(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6842684
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】案内誘導床マット、及びこれを用いた案内誘導ライン
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20210308BHJP
E01F 9/553 20160101ALI20210308BHJP
E01F 9/582 20160101ALI20210308BHJP
【FI】
E04F15/02 C
E01F9/553
E01F9/582
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-30076(P2020-30076)
(22)【出願日】2020年2月26日
【審査請求日】2020年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591159675
【氏名又は名称】錦城護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達也
【審査官】
前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−261565(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00425901(EP,A1)
【文献】
特開平06−289796(JP,A)
【文献】
特開2017−002561(JP,A)
【文献】
特開2005−098021(JP,A)
【文献】
特開2016−065437(JP,A)
【文献】
特開平08−246643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
E01F 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者に移動すべき方向や注意すべき位置の情報を提供すべく床面にライン状に連結して設置される案内誘導床マットであって、
床面に設置された際の上方へ突出する凸条を2本のみ備え、
前記2本の凸条は、当該案内誘導床マットを連結する連結方向に延びるとともに、当該案内誘導床マットの幅方向の両端に設けられ、
前記凸条を含めた幅方向の断面における上縁が、両端を除いた全幅にわたり、折点のない線からなり、
前記凸条における前記上縁は、両裾部が下方へ湾入する湾曲線からなり、
前記湾曲線のうち当該案内誘導床マットの外側の湾曲線は、当該案内誘導床マットの幅方向の端縁に達しており、
前記2本の凸条間にわたる平面からなる平坦部が設けられ、前記連結方向に沿って前記平坦部を歩行可能なことを特徴とする案内誘導床マット。
【請求項2】
前記凸条の両裾部の湾曲線は、当該案内誘導床マットの幅方向における外側の湾曲線における最小曲率半径が、当該幅方向における内側の湾曲線における最小曲率半径より大きい請求項1に記載の案内誘導床マット。
【請求項3】
前記凸条は、隣接する案内誘導床マットの凸条と連結可能に構成されている請求項1に記載の案内誘導床マット。
【請求項4】
前記凸条は、下面側に当該凸条に沿って延びる凹条、又は貫通孔を有する請求項3に記載の案内誘導床マット。
【請求項5】
複数の請求項4に記載の案内誘導床マットが床面に線状に並べて設置されており、
当該複数の案内誘導床マットの少なくとも1つの凸条が透明、又は半透明素材からなり、前記凹条、又は貫通孔内にLED等の光源あるいは電線が設けられており、
前記の光源は、隣接する案内誘導床マットの前記凹条、又は貫通孔内に通された電線から電力を供給される案内誘導ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院、旅客施設、劇場等の建築物において利用者を目的地へ誘導すべく床面に敷設される案内誘導床マットに関し、特に、車いすや歩行器等、ベビーカー、トランク、医療機器等の車輪を有する横断体が横断する際の振動を緩和する構成を備えた案内誘導床マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物では、人を目的の場所へ案内する誘導方法として、職員や案内地図による誘導が行われている。
【0003】
ところが、このような案内は、職員の説明や、案内の内容を理解したのち歩き始めると、目的地まで記憶を頼りに歩くことになるため、道に迷うことも多い。また、職員が付き添い誘導する場合、人的コストを必要とする。
そこで、目的地までの床面にテープや塗装によりライン状に表示し、このラインを辿ることにより目的地へ到着するようにした誘導方法が広く用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、視覚障害者誘導用表示(点字ブロック)の一端に視覚正常者を案内する矢印を表示したものが提案されている。特許文献1の特許文献1では、矢印を凸状に設けることで、視覚障害者も矢印を認識できるように構成している。
【0005】
また、特許文献2には、誘導マットに沿って設置した固定誘導装置から、歩行者が携帯する誘導装置を介して位置情報を通知することで歩行者を誘導する歩行誘導システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−007340
【特許文献2】特開2004−246831
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の視覚障害者誘導用表示では、車いすや歩行器等の横断体の通行時に横断体に与える振動が大きいという問題がある。
また、特許文献2の歩行誘導システムは、設置や取り外しが難しく、建築物内でのレイアウト変更や、一時的に行われるイベント等の案内が難しいという問題がある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、車いす等の横断体が横断する際の振動を緩和する構成を備え、建築物内のレイアウト変更や一時的な誘導に対応して、設置および取り外しが可能な誘導用床マットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、歩行者に移動すべき方向や注意すべき位置の情報を提供すべく床面にライン状に連結して設置される案内誘導床マットであって、 床面に設置された際の上方へ突出する凸
条を
2本のみ備え、
前記2本の凸条は、当該案内誘導床マットを連結する連結方向に延びるとともに、当該案内誘導床マットの幅方向の両端に設けられ、前記凸
条を含めた幅方向の断面における上縁が、両端を除いた全幅にわたり、折点のない線からなり、前記凸
条における前記上縁は、両裾部が下方へ湾入する湾曲線から
なり、前記湾曲線のうち当該案内誘導床マットの外側の湾曲線は、当該案内誘導床マットの幅方向の端縁に達しており、前記2本の凸条間にわたる平面からなる平坦部が設けられ、前記連結方向に沿って前記平坦部を歩行可能なことを特徴とする。
【0009】
このように、本発明の案内誘導床マットは、
凸条を含めた幅方向の断面における上縁を、両端を除いた全幅にわたり、折点のない線により構成し、この
凸条の上縁の両裾部を下方へ湾入する湾曲線により構成したので、車いす等の横断体が横断する際の振動を効果的に緩和することができる。
【0010】
前記凸条の両裾部の湾曲線は、当該案内誘導床マットの幅方向における外側の湾曲線における最小曲率半径が、当該幅方向における内側の湾曲線における最小曲率半径より大きいことが好ましい。
【0011】
前記凸条は、隣接する案内誘導マットの凸条と連結可能に構成されていることが好ましい。このように、隣接する案内誘導マットの凸条どうしを連結することで、凸条が横断体の通過時等に変形したり揺動したりすることを抑制できる。
【0012】
前記凸条は、下面側に当該凸条に沿って延びる凹条、又は貫通孔を有することが好ましい。
このように凸条の下面側に凹条や貫通孔を設け、隣接する案内誘導床マットと、凸条とともに下面側の凹条や貫通孔を連結することで、凹条内に電気配線や通信回線等を通すことができる。
【0014】
また、本発明は、複数の上記案内誘導床マットが床面に線状に並べて設置されており、当該複数の案内誘導床マットの少なくとも1つの凸条が透明、又は半透明素材からなり、前記凹条、又は貫通孔内にLED等の光源あるいは電線が設けられており、前記の光源は、隣接する案内誘導床マットの前記凹条、又は貫通孔内に通された電線から電力を供給される案内誘導ラインを含む。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の案内誘導床マットによれば、横断体が横断する際の振動を効果的に緩和でき、床面対し容易に取り付け取り外しができるので、建築物内のレイアウト変更に容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る案内誘導ラインを病院内に敷設した様子を示す概要図である。
【
図2】第1実施形態の案内誘導ラインの要部を示した拡大斜視図である。
【
図4】隣接する案内誘導床マットの連結部を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る案内誘導床マットを一部切断して示した斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る案内誘導ラインの斜視図である。
【
図7】本発明の
参考形態に係る案内誘導ラインの斜視図である。
【
図9】本発明の
参考形態に係る案内誘導床マットの変形例の横断面図である。
【
図10】本発明の
参考形態に係る案内誘導床マットの変形例の横断面図である。
【
図11】本発明の
参考形態に係る案内誘導床マットの変形例の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る案内誘導ライン100を示している。案内誘導ライン100は、病院等の建築物の床面に設置され、建築物の利用者に移動すべき方向や注意すべき位置の情報を提供する。
案内誘導ライン100は、床面に適宜に組み合わされてライン状に並べられる2種の案内誘導床マット10,20を備えている。
尚、以下の説明において、複数の案内誘導床マットを床面上にライン状に連結する方向を「連結方向」といい、平面視で「連結方向」に垂直な方向を「幅方向」という。
【0018】
案内誘導床マット10は、
図2に示すように、案内誘導ライン100の端部に配置されるもので、平面視矩形をなす板状部材からなり、上面から突出する一対の凸部11、11と、その間の平坦部13とを備えている。案内誘導床マット10は、一対の凸部11,11を透明、又は半透明樹脂等の透明素材とし、平坦部13を不透明樹脂等の不透明素材として、二色成型により形成されている。
【0019】
一対の凸部11,11は、連結方向に延びる凸条からなる(以下、「凸条11」ともいう)。凸条11は、当該案内誘導床マット10の幅方向の両端に設けられている。凸条11は、
図2に示すように、凸条11の長手方向の一端側(
図2の左下側)に向かって徐々に低くなり上方へ湾出する端部湾曲面11aを有している。
【0020】
凸条11の他端側(
図2の右上側)の端部11bは、隣接する案内誘導床マット20の凸条21と連続するように、端縁まで一定の高さに形成され、下面側に、隣接する案内誘導床マット20の係合突片3と係合する係合凹部4を備えている。
【0021】
凸条11は、
図3に示すように、幅方向の断面が略半円筒状をなし、下面側に凹条11eを有している。また、凸条11の幅方向における断面の上縁は、頂部が上方へ湾出する湾曲線に、両裾部11c,11dが下方へ湾入する湾曲線に形成されている。凸条11の幅方向の外側の湾曲面11cにおける最小曲率半径(以下、単に「曲率半径」)r1は、床面Aと折線なく連続するために、床面Aに埋め込むタイプでは
図3(a)に示すように、平坦部13と連続する同幅方向の内側の裾部11dの曲率半径r2と同等に設けられ、床面Aに載置するタイプでは、
図3(b)に示すように、r2より大きく設けられている。
また、案内誘導床マット10は、凸条11を含めた幅方向の断面における上縁が、両端E,Eを除いた全幅にわたり折点のない線から構成されている。
同様に、端部湾曲面11aの裾部も下方へ湾曲する湾曲面に構成し、平坦部13との境界に折線の無いことが好ましい。
【0022】
案内誘導床マット20は、
図2に示すように、案内誘導床マット10と同寸法の矩形の板状部材からなり、透明、又は半透明樹脂等の素材からなる凸条21、21と、平坦部23とを備えている。
【0023】
凸条21は、長手方向の両端21a,21bが、隣接する案内誘導床マット10,20の凸条11,21と連続するように端縁まで一定の高さに形成された以外は、凸条11と概ね同形である。凸条21の長手方向の一端21aには、
図4に示すように、係合凹部4と嵌合する係合突片3が、他端21bには、係合凹部4が設けられている。
【0024】
凸条11,21下面の凹条11e,21eは、隣接する案内誘導床マット10,20の凹条11e,21eに連通している。
【0025】
案内誘導床マット10,20を床面Aに設置する際には、平坦部13、23の下面に接着剤や両面テープを配し、予め床面上に配設された電線5やLED光源6を凹条11e,21e内に収容するようにして床面に1枚ずつ順次設置する。この際、係合突片3と係合凹部4とを連結するようにして、隣接する案内誘導床マット10,20を連結する。電線5やLED光源6は
図5に示すように、1本の凸条11,21内のみに通すようにしてもよい。電線6は、床面Aに固定してもよいし、凹条11e,21eの内面に固定してもよい。
【0026】
上述したように、本発明に係る案内誘導ライン100は、目的地までの床面に連続してライン状に敷設されているので、建築物の利用者を迷うことなく目的地へ案内することができる。
【0027】
また、本発明の案内誘導ライン100は、上方へ突出する凸条11,21を備え、これを杖や足で辿ることができるので、視覚正常者だけでなく視覚障害者も誘導することができる。
【0028】
また、案内誘導ライン100の凸条11,21は、隣接する案内誘導床マット10,20間で高さや山の形が変わることなく連続しているので、案内誘導ライン100に沿って歩く歩行者が、凸条11,21の繋ぎ目で躓くことを抑制できる。隣接する案内誘導床マット10,20どうしで、凸条11,21が連結するので、横断体が通過する際の凸条の変形や振動を抑制できる。
【0029】
さらに、案内誘導床マット10,20は、凸条11,21の頂部が上方へ湾出する湾曲面からなるとともに両裾部が下方へ湾入する湾曲面からなり、両端E,Eを除いた全幅にわたり折線を備えないので、幅方向に横断する車椅子や歩行器等の車輪を有する横断体が受ける振動を抑制することができる。
【0030】
加えて、凸条11,21は隣接する案内誘導床マット10,20の凹条11e、21eに連通する凹条11e,21eを有するので、LED光源6や、これに電力を供給する電線5を通すことができ、このLED光源6の点灯によって、視覚正常者や弱視の歩行者にその位置を認識させたり、目的地へ誘導したりできる。
【0031】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る案内誘導床マット30,40を示している。案内誘導床マット30,40は、全体が不透明な樹脂等の素材により一体成型されている他は、第1実施形態の案内誘導床マット10,20と同形状である。
尚、第2実施形態以降の実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
(
参考形態)
図7、
図8は、本発明の
参考形態に係る案内誘導床マット50,60を示している。案内誘導床マット50,60は、それぞれ1本の凸条11,21のみからなり、平坦部は備えず、床面Aに凸条11,21のみが設置される。
本参考形態における凸条11,12は、幅方向に対称に形成され、両裾部11c,11cの湾曲面が同じ曲率半径r1を有している。
図9、
図10、及び
図11は、それぞれ
本参考形態の変形例に係る案内誘導床マット70,80,90を示している。
案内誘導床マット70は、
図9に示すように、凸条71内に凹条や貫通孔を備えず、中実に形成されている。
案内誘導床マット80は、
図10に示すように、凸条81上部に平坦面81aと、平坦面81aの幅方向の両端に外方へ湾出する湾曲面81b,81bと有している。
案内誘導床マット90は、
図11に示すように、凸条91内下部が長手方向の一部、又は全部で連結されて貫通孔91aが設けられている。
【0033】
以上、本発明にかかる案内誘導床マットは、上述した形態に限られるものではな
く、凸条
は、下面の凹条を備えなくてもよい。凹条の内側に、電線やLED光源に限らず電気部品を収容することもできる。本発明の案内誘導床マットは樹脂以外の材料で形成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
案内誘導ライン100
案内誘導床マット10,20,30,40,50,60,70,80,90
床面A
凸部(凸条)11,21,71,81,91
両裾部11c,11d
凹条11e
LED光源5
電線6
貫通孔 91a
【要約】 (修正有)
【課題】案内誘導床マットを横断する横断体の振動を、効果的に緩和する。
【解決手段】本発明は、歩行者に移動すべき方向や注意すべき位置の情報を提供すべく床面にライン状に連結して設置される案内誘導床マット10,20である。案内誘導床マット10,20は、床面Aに設置された際の上方へ突出する、又は複数の凸部を備え、凸部を含めた幅方向の断面における上縁が全幅にわたり、折点のない線からなり、凸部における当該上縁は、両裾部が下方へ湾入する湾曲線からなる。
【選択図】
図1