(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記色差成分の小振幅成分をカットするノイズ軽減手段を含み、該ノイズ軽減手段は、前記イメージセンサにおける光電変換された画像信号のゲインの大きさに応じてカットする小振幅の値を適応的に制御することを特徴とする、
請求項5または6に記載のカラー画像撮像装置。
【背景技術】
【0002】
<カラー画像システム>
動画像に限らずカラー画像信号は、R(Red, 赤),G(Green, 緑),B(Blue, 青)の3原色により形成され、撮像や表示はこの形態で行われている。一方、伝送や記録のための形態は、輝度とふたつの色差により形成されるコンポーネントカラー信号が使われる。これらは3原色から所定の変換により得られ、さらに色差がサブサンプリングされる場合が多い。具体的には、サブサンプリングされない4:4:4、水平方向に2分の1にサブサンプリングされた4:2:2、水平と垂直の両方で2分の1にサブンサンプリングされた4:2:0がある。各動画像カラーフォーマットは、規格で詳細に定義されており、テレビ放送などで広く使われている。
【0003】
<カラー撮像>
カラー画像撮像では、R,G,Bそれぞれのイメージセンサを持つ3板方式と、一枚のイメージセンサでセル(画素)ごとにR,G,Bを振り分ける単板方式がある。3板方式は、近年特殊な存在になりつつあり、スチルカメラでは存在せず、動画像でも3860×2160画素の4K画像カメラでは、ほぼすべてが単板方式になっている。
【0004】
単板の場合、R,G,Bの各色フィルタを受光セル(画素)に配置するが、3種類のフィルタがなるべく同等で均一になるようにする。しかし、2次元的に3等分することは容易で無いので、
図1(a)に示されるようなBayer配列と呼ばれるものが一般的で、Gに半分を、RとBにそれぞれ4分の1を割り振る。Gの割合を他より多くするのは、Gの輝度成分に占める割合が最も高く、輝度信号の解像度を落とさないようにするためである。
【0005】
これと異なるものとしては、補色を用いたものがある。R,G,Bの代わりにシアン(Rの補色)C=G+B,マゼンタ(Gの補色)M=R+B,黄色(Bの補色)Y=R+Gを用いる。補色の色成分としては、R成分は(Y+M−C)/2,白色成分は(Y+C+M)/2なので、1/2倍されるので、撮像で生じた暗電流ノイズが軽減される。CCDセンサーにおいて、主にビデオカメラ用に使われていたが、補色フィルタの分光特性は、必ずしも理想的なものではないので色再現性が悪い。
図1(b)は、1色をGのままとしたもので、色再現性を改善したものであるが、4色になるので、解像度的には必ずしも有利でなくなる。
【0006】
また、R,G,Bに加えて白色(W)を用いたものも提案されている。その配置を
図1(c)に示すが、RとBはBayer配列と同じで、Gの半分がWに換えられている。Wフィルタは赤外及び紫外のみを除去した可視光をすべて透過するフィルタで、光エネルギーを有効に使えるので、補色フィルタと同様にノイズが軽減される。色再現性も良いので、近年注目されている。
【0007】
<色プレーン補間処理(デモザイキング)>
単板式カラー撮像装置では、イメージセンサから得られる画像(RAW画像)の各色は、セル(画素)が間引かれた状態になっているので、欠損画素を補間して全画素が揃った色プレーンを得る必要がある(例えば、特許文献1)。この欠損色補完処理は、デモザイキングと呼ばれている。基本的な処理としては、各色プレーンにおいて、その間引き構造に対応した2次元補間フィルタにより行う。Bayer配列の場合、GとR(B)で間引き構造が異なるので、補間フィルタは別のものとなる。この場合に、得られる解像度は間引き構造に応じたもので、2次元的にGで半分、R,Bでは4分の1となってしまう。
【0008】
改良された手法では、画像の局所形状に応じて適応的に補間を切り替えるものがある。適応処理がうまく機能すると解像度は改善するが、誤補間となる可能性がある。また、R,G,B各色間の相関を利用した方法もあり、色間の相関が高い、即ち彩度が低い画像において有効であるが、高彩度部分で誤補間となる危険性がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0020】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態の単板式カラー画像撮像装置について説明する。
図2に本実施形態の単板式カラー画像撮像装置が備える色フィルタとその配置を示す。なお、本実施形態の特徴は色フィルタであり、撮像センサにおける他の機能(光学系、色フィルタ以外のセル構造、データ転送方法など)は、通常の単板式カラー画像撮像装置と共通である。
【0021】
本実施形態の単板式カラー画像撮像装置では、R,G,Bカラーフィルタの代わりに、可視光全域の光をある程度透過させる淡色のカラーフィルタを用いる。具体的な色は、R,G,Bに白色成分が加算され、淡色となったP(Pink),L(Light Green),S(Sky Blue)となる。淡色カラーフィルタPは、第1の原色成分(R成分)をその余の原色成分(G成分,B成分)よりも多く透過させ、淡色カラーフィルタLは、第2の原色成分(G成分)をその余の原色成分(R成分,B成分)よりも多く透過させ、淡色カラーフィルタSは、第3の原色成分(B成分)をその余の原色成分(R成分,G成分)よりも多く透過させる。R,G,BからP,L,Sへの変換マトリックスは、淡色カラーフィルタにおけるR,G,B各成分の光の透過程度であるが、淡色カラーフィルタにおいて、最も多く透過させる原色以外の二つの原色成分の透過率をwとして、次の変換行列式で表わされる。
【0023】
ここで、他色をすべての透過させる色の半分、すなわちw=0.5とすると、次式のようになる。
【0025】
従来のR,G,Bのまま(w=0)と比較すると、使われるR,G,B成分は2倍になる。本実施形態の特徴をより強くする場合は、W成分を多くし、例えばw=0.75とする。逆に、W成分を少なくし、例えばw=0.25とすると、従来のR,G,Bのままに近づく。
【0026】
<色フィルタ配置>
図2に本実施形態の色フィルタ配置を示す。
図2(a)に示すPLSL配置は、ベイヤー配置のR,G,Bを、そのまま白色成分を加え、P,L,Sとしたもので、Lが1/2で,PとSがそれぞれ1/4存在する。wの値が小さく、比較的従来型に近い処理の場合は、この配置が妥当である。
【0027】
図2(b)に示すPLPS配置は、PとLを入れ替えたもので、Pが1/2で、Lが1/4となる。R,G,Bでは、輝度に多く含まれるGの割合を増やし、輝度の解像度を維持していたが、P,L,Sでは、白色が全画素にあるので、Gを多くする必要性が薄れるためである。
【0028】
図2(c)に示すPLSW配置は、PLSLに対して片方のLを白色Wにしたもので、
図1(c)に示した従来のRGBWでWはそのままで、R,G,BをP,L,Sにしたものとも言える。白色Wは、Lでw=1.0としたとも見れる。前述のようにLを多くする必要性が薄れているので、Wとしてしまうことで、wの平均値を上げることになる。
【0029】
<逆変換と特性>
カラー画像としては、最終的にR,G,B信号が必要となるが、P,L,SからR,G,Bへの変換は、輝度色差信号からRGB信号への変換などと同様に、マトリックス演算で実現できる。これはR,G,BからP,L,Sへの変換の逆変換であり、(1)式に対応するものは次式で表される。
【0031】
w=0.5の場合、すなわち(2)式の逆変換は、次式で表される。
【0033】
このようにして得られたR,G,B画像信号は、基本的に従来のR,G,B画像信号と同等であるが、撮像で生じるノイズが画質に与える影響において特徴を持つ。具体的には、輝度成分に近いW(白色)成分が多くなるので、輝度成分に含まれるノイズが軽減される。w=0.5の場合の具体例を示すと、白色成分Wは、次式となり、P, L, Sの和を半分にすることで得られる。
【0035】
これは、従来のR,G,B撮像と同じノイズがP,L,Sのセルで生じた場合、Wでのノイズは半分になることを意味する。P, L, SからWへ変換ゲインをG
Wとすると、wとの関係は、次式となり、wが大きい程、ノイズ軽減効果は高くなる。
【0037】
一方、w=0.5の場合の色差成分は、R-Gを例にすると、次式となり、信号成分と共にノイズも2倍になる。
【0039】
これを変換ゲインG
Cとすると、wとの関係は、次式となり、w が1.0に近い値は現実的でないことが分かる。
【0041】
色差成分誤差に対する視感度は、輝度成分誤差に対する視感度よりかなり低いので、w < 0.5での画質は、そのままでも視覚特性に適合する。また、高い空間周波数に対する色感度は、色差成分に関して大幅に低いので、色差成分にノイズ軽減処理を適用することを前提にすると、w > 0.5も可能になる。
【0042】
<現像処理>
次にRAW画像データからR,G,B画像データを得るまでの現像処理について説明する。
図3に本実施形態の単板カラー画像撮像装置の機能ブロックを示す。イメージセンサ1の各受光セルの上述した淡色カラーフィルタを配置してなるカラー画像撮像素子で得られた各セルの光電変換値(RAW画像データ)は、デモザイキング2に与えられる。デモザイキング2は、一般的なR,G,Bに対する処理と同様にP,L,S等の各色プレーンの欠損画素を補間して、全画素の揃った各色プレーンを出力する。本実施形態では、補間処理は固定の線形フィルタにより行う。補間された信号を直ぐにR,G,Bに変換して出力しても良いが、成分ごとの処理を施すことで、本実施形態の効果をより高めることができる。
【0043】
補間されたP,L,S等の各色プレーン信号は、淡色マトリックス3に与えられる。淡色マトリックス3は、白色成分W,色差成分R-W,色差成分B-Wの3成分への変換を行う。この処理は、R,G,Bへの変換とW形成及び減算処理を同時に行なうことになるが、R,G,Bへの変換の係数を変更するのみで実現できる。なお、W,R-W,B-Wは、白色Wを輝度Yとして、Y,R-Y,B-Yでも良い。
【0044】
変換されたW信号はW補正器4へ、R-W信号はR-W補正器5へ、B-W信号はB-W補正器6に与えられる。各補正器は、各信号に適した補正が行なわれるが、R-W補正器5とB-W補正器6では、W補正器4で補正されたW’信号も使われる。W補正器4では、デモザイキングでの周波数の劣化分を補う形での鮮鋭化処理を行う。R-W補正器5とB-W補正器6では、エッジであるWの大きな変換点では、Wと相似の急峻化処理を、その他の部分では平坦化処理を行なう。補正されたW信号、R-W信号、B-W信号は、原色マトリックス7に与えられる。原色マトリックス7は、R,G,Bへの変換を行うが、これはR=(R-W)+W、G=W-R-B、B=(B-W)+Wで実現できる。得られたR,G,B信号は、R信号出力8、G信号出力9、B信号出力10より出力される。
【0045】
<淡色カラーフィルター>
本実施形態を実現するためには、上述した淡色のカラーフィルタが必要になる。通常のカラーフィルタは、透明フィルム素材に染料を染み込ませるなどして作られ、透過における分光特性により、そのフィルタの色が決まる。現在のR,G,Bのカラーフィルタを、淡色(P,L,S)化するには、安易な方法としては、染料の量を減らして阻止される光の量を減らすことにより実現される。しかし、通常は抑圧される波長(色)について、完全に均一の特性でなくても、十分抑圧されていれば問題無いが、半分程度も透過させる場合は、透過率の違いが問題になる。例えばRをPにした場合、波長が近いGより波長が遠いBの方が、減衰は大きくなりやすい。この様な、フィルタ特性の理想との乖離に対する対策が必要になる。ここでは、3種類の方法を示す。
【0046】
第1の方法は、マトリックスの変更である。透過率のばらつきが顕著でない場合は、それを許容し、変換マトリックス自体が、その特性のものとする。この場合の式は、次式のように少し異なったWが存在することになる。
【0048】
逆変換は、この行列に対して求めるので、R,G,Bは逆変換により適正に得られる。ただし、各Wはセンサにより変化することになるので、逆変換では固有のWが必要になる。
【0049】
第2の方法は、染料の調整で、極力一定のWを得る手法である。先の例のようにGの透過率がBより高い場合、透過率を高めることはできないので、Gの透過率をさげるため、Gのみを抑圧する色(マゼンタ)の染料を僅かに追加する。
【0050】
第3の方法は、白色フィルタ(つまりフィルタなし)を、空間的にある程度の面積で設ける方法である。この様子を
図4に示す。最も簡単なのは、
図4(a)に示すように、左右分割で、1セル(画素)において左右の左半分のみにR,G,Bフィルタを設け、残り半分を白色フィルタとする。この場合、光学フィルタにより1セル内の光の変化は抑圧されているが、完全に均一になっている訳では無いので、若干のアンバランスを生じる。なお、左右で無く、上下や斜めに分割しても良いが、同様の問題は残る。
【0051】
少なくとも上下左右にバランスが取れる方法としては、
図4(b)に示すように、中央部分のみにセルより小さいフィルタをおく方法、また、
図4(c)に示すように、中央部分に穴を開けてフィルタ無しとする方法もある。いずれの場合も、各セルでは中央に集光されるので、中央部の面積は、中央を除いた周辺部より小さくなる。また、フィルタ無しでは、可視光外も受光してしまうので、白色フィルタを設けるのが望ましいが、フィルタの無い部分のみにする必要は無く、セル全体を覆うように白色フィルタを設けても構わない。
【0052】
<第2の実施例形態>
本発明の第2の実施形態の単板式カラー画像撮像装置について説明する。
図5に本実施形態の色フィルタとその配置を示す。なお、本実施形態と上述した第1の実施形態との違いは色フィルタであり、他は共通である。本実施形態では、第1の実施形態で用いた原色系淡色カラーフィルタの代わりに、可視光全域の光を透過させるフィルタであって、3種類の原色成分のうち1の原色成分のみの透過率を減じた補色系淡色カラーフィルタを用いる。具体的な色は、白色からRを減じたものは明るいシアンでA(Aqua)、Gを減じたものは明るいマゼンタでV(Violet)、Bを減じたものは明るい黄色でE(Lemon)とする。補色系淡色カラーフィルタAは、第1の原色成分(R成分)をその余の原色成分(G成分,B成分)よりも少なく透過させ、補色系淡色カラーフィルタVは、第2の原色成分(G成分)をその余の原色成分(R成分,B成分)よりも少なく透過させ、補色系淡色カラーフィルタEは、第3の原色成分(B成分)をその余の原色成分(R成分,G成分)よりも少なく透過させる。なお、Lemonは、第1の実施形態でLight GreenをLとしたので、区別するために2文字目のEとする。R,G,BからA,V,Eへの変換マトリックスは、第1の実施形態で用いた原色系淡色フィルタと同様にR,G,B各成分の光の透過程度であるが、補色系淡色カラーフィルタにおいて、各原色成分の透過に対して透過が減らされる(阻止される)割合をc(color)として、次の変換マトリックスで表わされる。
【0056】
減じる割合を増やしてc=2/3とすると次式になる。
【0058】
なお、c=1とすると、純粋な補色フィルターになる。
【0059】
図5に本実施例形態の色フィルタ配置を示す。
図5(a)に示すAVEV配置は、ベイヤー配置のR,G,Bを、そのままA,V,Eとしたもので、Vが1/2で、AとEがそれぞれ1/4存在する。
図5(b)に示すAWEW配置は、Vを白色Wにしたもので、変換式は次式に変わる。
【0061】
これは、白色と白色に2種類の色差を加えたもので、輝度色差信号Y,Cb,Crと似た形になっている。
【0062】
A,V,EからR,G,Bへの変換で、(10)式に対する逆変換の一般式は、次式の変換マトリックスで表わされる。
【0064】
c=0.5とした(11)式に対応する逆変換は、次式になる。
【0066】
c=2/3とした(12)式に対応する逆変換は、次式になる。
【0068】
A,V,EからWへ変換ゲインG
Wとcの関係を示すと、次式となり、cが小さい程ノイズ軽減効果は高くなる。
【0070】
一方、色差成分の変換ゲインG
Cとcの関係は、次式となり、c が0に近い値は現実的でないことが分かる。
【0072】
G
W, G
Cを第1の実施形態と比較すると、第1の実施形態ではw=0.5でG
W=1/2, G
C=2となるのに対し、第2の実施形態のc=0.5では、G
W=1/2.5, G
C=2となり、同一G
CでG
Wがより小さくなるので、ノイズ軽減効果上有利となる。これは、一般的な原色フィルタと補色フィルタの特徴と同一傾向であり、この点では補色フィルタが優れるが、分光特性の点では原色フィルタが優れるので、単純に優劣は決められない。
【0073】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態の単板式カラー画像撮像装置について説明する。
図6は、本実施形態の単板式カラー画像撮像装置の機能ブロックを示したものである。本実施例形態は、より画質を高めるための画像信号処理を追加したもので、イメージセンサ1と淡色カラーフィルタからなるカラー画像撮像素子の構成は、第1の実施例形態や第2の実施例形態と同じである。
【0074】
本実施形態は、RAW画像に対する直接フィルタリングで、W成分の周波数特性を重視したデモザイキング処理を実現するものである。本実施形態では、イメージセンサの全画素にW成分を持つので、RAW画像の周波数成分は、低い周波数帯域にW成分が、高い周波数帯域に色差成分が存在する。スペクトルの広がり方としては、
図8(a)に示すように、W成分は広く、色差成分は狭い。これに合わせた空間フィルタでW成分と色差成分を分離することで、広帯域のW成分を得ることができる。ただし、高周波数成分除去で得られるのは純粋な白色成分ではなく、
図2(a)に示すPLSL配置の場合はLのセル数が他の2倍あるので、その成分W
lは次式のようになる。
【0076】
Gが(1-w)/4だけ他より多いので、W
lは若干輝度に近いものになる。
【0077】
RAW画像の2次元周波数スペクトルを
図7に示す。
図7において、μは水平周波数, νは垂直周波数で、末端はイメージセンサのセル数で決まる最高周波数である。スペクトルにおいて、DC(μ=0, ν=0)成分はW
lである。μ, ν軸上の高い周波数に、W
lに対するP,Sの差分すなわちR,B色差成分Cr=R-W
l , Cb=B-W
lがあり、μ, ν共に高い周波数となる部分には、さらにW
lに対するL差分すなわちG色差成分Cg=G-W
lがある。3成分すべてある場所は、単にCと示されている。スペクトルの広がりは、W
lがCは狭いので、2次元フィルタでW
lを分離する場合のカットオフ(半減)周波数は、
図8(b)に示す点線のようになる。なお、フィルター色や配列を変えても、スペクトルの概要は変化しない。
【0078】
本実施形態では、W成分とC成分が多重化されているので、分離に伴うクロストークが問題となる。エッジなどでは、W成分のスペクトルが広がり、高い周波数成分がCに混入する。最高周波数にまで達すると、偽色を生じる可能性があるので、最高周波数成分は光学フィルタで除去されるのが望ましい。一方、C信号が急峻に変化している部分では、色差の高い周波数成分がW成分に混入し、形状歪となる。しかし、W信号もエッジである可能が高く、W信号の高い周波数への混入となるので、視覚的には分かり難い。
【0079】
図6に示す機能ブロックに基づいて、本実施形態の単板式カラー画像撮像装置が実行する処理について説明する。イメージセンサ1で得たRAW画像データは、WC分離器11に与えられる。WC分離器11は、画像の部分ごと色差成分のスペクトル状況を掌握し、W(白色)成分と比較してC(色差)成分が弱い場合はW広帯域とし、Cが強い場合はC広帯域とする。分離フィルタ(空間フィルタ)のカットオフ周波数は、WにおいてW広帯域が全帯域の85%、C広帯域が50%とする。これは8タップ程度の可変型のLPF(ローパスフィルタ)で、垂直及び水平の分離型処理とする。すなわち、WC分離器11は、W成分に対するC成分の相対量に応じてLPFのカットオフ周波数を適応的に制御する。そして、C信号は、LPFを通過したW信号と元RAW画像の残差により得る。
【0080】
Cスペクトルの検出は、当然Cの帯域であるが、DC成分は通過させないので、比較的帯域は狭いものになる。検出値は、Wのスペクトルと比較される。あらかじめ中程度のフィルタ特性でWとCを分離しておくと、W,Cそれぞれの検出は容易になる。これらのフィルタの特性を1次元で
図8(b)に示す。
図8(b)の横軸は正規化された水平周波数で、1.0はセル画素数で決まる最高周波数である。
【0081】
WC分離器11で分離されたW信号は、そのまま使うことができる。一方、C信号は、色差復調器12で高い周波数成分からベースバンドに変換される。これは、各色成分に対する変調のキャリアに相当する信号を乗じて復調する。または、通常のデモザイキングと同様に、各成分の画素のみを用いて補間しても良い。得られたR-W信号とB-W信号は、波形補正ノイズ軽減器13に与えられる。
【0082】
波形補正ノイズ軽減器13は、
図3に示したR-W補正器5やB-W補正器6と同様な補正処理と共に、ノイズ軽減を行なう。この処理は、一般的な非線形低域通過フィルタで、小振幅成分のみ低域通過フィルタを通過させるものである。その際、フィルタの強さとなる小振幅の値(非線形特性)を、イメージセンサ1での光電変換された画像信号の増幅度(ゲイン)により制御する。本来イメージセンサの各セルで暗電流により生じるノイズは変わらないので、ゲインが高いとそれだけノイズも増幅される。従って、ゲインに比例してフィルタを作用させる小振幅の値も大きくする。すなわち、波形補正ノイズ軽減器13は、イメージセンサ1における光電変換された画像信号のゲインの大きさに応じてカットする小振幅の値を適応的に制御する。
【0083】
このような処理を、γ補正後のR,G,Bやそれから形成された色差信号に施した場合、高彩度部分で輝度信号の周波数特性劣化を招き、画質が低下する。これは、非線形変換であるγ補正により、輝度信号成分の一部が色差信号として伝送されるためで、彩度が高い程、通過帯域が狭い程顕著になる。しかし、本来の色差成分に対する視感度は、輝度より遥かに低いので、γ補正を行なう前に帯域制限すれば、前記のような輝度成分の劣化は生じない。また、色差信号は基本的に変化が少ないので、非線形フィルタによるノイズ軽減の効果は高い。
【0084】
この様に処理されたR-W信号とB-W信号は、原色マトリックス7に与えられる。原色マトリックス7は、第1の実施形態と同様なものであり、W,R-W,B-WをR,G,Bへと変換する。変換されたR信号はγ補正器14に、G信号はγ補正器15に、B信号はγ補正器16に与えられる。γ補正器14,15、16では、ガンマ補正(y = x
0.45)の処理が行われる。ガンマ補正されたR,G,B信号は、R信号出力8、G信号出力9、B信号出力10より出力される。ガンマ補正は動画像では規格上必要な処理であるが、本実施例ではγ補正の前にノイズ軽減処理を行なうのが特徴である。
【0085】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうるその他の実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。