(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842798
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】溶融炭酸塩型燃料電池中の直接内部改質触媒として使用される担持ニッケル触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/83 20060101AFI20210308BHJP
H01M 8/14 20060101ALI20210308BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20210308BHJP
【FI】
B01J23/83 M
H01M8/14
H01M8/02
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-553207(P2018-553207)
(86)(22)【出願日】2017年4月10日
(65)【公表番号】特表2019-515784(P2019-515784A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】US2017026837
(87)【国際公開番号】WO2017180523
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2018年11月12日
(31)【優先権主張番号】62/321,043
(32)【優先日】2016年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502197161
【氏名又は名称】フュエルセル エナジー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FUELCELL ENERGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジン−ユン
(72)【発明者】
【氏名】ファルークエ, ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラマン, ラマクリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】ユー, チャオ−イ
(72)【発明者】
【氏名】コーパズ, エイプリル
【審査官】
中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−504356(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0105546(US,A1)
【文献】
特開昭62−237677(JP,A)
【文献】
特開2010−86663(JP,A)
【文献】
Catalysis Today,2004年,Vol. 93-95,pp. 553-560
【文献】
Applied Energy,2011年,Vol. 88,pp. 4274-4293
【文献】
CHOI, Jae-Suk et al.,Development of nickel catalyst supported on MgO-TiO2 composite oxide for DIR-MCFC,Catalysis Today,2004年,Vol. 93-95,p. 553-560
【文献】
ANTOLINI, Ermete,The stability of molten carbonate fuel cell electrodes: A review of recent improvements,Applied Energy,2011年,Vol. 88,p. 4274-4293
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
H01M 8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接内部改質担持触媒であって、
熱的に安定なコアを含み、
前記熱的に安定なコアは金属酸化物担体および前記金属酸化物担体中に配置されたニッケルを含み、
前記金属酸化物担体は少なくとも1つのベース金属酸化物、および前記ベース金属酸化物と混合された、または前記ベース金属酸化物中に分散された少なくとも1つの遷移金属酸化物または希土類金属酸化物を含み、
さらに、前記熱的に安定なコアをコーティングする、グラファイト、金属炭化物、および/または金属窒化物の少なくとも1つを含む電解質反発層を含む、直接内部改質担持触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物担体は5〜120m2/gの範囲内の表面積を有する、請求項1に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項3】
前記ベース金属酸化物が少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物またはポスト遷移金属酸化物を含むか、または
前記ベース金属酸化物がアルミナ、CaO、および/またはMgOの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項4】
前記金属酸化物担体は前記ベース金属酸化物に加えて少なくとも2つの異なる遷移金属酸化物および/または希土類金属酸化物を含む、請求項1に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項5】
前記遷移金属酸化物および前記希土類金属酸化物の量が前記担持触媒の1〜20重量%の範囲内であるか、または
前記ニッケルの量が前記担持触媒の10〜50重量%の範囲内である、請求項1に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項6】
前記担持触媒は、ペレット化した触媒の水銀ポロシメトリーによる測定で65〜700Åの範囲内の平均細孔径を有し、10%未満の前記平均細孔径の標準偏差により特徴づけられる細孔径分布を有する、請求項1に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項7】
電解質除去層をさらに含み、
前記電解質除去層は少なくとも1つの金属酸化物を含む、請求項1に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項8】
前記電解質除去層は酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、それらのドープ酸化物、またはそれらの混合物を含む、請求項7に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項9】
前記電解質除去層は少なくとも50m2/gの表面積を有する、請求項7に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項10】
前記電解質反発層は前記電解質除去層をコートする、請求項7に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項11】
前記担持触媒はケイ酸塩を含まない、請求項1に記載の直接内部改質担持触媒。
【請求項12】
直接内部改質触媒として請求項1〜11のいずれか一項に記載の直接内部改質担持触媒を含む、溶融炭酸塩型燃料電池。
【請求項13】
前記直接内部改質触媒は、500時間の動作後に、その初期の触媒活性の少なくとも60%を保持する、請求項12に記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年4月11日に出願された米国仮特許出願第62/321,043号の利益および優先権を主張、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来の水蒸気改質触媒は、予備改質触媒および一次改質触媒の2つの主要なカテゴリに分けられる。予備改質触媒は、典型的には共沈によって作製され、高表面積および高いニッケル(Ni)担持量を有し、550℃未満の動作温度を有する。一次改質触媒は、典型的には25%未満のNiを非常に低表面積の担体に担持させて作製し、750℃超の動作温度を有する。直接内部改質触媒は、およそ600〜650℃で動作する。予備改質触媒は直接内部改質触媒の動作条件下で安定でなく、一方、一次改質触媒は燃料電池電解質被毒条件下で十分な活性を有していない。ゆえに、電解質被毒に耐性があり、安定性を7年超維持する新規触媒を開発するニーズが存在する。
【0003】
溶融炭酸塩型燃料電池に使用される触媒の従来の合成手法は共沈であり、Niおよび触媒担体の均一な分布を生成する。Niおよび担体の両方は動作中に焼結し、その結果、特に、触媒がいくらかの酸化を受け場合がある熱サイクルおよびシャットダウンのような非正常過渡運転において、所望より早い改質速度の低下をもたらす。これは、早期に許容される限界より下に触媒活性を低下させ得る。これに対処するために異なる手法が、以前から試みられている。
【0004】
例えば、米国特許第4,774,152号は、電解質を含有する燃料ガス中での劣化のない、燃料電池とともに使用するための改質触媒を開示している。改質触媒は、触媒活性物質、および触媒材料から電解質を除去するための電解質除去物質を含む。電解質除去物質は多細孔構造を有し、電解質と化学的に反応して触媒活性材料からそれを除去するケイ素、アルミニウムおよびクロムの少なくとも1つを含有する化合物を含む。電解質除去物質は、触媒活性物質の表面に提供され得る。電解質除去物質は、触媒活性物質中に分散されてもよい。触媒活性物質および電解質除去物質を混合状態に成形してもよい。しかしながら、この手法は、触媒の焼結には対処しなかった。
【0005】
米国特許第5,246,791号は、担体上にルテニウムを含む高温燃料電池の電解質による失活に対する改善された耐性を有する改質触媒を開示している。これは安定性の改善を提供し得るが、燃料電池で7年超の寿命を達成することは期待されない。触媒の焼結に対する懸念についての議論はなかった。ルテニウムは、非正常条件中に酸素に暴露されると酸化し得、非濡れ性を保持しない場合がある。加えて、そのような触媒は、Ni系触媒と比較してはるかに高いコストにつながるであろう。
【0006】
米国特許出願公開第2011/0003681号は、より高い細孔容積を有する触媒が電解質による細孔閉塞を回避し得ることを開示している。しかしながら、この手法は、触媒の焼結に対処せず、電解質が触媒に接触するのを防ぐための特徴を含まず、その結果、燃料電池で7年超の寿命を提供する能力を有することは期待されない。
【0007】
米国特許第8,575,063号は、大きなメソ細孔容積、およびメソ細孔容積対全細孔容積の特定の比を有する様々な混合金属酸化物担体を有するNi系触媒を開示している。しかしながら、これは電解質が触媒に到達するのを妨がない。このようにして作製された触媒は、高表面積を有し、燃料電池条件下でより早く劣化するであろう。
【0008】
米国特許第8,993,477号は、ニッケル、アルミニウムおよびジルコニアの酸化物と、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、および酸化アルミニウムの群から選択される別の酸素含有アルミニウム化合物とで作製されたNi系触媒を開示している。しかしながら、この手法は、焼結を適切に抑制せず、熱安定性を改善しない場合がある。
【0009】
Wangら、Int’l J. Hydrogen Energy, 37(3): 2588−2595 (2012)は、Ni/Al
2O
3触媒上にコロイダルシリカベースのコーティングを有するコア−シェル触媒システムを開示している。
Wangらは、シェル上に使用されたシリカの微細な細孔のために、電解質が触媒を攻撃するのを防ぐと主張している。この手法もまた、触媒の熱焼結に対処しない。バリアは短期間の電解質拡散を減少させ得るが、その濡れ性のために、電解質を液体として通過させ得る。また、シリカは、高温および高湿度の炭酸塩電解質環境中で安定ではない。
【0010】
米国特許出願公開第2016/0006040号は、電解質に対する濡れ性が低い、ドープされたペロブスカイト型酸化物を有する触媒を開示しており、焼結を抑制するとしている。金属酸化物は、典型的には、炭酸塩電解質と低い接触角を有する。これらは、非正常条件下、酸素暴露で高い濡れ性を発現する場合がある。
【発明の概要】
【0011】
前述の設計上の制約および課題を克服するために、新しいタイプの直接内部改質触媒を本明細書に開示する。この直接内部改質触媒は、低〜中表面積、高い熱安定性、および/または電解質が触媒に接触するのを防ぐ能力の独特の特性を有する活性成分−安定な金属酸化物の混合物に担持されたNi−を含み、従って電解質による触媒の被毒を回避し、その結果、直接内部改質触媒の構造的完全性および安定化された触媒活性をもたらす。
【0012】
一実施形態によると、直接内部改質触媒は、遷移金属および/または希土類金属を含有し、熱安定性および好ましい触媒担体相互作用を提供する、低〜中程度の表面積を有する予備安定化担体に担持されたNiを含む。触媒は中程度のNi含有量を有し、焼結の大幅な抑制を確実にする。加えて、本明細書に記載の触媒は1つまたは複数の層でコーティングされ得る。コーティングの目的は、触媒タブレットに到達する電解質をはじくこと、または蒸着を通してもしくは液体電解質のクリープによって触媒に侵入する電解質を除去することのいずれかであり得る。この点に関して、無極性材料(例えば、グラファイト、炭化物、および窒化物)は、電解質をはじくために使用され得、一方、高表面積の金属酸化物材料は電解質を除去するために使用され得る。本明細書に記載の触媒は、担体および/またはコーティング層中に、実質的にまたは完全にケイ酸塩不含であり得る。
【0013】
従って、一例示的実施形態によると、担持触媒は熱的に安定なコアを含み、熱的に安定なコアは金属酸化物担体および金属酸化物担体中に配置されたニッケルを含む。金属酸化物担体は少なくとも1つのベース金属酸化物またはセラミック材料、およびベース金属酸化物もしくはセラミック材料と混合された、またはベース金属酸化物もしくはセラミック材料中に分散された少なくとも1つの遷移金属酸化物または希土類金属酸化物を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は5〜120m
2/gの範囲内の表面積を有する。いくつかの実施形態では、ベース金属酸化物またはセラミック材料は少なくとも1つのアルカリ金属酸化物またはポスト遷移金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、ベース金属酸化物またはセラミック材料はアルミナ、CaO、および/またはMgOの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物担体はベース金属酸化物またはセラミック材料に加えて少なくとも2つの異なる遷移金属酸化物および/または希土類金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物および希土類金属酸化物の量は担持触媒の1〜20重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、ニッケルの量は担持触媒の10〜50重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、担持触媒は、ペレット化した触媒の水銀ポロシメトリーによる測定で65〜700Åの範囲内の平均細孔径を有し、10%未満の平均細孔径の標準偏差により特徴づけられる細孔径分布を有する。
【0015】
別の例示的実施形態によると、担持触媒は電解質除去成分も含み、電解質除去成分は少なくとも1つの金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、電解質除去成分は、熱的に安定なコアをコーティングしてコア−シェル構造を形成する電解質除去層である。いくつかの実施形態では、電解質除去成分は熱的に安定なコアと混合されるか、または熱的に安定なコア中に分散される。いくつかの実施形態では、電解質除去成分は酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、それらのドープ酸化物、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、電解質除去成分は少なくとも約50m
2/gの表面積を有する。
【0016】
別の例示的実施形態によると、担持触媒は電解質反発成分も含み、電解質反発成分はグラファイト、金属炭化物、および/または金属窒化物の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分は、熱的に安定なコアをコーティングしてコア−シェル構造を形成する電解質反発層である。いくつかの実施形態では、電解質反発成分は熱的に安定なコアと混合されるか、または熱的に安定なコア中に分散される。
【0017】
別の例示的実施形態によると、担持触媒は熱的に安定なコアをコーティングする電解質除去層および電解質除去層をコーティングする電解質反発層も含み、電解質除去層は少なくとも1つの金属酸化物を有し、電解質反発層はグラファイト、金属炭化物、および/または金属窒化物の少なくとも1つを有する。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩は高温および高水蒸気を有する直接内部改質条件下で徐々に気化するため、担持触媒はケイ酸塩を含まない。別の例示的実施形態によると、溶融炭酸塩型燃料電池は直接内部改質触媒として本明細書に記載の担持触媒を含む。いくつかの実施形態では、直接内部改質触媒は、500時間の動作後に、その初期の触媒活性の少なくとも約60%を保持する。
【0018】
本明細書に記載の触媒は、多くの技術的利点を有する。いくつかの実施形態では、触媒はすでに焼結されており、熱的に安定であるため、触媒は金属酸化物担体のさらなる焼結を阻害し得る。ニッケルの焼結は発生し得るが、安定な担体およびより低いニッケル担持量による良好なニッケル分散のため抑制もされる。予備焼結は、触媒形成中または触媒形成後、製品(例えば、燃料電池モジュール)への組み込み前に発生し得る。いくつかの実施形態では、遷移金属(複数可)および/または希土類金属(複数可)は改質反応を促進して触媒の活性および安定性を改善し得る。
【0019】
これらおよび他の特徴は、その構成および動作方法とともに、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】ベースライン触媒と比較した担持触媒の実施形態例の活性変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで、本発明者らによって熟考されたいくつかの特定の実施形態を詳しく参照する。これらの特定の実施形態とともに様々な発明が記載されるが、本発明(複数可)を記載された実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されよう。それどころか、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲内に含まれ得る代替、変更、および均等物を包含することが意図される。
【0022】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。本発明の特定の実施形態例は、これらの具体的な詳細の一部または全てを含まずに実装されてもよい。他の例では、本発明を不必要に不明瞭にしないために、周知のプロセス操作は詳細には記載されていない。
【0023】
本発明の様々な技術および機構は、明確にするために、しばしば単数形で記載される。しかしながら、いくつかの実施形態は、別に記載がない限り、技術の複数の反復または機構の複数の具体化を含むことに留意されたい。
【0024】
担持触媒
様々な例示的実施形態によると、
図1に示すように、担持触媒(10)は熱的に安定なコア(12)を含み、熱的に安定なコア(12)は金属酸化物担体および金属酸化物担体中に配置されたニッケルを含む。金属酸化物担体は少なくとも1つのベース金属酸化物またはセラミック材料を含み、少なくとも1つの遷移金属酸化物または希土類金属酸化物が、ベース金属酸化物もしくはセラミック材料と混合されるか、またはベース金属酸化物もしくはセラミック材料中に分散される。
【0025】
いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は、触媒の耐久性を改善するように低〜中程度の表面積を有する。いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は約5〜120m
2/g、または約5〜20m
2/g、または約20〜50m
2/g、または約50〜120m
2/gの表面積を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は少なくとも2つの異なる金属酸化物の混合物を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は少なくとも3つの異なる金属酸化物の混合物を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、ベース金属酸化物はアルカリ土類金属酸化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、ベース金属酸化物は遷移金属酸化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、ベース金属酸化物はポスト遷移金属酸化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、ベース金属酸化物は希土類金属酸化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、ベース金属酸化物はアルミナ、CaO、およびMgOの少なくとも1つを含む。
【0028】
ベース触媒に加えて、遷移金属酸化物(複数可)および/または希土類金属酸化物(複数可)の存在は、金属酸化物担体を安定化し得、また触媒担体反応も促進し得る。いくつかの実施形態では、熱的に安定なコアは、ベース触媒に加えて少なくとも1つの遷移金属酸化物(例えば、ZrOx、TiOx)を含む。いくつかの実施形態では、熱的に安定なコアは、ベース触媒に加えて少なくとも1つの希土類金属酸化物(例えば、LaOx)を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は少なくとも2つの異なる遷移金属酸化物および/または希土類金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は少なくとも3つの異なる遷移金属酸化物および/または希土類金属酸化物を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物(複数可)および希土類金属酸化物(複数可)は、担持触媒の約1〜20重量%、または約1〜5重量%、または約5〜10重量%、または約10〜20重量%を構成する。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物(複数可)および希土類金属酸化物(複数可)は、熱的に安定なコアの約1〜20重量%、または約1〜5重量%、または約5〜10重量%、または約10〜20重量%を構成する。
【0031】
いくつかの実施形態では、担持触媒は、燃料電池動作条件下で適切な改質速度を提供するように中〜高Ni担持量を有する。いくつかの実施形態では、ニッケルは担持触媒の約10〜50重量%、または約10〜20重量%、または約20〜30重量%、または約30〜50重量%を構成する。いくつかの実施形態では、ニッケルは熱的に安定なコアの約10〜50重量%、または約10〜20重量%、または約20〜30重量%、または約30〜50重量%を構成する。
【0032】
いくつかの実施形態では、ニッケルは、ニッケルおよび金属酸化物の共沈によって金属酸化物担体に担持される。いくつかの実施形態では、ニッケルは、遷移金属酸化物(複数可)および/または希土類金属酸化物(複数可)も含み得る安定な(予備焼結された)金属酸化物担体に担持される。
【0033】
いくつかの実施形態では、担持触媒または熱的に安定なコアは、低い平均細孔径および狭い細孔径分布を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、担持触媒は、ペレット化した触媒の水銀ポロシメトリーによる測定で、約65〜700Å、または約65〜200Å、または約200〜300Å、または約300〜400Å、または約400〜500Å、または約500〜600Å、または約600〜700Åの平均細孔径を有する。いくつかの実施形態では、熱的に安定なコアは、ペレット化した触媒の水銀ポロシメトリーによる測定で、約65〜700Å、または約65〜200Å、または約200〜300Å、または約300〜400Å、または約400〜500Å、または約500〜600Å、または約600〜700Åの平均細孔径を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、担持触媒は、約50%未満、または約20%未満、または約10%未満の平均細孔径の標準偏差により特徴づけられる細孔径分布を有する。いくつかの実施形態では、熱的に安定なコアは、約50%未満、または約20%未満、または約10%未満の平均細孔径の標準偏差により特徴づけられる細孔径分布を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、担持触媒は、実質的にまたは完全にケイ酸塩を含まない。いくつかの実施形態では、熱的に安定なコアは、実質的にまたは完全にケイ酸塩を含まない。
【0037】
様々な例示的実施形態によると、
図1に示すように、担持触媒(10)は、電解質除去成分(14)および/または電解質反発成分(16)をさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、担持触媒は、触媒と接触する電解質を除去するための電解質除去成分をさらに含み、電解質除去成分は少なくとも1つの金属酸化物を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、電解質除去成分は、熱的に安定なコアをコーティングしてコア−シェル構造を形成する電解質除去層の形態である。いくつかの実施形態では、電解質除去成分は熱的に安定なコアと混合されるか、または熱的に安定なコア中に分散される。
【0040】
いくつかの実施形態では、電解質除去成分は少なくとも約50m
2/g、または少なくとも約70m
2/g、または少なくとも約100m
2/gの表面積を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、電解質除去成分は単一の金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、電解質除去成分は少なくとも2つの異なる金属酸化物の混合物を含む。いくつかの実施形態では、電解質除去成分は少なくとも3つの異なる金属酸化物の混合物を含む。いくつかの実施形態では、電解質除去成分はドープ金属酸化物(複数可)を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、電解質除去成分はアルカリ土類金属酸化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、電解質除去成分は遷移金属酸化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、電解質除去成分はポスト遷移金属酸化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、電解質除去成分は希土類金属酸化物(複数可)を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、電解質除去成分は酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、それらのドープ酸化物、またはそれらの混合物を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、担持触媒は、電解質が触媒に接触するのを防ぐための電解質反発成分をさらに含み、電解質反発成分はグラファイト、炭化物、および窒化物の少なくとも1つを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、電解質反発成分は、熱的に安定なコアをコーティングしてコア−シェル構造を形成する電解質反発層の形態である。いくつかの実施形態では、電解質反発成分は熱的に安定なコアと混合されるか、または熱的に安定なコア中に分散される。
【0046】
いくつかの実施形態では、電解質反発成分は単一の材料を含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分は少なくとも2つの異なる材料の混合物を含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分は少なくとも3つの異なる材料の混合物を含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分はグラファイトを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、電解質反発成分は1つまたは複数の金属炭化物を含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分は遷移金属炭化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分はポスト遷移金属炭化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分は希土類金属炭化物(複数可)を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、電解質反発成分は1つまたは複数の金属窒化物を含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分は遷移金属窒化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分はポスト遷移金属窒化物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、電解質反発成分は希土類金属窒化物(複数可)を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、担持触媒は、熱的に安定なコアをコーティングする電解質除去層および電解質除去層をコーティングする電解質反発層をさらに含み、電解質除去層は少なくとも1つの金属酸化物を含み、電解質反発層はグラファイト、炭化物、または窒化物の少なくとも1つを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、担持触媒はケイ酸塩含有層でコーティングされていない。
【0051】
さらに、本発明の多くの実施形態は、直接内部改質触媒として本明細書に記載の担持触媒を含む溶融炭酸塩型燃料電池に関連する。
【0052】
いくつかの実施形態では、溶融炭酸塩型燃料電池中の直接内部改質触媒は、(例えば、燃料電池スタックでの劣化をシミュレーションするための)200時間の加速試験後に、その初期の触媒活性の少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%を保持する。いくつかの実施形態では、溶融炭酸塩型燃料電池中の直接内部改質触媒は、500時間の加速試験後に、その初期の触媒活性の少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%を保持する。いくつかの実施形態では、溶融炭酸塩型燃料電池中の直接内部改質触媒は、700時間の加速試験後に、その初期の触媒活性の少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%を保持する。
【0053】
担持触媒の合成
触媒の劣化は、Ni触媒の焼結、電解質による触媒の被覆、電解質の内部深くへの侵入を引き起こす大きな内部細孔を作り出す担体の焼結、および細孔上に沈着した電解質による細孔の閉塞によって引き起こされ得る。既知の生成方法はこれらの失活機構に対処せず、従って、7〜10年の燃料電池寿命を達成する安定な触媒を提供することができない。例えば、最も一般的な手法は、製造を容易にするためにニッケルおよび担体の共沈を含み、ニッケルおよび担体の均一な分布を提供する。この手法の欠点は、稼働中に担体およびニッケルの両方が焼結することであり、これは構造の崩壊、細孔の閉塞、およびNiへの接近を引き起こし、その後、活性の喪失につながる。
【0054】
本明細書に記載の担持触媒を、少なくとも2つの異なる方法で合成することができる。1つは、熱処理後に共沈によって作製した触媒上に電解質除去または反発材料をコーティングすることである。第2の方法は、遷移金属および/または希土類金属も含み得る安定な(予備焼結された)担体上にNiを担持させることである。その後、この触媒コアを、電解質除去または反発材料でコーティングすることができる。
【0055】
用途
本明細書に記載の担持触媒は、水素改質を必要とする炭酸塩電解質環境において、具体的には融炭酸塩型燃料電池中の直接内部改質触媒として使用され得る。これはまた、肥料産業、食品加工業、および冶金産業における工業的な水素生成のような、他の高温水蒸気改質用途においても使用され得る。
【0056】
実施例
担持触媒を、遷移金属酸化物(ZrOx、約6重量%)および希土類金属酸化物(LaOx、約4重量%)を含む低表面積アルミナ担体(約11m
2/g)を使用して合成した。
【0057】
少量のニッケル(約25%)をこの材料に担持させた。担持触媒を押し出して、比較的広い細孔径分布(約40%の平均細孔径の標準偏差)を有する約300Åの平均細孔径を与えた。
【0058】
比較のために、高Ni表面積、および燃料電池の動作中に劣化しやすい触媒担体を有する最新式の触媒を、ベースライン触媒として使用した。
【0059】
図2に示すように、担持触媒は、試験期間(約700時間)を通してベースライン触媒と比較して改善された安定性を示し、約700時間の加速試験後に、その初期の触媒活性の60%超を保持した。
【0060】
本明細書において、単数の用語「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に別の指示がない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、化合物への言及は、文脈上明確に別の指示がない限り、複数の化合物を含むことができる。
【0061】
本明細書において、用語「実質的に」、「実質的な」および「約」は、小さな変形を記載および説明するために使用される。事象または状況とともに使用される場合、用語は、事象または状況が正確に発生する例、ならびに事象または状況が近い近似で発生する例を指すことができる。例えば、用語は、±10%以下、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下などを指すことができるである。
【0062】
加えて、量、比、および他の数値は、本明細書においてしばしば範囲の形式で示される。そのような範囲の形式は便宜上および簡潔にするために使用され、範囲の限界として明示的に指定された数値を含むように柔軟に理解されるべきであるが、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲を、あたかも各数値および部分範囲が明示的に指定されているかのように含むことも理解されるべきである。例えば、約1〜約200の範囲の比は、約1および約200の明示的に列挙された限界を含むが、約2、約3、および約4などの個々の比、ならびに約10〜約50、約20〜約100などの部分範囲も含むと理解されるべきである。
【0063】
前述の説明では、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示された発明に様々な置換および変更が加えられ得ることは、当業者には容易に明らかであろう。本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(単数または複数)、限界(単数または複数)の不在下で好適に実施され得る。採用された用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、用語および表現の使用において、示され説明された特徴またはその一部のいずれかの均等物を排除する意図はなく、本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。従って、本発明は特定の実施形態および任意の特徴によって例示されているが、本明細書に開示された概念の変更および/または変形が当業者によって用いられてもよく、そのような変更および変形は本発明の範囲内にあると見なされることが理解されるべきである。