特許第6842723号(P6842723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842723
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】高圧水噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/04 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   B05B13/04
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-78318(P2019-78318)
(22)【出願日】2019年4月17日
(65)【公開番号】特開2020-175323(P2020-175323A)
(43)【公開日】2020年10月29日
【審査請求日】2019年5月10日
【審判番号】不服2020-6080(P2020-6080/J1)
【審判請求日】2020年5月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514007612
【氏名又は名称】田中ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】西川 徳俊
【合議体】
【審判長】 河端 賢
【審判官】 刈間 宏信
【審判官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−193198(JP,A)
【文献】 特開2004−291421(JP,A)
【文献】 特開平6−294221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水を床面から鉛直上方または斜め上方に延びる壁面に向けて噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルを前記床面および前記壁面のそれぞれに対して平行となるX方向へ移動させる第1駆動部と、
前記噴射ノズルを前記壁面に対して平行となり、かつ、前記X方向に対して垂直となるY方向へ移動させる第2駆動部と、
前記第1駆動部および前記第2駆動部を支持する枠体と、
前記枠体から前記噴射ノズルの噴射方向へ突出するように前記枠体に設けられ、前記壁面に当接して前記壁面と前記噴射ノズルとの間隔を一定に保持するスペーサと、
前記枠体を前記床面上で支持する支持体とを備えており、
前記スペーサは、
前記X方向に間隔を隔てて配置された少なくとも1組と前記Y方向に間隔を隔てて配置された少なくとも1組とをそれぞれ有して、かつこれらの各組の前記スペーサが前記床面上で起立した状態で前記噴射ノズルが前記床面に前記高圧水を噴射した状態の前記枠体を支持可能な剛性を有して構成されており、
前記枠体は、
前記各組のスペーサが前記床面上で起立した状態で前記噴射ノズルが前記床面に前記高圧水を噴射した状態の前記支持体を支持可能な剛性を有して構成されている、高圧水噴射装置。
【請求項2】
前記スペーサは、前記枠体から突出する長さを調整するための長さ調整部を有している、請求項1に記載の高圧水噴射装置。
【請求項3】
前記スペーサは、前記X方向に転がる車輪を有している、請求項1または2に記載の高圧水噴射装置。
【請求項4】
前記支持体は、前記X方向にのみ転がる複数の車輪を有している、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高圧水噴射装置。
【請求項5】
前記支持体に対する前記枠体の取り付け角度を調整するための角度調整部を備える、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高圧水噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削り処理などのために処理対象面に高圧水を噴射する高圧水噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、処理対象面に高圧水を噴射する技術が知られている。例えば、下記特許文献1には、削り処理のためにコンクリート表面に高圧水を噴射する高圧水噴射ノズルが開示されている。また、下記非特許文献1には、高圧水噴射ノズルを互いに直交する2方向(XY方向)に移動させながら処理対象面に高圧水を噴射する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−145617号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社久野製作所、"X-Y移動式コンクリート除去処理装置 ジェットマスター JMK-XY2000型"、ホームページ、[online]、[2019年3月31日検索]、インターネット<https://wj-kuno.com/%E8%A3%BD%E5%93%81%E7%B4%B9%E4%BB%8B/>
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された高圧水噴射ノズルは、橋梁のコンクリート床版端部に形成された遊間などの狭小空間に適したものであり、広い面積を迅速に処理する用途には適していなかった。一方、非特許文献1に記載された装置は、広い面積を迅速に処理する用途に適しているが、2方向に移動する高圧水噴射ノズルを安定して支持することが困難であった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、2方向に移動する噴射ノズルを安定して支持することができる高圧水噴射装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る高圧水噴射装置の特徴は、高圧水を床面から鉛直上方または斜め上方に延びる壁面に向けて噴射するための噴射ノズルと、前記噴射ノズルを前記床面および前記壁面のそれぞれに対して平行となるX方向へ移動させる第1駆動部と、前記噴射ノズルを前記壁面に対して平行となり、かつ、前記X方向に対して垂直となるY方向へ移動させる第2駆動部と、前記第1駆動部および前記第2駆動部を支持する枠体と、前記枠体から前記噴射ノズルの噴射方向へ突出するように前記枠体に設けられ、前記壁面に当接して前記壁面と前記噴射ノズルとの間隔を一定に保持するスペーサと、前記枠体を前記床面上で支持する支持体とを備えており、前記スペーサは、前記X方向に間隔を隔てて配置された少なくとも1組と前記Y方向に間隔を隔てて配置された少なくとも1組とをそれぞれ有して、かつこれらの各組の前記スペーサが前記床面上で起立した状態で前記噴射ノズルが前記床面に前記高圧水を噴射した状態の前記枠体を支持可能な剛性を有して構成されており、前記枠体は、前記各組のスペーサが前記床面上で起立した状態で前記噴射ノズルが前記床面に前記高圧水を噴射した状態の前記支持体を支持可能な剛性を有して構成されていることにある。
【0008】
この構成によれば、スペーサが壁面に当接することによって、壁面と噴射ノズルとの間隔を一定に保持することができる。また、第1駆動部および第2駆動部を支持する枠体が、床面上において支持体で支持されているので、噴射ノズルから高圧水を噴射したときの反力が枠体に作用したときでも、枠体は動き難い。したがって、XY方向に移動する噴射ノズルを安定して支持することができる。
【0009】
また、この構成によれば、X方向に間隔を隔てて配置された少なくとも1組のスペーサを備えているので、これらのスペーサを壁面に当接させることによって、一方のスペーサを中心として枠体が水平方向に回動することを抑制でき、壁面と枠体との間隔をX方向において均一にすることができる。
【0010】
また、この構成によれば、X方向に間隔を隔てて配置された少なくとも1組のスペーサと、Y方向に間隔を隔てて配置された少なくとも1組のスペーサとを備えているので、枠体を倒して噴射ノズルを床面に向けたときには、これらのスペーサによって、枠体を安定して支持することができる。したがって、壁面に対して高圧水を噴射するときと同じ条件で、床面に対して高圧水を噴射することができる。
【0011】
削除
【0012】
削除
【0013】
本発明に係る高圧水噴射装置の他の特徴は、前記スペーサは、前記枠体から突出する長さを調整するための長さ調整部を有していることにある。
【0014】
この構成によれば、スペーサの枠体から突出する長さを調整できるので、壁面の状況などに応じて、最適な条件で削り処理などを施すことができる。
【0015】
本発明に係る高圧水噴射装置の他の特徴は、前記スペーサは、前記X方向に転がる車輪を有していることにある。
【0016】
この構成によれば、高圧水噴射装置をX方向に移動させる際に、スペーサが壁面に引っ掛かることを防止でき、スペーサが損傷することを防止できる。
【0017】
本発明に係る高圧水噴射装置の他の特徴は、前記支持体は、前記X方向にのみ転がる複数の車輪を有していることにある。
【0018】
この構成によれば、支持体の車輪を転がすことによって、高圧水噴射装置をX方向に容易に移動させることができる。また、支持体の車輪は、X方向にのみ転がるので、支持体はX方向に対して直交する方向に移動し難い。したがって、噴射ノズルから高圧水を噴射したときの反力で支持体が動くことを抑制でき、噴射ノズルを安定して支持することができる。
【0019】
本発明に係る高圧水噴射装置の他の特徴は、前記支持体に対する前記枠体の取り付け角度を調整するための角度調整部を備えることにある。
【0020】
この構成によれば、支持体に対する枠体の取り付け角度を調整できるので、枠体の水平面に対する傾斜角度を壁面の傾斜角度に応じて調整することができる。したがって、1つの高圧水噴射装置を用いて、傾斜角度が異なる様々な壁面に高圧水を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る高圧水噴射装置の構成を示す斜視図である。
図2図1に示した高圧水噴射装置の構成を示す正面図である。
図3図1に示した高圧水噴射装置の構成を示す右側面図である。
図4図1に示した高圧水噴射装置の構成を示す平面図である。
図5】枠体を倒して、噴射ノズルを基準面に向けた状態を示す側面図である。
図6】角度調整部を備える高圧水噴射装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る高圧水噴射装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る高圧水噴射装置10の構成を示す斜視図である。図2は、高圧水噴射装置10の構成を示す正面図である。図3は、高圧水噴射装置10の構成を示す右側面図である。図4は、高圧水噴射装置10の構成を示す平面図である。
【0023】
(高圧水噴射装置10の構成)
図1に示す高圧水噴射装置10は、側溝やトンネルなどのコンクリート構造物12に削り処理を施す際に、被処理面12aに高圧水を噴射するものである。図1に示す被処理面12aは、水平方向に延びる基準面12bから鉛直上方に延びて形成されている。なお、基準面12bは、高圧水噴射装置10を安定して載置できる角度範囲内で水平面に対して傾斜して形成されていてもよい。
【0024】
図1に示すように、高圧水噴射装置10は、高圧水を噴射する噴射ノズル14と、噴射ノズル14を互いに直交する2方向(XY方向)に走査するための走査部16と、走査部16を支持する枠体18と、被処理面12aと噴射ノズル14との間隔を一定に保持する複数のスペーサ20(20a〜20d)と、枠体18を基準面12b上で支持する支持体22とを備えている。なお、本実施形態の説明において、複数のスペーサを区別する場面では、これらの符号として「20a〜20d」を使用し、複数のスペーサを区別しない場面では、これらの符号として「20」を使用するものとする。図面中の「X」および「Y」は、噴射ノズル14の走査方向を示している。
【0025】
図1に示すように、噴射ノズル14は、高圧水を被処理面12aに対して直交する方向から噴射するように構成されている。噴射ノズル14の噴射口14aは、被処理面12aに対向する側に向けられており、噴射口14aに連通する高圧水の導入口14bは、噴射口14aとは反対側に向けられている。そして、導入口14bには、高圧水生成装置で生成された高圧水を噴射ノズル14に供給するためのホース(図示省略)が接続されている。また、この噴射ノズル14は、噴射口14aが図示しないネジ機構によって被処理面12aに対して接近または離隔可能に構成されており、噴射口14aの被処理面12aに対する距離が微調整できるように構成されている。なお、噴射ノズル14は、噴射口14aの被処理面12aに対する距離が調整できない構成であってもよいことは当然である。
【0026】
図1に示すように、走査部16は、噴射ノズル14を基準面12bおよび被処理面12aのそれぞれに対して平行となるX方向へ移動させる第1駆動部24と、噴射ノズル14を被処理面12aに対して平行となり、かつ、X方向に対して垂直となるY方向へ移動させる第2駆動部26とを備えている。
【0027】
第1駆動部24は、X方向に延びる棒状の第1レール28と、第1レール28に移動可能に取り付けられた基体30と、基体30に設けられた動力装置32とを有している。動力装置32は、油圧モーター32aと、油圧モーターの回転力を第1レール28に伝えて基体30をX方向へ移動させるギアユニット32bとを有している。そして、基体30に対して、噴射ノズル14が取り付けられている。第1レール28は、中空構造に形成されており、第1レール28の内部には、後述する第2駆動部26の回転軸40bが挿通されている。
【0028】
第2駆動部26は、Y方向に延びる2本の棒状の第2レール34と、各第2レール34に移動可能に取り付けられたスライド部36と、各第2レール34にY方向に延びて設けられたチェーン38と、動力装置40とを有している。一方のスライド部36には、第1レール28の一方端部28aが固定されており、他方のスライド部36には、第1レール28の他方端部28bが固定されている。動力装置40は、油圧モーター40aと、油圧モーター40aによって回転される回転軸40bと、回転軸40bの回転力を前記チェーン38に伝えてスライド部36をY方向へ移動させるギアユニット40cとを有している。回転軸40bは、第1レール28の内部に挿通されており、ギアユニット40cは、2つのスライド部36のそれぞれに設けられている。
【0029】
図2に示すように、枠体18は、第1駆動部24および第2駆動部26を支持する4角形の枠状の部材であり、第2駆動部26を構成する2本の第2レール34と、2本の第2レール34の上端部34aどうしを連結する棒状の第1連結部材42と、2本の第2レール34の下端部34bどうしを連結する棒状の第2連結部材44とを有している。第1連結部材42および第2連結部材44は、X方向に延びて配置されており、2本の第2レール34と、第1連結部材42と、第2連結部材44とによって囲まれた領域が、噴射ノズル14が移動する移動領域Qとなっている。なお、図2中の2点鎖線は、噴射ノズル14を移動させた状態を示している。
【0030】
図3に示すように、複数のスペーサ20のそれぞれは、被処理面12aに当接して被処理面12aと噴射ノズル14との間隔を一定に保持する部材である。図1に示すように、本実施形態では、4つのスペーサ20a〜20dが、枠体18から噴射ノズル14の噴射方向へ突出するように枠体18の4隅に設けられている。図4に示すように、各スペーサ20は、噴射ノズル14の噴射方向へ延びる棒状の支柱48と、支柱48の先端部に設けられ、被処理面12aをX方向に転がる車輪50と、スペーサ20の枠体18から突出する長さを調整するための長さ調整部52とを有している。
【0031】
図4に示すように、長さ調整部52は、枠体18に設けられた固定部52aを有している。固定部52aには、支柱48が挿通される貫通孔(図示省略)が噴射ノズル14の噴射方向へ延びて設けられている。また、固定部52aには、上記貫通孔に連通するねじ孔(図示省略)が設けられており、このねじ孔には、ボルト52bが螺合されている。そして、固定部52aの貫通孔に支柱48を挿通させた状態で、ボルト52bを締め付けることによって、固定部52aに対して支柱48が固定されている。したがって、ボルト52bを緩めて、支柱48を移動させることによって、スペーサ20の枠体18から突出する長さを調整することができる。
【0032】
図1に示すように、本実施形態では、枠体18の下部に設けられたスペーサ20a,20bの組と、枠体18の上部に設けられたスペーサ20c,20dの組とが、それぞれX方向に間隔を隔てて配置されている。また、枠体18のX方向の一方側部に設けられたスペーサ20a,20cの組と、枠体18のX方向の他方側部に設けられたスペーサ20b,20dの組とが、それぞれY方向に間隔を隔てて配置されている。
【0033】
図1に示すように、支持体22は、枠体18を基準面12b上で支持する部材であり、枠体18を構成する第2連結部材44と、第2連結部材44の一方端部に固定された棒状の第1支持部材56と、第2連結部材44の他方端部に固定された棒状の第2支持部材58と、第1支持部材56と第2支持部材58とを連結する棒状の連結部材60とを有している。第1支持部材56および第2支持部材58は、第2連結部材44から枠体18の後方、すなわち噴射ノズル14の噴射方向とは反対の方向に延びて設けられている。第1支持部材56および第2支持部材58のそれぞれの両端部の下面には、X方向にのみ転がる複数の車輪62が設けられている。そして、第1支持部材56の後端部56aと、一方の第2レール34の上端部34aとが、棒状の第1補強材64を介して連結されており、第2支持部材58の後端部58aと、他方の第2レール34の上端部34aとが、棒状の第2補強材66を介して連結されている。
【0034】
(高圧水噴射装置10の作動)
図1に示す高圧水噴射装置10を用いてコンクリート構造物12の被処理面12aに削り処理を施す際には、まず、作業者は、支持体22の車輪62を転がして高圧水噴射装置10をコンクリート構造物12の基準面12b上に搬入する。続いて、複数のスペーサ20のそれぞれの車輪50を被処理面12aに当接させて、噴射ノズル14の移動領域Qを被処理面12aに対して位置決めする。また、図示していないが、噴射ノズル14の導入口14bに高圧水供給用のホースを接続するとともに、油圧モーター32aおよび40aのそれぞれに油供給用のホースを接続する。その後、油圧モーター32aおよび40aで第1駆動部24および第2駆動部26を駆動させて、噴射ノズル14をXY方向に走査させながら、噴射ノズル14から被処理面12aに対して高圧水を噴射させる。
【0035】
噴射ノズル14の移動領域Qに対応する被処理面12aの領域について削り処理が完了すると、作業者は、高圧水噴射装置10をX方向に移動させて、隣の領域について削り処理を続行する。このような削り処理を繰り返すことによって、X方向に連続する広い領域に対して効率的に削り処理を施すことができる。
【0036】
図5は、枠体18を倒して、噴射ノズル14を基準面12bに向けた状態を示す側面図である。高圧水噴射装置10を用いてコンクリート構造物12の基準面12bに削り処理を施す際には、まず、作業者は、枠体18を倒して噴射ノズル14を基準面12bに向ける。図1に示すように、本実施形態では、スペーサ20a,20bの組と、スペーサ20c,20dの組とが、それぞれX方向に間隔を隔てて配置されており、スペーサ20a,20cの組と、スペーサ20b,20dの組とが、それぞれY方向に間隔を隔てて配置されているので、枠体18を倒したときには、これらのスペーサ20a〜20dによって、枠体18を安定して支持することができる。したがって、枠体18を倒した後は、被処理面12aに対して削り処理を施すときと同じ方法で、基準面12bに対して削り処理を施すことができる。
【0037】
(高圧水噴射装置10の効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、図1に示すように、枠体18には、被処理面12aに当接する複数のスペーサ20が設けられているので、被処理面12aと噴射ノズル14との間隔を一定に保持することができる。また、第1駆動部24および第2駆動部26を支持する枠体18が、基準面12b上において支持体22で支持されているので、噴射ノズル14から高圧水を噴射したときの反力が枠体18に作用したときでも、枠体18は動き難い。したがって、XY方向に移動する噴射ノズル14を安定して支持することができる。
【0038】
図1に示すように、上記実施形態によれば、X方向に間隔を隔てて配置された2組のスペーサ20a,20bおよび20c,20dを備えているので、これらのスペーサ20a〜20dを被処理面12aに当接させることによって、1つのスペーサ20を中心として枠体18が水平方向に回動することを抑制でき、被処理面12aと枠体18との間隔をX方向において均一にすることができる。これにより、被処理面12aと噴射ノズル14との間隔を移動領域Qに含まれる全ての位置で均一にすることができる。
【0039】
図5に示すように、枠体18を倒して噴射ノズル14を基準面12bに向けたときには、複数のスペーサ20によって、枠体18を安定して支持することができるので、基準面12bに対しても削り処理を施すことができる。
【0040】
図4に示す長さ調整部52によって、スペーサ20の枠体18から突出する長さを調整できるので、被処理面12aの状況に応じて、最適な条件で削り処理を施すことができる。
【0041】
図1および図3に示すように、スペーサ20は、X方向に転がる車輪50を有しているので、高圧水噴射装置10をX方向に移動させる際には、スペーサ20が被処理面12aに引っ掛かることを防止でき、スペーサ20が損傷することを防止できる。
【0042】
図1および図3に示すように、支持体22は、X方向にのみ転がる複数の車輪62を有しているので、車輪62を転がすことによって、高圧水噴射装置10をX方向に容易に移動させることができる。また、支持体22の車輪62は、X方向にのみ転がるので、支持体22はX方向に対して直交する方向に移動し難い。したがって、噴射ノズル14から高圧水を噴射したときの反力で支持体22が動くことを抑制でき、噴射ノズル14を安定して支持することができる。
【0043】
(変形例)
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。すなわち、上記実施形態では、高圧水噴射装置10がコンクリート構造物12に削り処理を施す用途に用いられているが、高圧水噴射装置10は、建造物の塗装や汚れを削る用途など、他の用途に用いられてもよい。また、上記実施形態では、高圧水噴射装置10が、基準面12bから鉛直上方に延びる被処理面12aに高圧水を噴射するように構成されているが、基準面12bから斜め上方に延びる被処理面12aに高圧水を噴射するように構成されてもよい。この場合には、支持体22に対する枠体18の取り付け角度が、被処理面12aの傾斜角度に応じて定められる。
【0044】
上記実施形態では、動力装置32,40の動力源として油圧モーター32a,40aが用いられているが、これらの油圧モーター32a,40aに代えて、電気モーター、油圧シリンダおよびエアシリンダなどが用いられてもよい。
【0045】
上記実施形態では、4つのスペーサ20が用いられているが、スペーサ20の数は、1つ以上で3つ以下にされてもよいし、5つ以上にされてもよい。また、長さ調整部52の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、固定部52aの貫通孔に雌ねじが形成されるとともに、支柱48の外周面に雄ねじが形成され、雌ねじに対する雄ねじのねじ込み量が調整されることによって、スペーサ20の枠体18から突出する長さが調整されてもよい。また、長さ調整部52は省略されてもよい。さらに、車輪50に代えて、被処理面12aとの摩擦抵抗が小さい部材を支柱48に取り付け、この部材を被処理面12aに対して滑らせるようにしてもよい。
【0046】
上記実施形態では、スペーサ20a,20bの組と、スペーサ20c,20dの組とが、X方向に間隔を隔てて配置されているが、これらのうちの一方の組は省略されてもよい。X方向に間隔を隔てて配置された少なくとも1組のスペーサがあれば、1つのスペーサを中心として枠体18が水平方向に回動することを抑制でき、噴射ノズル14を安定して支持することができる。
【0047】
上記実施形態では、スペーサ20a,20cの組と、スペーサ20b,20dの組とが、Y方向に間隔を隔てて配置されているが、枠体18を倒して使用する必要がない場合には、これらの組は省略されてもよい。
【0048】
図6は、角度調整部72を備える高圧水噴射装置70の構成を示す側面図である。上記実施形態では、枠体18が支持体22に対して一定の角度で取り付けられているが、枠体18は支持体22に対して角度調整可能に取り付けられていてもよい。
【0049】
図6に示す高圧水噴射装置70は、支持体22に対する枠体18の取り付け角度を調整するための角度調整部72を備えている。角度調整部72は、枠体18の第2レール34の下端部34bを支持体22に対して回動可能に取り付ける第1ヒンジ部72aと、棒状の補強材74の下端部を支持体22に対して回動可能に取り付ける第2ヒンジ部72bと、第2レール34にY方向に間隔を隔てて形成された複数のねじ孔72cと、複数のねじ孔72cの1つに螺合されるボルト72dとを有している。補強材74の上端部には、ボルト72dが挿通される貫通孔74aが形成されている。そして、貫通孔74aに挿通されたボルト72dが複数のねじ孔72cのいずれか1つに選択的に螺合されることによって、支持体22に対する枠体18の取り付け角度が定められている。
【0050】
この高圧水噴射装置70によれば、支持体22に対する枠体18の取り付け角度を調整できるので、枠体18の水平面に対する傾斜角度を被処理面12aの傾斜角度に応じて調整することができる。したがって、1つの高圧水噴射装置70を用いて、傾斜角度が異なる様々な被処理面12aに削り処理を施すことができる。
【符号の説明】
【0051】
Q…移動領域、10…高圧水噴射装置、12b…基準面、12a…被処理面、
14…噴射ノズル、16…走査部、18…枠体、20,20a〜20d…スペーサ、
22…支持体、24…第1駆動部、26…第2駆動部、50,62…車輪、
52…長さ調整部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6