(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6842685
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】蒸気噴出用ホース
(51)【国際特許分類】
A01G 11/00 20060101AFI20210308BHJP
A01M 21/04 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
A01G11/00
A01M21/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-556332(P2020-556332)
(86)(22)【出願日】2020年1月31日
(86)【国際出願番号】JP2020003659
【審査請求日】2020年10月13日
(31)【優先権主張番号】特願2019-192007(P2019-192007)
(32)【優先日】2019年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397063109
【氏名又は名称】株式会社丸文製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆文
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−65574(JP,A)
【文献】
特許第3629231(JP,B2)
【文献】
国際公開第2019/189367(WO,A1)
【文献】
特開昭59−108(JP,A)
【文献】
特開2000−102918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 11/00
A01M 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層、外層及び中間層からなる樹脂製の円筒状ホースを扁平状にし、
その幅方向両端部に折目サイド部が長手方向に亘って形成された一体的な蒸気噴出ホースであって、
前記円筒状ホースは、
その内層がポリプロピレン樹脂、外層がナイロン樹脂、中間層がアドヘイシブポリオレフィン樹脂からなる三層樹脂を共押出によって形成されたものであり、
前記折目サイド部は、前記扁平化後にその幅方向両端部のみが圧延されて形成されたものであり、
前記折目サイド部の厚みT1は、折目サイド部以外の厚みT2よりも薄くなっていることを特徴とする蒸気噴出用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌を蒸気により加熱して園芸作物の病原菌、雑草の種子等を死滅させる土壌の蒸気消毒に用いる、蒸気噴出用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
わが国の施設園芸において、長きにわたり土壌消毒薬剤として使用されてきた臭化メチルがオゾン層を破壊する薬剤として禁止されたことに伴い、蒸気による土壌消毒法が広く行われている。
蒸気土壌消毒法は、極厚綿布製の筒状のキャンバスホースを土壌表面に敷設し、その布目から蒸気を噴出する方法である。
しかしながら、この極厚の綿布製のキャンバスホースは、円筒状に膨らむ際の抵抗が大きく、蒸気の噴出量が先端部で減衰し、大型園芸施設での需要に対応できていなかった。
また、綿素材であるため、濡れたり湿気が高くなったりするとカビ等による腐食が発生し易く、蒸気消毒後の乾燥、保管に手数を要していた。
本出願人は、上記の問題点を解決した「土壌の蒸気消毒用蒸気噴出ホース」を既に提案している(特許文献1)。
特許文献1には、厚さ約150μmの耐熱性を有する軟質合成樹脂シートにより、両側端部に長手方向全長に亘って延びる厚肉のサイド部を有するホース主体を設け、該ホース主体に直径約2.5mmの噴出孔を長手方向に所定の間隔で形成するとともに、該ホース主体の先端部を閉塞又は絞ったこと特徴とする土壌の蒸気消毒用蒸気噴出ホースが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3629231号公報(丸文製作所)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の蒸気噴出ホースにはまだ以下のような課題が残されている。
すなわち、蒸気噴出用ホースを引き摺って土壌の表面に布設・収納する際に土壌との摩擦で、ホースの外層に傷が入る。
とくに、扁平状に折り畳んだホースはその両端の折目サイド部が傷みやすく、蒸気を通したときにホースが膨張するとともに、折目サイド部からの蒸気漏れが生じやすい。
そこで、本発明は、上記課題を解決した新規な土壌の蒸気噴出ホースを提供することを目的とし、ホースに高温の蒸気を通した場合にも蒸気漏れが発生しない蒸気噴出ホースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するために、以下の如く構成した。
(1)本発明の蒸気噴出用ホースは、内層、外層及び中間層からなる樹脂製の円筒状ホースを扁平状にした蒸気噴出ホースであって、
その幅方向両端部には、上下のシートを密着させた折目サイド部が長手方向に亘って設けられていることを特徴とする。
(2)本発明の蒸気噴出用ホースは、上記(1)において、
前記内層がポリプロピレンからなり、前記外層がナイロンからなることを特徴とする。
(3)本発明の蒸気噴出用ホースは、上記(1)又は(2)において、
前記折目サイド部は、円筒状のホースを扁平状にして、その幅方向両端部を密着して形成されたものであることを特徴とする。
(4)本発明の蒸気噴出用ホースは、上記(1)乃至(3)において、
前記折目サイド部の厚みT1は、折目サイド部以外の厚みT2よりも薄くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の蒸気噴出ホースは、内層、外層及び中間層からなる樹脂円筒状ホースを扁平状にしたものからなり、その幅方向両端部には、上下のシートを密着させた折目サイド部が蒸気噴出ホースの長手方向に亘って設けられているので、蒸気噴出用ホースを引き摺って土壌の表面に布設・収納する際に土壌との摩擦で、ホースの外層に傷が入りにくく、蒸気を通したときにホースが膨張しても、折目サイド部からの蒸気漏れが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の蒸気噴出ホースの構成を示す断面図であり、(a)は長手方向を示し、(b)は幅方向の一部を示す。
【
図2】
図2は実施の形態の蒸気噴出ホースを示すホース長手方向平面図である。
【
図3】実施形態の三層の蒸気噴出ホースの製造方法を示す概略図である。
【
図4】実施形態の蒸気噴出ホースの使用例であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のX−X断面図である。
【
図5】蒸気噴出ホース6から噴出した蒸気が土壌に伝播する様子を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の蒸気噴出ホースの実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は蒸気噴出ホースの構成を示す断面図であり、(a)は長手方向を示し、(b)は幅方向の一部(図示において左側の一部)を示す。
図2は実施の形態の蒸気噴出ホースを示すホース長手方向平面図である。
【0009】
<蒸気噴出ホースの層構成>
図1(a)の長手方向断面図に示すように、蒸気噴出ホース10は、内層11、外層13及びそれらを接着する中間層12の三層で構成される。
三層で構成されるうちの内層11は、耐熱性を有する合成樹脂からなり、外層13は、土壌汚れ除去性や耐久性を有する合成樹脂からなり、中間層12は、内層11と外層13との接着性を有する合成樹脂からなる。
内層11の樹脂としては例えばポリプロピレン、外層13の樹脂としては例えばナイロン、中間層12の樹脂としては例えばアドヘイシブポリオレフィンが挙げられる。
内層11に用いるポリプロピレンは耐熱性に優れるため、蒸気噴出ホース10の内部を流れる高温蒸気に対しての耐久性がある。
外層13に用いるナイロンは耐薬品性に優れているため、蒸気噴出ホース10の外側に付着する油、カビなどの汚れを除去しやすい。
また、ナイロンは耐摩擦性に優れているため、地面を引き摺る布設・収納時において耐傷付き性に優れる。
【0010】
<厚み分布>
蒸気噴出ホースに厚みは、使用態様により適宜決定されるものであるが、実施の形態では、蒸気噴出ホースの各層の厚み分布は、高熱蒸気に直接さらされる内層を60%、外層を25%、中間層を15%とした。
しかし、この厚み分布は、使用態様により適宜変更可能である。
なお、実施形態の蒸気噴出ホース10の基本構成は三層であるが、耐熱性のよい内層樹脂と汚れ除去性のよい外層樹脂との組み合わせで、いずれかの層に接着性成分が含有されたものであれば、接着層としての中間層は省略することもできる。
【0011】
<蒸気噴出ホースの折目サイド部>
図1(b)の幅方向断面図、
図2の平面図に示すように、長尺筒状の蒸気噴出ホース10は、扁平状態に畳まれているとともに、その幅方向の両端部には密着一体化された折目サイド部15、15が長手方向に亘って形成されている。
この折目サイド部15は、蒸気噴出ホース10の扁平癖を促し、ホース収納時の巻き取り性を容易にする。
すなわち、ホースの両端に折目サイド部15を形成する理由は、蒸気噴出ホース10の収納時において、円筒形状のままでは巻き取りが難しく、折目サイド部15に扁平癖をつけ、この両端部に形成された折目サイド部15を基準として扁平状に畳むことにより巻取りが容易になるからである。
しかしながら一方で、蒸気噴出ホース10の布設・収納は地表面を引き摺りながら行われるため、折目サイド部15が傷付き易く、蒸気漏れにつながるおそれがあることから、
折目サイド部15の強度を増すために、上下のシートを密着して一体化させたのである。
なお、説明上、扁平状態のホースを、上のシート10a,下のシート10bとして示す(
図1(b)の断面図参照)。
この折目サイド部15は、上下のシート10a、10bを積層して貼り合わせたものではなく、もともと一体の円筒状のホースの両端部を密着して形成したものであるので、ホースに蒸気を導入して内圧がかかって膨張しても剥離することはない。
【0012】
<肉薄の折目サイド部>
図1(b)に示すように、この折目サイド部15は上下のシート10a,10bが密着されているので、折目サイド部15の厚みT1は、折目サイド部15以外の厚みT2よりも薄くなっている。
折目サイド部15は、シート10a,10bが密着されて空間を含まないが、折目サイド部15以外は蒸気を導入する部分なので、円筒癖の空間10cを残しているからである。
なお、折目サイド部15を肉薄とする理由は、蒸気噴出ホース10の布設・収納時においてホースの巻き取り性を容易にするためである。
このような折目サイド部15のみの密着一体化は、ホースの扁平化後に両端部のみを圧延することによって形成することができる。
詳しくは、後述の製造方法の説明の欄において記載する。
【0013】
<折目サイド部の幅>
折目サイド部15は、幅Wでホース長手方向に亘って帯状に形成されているが、その幅は特に規定するものではなく、導入する蒸気の圧力などによって適宜決定される。
【0014】
<蒸気噴出ホースの製造方法>
図3は、実施の形態の三層の蒸気噴出ホースの製造方法を示す概略図である。
この蒸気噴出ホースは、例えば、インフレーション法を用いた樹脂成型法によって製造する。
図3の製造方法に示すように、押出機A,B,Cの先端にリングダイスやクロスヘッドダイと呼ばれる環状のリップを持つ共押出金型20を設置し、樹脂を押し出して連続的に円筒状ホース21を成型する。
この場合、円筒状ホース21の構成が、内層、中間層及び外層となる異なった三層樹脂を吐出できるような共押出金型20を用意する。
共押出金型20の中央には孔が設置されており、ここから空気や水を吹き込んでホースを2〜3倍程度に膨張させて円筒状ホース21とするとともに、ピンチロール22で引っ張りながら円筒状ホース21を扁平状にするとともに、扁平状ホース23の両端部のみを圧延ロール24にて圧延密着させて折目サイド部15を形成して扁平状ホース23とし、一旦、リールに巻き取る。
共押出金型20のリング径や送り込む空気の圧力を調整することで円筒状ホース21の径を調整することができる。
また、押出機A,B,Cでの樹脂の吐出量と、ピンチロール22の引っ張り速度を調整することで円筒状ホース21の肉厚を調整することができる。
樹脂の押出し方向は上向きと下向きとがあるが、ポリプロピレン樹脂を押し出す場合は、設備の上部に共押出金型20を設置し下向きに押し出す。
これは、設備の簡易化や操作の容易化ができ、小さな共押出金型20を用いて大きな径の円筒状ホース21を製造できるからである。
【0015】
<噴出孔の形成>
実施形態の蒸気噴出ホース10においては、ホースから外部へ蒸気を噴出する噴出孔16が長手方向に複数形成されている。
本実施形態では、各噴出孔16は上下のシート10a,10bに対になるように形成されている。
これらの噴出孔16は、一旦、リールに巻き取られた扁平状ホース23を巻き戻した後、上下ロールでシート10a,10bを挟んだ状態にして、パンチング加工機等によって上方から下方にパンチを突き刺して、穴あけ加工して形成する。
なお、各噴出孔16の直径、形状、ピッチ、数、形成位置等は、ボイラの容量や土壌の種類等を判断して、パンチング加工制御装置に予めデータを入力することによって、適宜決定することができる。
【0016】
<使用例>
図4は本実施形態の蒸気噴出ホースの使用例である。
図4(a)斜視図、(b)断面図に示すように、消毒をしようとする土壌(例えば、畝)30の表面30aに、蒸気噴出ホース10を布設し、その基部10dを外部に設置したボイラー31に接続し、その先端10eは閉塞する。
その後、非通気性のポリエチレンなどのカバーシート32により土壌30及び蒸気噴出ホース10を被覆し、カバーシート32の上面に重し33を載せて消毒領域34を形成する。
【0017】
なお、
図5の概念図に示すように、ボイラー31で発生した蒸気が蒸気噴出ホース10の基部10dから導入されると、蒸気噴出ホース10は膨張し、高温蒸気が噴出孔16を介して外部に噴出され、カバーシート32と土壌30との間に充満し、土壌表面30a全域に熱前線が形成される。
蒸気の連続供給によって熱前線は土壌表面30aから下方に向かって伝播し、土壌30全体に亘って均一な温度分布で確実に消毒がされる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の蒸気噴出ホースは、メロンなどの周年栽培に伴う土壌伝染性病害の防止をはじめ、園芸、農業などに幅広く適用できる。
また、毒性がなく、人畜・近隣作物への害もなく、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0019】
10 蒸気噴出ホース
10a 上シート
10b 下シート
10c 円筒癖の空間
10d 蒸気噴出ホース基部
10e 蒸気噴出ホース先端
11 内層
12 中間層
13 外層
15 折目サイド部
16 噴出孔
20 共押出金型
21 円筒状ホース
22 ピンチロール
23 扁平状ホース
24 圧延ロール
30 土壌(畝)
30a 土壌表面
31 ボイラー
32 カバーシート
33 重し
34 消毒領域
A,B,C 押出機
T1 折目サイド部15の厚み
T2 折目サイド部15以外の厚み
【要約】
【課題】ホースに高温の蒸気を通した場合にも蒸気漏れが発生しない蒸気噴出ホースを提供すること
【解決手段】
内層11、外層13及び中間層12からなる樹脂製の円筒状ホース21を扁平状にした蒸気噴出ホース10であって、その幅方向両端部には、上下のシートを密着させた折目サイド部15が円筒状ホースの長手方向に亘って設けられている。
このような円筒状ホースにおいては、内層がポリプロピレンからなり、外層がナイロンからなることが望ましい。
また、折目サイド部は、円筒状ホース21を扁平状にして、幅方向の両端部を密着して形成されたものであることが望ましい。
また、折目サイド部の厚みT1は、折目サイド部以外の厚みT2よりも薄くなっていることが望ましい。
【選択図】
図1