【実施例】
【0033】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0034】
1.0mmolのDPETESに10mLの濃塩酸(120mmol)を加え、100℃で12時間還流攪拌した。その後、この溶液を開放系で加熱(約50〜60℃、2〜3時間)し、溶媒を蒸発させて除去し、生成物を得た(収率93%)。
【0035】
得られた生成物が各種溶媒に溶解するか否か試みた。その結果を表1に示す。生成物は、水及びジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶であった。
【0036】
【表1】
【0037】
得られた生成物を重水に溶解させ、
1H NMRスペクトルを測定した。また、生成物のIRスペクトル、
29Si NMRスペクトルを測定した。
1H NMRスペクトル、IRスペクトル、
29Si NMRスペクトルをそれぞれ
図3、
図4、
図5に示す。
【0038】
図3の
1H NMRスペクトルを見ると、ホスホン酸エステルに由来するピークは観測されず、エチル基由来の2本のブロードなピークのみが観測された。
【0039】
図4のIRスペクトルを見ると、938cm
−1、1010cm
−1、及び、1187cm
−1に、ホスホン酸基のP−OH、P(=O)O
−およびP=Oに由来する吸収ピークがそれぞれ観測された。
【0040】
これらの結果から、ホスホン酸エステル基の加水分解反応が進行したことにより、生成物がホスホン酸基を有することを確認した。
【0041】
また、
図4のIRスペクトルを見ると、1041cm
−1および1135cm
−1にSi−O−Si結合由来の吸収ピークが観測された。また、
図5の
29Si NMRスペクトルを見ると、3つのSi−O−Si結合を有するSi原子に由来するブロードなT
3ピークが主に観測された。これらのことから、DPETESの加水分解/縮合反応が進行し、Si−O−Si結合が形成されたことが確認できる。
【0042】
これらの結果から、生成物は式4で示される側鎖にホスホン酸基を有するラダー型ポリシルセスキオキサン(以下、PSQ−PO(OH)
2)であることを確認した。
【0043】
【化10】
【0044】
また、PSQ−PO(OH)
2について、酸素雰囲気下、及び、窒素雰囲気下にて、TGA(Thermogravimetric Analysis)測定を行った。その結果を
図6、
図7に示す。
【0045】
図6、
図7のいずれにおいても、210℃付近から若干の重量減少が見られる。これは、以下のように、考えられる。
図8のPSQ−PO(OH)
2の250℃での加熱後のIRスペクトルを見ると、1279cm
−1にP−O−P=O結合のP=O結合に由来するピークが生じている。即ち、側鎖のホスホン酸基の脱水縮合が起こったため、重量が減少したものである。
【0046】
また、
図6、
図7のいずれにおいても、460℃付近から大幅な重量減少が見られるが、これは主鎖に結合する側鎖のエチレン基が分解したためと考えられる。
【0047】
以上のことから、PSQ−PO(OH)
2は200℃付近まで熱的に安定であり、固体電解質として利用した場合、100℃を超える温度条件下での使用にも耐え得ることがわかる。
【0048】
続いて、PSQ−PO(OH)
2のXRD測定を行った。その測定結果を
図9に示す。PSQ−PO(OH)
2のスペクトルでは、ブロードな回折ピークが観測され、規則的な積層構造に由来するピークは観測されなかった。
【0049】
続いて、PSQ−PO(OH)
2にKOHメタノール溶液(0.2mol/L)を加えて室温で攪拌(1時間)した。これにより、ホスホン酸基の−OHを−OKに変換した式5に示すホスホネート基を側鎖に有するラダー型ポリシルセスキオキサン(以下、PSQ−PO(OK)
2)を得た。
【0050】
【化11】
【0051】
合成したPSQ−PO(OK)
2について、XRD測定を行った。その測定結果を
図9に示す。PSQ−PO(OK)
2のスペクトルでは、d値の比が低角度側から1:1/√3:1/2:1/√7:1/3である回折ピークが観測された。これは典型的なヘキサゴナル相の回折パターンであり、ロッド状PSQ−PO(OK)
2が規則的に積層した構造を形成したことを示している。
【0052】
XRDパターンから計算されたロッド状PSQ−PO(OK)
2の直径は2nm以下であり、また、
図5の
29Si NMRスペクトルよりT
3ピークが主に観測されたことから、非常に限られた空間の中でSi−O−Si結合からなるネットワーク構造が形成されていると考えられる。すなわち、合成されたPSQ−PO(OK)
2は、Si−O−Si結合から構成される8員環が一次元方向につながったラダー状構造を有することが示唆された。さらに、ラダー状構造を有するPSQ−PO(OK)
2が側鎖のアニオン同士の電荷の反発により、側鎖間距離が最も離れたコンフォメーションと考えられるねじれた構造(ロッド構造)を形成し、ヘキサゴナル積層体を構築していると考えられる。
【0053】
また、PSQ−PO(OK)
2のTEM(Transmission Electron Microscope)写真を
図10に示す。TEM写真からも、PSQ−PO(OK)
2がヘキサゴナル積層体になっていることがわかる。
【0054】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0055】
本出願は、2016年2月26日に出願された日本国特許出願2016−35903号に基づく。本明細書中に、日本国特許出願2016−35903号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。