特許第6842793号(P6842793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6842793
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】金属イオン水生成容器
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20060101AFI20210308BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C02F1/50 531F
   C02F1/50 531E
   C02F1/50 540E
   C02F1/50 550D
   C02F1/50 560F
   C02F1/461 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-557349(P2020-557349)
(86)(22)【出願日】2020年7月9日
(86)【国際出願番号】JP2020026902
【審査請求日】2020年10月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509119197
【氏名又は名称】株式会社エイエムジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宏紀
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−267637(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0029408(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0364886(US,A1)
【文献】 特開2001−269573(JP,A)
【文献】 特開2003−055068(JP,A)
【文献】 特開平09−000940(JP,A)
【文献】 特開2005−118726(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3154457(JP,U)
【文献】 特開2005−103428(JP,A)
【文献】 特開2001−114350(JP,A)
【文献】 特開2005−131611(JP,A)
【文献】 特開2004−154779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50
C02F 1/46
C02F 1/30
C02F 1/68
C02F 1/72
A61L 2/00
A61L 9/00
A01N 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を格納する容器本体と、
前記容器本体内に格納された前記水と接することができ、細菌を低減する効果を有する金属である第一の金属の微粒子が分散した第一の樹脂によって形成される主部材と、
前記主部材とは別個の部材であり、前記容器本体内に配置され、前記容器本体に格納された前記水と接することによって、前記水に水素イオンを発生させる性質を有する第二の金属を含む部材で構成される補助部材と、
外部から前記容器本体の内部に光を導入するための光導入部と、
を有し、
前記主部材は、前記容器本体自体、または、前記容器本体内に配置される部材であり、
前記第一の金属は、銅、銀または亜鉛であり、
前記第二の金属は光触媒として機能する二酸化チタンまたは酸化タングステンである、
金属イオン水生成容器。
【請求項2】
前記補助部材は、前記第二の金属の微粒子が第二の樹脂に分散されて形成される、
請求項1に記載の金属イオン水生成容器。
【請求項3】
前記主部材は、前記第一の樹脂に、前記第一の金属の微粒子とセラミックの微粒子が分散して形成される、
請求項1または請求項2に記載の金属イオン水生成容器。
【請求項4】
前記主部材は、前記第一の樹脂に、前記第一の金属の微粒子とセラミックの微粒子が分散して形成され、
前記補助部材は、前記第二の樹脂に、前記第二の金属の微粒子とセラミックの微粒子が分散して形成される、
請求項2に記載の金属イオン水生成容器。
【請求項5】
前記主部材は前記容器本体であり、前記容器本体の内面は、複数の凸部及び凹部を有する凹凸面として形成されている、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の金属イオン水生成容器。
【請求項6】
前記主部材の表面において、前記第一の金属の微粒子は露出している、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の金属イオン水生成容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属イオン水を生成するための金属イオン水生成容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンが滅菌や殺菌に有効であることが知られている。
【0003】
そして、銀や銅を内側の被膜として有する容器を用いて、金属イオンを含む水を生成する容器が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−99919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の技術においては、普通の水道水を容器に投入するだけでは溶出する銀金属イオンの濃度は極めて低い。これに対して、希塩酸などの酸を加えることによって、金属イオンの濃度を高くすることができるが、使用者において、使用する度に希塩酸などの酸を加えることは煩雑である。
【0006】
本発明は、上記を踏まえて、容易に金属イオン水を生成することができる金属イオン水生成容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、水を格納する容器本体と、前記容器本体内に格納された前記水と接することができ、細菌を低減する効果を有する金属である第一の金属の微粒子が分散した第一の樹脂によって形成される主部材と、前記容器本体の内側に配置され、前記容器本体に格納された前記水と接することによって、前記水に水素イオンを発生させる性質を有する第二の金属を含む部材で構成される補助部材と、を有する金属イオン水生成容器である。
【0008】
希硫酸やクエン酸などの酸を水に加えることによって、水中に配置した金属銅などの金属からの金属イオンの溶出が促進される事象は知られている。本発明の発明者は、その事象の原因として、水中の水素イオンが作用していることに着眼した。そして、水中に水素イオンを発生させる補助部材を配置することによって、電池などの外部からの電源を要する電気分解を用いることなく、水中に配置した金属銅からの金属イオンの溶出を促進させる技術思想に想到した。第一の発明の構成によれば、主部材は、細菌を低減する効果を有する金属である第一の金属の微粒子が分散した第一の樹脂によって形成される。そして、補助部材は、水に水素イオンを発生させる性質を有する第二の金属を含む部材で構成される。したがって、容器本体に水を格納すると、補助部材が水中に水素イオンを発生させ、その水素イオンが主部材からの金属イオンの溶出を促進する。これにより、使用者は、希硫酸やクエン酸などの酸を使用することなく、容器本体に水を入れるだけで容易に金属イオン水を生成することができる。
【0009】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記補助部材は、前記第二の金属の微粒子が第二の樹脂に分散されて形成される、金属イオン水生成容器である。
【0010】
第二の発明の構成によれば、補助部材は、第二の金属の微粒子が第二の樹脂に分散されて形成されるから、構造の自由度が大きい。このため、金属イオン水生成容器の部品を補助部品とすることができる。例えば、容器本体の上部にポンプを配置する場合に、ポンプに水を吸い上げるための筒状部材を補助部材として構成することができる。あるいは、補助部材を水と等しい比重の部材として構成し、容器本体に入れられた水の中を浮遊する浮遊部材として構成することができる。
【0011】
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の構成において、前記主部材は、前記第一の樹脂に、前記第一の金属の微粒子とセラミックの微粒子が分散して形成される、金属イオン水生成容器である。
【0012】
本発明の発明者は、主部材に含まれる第一の金属の量が同一であっても、樹脂中にセラミックの微粒子を分散させることによって、銅イオンの溶出量が増加する現象を見出した。この点、第三の発明の構成によれば、主部材は、第一の樹脂に、第一の金属の微粒子とセラミックの微粒子が分散して形成されるから、効率良くより高濃度の金属イオン水を生成することができる。
【0013】
第四の発明は、第二の発明の構成において、前記主部材は、前記第一の樹脂に、前記第一の金属の微粒子とセラミックの微粒子が分散して形成され、前記補助部材は、前記第二の樹脂に、前記第二の金属の微粒子とセラミックの微粒子が分散して形成される、金属イオン水生成容器である。
【0014】
第四の発明の構成によれば、主部材は、第一の樹脂に、第一の金属の微粒子とセラミックの微粒子が分散して形成され、補助部材は、第二の樹脂に、第二の金属の微粒子とセラミックの微粒子が分散して形成されるから、一層効率良くより高濃度の金属イオン水を生成することができる。
【0015】
第五の発明は、第一の発明乃至第四の発明のいずれかの構成において、前記主部材は前記容器本体であり、前記容器本体の内面は、複数の凸部及び凹部を有する凹凸面として形成されている、金属イオン水生成容器である。
【0016】
第五の発明の構成によれば、容器本体の内面が凹凸のない曲面または平面である場合に比べて、内面が水と接する面積を大きく構成することができるから、より一層有効に微粒子による細菌低減効果を活用することができる。
【0017】
第六の発明は、第一の発明乃至第五の発明のいずれかの構成において、前記主部材の表面において、前記第一の金属の微粒子は露出している、金属イオン水生成容器である。
【0018】
第六の発明の構成によれば、第一の金属の微粒子は露出しているから、効果的に水中に金属イオンを溶出させることができる。
【0019】
第七の発明は、第一の発明または第六の発明のいずれかの構成において、第一の金属は銅または銀である、金属イオン水生成容器である。
【0020】
第八の発明は、第一の発明乃至第七の発明のいずれかの構成において、前記第二の金属は光触媒として機能する金属である、金属イオン水生成容器である。
【0021】
第八の発明の構成によれば、第二の金属に光が当たることによって、第二の金属から電子が発生し、これにより、容器本体に格納された水から水素イオンが発生し、容器本体を構成する第一の金属からの金属イオンの溶出が促進される。
【0022】
第九の発明は、第八の発明の構成において、前記容器本体は、外部から光を導入する光導入部を備える、金属イオン水生成容器である。
【0023】
第九の発明の構成によれば、光導入部を介して容器本体内に導入した光によって、第二の金属から電子を発生させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容易に金属イオン水を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一の実施形態にかかる容器の概略側面図である。
図2】容器本体を上下方向に切断した概略断面図である。
図3】吸引チューブを上下方向に切断した概略断面図である。
図4】容器本体の壁の拡大概念図である。
図5】吸引チューブの壁の拡大概念図である。
図6】吸引チューブを構成する金属から電子が発生する様子を示す概念図である。
図7】水から水素イオンが発生する様子を示す概念図である。
図8】容器本体から銅イオンが溶出する状態を示す概念図である。
図9】銅イオンの溶出の状態を示すグラフである。
図10】容器の使用方法の一例を示す図である。
図11】本発明の第二の実施形態にかかる容器の壁の拡大概念図である。
図12】実験結果を示すグラフである。
図13】本発明の第三の実施形態にかかる吸引チューブの壁の拡大概念図である。
図14】本発明の第四の実施形態にかかる容器の壁の拡大概念図である。
図15】本発明の第五の実施形態にかかる容器の壁の拡大概念図である。
図16】本発明の第六の実施形態にかかる容器を示す概略図である。
図17】浮遊部材の拡大斜視図である。
図18】容器本体に水を入れた状態における浮遊部材の浮遊状態を示す概念図である。
図19】本発明の第七の実施形態にかかる容器を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態を説明する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
【0027】
<第一の実施形態>
本発明の実施形態について以下図面を参照して説明する。なお本明細書で「上下方向」の表現は、図1においての上下を基準として「上下方向」とする。具体的には、容器本体2とポンプ部材10とを結ぶ方向が上下方向である。ポンプ部材10が位置する方向を上方、容器本体2が位置する方向を下方と呼ぶ。そして、上下方向と垂直な方向を「水平方向」と呼ぶ。
【0028】
図1は本発明の第一の実施形態にかかる容器100の側面図である。容器100は、容器本体2とポンプ部材10から構成される。容器本体2の上端部は開口しており、その上端部にポンプ部材10が配置される。容器本体2に水が格納される。容器本体2の内部に吸引チューブ6が配置される。吸引チューブ6は円筒状の部材である。吸引チューブ6はポンプ材10に接続されている。容器100は、ポンプ部材10の作用によって、吸引チューブ6を介して、容器本体2に格納した水を吸い上げて、外部に噴出することができるように構成されている。容器100は金属イオン水生成容器の一例である。容器本体2は容器本体の一例であり、主部材の一例でもある。吸引チューブ6は補助部材の一例である。容器本体2の上端部の開口は、光導入部の一例である。
【0029】
図2は、容器本体2を上下方向に切断した概略断面図である。容器本体2は、内面2aと外面2bを有する。内面2aによって空間S1が画され、空間S1に水が格納される。なお、「水」は日本国における平均的な性質を有する水道水でよい。また、「水」は、純粋な水に限定されず、例えば、クエン酸等の酸を加えた水であってもよい。
【0030】
図3は、吸引チューブ6を上下方向に切断した概略断面図である。吸引チューブ6は、内面6aと外面6bを有する。内面6aによって空間S2が画され、空間S2を水が通過する。吸引チューブ6は、容器本体2の内面と接触しない位置に配置されている。
【0031】
ポンプ部材10は、公知の手動式のポンプ機構で構成する。ポンプ部材10の部品は、例えば、ポリプロピレン(PP)等の樹脂を射出成型することにより構成する。公知のポンプ機構は、例えば、二つの逆止弁もしくは逆止弁に類似の機構を上下に並べ、ポンプの頭部分を押圧することで、両弁の間の水を吐出した後、ポンプの頭部分が元の位置に戻ることで内部の水を両弁の間に吸い上げる構成である。
【0032】
本実施形態では使用者がポンプ部材10の頭部分を上から押圧することで、吐出口から一定量ずつ水を外部へ吐出し、ポンプ部材10の内部に備えた付勢部材で頭部分がもとの位置に戻るときに、吸引チューブ6から容器本体2内の水を一定量ずつ吸引する。ポンプ部材10の少なくとも一部は、光透過性の樹脂材料で構成されており、外部の光がポンプ部材10、及び、容器本体2の上端部の開口を通過して容器本体2の内部に侵入できるように構成されている。
【0033】
図4は、容器本体2の壁の拡大概念図である。具体的には、図4は、図2の容器本体2の壁の領域A1の拡大概念図である。容器本体2は、銅の微粒子30が樹脂4に分散することによって形成される。具体的には、容器本体2は、銅の多数の微粒子30と樹脂4を混合し、シランカップリング材など適宜のカップリング材、その他、必要に応じて添加剤を加えて射出成型することによって形成されている。容器本体2を構成する樹脂は、光透過性を有する樹脂が望ましい。樹脂の種類は、例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系の樹脂を使用することができる。銅は、第一の金属の一例である。なお第一の金属は、細菌を低減する効果を有する金属であればよく、銅に限らず、例えば、銀や亜鉛であってもよい。本明細書において、「銅」は、銅及び酸化銅を含むものとする。樹脂4は第一の樹脂の一例である。
【0034】
微粒子30の大きさは、容器本体2の壁の厚さW1よりも十分に小さい大きさとして規定される。微粒子30の大きさとして、例えば、微粒子30の粒度分布の極大値(d50)を使用する。d50に相当する直径L1を微粒子30の大きさとする。直径L1の定義は球相当径とする。直径L1は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置を使用して測定する。なお、本実施形態とは異なり、直径L1は平均粒子径としてもよい。
【0035】
微粒子30の直径L1は、所定範囲に規定されており、例えば、10ナノメートル(nm)以上100ナノメートル未満であり、望ましくは、10ナノメートル以上80メートル未満であり、より望ましくは、10ナノメートル以上40ナノメートル以下であり、より望ましくは、10ナノメートル以上20ナノメートル以下である。
【0036】
微粒子30の形状は、例えば、球形である。微粒子30として、例えば、福田金属箔粉工業株式会社(京都市山科区西野山中臣町20番地)の製造に係る「銅ナノ粒子SFCPシリーズ」の銅粒子を使用することができる。あるいは、微粒子30として、古河ケミカルズ株式会社(大阪府大阪市西淀川区大野三丁目7番196号)の製造に係る50nm程度の一次粒子径を有する亜酸化銅粒子を使用してもよい。
【0037】
容器本体2の厚さW1は、微粒子30の直径L1よりも大きく、さらに、粒度分布における最大の粒子径の微粒子30よりも大きい。容器本体2の厚さは、例えば、5ミリメートル(mm)である。
【0038】
図5は、吸引チューブ6の壁の拡大概念図である。具体的には、図5は、図3の吸引チューブ6の壁の領域A2の拡大概念図である。吸引チューブ6は、二酸化チタン(TiO)を含む部材で構成される。具体的には、吸引チューブ6は、二酸化チタンの多数の微粒子40と樹脂8を混合し、シランカップリング材など適宜のカップリング材、その他、必要に応じて添加剤を加えて押出成型することによって形成されている。吸引チューブ6を構成する樹脂は成形後に光透過性を有する樹脂である。その種類は、例えば、軟質ポリエチレン、軟質ポリプロピレン、軟質ポリウレタン、軟質シリコーン、軟質ポリエーテルエーテルケトン、軟質塩化ビニルなどの樹脂を採用することができる。また、吸引チューブ6を構成する樹脂は、容器本体2と同一であってもよいし、異なってもよい。二酸化チタンは、第二の金属の一例である。なお第二の金属は、電池などの外部の電源を利用する電気分解を用いることなく、水と直接または樹脂8を介して接することによって、水中に水素イオンを発生させる金属であればよく、二酸化チタンに限定されない。また、第二の金属は、光触媒として機能する金属である。光触媒として機能する金属は、二酸化チタンに限定されず、例えば、酸化タングステンを使用してもよい。第二の金属である二酸化チタンが光を受けると電子を発生し、容器本体2に格納された水の中に水素イオンを発生させることができる。樹脂8は第二の樹脂の一例である。
【0039】
微粒子40の大きさは、吸引チューブ6の壁の厚さW2よりも十分に小さい大きさとして規定される。微粒子40の大きさの規定方法は、上述の微粒子30の大きさの規定方法と同様である。
【0040】
微粒子40の直径L2は、所定範囲に規定されており、例えば、10ナノメートル(nm)以上100ナノメートル未満であり、望ましくは、10ナノメートル以上80メートル未満であり、より望ましくは、10ナノメートル以上40ナノメートル以下であり、より望ましくは、10ナノメートル以上20ナノメートル以下である。
【0041】
吸引チューブ6の厚さW2は、微粒子40の直径L2よりも大きく、さらに、粒度分布における最大の粒子径の微粒子40よりも大きい。吸引チューブ6の厚さW2は、例えば、1.0ミリメートル(mm)である。
【0042】
図6乃至図8を参照して、容器本体2に水を格納することによって、外部の電源を使用する電気分解を用いることなく、銅イオン水を生成する過程を概念的に説明する。化学反応式の説明は省略する。図6乃至図8において、ポンプ部材10の記載は省略し、容器本体2と吸引チューブ6を示している。
【0043】
図6に示すように、容器本体2に水60を格納すると、水60は吸引チューブ6と接する。この状態で、吸引チューブ6を形成する二酸化チタンの微粒子40に光(紫外線)が当たると、二酸化チタンから電子eが発生する。続いて、図7に示すように、電子eの作用によって、水60から水素イオンHが発生する。続いて、図8に示すように、水素イオンHによって、容器本体2を形成する銅の微粒子30から銅イオンCu2+の溶出が促進される。これにより、水60は銅イオンを含む銅イオン水62となる。このように、容器本体2に水を入れるだけで、外部の電源を使用する電気分解を利用することなく、容易に銅イオン水が生成される。上記の現象は、本発明の発明者による実験で確認されている。
【0044】
本発明の発明者は、容器本体2に水を入れ、二酸化チタンを含む樹脂で形成した吸引チューブ6を入れた場合に、容器本体2に水だけを入れた場合に比べて、銅イオンの溶出量が大幅に増加する現象を確認した。図9は、当該確認結果を踏まえて、容器本体2に吸引チューブ6を配置せずに水だけを入れた場合と、容器本体に吸引チューブ6を配置して水を入れた場合(以下、「本実施形態」という。)における、銅イオンの発生状況の対比を示す。吸引チューブ6における二酸化チタンの重量比は60重量%である。容器本体2における銅の微粒子30の重量比は60重量%である。図9は、室温において、24時間ごとの銅イオン濃度の推移を示す。
【0045】
図9に示すように、容器本体2に水を入れただけの場合には、銅イオンの溶出の程度は低く、120日経過時において、20ppm未満である。これに対して、本実施形態の場合には、10日経過時において、30ppmを超えている。このように、吸引チューブ6の作用によって、容器本体2からの銅イオンの溶出が大幅に促進される。なお、本実施形態とは異なり、吸引チューブ6において、多数の微粒子40のうち、少なくとも一部の微粒子40が、樹脂8に覆われず、樹脂8から露出するように構成することによって、一層効果的に二酸化チタンから電子を発生させることができる。また、本実施形態とは異なり、容器本体2を上部(例えば、上下方向における上部の4分1)と下部(例えば、上下方向における下部の4分3)で構成し、上部は光透過性を有する樹脂に微粒子30を混入させずに光透過性に優れる光透過部分(光導入部)として構成し、下部を本実施形態と同様に微粒子30を混入させる構成としてもよい。
【0046】
図10は、容器100の使用例を示す図である。例えば、家屋200の出入り口に玄関マット202が配置されている。母親204が、容器100によって生成された銅イオン水62を玄関マット202に吹き付けてしみ込ませておく。外出から帰った子供206や犬208が、家屋200に入る前に玄関マット202を踏んで通過すると、玄関マット202にしみ込んだ銅イオン水62に含まれる銅イオンの効果によって、子供206の靴の底部や犬の足についた細菌を低減させることができる。
【0047】
<第二の実施形態>
次に、図11及び図12を参照して、第二の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0048】
図11に示すように、第二の実施形態の容器本体2Aは、樹脂4に銅の微粒子30とセラミックの微粒子50が分散して形成されている。セラミックは、例えば、アルミナや炭化ケイ素(SiC)である。また、セラミックは、多孔質セラミックが望ましい。
【0049】
図12は、容器本体2Aの構成として、樹脂4に銅の微粒子30のみを分散させた場合と、銅の微粒子30とセラミックの微粒子50を分散させた場合において、容器本体2Aに水をいれた場合の銅イオンの溶出の程度の対比を示す。容器本体2Aには、クエン酸を0.01重量%含むクエン酸水を入れた。容器本体2Aにおいて樹脂4に銅の微粒子30のみを分散させた場合の構成(以下、「構成1」という。)は、重量比で、銅の微粒子:樹脂=10:90である。容器本体2Aにおいて樹脂4に銅の微粒子30とセラミックの微粒子50を分散させた場合の構成(以下、「構成2」という。)は、重量比で、銅の微粒子:セラミックの微粒子:樹脂=10:50:40である。すなわち、構成2は、構成1における樹脂の一部をセラミックの微粒子に置き換えた構成である。
10日経過時において、第一の構成の場合には、銅イオンは2.5ppm以下であった。これに対して、構成2の場合には、10日経過時において、約9.0ppmであった。このことから、容器本体2Aにおける銅の微粒子30の重量が変わらなくても、セラミックの微粒子50を加えることによって、銅イオンの溶出は大幅に促進されることがわかる。
【0050】
樹脂4に銅の微粒子30とセラミックの微粒子50を分散させることによって、銅イオンの溶出が大幅に促進される理由の一つは、銅イオンが樹脂4を通過する抵抗よりも、セラミックの微粒子50を通過する抵抗、あるいは、セラミックの微粒子50の表面を通過する抵抗の方が小さいことによると考えられる。
【0051】
<第三の実施形態>
次に、図13を参照して、第三の実施形態について説明する。第二の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0052】
図13に示すように、第三の実施形態の吸引チューブ6Aは、樹脂8に二酸化チタンの微粒子40とセラミックの微粒子50が分散して形成されている。
【0053】
樹脂8に二酸化チタンの微粒子40に加えて、セラミックの微粒子50を分散させることによって、第二の実施形態における銅イオンの溶出の促進の効果と同様に、二酸化チタンからの電子の発生を促進することができ、より一層効果的に銅イオン水を生成することができる。
【0054】
<第四の実施形態>
次に、図14を参照して、第四の実施形態について説明する。第二の実施形態及び第三の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0055】
図14に示すように、第四の実施形態の容器本体2Bの内面2aは、複数の凸部及び凹部を有する凹凸面として形成されている。これにより、容器本体2Bに水をいれたときに、水と接する内面2aの面積が大きくなり、より効果的に銅イオンを溶出することができる。
【0056】
<第五の実施形態>
次に、図15を参照して、第五の実施形態について説明する。第四の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0057】
図15に示すように、第五の実施形態の容器本体2Cの内面2aは、複数の凸部及び凹部を有する凹凸面として形成されている。そして、複数の銅の微粒子30のうち、一部は、内面2aの外部に露出している。これにより、容器本体2Cに水を入れたときに、微粒子30が直接的に水と接し、より効果的に銅イオンを溶出することができる。
【0058】
<第六の実施形態>
次に、図16乃至図18を参照して、第六の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0059】
図16に示すように、第六の実施形態の容器本体2Dの内部には、吸引チューブ6、浮遊部材20A,20B及び20Cが配置されている。吸引チューブ6は、第一の実施形態において説明したように、二酸化チタンの微粒子が樹脂に分散して形成されている。浮遊部材20A,20B及び20Cは、第一の実施形態の容器本体2と同様に、銅の微粒子30が樹脂4に分散することによって形成される。浮遊部材20A,20B及び20Cは、主部材の一例である。容器本体2Dは、光透過性を有する樹脂のみで形成されており、銅の微粒子30は含まれていない。外部の光は、容器本体2Dを透過して容器本体2Dの内部に導入される。容器本体2D自体が、光導入部の一例である。
【0060】
図16及び図17に示すように、浮遊部材20A等は、それぞれ、星形、ハート型、及び、球形に構成されているが、その形態はこれに限定されず、さまざまな形態を採用することが可能である。
【0061】
浮遊部材20A等の比重は、水の比重と実質的に等しく構成されている。このため、図18に示すように、容器本体2に水60が入れられると、浮遊部材20A等は水中を浮遊する。容器本体2に水60がいれられた状態において、浮遊部材20A等は、容器本体2の内面を接することなく水60中を浮遊する。浮遊部材20A等の比重の調整は、浮遊部材20A等に含まれる銅の微粒子30の重量を所定の重量にし、所望の比重を有する樹脂を使用することによって行う。例えば、比重が小さな樹脂を使用すれば、微粒子30の重量が変わらなくても、浮遊部材20A等の比重は小さくなる。なお、本実施形態とは異なり、浮遊部材20A等の中心部を樹脂のみで構成し、浮遊部材20A等の外側の表面部を銅の微粒子30を分散させた樹脂によって構成してもよい。なお、本実施形態とは異なり、浮遊部材20A等の外側の表面に、銅の微粒子30が露出する構成としてもよい。
【0062】
外部からの光が容器本体2Dを透過し、吸引チューブ6に光が当たると、吸引チューブ6から電子が飛び出し、水60から水素イオンを発生させ、浮遊部材20A等を構成する銅の微粒子30からの銅イオンの溶出を促進する。
【0063】
<変形例>
第六の実施形態とは異なり、吸引チューブ6を樹脂のみで構成し、浮遊部材20A等のうち、一部を二酸化チタンの微粒子40を樹脂8に分散させて形成し、他を銅の微粒子30を樹脂4に分散させて形成するようにしてもよい。例えば、浮遊部材20Aは、二酸化チタンの微粒子40を樹脂8に分散させて形成し、浮遊部材20B及び20Cは、銅の微粒子30を樹脂4に分散させて形成する。
【0064】
<第七の実施形態>
次に、図19を参照して、第七の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0065】
第七の実施形態の容器本体2Eは、光透過性を有する樹脂のみで形成されている。外部の光は、容器本体2Eを透過して容器本体2Eの内部に導入される。容器本体2E自体が、光導入部の一例である。
【0066】
図19に示すように、第六の実施形態の容器本体2Eの内部には、吸引チューブ6、及び、円板状部材12が配置されている。吸引チューブ6は、第一の実施形態において説明したように、二酸化チタンの微粒子40が樹脂8に分散して形成されている。円板状部材12は、容器本体2Eの底部に固定されている。円板状部材12は、第一の実施形態の容器本体2と同様に、銅の微粒子30が樹脂4に分散することによって形成される。円板状部材12は、主部材の一例である。
【0067】
容器本体2Eに水60を入れた状態において、外部からの光が容器本体2Eを透過し、吸引チューブ6に光が当たると、吸引チューブ6から電子が飛び出し、水60から水素イオンを発生させ、円板状部材12を構成する銅の微粒子30からの銅イオンの溶出を促進する。
【0068】
なお、本発明の金属イオン水生成容器は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。また、各上記実施形態は、技術的に矛盾を生じない限り、適宜、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
100 容器
2,2A,2B,2C,2D,2E 容器本体
6,6A 吸引チューブ
10 ポンプ部材
12 円板状部材
20A,20B,20C 浮遊部材
30 銅の微粒子
40 二酸化チタンの微粒子
50 セラミックの微粒子
60 水
62 銅イオン水
【要約】
本発明は、容易に金属イオン水を生成することができる金属イオン水生成容器を提供するものである。本発明の金属イオン水生成容器は、細菌を低減する効果を有する金属である第一の金属の微粒子30が分散した第一の樹脂4によって形成される容器本体(主部材)2と、容器本体2の内側に配置され、容器本体2に格納された水と接することによって、水中に水素イオンを発生させる性質を有する第二の金属を含む部材である補助部材6とを有する。
図1
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