(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842751
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】壁孔閉塞具
(51)【国際特許分類】
F16L 5/00 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
F16L5/00 L
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-193809(P2016-193809)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-54076(P2018-54076A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226507
【氏名又は名称】株式会社ニックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 匡太
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−196487(JP,U)
【文献】
特開昭58−160686(JP,A)
【文献】
実開昭57−134483(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3138316(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3029065(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体に開設された壁孔の端部を閉塞する2枚の蓋部材と、
前記2枚の蓋部材のうちのいずれか一方の蓋部材に着脱自在に取り付けられ、前記2枚の蓋部材のうちのいずれか他方の蓋部材を連結して、前記2枚の蓋部材のそれぞれを前記壁体の壁面に密着させるバンド部材と、
一方の面から前記バンド部材が起立し、前記一方の蓋部材に取り付け可能な連結板と、
前記連結板を介して前記バンド部材と一体に形成され、前記連結板を介して前記バンド部材が取り付けられた前記一方の蓋部材を前記壁体の表面に当接したときに前記壁孔に弾接される弾性翼片と、
を備えたことを特徴とする壁孔閉塞具。
【請求項2】
前記一方の蓋部材及び前記他方の蓋部材は、前記壁孔の端部を閉塞するに足る形状及びサイズを有する平面部と、前記平面部の外周端部より前記平面部の内面側に向けて起立された一定高さのリブとを有することを特徴とする請求項1に記載の壁孔閉塞具。
【請求項3】
前記一方の蓋部材は、その内面に前記バンド部材を着脱自在に取り付けるためのバンド取付部を有し、前記バンド取付部及び前記バンド部材は、前記バンド取付部内の所定位置まで前記バンド部材を押し込んだときに係合する係合部材を備えていることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の壁孔閉塞具。
【請求項4】
前記バンド部材は、その長さ方向にラチェット歯列が形成され、前記他方の蓋部材は、前記バンド部材の挿入孔と、前記挿入孔内に形成され、前記バンド部材に形成された前記ラチェット歯列に係合されるラチェット爪とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の壁孔閉塞具。
【請求項5】
前記他方の蓋部材の外面に、前記挿入孔の周囲を覆うキャップ部材を着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項4に記載の壁孔閉塞具。
【請求項6】
前記キャップ部材は、前記挿入孔の周囲を覆う本体部と、前記本体部から延出された連結ベルトとを有し、前記連結ベルトを介して前記他方の蓋部材に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の壁孔閉塞具。
【請求項7】
前記連結ベルトは、その先端部に、前記他方の蓋部材に対する前記連結ベルトの取付方向を規制するための突起を有し、前記他方の蓋部材は、前記突起を含む前記連結ベルトの先端部を挿入可能な前記キャップ部材の取付孔を有することを特徴とする請求項6に記載の壁孔閉塞具。
【請求項8】
前記弾性翼片は、前記バンド部材の両側に形成されていて、前記バンド部材の先端側から末端側に至るにしたがって間隔が大きくなる方向に傾斜する傾斜部を有しており、前記弾性翼片を前記バンド部材の先端側から前記壁孔内に挿入したとき、前記傾斜部が前記壁孔に押圧されて自動的に縮径され、前記一方の蓋部材を前記壁体に当接した段階で、前記傾斜部の先端が前記壁孔に弾接されることを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の壁孔閉塞具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に開設された壁孔を閉塞するための壁孔閉塞具に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの建物の外壁には、エアコン装置の室内機と室外機とを繋ぐホース類等を挿通するための壁孔が開設されている。壁孔は、挿通されていたホース類等が撤去された場合、或いは、ホース類等が未だ挿通されていない状態においては、建物内への塵埃や害虫の侵入を防止するため、壁孔閉塞具を用いて閉塞する必要がある。また、建物内の仕切り壁に開設された壁孔についても、ホース類等が挿通されていない状態においては、室内の美観を保持するため、壁孔閉塞具を用いて閉塞する必要がある。
【0003】
本願の出願人は先に、この種の壁孔閉塞具として、固定バンドで締め付けることにより壁体の外面と内面とに密着される2つの孔塞ぎ本体のそれぞれに、孔塞ぎ本体を壁孔に仮固定するための弾性翼片と、弾性翼片を縮径状態で係止する手段と、弾性翼片を縮径状態から解放する手段とを設けたものを提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
弾性翼片を縮径状態で係止する手段は、弾性翼片の先端部に形成された爪部と、当該爪部の収納部が形成された孔塞ぎ本体と一体の筒状体とから構成される。また、弾性翼片を縮径状態から解放する手段は、孔塞ぎ本体に開設されたドライバ等の工具を挿入可能な貫通孔をもって構成される。
【0005】
特許文献1に記載の発明によれば、弾性翼片を縮径したままの状態で壁孔内に挿入できるので、石膏ボード等の脆い素材からなる壁体に開設された壁孔に壁孔閉塞具を取り付ける場合にも、弾性翼片を壁体の表面に当接することなく壁孔内に挿入することができ、壁体の損傷を防止できる。また、特許文献1に記載の発明によれば、弾性翼片を縮径状態から解放することにより、弾性翼片を壁孔に弾接できて、壁孔閉塞具を壁面に仮固定できるので、壁体に対する壁孔閉塞具の取付作業を一人でも効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−332052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の壁孔閉塞具は、壁体への取付作業前に弾性翼片の先端部に形成された爪部を筒状体に形成された収納部に収納しておき、壁体への孔塞ぎ本体の取付時には孔塞ぎ本体に開設された貫通孔内にドライバ等の工具を差し込んで爪部を押圧し、爪部と収納部との係合を解除するという作業を行わなくてはならないので、作業性を改善するために更なる改良の余地がある。
【0008】
また、従来の壁孔閉塞具は、孔塞ぎ本体と弾性翼片と筒状部とが一体に形成されているので、これを製造するための金型構造が複雑となり、製品コストが高価になると共に、孔塞ぎ本体の外面にひけ等の成形不良が発生しやすくなる。加えて、従来の壁孔閉塞具は、ナイロン製の固定バンドを用いているので、この点からも製品コストが高価になる。
【0009】
更に、従来の壁孔閉塞具は、孔塞ぎ本体と弾性翼片と筒状部とが一体に形成されていることから、嵩が大きく、搬送コストや保管コストが高価になる。
【0010】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価かつ高品質にして作業性に優れ、搬送や保管が容易な壁孔閉塞具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような技術的課題を解決するため、壁体に開設された壁孔の端部を閉塞する2枚の蓋部材と、前記2枚の蓋部材のうちのいずれか一方の蓋部材に着脱自在に取り付けられ、前記2枚の蓋部材のうちのいずれか他方の蓋部材を連結して、前記2枚の蓋部材のそれぞれを前記壁体の壁面に密着させるバンド部材と、
一方の面から前記バンド部材が起立し、前記一方の蓋部材に取り付け可能な連結板と、前記連結板を介して前記バンド部材と一体に形成され、
前記連結板を介して前記バンド部材が取り付けられた前記一方の蓋部材を前記壁体の表面に当接したときに前記壁孔に弾接される弾性翼片と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本構成によると、バンド部材を一方の蓋部材に対して着脱自在に構成すると共に、バンド部材と弾性翼片とを一体に形成するので、各蓋部材を薄形に形成できる。よって、これら2枚の蓋部材と1つのバンド部材とをもって構成される壁孔閉塞具の嵩を小さくでき、搬送コスト及び保管コストを抑制できる。また、蓋部材と弾性翼片とを独立の別体に形成したので、蓋部材を製造するための金型構造を簡略化できて、製品コストを抑制できると共に、ひけ等の成形不良のない蓋部材を製造できる。更に、汎用プラスチック材料を用いてバンド部材と弾性翼片とを一体に形成できるので、ナイロン製の固定バンドを用いる場合に比べて、壁孔閉塞具の製品コストを抑制できる。
【0013】
また本発明は、前記構成の壁孔閉塞具において、前記一方の蓋部材及び前記他方の蓋部材は、前記壁孔の端部を閉塞するに足る形状及びサイズを有する平面部と、前記平面部の外周端部より前記平面部の内面側に向けて起立された一定高さのリブとを有することを特徴とする。
【0014】
本構成によると、平面部の外周端部より一定高さのリブを起立するので、蓋部材に要求される強度を保ったまま平面部の薄形化を図ることができ、材料費を削減できて、壁孔閉塞具の製品コストを抑制できる。また、平面部とリブとによって構成される凹部内に防水材や防塵材を収納できるので、壁孔閉塞具の防水性及び防塵性を向上できる。
【0015】
また本発明は、前記構成の壁孔閉塞具において、前記一方の蓋部材は、その内面に前記バンド部材を着脱自在に取り付けるためのバンド取付部を有し、前記バンド取付部及び前記バンド部材は、前記バンド取付部内の所定位置まで前記バンド部材を押し込んだときに係合する係合部材を備えていることを特徴とする。
【0016】
本構成によると、バンド取付部内の所定位置までバンド部材を押し込んだときに、係合部材が係合して作業者にクリック感触やクリック音を付与できるので、一方の蓋部材に対するバンド部材の取付作業を確実に行うことができる。
【0017】
また本発明は、前記構成の壁孔閉塞具において、前記バンド部材は、その長さ方向にラチェット歯列が形成され、前記他方の蓋部材は、前記バンド部材の挿入孔と、前記挿入孔内に形成され、前記バンド部材に形成された前記ラチェット歯列に係合されるラチェット爪とを有することを特徴とする。
【0018】
本構成によると、バンド部材の長さ方向にラチェット歯列を形成し、他方の蓋部材にはこれに係合されるラチェット爪を形成するので、バンド部材を介して2枚の蓋部材を強固に連結でき、各蓋部材を壁体に密着させることができる。
【0019】
また本発明は、前記構成の壁孔閉塞具において、前記他方の蓋部材の外面に、前記挿入孔の周囲を覆うキャップ部材を着脱自在に取り付けたことを特徴とする。
【0020】
本構成によると、他方の蓋部材に形成された挿入孔の周囲をキャップ部材で覆うことができるので、他方の蓋部材からバンド部材が露出せず、壁孔閉塞具の美観性を高めることができる。
【0021】
また本発明は、前記構成の壁孔閉塞具において、前記キャップ部材は、前記挿入孔の周囲を覆う本体部と、前記本体部から延出された連結ベルトとを有し、前記連結ベルトを介して前記他方の蓋部材に着脱自在に取り付けられることを特徴とする。
【0022】
本構成によると、連結ベルトを介してキャップ部材を他方の蓋部材に取り付けておくことができるので、キャップ部材の紛失を防止でき、他方の蓋部材に形成された挿入孔の周囲をキャップ部材で覆う作業を能率的に行うことができる。
【0023】
また本発明は、前記構成の壁孔閉塞具において、前記連結ベルトは、その先端部に、前記他方の蓋部材に対する前記連結ベルトの取付方向を規制するための突起を有し、前記他方の蓋部材は、前記突起を含む前記連結ベルトの先端部を挿入可能な前記キャップ部材の取付孔を有することを特徴とする。
【0024】
本構成によると、他方の蓋部材に対してキャップ部材を常時一定の向きで取り付けられるので、他方の蓋部材に形成された挿入孔の周囲をキャップ部材で覆う作業を能率的に行うことができる。
【0025】
また本発明は、前記構成の壁孔閉塞具において、前記弾性翼片は、前記バンド部材の両側に形成されていて、前記バンド部材の先端側から末端側に至るにしたがって間隔が大きくなる方向に傾斜する傾斜部を有しており、前記弾性翼片を前記バンド部材の先端側から前記壁孔内に挿入したとき、前記傾斜部が前記壁孔に押圧されて自動的に縮径され、前記一方の蓋部材を前記壁体に当接した段階で、前記傾斜部の先端が前記壁孔に弾接されることを特徴とする。
【0026】
本構成によると、バンド部材を壁孔内に挿入するだけで、弾性翼片が自動的に縮径されて壁孔に弾接されるので、壁孔に対する一方の蓋部材の仮固定を容易化できる。
【0027】
また本発明は、前記構成の壁孔閉塞具において、前記弾性翼片は、その自由端を人力で縮径することにより、前記壁孔内への挿入が可能になることを特徴とする。
【0028】
本構成によると、弾性翼片の自由端を人力で縮径できるので、従来品のように壁体への取付作業前に弾性翼片の先端部に形成された爪部を筒状体に形成された収納部に収納し、壁体への蓋部材の仮固定時に爪部と収納部との係合を工具を用いて解除するという作業を行う必要がなく、壁孔に対する蓋部材の仮固定を容易化できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、安価かつ高品質にして作業性に優れ、搬送や保管が容易な壁孔閉塞具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態に係る壁孔閉塞具の分解斜視図である。
【
図2】実施形態に係る一方の蓋部材の断面図である。
【
図3】実施形態に係る他方の蓋部材の内面側から見た斜視図である。
【
図4】実施形態に係る他方の蓋部材の断面図である。
【
図6】実施形態に係る壁孔閉塞具の組立状態を示す斜視図である。
【
図7】実施形態に係るキャップ部材の斜視図である。
【
図8】実施形態に係る一方の蓋部材の壁体への仮固定状態を示す断面図である。
【
図9】実施形態に係る2枚の蓋部材をバンド部材で連結し、壁体に密着させた状態を示す断面図である。
【
図10】実施形態に係る壁孔閉塞具の壁体への取付状態を示す断面図である。
【
図11】他の実施形態に係るバンド部材の斜視図である。
【
図12】他の実施形態に係るバンド部材の端面方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る壁孔閉塞具の実施形態を、図を用いて説明する。なお、以下に記載する実施形態は、本発明の実施の一形態を例示的に示すものであり、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。本発明は、以下に記載する実施形態に様々な設計変更を施して実施することができる。
【0032】
図1に示すように、実施形態に係る壁孔閉塞具1は、2枚の蓋部材2、3と、これら2枚の蓋部材2、3を連結するバンド部材4と、バンド部材4と一体に形成された弾性翼体5と、蓋部材3に被着されるキャップ部材6とから構成されている。
【0033】
このように、実施形態に係る壁孔閉塞具1は、蓋部材2、3とバンド部材4及び弾性翼体5とを独立の別体に構成したので、蓋部材2、3を薄形に形成できる。よって、壁孔閉塞具1の嵩を小さくでき、搬送コスト及び保管コストを抑制できる。また、蓋部材2、3とバンド部材4及び弾性翼体5とを独立の別体に構成したことから、蓋部材2を製造するための金型構造を簡略化できて、製品コストを抑制できると共に、ひけ等の成形不良のない蓋部材を製造できる。
【0034】
2枚の蓋部材2、3のうち、一方の蓋部材2は、
図1、
図2、
図8〜
図10に示すように、壁体Aに開設された壁孔Bの端部を閉塞するに足る形状(図示の例では、円形)及びサイズを有する平面部11と、当該平面部11の外周端部より平面部11の内面側(壁体Aとの対向面側)に向けて起立された一定高さのリブ12と、平面部11の内面中央部に形成されたバンド取付部13とを有している。蓋部材2は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等の汎用プラスチック材料を用いて一体に形成される。
【0035】
このように、実施形態に係る蓋部材2は、平面部11の外周端部より一定高さのリブ12を起立するので、蓋部材2に要求される強度を保ったまま平面部11の薄形化を図ることができ、材料費を削減できて、壁孔閉塞具の製品コストを抑制できる。また、平面部11とリブ12とによって構成される凹部内に防水材や防塵材を収納できるので、壁孔閉塞具1の防水性及び防塵性を向上できる。後に説明する他方の蓋部材3についても、これと同様の効果を有する。
【0036】
バンド取付部13は、
図1、
図2、
図8〜
図10に示すように、前面板14と、側面板15と、底面板16とをもって、上部が開放されたポケット状に形成されており、底面板16の左右両端部には、後に説明するバンド部材4の左右両端部に形成された係止爪32を貫通するための貫通孔17が開設されている。
【0037】
2枚の蓋部材2、3のうち、他方の蓋部材3は、
図1、
図3、
図4、
図9、
図10に示すように、一方の蓋部材2の平面部11と同一形状・同一サイズに形成された平面部21と、当該平面部21の外周端部より平面部21の内面側に向けて起立された一定高さのリブ22と、平面部11の中央部に形成されたキャップ取付凹部23と、キャップ取付凹部23の底面から突出されたバンド挿通凸部24とを有している。また、キャップ取付凹部23の底面には、
図3及び
図9に示すように、バンド挿通凸部24を貫通したバンド部材4の端部を折り返して挿入するためのバンド端挿入孔25と、後に説明するキャップ部材6の取付孔26とが開設されている。この蓋部材3も、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等の汎用プラスチック材料を用いて一体に形成される。
【0038】
キャップ取付凹部23は、キャップ部材6をやや密に挿入可能な形状及びサイズに形成されており、キャップ取付凹部23内にキャップ部材6を挿入したとき、
図10に示すように、平面部21の外面とキャップ部材6の外面とが面一になるようになっている。
【0039】
バンド挿通凸部24は、
図4に示すように、その中央部にバンド部材4を挿通するためのバンド挿通孔27が開設されており、当該バンド挿通孔27内には、バンド部材4を係止するためのラチェット爪28が形成されている。
【0040】
バンド端挿入孔25は、バンド挿通孔27を貫通して蓋部材3の外面側に突出したバンド部材4の端部を保持しておくためのもので、バンド部材4を挿入可能な四角形に開設されている。
【0041】
キャップ部材6の取付孔26は、
図3に示すように、横長開口部29とその中央部から上向きに形成された突起挿入部30とをもって略T字形に形成されている。
【0042】
バンド部材4と弾性翼体5とは、
図1及び
図5に示すように、連結板31を介して一体に形成されている。バンド部材4、弾性翼体5及び連結板31も、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等の汎用プラスチック材料を用いて一体に形成される。従って、従来技術のようにナイロン製の固定バンドを用いる必要がなく、この点からも壁孔閉塞具1の製品コストを抑制できる。
【0043】
連結板31は、一方の蓋部材2の内面に形成されたポケット状のバンド取付部13内に挿入可能な形状及びサイズに形成されており、その左右両辺部から下向きに係止爪32が形成されている。
【0044】
バンド部材4は、連結板31の片面から起立されており、その長さ寸法は、実施形態に係る壁孔閉塞具1の適用が想定される各種の壁体Aのうち、最も壁厚が大きいものに適用した場合にも、蓋部材2、3を適正に連結可能な長さに設定される。これにより、壁厚が異なる各種の壁体Aに実施形態に係る壁孔閉塞具1を適用することが可能となる。バンド部材4の表裏両面の長さ方向には、
図1、
図5、
図9、
図10に示すように、多数のラチェット歯が一列に配列されたラチェット歯列33が形成される。
【0045】
弾性翼体5は、バンド部材4の左右両側に配置されている。本例の弾性翼体5は、連結板31からバンド部材4と平行に起立された垂直部34と、垂直部34の上端から外向きに折り返された水平部35と、水平部35の外端から下向きに折り返された傾斜部36とから構成されている。傾斜部36は、バンド部材4の先端側から末端側に至るにしたがって間隔が大きくなる方向に傾斜しており、その下端部の間隔は、壁孔閉塞具1をもって閉塞しようとする壁孔Bの直径よりも大きく形成されている。
【0046】
キャップ部材6は、
図6に拡大して示すように、蓋部材3に形成されたキャップ取付凹部23内にやや密に挿入可能な略円筒形に形成された本体部41と、当該本体部41から延出された連結ベルト42とから構成されており、本体部41と連結ベルト42の境界部にはヒンジ43が形成されている。従って、連結ベルト42は、本体部41に対して容易に折り曲げることができる。
【0047】
本体部41は、キャップ取付凹部23の開口端を覆う外面部51と、外面部51の周縁部より一方向に起立された一定高さの周壁52とをもって構成されており、周壁52の一部には、キャップ取付凹部23からのキャップ部材6を取り外しを容易にするための爪掛け部53が形成されている。
【0048】
連結ベルト42は、蓋部材3にキャップ部材6を着脱自在に取り付けるためのものであって、その先端部の左右両側部には、
図6に拡大して示すように、蓋部材3に開設された横穴開口部29の両端部に係合される係止爪54が形成されている。また、連結ベルト42の最先端部には、蓋部材3に開設された突起挿入部30内に挿入される突起56が形成されている。更に、各係止爪54の中間部には、係止爪54に弾性を付与するための長孔形の透孔55が開設されている。
【0049】
キャップ部材6は、連結ベルト42に形成された突起56を蓋部材3に開設された突起挿入部30に合致させた状態で、連結ベルト42の先端部を蓋部材3に開設された横長開口部29内に挿入し、連結ベルト42の左右両側部に形成された係止爪54を蓋部材3の内面に係止することにより蓋部材3に取り付けられる。
【0050】
このように、蓋部材3にキャップ部材6を取り付けておくと、キャップ部材6の紛失を防止できるので、キャップ取付凹部23に対するキャップ部材6の取付作業を能率的に行うことができる。また、突起56を突起挿入部30に合致させると、蓋部材3に対してキャップ部材6を常に一定の向きで取り付けることができるので、キャップ取付凹部23に対するキャップ部材6の取付作業を円滑に行うことができる。
【0051】
以下、壁体Aに対する実施形態に係る壁孔閉塞具1の取付方法について説明する。
【0052】
まず、
図1に示すように、蓋部材2の内面に形成されたポケット状のバンド取付部13の上方から当該バンド取付部13内に、バンド部材4及び弾性翼体5と一体に形成された連結板31を挿入する。このとき、連結板31に形成された係止爪32は、バンド取付部13の側面板15に押されて内向きに弾性変形する。この状態から、バンド取付部13の底面板16に連結板31の下辺が突き当たるまで連結板31を挿入すると、係止爪32と側面板15との当接状態が解除され、連結板31に形成された係止爪32が原位置に復帰して、側面板15の下辺に係合される。よって、これにより蓋部材2の内面にバンド部材4及び弾性翼体5が安定に保持される。
【0053】
係止爪32が側面板15の下辺に係合されたとき、作業者は係止爪が弾性変形する際のクリック感触とクリック音とを感得できるので、蓋部材2の内面にバンド部材4及び弾性翼体5が適正に取り付けられたことを確実に知ることができる。
【0054】
次に、
図8に示すように、バンド部材4及び弾性翼体5を壁体Aに開設された壁孔B内に挿入し、蓋部材2のリブ12を壁体Aの壁面に突き当てる。バンド部材4及び弾性翼体5を壁孔B内に挿入する過程では、まず弾性翼体5の傾斜部35が壁孔Bの挿入側の端部に当接し、弾性翼体5の押し込み力によって内向きに弾性変形されて縮径される。そして、弾性翼体5の自由端が壁孔Bの端部を乗り越えた段階で、弾性翼体5の自由端が壁孔Bに弾接され、壁体Aに対して蓋部材2が安定に仮固定される。
【0055】
このように、実施形態に係る弾性翼片5は、壁孔B内への挿入作業に伴って自動的に縮径され、その自由端が壁孔Bに弾接されるので、従来技術のように、壁孔B内への挿入作業前に爪部を収納部に収納したり、壁孔B内への挿入後に工具を用いて爪部を収納部から取り外す等の作業を行う必要がなく、蓋部材2の仮固定作業を容易化できる。
【0056】
次いで、壁孔Bの反対側に突出したバンド部材4を蓋部材3に形成されたバンド挿通孔27内に挿通し、バンド部材4に形成されたラチェット歯列33に蓋部材3に形成されたラチェット爪28を係合させる。これにより、バンド部材4からの蓋部材3の脱落が防止され、以後の作業を容易に行うことが可能になる。更に、この状態から蓋部材3を壁体Aに接近する方向に移動し、ラチェット歯列33とラチェット爪28との係合を利用してバンド部材4にテンションをかける。これにより、
図9に示すように、蓋部材2、3が壁体Aに密着される。
【0057】
なお、壁体Aに対する蓋部材2、3の取付作業に際しては、蓋部材2の平面部11とリブ12とによって構成される空間内、及び、蓋部材3の平面部21とリブ22とによって構成される空間内に、防水材又は防塵材を収納することもできる。このように、実施形態に係る壁孔閉塞具は、蓋部材2、3と壁体Aとの間に防水材又は防塵材を収納できるので、美観を損なうことなく壁孔閉塞具1の防水性又は防塵性を高めることができる。
【0058】
次に、蓋部材3から突出したバンド部材4の先端側をキャップ取付凹部23内で折り返し、蓋部材3に開設されたバンド端挿入孔25内に挿入する。これにより、余剰のバンド部材4は壁孔B内に配置されることになり、蓋部材3の外方への突出を回避できる。
【0059】
最後に、
図10に示すように、蓋部材3のキャップ取付凹部23内にキャップ部材5を装着して、バンド挿通孔27及び余剰のバンド部材4を外部から不可視の状態にする。これにより壁孔閉塞具1の美観性を高めることができる。
【0060】
なお、前記実施形態においては、弾性翼体5を、連結板31からバンド部材4と平行に起立された垂直部34と、垂直部34の上端から外向きに折り返された水平部35と、水平部35の外端から下向きに折り返された傾斜部36とから構成したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、他の構成とすることもできる。
【0061】
図11及び
図12に図示する弾性翼片60は、バンド部材4の左右両側に形成された2つのバンド部材のうち、一方の弾性翼片60が、連結板31及びバンド部材4に対して垂直をなして上向きに起立された基部61と、基部61の先端部より外向きに張り出された弾性部62とから構成されている。また、他方の弾性翼片60が、連結板31及びバンド部材4に対して垂直をなして下向きに垂設された基部63と、基部63の先端部より外向きに張り出された弾性部64とから構成されている。弾性部62の前辺62a及び弾性部64の前辺64aは、その内端部から外端部に至るにしたがって連結板31に接近する方向に傾斜している。
【0062】
本例の弾性翼片60は、このように構成されているので、壁孔B内への挿入時にまず弾性部62の前辺62a及び弾性部64の前辺64aが壁孔Bの端部に当接される。この状態から弾性翼片60をさらに押し込むと、前辺62a、64aが傾斜しているために、弾性部62、64を弾性変形させるためのモーメントが発生し、弾性部62、64が自動的に縮径される。従って、本例の弾性翼片60を用いた場合にも、前記実施形態に係る弾性翼片5を用いた場合と同様に、蓋部材2の仮固定作業を容易化できる。
【符号の説明】
【0063】
1…壁孔閉塞具、2、3…蓋部材、4…バンド部材、5…弾性翼体、6…キャップ部材、11、21…平面部、12、22…リブ、13…バンド取付部、14…前面板、15…側面板、16…底面板、17…貫通孔、23…キャップ取付凹部、24…バンド挿通凸部、25…バンド端挿入孔、26…取付孔、27…バンド挿通孔、28…ラチェット爪、29…横長開口部、30…突起挿入部、31…連結板、32…係止爪、33…ラチェット歯列、34…垂直部、35…水平部、36…傾斜部、41…本体部、42…連結ベルト、43…ヒンジ、51…外面部、52…周壁、53…爪掛け部、54…係止爪、55…透孔