【課題を解決するための手段】
【0038】
それゆえに本発明は、生理学的老化若しくは生理学的老化に関連する生理病理学的な状態、又は生理病理学的老化若しくは関連する症状若しくは状態、特に早期老化若しくは促進老化、若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状に罹りやすい対象から取り出された生体サンプル中の、mtDNA複製の機能不全(欠陥のあるmtDNA複製、又はそれとは異なり、mtDNA複製の機能障害又はmtDNA複製装置及び/又は機構の機能不全ともいわれる)を調査するためのインビトロの方法であって、
a.前記生体サンプルを、POLG1タンパク質、POLG1のRNA、POLG2タンパク質、POLGを標的とするプロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼ、例えばHTRA3タンパク質、HTRA2タンパク質、及びHTRA3のRNA、HTRA2のRNA又はこれらの種のあらゆる組合せの群において選択される少なくとも1つの種に特異的な少なくとも1つのマーカーと、前記マーカーがそれらそれぞれの標的(特に、種)と反応できる条件で接触させる工程、並びに
b.工程a)においてその(それらの)それぞれの種と反応したマーカーの測定を介して、又は工程a)においてマーカーをその(それらの)それぞれの種と反応させた後に得られた反応生成物の測定を介して、前記生体サンプル中のPOLG1タンパク質、POLG1のRNA、POLG2タンパク質、POLGを標的とするプロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼ、例えばHTRA3タンパク質、HTRA2タンパク質、及びHTRA3のRNA、HTRA2のRNA又はこれらの種のあらゆる組合せの群から工程a)において選択された少なくとも1つの種のレベルを決定する工程、並びに
c.工程b)において決定されたレベルを、前記工程を実行するために工程a)及びb)に記載の群において選択された各種の健康な対象で決定されたそれぞれの正常な閾値と比較する工程、並びに
d.工程c)でなされた比較から、mtDNA複製における機能不全の存在について結論付ける工程
を含む、方法に関する。
【0039】
本発明の状況において、本発明者らは、POLG実体、特にPOLG1タンパク質又はPOLG1及びPOLG2それ自身を機能不全にするような方式でPOLG実体に影響を及ぼす突然変異に起因しないにもかかわらず、機能不全のmtDNA複製は、本明細書で定義されるような発現されたPOLG実体、特に発現されたPOLG1又はPOLG1及びPOLG2の観察されたレベルと相関する可能性があることを示した。POLGに影響を及ぼす突然変異は、mtDNA枯渇症候群に関連することが実証される。しかしながら、本発明の状況において、POLG1である主要な複製酵素のレベル低下(それ以外では十分機能する)に起因するmtDNA複製の障害が明らかとなり得る。
【0040】
ミトコンドリアDNA複製は、いわゆるミトコンドリアDNAポリメラーゼガンマ(γ)ホロ酵素を含むミトコンドリア特異的なミトコンドリア複合体によって触媒され、この複合体は、単一の140kDaの触媒ユニット(核染色体の遺伝子座15q25におけるPOLG1遺伝子によってコードされる)及び固い二量体を形成する55kDaのアクセサリーサブユニット(核染色体の遺伝子座17qにおけるPOLG2遺伝子によってコードされる)からなるヘテロ三量体である。
【0041】
従って、POLG1タンパク質(配列番号1)(NCBI参照POLG1:遺伝子番号5428、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/5428、一次資料HGNC:9179、POLG1タンパク質のNCBI参照配列:NP_001119603.1、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_001119603.1)は、mtDNA複製に必要ないわゆるミトコンドリアDNAポリメラーゼガンマ(γ)の触媒サブユニットである。またPOLG1タンパク質は、文献では一般名称POLG又はPOLGAとも称される(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=NP_001119603.1で同義語の注釈を参照)。ヒトPOLG1(配列番号2)は、Stumpf及びCopeland、2011、Cell. Mol. Life Science 68 :219〜233又はRopp及びCopeland、1996 Genomics 36 :449〜458で論じられている。http://www.ensembl.org/Homo_sapiens/gene/Family?family=ENSFM00610000964734;g=ENSG00000140521;r=15:89859534-89878092というページで示した通り、ヒトPOLG1に対応する数々のタンパク質転写物(スプライシングバリアント)がある。したがって、本明細書で述べられるようなPOLG1タンパク質は、データベース及び/又は文献及び/又は本明細書で開示されたような配列を有するタンパク質のネイティブ型、それに加えて、ネイティブのPOLG1タンパク質のポリペプチド配列と60%又は70%又は80%又は90%又は95%及び99%までの同一性を示すポリペプチド配列を有するそれらのアイソフォーム又はバリアントを意味する。
【0042】
POLG2タンパク質(配列番号3)(NCBI参照POLG2:遺伝子番号11232、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/11232、一次資料HGNC:9180、POLG2タンパク質のNCBI参照:NP_009146.2、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_009146.2)、又はいわゆるミトコンドリアDNAポリメラーゼサブユニットガンマ-2は、ヒトではPOLG2遺伝子によってコードされるタンパク質であり、POLGタンパク質の触媒サブユニットの処理能力を増加させるアクセサリータンパク質である。またPOLG2タンパク質は、文献では一般名称POLGBとも称される(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=NP_009146.2で同義語の注釈を参照)。ヒトPOLG2(配列番号4)は、Youngら、2011 Human Molecular Genetics 20 (15) :3052〜3066で論じられている。http://www.ensembl.org/Homo_sapiens/Gene/Family/Genes?cdb=compara;db=core;family=ENSFM00250000007196;g=ENSG00000256525;r=17:62473902-62493154というページで示した通り、ヒトPOLG2に対応する数々のタンパク質転写物(スプライシングバリアント)がある。したがって、本明細書で述べられるようなPOLG2タンパク質は、データベース及び/又は文献及び/又は本明細書で開示されたような配列を有するタンパク質のネイティブ型、それに加えて、ネイティブのPOLG2タンパク質のポリペプチド配列と60%、70%又は80%又は90%又は95%及び99%までの同一性を示すポリペプチド配列を有するそれらのアイソフォーム又はバリアントを意味する。
【0043】
本明細書においてPOLG実体と言及される場合、POLG1タンパク質又はPOLG2タンパク質、又はその両方を指す。
【0044】
HTRA3タンパク質(配列番号5)(NCBI参照HTRA3:遺伝子番号94031、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/94031、一次資料HGNC:9180、HTRA3タンパク質のNCBI参照:NP_444272.1、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_444272.1)は、哺乳動物HTRAファミリーのメンバーであるセリンペプチダーゼ(又はセリンプロテアーゼ)である。ヒトHTRA3(配列番号6)及びヒトHTRA3は、Nieら、2003 Biochemical Journal 371 :39〜48又はNarkiewiczら、2009 Oncology reports 21 : 1529〜1237で論じられている。http://www.ensembl.org/Homo_sapiens/Transcript/Summary?db=core;g=ENSG00000170801;r=4:8271492-8308838;t=ENST00000307358というページで示した通り、ヒトHTRA3に対応する数々のタンパク質転写物(スプライシングバリアント)がある。より詳細には、長い(L)形態及び短い(S)形態を生じるHTRA3には2つの転写物(異なるスプライシング)があり、これらはいずれも本明細書で論じられる。したがって、本明細書で述べられるようなHTRA3タンパク質は、データベース及び/又は文献及び/又は本明細書で開示されたような配列を有するタンパク質のネイティブ型、それに加えて、ネイティブのHTRA3タンパク質のポリペプチド配列と60%、70%又は80%又は90%又は95%及び99%までの同一性を示すポリペプチド配列を有するそれらのアイソフォーム又はバリアントを意味する。
【0045】
特定の実施形態において、上記に開示された工程を実行するために選択された各種のレベルが以下の通りである場合:
- 工程b)において決定されたPOLG1タンパク質のレベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも10%減少している場合、及び/又は
- 工程b)において決定されたPOLG2タンパク質のレベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも15%増加している場合、及び/又は
- 工程b)において決定されたHTRA3タンパク質、特にHTRA3タンパク質の長いアイソフォーム、及び/又はHTRA3のRNAのレベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも2倍増加している場合、
又は上記の測定の少なくとも2つが上記の閾値を満たす場合に、本発明のmtDNA複製の機能不全の存在を調査する方法の工程d)の結論がなされる。
【0046】
「mtDNA複製の機能不全」は、アッセイされた生体サンプルの細胞においてmtDNA複製が変更されるか又は全体として障害されることを意味する。この表現は、本明細書において、欠陥のあるmtDNA複製又はmtDNA複製の機能障害の同義語として使用される。実際に、本発明者らは、mtDNA複製が機能不全のサンプルの細胞において、POLG1であるmtDNA合成に関与する酵素の量だけが、健康な対照細胞の場合より低いか又はかなり低いことを示した。更に、一つの観点では、mtDNA含量及びmtDNAの転写及び維持に関与する因子であるTFAMのレベルが概して変更され、又は他の観点では、本発明の状況において、影響を受けるのはmtDNA複製のプロセスであり、それ自身に欠陥のあるPOLG1ではないことを示す。最終的に、本発明者らは、POLGの欠陥を有する全ての試験されたCSサンプルにおいて、ミトコンドリアによるATP産生が低下し、それにより試験されたケースにおいてミトコンドリアの機能それ自身が影響を受けたことを示すことも証明した。これらの方法は、所与のアッセイされたサンプルにおいてmtDNA複製が障害されていることを実証するために使用することができる。
【0047】
「mtDNA複製の機能不全」の同義語として、表現「mtDNA複製装置及び/又は機構の機能不全」も使用することができる。実際に、POLG1は、mtDNA複製の主要な複製酵素である。POLG1が低下した場合、それは、上記で例示したように複製装置が機能不全であるということである。加えて、本発明者らは、POLG1の減少はmtDNA含量の変更をもたらす(本質的に減少させるだけでなく、増加させる)と述べている。それゆえに、本発明の範囲内でモニターされる種のレベルと、機能不全のmtDNA複製装置及び/又は機構とも相関するmtDNA複製が障害されているという事実との間に直接的な関係がある。mtDNA複製の障害は、実際に、上記で例示したような機能不全のmtDNA複製装置及び/又は機構によって証明される。
【0048】
「生体サンプル」は、生体組織又は流体、特に体内組織又は流体のサンプリングに由来するサンプルを意味しており、従って生体サンプルは、実質的に細胞で構成されており、例えば髄液、唾液、粘液、尿又は血液サンプル等の体液であるか、又はそれらに由来する細胞溶解産物を包含するか、及び/又は馴化培養培地を包含し、任意選択で組織(例えば、組織ホモジネート)、生検から誘導される。
【0049】
特定の実施形態において、アッセイされた生体サンプルは、線維芽細胞又はその培養物を含むか又は含有し、又は単離された細胞、特に線維芽細胞、又はその培養物からなる。しかしながら、他の細胞はまた、それらが培養で成長したものも同等とみなされると予想され、又はそれらは、上述したように生体サンプルから(例えば体液から)単離された細胞として使用される。
【0050】
特定の実施形態によれば、本発明のインビトロの方法は出生前試験手順で使用され、ここで試験される対象は、胎芽又は胎児である。このタイプの試験に一般的に使用されるサンプル(例えば羊膜組織)に加えて、親の材料(例えば線維芽細胞、生検細胞)を試験することも可能である。親は、CSA又はCSB突然変異に関して異型接合体であってもよく、親のPOLG/HTRA3値は対照(及びCS)とは異なっている可能性がある。これは実際に、本明細書で説明されるように本発明者らが試験した、CS表現型を有さない親のケース(CS358)に相当するようである。
【0051】
「生理病理学的老化又は関連する症状若しくは状態、特に早期老化若しくは促進老化、若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状」は、対象の年齢と臨床的に一致しない上記及びここで開示された全ての状態を意味し、特に、皮膚の弾力の損失を伴う皮膚萎縮、皮膚付属器の機能不全、中枢神経系の変性、神経変性の症状、糖尿病、脂肪組織量の変化、皮膚の色素沈着過度及び減少を伴う色素の変化(多形皮膚萎縮症)、局部的な皮膚線維症、早期の白髪化又は脱毛、骨粗しょう症、筋萎縮、体重の減少、脱毛症、後彎症、貧血、繁殖力の低下、及びある特定のケースにおいて年配の患者で典型的に見られる腫瘍、加えて眼筋麻痺、失調性ニューロパシー、炎症、小脳性運動失調、悪液質、ニューロンの損失、認知的及び運動的な体の応答の劣化のような神経変性障害に典型的な症状に至る状態を意味する。
【0052】
特定の実施形態によれば、本明細書で説明される方法及び手段は、生理学的老化を受けているか又はそれに苦しんでおり、それに関連する有害な結果を対象の健康又は対象の能力若しくは外観に有する対象に適用される。この状況において、「生理学的老化」又は「生理学的老化に関連する生理病理学的な状態」は、対象の老化に伴い、すなわち対象の年齢を考慮した場合に正常な老化を受けているヒトに対して通常なされる観察に相当する程度で出現する生理学的プロセスの劣化を意味する。更に特定の実施形態において、対象における「生理学的老化」の状況は、皮膚の弾力の損失等の毛髪及び/若しくは皮膚の損傷の症状、並びに/又はそれでもなお対象の年齢と相関する毛髪及び/若しくは皮膚の変更の観察によって決定することができる。
【0053】
別の特定の実施形態によれば、本明細書で説明される方法及び手段は、生理病理学的老化に罹りやすい対象に適用される。この状況において、「生理病理学的老化」は、観察された対象とほぼ同じ年齢であり、そのような対象と比べて健康障害又は状態を有すると診断されていない正常な対象に対して平均的になされる可能性がある観察を超えるとみなすことができる、対象において出現する生理学的プロセスの劣化を意味する。このカテゴリーは、早期老化若しくは促進老化のカテゴリー、又は早老症候群のカテゴリーに入る疾患、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状とは認められない疾患を有する対象を包含する。
【0054】
「POLG1タンパク質、POLG1のRNA、POLG2タンパク質、POLGを標的とするプロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼ、例えばHTRA3タンパク質、HTRA2タンパク質、及びHTRA3のRNA、HTRA2のRNAの群において選択される少なくとも1つの種に特異的なマーカー」は、更に検出方法を行う場合、特に、免疫蛍光法、ウェスタンブロッティング、ELISA又はPCRベースの増幅方法、例えばRT-qPCR等の方法を行う場合、それぞれ、以下の種:POLG1タンパク質、POLG1のRNA、POLG2タンパク質、POLGを標的とするプロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼ、例えばHTRA3タンパク質、HTRA2タンパク質、及びHTRA3のRNA、HTRA2のRNAの1つの定性的及び/又は定量的な存在を直接的又は間接的に具体的に解明するのに好適なマーカーを意味する。
【0055】
マーカーの特異性は、その標的と反応するが、検出可能な方式又は機能的に有効な方式でサンプルの他の化合物と反応しないその能力に関して査定される。
【0056】
例えば、DNA又はRNAに特異的に結合し、1つの末端に特異的な抗体によって認識されるリガンドを有するヌクレオチドプローブが開発されている。標的とハイブリダイズするとシグナルを放出する(したがって蛍光によって検出される)分子ビーコン(反対側の末端にフルオロフォア及びクエンチャーを有するDNA又はRNAを標的化するアンチセンスヌクレオチドプローブ)も開発されている。これらの実施形態は、本発明の範囲内で適切に使用することができるマーカーに関して上記で示された定義に包含される。
【0057】
これらに限定されないが、タンパク質、特にPOLG1、POLG2、上記で確認したようなプロテアーゼ、HTRA3、HTRA2のケースにおいて、このようなマーカーは、前記タンパク質、特にPOLG2及び/若しくはHTRA3タンパク質に特異的な抗体、又は前記タンパク質に十分特異的な数々の抗体の組合せ、並びに任意選択で上記で列挙された特異的な抗体とその(それらの)標的との複合体を明らかにするための二次抗体又は試薬(例えば色素)の1種又は複数であり得る。
【0058】
RNAの決定、特にPOLG1のRNA又はHTRA3のRNAの場合、このようなマーカーは、RNA標的(例えばPOLG1又はHTRA3のRNA)に対応するcDNAとの(塩基対形成による)ハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、又は対応する標的RNAとの直接のハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、及び任意選択で、核酸を検出するための少なくとも1つの標識又はマーカー、特にHTRA3のRNA又はcDNAマーカーを明らかにするためのリアルタイムPCR装置で検出可能な色素であり得る。特定の実施形態によれば、使用される特異的オリゴヌクレオチドプライマーの対は、標的RNAと、標的RNAをテンプレートとして使用して合成されたcDNAの両方とハイブリダイズすることが可能である。
【0059】
特定の実施形態によれば、上記で定義したようなタンパク質は、上記で定義したようなRNAと共に検出され、この目的のためにマーカーの好適な組合せを利用することができる。それゆえに、この実施形態によれば、組合せで使用されるマーカーは、それらの全ての組合せで上述した全てのものであり得る。それらは、特に、POLG1、POLG2、HTRA3、HTRA2の間で選択されるタンパク質に特異的な少なくとも1つの抗体、又はそれぞれPOLG1、POLG2、HTRA3、HTRA2に特異的な数々の抗体の組合せ、並びにHTRA3若しくはPOLG1のcDNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、並びに/若しくはHTRA3のRNA及び/若しくはPOLGのRNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、又は前記HTRA3若しくはPOLG1のcDNA若しくはRNAのそれぞれに特異的なプライマー対の組合せからなっていてもよい。
【0060】
「POLG1タンパク質に特異的なマーカー」は、POLG1タンパク質を特異的に標的化すること、更に任意選択で、特に免疫蛍光法、ウェスタンブロッティング又はELISA検出方法を更に行う場合、POLG1タンパク質の定性的及び/又は定量的な存在を明らかにすることに好適なマーカーである。
【0061】
POLG1タンパク質レベルの測定のケースにおいて、このようなマーカーは、POLG1タンパク質に特異的な抗体又はPOLG1タンパク質に特異的な数々の抗体の組合せ、更に任意選択で、特に材料及び方法の章で本明細書で説明されたような、上記で列挙された特異的な抗体とその(それらの)標的との複合体を明らかにするための1種又は複数の二次抗体又は試薬であり得る。他のマーカーとしては、POLG1との結合能力又は相互作用能力を有する検出可能な分子を挙げることができる。
【0062】
「前記マーカーがそれらそれぞれの標的と反応できる条件」は、「マーカーがそのそれぞれの標的RNA及び/又はcDNAと反応できる条件」、又は「マーカーがそのそれぞれの標的タンパク質と反応できる条件」のいずれかを意味する。
【0063】
「マーカーがそのそれぞれの標的RNA及び/又はcDNAと反応できる条件」は、当業者公知の、及び/又は特に本明細書における材料及び方法の章で説明されるような市販のキットが使用される場合、製造元が提供する注意書きに記載されるような増幅方法を更に行うために、プライマーとそれらの核酸標的とのハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。
【0064】
「前記マーカーがタンパク質と反応できる条件」、特に前記マーカーがPOLG1タンパク質と反応できる条件は、特に、これらに限定されないが、当業者公知の、及び/又は特に本明細書における材料及び方法の章で説明されるような市販のキット及び/又は試薬が使用される場合、製造元が提供する注意書きに記載されるような免疫反応を起こすことができる条件を意味する。
【0065】
従って、「その(それらの)それぞれの種と反応したマーカーの測定」は、特に、上述したような、特に免疫蛍光法(IF)、ウェスタンブロット又はELISA検出方法による、タンパク質レベルの測定プロセスを指す。
【0066】
従って、「マーカーをその(それらの)それぞれの種と反応させた後に得られた反応生成物の測定」は、特に、上述したような、特にアッセイしたサンプル中に存在する前記RNAに、PCRベースの増幅方法、例えばRT-qPCRを行った後に得られた増幅産物によって反映されるようなRNAレベルの測定プロセスを指す。
【0067】
「前記生体サンプル中のPOLG1タンパク質、POLG1のRNA、POLG2タンパク質、POLGを標的とするプロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼ、例えばHTRA3タンパク質、HTRA2タンパク質、及びHTRA3のRNA、HTRA2のRNA、又はこれらの種のあらゆる組合せの群から工程a)において選択された少なくとも1つの種のレベルを決定する工程」は、アッセイしたサンプル中の標的の種の量を示す絶対的又は相対的な値を得ることを意味し、この工程は、特に、
- アッセイしたサンプル中に存在する標的タンパク質の量を評価するために、上述したような、又は本明細書における材料及び方法の章で説明されるような免疫蛍光法、ウェスタンブロッティング又はELISA検出方法を介して得られた結果(生データ又は変換データ)を解釈すること、又は
- アッセイしたサンプル中に存在する核酸に、PCRベースの増幅方法、例えばRT-qPCRを行った後に得られた結果(生データ又は変換データ)を解釈すること
のいずれかによってなされ、ここでレベルは、特に本明細書における材料及び方法の章で説明されるように、増幅の後に存在するアンプリコンの量及びPCRサイクルの量から推測される。
【0068】
特に、「POLG1タンパク質のレベルを決定する工程」は、絶対的又は相対的な値を得ることを意味し、この工程は、特に、アッセイしたサンプル中に存在するPOLG1タンパク質の量を評価するのに好適な、上述した、又は本明細書における材料及び方法の章で説明されるような免疫蛍光法、ウェスタンブロッティング又はELISA検出方法を介して得られた結果(生データ又は変換データ)の解釈によってなされる。
【0069】
上記から、本明細書で開示されたような特異的な種のレベルを得るための本発明の範囲内で使用されるマーカーは、特定のマーカーとその標的との免疫学的な複合体の形成に基づくさらなる工程(例えば抗体若しくは標識された抗体又は抗体のセットが使用される場合)、及び/又は特定のマーカーと核酸標的とのハイブリダイゼーションに基づくさらなる工程(例えばプライマーが使用される場合)、それに続いて、当業界において公知の方法に係る及び/又は本明細書で開示された核酸増幅及び計数の後に必要に応じて前記レベルを直接的又は非直接的に明らかにするのに好適な手段であることが理解されると予想される。
【0070】
特定の実施形態によれば、特に、使用される検出方法が免疫蛍光法ではない場合、工程b)において決定されたPOLG1タンパク質のレベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも10%減少している。
【0071】
一般的な方式において、説明された測定のために実行された方法において適切な単位の値に関して、パーセンテージが評価される。
【0072】
特定の実施形態によれば、特に、使用される検出方法が免疫蛍光染色である場合、工程b)において決定されたPOLG1タンパク質のレベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも20%、又は少なくとも30%又は少なくとも40%、及び80%まで又は90%まで減少している。
【0073】
特定の実施形態によれば、特に、使用される検出方法が免疫蛍光法ではない場合、工程b)において決定されたPOLG2タンパク質のレベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも15%増加している。
【0074】
特定の実施形態によれば、特に、使用される検出方法が免疫蛍光染色である場合、工程b)において決定されたPOLG2タンパク質のレベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも25%、又は少なくとも35%又は少なくとも45%増加している。
【0075】
特定の実施形態によれば、特に、使用される検出方法が免疫蛍光染色ではない場合、工程b)において決定されたHTRA3タンパク質、特にHTRA3タンパク質の長いアイソフォーム、及び/又はHTRA3のRNAのレベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも2倍増加している。
【0076】
正常な閾値と比べた増加のレベルは、使用される検出方法の定量化の感度に依存する可能性がある。
【0077】
特定の実施形態によれば、特に、HTRA3タンパク質のレベルを検出するのに使用される検出方法が免疫蛍光染色である場合、工程b)において決定されたHTRA3タンパク質、特にHTRA3タンパク質の長いアイソフォーム、及び/又はHTRA3のRNAのレベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも5倍、又は少なくとも10倍増加している。具体的な実施形態において、使用される検出方法が免疫蛍光染色である場合、HTRA3の前記レベルは、少なくとも50又は少なくとも60又は少なくとも70倍増加している。特定の実施形態において、本発明者らは、IFによってHTRA3のRNA(2〜160倍)及びHTRA3タンパク質(60〜3000倍)の大規模な増加を見出した。しかしながら、RNAを検出するのにRT-qPCRが使用される場合、得られた値が比較的低い可能性があるが、これは、1つのみのRNA分子を使用して複数のタンパク質が産生される可能性があるということと一致する。それゆえに、必要に応じて本明細書で開示されたような他のパラメーター(特に、種)とのあらゆる組合せでHTRA3のRNAのレベルが決定される特定の実施形態によれば、工程b)において決定されたHTRA3のRNAの前記レベルが、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも2倍増加している。
【0078】
特定の実施形態によれば、本明細書で提供される及び/又は当業者によって推測できる説明に従って結論付けるために、特に上述の閾値を満たしていれば、上記で示された全てのレベルは組み合わせて使用することができる。
【0079】
「POLGに関して健康な対象で決定された正常な閾値」は、健康な対象からの1つの生体サンプルをアッセイすることによって見出された、又はその代わりに数々の別個の健康な対象からの数々の生体サンプルをアッセイすることによって見出されたPOLGタンパク質のレベルを意味し、ここで結果得られた正常な閾値は、全てのアッセイされた健康な対象の生体サンプルのPOLGタンパク質のレベル値の数学的な平均として決定され、又はその代わりに数々の別個の健康な対象からの生体サンプルのプールをアッセイすることによって見出されたPOLGタンパク質のレベルを意味する。
【0080】
別の実施形態によれば、本発明のmtDNA複製の機能不全を調査するためのインビトロの方法はまた、他のマーカー(その結果として種)レベルの決定も包含し、ここで他のマーカーは、POLG1レベルの決定への追加のパラメーター(種)として、又はPOLG1タンパク質のレベル決定の代替物としての、POLG2タンパク質、前記マーカーが前記プロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼ、例えばHTRA3タンパク質、HTRA2タンパク質と反応できる条件で提供されたサンプル中のPOLG1を標的とするプロテアーゼ、又は前記マーカーがそれらそれぞれのRNA標的と反応できる条件で提供されたサンプル中のHTRA3のRNA若しくはHTRA2のRNAに特異的なマーカーである。
【0081】
このようなマーカーは、POLG2及び/若しくはHTRA3及び/若しくはHTRA2の間で選択されるタンパク質に特異的な抗体、又はPOLG2及び/若しくはHTRA3及び/若しくはHTRA2に特異的な数々の抗体の組合せ、並びに任意選択で、上記で列挙された特異的な抗体とその(それらの)標的との複合体を明らかにするための二次抗体又は試薬の1種又は複数であり得る。
【0082】
HTRA3のRNAの決定の場合、このようなマーカーは、HTRA3のcDNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、又はHTRA3のRNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、及び任意選択でHTRA3のRNA又はcDNAマーカーを明らかにするための、核酸を検出するための少なくとも1つの標識又はマーカー、特にリアルタイムPCR装置で検出可能な色素であり得る。
【0083】
特定の実施形態によれば、本発明のmtDNA複製の機能不全を調査するためのインビトロの方法は、上述の種のあらゆる組合せの決定、特にPOLG1及びPOLG2の決定の組合せ、又はPOLG1及びHTRA3の決定の組合せ、又はPOLG1、POLG2及びHTRA3の決定の組合せを包含する。
【0084】
特定の実施形態によれば、本発明のmtDNA複製の機能不全を調査するためのインビトロの方法は、上述の種のあらゆる組合せの決定、特にPOLG1及びHTRA3並びに任意選択でHTRA2の決定の組合せ、又はPOLG1、POLG2及びHTRA3並びに任意選択でHTRA2の決定の組合せを包含する。
【0085】
具体的な実施形態において、本発明の方法は、POLG1タンパク質のレベルがどうかの決定に加えて、
a.アッセイされた生体サンプルを、以下のマーカーのいずれか1つ:マーカーがPOLG2タンパク質と反応できる条件におけるPOLG2タンパク質に特異的なマーカー、マーカーがプロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼ、例えばHTRA3タンパク質、HTRA2タンパク質と反応できる条件におけるPOLGを標的とするプロテアーゼに特異的なマーカー、マーカーがHTRA3のRNAと反応できる条件におけるHTRA3のRNAに特異的なマーカー、マーカーがHTRA2のRNAと反応できる条件におけるHTRA2のRNAに特異的なマーカー、又はこれらのマーカー及び/若しくは種のあらゆる組合せと更に接触させる工程、並びに
b.工程a)においてその(それらの)それぞれの種と反応したマーカーの測定を介して、又は工程a)においてマーカーをその(それらの)それぞれの種と反応させた後に得られた反応生成物の測定を介して、POLG2タンパク質、POLGを標的とするプロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼ、例えばHTRA3タンパク質、HTRA2タンパク質、並びにHTRA3のRNA若しくはHTRA2のRNA又はこれらのマーカー及び/若しくは種のあらゆる組合せの群から工程a)において選択されたマーカーのレベルを更に決定する工程、並びに
c.工程b)において決定されたレベルを、工程b)に記載の各種の健康な対象で決定されたそれぞれの正常な閾値と比較する工程、及び
d.工程c)でなされた比較から、mtDNA複製における機能不全の存在について結論付ける工程
を含む。
【0086】
POLG2タンパク質又はHTRA3、若しくはHTRA2タンパク質のレベルは、免疫蛍光法、ウェスタンブロッティング又はELISA試験によって決定してもよい。HTRA3若しくはHTRA2のRNA又はPOLG転写物のレベルは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)によって決定してもよい。
【0087】
別の特定の実施形態によれば、上記の開示された工程を実行するために選択された各種のレベルが以下の通りである場合:
- 工程b)において決定されたPOLG1タンパク質のレベルが、POLG1タンパク質のレベルが免疫蛍光法によって決定されるとき、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも20%から90%まで減少している場合、及び/又は
- 工程b)において決定されたPOLG2タンパク質のレベルが、POLG2タンパク質のレベルが免疫蛍光法によって決定されるとき、工程c)で導入された正常な閾値と比べて少なくとも25%増加している場合、及び/又は
- 工程b)において決定されたHTRA3タンパク質、特にHTRA3タンパク質の長いアイソフォーム、及び/又はHTRA3のRNAのレベルが、免疫蛍光法又はリアルタイムPCR装置で検出可能な色素によってレベルが決定されるとき、工程c)で導入された正常な閾値と比べて、HTRA3タンパク質の場合少なくとも10倍及びHTRA3のRNAの場合少なくとも2倍増加している場合、又は
上記の測定の少なくとも2つが上記の閾値を満たす場合にmtDNA複製の機能不全の存在の上記工程d)の結論がなされる。
【0088】
本発明の方法の別の態様において、POLG1転写物のレベル(POLG1のRNAの同義語)も決定され、健康な対象で決定された正常な閾値と比較され、POLG1タンパク質のレベルが、特に検出に免疫蛍光法が使用される場合、正常な閾値と比べて少なくとも10%、特に少なくとも20%減少している場合、mtDNA複製の機能不全の存在の結論がなされ、POLG1転写物のレベルは、別の種と組み合わせて、又は組み合わせないで、正常な(特に非CS)細胞においてこの種で決定された正常な閾値の範囲内である。
【0089】
実際に、本発明者らは、CS患者の細胞において、POLG1タンパク質レベルとは対照的に、POLG1のRNAレベルは対照と比較して変化しないことを特に見出した。これは、POLG1タンパク質レベルにおけるバリエーションは、その不十分な発現というよりもタンパク質の分解(プロテアーゼ、特にHTRA3の作用に起因する可能性がある)に起因することを示す。
【0090】
更に、驚くべきことに、CS細胞において、POLG1タンパク質レベルが低い場合、対応するRNAレベルは正常である。それゆえに、これらの2つの種を用いた二重のチェックにより、POLG1タンパク質レベルにおけるバリエーションはPolG1遺伝子に影響を及ぼす突然変異に起因するのではなく、それが発現された後のPOLG1タンパク質の分解に起因するということにかなりの確信を持つことができる。
【0091】
結論として、本発明はまた、コケイン症候群(CS)又はその症状に罹りやすいか又はそれに罹っている対象から取り出された生体サンプルにおいて、mtDNA複製の機能不全を調査するためのインビトロの方法であって、
a.前記生体サンプルとPOLG1のRNAに特異的なマーカーとを、前記マーカーがその標的を認識して任意選択でそれと反応できる条件で接触させる工程、及び
b.前記生体サンプル中のPOLG1のRNAのレベルを決定する工程、及び
c.工程b)において決定されたレベルを、POLG1のRNAに関して健康な対象で決定された正常な閾値と比較する工程、及び
d.POLG1のRNAのレベルが、工程c)において正常細胞に対してこの種で決定された正常な閾値の範囲内である場合、工程c)でなされた比較から、mtDNA複製における機能不全の存在について結論付ける工程
を含む、方法にも関する。
【0092】
本発明の態様によれば、POLG1転写物(POLG1のRNAと同義)のレベルを明らかにするためのマーカーは、POLG1のcDNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、又はPOLG1のRNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、及び任意選択で、核酸を検出するための少なくとも1つの標識又はマーカー、特にリアルタイムPCR装置で検出可能な色素であり得る。この点において、材料及び方法の章で、好適に使用することができるこのようなマーカー又は色素の例を示す。
【0093】
POLG1のRNAに特異的なマーカーを含む上記の方法を行うことはまた、特にコケイン症候群(CS)又はその症状に罹りやすいか又はそれに罹っている対象から取り出された生体サンプルにおいて、必要に応じてmtDNA複製の機能不全を部分的に調査することを可能にする他のパラメーター(特に、種)と組み合わせて使用できるクロスチェックを行うこと、及び最終的に対象においてCSの出現を調査することも可能にする。他のパラメーターは、本明細書で開示されたタンパク質のレベルであってもよい。POLG1のRNAに特異的なマーカーを含む上記の方法は、本明細書で開示された全ての特徴に従って行ってもよい。
【0094】
本発明はまた、生理学的老化若しくは生理病理学的老化、又は促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状に罹りやすい対象の健康状態をモニター又は診断するための方法であって、前記方法は、POLG1及びその代わりに又は任意選択で本明細書で開示されたような1つ又は数々の他の種の決定を包含する、上記で開示されたような欠陥のあるmtDNA複製の決定方法を行うことを含み、更に前記方法は、
e.試験された生体サンプルが取り出された対象の健康状態について、mtDNA複製の機能不全の存在に基づき結論付ける工程
を更に含む、方法も包含する。
【0095】
特定の実施形態によれば、mtDNA複製の機能不全の存在の結論がなされる場合、該結論は、生理学的老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状の存在又はそれらの出現若しくは存在の危険があるということである。
【0096】
本発明の特定の実施形態において、アッセイされた生体サンプルは、生理学的老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状と診断されることを必要としているか及び/又は診断されている対象、及び/又は生理学的老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状の家族歴を有する対象由来である。
【0097】
上述した早老症候群は、ハッチンソン-ギルフォード早老症候群(HGPS)、ウェルナー症候群(WS)、ブルーム症候群(BS)、ロートムンド-トムソン症候群(RTS)、ファンコニ貧血(FA)、血管拡張性失調症(A-T)、コケイン症候群(CS)、色素性乾皮症(XP)及び硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)の間で選択されてもよく、神経変性障害は、アルツハイマー及びパーキンソン病の間で選択される。
【0098】
別の実施形態によれば、アッセイされた生体サンプルは、コケイン症候群(CS)の危険に関連するCSB又はCSA遺伝子に突然変異を有することがわかっている対象由来であり、特に、コケイン症候群(CS)の危険に関連するCSB又はCSA遺伝子における突然変異に関してホモ接合型であることがわかっている対象由来である。したがって、本発明は、アッセイしたサンプルに基づきミトコンドリアの機能障害の程度を明らかにすることができる。
【0099】
また本発明は、上記で定義したような生理学的老化若しくは生理病理学的老化、特に早期老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状を処置するか又は遅延させるために、それを必要とする患者においてPOLGレベル(すなわち、本明細書で定義されるようなPOLG実体)を回復させる際に使用するための、POLG(すなわち、本明細書で定義されるようなPOLG実体)を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤にも関する。
【0100】
特定の実施形態によれば、また本発明は、上記で定義したような、生理学的老化若しくは生理病理学的老化、特に早期老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状を処置するか又は遅延させるために、それを必要とする患者で使用するための、POLG1を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤にも関する。
【0101】
「POLG1を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤」は、POLG1を分解するプロテアーゼを標的とするプロテアーゼ阻害剤(システイン及びセリンプロテアーゼを標的化する全般的なプロテアソーム阻害剤、又はより特異的なセリンプロテアーゼ阻害剤)を意味する。このようなプロテアーゼ阻害剤は、POLG1を分解する、又は広範な特異性を有する、すなわちPOLG1を分解する数々のプロテアーゼに特異性を有する特定のプロテアーゼに特異的であり得る。またこのようなプロテアーゼ阻害剤も、システイン及びセリンプロテアーゼを標的化する可能性もある。
【0102】
特定の実施形態によれば、本発明のPOLG1を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤は、本明細書で定義されるようなHTRA3タンパク質を標的化するプロテアーゼ阻害剤である。
【0103】
本発明者らによって実行された実験によれば、HTRA3タンパク質は、細胞において、例えば本明細書で開示された状態の代表的な細胞等においてPOLG1タンパク質が所定レベルに達した場合、主要な役割を有することが実際に実証された。
【0104】
また本発明者らは、CS患者においてHTRA2タンパク質のレベルが増加することも見出したことから、本発明は、特定の実施形態によれば、上記で定義したような、生理学的老化若しくは生理病理学的老化、特に早期老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状を処置するか又は遅延させるために、それを必要とする患者においてPOLG1レベルを回復させる際に使用するためのHTRA2及び/又はHTRA3を標的化するプロテアーゼ阻害剤にも関する。
【0105】
ヒトHTRA2タンパク質の配列(HTRA2タンパク質のNCBI参照:NP_037379.1、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_037379.1)は、本明細書では配列番号7で提供される。ヒトHTRA2のDNA配列は、配列番号8で提供される。http://www.ensembl.org/Homo_sapiens/Transcript/Summary?db=core;g=ENSG00000115317;r=2:74757117-74760459;t=ENST00000352222というページで示した通り、ヒトHTRA2に対応する数々のタンパク質転写物(スプライシングバリアント)がある。したがって、本明細書で述べられるようなHTRA2タンパク質は、データベース及び/又は文献及び/又は本明細書で開示されたような配列を有するタンパク質のネイティブ型、それに加えて、ネイティブのHTRA2タンパク質のポリペプチド配列と60%又は70%又は80%又は90%又は95%及び99%までの同一性を示すポリペプチド配列を有するそれらのアイソフォーム又はバリアントを意味する。
【0106】
別の特定の実施形態によれば、本発明のPOLG1を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤は、本明細書で定義されるようなHTRA2タンパク質を標的化するプロテアーゼ阻害剤である。
【0107】
さらなる特定の実施形態によれば、本発明のPOLG1を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤は、本明細書で定義されるようなHTRA3とHTRA2タンパク質の両方を標的化するプロテアーゼ阻害剤である。
【0108】
HTRA2及びHTRA3を包含するHTRAタンパク質は、エラスターゼ様又はキモトリプシン様プロテアーゼと分類される他のプロテアーゼとは異なり、トリプシン様セリンプロテアーゼである。
【0109】
それゆえに、特定の実施形態によれば、本発明の範囲内での使用に好適なプロテアーゼ阻害剤は、クニッツ型のトリプシン阻害剤のファミリーを包含するトリプシン様セリンプロテアーゼの阻害剤である。
【0110】
特定の実施形態によれば、本発明のPOLG1を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤は、クニッツ型のトリプシン阻害剤のファミリーに属するプロテアーゼ阻害剤である。
【0111】
天然のトリプシン阻害剤は、セリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)としても公知であり、インビボでセリンプロテアーゼを阻害することによってタンパク質の活性化及び異化を制御する。トリプシン阻害剤には、4つの自然源、すなわちウシ膵臓、オボムコイド、ダイズ、及びライマメがある。全てのこれらの源は、本明細書に包含される天然のトリプシン阻害剤にとって好適な源である。
【0112】
クニッツ型のトリプシン阻害剤のファミリーの一部である分子としては、BPTI(Basic Pancreatic Trypsin Inhibitor、塩基性膵臓トリプシン阻害剤)、オボムコイド[ニワトリ卵白由来トリプシン阻害剤(II-O型又はIII-O型)とも称される]、クニッツダイズプロテアーゼ阻害剤、BBI[ボーマン-バーク(BBI)ダイズプロテアーゼ阻害剤]、LBTI、STI、Tia1、トリプシン阻害剤I-S型/II-S型が挙げられ、これらは、特定の実施形態によれば、本発明の範囲内でプロテアーゼ阻害剤として使用するのに好適であり、単独で、又はそれらの全ての組合せで取り扱われる。
【0113】
本発明の具体的な実施形態において、それを必要とする患者に投与しようとするプロテアーゼ阻害剤は、セリンプロテアーゼ阻害剤、例えばダイズトリプシン阻害剤(KSTI)である。
【0114】
「それを必要とする患者においてPOLG1レベルを回復させること」は、上記で定義したように、POLG1に関して健康な対象で決定された正常な閾値に等しいか又はそれに近いPOLG1レベル値を得ることを意味する。
【0115】
特定の実施形態によれば、生理病理学的老化、特に早期老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又は上記で列挙されたその神経変性障害若しくは症状は、mtDNA複製の機能不全に関連しており、mtDNA複製の機能不全は、特に、本明細書で定義されるような本発明のmtDNA複製の機能不全を調査するための方法に従って決定される。
【0116】
特定の実施形態において、生理病理学的老化、特に早期老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状は、機能的なプロテアーゼの異常な発現、特に機能的なPOLG、より詳細には機能的なPOLG1の異常な発現に関連し、異常な発現は、上記で述べたような健康な対象で決定された正常な発現値に対して定義され、前記活性値は、例えば免疫蛍光法又はウェスタンブロッティング又はELISA試験によって決定される、発現された機能的なプロテアーゼのレベルに対応する。
【0117】
「機能的なプロテアーゼ」は、健康な細胞の場合と同じ性能でその機能を発揮する能力を有するプロテアーゼを意味する。健康な細胞の場合と同じ性能で機能する能力は、目的のプロテアーゼをコードする突然変異体又はノックダウン/サイレンス若しくはノックアウト遺伝子を用いて、ウェスタンブロット(WB)又は免疫蛍光法(IF)によってPOLG1又は他のあらゆる目的のタンパク質のレベルを査定することにより生細胞で試験することができる。また機能的なPOLG1も、対応する遺伝子を配列決定すること、又は大規模なmtDNA枯渇がないこと(病理学的なPOLG1突然変異に関するケースのように)をチェックすることによっても検出することができる。このようなタンパク質抽出物における試験に関して、目的のプロテアーゼは、生化学的に単離され、インビトロで標識された基質を用いて試験されると予想され、ここでその基質の活性をモニターして、目的のプロテアーゼと接触した後のその消失をチェックすることができる。目的のプロテアーゼの単離は、数種のタンパク質、又は単離された目的のタンパク質のみを含有するサンプルの使用を包含し得る。
【0118】
特定の実施形態において、機能的なプロテアーゼの異常な発現は、予め決定された正常な発現値に対して増加している発現である(例えば、HTRA3のRNAの場合、少なくとも2倍の増加;及び/又はHTRA3タンパク質の場合、少なくとも10倍の免疫蛍光シグナル)。上述した健康な対象におけるタンパク質レベルの決定と同様に、当業者は、健康な細胞を含有するサンプル又はこのようなサンプルのプールに実行された実験からデータを回収することによって、前記予め決定された正常な発現値を決定する一般的な方法を使用することができる。
【0119】
本発明の具体的な実施形態において、それを必要とする患者に投与しようとするプロテアーゼ阻害剤は、プロテアソーム阻害剤、例えばMG132であるか、又はセリンプロテアーゼ阻害剤、例えばダイズトリプシン阻害剤(KSTI)である。
【0120】
本発明の特定の実施形態によれば、ベンジルオキシカルボニル類似体又はカルボベンゾキシ類似体のファミリーに関連するプロテアーゼ阻害剤として、プロテアソーム阻害剤が利用される。
【0121】
MG132は、そのIUPAC名:ベンジルN-[(2S)-4-メチル-1-[[(2S)-4-メチル-1-[[(2S)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル]アミノ]-1-オキソペンタン-2-イル]アミノ]-1-オキソペンタン-2-イル]カルバメートとしても公知の分子である。MG132の他の名称は、N-(ベンジルオキシカルボニル)ロイシニルロイシニルロイシナル、又はZ-Leu-Leu-Leu-al、又はカルボベンゾキシ-Leu-Leu-ロイシナルである。
【0122】
別の特定の実施形態によれば、本明細書で定義されるようなプロテアソーム阻害剤ではないプロテアーゼ阻害剤、又はより詳細には、上述したMG132を除いたプロテアーゼ阻害剤が利用される。
【0123】
より具体的な実施形態によれば、処置しようとする生理病理学的老化の状態が神経変性障害である場合、プロテアソーム阻害剤又はMG132を除いた、本明細書で定義されるようなプロテアーゼ阻害剤が利用される。
【0124】
MG132等のプロテアソーム阻害剤は、本発明に係る使用の状況で逆効果を招くとみなされる可能性があるそれらの細胞標的に毒作用を有することが実際に観察されている。
【0125】
上記で論じられたように、KSTIは、その単離及び特徴付けを説明するReza Roostaら、2011 Advances in Environmental Biology、5(1): 145〜153で開示されているように、ダイズにおける2つの主要なトリプシン阻害剤の1つである。KSTIは、特に、セリンプロテアーゼファミリーのなかでも少なくともHTRA2及びHTRA3プロテアーゼの両方を標的化することが公知である。
【0126】
本発明の特定の実施形態において、それを必要とする患者においてPOLGレベルを増加させることにおいて使用されるプロテアーゼ阻害剤は、コケイン症候群(CS)と診断されている患者に投与される。
【0127】
酸化ストレスの管理は、CSの欠陥のある細胞で変更され、CS細胞における欠陥を説明する本明細書に記載の新しいメカニズムに関与することから、本発明はまた、
a.コケイン症候群(CS)又はその症状を処置するか又は遅延させるため、及び/又は
b.HTRA2、HTRA3及びPOLG1、又はそれらの組合せの群において選択されるタンパク質のレベルを回復させて、特にコケイン症候群(CS)又はその症状を処置するか又は遅延させるため
の、それを必要とする患者における使用のための、ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物又はこのような化合物を含むか若しくはそれから本質的になる組成物にも関する。
【0128】
「ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物」は、活性酸素種(ROS)及び反応性窒素種(RNS)の一方又は好ましくは両方を捕捉することによってニトロソ酸化還元バランスに作用することを機能的に達成する化合物を意味する。このような化合物は、抗酸化剤、特にポルフィリンのコア又は部分を有する抗酸化剤であり得る。
【0129】
特定の実施形態によれば、前記「ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物」は、SODミメティック及びペルオキシニトライトスカベンジャーのカテゴリーに関する。
【0130】
別の特定の実施形態によれば、前記「ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物」は、細胞透過性のスーパーオキシドジスムターゼミメティック(ROSに対する)及びペルオキシニトライトスカベンジャー(RNSに対する)である。
【0131】
別の特定の実施形態によれば、前記「ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物」は、塩化ポルフィリン(porphyrin chloride)類似体のファミリーに関する。
【0132】
別の特定の実施形態によれば、前記「ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物」は、金属ポルフィリン、特にマンガンポルフィリンである。
【0133】
特定の実施形態によれば、ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物は、以下:
【0134】
【化1】
【0135】
並びに(I)及び(II)の混合物、又はそれらの類似体の間で選択される。
【0136】
「HTRA2、HTRA3及びPOLG、又はそれらの組合せの群において選択されるタンパク質のレベルを回復させること」は、上記で定義したように、更に実施例でも例示されるように、HTRA2及び/又はHTRA3及び/又はPOLG(すなわち、本明細書で定義されるようなPOLG実体)に関して健康な対象で決定された正常な閾値のそれぞれ又は組合せに等しいか又はそれに近い、HTRA2及び/又はHTRA3及び/又はPOLG(すなわち、本明細書で定義されるようなPOLG実体)のレベル値を、単独で、又はこれらの種の全ての組合せで得ることを意味する。
【0137】
上記の式(I)及び(II)によって例示される本発明の特定の実施形態に係るニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物は、文献ではMnTBAPという一般名称で公知である。
【0138】
この本発明の実施形態によれば、更に本明細書で開示されるように、MnTBAPは、分子式C
48H
28ClMnN
4O
8を有し、IUPAC名クロロ[4,4',4'',4'''-(5,10,15,20-ポルフィリンテトライル-κ
2N
21,N
23)テトラベンゾアト(2-)]マンガン若しくは分類名クロロ[4,4',4'',4'''-(5,10,15,20-ポルフィリンテトライル-κ
2N
21,N
23)テトラベンゾアト(2-)]マンガン又は塩化マンガン(3+)5,10,15,20-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィン-21,23-ジイド(1:1:1)に対応する化合物、又は名称Mn(III)メソ-テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィンクロリド若しくはマンガン(III)-テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン若しくはMn(III)テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン、若しくはマンガン[III]テトラキス(5、10、15、20安息香酸)ポルフィリン、若しくはマンガン(III)テトラキス(4-安息香酸)塩化ポルフィリン若しくは使用される名称に適用される学術名に応じたそれらの均等物のいずれか1つを包含する。
【0139】
MnTBAPは、その塩の形態(II)で、又は複合体(I)として、又はそれらの混合物として見出される可能性がある。市販のMnTBAP調製物があるが、これは、MnTBAPを所定量のMn非含有のリガンドと共に含有する場合がある。このような調製物も、本発明を実行するのに好適である。
【0140】
(I)又は(II)の類似体としては、MnTBAPに関するマンガンポルフィリン、例えば、Mn[III]テトラ(4-ピリジル)ポルフィリン(MnTyP)を挙げることができる。類似体としては更に、銅含有ポルフィリン、例えば(3,5-ジイソプロピルサリチル酸)2銅(II)(CuDIPS)及びその誘導体を挙げることができる。
【0141】
別の特定の実施形態によれば、好適な「ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物」は、MNTEPyP及びその類似体、又はMNTMPyP及びその類似体である。
【0142】
「ニトロソ酸化還元ストレス」は、ニトロソ酸化還元バランスの変更を意味する。ニトロソ酸化還元バランスは、酸化窒素(NO)と活性酸素種(ROS)産生との相互作用からなる。ニトロソ酸化還元バランスは、生物において関連するシグナル伝達機能を有し、その機能障害は、機能不全を引き起こす可能性がある。
【0143】
特定の実施形態によれば、本発明の開示に係るニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物は、コケイン症候群(CS)又はその症状を処置するか又は遅延させるため、及び/又はHTRA2、HTRA3及びPOLG、又はそれらの組合せの群において選択されるタンパク質のレベルを回復させて、特にコケイン症候群(CS)又はその症状を処置するか又は遅延させるために使用され、ここでコケイン症候群(CS)又はその症状は、mtDNA複製の機能不全、特に本明細書で定義されるような本発明のmtDNA複製の機能不全を調査するための方法に従って決定されるmtDNA複製の機能不全に関連する。
【0144】
特定の実施形態によれば、本発明の開示に係るニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物は、HTRA2、HTRA3及びPOLG、又はそれらの組合せの群において選択されるタンパク質のレベルを回復させて、コケイン症候群(CS)又はその症状を処置するか又は遅延させるために使用される。
【0145】
特定の実施形態において、コケイン症候群(CS)又はその症状は、機能的なプロテアーゼの異常な発現、特に機能的なPOLG、より詳細には機能的なPOLG1の異常な発現に関連し、ここで異常な発現は、上記で述べたような健康な対象で決定された正常な発現値に対して定義され、前記活性値は、例えば免疫蛍光法又はウェスタンブロッティング又はELISA試験によって決定される、発現された機能的なプロテアーゼのレベルに対応する。「機能的なプロテアーゼ」及び「機能的なプロテアーゼの異常な発現」の定義は、上記で示される定義と同じである。
【0146】
本発明の特定の実施形態によれば、それを必要とする患者においてPOLG1レベルを増加させるため、及び/又は上記で定義したような生理学的老化若しくは生理病理学的老化、又はその神経変性障害若しくは症状を処置するか又は遅延させるための、POLG1を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤の使用は、本明細書で説明される実施形態のいずれか1つに従ってこれまでmtDNA複製の機能不全を調査するための方法に供された個体に行われる。
【0147】
特定の実施形態によれば、コケイン症候群(CS)又はその症状を処置するか又は遅延させるため、及び/又はHTRA2、HTRA3及びPOLG、又はそれらの組合せの群において選択されるタンパク質のレベルを回復させるための本発明の開示に係るニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物の使用は、本明細書で説明される実施形態のいずれか1つに従ってこれまでmtDNA複製の機能不全を調査するための方法に供された個体に行われる。
【0148】
本発明の別の目的は、
a.生理学的老化若しくは生理病理学的老化、特に早期老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状を処置するか又は遅延させるため、及び/又は
b.HTRA2、HTRA3及びPOLG、又はそれらの組合せの群において選択されるタンパク質のレベルを回復させて、特にコケイン症候群(CS)又はその症状を処置するか又は遅延させるため
に、それを必要とする患者において、本明細書で定義されるようなPOLG1を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤を、本明細書で定義されるようなニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物と組み合わせて使用すること、又は本明細書で定義されるようなニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物を、本明細書で定義されるようなPOLG1を分解するプロテアーゼと相互作用するプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて使用することである。
【0149】
特定の実施形態によれば、前記プロテアーゼ阻害剤及びニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物の組合せでの投与は、それを必要とする患者に、同時になされるか、別々になされるか、又はプロテアーゼ阻害剤がニトロソ酸化還元ストレススカベンジャーの前又は後に投与される逐次的なレジメンでなされてもよい。
【0150】
細胞又は患者のいずれかに活性な化合物が投与される場合、適切な投薬レジメンは、当業者によって決定されてもよい。特に、患者に投与される用量は、作用を損なうことなく細胞に投与される用量と比べて著しく減少させることがよくある。
【0151】
また本発明は、本発明の方法を実行するのに好適なキットであって、
- HTRA3及び/若しくはPOLGのcDNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、並びに/又はHTRA3のRNA及び/若しくはPOLGのRNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、並びに任意選択で、以下の試薬の1種又は複数、
- ヌクレオチド(例えばdATP、dCTP、dGTP、dUTP)、
- 逆転写酵素、
- DNAポリメラーゼ、特に熱安定性DNAポリメラーゼ、例えばTaq DNAポリメラーゼ、
- 核酸を検出するための少なくとも1つの標識又はマーカー、特にリアルタイムPCR装置で検出可能な色素、
- 任意選択で、緩衝溶液、
- 任意選択で、プライマーがそれらの標的にハイブリダイゼーションするのに必要な試薬、
- 任意選択で、参照標識又はマーカー、並びに
- 使用説明と結果の解釈のための期待値を示す注意書き
を含む、キットにも関する。
【0152】
別の態様において、本発明のキット、すなわち本発明の方法を実行するのに好適なキットは、
- POLG1、POLG2、HTRA3、HTRA2の間で選択されるタンパク質に特異的な少なくとも1種の抗体、又はPOLG1、POLG2、HTRA3、HTRA2に特異的な数々の抗体の組合せ、並びに任意選択で、HTRA3及び/若しくはPOLG1のcDNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、並びに/又はHTRA3のRNA及び/若しくはPOLG1のRNAとのハイブリダイゼーションに特異的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、並びに任意選択で、以下の試薬の1種又は複数、
- 上記で列挙された特異的な抗体とその(それらの)標的との複合体を明らかにするための二次抗体又は試薬、
- 任意選択で、緩衝溶液、
- 任意選択で、アッセイプレート、並びに
- 使用説明と結果の解釈のための期待値を示す注意書き
を含む。
【0153】
また本発明は、mtDNA複製の機能不全を調査するため、及び/又は生理学的老化若しくは促進老化若しくは早老症候群、例えばコケイン症候群(CS)、又はその神経変性障害若しくは症状に罹りやすい対象の健康状態をモニター又は診断するための、上記で定義したようなキットの使用にも関する。
【0154】
本発明に係るキットで使用するのに好適な試薬の例は、本明細書における材料及び方法の章でも説明される。
【0155】
本発明の別の態様は、細胞中のPOLG1レベルを回復させることが可能なプロテアーゼ阻害剤を同定するためにプロテアーゼ阻害剤をスクリーニングするため、及び/又は細胞中のPOLG1レベルを回復させることが可能なニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物を同定するためにニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物をスクリーニングするためのインビトロの方法であって、
i.POLG1のレベルが健康な対象に特徴的な細胞で決定された正常な閾値と比べて少なくとも10%、特に少なくとも20%減少した細胞又は細胞培養物、特に線維芽細胞又はそれらの培養物を、POLG1を特異的に認識するマーカーと接触させる工程、
ii.前記細胞を、プロテアーゼ阻害剤及び/又はニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物と接触させてアッセイする工程であって、工程i.及びii.は逆でもよい、工程、
iii.特性の変化、特に工程i.及びii.で接触させた細胞のPOLG1のレベルを測定及び/又は可視化する工程、並びに
iv.任意選択で、特性の変化、特に工程i)及びii)で接触させた細胞のPOLG1のレベルを記録又は定量化する工程
を含む、方法である。
【0156】
「ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物」の定義は、上記で示される。このような化合物の機能的な達成も本明細書で開示されている。ニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物は、本明細書で開示されるように、ROS及び/又はペルオキシニトライト[又は窒素酸化分子(nitro-oxidative molecule)]スカベンジャーであり得る。このようなニトロソ酸化還元ストレススカベンジャー化合物の細胞への投与は、最終的に前記細胞においてROSレベルを低下させる可能性がある。
【0157】
上記の工程iii)で述べられた特性の変化は、本発明の開示にも記載される。
【0158】
ここで、以下の図面、材料及び方法の章、並びに実験の章を参照して、本発明を更に説明する。