0051】
本実施形態における受光アレイは、4本のスリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2に対応して配置される。受光アレイPA1は、スリットトラックSA1で反射した光を受光するように構成され、受光アレイPA2は、スリットトラックSA2で反射した光を受光するように構成される。また、受光アレイPI1は、スリットトラックSI1で反射した光を受光するように構成され、受光アレイPI2は、スリットトラックSI2で反射した光を受光するように構成される。
【0052】
図3に示すように、スリットトラックSA1の中心半径をR1、スリットトラックSI1の中心半径をr1、スリットトラックSI2の中心半径をr2、スリットトラックSA2の中心半径をR2とすると、
図5に示すように、光学モジュール120における受光アレイPA1の中心半径(前述の測定中心Osを中心とする半径)はεR1、受光アレイPI1の中心半径はεr1、受光アレイPI2の中心半径はεr2、受光アレイPA2の中心半径はεR2となる。
【0053】
光源121と、受光アレイPA1,PA2と、受光アレイPI1,PI2とは、
図5に示す位置関係に配置される。すなわち、アブソリュートパターンに対応する受光アレイPA1,PA2は、幅方向Rにおいて光源121を間に挟むように配置される。この例では、受光アレイPA1は内周側、受光アレイPA2は外周側に配置される。本実施形態では、受光アレイPA1,PA2の各々と光源121との距離は略等しくなっている。また、インクリメンタルパターンに対応する受光アレイPI1,PI2は、受光アレイPA1と受光アレイPA2との間で、幅方向Rにおいて光源121を間に挟むように配置される。この例では、受光アレイPI1は内周側、受光アレイPI2は外周側に配置される。本実施形態では、受光アレイPI1,PI2の各々と光源121との距離は略等しくなっている。以上により、幅方向Rの内側から外側に向けて(内周側から外周側に向けて)、受光アレイPA1、受光アレイPI1、光源121、受光アレイPI2、受光アレイPA2の順に配置される。
【0054】
受光アレイPA1(第1アブソリュート受光部の一例)は、18個の受光素子p1,p2を有しており、スリットトラックSA1(第1アブソリュートパターンの一例)で反射された光を受光して、受光素子数の半分(本実施形態では9)のビットパターンを有する第1アブソリュート信号を出力する。受光アレイPA1は、第1の位相の第1アブソリュート信号を出力する複数の第1受光素子p1と、第2の位相の第1アブソリュート信号を出力する複数の第2受光素子p2とが、測定方向Cに沿って直列且つ交互に配置されて構成されている。なお、測定方向Cに沿って並ぶ複数の第1受光素子p1同士及び複数の第2受光素子p2同士はそれぞれ位相(チャンネル)が異なるが、煩雑防止のため、
図5(後述の
図9、
図15も同様)では同じ符号で記載する。この例では、受光素子p1の配置ピッチ及び受光素子p2の配置ピッチは共に、スリットトラックSA1の反射スリットの測定方向Cにおける最小長さ(ピッチP1)に対応しており(投影された像における最小長さ。すなわちε×P1。)、各受光素子p1,p2の測定方向Cにおける長さはε×P1の略半分である。これにより、受光素子p1,p2同士が測定方向Cに1ビットの1/2の長さ(ピッチP1の半分に相当)だけオフセットされることとなる。したがって、上記第1の位相と第2の位相とは、電気角で180°(受光アレイPI1が出力するインクリメンタル信号の1周期を360°とする)の位相差を有する。
【0055】
受光アレイPA2(第2アブソリュート受光部の一例)は、18個の受光素子p3,p4を有しており、スリットトラックSA2(第2アブソリュートパターンの一例)で反射された光を受光して、受光素子数の半分(本実施形態では9)のビットパターンを有する第2アブソリュート信号を出力する。受光アレイPA2は、第1の位相の第2アブソリュート信号を出力する複数の第3受光素子p3と、第2の位相の第2アブソリュート信号を出力する複数の第4受光素子p4とが、測定方向Cに沿って一定のピッチで直列且つ交互に配置されて構成されている。なお、測定方向Cに沿って並ぶ複数の第3受光素子p3同士及び複数の第4受光素子p4同士はそれぞれ位相(チャンネル)が異なるが、煩雑防止のため、
図5(後述の
図9、
図15も同様)では同じ符号で記載する。この例では、受光素子p3の配置ピッチ及び受光素子p4の配置ピッチは共に、スリットトラックSA2の反射スリットの測定方向Cにおける最小長さ(ピッチP1)に対応しており(投影された像における最小長さ。すなわちε×P1。)、各受光素子p3,p4の測定方向Cにおける長さはε×P1の略半分である。これにより、受光素子p3,p4同士が測定方向Cに1ビットの1/2の長さ(ピッチP1の半分に相当)だけオフセットされることとなる。
【0056】
以上のように、受光アレイPA1及び受光アレイPA2の各々が位相差を有する2つのアブソリュート信号を出力する結果、次のような効果を奏する。つまり、本実施形態のような一次元的なアブソリュートパターンにより絶対位置を表す場合、受光アレイPA1又は受光アレイPA2の各受光素子が反射スリットの端部近傍に対向して位置することによるビットパターンの変わり目の領域において、絶対位置の検出精度が低下する可能性がある。本実施形態では、受光アレイPA1の受光素子p1,p2及び受光アレイPA2の受光素子p3,p4がそれぞれ1ビットの1/2の長さだけオフセットして配置されるので、例えば、受光アレイPA1の受光素子p1(又は受光アレイPA2の受光素子p3)による絶対位置がビットパターンの変わり目に相当する場合には、受光アレイPA1の受光素子p2(又は受光アレイPA2の受光素子p4)からの検出信号を使用して絶対位置を算出したり、その逆を行うことにより、絶対位置の検出精度を向上できる。
【0057】
なお、このような構成とする場合、各受光素子の出力信号を2値化信号に変換するための閾値を共通化して回路構成や信号処理を簡易化するために、受光素子p1と受光素子p2(又は受光素子p3と受光素子p4)の出力信号の大きさを略同一とするのが好ましい。具体的には、受光素子p1の出力信号と受光素子p3の出力信号とが結合された信号の大きさがチャンネル毎に略同一であることが好ましい。同様に、受光素子p2の出力信号と受光素子p4の出力信号とが結合された信号の大きさがチャンネル毎に略同一であることが好ましい。本実施形態では、受光素子p1,p2(又は受光素子p3,p4)の受光面積を光源121からの距離が遠くなるほど大きくする(幅方向Rの長さを長くする)ことで、各受光素子p1,p3における受光光量(受光面積中における各受光点での光強度を積算したもの)及び各受光素子p2,p4における受光光量をチャンネル毎にほぼ均一とし、上記構成を実現している。
【0058】
また、
図2に示すように、光学モジュール120は、上記第1の位相の第1アブソリュート信号と上記第1の位相の第2アブソリュート信号を結合して第1位相信号を生成する第1信号結合部122と、上記第2の位相の第1アブソリュート信号と上記第2の位相の第2アブソリュート信号を結合して第2位相信号を生成する第2信号結合部123を有する。以下適宜、上記第1位相信号を「A相アブソリュート信号」、上記第2位相信号を「B相アブソリュート信号」という。すなわち、A相アブソリュート信号とB相アブソリュート信号とは、互いに電気角で180°(受光アレイPI1が出力するインクリメンタル信号の1周期を360°とする)の位相差を有する信号である。第1信号結合部122は、例えば受光アレイPA1の受光素子p1と受光アレイPA2の受光素子p3とを電気的に接続する、基板BA上に形成された信号配線(図示省略)である。同様に、第2信号結合部123は、例えば受光アレイPA1の受光素子p2と受光アレイPA2の受光素子p4とを電気的に接続する、基板BA上に形成された信号配線(図示省略)である。
【0059】
なお、第1信号結合部122及び第2信号結合部123を信号配線以外で構成してもよい。例えば、受光素子p1,p3の一部を延ばして接続すると共に、受光素子p2,p4の一部を延ばして接続し、受光素子内でアブソリュート信号を結合してもよい。また、各受光素子p1,p3の各々及び各受光素子p2,p4の各々から位相差を有するアブソリュート信号を個別に出力し、信号処理部130における信号処理によって信号を結合してもよい。
【0060】
以上により、光学モジュール120の光軸Op周りの周方向の位置ずれに起因する、第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号との位相のずれをキャンセルすることができるので、それらの影響を低減できる。
【0061】
なお、上記信号の結合により第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号との位相のずれをより精度良くキャンセルするために、受光アレイPA1から出力される第1アブソリュート信号と、受光アレイPA2から出力される第2アブソリュート信号とを、同じ大きさ(例えば振幅、電圧値、電流値等)とするのが好ましい。本実施形態では、受光素子p1,p2(又は受光素子p3,p4)の受光面積を光源121からの距離が遠くなるほど大きくする(幅方向Rの長さを長くする)ことで、同じチャンネルにおける受光素子p1と受光素子p3(又は同じチャンネルにおける受光素子p2と受光素子p4)のそれぞれにおける受光光量(受光面積中における各受光点での光強度を積算したもの)をほぼ均一とし、上記構成を実現している。なお、受光光量をほぼ均一にする方法としては、受光素子p1,p3(又は受光素子p2,p4)の受光面積を調整する以外にも、受光素子p1,p3(又は受光素子p2,p4)の配置位置を調整する方法や受光素子p1,p3(又は受光素子p2,p4)のゲインを調整する方法などが挙げられる。ただし、本実施形態のように受光面積を調整する場合、別途の回路や空きスペースを設ける必要がなく、配置スペースを節約することができる。
【0062】
インクリメンタルパターンに対応する受光アレイPI1は、受光アレイPA1と光源121との間に配置される。また、インクリメンタルパターンに対応する受光アレイPI2は、光源121と受光アレイPA2との間に配置される。受光アレイPI1(インクリメンタル受光部、第1インクリメンタル受光部の一例)は、スリットトラックSI1(インクリメンタルパターン、第1インクリメンタルパターンの一例)の反射スリットで反射された光を各々受光するように測定方向Cに沿って並べられた複数の受光素子を有する。受光アレイPI2(インクリメンタル受光部、第2インクリメンタル受光部の一例)は、スリットトラックSI2(インクリメンタルパターン、第2インクリメンタルパターンの一例)の反射スリットで反射された光を各々受光するように測定方向Cに沿って並べられた複数の受光素子を有する。まず、受光アレイPI1を例に挙げて説明する。
【0063】
本実施形態では、スリットトラックSI1のインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P1。)中に、合計4個の受光素子のセット(
図5に「SET1」で示す)が並べられ、かつ、4個の受光素子のセットが測定方向Cに沿って更に複数並べられる。そして、インクリメンタルパターンは、1ピッチ毎に反射スリットが繰り返し形成されるので、各受光素子は、ディスク110が回転する場合、1ピッチで1周期(電気角で360°という。)の周期信号を生成する。そして、1ピッチに相当する1セット中に4つの受光素子が配置されるので、1セット内の相隣接する受光素子同士は、相互に90°の位相差を有する周期信号を検出することになる。この各受光信号を、A+相信号、B+相信号(A+相信号に対する位相差が90°)、A−相信号(A+相信号に対する位相差が180°)、B−相信号(B+相信号に対する位相差が180°)と呼ぶ。
【0064】
インクリメンタルパターンは1ピッチ中の位置を表すので、1セット中の各位相の信号と、それと対応した他のセット中の各位相の信号とは、同様に変化する値となる。従って、同一位相の信号は、複数のセットにわたって加算される。従って、
図5に示す受光アレイPI1の多数の受光素子からは、90°の位相差を有する4つの信号が検出されることとなる。
【0065】
一方、受光アレイPI2も、受光アレイPI1と同様に構成される。すなわち、スリットトラックSI2のインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P2。)中に、合計4個の受光素子のセット(
図5に「SET2」で示す)が並べられ、かつ、4個の受光素子のセットが測定方向Cに沿って複数並べられる。従って、受光アレイPI1,PI2から90°の位相差を有する4つの信号がそれぞれ生成される。この4信号を、「インクリメンタル信号」という。また、ピッチの短いスリットトラックSI2に対応する受光アレイPI2で生成されるインクリメンタル信号は、他のインクリメンタル信号に比べて高分解能であることから「高インクリメンタル信号」、ピッチの長いスリットトラックSI1に対応する受光アレイPI1で生成されるインクリメンタル信号は、他のインクリメンタル信号に比べて低分解能であることから「低インクリメンタル信号」という。
【0066】
なお、本実施形態では、インクリメンタルパターンの1ピッチに相当する1セットには受光素子が4つ含まれる場合を一例として説明するが、例えば1セットに2つの受光素子が含まれる等、1セット中の受光素子数は特に限定されるものではない。
【0067】
また
図5に示すように、光学モジュール120は、第1位置調整用受光素子124と、第2位置調整用受光素子125とを有する。第1位置調整用受光素子124(第1位置調整用受光部の一例)は、測定方向Cにおいて受光アレイPA1の一方側(第1受光素子p1が端部に位置する側)に隣接して配置されており、光源121から出射されスリットトラックSA1で反射された光を受光して第1位置調整用信号を出力する。また、第2位置調整用受光素子125(第2位置調整用受光部の一例)は、測定方向Cにおいて受光アレイPA2の一方側(第3受光素子p3が端部に位置する側)に隣接して配置されており、光源121から出射されスリットトラックSA2で反射された光を受光して第2位置調整用信号を出力する。
【0068】
第1位置調整用信号と第2位置調整用信号は、結合されることなく個別に光学モジュール120から出力されて、光学モジュール120の取り付け時の位置調整に用いられる。すなわち、光学モジュール120の光軸周りの周方向の位置の変化は、第1位置調整用信号及び第2位置調整用信号の位相差として現れることから、当該位相差に基づき、光学モジュール120の周方向の位置を精度良く調整することができる。なお、光学モジュール120のディスク径方向(幅方向R)の位置の変化は、第1位置調整用信号及び第2位置調整用信号の振幅の変化として現れることから、当該振幅変化に基づき、光学モジュール120の径方向位置を調整してもよい。
【0069】
なお、各受光素子の出力信号を2値化信号に変換するための閾値を共通化して回路構成や信号処理を簡易化するために、第1位置調整用受光素子124から出力される第1位置調整用信号、及び、第2位置調整用受光素子125から出力される第2位置調整用信号のそれぞれは、1つの受光素子p1の受光信号と1つの受光素子p3の受光信号とが結合されて生成されたA相アブソリュート信号や、1つの受光素子p2の受光信号と1つの受光素子p4の受光信号とが結合されて生成されたB相アブソリュート信号と、同じ大きさ(例えば振幅、電圧値、電流値等)とするのが好ましい。本実施形態では、第1位置調整用信号及び第2位置調整用信号が上記大きさの信号となるように、第1位置調整用受光素子124及び第2位置調整用受光素子125の受光面積が所定の大きさ(例えば受光アレイPA1,PA2の端部の受光素子p1,p3の略2倍)となるように設定されている。
【0070】
なお、第1位置調整用受光素子124は、受光アレイPA1の一方側に代えて他方側(第2受光素子p2が端部に位置する側)に隣接して配置されてもよいし(
図5に想像線で示す)、受光アレイPA1の一方側及び他方側の両方に隣接して配置されてもよい。同様に、第2位置調整用受光素子125は、受光アレイPA2の一方側に代えて他方側(第4受光素子p4が端部に位置する側)に隣接して配置されてもよいし(
図5に想像線で示す)、受光アレイPA2の一方側及び他方側の両方に隣接して配置されてもよい。第1位置調整用受光素子124及び第2位置調整用受光素子125を受光アレイPA1,PA2の両側に配置する場合には、位置調整を2系統で2重で確認可能であると共に、受光アレイPA1,PA2の測定方向両端の受光素子における受光量をバランス良く確保することが可能となり、第1アブソリュート信号及び第2アブソリュート信号の信頼性を向上できる。
【0071】
(2−3.信号処理部)
信号処理部130は、モータMの絶対位置を測定するタイミングにおいて、光学モジュール120から、絶対位置を表すビットパターンをそれぞれ備えた2つのアブソリュート信号(A相アブソリュート信号及びB相アブソリュート信号)と、90°の位相差を有する4つの信号を含む高インクリメンタル信号及び低インクリメンタル信号とを取得する。そして、信号処理部130は、2つのアブソリュート信号のうちの選択された一方のアブソリュート信号と2つのインクリメンタル信号とに基づいて、これらの信号が表すモータMの絶対位置を算出し、絶対位置を表す位置データを生成して制御装置CTに出力する。絶対位置を測定した後(例えばエンコーダ100の電源投入後、モータMが回転開始した後)は、信号処理部130は、上記算出した絶対位置と、高インクリメンタル信号及び低インクリメンタル信号に基づき算出した相対位置とに基づき、位置データを生成して制御装置CTに出力する。
【0072】
なお、信号処理部130による位置データの生成方法は、様々な方法が使用可能であり、特に限定されるものではない。ここでは、高インクリメンタル信号及び低インクリメンタル信号とアブソリュート信号とから絶対位置を算出し位置データを生成する場合を例にとって説明する。
【0073】
図6に示すように、信号処理部130は、絶対位置特定部131と、第1位置特定部132と、第2位置特定部133と、信号選択部134と、位置データ生成部135とを有する。
【0074】
絶対位置特定部131は、コンパレータ(図示省略)を有する。コンパレータは、信号選択部134により選択されたA相アブソリュート信号又はB相アブソリュート信号の各振幅と所定のしきい値とをそれぞれ比較する。そして、コンパレータは、振幅がしきい値を超えた場合には検出、振幅がしきい値を超えない場合には未検出とすることで2値化し、絶対位置を表すビットデータに変換する。そして、絶対位置特定部131は、予め定められたビットデータと絶対位置との対応関係に基づいて、絶対位置を特定する。
【0075】
信号選択部134は、受光アレイPI1からのインクリメンタル信号に基づいて、A相アブソリュート信号又はB相アブソリュート信号のいずれか一方を選択する。以下、この詳細について説明する。
【0076】
まず、光学モジュール120の位置ずれが無い場合について説明する。
図7は、この場合における各受光信号の波形の一例を表す説明図である。
図7において、上段の正弦波状の波形は、受光アレイPI1から出力される4つのインクリメンタル信号のうちの1つの信号の波形の一例である。この波形中の数字は、1周期(電気角で360°)を100%とした場合の位相の大きさを表す。また、中段のパルス状の波形は、A相アブソリュート信号の波形の一例である。また、下段のパルス状の波形は、B相アブソリュート信号の波形の一例である。
【0077】
図7に示す例では、B相アブソリュート信号の波形は、受光アレイPI1のインクリメンタル信号の位相が25%のときにオン、オフの変わり目となる。一方、前述のように、A相アブソリュート信号とB相アブソリュート信号とは、互いに電気角で180°の位相差を有する。このため、A相アブソリュート信号の波形は、B相アブソリュート信号の波形に対し位相が50%ずれている(この例では位相が遅れている)。
【0078】
この場合、0%〜50%の位相範囲は、A相アブソリュート信号がB相アブソリュート信号よりも振幅が安定する範囲である。以下では、この位相範囲を第1位相範囲(
図7の白色の両矢印)という。また、50%〜100%の位相範囲は、B相アブソリュート信号がA相アブソリュート信号よりも振幅が安定する範囲である。以下では、この位相範囲を第2位相範囲(
図7のクロスハッチングの両矢印)という。
【0079】
信号選択部134は、受光アレイPI1から低インクリメンタル信号を入力する。そして、信号選択部134は、低インクリメンタル信号の位相が上記第1位相範囲である場合にはA相アブソリュート信号を選択し、低インクリメンタル信号の位相が第2位相範囲である場合にはB相アブソリュート信号を選択する。これにより、検出パターンの変化点等の振幅が不安定な領域でない方のアブソリュート信号を使用して絶対位置を特定することができるので、検出精度を向上することが可能となる。
【0080】
一方、第1位置特定部132は、受光アレイPI1からの4つの位相それぞれの低インクリメンタル信号のうち、180°位相差の低インクリメンタル信号同士を相互に減算する。このように180°位相差のある信号を減算することで、1ピッチ内の反射スリットの製造誤差や測定誤差などを相殺可能である。上述のように減算された結果の信号を、ここでは「第1インクリメンタル信号」及び「第2インクリメンタル信号」という。この第1インクリメンタル信号及び第2インクリメンタル信号は相互に電気角で90°の位相差を有する(単に「A相信号」、「B相信号」などという。)。そこで、この2つの信号から、第1位置特定部132は、1ピッチ内の位置を特定する。この1ピッチ内の位置の特定方法は、特に限定されない。例えば、周期信号である低インクリメンタル信号が正弦波信号である場合には、上記特定方法の例として、A相及びB相の2つの正弦波信号の除算結果をarctan演算することにより電気角φを算出する方法がある。あるいは、トラッキング回路を用いて2つの正弦波信号を電気角φに変換する方法もある。あるいは、予め作成されたテーブルにおいてA相及びB相の信号の値に対応付けられた電気角φを特定する方法もある。なおこの際、第1位置特定部132は、好ましくは、A相及びB相の2つの正弦波信号を各検出信号毎にアナログ−デジタル変換する。
【0081】
一方、第2位置特定部133は、受光アレイPI2からの高インクリメンタル信号について、上述した第1位置特定部132と同様の処理を行い、2つの信号から1ピッチ内の高精度な位置を特定する。
【0082】
位置データ生成部135は、絶対位置特定部131により特定された絶対位置に、第1位置特定部132により特定された1ピッチ内の位置を重畳する。これにより、アブソリュート信号に基づく絶対位置よりも高分解能な絶対位置を算出することができる。さらに、位置データ生成部135は、上述の低インクリメンタル信号に基づいて算出された絶対位置に、第2位置特定部133により特定された1ピッチ内の位置を重畳する。これにより、低インクリメンタル信号に基づいて算出された絶対位置よりもさらに高分解能な絶対位置を算出することができる。そして、位置データ生成部135は、このようにして算出した絶対位置を逓倍処理して分解能をさらに向上させた後、高精度な絶対位置を表す位置データとして制御装置CTに出力する。
【0083】
次に、光学モジュール120の位置ずれが存在する場合について説明する。本実施形態における「光学モジュール120の位置ずれ」とは、
図8に示すように、光学モジュール120がディスク110に対して適正位置(符号120により実線で示す)からディスク110のディスク中心O周りの周方向に位置ずれして取り付けられたような場合(角度θ1だけ位置ずれした状態を符号120Aにより破線で示す)、あるいは、光学モジュール120が光源121の光軸周り(あるいは光軸に平行な軸周り)の周方向に位置ずれして取り付けられたような場合(角度θ2だけ位置ずれした状態を符号120Bにより想像線で示す)等をいう。
【0084】
このような位置ずれが存在する場合、A相アブソリュート信号とB相アブソリュート信号の選択の基準となる受光アレイPI1の幅方向Rの位置と、受光アレイPA1,PA2のそれぞれの幅方向Rの位置との相違により、低インクリメンタル信号とA相アブソリュート信号、低インクリメンタル信号とB相アブソリュート信号との間にそれぞれ位相ずれが生じる。つまり、
図9に示すように、光学モジュール120の中心線(光源121を通り各受光アレイの測定方向中心位置を通る線)が適正位置CL0から第1のずれ位置CL1のように位置ずれした場合には(
図8の光学モジュール120Aに対応)、受光アレイPA2の第2アブソリュート信号は受光アレイPI1の低インクリメンタル信号よりも位相が進み、受光アレイPA1の第1アブソリュート信号は受光アレイPI1の低インクリメンタル信号よりも位相が遅れる。そして、受光アレイPA2と受光アレイPI1との距離(εR2−εr1)が、受光アレイPI1と受光アレイPA1との距離(εr1−εR1)よりも大きいことから、第2アブソリュート信号と低インクリメンタル信号との位相差は、第1アブソリュート信号と低インクリメンタル信号との位相差よりも大きい。一方、光学モジュール120の中心線が適正位置CL0から第2のずれ位置CL2のように位置ずれした場合には(
図8の光学モジュール120Bに対応)、上記とは反対に、受光アレイPA2の第2アブソリュート信号は受光アレイPI1の低インクリメンタル信号よりも位相が遅れ、受光アレイPA1の第1アブソリュート信号は受光アレイPI1の低インクリメンタル信号よりも位相が進む。この場合も、第2アブソリュート信号と低インクリメンタル信号との位相差は、第1アブソリュート信号と低インクリメンタル信号との位相差よりも大きい。
【0085】
図10に、受光アレイPA1から出力される第1アブソリュート信号及び受光アレイPA2から出力される第2アブソリュート信号の受光アレイPI1から出力される低インクリメンタル信号に対する位相ずれ(%)と、光学モジュール120の周方向ずれ量(mm)との相関関係の一例を示す。なお、
図10に示す周方向ずれは、光学モジュール120がディスク110に対して適正位置(
図8の光学モジュール120)からディスク110のディスク中心O周りの周方向に位置ずれした場合であり、
図8の光学モジュール120Aに対応している。また、位相ずれは、受光アレイPI1から出力される低インクリメンタル信号の1周期(電気角で360°)を100%とした場合の値である。
図10に示すように、周方向ずれ量が0からプラス側に大きくなるほど、受光アレイPA2の第2アブソリュート信号は受光アレイPI1の低インクリメンタル信号に対して徐々に位相が進み(位相ずれがプラス側に大きくなり)、受光アレイPA1の第1アブソリュート信号は低インクリメンタル信号に対して徐々に位相が遅れる(位相ずれがマイナス側に大きくなる)。また、周方向ずれ量が0からマイナス側に小さくなるほど、受光アレイPA2の第2アブソリュート信号は低インクリメンタル信号に対して徐々に位相が遅れ(位相ずれがマイナス側に大きくなり)、受光アレイPA1の第1アブソリュート信号は低インクリメンタル信号に対して徐々に位相が進む(位相ずれがプラス側に大きくなる)。そして、上述したように、第2アブソリュート信号の位相ずれ量は第1アブソリュート信号の位相ずれ量よりも全体的に大きい。
【0086】
このようにして、低インクリメンタル信号と第1アブソリュート信号、低インクリメンタル信号と第2アブソリュート信号との間の位相ずれが大きくなると、
図7に示す信号選択部134による信号選択が適正に行われない可能性がある。つまり、
図7に示すように、例えば低インクリメンタル信号の位相が第1位相範囲である場合にはA相アブソリュート信号が選択されるが、検出(High)と未検出(low)が反対となったり、検出パターンの変化点等の不安定な領域となりうる。同様に、例えば低インクリメンタル信号の位相が第2位相範囲である場合にはB相アブソリュート信号が選択されるが、検出(High)と未検出(low)が反対となったり、検出パターンの変化点等の不安定な領域となりうる。これにより、絶対位置の誤検出が生じうる。
【0087】
これに対し、本実施形態では、前述のように、第1の位相の第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号とが結合されてA相アブソリュート信号が生成されると共に、第2の位相の第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号とが結合されてB相アブソリュート信号が生成される。
図11に、これらA相アブソリュート信号及びB相アブソリュート信号の低インクリメンタル信号に対する位相ずれ(%)と、光学モジュール120の周方向ずれ量(mm)との相関関係の一例を示す。
図11に示すように、第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号との結合により位相のずれがキャンセルされて、位相のずれ量を大幅に低減することができる。なお、本実施形態では、受光アレイPA2と受光アレイPI1との距離が、受光アレイPI1と受光アレイPA1との距離よりも大きいことから、位相のずれは完全にはキャンセルされず、光学モジュール120の周方向ずれ量に応じて若干の位相ずれが生じている。
【0088】
なお、上述した信号処理部130の各処理部(絶対位置特定部131、第1位置特定部132、第2位置特定部133、信号選択部134、位置データ生成部135等)における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、信号処理部130の各機能は、後述するCPU901(
図16参照)が実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0089】
<3.本実施形態による効果の例>
以上説明した実施形態によれば、エンコーダ100が、それぞれが測定方向Cに沿って形成された第1アブソリュートパターンのスリットトラックSA1及び第2アブソリュートパターンのスリットトラックSA2を有するディスク110と、ディスク110を測定方向Cに沿って測定する光学モジュール120と、を有し、光学モジュール120は、光源121から出射されスリットトラックSA1で反射された光を受光して、第1の位相の第1アブソリュート信号を出力する複数の第1受光素子p1、及び、第1の位相と所定の位相差を有する第2の位相の第1アブソリュート信号を出力する複数の第2受光素子p2が、測定方向Cに交互に配置された受光アレイPA1と、受光アレイPA1との間に光源121の光軸Opを挟むように配置され、光源121から出射されスリットトラックSA2で反射された光を受光して、第1の位相の第2アブソリュート信号を出力する複数の第3受光素子p3、及び、第2の位相の第2アブソリュート信号を出力する複数の第4受光素子p4が、測定方向Cに沿って交互に配置された受光アレイPA2と、を有する。
【0090】
本実施形態のエンコーダ100では、受光アレイPA1及び受光アレイPA2のそれぞれが、所定の位相差を有する2つのアブソリュート信号を出力する。これにより、アブソリュートパターンの変化点等の不安定な領域でない方の受光素子から得られるアブソリュート信号を使用して絶対位置を特定することが可能となるので、絶対位置の検出精度を向上できる。また、受光アレイPA1及び受光アレイPA2が、光源121の光軸Opを挟むように配置されるので、それら2つの受光部から出力される2つのアブソリュート信号に基づいて絶対位置を表す位置データを生成することにより、光学モジュール120の光軸周りの周方向の位置ずれが絶対位置の検出精度に与える影響を小さくすることができる。その結果、エンコーダ製造時のセンサ部の初期位置合わせを簡易にできる。
【0091】
また、本実施形態では特に、第1の位相の第1アブソリュート信号と第1の位相の第2アブソリュート信号とを結合して第1位相信号を生成する第1信号結合部122と、第2の位相の第1アブソリュート信号と第2の位相の第2アブソリュート信号とを結合して第2位相信号を生成する第2信号結合部123と、をさらに有する。
【0092】
これにより、光学モジュール120の光軸周りの周方向の位置ずれに起因する、第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号との位相のずれを相殺(キャンセル)することができる。したがって、位置ずれが絶対位置の検出精度に与える影響を小さくすることができる。
【0093】
また、本実施形態では特に、ディスク110は、測定方向Cに沿って形成されたインクリメンタルパターンのスリットトラックSI1,SI2を有し、光学モジュール120は、受光アレイPA1と受光アレイPA2との間に配置され、光源121から出射されスリットトラックSI1,SI2で反射された光を受光してインクリメンタル信号を出力する受光アレイPI1,PI2を有する。
【0094】
これにより、アブソリュート信号とインクリメンタル信号に基づいて絶対位置を表す位置データを生成することができるので、エンコーダ100の分解能を高めることができる。また、第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号は結合されることから、受光アレイPA1と受光アレイPA2の中間に、仮想的なアブソリュート受光部が配置されているとみなすことができる。したがって、受光アレイPI1,PI2を受光アレイPA1と受光アレイPA2の間に配置することで、当該受光アレイPI1,PI2の位置と上記仮想的なアブソリュート受光部の位置を近づけることができる。その結果、インクリメンタル信号と結合されたアブソリュート信号との位相差を小さくすることができるので、位置ずれが絶対位置の検出精度に与える影響を小さくできる。また、受光アレイPI1,PI2の位置を光源121に近づけることができるので、受光量を比較的大きく確保でき、絶対位置の検出精度を向上できる。
【0095】
また、本実施形態では特に、スリットトラックSI1,SI2は、スリットトラックSI1と、スリットトラックSI1よりもピッチが短いスリットトラックSI2と、を含み、受光アレイPI1,PI2は、光源121から出射されスリットトラックSI1で反射された光を受光して低インクリメンタル信号を出力する受光アレイPI1と、受光アレイPI1との間に光源121を挟むように配置され、光源121から出射されスリットトラックSI2で反射された光を受光して高インクリメンタル信号を出力する受光アレイPI2と、を含む。
【0096】
これにより、低インクリメンタル信号と高インクリメンタル信号とに基づいて逓倍積上げ方式による高分解能な絶対位置を表す位置データを生成することできるので、エンコーダ100の分解能をさらに高めることができる。また、光源121を挟むように受光アレイPI1と受光アレイPI2を配置することにより、分解能を決定する受光アレイPI2の位置を光源121に近づけて受光量を比較的大きく確保でき、検出精度を向上できる。
【0097】
また、本実施形態では特に、エンコーダ100は、低インクリメンタル信号に基づいて、第1位相信号又は第2位相信号のいずれかを選択する信号選択部134と、信号選択部134により選択された第1位相信号又は第2位相信号に基づいて、絶対位置を表す位置データを生成する位置データ生成部135と、を有する信号処理部130をさらに有する。
【0098】
これにより、アブソリュートパターンの変化点等の不安定な領域でない方の受光素子から得られるアブソリュート信号を使用して絶対位置を特定することが可能となるので、絶対位置の検出精度を向上できる。また、上述の仮想的なアブソリュート受光部の位置を、信号選択の基準となる受光アレイPI1の位置に近づけることで、光学モジュール120の光軸周りの周方向の位置ずれによる影響をさらに小さくすることができる。
【0099】
また、本実施形態では特に、受光アレイPA1は、受光アレイPA2が出力する第2アブソリュート信号と同じ大きさの第1アブソリュート信号を出力する。
【0100】
これにより、第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号との位相のずれをより精度良く相殺(キャンセル)することができるので、光学モジュール120の光軸周りの周方向の位置ずれによる影響をさらに小さくすることができる。
【0101】
また、本実施形態では特に、受光アレイPA1と受光アレイPA2は、受光アレイPA1の受光光量と受光アレイPA2の受光光量が同じ大きさとなるような受光面積をそれぞれ有する。つまり、受光アレイPA1と受光アレイPA2の受光面積を調整することで、受光アレイPA1は、受光アレイPA2の受光光量と同じ大きさの受光光量を有する。
【0102】
これにより、第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号とを光学的に同一の信号とすることができるので、例えば回路側でゲインを調整して信号の大きさを調整する場合に比べて、回路規模を大きくしなくてすむ。その結果、効率よく絶対位置の検出精度を高めることができる。
【0103】
また、本実施形態では特に、光学モジュール120は、測定方向Cにおいて受光アレイPA1に隣接して配置され、光源121から出射されスリットトラックSA1で反射された光を受光して第1位置調整用信号を出力する第1位置調整用受光素子124と、測定方向Cにおいて受光アレイPA2に隣接して配置され、光源121から出射されスリットトラックSA2で反射された光を受光して第2位置調整用信号を出力する第2位置調整用受光素子125と、を有する。
【0104】
本実施形態では、光学モジュール120の光軸周りの周方向の位置ずれによる影響を小さくするために、第1アブソリュート信号及び第2アブソリュート信号を結合することから、これらの第1アブソリュート信号及び第2アブソリュート信号を用いて光学モジュール120を上記周方向に精度良く位置調整することができない。そこで、第1位置調整用受光素子124と第2位置調整用受光素子125を別途設けて、第1位置調整用信号と第2位置調整用信号とに基づいて、光学モジュール120の位置調整を行う。具体的には、光学モジュール120の光軸周りの周方向の位置の変化は、第1位置調整用信号及び第2位置調整用信号の位相差として現れることから、当該位相差に基づき、光学モジュール120の周方向の位置を精度良く調整することができる。
【0105】
また、本実施形態では特に、ディスク110は、スリットトラックSA1及びスリットトラックSA2がそれぞれディスク中心O周りの周方向に沿って円状に形成された回転ディスクであり、光学モジュール120は、スリットトラックSA1及びスリットトラックSA2をディスク110の周方向に沿って測定する。
【0106】
これにより、光学モジュール120とディスク110とのディスク中心O周りの周方向の相対位置変動に対するロバスト性を高めることができるため、偏心(シャフトSHの軸心AXとディスク中心Oとの偏心)の許容量を増大できる。
【0107】
<4.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について説明する。
【0108】
(4−1.信号選択のための基準インクリメンタル信号を生成する場合)
上記実施形態では、A相アブソリュート信号とB相アブソリュート信号の選択の基準となる低インクリメンタル信号を出力する受光アレイPI1の位置が、受光アレイPA1,PA2の中間位置(光源121の位置)からずれているため、若干の位相ずれが残っていた。そこで、受光アレイPA1,PA2の中間に位置する仮想的な受光アレイから出力される基準信号を生成し、当該基準信号に基づいてA相アブソリュート信号又はB相アブソリュート信号を選択してもよい。
【0109】
図12に、本変形例の信号処理部130Aの機能構成の一例を示す。
図12に示すように、信号処理部130Aは、前述の信号処理部130の構成に加えて、基準信号生成部136を有する。
【0110】
基準信号生成部136は、受光アレイPI1から出力された低インクリメンタル信号と受光アレイPI2から出力された高インクリメンタル信号とに基づいて、基準インクリメンタル信号を生成する。具体的には、基準信号生成部136は、低インクリメンタル信号と高インクリメンタル信号との位相差を検出し、低インクリメンタル信号の位相を、検出した位相差の半分だけずらす(進める又は遅らせる)。これにより、幅方向Rにおいて受光アレイPA1,PA2の中間に位置する仮想的な受光アレイから出力された基準インクリメンタル信号を生成することができる。そして、信号選択部134は、生成された基準インクリメンタル信号に基づいて、A相アブソリュート信号又はB相アブソリュート信号のいずれかを選択する。
【0111】
図13に、本変形例における第1アブソリュート信号及び第2アブソリュート信号の基準インクリメンタル信号に対する位相ずれ(%)と、光学モジュール120の周方向ずれ量(mm)との相関関係の一例を示す。
図13に示すように、第1アブソリュート信号の位相ずれ量と第2アブソリュート信号の位相ずれ量は、ほぼ同じ大きさとなっている。
【0112】
図14に、本変形例におけるA相アブソリュート信号及びB相アブソリュート信号の基準インクリメンタル信号に対する位相ずれ(%)と、光学モジュール120の周方向ずれ量(mm)との相関関係の一例を示す。
図14に示すように、第1アブソリュート信号と第2アブソリュート信号との結合により位相のずれがキャンセルされて、位相のずれをほぼ無くすことができる。
【0113】
以上説明した本変形例によれば、低インクリメンタル信号と高インクリメンタル信号との位相差の半分を低インクリメンタル信号の位相に加えて基準インクリメンタル信号を生成することで、受光アレイPA1,PA2の中間位置(光源121の位置)に、基準インクリメンタル信号を出力する仮想的な基準インクリメンタル受光部が配置されているとみなすことができる。これにより、A相アブソリュート信号及びB相アブソリュート信号を出力する仮想的なアブソリュート受光部の位置と、信号選択の基準となる基準インクリメンタル受光部の位置とを略一致させることができるので、光学モジュール120の光軸周りの周方向の位置ずれによる影響をほぼ無くすことができる。
【0114】
(4−2.インクリメンタル信号の受光アレイのレイアウトを変更する場合)
上記変形例では、信号処理によって仮想的なアブソリュート受光部の位置と信号選択の基準となるインクリメンタル受光部の位置とを略一致させるようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、光学モジュール120における受光アレイのレイアウトを変更することで、仮想的なアブソリュート受光部の位置と信号選択の基準となるインクリメンタル受光部の位置とを略一致させてもよい。
【0115】
図15に、本変形例の光学モジュール120Aにおける受光アレイのレイアウトの一例を示す。
図15に示すように、光学モジュール120Aは、受光アレイPA1,PA2と、受光アレイPIL,PIRとを有する。受光アレイPIL,PIRは、幅方向Rにおける中央位置が光源121と略一致しており、測定方向Cにおいて光源121を間に挟むように配置されている。受光アレイPIL,PIRはそれぞれ、インクリメンタルパターンを有するスリットトラックSI1の反射スリットで反射された光を各々受光するように4個の受光素子のセット(
図15に「SET1」で示す)が測定方向Cに沿って複数並べられ、90°の位相差を有する4つの低インクリメンタル信号を出力する。図示は省略するが、本変形例のディスク110では、3本のスリットトラックが幅方向Rの内側から外側に向けて、SA1,SI1,SA2の順に配置されることになる。光学モジュール120Aの受光アレイPA1,PA2を含む上記以外の構成は、前述の実施形態の光学モジュール120と同様であるので説明を省略する。
【0116】
なお本変形例では、信号選択部134は、受光アレイPIL,PIRからの低インクリメンタル信号に基づいて、A相アブソリュート信号又はB相アブソリュート信号のいずれか一方を選択する。絶対位置特定部131は、選択されたアブソリュート信号に基づいて絶対位置を特定する。位置データ生成部135は、絶対位置特定部131により特定された絶対位置に、第1位置特定部132により特定された1ピッチ内の位置を重畳して、絶対位置を表す位置データを生成する。
【0117】
本変形例によれば、受光アレイPA1,PA2の中間位置(光源121の位置)に、受光アレイPIL,PIRが配置されている。これにより、A相アブソリュート信号及びB相アブソリュート信号を出力する仮想的なアブソリュート受光部の位置と、信号選択の基準となる受光アレイPIL,PIRの位置とを略一致させることができるので、光学モジュール120の光軸周りの周方向の位置ずれによる影響をほぼ無くすことができる。
【0118】
なお、本変形例の受光アレイPIL,PIRを、スリットトラックSI2の反射スリットで反射された光を受光して高インクリメンタル信号を出力する受光アレイとしてもよい。この場合、ディスク110では、3本のスリットトラックが幅方向Rの内側から外側に向けて、SA1,SI2,SA2の順に配置されることになる。
【0119】
(4−3.その他)
以上では、ディスク110にピッチの異なるインクリメンタルパターンを有する2つのスリットトラックSI1,SI2を設ける場合を説明したが、ピッチの異なるインクリメンタルパターンを有する3以上のスリットトラックを設けてもよい。この場合にも、積上げ方式により高い分解能を実現することができる。
【0120】
また、以上では、受光アレイPA1,PA2がそれぞれ18個の受光素子を有し、A相アブソリュート信号及びB相アブソリュート信号がそれぞれ9ビットの絶対位置を表す場合を説明したが、受光素子の数は18以外でもよく、アブソリュート信号のビット数も9に限定されない。また、受光アレイPI1,PI2の受光素子の数も、上記実施形態の数に特に限定されるものではない。
【0121】
また、以上では、エンコーダ100がモータMに直接連結される場合について説明したが、例えば減速機や回転方向変換機等の他の機構を介して連結されてもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、光源と受光アレイとがディスク110のスリットトラックに対し同じ側に配置された、いわゆる反射型エンコーダである場合を例にとって説明したが、これに限定されない。すなわち、光源と受光アレイとがディスク110を挟んで反対側に配置された、いわゆる透過型エンコーダであってもよい。この場合、ディスク110において、スリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2の各スリットを透過スリットとして形成する、あるいは、スリット以外の部分をスパッタリング等により粗面としたり透過率の低い材質を塗布したりすることで形成してもよい。本変形例においては、光源121と、受光アレイPA1,PA2,PI1,PI2とが、ディスク110を挟んで対向配置されるが、本変形例における光学モジュール120は、このように別体として形成された光源と受光アレイとを含む。このような透過型エンコーダを用いた場合も、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0123】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0124】
<5.制御部のハードウェア構成例>
次に、
図16を参照しつつ、信号処理部130(信号処理部130Aも同様)のハードウェア構成例について説明する。
【0125】
図16に示すように、信号処理部130は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、記録装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0126】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、記録装置917等に記録しておくことができる。
【0127】
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブルな記録媒体925に、一時的又は非一時的(永続的)に記録しておくこともできる。このような記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらの記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0128】
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0129】
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0130】
そして、CPU901が、上記記録装置917に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、前述の絶対位置特定部131、第1位置特定部132、第2位置特定部133、信号選択部134、位置データ生成部135等が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置917からプログラムを直接読み出して実行してもよいし、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置917に記録せずに直接実行してもよい。
【0131】
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0132】
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置917や記録媒体925に記録させてもよい。