特許第6842814号(P6842814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6842814エネルギーバランス調整制御方法及び調整制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6842814
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】エネルギーバランス調整制御方法及び調整制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20210308BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20210308BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20210308BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20210308BHJP
【FI】
   H02J3/46
   H02J3/14 160
   H02J13/00 311T
   G06Q50/06
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-570170(P2019-570170)
(86)(22)【出願日】2019年7月8日
(86)【国際出願番号】JP2019026949
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】花田 雅人
【審査官】 杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−78238(JP,A)
【文献】 特開2018−129911(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/048944(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/059668(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/157576(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/149618(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/169585(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/021101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/06
H02J 3/14
H02J 3/46
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源に対する出力抑制指示を受ける工程と、
前記出力抑制指示の受け付けに応じて、需要家に負荷調整を依頼する工程と、
前記需要家から前記依頼に対する返答を受ける工程と、
前記返答に基づき、前記負荷調整が可能である場合には、前記出力抑制指示の回避を前記分散型電源に通知し、前記負荷調整が不可能である場合には、前記出力抑制指示を前記分散型電源に通知する工程と、
を備えたエネルギーバランス調整制御方法。
【請求項2】
前記出力抑制指示を回避した場合に、前記出力抑制指示の期間において売電した前記分散型電源の収益の一部に相当する料金を前記分散型電源の事業主から徴収する工程と、
前記料金の一部を前記需要家に支払う工程と、
をさらに備えた請求項1記載のエネルギーバランス調整制御方法。
【請求項3】
前記出力抑制指示を受ける前記工程は、電力系統を運用する指令所から前記分散型電源に通知された前記出力抑制指示を、前記分散型電源から受ける工程を含む請求項1又は2に記載のエネルギーバランス調整制御方法。
【請求項4】
前記出力抑制指示を受ける前記工程は、電力系統を運用する指令所から前記出力抑制指示を受ける工程を含む請求項1又は2に記載のエネルギーバランス調整制御方法。
【請求項5】
ネットワークを介して通信を行う通信部と、
前記通信部による通信を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記通信部を介して分散型電源に対する出力抑制指示を受ける工程と、
前記出力抑制指示の受け付けに応じて、前記通信部を介して需要家に負荷調整を依頼する工程と、
前記通信部を介して前記需要家から前記依頼に対する返答を受ける工程と、
前記返答に基づき、前記負荷調整が可能である場合には、前記通信部を介して前記出力抑制指示の回避を前記分散型電源に通知し、前記負荷調整が不可能である場合には、前記通信部を介して前記出力抑制指示を前記分散型電源に通知する工程と、
を実行する調整制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エネルギーバランス調整制御方法及び調整制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーを利用した分散型電源の大量導入による需要と供給のアンバランスの回避のために、分散型電源の出力を抑制させる出力抑制が行われる場合がある。こうした出力抑制が行われた場合、再生可能エネルギーで発電可能な電力が無駄になってしまい、再生可能エネルギーを有効的に活用できなくなってしまう。また、分散型電源の事業主においては、売電による収益が減ってしまう。
【0003】
このため、再生可能エネルギーを利用した分散型電源と連系する電力系統システムにおいては、出力抑制の発生を抑えられるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6343372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、出力抑制の発生を抑えることができるエネルギーバランス調整制御方法及び調整制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、分散型電源に対する出力抑制指示を受ける工程と、前記出力抑制指示の受け付けに応じて、需要家に負荷調整を依頼する工程と、前記需要家から前記依頼に対する返答を受ける工程と、前記返答に基づき、前記負荷調整が可能である場合には、前記出力抑制指示の回避を前記分散型電源に通知し、前記負荷調整が不可能である場合には、前記出力抑制指示を前記分散型電源に通知する工程と、を備えたエネルギーバランス調整制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、出力抑制の発生を抑えることができるエネルギーバランス調整制御方法及び調整制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る分散型電源システムを模式的に表すブロック図である。
図2】調整制御装置によるエネルギーバランス調整制御方法の一例を模式的に表すフローチャートである。
図3】調整制御装置によるエネルギーバランス調整制御方法の変形例を模式的に表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る分散型電源システムを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、分散型電源システム2は、電力系統4と、指令所6と、ネットワーク8と、調整制御装置10と、分散型電源12と、需要家14と、を備える。
【0011】
分散型電源システム2は、例えば、複数の分散型電源12及び複数の需要家14を備える。但し、分散型電源12及び需要家14は、必ずしも複数設けられていなくてもよい。分散型電源システム2は、少なくとも1つの分散型電源12及び需要家14を備えていればよい。
【0012】
電力系統4の電力は、例えば、交流電力である。指令所6は、電力系統4の運用を行う。指令所6は、ネットワーク8に接続されている。ネットワーク8は、インターネットなどの公衆回線でもよいし、分散型電源システム2に対して専用に構築された専用回線でもよい。
【0013】
指令所6は、季節、天候、及び時間などを基に電力系統4における電力の需要を予測し、予測に基づく指令をネットワーク8を介して分散型電源12などの各種の発電所に送信する。指令所6は、例えば、翌日の電力需要を予測して発電計画を作成し、発電計画に基づく指令を分散型電源12などに送信する。また、指令所6は、電力系統4の状況をリアルタイムで監視し、電力系統4の状況に応じた指令をネットワーク8を介して分散型電源12などの各種の発電所に送信する。
【0014】
分散型電源12などの発電所は、指令所6からの指令に基づいて発電を行う。これにより、指令所6は、電力系統4における需要と供給のバランスを保てるようにする。換言すれば、指令所6は、電力系統4の交流電力の周波数を所定の範囲内に保てるようにする。指令所6は、例えば、全系の系統運用を統轄する中央給電指令所、主幹系統の運用を行う系統給電制御所、あるいはローカル系統の運用を行う総合制御所などである。
【0015】
分散型電源12は、電力系統4及びネットワーク8に接続されている。分散型電源12は、ネットワーク8を介して指令所6から入力される指令に基づいて発電を行い、発電した電力を電力系統4に供給することにより、電力系統4と連系する。
【0016】
分散型電源12は、例えば、ソーラーパネルと、ソーラーパネルから出力された直流電力を電力系統4に対応した交流電力に変換する電力変換装置(パワーコンディショナ)と、を有する。分散型電源12は、例えば、太陽光発電所である。分散型電源12は、例えば、複数の電力変換装置を統合的に制御して出力の最大化を図るメインサイトコントローラなどをさらに有してもよい。
【0017】
なお、分散型電源12は、太陽光発電所に限ることなく、例えば、風力、波力、潮力、流水、地熱、バイオマスなどの、他の再生可能エネルギーを利用した発電所でもよい。分散型電源12は、再生可能エネルギーを利用した任意の分散型電源でよい。
【0018】
需要家14は、電力系統4に接続された設備14aと、ネットワーク8に接続された端末14bと、を有する。需要家14は、電力系統4から供給される交流電力に基づいて設備14aを稼働させる。端末14bは、例えば、パーソナルコンピュータやサーバなどである。端末14bは、例えば、タブレット端末などの携帯端末などでもよい。
【0019】
需要家14は、例えば、工場である。需要家14は、例えば、余剰電力を一時的に蓄積する揚水発電所などでもよい。需要家14は、電力系統4に接続され、電力系統4から供給される電力に基づいて稼働する設備14aを有する任意の施設でよい。但し、需要家14は、例えば、一般家庭などの低圧需要家よりも契約電力の大きい高圧大口需要家又は高圧小口需要家であることが好ましい。
【0020】
調整制御装置10は、分散型電源システム2において、指令所6から分散型電源12に対する出力抑制指示が出力された場合に、分散型電源12からの電力供給と需要家14での電力需要とのバランスを調整するエネルギーバランス調整制御を行う。
【0021】
調整制御装置10は、通信部20と、制御部22と、操作部24と、表示部26と、を備える。調整制御装置10は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバなどである。調整制御装置10は、例えば、タブレット端末などの携帯端末などでもよい。
【0022】
通信部20は、ネットワーク8を介して通信を行う。通信部20とネットワーク8との間の通信は、有線通信のみでもよいし、中継機器などを介することによって、一部に無線通信を含んでもよい。通信部20は、ネットワーク8の通信規格に準拠した任意の通信機器でよい。
【0023】
なお、ネットワーク8において、調整制御装置10と需要家14との間の回線は、調整制御装置10と分散型電源12との間の回線、及び指令所6と分散型電源12との間の回線と異なってもよい。ネットワーク8は、複数の回線で構成してもよい。ネットワーク8は、例えば、公衆回線と専用回線とを混在させた構成などでもよい。
【0024】
制御部22は、通信部20と接続されている。制御部22は、通信部20による通信を制御する。操作部24は、制御部22と接続されている。操作部24は、オペレータなどから入力される操作指示を受け付け、受け付けた操作指示を制御部22に入力する。操作部24は、例えば、キーボード、マウス、タッチセンサなどの周知の入力装置でよい。
【0025】
表示部26は、制御部22と接続されている。表示部26は、制御部22の制御に基づいて種々の操作画面などを画面に表示する。表示部26は、例えば、液晶ディスプレイなどの周知の表示装置でよい。
【0026】
制御部22は、例えば、エネルギーバランス調整制御を行うための調整制御プログラムを記憶し、調整制御プログラムを逐次処理することにより、エネルギーバランス調整制御を実行する。
【0027】
制御部22は、例えば、調整制御プログラムの実行に基づき、表示部26に種々の操作画面を表示する。調整制御装置10のオペレータなどは、表示部26に表示された操作画面の内容に基づいて操作部24を操作し、操作画面の内容に対応した所定の操作指示を入力する。制御部22は、操作部24から入力された操作指示に対応した処理を実行する。これにより、制御部22は、調整制御プログラムに基づいてエネルギーバランス調整制御を実行する。
【0028】
例えば、制御部22は、通信部20からの入力に基づいて自動的に処理を実行することにより、オペレータなどからの操作指示の入力を必要とすることなく、エネルギーバランス調整制御を実行できるようにしてもよい。この場合、調整制御装置10において、操作部24と表示部26とは、省略してもよい。操作部24及び表示部26は、必要に応じて設けられ、省略可能である。調整制御装置10は、少なくとも通信部20と制御部22とを備えていればよい。
【0029】
図2は、調整制御装置によるエネルギーバランス調整制御方法の一例を模式的に表すフローチャートである。
次に、図2を参照しながら、調整制御装置10によるエネルギーバランス調整制御の一例について説明する。
【0030】
指令所6は、電力の供給量が需要を上回る場合に、分散型電源12に出力抑制指示を通知する(図2のステップS101)。指令所6は、分散型電源12が複数存在する場合、電力の供給量と需要のバランスを考慮して、複数の分散型電源12のいずれかに出力抑制指示を通知する。出力抑制指示は、出力の停止でもよいし、出力する有効電力の制限などでもよい。また、指令所6から分散型電源12への出力抑制指示は、例えば、出力を抑制する指令値として分散型電源12に通知される。また、指令所6が分散型電源12に出力抑制指示を通知するタイミングは、前日の発電計画で通知してもよいし、リアルタイムの監視に基づく電力系統4の状況に応じて通知してもよい。
【0031】
出力抑制指示の通知を受けた分散型電源12は、指令所6から出力抑制指示を受けた後、その出力抑制指示を調整制御装置10に通知する(図2のステップS102)。換言すれば、分散型電源12は、受けた出力抑制指示を調整制御装置10に転送する。
【0032】
調整制御装置10の制御部22は、通信部20を介して分散型電源12に対する出力抑制指示を分散型電源12から受ける(図2のステップS103)。このように、出力抑制指示を受ける工程は、電力系統4を運用する指令所6から分散型電源12に通知された出力抑制指示を、分散型電源12から受ける工程を含む。
【0033】
制御部22は、出力抑制指示の受け付けに応じて、通信部20を介して需要家14に負荷調整を依頼する(図2のステップS104)。制御部22は、例えば、通信部20及びネットワーク8を介して需要家14の端末14bに負荷調整を依頼する。
【0034】
負荷調整とは、需要家14において設備14aを稼働させる、あるいは設備14aの稼働量を増加させることなどにより、需要家14での消費電力を増加させ、電力系統4における電力需要を増加させることである。負荷調整の依頼は、例えば、調整する電力量の情報や、調整を行う時間の情報などを含む。
【0035】
制御部22は、出力抑制指示を受けると、例えば、受け付けた出力抑制指示の内容を表示部26に表示することにより、出力抑制指示の受け付けを調整制御装置10のオペレータに報知する。出力抑制指示の内容には、例えば、出力抑制指示を受けた分散型電源12の情報や、出力を抑制する電力量の情報などが含まれる。調整制御装置10のオペレータは、表示部26に表示された出力抑制指示の内容を参照し、操作部24を操作して所定の操作指示を制御部22に入力することにより、需要家14に負荷調整を依頼する。
【0036】
調整制御装置10のオペレータは、例えば、出力を抑制する電力量の情報に基づき、複数の需要家14の中から対応できそうな需要家14を選択し、その需要家14に負荷調整を依頼する。例えば、抑制する電力量が大きく、1つの需要家14では抑制する電力量を賄えない場合などには、複数の需要家14に同時に負荷調整を依頼してもよい。
【0037】
例えば、調整制御装置10によるエネルギーバランス調整制御に対応する専用のアプリケーションなどが需要家14の端末14bに予めインストールされている場合には、予め決められた所定のメッセージとして負荷調整が依頼される。専用のアプリケーションなどがインストールされていない場合などには、例えば、電子メールなどで負荷調整が依頼される。需要家14の端末14bに負荷調整を依頼するフォーマットは、需要家14に負荷調整を依頼可能な任意のフォーマットでよい。
【0038】
また、例えば、出力を抑制する電力量や予め決められた需要家14の優先順位などに基づき、負荷調整を依頼する需要家14を制御部22に判断させてもよい。すなわち、オペレータなどを介することなく、制御部22が、出力抑制指示の受け付けに応じて、自動的に需要家14に負荷調整を依頼するようにしてもよい。
【0039】
需要家14は、調整制御装置10から負荷調整の依頼を受けると、負荷調整に協力するか否かを調整制御装置10に返答する。例えば、需要家14のオペレータは、端末14bを介して負荷調整の依頼を参照し、調整する電力量や調整を行う時間などに基づいて協力するか否かを判断し、端末14bから調整制御装置10に協力するか否かの情報を含む返答を行う。例えば、調整可能な電力量の情報を返答に含めてもよい。
【0040】
調整制御装置10の制御部22は、通信部20を介して需要家14から依頼に対する返答を受ける(図2のステップS105)。
【0041】
制御部22は、需要家14からの返答に基づき、負荷調整が可能であるか否か判定する(図2のステップS106)。換言すれば、制御部22は、需要家14が負荷調整に協力すると返答したか否かを判定する。
【0042】
制御部22は、例えば、需要家14から協力の返答を受け、需要家14で調整可能な電力量が、出力抑制指示で指示された抑制する電力量よりも大きくなった場合に、負荷調整が可能であると判定する。
【0043】
制御部22は、例えば、需要家14から協力できない旨の返答を受けた場合、あるいは、需要家14で調整可能な電力量が、出力抑制指示で指示された抑制する電力量に満たない場合に、負荷調整が不可能であると判定する。
【0044】
制御部22は、返答を受けた需要家14での負荷調整が不可能である場合、複数の需要家14の全ての需要家14で負荷調整が不可能であるか否かを判定する(図2のステップS107)。
【0045】
制御部22は、負荷調整を依頼していない需要家14が残っている場合には、ステップS104の処理に戻り、負荷調整をまだ依頼していない別の需要家14に負荷調整を依頼する。
【0046】
なお、制御部22は、需要家14から受けた返答をそのまま表示部26に表示することにより、負荷調整が可能であるか否かをオペレータなどに判定させてもよい。同様に、別の需要家14に負荷調整を依頼するか否かは、オペレータなどに判定させてもよい。
【0047】
制御部22は、全ての需要家14で負荷調整が不可能であると判定した場合、通信部20を介して出力抑制指示を分散型電源12に通知する(図2のステップS108)。この場合には、指令所6から通知された出力抑制指示に基づいて、分散型電源12において出力抑制が行われる。
【0048】
一方、制御部22は、ステップS106において負荷調整が可能であると判定した場合、通信部20を介して出力抑制指示の回避を分散型電源12に通知する(図2のステップS109)。
【0049】
なお、1つの需要家14で調整可能な電力量が、出力抑制指示で指示された抑制する電力量よりも大きくなった場合に限ることなく、例えば、複数の需要家14で調整可能な電力量の合計が、出力抑制指示で指示された抑制する電力量よりも大きくなった場合に、負荷調整が可能であると判定してもよい。
【0050】
また、例えば、複数の分散型電源12が指令所6から出力抑制指示を受ける可能性もある。この場合には、例えば、複数の需要家14で調整可能な電力量の合計が、複数の分散型電源12で抑制する電力量の合計よりも大きくなった場合に、負荷調整が可能であると判定してもよい。複数の分散型電源12が出力抑制指示を受けた場合には、1つの分散型電源12毎に、個別に上記の処理を行ってもよい。
【0051】
制御部22は、負荷調整が可能である場合、指令所6にも出力抑制指示の回避を通知する。分散型電源12への出力抑制指示の回避の通知は、制御部22から分散型電源12に直接的に通知してもよいし、制御部22から指令所6に出力抑制指示の回避を通知した後、指令所6から分散型電源12に出力抑制指示の回避を通知してもよい。
【0052】
出力抑制指示が回避された場合には、出力抑制指示の期間においても、分散型電源12が動作し、分散型電源12から電力系統4への電力の供給が行われる。すなわち、分散型電源12において売電が行われる。これにより、太陽光などの再生可能エネルギーが無駄になってしまうことを抑制することができる。
【0053】
そして、調整可能と返答した需要家14において、設備14aの稼働、あるいは設備14aの稼働量の増加が行われ、発電分の電力が消費される。これにより、分散型電源12を稼働させた場合にも、電力系統4における電力の需要と供給のバランスを保つことができる。
【0054】
この場合、調整制御装置10の事業主は、例えば、出力抑制指示の期間における分散型電源12の発電データ(発電量)と、需要家14の受電データ(電力消費量)と、をまとめた報告書を作成し、指令所6に提出する。出力抑制指示の期間とは、より詳しくは、出力抑制指示によって分散型電源12に出力の抑制が指示された期間である。
【0055】
調整制御装置10の事業主は、出力抑制指示を回避した場合に、出力抑制指示の期間において売電した分散型電源12の収益の一部に相当する料金を分散型電源12の事業主から徴収する(図2のステップS110)。すなわち、調整制御装置10の事業主は、本来であれば収益を得られなかった期間における収益の一部を報酬として分散型電源12の事業主から徴収する。
【0056】
調整制御装置10の事業主は、収益の一部に相当する料金を分散型電源12の事業主から徴収した後、その料金の一部を調整可能と返答した需要家14に協力金として支払う(図2のステップS110)。調整制御装置10の事業主は、例えば、出力抑制指示の期間において負荷調整に必要となった電気代相当額を協力金として調整可能と返答した需要家14に支払う。
【0057】
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff:FIT)において、売電による収益は、例えば、40円/kWhである。この場合、調整制御装置10の事業主は、例えば、20円/kWhに相当する料金を報酬として分散型電源12の事業主から徴収する。これにより、分散型電源12の事業主においては、本来であれば収益を得られなかった期間において、20円/kWhを単価とする収益を得ることができる。
【0058】
そして、調整制御装置10の事業主は、20円/kWhに相当する料金のうち、10円/kWhに相当する料金を協力金として需要家14に支払う。これにより、調整制御装置10の事業主においては、残りの10円/kWhに相当する料金をエネルギーバランス調整制御に対する報酬として得ることができる。
【0059】
工場などにおける利用電力料金は、例えば、10円/kWhである。従って、負荷調整を行った需要家14においては、10円/kWhの電力料金を電力会社に支払った後、10円/kWhの協力金を調整制御装置10の事業主から得ることで、実質的に電力料金を支払うことなく設備14aを稼働させることができる。
【0060】
例えば、複数の需要家14が負荷調整を行った場合には、負荷の調整量の割合に応じて、協力金を支払えばよい。例えば、2つの需要家14において、負荷の調整量の割合が50%ずつであった場合には、5円/kWhの協力金を各需要家14に支払えばよい。この場合にも、各需要家14においては、実質的に支払う電力料金を抑えて設備14aを稼働させることができる。
【0061】
このように、本実施形態に係る調整制御装置10では、エネルギーバランス調整制御を行うことにより、出力抑制の発生を抑えることができる。これにより、電力系統4における電力の需要と供給のバランスを保ちつつ、出力抑制によって再生可能エネルギーが無駄になってしまうことを抑制することができる。
【0062】
そして、出力抑制指示を回避した場合に、出力抑制指示の期間において売電した分散型電源12の収益の一部に相当する料金を分散型電源12の事業主から徴収し、その料金の一部を需要家14に支払う。これにより、調整制御装置10の事業主及び分散型電源12の事業主においては、売電にともなう利益を得ることができる。そして、需要家14においては、電力料金を抑えて設備14aを稼働させることができる。調整制御装置10の事業主、分散型電源12の事業主、及び需要家14のそれぞれにおいて有益なサービスを提供することができる。
【0063】
なお、上記の例では、調整可能な電力量が、抑制する電力量よりも大きくなった場合に、負荷調整が可能であると判定している。これに限ることなく、例えば、調整可能な電力量が少しでも有る場合には、負荷調整が可能であると判定し、指令所6及び分散型電源12に出力抑制指示の回避を通知することにより、調整可能な電力量の分だけ分散型電源12に電力を出力させてもよい。
【0064】
図3は、調整制御装置によるエネルギーバランス調整制御方法の変形例を模式的に表すフローチャートである。
図3に表したように、この例では、指令所6が、電力の供給量が需要を上回る場合に、調整制御装置10に出力抑制指示を通知する(図3のステップS201)。調整制御装置10の制御部22は、通信部20を介して分散型電源12に対する出力抑制指示を指令所6から受ける(図3のステップS202)。以下、図3のステップS203〜S210は、図2に関して説明したステップS104〜S111と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0065】
このように、出力抑制指示を受ける工程は、電力系統4を運用する指令所6から出力抑制指示を受ける工程でもよい。出力抑制指示は、指令所6から直接的に受けてもよいし、分散型電源12を経由して受けてもよい。
【0066】
指令所6から直接的に出力抑制指示を受ける場合には、複数の分散型電源12のそれぞれに対応する複数の出力抑制指示を指令所6から調整制御装置10に通知してもよいし、複数の分散型電源12に対する出力抑制を1つにまとめた1つの出力抑制指示を指令所6から調整制御装置10に通知してもよい。
【0067】
以上、説明したように、本実施形態に係るエネルギーバランス調整制御方法は、
分散型電源12に対する出力抑制指示を受ける工程(例えば、図2のステップS103、図3のステップS202)と、
出力抑制指示の受け付けに応じて、需要家14に負荷調整を依頼する工程(例えば、図2のステップS104、図3のステップS203)と、
需要家14から依頼に対する返答を受ける工程(例えば、図2のステップS105、図3のステップS204)と、
返答に基づき、負荷調整が可能である場合には、出力抑制指示の回避を分散型電源12に通知し(例えば、図2のステップS109、図3のステップS208)、負荷調整が不可能である場合には、出力抑制指示を分散型電源12に通知する工程(例えば、図2のステップS108、図3のステップS207)と、
を備える。
【0068】
本実施形態に係るエネルギーバランス調整制御方法は、
出力抑制指示を回避した場合に、出力抑制指示の期間において売電した分散型電源12の収益の一部に相当する料金を分散型電源12の事業主から徴収する工程(例えば、図2のステップS110、図3のステップS209)と、
料金の一部を需要家14に支払う工程(例えば、図2のステップS111、図3のステップS210)と、
をさらに備える。
【0069】
なお、分散型電源12に対する出力抑制指示を受ける工程は、調整制御装置10の制御部22が出力抑制指示を受ける工程に限ることなく、例えば、調整制御装置10のオペレータなどが、電話連絡などで出力抑制指示を受ける工程を含んでもよい。
【0070】
需要家14に負荷調整を依頼する工程は、調整制御装置10の制御部22が依頼する工程に限ることなく、例えば、調整制御装置10のオペレータなどが、電話連絡などで需要家14のオペレータなどに負荷調整を依頼する工程を含んでもよい。
【0071】
返答を受ける工程は、調整制御装置10の制御部22が返答を受ける工程に限ることなく、例えば、調整制御装置10のオペレータなどが、電話連絡などで需要家14のオペレータなどから返答を受ける工程を含んでもよい。
【0072】
出力抑制指示の回避を分散型電源12に通知する工程、及び出力抑制指示を分散型電源12に通知する工程は、調整制御装置10の制御部22が分散型電源12に通知する工程に限ることなく、例えば、調整制御装置10のオペレータなどが、電話連絡などで分散型電源12のオペレータなどに通知する工程を含んでもよい。
【0073】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、調整制御装置10に含まれる各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0074】
その他、本発明の実施の形態として上述した調整制御装置10を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての調整制御装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0075】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【要約】
本発明の実施形態によれば、分散型電源に対する出力抑制指示を受ける工程と、前記出力抑制指示の受け付けに応じて、需要家に負荷調整を依頼する工程と、前記需要家から前記依頼に対する返答を受ける工程と、前記返答に基づき、前記負荷調整が可能である場合には、前記出力抑制指示の回避を前記分散型電源に通知し、前記負荷調整が不可能である場合には、前記出力抑制指示を前記分散型電源に通知する工程と、を備えたエネルギーバランス調整制御方法が提供される。これにより、出力抑制の発生を抑えることができるエネルギーバランス調整制御方法及び調整制御装置が提供される。
図1
図2
図3