【文献】
ROHR, M. et al.,In vitro Sun Protection Factor: Still a Challenge with No Final Answer,Skin Pharmacology and Physiology,KARGER,2010年 3月 9日,2010;23:201-212,doi: 10/1159/000292777
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面をプラズマ処理、又はアーク放電して、純水との接触角を0〜70.0度とした基板の表面、又は表面をコロナ放電処理して、純水との接触角を0〜15度とした基板の表面に、吸光性水性組成物を塗布し、
塗布後の吸光性水性組成物の吸光度を測定する、吸光度の測定方法。
表面をプラズマ処理、又はアーク放電して、純水との接触角を0〜70.0度とした基板、又は表面をコロナ放電処理して、純水との接触角を0〜15度とした基板を、台座上に固定し、さらに該基板表面に吸光性水性組成物を塗布する装置を設けてなる吸光度の測定用試料作成装置。
基板がポリメチルメタクリレート板又は石英板の表面をプラズマ処理、アーク放電処理又はコロナ放電処理してなるものである請求項5又は6に記載の吸光度の測定用試料作成装置。
【背景技術】
【0002】
以下、本発明の技術的背景について説明する。
現在、日本では化粧料における紫外線防御効果の指標として、波長290〜320nmのB波紫外線の防御能力を示すSPF(Sun Protection Factorの略)と、波長320〜400nmのA波紫外線の防御能力を示すPA(Protection grade of UVA)が用いられている。これらの測定結果を化粧料に表示する場合、日本化粧品工業連合会の定めるそれぞれの測定法基準(非特許文献1)(非特許文献2)に基づいて測定した値、またはそのグレードを表示することが求められる。
海外においても基本的にはそれぞれの地域の測定法及び表示方法(非特許文献3)に従って表示することが求められるが、基本的な測定方法はほぼ統一されている。測定法基準では、ヒトの背中を用い、背中に高出力の紫外線を照射し、その際に肌に生じる炎症反応と黒化反応の目視観察の結果から、紫外線防御効果を測定する。しかしながら、ヒトを用いると手間と費用がかかり、測定結果が出るまでの期間が長い。
加えてヒトを用いることの倫理的、医学的問題などがあるため、日本、欧州においては、ヒトを用いないで、機械にて紫外線防御効果を測定するin vitro測定法の検討が進められている(非特許文献4)。しかしながら、現在進められているin vitro測定法にしても、多くの問題点が存在することが報告されている(非特許文献5)。本発明者の検討でも、同じ試料を用いて、同じ規格の中で試験しても、最大で20倍ほどSPF値が変動することを見いだしている。
【0003】
この問題点には科学的に説明可能な明確な理由が複数存在しており、この理由を把握して、制御下で試験をすれば問題は解決する。しかし、解決できていないのが現状であると考えられる。本発明者はこの科学分野における先端技術を有しており、正確に制御が可能になるか、その制御の精度、再現性などについて検討してきた。
その結果、試料の作成段階において、試料の塗膜厚さにムラを有する場合には、紫外線吸光度を正確に測定することができない点、数μmから十数μmの薄膜を1μm程度の精度でいかに平滑に塗工するかという点、そして塗工時に単位面積あたりの塗工量を定めない点が、問題解決の鍵となっていることを見いだした。
試料が潤沢にあり、何平米という大きな平滑塗膜を形成する場合では(非特許文献6)や(特許文献1)にあるような大型の装置を用いる方法があり、ディスプレイの液晶の塗工などでも用いられている。
しかしながら、化粧料の場合は、試料の量も少なく、求められる塗工面積もたかだか数十cm
2である。従って、化粧料に適した測定方法を開発するためには、科学的現象を把握しておく必要がある。また、レジスト塗工などの分野で平滑な塗膜を形成すると言われているスピンコーターでも、実際に検討してみると、特許文献2にあるように塗膜表面に細かい筋状の構造が形成されることから平滑な表面は形成できない。塗料で平滑な塗膜を形成する際に使われるワイヤーコーターにおいても、実際に試験してみると、平滑な塗膜が形成できる化粧料とできない化粧料に分かれてしまう。
また、元々塗料やレジストの技術は数十μmの変動を許容した時に平滑という意味を持っており(非特許文献7)、求められる精度が化粧料における紫外線防御効果の測定法と比べて大きく異なっている。そのため、既存の資料を調べて平滑な塗工ができると書かれているものを集めて試験してみても、種々の性質を持つ化粧料をこのように薄膜化するのは簡単ではないことが判る。これが、非特許文献3に記載されているように、in vitro測定法が既に最初の開発から13年も経過しており、世界中で種々の改良が加えられているにもかかわらず、うまくいかない理由の1つである。
【0004】
上記の化粧料のための測定方法及び装置として、特許文献3には、液状化粧料として実質的に油性の化粧料を想定し、また粉体化粧料に対しては一旦油性溶媒中に分散させてから、石英板等に均一に塗布することにより、各化粧料の効果を測定する方法、及びそのための装置が記載されている。
しかしながら、近年、O/W型エマルションの形態で、かつ、専ら紫外線を吸収及び/又は反射する機能を備えた化粧料やサンスクリーン剤が上市されている。このような組成物の場合、塗布対象物に対しては水性溶液として挙動するが、上記特許文献3にて油性の組成物を均一に塗布したときと同様に、これらの化粧料やサンスクリーン剤も、特に紫外線を透過させないという性質を測定する際には、基材の表面に均一に塗布することが必要である。しかも、化粧料以外の分野における均一な塗布の程度よりも、明らかに塗膜厚のバラツキがより少ない塗膜の形成を必要とする。
意外にも、このような水性の組成物を基材表面に均一に塗布することは極めて困難であり、石英等の通常使用する基板をそのまま使用すると、形成されたO/Wエマルションや水溶液の塗膜には微細な凹凸が形成されたり、O/Wエマルションや水溶液が有する親水性に起因して、塗膜が島状になったり、あるいは島状の塗膜が形成されない箇所が発生したりするので、油性の組成物を塗布する方法や材料をそのまま水性の組成物の塗布に使用する場合には不適切であった。また指先にゴム製の指サックを嵌めて、この指先を用いて油状の組成物を基板に塗布することも行われているが、この方法ではより親油性である指サックの表面に組成物中の油性成分が吸着するので、塗布前の組成物の組成と、塗布後の皮膜の組成物の組成は異なっていた。そのため、この方法では組成物の性質を正確に測定することが困難であった。
また、このような組成物は、均一な皮膜を形成しないと、正確な吸光度を測定できない。そのため、場合によっては測定中に相分離を起こして、紫外線防御能を正確に測定することが困難になる。
【0005】
塗膜の表面に微細な凹凸を有する場合においては、まず最初に、塗膜全体の紫外線透過率を測定すると、その微細の凹凸に起因する塗膜厚さのバラツキは、紫外線透過率のバラツキに直結するものの、塗膜全体としては塗膜の平均厚さで平滑に形成されたときの紫外線透過率を得るものと考える。
このような予測とは異なり、微細凹凸を有する塗膜の紫外線の透過率を測定すると、平均厚さが同じ均一塗膜の場合よりも透過率が高くなり、測定値の上ではSPF値(紫外線防御指数)が低くなり、結局のところ正確なSPF値を測定することが困難になる。さらに島状の塗膜や、塗布されない島状の部分を有する塗膜に基づくと、SPF値を正確に測定できないことは当然である。
塗料やインキの分野における一般論として、水性組成物を親水性表面に塗布すると均一に塗布できることは知られているが、塗料やインキの場合には塗膜の厚さは比較的厚く、化粧料のように薄い塗膜までは想定しておらず、かつ塗布された均一表面の均一の程度に関しても厳密な程度を必要とはしない。
このように、水性化粧料のSPF値等を測定するために、膜厚が薄い均一な層を形成させることは想定しておらず、仮に均一な層を形成させようとしても、実現できないことは明らかであった。
そして、この紫外線の吸収性の測定結果と、塗布時の塗膜の挙動に関する問題は、紫外線以外の光線、例えば可視光や赤外線に関しても同様の問題があった。
液体の吸光度の測定は、例えばセルに液体を入れて測定する方法が知られているが、特に皮膚に塗布して使用する用途の液体であって、いわゆる油相と水相が分離し易い液体の場合に、これをセルに入れて測定した結果は、塗布して使用する場合の吸光度の程度を十分に反映することができず、不正確となる可能性がある。
また特許文献4に記載のように、化粧料やサンスクリーン剤の用途からみて、人の肌表面に塗布したときを再現して、その効果を測定することも考えられるが、人の肌表面の親水性等の性質は、石鹸で洗浄直後、その後の時間経過後、発汗後等の条件によって全く異なる。そのため、同じ化粧料を塗布しても場合によっては均一に塗布できるが、他の場合にはそうでないことが多い。よって、事実上、人の肌表面に塗布したときを完全に再現することは困難であった。そのため、そのような測定結果を化粧料等自体が有する特性とすることも困難であった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の吸光度の測定方法及び測定装置において吸光度を測定する対象の吸光性水性組成物としては、W/O/W型を含むO/Wエマルション型(水中油型)又はエマルションではない水分散性組成物である。また、例えばいわゆる水性化粧料又は医薬品であって、紫外線吸収剤を含有する等して紫外線を吸収したり、又は可視光や赤外線を吸収したりするものである。
このような組成物としては、化粧下地、乳化ファンデーション、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料;サンスクリーンクリーム、ノンケミカルサンスクリーン、デイエッセンス、デイケアローション等の日焼け止め化粧料等、着色用化粧料、赤外線反射または吸収用塗布剤が含まれる。また、剤型としては、たとえば液状、乳液状、クリーム状、ローション状、エッセンス状等である。
そして、頭髪以外の皮膚、好ましくは顔、身体、手足等のいずれかにこの化粧料等を塗布することで、紫外線防御効果、着色効果又は赤外線による加熱防止効果を得る。
この紫外線防御効果とは、一般に波長290〜320nmのB波紫外線に対応したSPF値、波長320〜400nmのA波紫外線に対応したUVA−PF値、またはPA分類、PPD値として表わされるが、これらの波長の防御効果を示す指標であれば特に限定されない。
着色効果としては、塗布された吸光性水性組成物が含有する顔料、染料が、太陽光や人工光中の可視光部分において選択的に吸光することで、水性組成物を塗布した外観が着色して見える効果である。
赤外線による加熱防止効果としては、吸光性水性組成物が含有する顔料、染料或いは他の成分によって、塗布後の皮膚表面に太陽光が当たっても、形成されている吸光性水性組成物からなる層が、赤外線を反射及び/又は吸収して放熱することによって、皮膚表面および深部の細胞に直接赤外線を作用させないようにする効果である。
【0014】
紫外線吸収性を発現させるために添加する紫外線吸収剤としては、O/Wエマルション又は水溶性組成物に添加されるものであれば特に限定されるものではなく、そのため油溶性及び水溶性を問わない。このような紫外線吸収剤のなかでも油溶性のものとしては、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、及び、ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また水溶性のものとしては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び/又は2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸等を使用できる。
【0015】
油溶性紫外線吸収剤として、前記ケイ皮酸系紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、ジパラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、メトキシケイ皮酸オクチル、及び、ジイソプロピルケイ皮酸メチル等が挙げられる。
【0016】
同じく、油溶性紫外線吸収剤として、前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、及び、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0017】
同じく、油溶性紫外線吸収剤として、前記安息香酸系紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸ブチル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸グリセリル、及び、パラアミノ安息香酸アミル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等が挙げられる。前記サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸トリエタノールアミン、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸アミル、サリチル酸ベンジル、及び、サリチル酸イソプロピルベンジル等が挙げられる。
【0018】
同じく、油溶性紫外線吸収剤として、前記ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−メトキシジベンゾイルメタン、及び、4−t−ブチル−4’−ヒドロキシジベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0019】
前述のほか、前記紫外線吸収剤としては、例えば、メンチル−o−アミノベンゾエート、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及び、アントラニル酸、メチル3−(4’−メチルベンジリデン)−d,1−カンファー、3−ベンジリデン−d,1−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル等が挙げられる。
【0020】
水溶性紫外線吸収剤としては、前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0021】
同じく、水溶性紫外線吸収剤のなかで、ベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤として、フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸およびその塩、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、フェニレン−ビス−ベンゾイミダゾール−テトラスルホン酸およびその塩等が好ましい。
【0022】
可視光又は赤外線を反射または吸収するものとしては、化粧料等に一般に使用される染料や、有機又は無機の顔料、金属粉体等であり、吸光性水性組成物中の水性相や、その水性相に相溶しない油性相中の一方又は両方の相中に存在できるもの、又はいずれの相にも存在しないもののいずれでも良い。紫外線を散乱、吸収する顔料の例としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化チタニアゾル、アルミニウムパウダー、金箔粉末、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール等が挙げられる。
但し、可視光又は赤外線を吸収するものが溶解しない場合には、その粒子径が塗布膜厚以下であることが望ましい。
【0023】
さらに、これらの紫外線吸収剤、可視光又は赤外線を反射または吸収するものを含有し、さらにO/Wエマルション型又は水溶性等の水性組成物とするために必要な成分、水性溶媒、油性溶媒、乳化剤、各種添加剤を含有させてなるものである。
【0024】
このときに使用できる基板は、紫外線や可視光の吸光度を測定する場合には、290〜400nmの範囲の紫外線を透過する、石英、ガラス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ISO24443に基づくプレート(以後ISOプレートという)等の板や、これらと同じ材料からなるシートを基礎とし、赤外光の吸光度を測定する場合には、同様に赤外線を吸収しない材料からなる石英等の基板を採用することができる。なお該ISOプレートとは、化粧料のSPF値等を求める際に、化粧料を塗布する基板であり、一面に凹凸を設けてすりガラスのような外観を有するPMMA製の板である。ISOプレートの例としては、HELIOPLATE(登録商標)
HD6(Helio Screen社製)等がある。なおISOプレートに化粧料を塗布する方法として、指サックを付けた指の指先もしくは指サックなしの指先で、該ISOプレート上に化粧料を塗布し塗り拡げる方法を採用している。
該ISOプレートの水に対する接触角は75度前後と大変大きく、これらの板やシートに対して、親水化のための処理を何ら行わない場合には、吸光性水性組成物を塗布しても十分に均一な塗膜を得ることができないので、これらの板やシートの表面を親水化する処理を行ない、本発明の特定の基板とする。
このような親水化の処理としては、プラズマ処理、アーク放電処理、コロナ放電処理等の物理的手段による処理を行うことが好ましく、上記の接触角となるように、処理強度を調整する。
使用するプラズマ処理、アーク放電又はコロナ放電処理用の装置としては、公知のものを採用できる。そして、これらの処理条件、つまり、印加電圧や処理時間としては、目的とする接触角となる範囲において任意に決定でき、その際の雰囲気としては、空気中のコロナ放電処理や、真空、又は酸素やアルゴン雰囲気下でのプラズマ放電処理とすることができる。中でもISOプレート又は石英基板をプラズマ処理すること、石英基板をコロナ放電処理することが好ましい。
但し、実際の処理においては、先ず最初にこれらの基板に対してコロナ放電処理やプラズマ処理等の表面処理を行い、一旦基板表面の接触角を0度等の極めて低い接触角とし、この基板を大気中に放置すると、接触角が少しづつ上昇して、本発明の方法において使用される60.0度までの範囲とすることができる。
なお、表面処理条件(処理雰囲気等)を調整することにより、処理直後の基板表面の接触角を経時後も一定にできる可能性はある。ただし、測定対象の吸光性水性組成物によって、より正確な吸光度を測定するための適切な接触角が異なるので、その適切な接触角を求めるために、多くの処理済み基板(それぞれ処理条件を変えたもの)を要する。本発明は一旦極めて低い接触角にまで処理しておき、経時的に接触角が上昇するようにすることで、1種の処理条件で処理された基板を使用して、より正確な吸光度を測定できる。また、その水性化粧料の特性が十分に発揮されたときの吸光度(つまり、人の肌に塗布した際の吸光度ではない組成物自体の吸光度)を測定できる。
なお接触角の経時による上昇は数日間がかかるので、基板への吸光性水性組成物の塗布と吸光度の測定に要する時間内での接触角の変化は小さく、測定結果に実質的に影響しない。
【0025】
測定する吸光性水性組成物により、接触角を0度程度、0〜15度程度、2〜10度程度、15〜30度程度等、任意の接触角とする。吸光性水性組成物が、日焼け防止のための紫外線吸収性日焼け止め用組成物であり、
図8及び
図11に示すように、水性ゲルタイプの吸光性水性組成物、及び親油性の有機化合物を実質的に含有しない組成物のときには、接触角を0〜25度程度とするとSPF値及びUVA−PF値が高くなる。なお、該親油性の有機化合物を実質的に含有しない組成物は、親水性の有機化合物を含有することはできる。
また
図9に示すように該紫外線吸収性日焼け止め用組成物がスプレー噴霧タイプのときには接触角を10〜28度とするとSPF値及びUVA−PF値が高くなり、さらに
図10に示すように、該紫外線吸収性日焼け止め用組成物がシリコーンオイル/水のエマルションタイプのときには接触角を60〜70度とするとSPF値及びUVA−PF値が高くなる。
これらの紫外線吸収性日焼け止め用組成物の上記の例えば4つのタイプに応じて、基板表面の接触角を上記の接触角としたときには、そうでない接触角のときに対して、より均一な被膜を形成でき、よって、より高いSPF値及びUVA−PF値を測定できる。このため、同一タイプ内で組成物を変更したときの紫外線吸収性に関する測定をより高精度に行うことができる。
図8〜
図11に示すように、接触角に依存して、SPF値とUVA−PF値の最大値が得られることは、最大値付近において、その吸光性水性組成物にとり、紫外線防御塗膜として、最も均一で安定した状態が得られることが判る。すなわち、相分離、脱濡れが生じると、紫外線防御能は低下するが、最大値付近においては、その程度が最も少ないことを示している。皮膚に塗布することを考えると、吸光性水性組成物は上記最大値以外の塗膜状態を取り得るが、その紫外線防御特性をどこの測定機関が測定しても、客観的に同じような測定値が得られることが重要であり、そのためには、上記最大値付近の接触角の領域を用いることが合理的である。
ここで、水性ゲルタイプの吸光性水性組成物とは、例えば、親水性界面活性剤を用いた水中油型製剤、増粘剤を用いて水相を増粘させ、そこにチタニアゾルなどの顔料を分散させた美容液型製剤、増粘剤を用いて水相を増粘させ、そこに増粘剤や親油型界面活性剤を用いて増粘させた油相を分散させた軟膏型製剤など、製剤の外相が水性であり、増粘剤が使用されている製剤が挙げられる。
親油性の有機化合物を実質的に含有しない組成物とは、カラミンローションのように、水性相に紫外線防御効果のある材料を分散させておき、使用時に振とうして使用する剤型、チタニアゾルなど紫外線防御効果のある微粒子金属酸化物を増粘させた水相に分散させ、必要に応じて親水性の有機化合物を含有したものでもよい美容液型の製剤等が挙げられる。ここで親水性の有機化合物の一例は、水酸基やカルボン酸基等の酸基、アンモニウム基等の極性基含有脂肪族化合物や、これらの極性基を多く有する一部の芳香族化合物である。低級アルコール、グリコール、グリセリン、カルボン酸基含有低級炭化水素等が例示される。スプレー噴霧タイプとは、低粘度のローションまたは水中油型製剤が該当し、低濃度の顔料または有機系紫外線吸収剤、赤外線反射材などが分散または溶解状態で配合されている製剤が挙げられる。シリコーンオイル/水のエマルションタイプとは、水中油型製剤において、油相にシリコーンオイルが用いられている製剤であり、例えば揮発性シリコーンとシリコーン系界面活性剤を用いて乳化している製剤や、使用時に振とうして使用する製剤や、水相を増粘させ、そこにシリコーンオイルを含む油相が分散されている製剤などが挙げられる。
例えば、基板の種類やコロナ放電処理やプラズマ処理等の処理強度にもよるものの、
図7(横軸は処理後の日数)に示すように例えば石英板に関しては、コロナ放電処理後半日から3日程度の期間放置することによって、上記の接触角とすることができる。
【0026】
また、吸光性水性組成物の粘度が低い場合、紫外線吸収率測定装置などの測定器に基板を設置するまでの間に、組成物が基板から流れ落ちてしまったりして、測定が困難になるケースがある。そのような場合においては、以下の方法により、対処が可能となる。
基板上の一部区域に試料を塗工する場合には、親水化処理の前に基板の試料塗工面上の該一部区域を規定するための規制部材を設けておくことができる。この規制部材による被覆として、基板表面に対して、公知の剥離可能な粘着剤層や接着剤層を介して、樹脂層、紙層、金属層等を設けてなること、あるいは、公知の剥離可能な塗料やインク等の硬化後や乾燥後に剥離可能な塗膜層を形成してなることができる。
これにより基板の一部区域は親水化処理されるが、該規制部材により結果的に被覆される基板表面は親水化処理されないので、親水化された一部区域と、隣接する規制部材による被覆された区域の間には、基板表面の液体の接触角に差が生じることになる。規制部材を剥離した後に塗り拡げ装置1によって基材上に試料を塗布した結果、親水化された一部区域には塗工されるが、規制部材により被覆されていたために親水化されなかった基材表面には試料が塗布されてないことになる。このようにして基材上の一部区域に選択的に試料を塗布することができ、その塗布された試料は一部区域外に拡がったり、にじみ出たり、流出したりすることがない。
【0027】
特に、本発明に基づいてSPF値を測定するには、親水性を有する基板表面に紫外線吸収剤含有水性組成物を塗布し、紫外線吸収率測定装置により、吸光度として塗膜の紫外線吸収スペクトルを測定して、この測定結果を基に、SPF値の測定値を求める。
吸光性水性組成物を、上記基板の表面に塗布する手段としては、均一に塗布することができる手段であれば、特に限定されるものではないが、例えば、下記の液状化粧料の紫外線防御効果を測定する方法をそのまま、又は紫外線防御効果に代えて、着色効果や赤外線吸収効果を測定する方法として採用することができる。
着色効果や赤外線吸収効果の測定は、紫外線と同様に、可視光や赤外線の吸収スペクトルを測定することによって行われる。
【0028】
下記a)〜d)の工程を有する、液状化粧料の紫外線防御効果を測定する方法について説明する。
a)基板とのなす角度が30度以上である塗り拡げ部材を、基板表面に対して好ましくは20〜25μmの間隙で、好ましくは一定の速度(1〜10mm/s又は1〜5mm/s)にて移動させて、基板上に平滑な液状化粧料層を塗工・形成する工程
この塗り拡げ部材は、例えば
図1に示す塗り拡げ装置1によって移動される。
塗り拡げ装置1は塗り拡げ部材2及び該塗り拡げ部材2の両端を支持するための支持部3を有する装置である。
該塗り拡げ部材2は該支持部3に対して図示しない構造、例えば、塗り拡げ部材の両端部に設けたピンが、支持部3に設けられた上下方向に延びた溝に嵌合される等することによって上下に自由に移動が可能に支持されてなり、該塗り拡げ部材の自重によって、塗り拡げる対象である化粧料から受ける揚力に抗し、基板に対して該化粧料を均一に塗布するようにしてなるものである。
この
図1に記載の塗り拡げ装置1は、説明のために他の部材を図示していないが、塗り拡げ装置として一体のものとするために、例えば2つの支持部3を接続させる部材アングル等を設けることも可能である。
また、
図2は該塗り拡げ装置1を下面からみた図であり、塗り拡げ部材先端6が塗り拡げ部材2の先端に位置している。
【0029】
塗り拡げ装置1に備えられた塗り拡げ部材2及び支持部3の材質は、金属であることが好ましく、特にステンレス、ジュラルミン等寸法精度が良く、かつ加工可能な材料が好ましい。本発明で用いる塗り拡げ部材の断面形状は多角形であることが好ましい。
図3には、基板4を固定するための台座Bが設けられている。さらに、
図3及び
図4に示すように矢印で示す塗り拡げ装置の進行方向に向いた、塗り拡げ部材の面と、塗工される基板4の表面とのなす角度が30度以上であることが必要である。30度未満の場合では、化粧料5によって塗り拡げ部材にかかる揚力のために膜厚が一定にならず、化粧料によっては測定精度が低くなる場合がある。塗り拡げ部材が円筒状、あるいは楕円の筒状等のように、塗り拡げ部材の最も基板に近い部分と塗工される基板表面のなす角度が0度に近くなる形状の場合も同様に塗り拡げ部材に係る揚力のために膜厚が一定にならない。
また、塗り拡げ部材先端6と基板4とで形成される間隙の高さが20〜25μmの範囲にあることが好ましい。20μm未満の場合、塗り拡げ部材の加工精度が極めて高くないと、平滑な塗膜が得られない可能性があり、一般的な金属製塗り拡げ部材の加工精度から考えると、平滑な塗工ができない可能性がある。20〜25μmの範囲であれば、加工精度と塗り拡げ装置の量産性が両立する領域である。25μmを超えると、塗膜が厚くなり、塗膜を透過する紫外線量が減少する結果、より高い感度を有する測定器が要求される問題を生じる。
【0030】
塗り拡げ部材の質量は、塗り拡げ部材を単独で用いる場合では100g以上あることが好ましく、さらに400g以上あることが好ましい。質量が小さいと揚力の影響を受けやすく、平滑な膜が形成できなくなる原因になる。また、質量が大きすぎると基板やそれを支持している板にゆがみが生じ、基板が平らでなくなってくるため、塗工部位による膜厚が変化する原因になる。どれだけの質量がかけられるかは基板や支持している板の強度にもよるので一概にいえないが、5mm厚の超々ジュラルミンを用いた場合では、塗り拡げ部材の上から加重し、自重と合わせた荷重が2kgを超えると基板のゆがみが無視できない大きさとして現れることが観察されている。
【0031】
次に、一例として、塗り拡げ装置1を用いる紫外線防御効果を測定する方法の例を示す。
図5に示すように、塗り拡げ装置1を基板4上にて移動させて、化粧料等の試料を基板4上に均一に塗布する。
図5には、塗り拡げ装置1を基板4上にて移動させる機構に関しては図示をしないが、下記にて説明するように一定の速度にて移動を行う。
なお、化粧料等の試料は、塗布されるべき全量を塗り拡げ開始時に塗り拡げ部材の前部に供給しておくことも可能であるが、その場合には、塗り拡げ部材に係る揚力、つまり多量の試料により塗り拡げ部材を上方に向けて押す力が大きくなるので、試料を塗り拡げ部材の前部に供給する際には、逐次もしくは連続して適量を供給するか、事前に試料を基板4上にヘラなどを使用して塗り拡げておくことにより、塗り拡げ工程時にわたって、塗り拡げ部材に係る揚力をできるだけ小さく、さらに揚力の変動量も小さく、つまり、塗り拡げ部材前部に存在する試料もできるだけ少なくすることが、より平滑な塗膜を形成するためには必要である。
塗り拡げ装置を移動させるに伴って、
図5にて示すような、移動方向に平行に形成されるSで示されるストライプ模様形成による試料の厚みのムラを解消することが必要であるし、また、
図5においてA−Aの線において切断した状態を示す
図6に示すように、移動方向に垂直な方向に形成される筋の厚みのムラも解消することが求められる。
【0032】
そのために下記に示すような条件等を設けることになる。
一定の速度での塗工とは、電動シリンダ、電動アクチュエーター、産業ロボット、搬送機など、一定速度で運動できる装置を用いて、基板または塗り拡げ装置を一定の速度で移動させて塗工することをいい、特にリニアモーターを用いたものは低速度領域での速度安定性が高く、トルクが大きいことから、重い金属性塗り拡げ装置を用いても安定した塗工ができること、速度や加速度の履歴が残ることから好ましい。一定の速度としては、毎秒1〜10mm、より好ましくは毎秒1〜5mmの速度で塗工することが好ましい。毎秒1mm未満では、塗工に時間がかかり過ぎ、化粧料に含まれる揮発性溶媒が塗工中に揮発して、塗膜部位による成分の不均一性が生じる可能性があり、10mmを超えると、ストライプ模様が形成されやすくなる問題がある。作業性、揮発性の問題などを加味すると、毎秒5mmの設定が最も好ましい。
【0033】
また、塗料等を塗工するためのバーコーター等は、毎秒150mmなどの高速で被塗工物を移動させて塗工するものであり、塗料等のように粘度が低いものではこの速度で塗工しても、ストライプ模様は時間と共に解消するが、本発明においては、化粧料であるから、毎秒150mm等の高速で塗工する必要がなく、しかも化粧料はより粘度が高く、さらに、高速での塗工は揚力がかかりやすく平滑な塗工が難しいことから、極低速での塗工が必要であり、さらに、塗り拡げ装置を基板に対して移動させる方法であり、塗料等における平滑な塗膜を形成させる条件とは、その原理においても全く異なる。なお、本発明でいう平滑な塗膜とは、表面に凹凸がないだけでなく、膜厚も一定な塗膜のことを指す。
【0034】
塗り拡げ装置1を用いて一定の速度で塗工するための手段としては、例えば非特許文献8にあるような低速での定速運動手段を有するリニアモーター、電動シリンダなどに、高度に平滑に加工された金属板あるいは柱(自重で変形したり、塗り拡げ部材の荷重により変形することを抑制するために、超々ジュラルミンなどの高強度、軽比重材料が好ましい)を支持部を介して水平に固定、または接続し、これに塗り拡げ部材の固定手段となるバーなどを設置し、ここに塗工するための基板や塗り拡げ部材を設置して塗工する手段が挙げられる。
この手段については、市販製品が存在していないため、特注または自作が必要となる。
なお、市販の塗料試験用の塗工試験器は一般に高速での塗工に適したモーターとギア比を用いており、低速度域での速度の安定性と精度が悪く、平滑な塗膜を形成する目的には適していない場合が多い。塗工試験機のカタログを見ると、一般に塗工速度の単位としてm/分の単位を用い、速度の調整も1m/分の単位であり、元々mm/分〜cm/分の単位で表わされる低速度はこれらの装置の概念にない領域である。特に、化粧料の場合、多様な粘度とチキソトロピー性、接着性があり、このような製剤を平滑に塗工する場合は、塗工手段には充分なトルクと速度安定性が求められる。また、塗料試験器は塗工器具を固定し、塗工面にしっかり圧着する構造を持つことが一般的である。
しかしながら、例えば塗工器具の両端を固定した場合、塗工膜厚は中央部と端部で変化してしまい、平滑な塗膜が形成できない問題があり、塗工器具を塗工面に圧着する形態を持つ塗工試験機では、本発明の求める塗工精度が得られにくい問題がある。
【0035】
本発明で用いる基板4は、平滑であることが必要である。本発明でいう平滑とは、単位面積あたりの平均塗工量と標準偏差を測定した場合に、標準偏差/平均塗工量の値が0.15以下、好ましくは0.1以下であることをいう。ここで、凹凸があると、塗膜の膜厚が凹凸部分で変化していることになり、目標とする単位面積あたりの塗工量における紫外線防御効果を計算により算出する工程において、得られる紫外線防御効果の測定値が不正確になる問題がある。例えばISO24443及びFDA法では凹凸のあるPMMA(ポリメチルメタクリレート)製プレートを使用することになっているが、この凹凸は2または6μm程度とされている。基板との間隙が25μmの塗り拡げ部材を用いて塗工した試料の膜厚は10μm内外になるので、平均膜厚の数十%の変動をこの凹凸は与えることになる。高い紫外線防御効果を有する製品の場合、この変動幅が紫外線防御効果の測定値に与える影響は巨大であり、信頼性を失う原因となることから好ましくない。本発明で用いる基板4は、純水に対する接触角が所定の範囲の親水性を有することはもちろん、石英、合成石英、ポリメチルメタクリレートなど290〜400nmの範囲の紫外線に対して透明性が確保されている材料の表面を十分に親水化したものを用い、塗り拡げ部材の自重による基板への沈み込みを考慮すると、硬質材料である石英、合成石英製の基板がより好ましい。
平均塗工量と標準偏差を求めるために、基板上の複数の点及び/または、複数の基板上に形成した塗膜を対象に塗工量の測定を行う。
【0036】
塗り拡げ装置1を用いて、一定の速度にて基板上に平滑に塗工する際に、試料の置き方に特徴がある。
粘度が低い化粧料の場合は、塗り拡げ装置の進行方向前面に充分な試料を置いても揚力による影響は少ないが、粘度が高い化粧料の場合は、塗り拡げ部材に揚力がかかりやすく、膜厚が変動しやすい問題がある。
特に塗り拡げ装置の進行方向前面に大きな化粧料の塊があると、塗り拡げ部材は化粧料に乗り上げる形になり、膜厚が不均一になる原因となる。そのため、化粧料はヘラなどを用いて、事前に塗り拡げ装置の進行方向前面に薄く塗り拡げてから、すばやく塗り拡げ装置を走らせて平滑な塗膜を形成することが好ましい。また、塗り拡げる量であるが、少なすぎると膜厚が不均一になる原因となる。目安としては、乾燥前の塗布量として、0.3〜30.0mg/cm
2程度の量を塗り拡げておくことが好ましく、0.4〜5.0mg/cm
2程度とすることもできる。
【0037】
塗り拡げ装置1は、試料の通過路にあたる部位の寸法(塗り拡げ部材の長さではなく、塗り拡げ装置の進行方向における寸法、つまり
図6における塗り拡げ部材先端部6の幅)において、最大値/最小値の値が2倍未満であることが好ましい。
【0038】
b)形成された該層が乾燥しない状態で、該基板の一部と単位面積あたりの塗工量または、該層の厚さを測定する工程
試料の単位面積あたりの塗工量を測定する場合は、一例として、
図6に示すように、以下の方法に従うことが好ましい。但し、目的が達せられるのであれば、実施する順番は問わないし、一部工程を簡略化することも可能である。
A)化粧料に用いる揮発性成分が不〜難透過性であり、一定の大きさに切断
されてなる樹脂フィルムを用意する。
B)樹脂フィルムの単位面積あたりの質量を求める。
C)切断されてなる樹脂フィルム7の質量を測定し、単位面積あたりの質量
から、切断した樹脂フィルムの面積を求める。
D)測定する基板4の質量を求める。
E)本発明の方法に従い、化粧料の試料5を塗工し、直後に切断したフィル
ムを試料5の表面に静置する。
F)樹脂フィルムに覆われていない部位の試料を拭き取る。
G)樹脂フィルムと化粧料と基板からなる試料の質量を測定する。
H)上記の測定値から単位面積あたりの化粧料の質量を測定する。
【0039】
ここで言う化粧料に用いる揮発性成分が不〜難透過性の樹脂フィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムが好ましく、特に50〜100μm厚のポリエチレンテレフタレート製フィルムが好ましい。塗工直後に樹脂フィルムを試料に覆い被せることで、揮発性成分の揮発を抑制し、安定した測定値が得られる。もし揮発性成分が測定中に揮発すると、化粧料の濃度が変化し、それにつれて粘度が上昇する等の変動を生じるので、正確な塗工量が測定できず、測定までの時間に依存して、測定値が変化することになる結果、同じ試料の測定であっても、測定機関、測定者による測定値の変動の幅が大きくなる原因になる。
なお、測定全般にいえることであるが、本発明の場合、測定は0.1mgの単位まで正確に計測する。この際に、試料の静電気の影響を強く受けるため、除電装置を用いて、試料の除電を充分に行い、測定を行うことが好ましい。
【0040】
また、試料の膜厚を測定する場合では、非接触の光学式膜厚測定装置を用いることが可能である。
【0041】
次に、上記の平滑に塗工した試料の紫外線防御効果を測定する工程では、SPFアナライザーなどの市販の紫外線防御効果測定装置を用いることが好ましい。
試料を測定する際に、測定部位としては、試料の塗工開始位置からなるべく遠い位置を測定することが好ましい。また、測定は290〜400nmの範囲を1nm単位で測定することが好ましい。
【0042】
次に、c)工程、d)工程のデータから、目標とする特定の単位面積あたりの塗工量における紫外線防御効果を計算により算出する工程について説明する。
上記工程により、単位面積あたりの塗工量(もしくは膜厚)とその塗工量における波長別の紫外線防御効果が測定できている。しかしながら、試料により、その塗工量は変化し、同じではないため、そのままの計測値は相互の比較ができない。そのため、特定の単位面積あたりの塗工量を設定し、その値に合わせて、計算上で波長別の吸光度(または透過率)を求め、SPF値やUVA−PF(A波紫外線防御指数)値を求める必要がある。
特定の単位面積あたりの塗工量をMとし、試料の単位面積あたりの実測塗工量をNとすると、M/Nの値を波長別の吸光度(吸収スペクトルと共に求めた値)に掛けることで、塗工量Mの時の紫外線防御効果曲線を計算により得、この曲線からSPF値やUVA−PF値を算出する。膜厚基準の場合は、目標とする膜厚を定め、同様の操作にて紫外線防御効果曲線を得、この曲線からSPF値やUVA−PF値を算出する。なお、吸光度ではなく、透過率を基準にして求めることも可能である。
【0043】
この段階では目標とする特定の単位面積あたりの塗工量が未知である。そこで、市販の製品を購入し、SPF値、PA分類と、上記の計算値との関係から、目標とする特定の単位面積あたりの塗工量がどの程度であると、市販製品の表示値に近くなるかを調べてみた。
日本製品としては、資生堂社、カネボウ化粧品社の製品を基準にすると、1.0mg/cm
2の塗工量とすると表示値に近い測定値となる。一方、欧州ロレアル社の製品を基準にすると、0.75mg/cm
2の塗工量とすると表示値に近い測定値となる。この際に、塗工量とSPF値、UVA−PF値のグラフを描き、近似式を求めることが好ましい。液状の化粧料の場合は、線形近似もしくは指数近似を用いることが好ましい。
なお、この数値を算定するにあたり、SPF、UVA−PFの計算は、Solarlight社製SPF-290S付属のSPF V3.0ソフトウエアを用いた。なお、現在各地域で検討されている紫外線防御効果算出プログラムを用いることも可能である。
上記の工程から得られたデータを元に、目標とする特定の単位面積あたりの塗工量での紫外線防御効果を測定する。なお、この際に、塗工量とSPF値、UVA−PF値のグラフを描き、近似式を求めることが好ましい。粉体化粧料の場合は、線形近似ではなく、指数近似を用いると相関性を示すR2乗値が1もしくは1に近い値を示すことから好ましい。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(接触角の測定方法)
接触角の測定は、接触角測定装置(エキシマ社製SImage Entry 5)を用いて、蒸留水を3.1μL試料に滴下した際の接触角の測定を数回実施、その平均値を求めることにより実施した。
(SPF及びUVA−PFの求め方)
SPF、UVA−PFの計算は、290〜400nmの範囲を1nm単位で測定した結果に基づき、Solarlight社製SPF-290S付属のSPF V3.0ソフトウエアを用い、ISO24443(2012)に基づいて求めた。該ソフトウエアでは下記式による計算を行った。
E(λ)及びP(λ)は、erythema action spectrum
I(λ)は、spectral irradiance received from the UV source
A
0(λ)は、mean monochromatic absorbance of the test product layer before UV exposure
dλは、wavelength step
Cは、0.8〜1.6の間のスカラー値
【実施例1】
【0045】
プラズマ処理したISOプレート及びプラズマ処理していないISOプレートを用意した。この2種のプレートを隣接して並べ、その上面に塗り拡げ装置を用いて、試料1を塗布した。塗布後23℃で1h放置して塗膜を乾燥し、乾燥後の塗布量は1.3g/cm
2であった。
プラズマ処理は、日本電子社製AUTO FINE COATER JEC−3000FC型の金属ターゲットをアルミニウムに変更し、蒸着が生じないようにした上で、40mAの条件で23秒間真空下にプラズマを照射した。
塗布直後及び乾燥直後に塗膜の紫外線の吸収波長(吸収スペクトル)を測定し、波長毎の吸光度の結果からSPF値及びUVA−PF値を求めた。
その結果を表1に示す。
試料1:水、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、エタノール、PG(プロピレングリコール)、ジメチコン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、BG(1,3−ブチレングリコール)を含有する組成物。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示す結果によれば、O/Wエマルションの紫外線吸収剤含有水性組成物をプラズマ処理ISOプレート(接触角は0度)に塗布すると、塗布後1時間後であっても、塗布層は均一な層のままであり、塗布直後とほとんど変わらないSPF及びUVA−PFの測定値が得られた。
他方、プラズマ処理しないISOプレートに塗布すると、均一に塗布することはできず、測定されたSPF及びUVA−PFの値は、不安定であって、経時により明らかに変化した。
この結果によれば、プラズマ処理したISOプレートを用いることによって、SPFやUVA−PF値を測定する際の測定のバラツキ等を無くし、O/Wエマルションの紫外線吸収剤含有水性組成物の特性を最も発揮できた状態で、より正確に測定できる。
【実施例2】
【0048】
プラズマ処理していない石英板(水の接触角は74.9度)を用意した。またプラズマ処理直後の石英板(水の接触角は0度)、その後経時して、接触角が6.3度、18.2度、25.1度の石英板を用意した。これらの3種のプラズマ処理された石英板とプラズマ処理していない石英板を隣接して並べ、その上面に塗り拡げ装置を用いて、塗工速度5mm/s、石英板とアプリケータとの間隔は25μmで試料2を塗布した。塗布後23℃で5分間放置した後、紫外線の吸収波長(吸収スペクトル)を測定して、塗膜のSPF値及びUVA−PF値を求めた。
その結果を表2に示す。
試料2:水、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ポリエチレングリコール−30水添ひまし油、エトキシジグリコール、BG(ブチレングリコール)、グリセリン、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ステアリン酸スクロースを含有する組成物。
【0049】
【表2】
【0050】
表2において、接触角が18.2度であるときと、25.1度であるときにSPF及びUVA−PFの値が高くなった。これは、これらの接触角のときに石英板上において相が分離することなく均一に塗布されており、結果としてこれらの値が高くなったものである。このように接触角によってSPFやUVA−PFの値が大きく変動するが、これらの2種の接触角のときに、吸光性水性組成物が本来有するSPFやUVA−PFの値となることがわかる。そしてこのときのSPFやUVA−PFの値は、塗布対象に依存しない、吸光性水性組成物自体の特性であり、その吸光性水性組成物が有する特性を最も発揮できたときの特性であることがわかる。
【実施例3】
【0051】
石英板の周囲2mmをマスキングテープを用いて被覆した後、コロナ放電処理し、次いでマスキングテープを剥離した。この基板を用いて、石英板とアプリケータとの間隔は25μmで精製水を塗工した。
精製水は基板を多少傾けても流れ落ちず、安定な塗膜を形成していた。