特許第6842717号(P6842717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842717
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】義歯作製用の焼結ブランク
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20210308BHJP
   A61C 13/003 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A61C13/00 Z
   A61C13/003
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-500660(P2018-500660)
(86)(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公表番号】特表2018-521760(P2018-521760A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】EP2016064150
(87)【国際公開番号】WO2017021051
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年4月16日
(31)【優先権主張番号】15002303.4
(32)【優先日】2015年8月3日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515233568
【氏名又は名称】アマン ギルバック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリバー アマン
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 独国実用新案第202014010392(DE,U1)
【文献】 特表2010−528731(JP,A)
【文献】 特表2002−536279(JP,A)
【文献】 特開2010−022837(JP,A)
【文献】 特開2006−163370(JP,A)
【文献】 特開平08−253366(JP,A)
【文献】 特開昭56−160380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00
A61C 13/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ビーズ(14)および支持粉末のうち一方または両方から構成される流動性ベッド(13)と、義歯が製造される少なくとも1つの製品範囲(2)と、前記製品範囲(2)を支持するための少なくとも1つの焼結補助部材(3)と、連結ブリッジ(4)と、を備え、前記焼結補助部材(3)が前記連結ブリッジ(4)を介して前記製品範囲(2)に連結されている、前記義歯を製造するための焼結ブランク(1)と、を備えている焼結装置であって、
前記焼結ブランク(1)が前記ベッド(13)に載置され、
前記焼結補助部材(3)が、少なくとも部分的に湾曲した支持面(5)を有し、
前記焼結補助部材(3)の前記製品範囲(2)および前記湾曲した支持面(5)がベッド(13)に埋め込まれていることを特徴とする焼結装置。
【請求項2】
請求項1記載の焼結装置において、前記焼結補助部材(3)が、前記湾曲した支持面(5)のうち一部のエリアまたは全てのエリアにおいて凸状の横断面を有することを特徴とする焼結装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の焼結装置において、前記焼結補助部材(3)が、前記湾曲した支持面(5)のうち一部のエリアまたは全てのエリアにおいて、少なくとも2つの直交する方向(16)(17)または全方向において凸状の横断面を有することを特徴とする焼結装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、前記焼結補助部材(3)が、中央部(6)において周辺部(8)よりも大きな厚さを有することを特徴とする焼結装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、前記連結ブリッジ(4)が、前記焼結補助部材(3)の周辺部(8)に挿入されていることを特徴とする焼結ブランク。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、前記焼結補助部材(3)が、前記湾曲した支持面(5)のうち一部のエリアまたは全てのエリアにおいて、少なくとも2つの直交する方向(16)(17)または全方向において凸レンズ形状の横断面を有することを特徴とする焼結装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、前記焼結補助部材の(3)の最大厚さ(7)が、前記連結ブリッジ(4)の最小厚さ(10)の6倍以下または4倍以下であることを特徴とする焼結装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、前記製品範囲(2)が、U字形状であり、付加的または代替的に、相互に連結された複数の義歯ブランク(11)または対をなして連結された義歯ブランク(11)を有する完全な歯列弓であり、
前記焼結補助部材の(3)が、前記連結ブリッジ(4)のそれぞれを介して当該歯列弓の少なくとも2つの前記義歯ブランク(11)に相互に連結されていることを特徴とする焼結装置。
【請求項9】
請求項8記載の焼結装置において、前記歯列弓が内部空間(8)を部分的に取り囲み、前記焼結補助ボディ(3)および前記連結ブリッジ(4)のうち少なくとも一方が、少なくとも部分的に前記内部空間(12)に配置されていることを特徴とする焼結装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、前記焼結ブランク(1)が、セラミック材料または酸化ジルコニウムを含み、あるいは、セラミック材料または酸化ジルコニウムからなることを特徴とする焼結ブランク。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、前記焼結ブランク(1)が、一体的に形成され、単一の材料ブロック(22)から機械加工され、あるいは、前記製品範囲(2)と前記焼結補助部材(3)と前記連結ブリッジ(4)とが同一材料で一体的に形成されていることを特徴とする焼結装置。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、
前記焼結補助部材(3)が、少なくとも部分的に湾曲した単一の支持面(5)を有していることを特徴とする焼結装置。
【請求項13】
請求項1〜12のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、
前記焼結補助部材(3)が、前記支持面(5)が全体的に湾曲していることを特徴とする焼結装置。
【請求項14】
請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の焼結装置において、
前記焼結補助部材(3)の前記製品範囲(2)および前記湾曲した支持面(5)が前記ベッド(13)に部分的に埋め込まれていることを特徴とする焼結装置。
【請求項15】
請求項1〜14のうちいずれか1項に記載の焼結ブランク(1)が、焼結されている間、支持ビーズ(14)および支持粉末のうち一方または両方から構成される流動性ベッド(13)に載置され、前記焼結補助部材(3)の前記製品範囲(2)および前記湾曲した支持面(5)が前記ベッド(13)に載置され、付加的または代替的に、前記ベッド(13)に部分的に埋め込まれていることを特徴とする焼結方法。
【請求項16】
デジタルデータ処理装置(15)において、請求項1〜14のうちいずれか1項に記載の焼結ブランク(1)を構築するためのコンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項16記載のコンピュータプログラムを用いて構築された焼結ブランク(1)を製造する方法であって、前記焼結ブランク(1)の構築に際して、前記デジタルデータ処理手段(15)から少なくとも1つのデータセットが読み取られ、当該データセットに基づき、材料構築方法および材料除去方法のうち少なくとも一方またはフライス加工方法のうち少なくとも1つにしたがって前記焼結ブランク(1)を製造することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義歯が製造される少なくとも1つの製品範囲と、前記製品範囲を支持するための少なくとも1つの焼結補助部材と、連結ブリッジと、を備え、前記焼結補助部材が前記連結ブリッジを介して前記製品範囲に連結されている、前記義歯を製造するための焼結ブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
義歯を製造するため、未焼結または部分的に焼結された状態で焼結ブランクが成形加工され、その後で当該焼結ブランクが焼結または最終焼結されることによって義歯が作製されることが従来技術で知られている。完全に焼結された材料が処理される場合と比較して、焼結前または部分的に焼結された状態の材料が非常に柔らかく加工が容易であるという利点を有する。しかしながら、焼結過程において、焼結ブランクの特定の収縮が避けられないことに留意されたい。特に焼結ブランクは、焼結過程において一時的にまだ非常に高い温度での非常に柔らかく望ましくない変形が生じやすい。
【0003】
サイズを制御しながらセラミック成形体を焼成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。義歯が構築される焼結ブランクの製品範囲が、支持部材という焼結補助部材を有する連結ブリッジによって連結され、当該焼結補助部材が、流動性がある粉末ベッドに載置される平坦面を有する。特許文献1の図8に示されている、義歯を構築する製品範囲が連結ブリッジにより支持されることで連結され、これにより焼結過程において焼結ブランクに望ましくない変形が生じる可能性がある。
【0004】
収縮時に変形が生じさせないように、焼結過程において焼結体が耐熱性ボールに支持されることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。焼結過程においてセラミック部品からなるベッドに焼結対象物を埋め込むことが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許公報 EP1154969B2
【特許文献2】米国特許公報 US3904352A
【特許文献3】欧州特許公報 EP0583620A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記従来技術における焼結ブランクを改良し、その後の焼結過程のために支持ビーズまたは支持粉体からなる流動性ベッドに簡単に載置可能な焼結ブランクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的は、前記焼結補助部材が、好ましくは単一の少なくとも部分的に湾曲した支持面を有することを特徴とする本発明の焼結ブランクにより達成される。
【0008】
焼結補助部材の湾曲支持面により、焼結ブランクが焼結過程に先立って支持ビーズおよび/または支持粉末からなる流動性ベッドに非常に簡易かつわずかな力で載置されうる。湾曲支持面があるため、焼結ブランクの載置または埋め込みの前に、特別な流動性のあるベッドまたはその上面形状を調整する必要がない。焼結補助部材の湾曲支持面によって、焼結ブランクは製品範囲において、非常に弱い力および労力でベッドに載置されあるいはベッドに埋め込まれる。焼結補助部材の湾曲支持面に起因して、この過程における支持ビーズまたは支持粉末の非常にわずかしか動かされない。弱い力を使用しなければならないため、焼結ブランクがこの過程において意図せず変形する危険性が低減される。本発明に係る焼結ブランクは、流動性ベッドの比較的平坦な上面に載置されうる。焼結過程において焼結ブランクの不十分な支持により生じる、流動性ベッドにおける不安定な勾配が形成されるリスクが大幅に低減または回避される。焼結補助部材の湾曲支持面によって、焼結過程における焼結補助部材および流動性ベッドの間の摩擦が少ないため、焼結過程における焼結ブランクの歪みのない収縮にとって好ましい。
【0009】
焼結補助部材の湾曲支持面により連結ブリッジに対するアクセシビリティがよくなるため、焼結過程の後で連結ブリッジが連結されていた製品範囲から容易に取り外される。
【0010】
焼結補助部材の支持面の湾曲形状により、焼結補助部材が比較的小さくまたは平坦かつ製品範囲と比較して匹敵する容量で形成され、これにより焼結ブランクの加熱および冷却過程における熱収縮が抑制される。各遷移領域における過度な体積の差に起因する熱応力の結果として、焼結過程において連結解除を回避するため、焼結補助部材および連結ブリッジの間の理想的な遷移は、本発明に係る措置によって達成される。
【0011】
焼結ブランクは、グリーン体とも呼ばれる。いずれにしても、後続の焼結工程によって完全に硬化する物体である。焼結ブランクは、完全に焼結されていなくてもよく、または部分的に焼結されてもよく、焼結されてもよい。焼結ブランクの製品範囲は、焼結過程および必要な後加工過程によって義歯が製造される部分である。焼結補助部材および連結ブリッジにより、焼結過程における焼結ブランクの歪み、特に製品範囲の歪みを回避するための補助構造または支持構造が構成されている。当該補助構造は、焼結補助部材および連結ブリッジの連結と同様に、焼結過程の後で除去される。これは、連結ブリッジが製品範囲から分離することによって行われる。焼結補助部材は、好ましくは、連結ブリッジを用いて製品範囲のみに連結される。
【0012】
焼結補助部材の湾曲支持面は、焼結過程において流動性ベッドに載置される際に機能する。支持面の曲率は焼結補助部材の周辺部において形成されることが好ましい。湾曲支持面が、単一の湾曲部分である。焼結補助部材は、正確に湾曲した支持面を有することが好ましい。湾曲支持面は、焼結過程において流動性ベッドに対向する焼結補助部材の下側全体にわたり延在している。機能を損なうことなく、焼結補助部材の中央部に、湾曲支持面または平坦もしくは多少は平坦な部分を有していてもよい。湾曲支持面の湾曲態様は、縁部および角部がなくても好都合に形成される。前記焼結補助部材が、前記湾曲した支持面のうち少なくとも一部のエリアにおいて凸状の横断面を有することが好ましい。前記焼結補助部材が、前記湾曲した支持面のうち全てのエリアにおいて凸状の横断面を有することが好ましい。焼結補助部材が、対応する凸状の横断面を有することが好ましい。本発明の好ましい実施態様において、前記焼結補助部材が、前記湾曲した支持面のうち一部のエリアまたは全てのエリアにおいて、少なくとも2つの直交する方向または全方向において凸状の横断面を有する。
【0013】
前記焼結補助部材は、その中央分において、周辺部、好ましくはすべての他の部分よりも大きな厚さを有する。連結ブリッジは、焼結補助部材の周辺部においてのみ挿入されている。前記焼結補助部材の最大厚さが、前記連結ブリッジの最小厚さの6倍以下であり、好ましくは4倍以下である。すべての厚さは厚さの全ては、互いに平行に測定され、特に好ましくは、製品範囲により形成された咬合平面に対して垂直に測定される。
【0014】
好ましい実施態様において、焼結補助部材は、湾曲支持面の一部のエリアにおいて少なくとも一の凸レンズ状の横断面を有している。特に好ましい実施形態では、これは、少なくとも2つの互いに直交する空間方向の横断面についても適用される。これは、焼結補助部材の全体に適用されていることが特に好ましい。
【0015】
製品範囲により、相互に接続された複数の義歯ブランクを有する歯列弓が構成される。焼結補助部材は、好ましくは当該歯列弓の少なくとも2つの義歯ブランクを少なくとも1つの連結ブリッジを介して接続する。配列された義歯ブランクは、好ましくは対になって接続される。義歯ブランクのそれぞれが、その隣接する義歯ブランクに連結されていることを意味する。上顎または下顎のための完全な歯列弓または総入歯を提供するため、製品範囲によりすべての必要な義歯ブランクが提供されてもよい。歯列弓は、必ずしも上顎または下顎のために必要なすべての義歯ブランクのすべてが含まれていない部分義歯または部分入歯であってもよい。歯列弓は、その曲率に関して、上顎または下顎の歯の自然な並びに基づいて適当にモデル化される。歯列弓はU字形状または馬蹄形状の曲線により簡略化できる。好ましくは、前記歯列弓が内部空間を部分的に取り囲み、前記焼結補助部材および/または前記連結ブリッジが、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に前記内部空間に配置されている。
【0016】
基本的に、焼結ブランクは、義歯の製造に適したあらゆる焼結可能な出発材料から作製されうる。この材料は金属材料であってもよい。本発明に係る焼結ブランクは、特に好ましくはセラミック材料、好ましくは酸化ジルコニウムを含んでいる。特に好ましくは、焼結ブランクは、そのようなセラミック材料、好ましくは酸化ジルコニウムからなる。
【0017】
製品範囲、焼結補助部材および連結ブリッジは、同じ材料から一体的に形成されることが好ましい。焼結ブランクが一体成形体であることが好ましい。特に好ましくは、焼結ブランクは、単一の材料ブロックから機械加工されている。焼結ブランクが単一材料から形成されていることにより、焼結過程において製品範囲、焼結補助部材および連結ブリッジが同じ程度に収縮し、焼結ブランクのひずみを生じさせない。材料は好ましくは均質な混合材料であってもよい。
【0018】
本発明は、支持ビーズおよび/または支持粉末から構成される流動性ベッドを備えている焼結装置に関する。本発明に係る焼結装置によれば、本発明に係る焼結ブランクが前記ベッドに載置され、前記焼結補助部材の前記周辺部および前記湾曲した支持面がベッドに載置され、かつ/または、前記ベッドに好ましくは部分的にのみ埋め込まれている。製品範囲および焼結補助部材の湾曲支持面が載置されることにより、製品範囲および焼結補助部材のそれぞれの重みがベッドに対して直接作用する。製品範囲の重みは焼結補助部材に作用せず、その逆も同様である。これは歪みがない焼結にとって有利である。適切な支持ビーズまたは適切な支持粉末は当該技術分野において知られている。これらは焼結ビーズまたは焼結粉末とも呼ばれる。好ましい実施態様において、支持ビーズは、焼結過程において焼結ブランクには影響を与えず、かつ、焼結ブランクに付着しない不活性セラミック材料からなる。個々のビーズが視認可能である限り、支持ビーズと呼ばれる。より小さいサイズのものは支持粉末と呼ばれる。個々の支持粉末または支持ビーズは好ましくは丸みを有している。それらは球形であってもなくてもよい。
【0019】
本発明は、本発明に係る焼結ブランクの焼結方法に関し、当該方法によれば、焼結ブランクが、焼結されている間、支持ビーズおよび/または支持粉末から構成される流動性ベッドに載置され、前記焼結補助部材の前記周辺部および前記湾曲した支持面がベッドに載置され、かつ/または、ベッドに好ましくは部分的にのみ埋め込まれている。焼結方法は、特に、製品範囲および焼結補助部材の湾曲支持面のベッドへの載置に関して、前述した対応する焼結装置に適用される。
【0020】
好ましい変形態様において、本発明に係る焼結ブランクは、デジタル的に構成されている。この意味で、本発明は、デジタルデータ処理装置によって、本発明に係る焼結ブランクを構築するためのコンピュータプログラムに関する。このようなコンピュータプログラムのプログラミングに際して、焼結ブランクの前記特徴が考慮されることが好ましい。純粋なプログラミング作業は、従来技術にしたがって実施される。本発明に係る焼結ブランクを構築する方法は、デジタルのデータ処理装置においてコンピュータプログラムによって実行される。
【0021】
前述のようなコンピュータプログラムにより構築された焼結ブランクに基づき、当該焼結体を製造する本発明に係る方法によれば、前記焼結ブランクの構築に際して、前記デジタルデータ処理手段から少なくとも1つのデータセットが読み取られ、当該データセットに基づき、材料構築方法および/または材料除去方法、好ましくはフライス加工方法にしたがって前記焼結ブランクを製造する。適切な材料構築方法および材料除去方法は、当該方法を実施するための適当なデジタル制御装置と同様に当該技術分野において知られている。材料構築方法には、例えば3Dプリンタ等が使用される。材料除去方法は、フライス盤および/または研削加工装置によって実施される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態のさらなる特徴および詳細は、次の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る焼結ブランクを斜め下方から見た斜視図。
図2図1の焼結ブランクを有する本発明に係る焼結装置の説明図。
図3図2による焼結装置の鉛直断面図。
図4】本発明に係る焼結ブランクの本発明に係る製造方法の概要説明図。
図5】本発明に係る焼結ブランクの本発明に係る製造方法の概要説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る焼結ブランク1を斜め下方から示している。焼結ブランク1は、一連の義歯ブランク11を有する、歯列弓の形態の製品範囲2を備えている。義歯ブランク11からなる歯列弓は内部空間12を取り囲んでいる。内部空間12には、焼結補助部材3および連結ブリッジ4が配置されている。焼結補助部材3は、連結ブリッジ4を介して義歯ブランク11のそれぞれに連結されている。
【0025】
焼結補助部材3および連結ブリッジ4は、焼結プロセス中に製品範囲2の歪みを防止することを意図している純粋な補助的構造である。当該補助的構造の補助により、例えば総入歯または部分入歯のような義歯が焼結により製造されうる。焼結または最終焼結の後、焼結補助部材3および連結ブリッジ4からなる補助的構造が製品範囲2から除去される。
【0026】
図から本発明に係る焼結補助部材3の湾曲した支持面5が確認できる。支持面5は、焼結ブランク1において、義歯ブランク11の咬合面20同じ側に設けられている。焼結補助部材3は、他の実施形態と同様に、単一の、ただ一つの湾曲した支持面5を有している。
【0027】
支持面5は、焼結過程において流動性ベッド13に面する側に突出している。本実施形態では、焼結補助部材3の全体が、相互に直交する2つの空間方向16,17において完全に凸曲面状の断面を有する。これにより、焼結補助部材3が、少なくともその湾曲した支持面5によって画定されている範囲に適用される。図1ではなく図3に示されているが、前述の利点および焼結補助部材3の凸曲面状の支持面5の技術的効果に影響を与えない範囲で、焼結補助部材3の湾曲した支持面5の反対側にある上面24は異なる形状に形成されてもよい。支持面5と反対側に位置する上面24’の他の実施形態が図3に破線で示されている。上面24’は、上面24のように外側に膨らんでいる凸面ではなく、内側にへこんでいる凹面に湾曲しているが、あくまでも例示であり必須の構成ではない。
【0028】
図2は、本発明に係る焼結ブランク1が、支持ビーズ14からなる流動性ベッド13に搭載されている、本発明に係る焼結装置の平面図を示している。製品範囲2および焼結補助部材3の湾曲した支持面5がベッド13に載置され、かつ/または、ベッド12に好ましくは部分的にのみ埋め込まれている。流動性ベッド13は、本実施形態では焼結トレー18に配置されている。焼結ビーズ14は、相互にゆるやかに接触している。支持ビーズ14は、焼結過程において、焼結ブランク1に対して不活性に維持される。これは、支持ビーズ14が焼結ブランク1に付着せず、焼結ブランク1に他の方法で悪影響を与えないことを意味する。
【0029】
焼結ブランク1は、他の実施形態と同様に一体的に形成されている。製品範囲2、焼結補助部材3および連結ブリッジ4は、同一材料から一体的に作製されている。特に好ましくは、このような焼結ブランク1は、単一の材料ブロック22から加工される。図3は、図2の焼結装置を通る断面線A−Aに沿った縦断面図を示している。本実施形態では、焼結補助部材3が凸レンズ形状の横断面を有することが確認できる。連結ブリッジ4は、焼結補助部材3における焼結補助部材3の周辺部8に挿入されている。焼結補助部材3は、中央部6において周辺部8よりも大きい厚さ7を有している。焼結補助部材3、連結ブリッジ4および製品範囲2または義歯ブランク11のそれぞれの間で、湾曲した連続的なプロファイルがあってもよく、これにより焼結過程における応力が特に良好に低減される。
焼結補助部材3の最大厚さ7は、連結ブリッジ4の最小厚さ10の6倍以下、好ましくは4倍以下である。すべての厚さ7、9および10は、好ましくは図3に示されている咬合平面19に対して垂直な方向について測られている。図3から、本発明に係る焼結装置において、製品範囲2および焼結補助部材3の支持面4の両方がベッド13に載置されていることが分かる。湾曲した支持面5は、ベッド13の多少は平坦な上面に焼結ブランク1が載置されて穏やかに押し込まれることで、焼結ブランク1がベッド13に適当に載置されるために十分である。これにより、焼結ブランク1の歪みが生じ、製品範囲2と焼結補助部材3との間の焼結ビーズ14の大きな積み重なりを形成し、トラブルフリーかつ歪みがない焼結に好適である。
【0030】
図2および図3に例示されている焼結装置は、従来技術においてそれ自体公知の通常の焼結炉で焼結されてもよい。焼結過程および焼成された焼結ブランク1の冷却過程の後、連結ブリッジ4は、製品範囲2と焼結補助部材3との間で切断される。支持面5が湾曲して形成されているため、分離過程のために連結ブリッジ4に対して特にアクセスしやすい。それぞれの義歯ブランク11の連結ブリッジ4との分離後にまたは義歯の焼結に際して生じる連結ブリッジ4に残存する残存物は必要に応じて除去されうる。
【0031】
前述のように、本発明は、図4および図5に概略的に示されているデジタルデータ処理装置15において、本発明に係る少なくとも1つの焼結ブランク1を構築または設計するためのコンピュータプログラムにも関する。焼結ブランク1の当該構築に際して、データセットまたは構築により生成されたデータセットまたはそれによって生成されたデータセットは、焼結ブランク1を製造するための本発明に係る方法において用いられる。例えば、材料除去方法が用いられる。図4は、データ処理装置15から取得されたデータセットが用いられ、焼結ブランク1が形成されるまで、材料ブロック22をフライスによって加工処理する状況が例示されている。本発明の変形実施形態が概略的に図5に例示されている。この場合、データ処理装置15は、対応するデータセットを参照して3Dプリンタ23を制御することで、焼結ブランク1が材料構築方法にしたがって作製される。適当なフライス盤装置21および3Dプリンタ23は、一般に、先行技術において周知であり、データ処理装置15によるデジタル制御も同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0032】
1‥焼結ブランク、2‥製品範囲、3‥焼結補助部材、4‥連結ブリッジ、5‥支持面、6‥中央部、7‥厚さ、8‥周辺部、9‥厚さ、10‥最小厚さ、11‥義歯ブランク、12‥内部空間、13‥ベッド、14‥支持ビーズ、15‥データ処理装置、16‥空間方向、17‥空間方向、18‥焼結トレー、19‥咬合平面、20‥咬合面、21‥フライス盤装置、22‥材料ブロック、23‥3Dプリンタ、24‥上面、24’‥上面。
図1
図2
図3
図4
図5