特許第6842822号(P6842822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842822
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】薬剤保持カートリッジ及び薬剤放散装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20210308BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A01M1/20 E
   A61L9/12
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-114103(P2015-114103)
(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公開番号】特開2017-10(P2017-10A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年3月12日
【審判番号】不服2020-47(P2020-47/J1)
【審判請求日】2020年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 和之
(72)【発明者】
【氏名】若槻 健
(72)【発明者】
【氏名】多田 健志
【合議体】
【審判長】 森次 顕
【審判官】 西田 秀彦
【審判官】 長井 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−197991(JP,A)
【文献】 特開2005−333860(JP,A)
【文献】 実公昭49−32753(JP,Y1)
【文献】 特開2013−70654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M1/20
A61L9/12
B65D83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を保持するとともに、連続する波形をなすように折り曲げ成形したプリーツ形状の通気性を有する薬剤保持体と、
上記薬剤保持体を収容する収容体とを備え、薬剤放散装置の装置本体に対して着脱可能に装着される薬剤保持カートリッジにおいて、
上記薬剤保持体におけるプリーツの連続する方向の両端部を、プリーツの連続する方向の中間部に比べてそれぞれプリーツ高さを低く設定することにより、当該薬剤保持体の厚みを上記収容体内での位置に応じて異ならせており、
上記収容体における上記薬剤保持体を空気流入側から覆う壁部には、該収容体の内部に空気を流入させる流入用開口部が形成され、
上記収容体における上記薬剤保持体を空気流出側から覆う壁部には、当該壁部における上記薬剤保持体の厚みが厚い部分の空気流れ方向下流側に位置する部位と、当該壁部における上記薬剤保持体の厚みが薄い部分の空気流れ方向下流側に位置する部位とに、それぞれ、該収容体の内部に流入した空気を流出させる流出用開口部が形成され、上記薬剤保持体の厚みが薄い部分の空気流れ方向下流側に位置する部位に形成された上記流出用開口部は、上記薬剤保持体の厚みが厚い部分の空気流れ方向下流側に位置する部位に形成された上記流出用開口部よりも小さいことを特徴とする薬剤保持カートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤保持カートリッジにおいて、
上記薬剤保持体は、連続する波形をなすように折り曲げ成形したプリーツ形状の布材であることを特徴とする薬剤保持カートリッジ。
【請求項3】
請求項2記載の薬剤保持カートリッジにおいて、
上記収容体は、その厚み方向の寸法を、上記薬剤保持体におけるプリーツの連続する方向で変化させるように形成されており、
上記薬剤保持体のプリーツの高さは、上記収容体の厚み方向の寸法に対応するように変化していることを特徴とする薬剤保持カートリッジ。
【請求項4】
請求項2に記載の薬剤保持カートリッジにおいて、
上記薬剤保持体におけるプリーツ高さが低い部分を覆う上記収容体の壁部が、上記薬剤保持体におけるプリーツ高さが高い部分を覆う上記収容体の壁部よりも下に位置するように形成されていることを特徴とする薬剤保持カートリッジ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の薬剤保持カートリッジと、
上記薬剤保持カートリッジが着脱される装置本体とを備えていることを特徴とする薬剤放散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば害虫防除剤等の薬剤を空気中に放散する薬剤放散装置に装着される薬剤保持カートリッジ及び薬剤放散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば害虫防除剤等の薬剤を空気中に放散する薬剤放散装置には薬剤保持カートリッジが装着されており、この薬剤保持カートリッジに送風することで薬剤を空気中に放散することができるように構成されている。薬剤保持カートリッジには寿命があるので、薬剤保持カートリッジを定期的に交換することができるようになっている(例えば特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1の薬剤保持カートリッジは、ハニカム構造体に薬剤を保持させ、そのハニカム構造体の上下両面にプレートをそれぞれ固着したリング形状となっている。そして、装置本体の排気口側部分に装着される。
【0004】
特許文献2の薬剤保持カートリッジは、保持体ケースを有し、保持体ケースの内部にハニカム状部材が収容されている。ハニカム状部材には、害虫防除成分を含む薬剤が保持されている。
【0005】
特許文献3の薬剤保持カートリッジは、箱状部材の内部に、薬剤保持体と電池とが収容されている。薬剤保持体は、布材を連続する波形をなすように折り曲げ成形したプリーツ形状である。箱状部材には、空気が出入りする開口部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−134421号公報
【特許文献2】特開2005−218305号公報
【特許文献3】特開2011−130742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
薬剤保持カートリッジの内部に収容される薬剤保持体の種類としては、上述したようにハニカム形状のものやプリーツ形状のものがあるが、これら薬剤保持体の厚みは一定である。このため、薬剤保持カートリッジの内部空間を有効利用できているとは言い難く、この点で、薬剤保持カートリッジの小型化が不十分であった。
【0008】
また、薬剤保持カートリッジのより一層の小型化が求められた場合、内部の薬剤保持体を小さくする方法があるが、薬剤保持体を単純に小さくしたのでは効力を大きく低下させてしまう恐れがある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空気の流れにくい部分が薬剤保持カートリッジ内にある場合や、薬剤保持カートリッジを小型化する場合であっても、その効力を大きく低下することがないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、薬剤保持体の厚みが収容体内での位置に応じて異なるようにした。
【0011】
第1の発明は、
薬剤を保持するとともに、連続する波形をなすように折り曲げ成形したプリーツ形状の通気性を有する薬剤保持体と、
上記薬剤保持体を収容する収容体とを備え、薬剤放散装置の装置本体に対して着脱可能に装着される薬剤保持カートリッジにおいて、
上記薬剤保持体におけるプリーツの連続する方向の両端部を、プリーツの連続する方向の中間部に比べてそれぞれプリーツ高さを低く設定することにより、当該薬剤保持体の厚みを上記収容体内での位置に応じて異ならせており、
上記収容体における上記薬剤保持体を空気流入側から覆う壁部には、該収容体の内部に空気を流入させる流入用開口部が形成され、
上記収容体における上記薬剤保持体を空気流出側から覆う壁部には、当該壁部における上記薬剤保持体の厚みが厚い部分を覆う箇所と、当該壁部における上記薬剤保持体の厚みが薄い部分を覆う箇所とに、それぞれ、該収容体の内部に流入した空気を流出させる流出用開口部が形成され、上記薬剤保持体の厚みが薄い部分を覆う箇所に形成された上記流出用開口部は、上記薬剤保持体の厚みが厚い部分を覆う箇所に形成された上記流出用開口部よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、薬剤放散装置の装置本体から送風される空気は、収容体の流入用開口部から収容体に流入し、薬剤保持体を通過して流出用開口部から外部に流出する。これにより、薬剤が放散される。
【0013】
従来、薬剤保持カートリッジにおいては、薬剤保持体の厚みが一定であったため、収容体内の空間を必ずしも有効利用できていなかったが、本発明では、収容体内での薬剤保持体の厚みを、当該収容体内での位置に応じて異なるようにしたので、収容体内の空間を従来に比べてより一層有効利用することができる。例えば、空気が流れやすい場所では、空気の流れにくい場所に比べて薬剤保持体を厚くすることで、空気に対して一層効率良く薬剤を供給できる。このように、収容体内の空間を有効利用することができるので、収容体をコンパクトに構成でき、ひいては、薬剤保持カートリッジを小型化することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
上記薬剤保持体は、連続する波形をなすように折り曲げ成形したプリーツ形状の布材であることを特徴とする。
【0015】
例えば、シートやスポンジなどを薬剤保持体とした場合には、その厚みを異ならせるように加工することは困難であるが、本発明では、プリーツ形状の布材を薬剤保持体としており、そのプリーツ高さを途中で変化させることによって当該薬剤保持体の厚みの変化を簡単に実現できる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、
上記収容体は、その厚み方向の寸法を、上記薬剤保持体におけるプリーツの連続する方向で変化させるように形成されており、
上記薬剤保持体のプリーツの高さは、上記収容体の厚み方向の寸法に対応するように変化していることを特徴とする。
【0017】
すなわち、従来の薬剤保持カートリッジにおいては、薬剤保持体の厚みが一定だったので、それを収容する収容体の厚み方向の寸法も略一定であった。このため、薬剤保持カートリッジの形状の制約が大きく、デザイン性も低かった。
【0018】
この点、本発明では、収容体の厚み方向の寸法に対応するように薬剤保持体のプリーツの高さを変化させることができるので、薬剤保持カートリッジの効率を低下させることなく、その形状の自由度を向上させることができ、デザイン性も向上する。
【0019】
第4の発明は、第2の発明において、
上記薬剤保持体におけるプリーツ高さが低い部分を覆う上記収容体の壁部が、上記薬剤保持体におけるプリーツ高さが高い部分を覆う上記収容体の壁部よりも下に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、収容体の外形状を薬剤保持体のプリーツ高さに対応した形状にすることが可能になるので、薬剤保持カートリッジがコンパクトになる。
【0021】
第5の発明は
上記薬剤保持カートリッジと、当該薬剤保持カートリッジが着脱される装置本体とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、例えば、空気が流れやすい場所では、空気の流れにくい場所に比べて薬剤保持体を厚くすることで空気に対して一層効率良く薬剤を供給できる。このように、薬剤保持体の厚みを収容体内での位置に応じて異ならせることで、収容体内の空間を有効利用して収容体をコンパクトに構成でき、ひいては、薬剤保持カートリッジを小型化することができる。
【0023】
第2の発明によれば、プリーツ形状の布材で薬剤保持体を構成したので、薬剤保持体の厚みの変化を簡単に実現できる。
【0024】
第3の発明によれば、薬剤保持体のプリーツの高さを、収容体の厚み方向の寸法に対応するように変化させたので、薬剤保持カートリッジの効率を低下させることなく、その形状の自由度を向上させることができ、デザイン性も向上させることができる。
【0025】
第4の発明によれば、収容体の外形状を薬剤保持体のプリーツ高さに対応した形状にすることができるので、薬剤保持カートリッジをコンパクトにすることができる。
【0026】
第5の発明によれば、上記薬剤保持カートリッジを備えているので、小型かつ高効率である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る薬剤放散装置を正面側から見た斜視図である。
図2】薬剤放散装置を背面側から見た斜視図である。
図3】薬剤放散装置の平面図である。
図4】薬剤放散装置の底面図である。
図5】薬剤放散装置の正面図である。
図6】薬剤放散装置の背面図である。
図7】薬剤放散装置の左側面図である。
図8図3におけるVIII−VIII線断面図である。
図9図3におけるIX−IX線断面図である。
図10】カバーを開放状態にして薬剤保持カートリッジを取り外した薬剤放散装置の斜視図である。
図11図10におけるXI−XI線断面図である。
図12】薬剤保持カートリッジを正面側から見た斜視図である。
図13】薬剤保持カートリッジの平面図である。
図14】薬剤保持カートリッジの底面図である。
図15】薬剤保持カートリッジの左側面図である。
図16】薬剤保持カートリッジの正面図である。
図17図13におけるXVII−XVII線断面図である。
図18図13におけるXVIII−XVIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る薬剤放散装置1を正面側、かつ、上方から見た斜視図である。この薬剤放散装置1は、例えば使用者に取り付けて使用することができるようになっている。薬剤放散装置1の取付部位としては、使用者の腕や脚、衣服、ベルト等であり、例えば手首、上腕部、足首等に取り付けて使用するのが好ましいが、取付部位はこれら部位に限定されるものではない。
【0030】
薬剤放散装置1は、薬剤保持カートリッジ2(図11に仮想線で示す)と、薬剤保持カートリッジ2が着脱自在に装着される装置本体5とを備えている。この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、図1図9に示すように薬剤放散装置1の長手方向一側を前側とし、長手方向他側を後側とする。そして、薬剤放散装置1を前側から見たときに右となる側を右とし、左となる側を左とする。
【0031】
(薬剤保持カートリッジ2の構成)
図12図18に基づいて薬剤保持カートリッジ2の構成について説明する。薬剤保持カートリッジ2は、ケース3と、薬剤を保持する薬剤保持体4とを備えている。ケース3は、薬剤保持体4を収容する収容体である。薬剤保持体4に保持される薬剤としては、常温で揮発する性質を有する各種薬剤であればよく、例えば害虫忌避剤、殺虫剤、芳香剤、除菌剤、消臭剤等を挙げることができ、これらのうち、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。薬剤を薬剤保持体4に含浸させることによって保持させてもよいし、薬剤保持体4の表面に付着させることによって保持させてもよい。薬剤は液体であるのが好ましい。
【0032】
薬剤保持体4の厚みは、後述するプリーツ高さであり、空気通過方向の寸法で表される。すなわち、薬剤保持体4に空気が流入する方向を基準として、薬剤保持体4における空気流れ方向上流端部と、空気流れ方向下流端部との間の寸法が、薬剤保持体4の厚みである。本実施形態の薬剤保持体4は、単独の状態で、その厚みが位置に応じて異なる。つまり、本実施形態の薬剤保持体4は、ケース3に収容されていない状態でも、ケース3内に収容されたときの位置に応じて厚みが異なるように構成されている。具体的には、前述のように、プリーツの高さを異ならせることでこれを実現している。
【0033】
図17に示すように、薬剤保持体4は、連続する波形をなすように折り曲げ成形したプリーツ形状の布材で構成されている。布材としては、例えば不織布や織布等を用いることができるが、これら以外にも通気性を有し、かつ、薬剤を保持することができるもの(通気性を有する発泡材等)であればよく、特に限定されない。薬剤保持体4の全体に略均一に薬剤が保持されている。薬剤保持体4としてプリーツ形状の布材が好ましいのであるが、その理由は、プリーツの高さを変えることによって、薬剤保持体4の厚みをケース3内での位置に応じて容易に異ならせることができるからである。
【0034】
また、薬剤保持体4はプリーツ形状の布材でなくてもよく、公知の各種保持体、例えば、板状のスポンジやハニカム構造の板材等であってもよい。これらの場合も薬剤保持体4の厚みは、上述した定義に基づいた厚みであり、ケース3内での位置に応じて異ならせることができる。
【0035】
この実施形態では、説明の便宜を図るために、図12図18に示すように薬剤保持カートリッジ2の前側、後側、右側及び左側を定義する。薬剤保持カートリッジ2の前側、後側、右側及び左側は、薬剤保持カートリッジ2を装置本体5に装着した状態において薬剤放散装置1の前側、後側、右側及び左側と同じ側となる。
【0036】
薬剤保持体4は平面視で略正方向に近い形状とされており、詳細は後述するが、装置本体5によって送風される空気が上方から下方へ通過するようになっている。図17に示すように、薬剤保持体4の前側及び後側の所定範囲のプリーツ4bの高さ(プリーツ高さ)は、それら以外の部分、即ち、前後方向中間部のプリーツ4aの高さに比べて低く設定されている。つまり、薬剤保持体4におけるプリーツ4a、4bの連続する方向の両端部のプリーツ4bの高さは、プリーツ4a、4bの連続する方向の中間部のプリーツ4aの高さに比べて低く設定されている。
【0037】
この実施形態では、薬剤保持体4の前側及び後側のプリーツ高さの低い部分は、2山ずつとなっているが、山の数はこれに限られるものではなく、任意の数に設定することができる。また、薬剤保持体4の前側及び後側のプリーツ高さは、前後方向中間部のプリーツ高さの1/3以下、例えば1/2に設定することができる。
【0038】
ケース3は、共に樹脂材からなる上側ケース部材10と下側ケース部材20とを組み合わせることによって構成されている。下側ケース部材20は、薬剤保持体4が載置される底壁部21と、底壁部21の周縁部から上方へ延びる側壁部22とを有している。底壁部21は、薬剤保持体4の底面の形状と略同じ正方形状をなしている。
【0039】
上側ケース部材10は、上壁部11と、上壁部11の周縁部から下方へ延びる側壁部12とを有している。上側ケース部材10の側壁部12の内側に、下側ケース部材20の側壁部22が嵌合することによって上側ケース部材10と下側ケース部材20とが一体化している。
【0040】
上側ケース部材10の上壁部11は、薬剤保持体4を上方から覆うように配置される。上側ケース部材10の上壁部11は、前後方向中央部が最も上に位置し、そこから前側及び後側へ行くに従って下に位置するように、全体として上方へ膨出するように形成されている。これにより、上壁部11のうち、前側及び後側の壁部、即ち薬剤保持体4における前側及び後側のプリーツ4bを覆う壁部が、前後方向中間部の壁部、即ち薬剤保持体4における前後方向中間部のプリーツ4aを覆う壁部よりも下に位置するように形成される。
【0041】
つまり、薬剤保持体4のプリーツが連続する方向について見たとき、ケース3の厚み方向(空気流れ方向)の寸法が変化しており、このケース3の厚み方向の寸法変化に対応するように、薬剤保持体4のプリーツの高さが変化している。これにより、薬剤保持カートリッジ2の外見を変化に富んだものとすることができ、デザイン性が向上する。
【0042】
尚、空気の流れ方向から薬剤保持体4を見たときに、プリーツの連続する方向と直交する方向については、プリーツ高さは変化していない。この方向のプリーツ高さを変化させるのは製造上、困難であることによる。したがって、ケース3についても、その内部のプリーツの連続する方向と直交する方向については厚み、即ち高さが変化していない。
【0043】
図12図13に示すように、上側ケース部材10の上壁部11には、ケース3の内部に空気を流入させる複数の流入用開口部(空気流通孔)11a、11a、…が形成されている。各流入用開口部11aは、ケース3の前後方向に長い形状とされている。そして、流入用開口部11a、11a、…は、流入用開口部11aの長手方向と交差する方向、即ち左右方向に互いに間隔をあけて形成されている。上壁部11の中央部に形成されている流入用開口部11aは、上壁部11の前側や後側に形成されている開口部11bに比べて前後方向に長くなっている。この開口部11bもケース3の内部に空気を流入させるためのものである。また、流入用開口部11aは、前後方向中間部の開口幅(左右方向の寸法)が広く、前側及び後側へ行くほど開口幅が狭くなっている。
【0044】
図12図15に示すように、上側ケース部材10の左右の側壁部12の下端部には、前後方向中央部に切欠部12aが形成されている。切欠部12aの幅は、上方へ行くほど狭くなっている。また、上側ケース部材10の左右の側壁部12には、前側及び後側にそれぞれ側壁開口部12bが形成されている。
【0045】
図14に示すように、下側ケース部材20の底壁部21には、ケース3の内部に流入した空気を流出させる流出用開口部21aが形成されている。流出用開口部21aは、底壁部21の外形状と略相似形状とされている。流出用開口部21aの周縁部には、薬剤保持体4の周縁部を空気流れ方向下流側から覆うように形成された覆い部21bが設けられている。覆い部21bは、流出用開口部21aの周縁部の全周に亘って設けられており、ケース3を下方から見たとき略矩形の枠状をなしている。これにより、薬剤保持体4の周縁部が全周に亘って覆い部21bにより覆われるとともに、空気流れ方向下流側から支持される。覆い部21bは、ケース3の内面と薬剤保持体4の周縁部との隙間に空気が流れにくくするためのものである。
【0046】
尚、この実施形態では、覆い部21bを流出用開口部21aの周縁部に設けているが、これに限らず、図示しないが、流入用開口部11aの形状を流出用開口部と同様にして、その流入用開口部11aの周縁部の全周に、薬剤保持体4の周縁部を空気流れ方向上流側から覆うように形成された覆い部を設けてもよい。また、流出用開口部21aの周縁部及び流入用開口部11aの周縁部の両方に覆い部を設けてもよい。また、覆い部21bは、流出用開口部21aの周縁部の全周に亘って設けることなく、一部に設けてもよく、例えば、薬剤保持体4のプリーツ4b、4bを覆う部分にのみ設けることもできる。また、同様に、流入用開口部11aの周縁部に覆い部を設ける場合に、流入用開口部11aの周縁部の全周に設けてもよいし、一部にのみ設けてもよい。
【0047】
覆い部21bは、薬剤保持体4の前側及び後側のプリーツ4b、4bをそれぞれ空気流れ方向下流側から覆うことになる。つまり、薬剤保持体4における覆い部21bによって覆われるプリーツ4b、4bは、覆い部21bによって覆われないプリーツ4aに比べてプリーツ高さが低く設定されることになる。薬剤保持体4における覆い部21bによって覆われる部分のプリーツ4bの高さを低くしているので、その分、薬剤保持カートリッジ2が小型になる。
【0048】
また、下側ケース部材20の底壁部21には、左右方向に延びる細い板状部21cと、前後方向に延びる細い板状部21dとが流出用開口部21aを横切るように設けられている。板状部21c、21dによって薬剤保持体4が下方から支持されることになる。
【0049】
(装置本体5の構成)
図1図11に基づいて装置本体5の構成について説明する。図8に示すように、装置本体5は、ベース部材30と、送風部としてのファン50と、ファン50を駆動する電動モーター51と、電動モーター51に電力を供給する電池(電力供給部)52、52とを有している。ファン50、電動モーター51及び電池52、52は、装置本体5のベース部材30に収容されるようになっている。電池52は、例えば単三電池や単四電池等である。
【0050】
すなわち、ベース部材30は、例えば樹脂材を成形してなるものであり、下板部31と下板部31の周縁部から上方へ延びる側板部32とを有し、上方に開放する凹状部材である。下板部31の下面31aは、使用者への取付状態で使用者に接触する取付面であり、この下面31aは、前後方向中央部が最も上に位置するように緩やかに湾曲形成され、使用者の例えば腕等に接触した際にフィットし易い形状となっている。
【0051】
図1に示すように、ベース部材30の前端部には、左右両端部からそれぞれ斜め下方へ突出する突出板部33、33が形成されている。突出板部33、33の突出方向先端部には、左右方向に延びる棒状部34の両端部がそれぞれ固定されている。棒状部34は、ベース部材30の下板部31及び側板部32の外面から離れている。また、図2に示すように、ベース部材30の後端部にも前端部と同様な突出板部33、33と棒状部34とが設けられている。棒状部34、34には、使用者の腕等に巻き付けて薬剤放散装置1を使用者に取り付けるためのバンドB(図3にのみ仮想線で示す)が連結される。バンドBは従来から周知のものを用いることができ、例えば布製で、長さを調節することが可能なバンド等を挙げることができる。上記前側の棒状部34は第1バンド連結部であり、後側の棒状部34は第2バンド連結部であり、これらにより、薬剤放散装置1を使用者に取り付けるための取付部が構成されている。また、前側の棒状部34と後側の棒状部34とは前後方向に互いに間隔をあけて配置されることなる。
【0052】
図8に示すように、ベース部材30の下板部31の略中央部に電動モーター51が固定されている。電動モーター51の出力軸51aは上方へ突出している。出力軸51aの上端部には、ファン50の中心部が回転一体に固定されている。ファン50は、周知のものであり、電動モーター51によって回転駆動されると、上方から空気を吸い込んで側方から流出させるように送風する。また、ベース部材30には、ファン50を下方、及び側方から覆うように形成されて空気の流路を区画形成するための空気流路形成部材53が設けられている。
【0053】
装置本体5の内部における空気流路形成部材53よりも前側及び後側には、それぞれ電池52を交換可能に収容する前側電池収容空間S1及び後側電池収容空間S2が形成されており、前側電池収容空間S1及び後側電池収容空間S2の間に電動モーター51が配置されている。各電池収容空間S1、S2は、装置本体5の左右両端部近傍に亘る細長い形状であり、上方にのみ開放されている。各電池収容空間S1、S2に電池52を収容する際には上方のみから収容することができ、一方、各電池収容空間S1、S2から電池52を取り出す際には上方へのみ取り出すことができるようになっている。各電池収容空間S1、S2の左右方向の寸法は、電池52の左右方向の寸法と略等しく設定され、また、各電池収容空間S1、S2の前後方向の寸法は、電池52の前後方向の寸法(外径)と略等しく設定されている。
【0054】
ファン50の上方には、薬剤保持体4を含む薬剤保持カートリッジ2を交換可能に収容するためのカートリッジ収容空間Rが形成されている。このカートリッジ収容空間Rは、装置本体5と、該装置本体5に取り付けられたカバー40とによって形成された空間である。カバー40は、カートリッジ収容空間Rを上方から覆うように形成され、詳細は後述するが、薬剤保持体4を含む薬剤保持カートリッジ2の交換時に、カートリッジ収容空間Rを開放可能に装置本体5に取り付けられている。
【0055】
カートリッジ収容空間Rは、前側及び後側電池収容空間S1、S2の上方に形成されている。カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2は、装置本体5によって下方から支持される。また、図10に示すように、装置本体5の内部には、左右両側に、それぞれ薬剤保持カートリッジ2を位置決めするための位置決め部57、57が設けられている。位置決め部57、57は、上下方向に延びる板状に形成されており、その上端部が薬剤保持カートリッジ2のケース3の切欠部12aに嵌合するようになっている。
【0056】
図8及び図11にも示すように、カートリッジ収容空間Rの前後方向の寸法は、カートリッジ収容空間Rの前端部及び後端部がそれぞれ前側及び後側電池収容空間S1、S2の開放部分に重なるように設定されている。カートリッジ収容空間Rの左右方向の寸法は、薬剤保持カートリッジ2の左右方向の寸法と略等しく設定され、また、カートリッジ収容空間Rの前後方向の寸法は、薬剤保持カートリッジ2の前後方向の寸法と略等しく設定されている。
【0057】
したがって、平面視で、前側電池収容空間S1に収容された電池52の後部が、カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2の前部に重複し、後側電池収容空間S2に収容された電池52の前部が、カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2の後部に重複することになる。このため、前側電池収容空間S1に収容された電池52を前側電池収容空間S1から取り出す際に電池52の移動軌跡上に、カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2が位置することになるとともに、後側電池収容空間S2に収容された電池52を後側電池収容空間S2から取り出す際にも電池52の移動軌跡上に、カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2が位置することになる。つまり、前側電池収容空間S1から取り出す電池52及び後側電池収容空間S2から取り出す電池52のいずれにも、カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2が干渉するように配置される。尚、前側電池収容空間S1から取り出す電池52及び後側電池収容空間S2から取り出す電池52のいずか一方にのみ、カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2が干渉するように配置されていてもよい。
【0058】
装置本体5のベース部材30の後端部には、左右方向に延びる支軸35が設けられている。この支軸35は、カバー40を回動可能に支持するためのものであり、従って、カバー40は支軸35周りに回動することによってカートリッジ収容空間Rを開放可能に装置本体5に取り付けられている。カバー40の開放状態を図11に示す。
【0059】
図9に示すように、装置本体5のベース部材30の左右両側には、ファン50によって薬剤保持体4に送風された空気を放出するための薬剤放散孔55がそれぞれ形成されている。薬剤放散孔55の上流端は、装置本体5におけるファン50が配設された空間に連通している。図7に示すように、薬剤放散孔55の下流端開口は、ベース部材30の側面に開口しており、前側の棒状部34と後側の棒状部34との間に配置されている。この薬剤放散孔55の下流端開口は、ベース部材30の下板部31の下面31aに沿うように、前後方向に長い形状となっている。薬剤放散孔55の下流端開口の前端は、前側電池収容空間S1よりも後に位置しており、また、薬剤放散孔55の下流端開口の後端は、後側電池収容空間S2よりも前に位置している。
【0060】
図7に示す側面視で薬剤放散孔55の内部にファン50の一部が見えるように、薬剤放散孔55が形成されている。これにより、ファン50から送風された空気が薬剤放散孔55から放散されやすくなる。
【0061】
また、図7に示すように、薬剤放散孔55の下流端開口の縁部のうち、上縁部55a及び上縁部55bは略前後方向に延びている。下縁部55bは、薬剤放散装置1の使用者への取付状態で使用者に近い側に位置する第1縁部であり、上縁部55aは、第1縁部よりも使用者から離れた第2縁部である。下縁部55bは、前側及び後側へ行くほど上に位置するように形成されている。また、上縁部55aは、前側及び後側へ行くほど下に位置するように形成されている。これにより、薬剤放散孔55の下流端開口の開口幅(上下方向の寸法)は、前側及び後側へ行くほど狭くなり、前後方向中間部が広くなる。
【0062】
図9の断面図に示すように、左側の薬剤放散孔55の下流端開口の上縁部55aは、下縁部55bよりも左側、即ち、空気流れ方向下流側に位置付けられている。また、右側の薬剤放散孔55の下流端開口の上縁部55aは、下縁部55bよりも右側、即ち、空気流れ方向下流側に位置付けられている。これにより、薬剤放散孔55を流通して下流端開口に達した空気が矢印イで示すように薬剤放散装置1の下方へ向けて流れ易くなる。
【0063】
図1図2に示すように、カバー40は、例えば樹脂材を成形してなるものであり、カートリッジ収容空間Rと、前側及び後側電池収容空間S1、S2との両方を上方から覆うように大型に形成されている。従って、装置本体5の上面は略全体がカバー40によって覆われる。
【0064】
カバー40は、上板部41と、上板部41の左右両側縁部から下方へ延びる側板部42とを有している。図7に示すように、上板部41は、カートリッジ収容空間Rの外方へ膨出するように形成されており、全体として、前後方向中央部が最も上に位置し、前側及び後側へ行くほど下に位置するように湾曲している。図8に示すように、薬剤保持カートリッジ2のケース3におけるカバー40によって覆われる部分、即ち、ケース3の上壁部11は、カバー40の膨出形状に対応するように、前後方向中央部が最も上に位置するように膨出している。
【0065】
図1図2等に示すように、カバー40の上板部41には、空気をカートリッジ収容空間Rに吸入させる吸入口となる複数の開口部41a、41a、…が形成されている。カバー40の開口部41aは、略前後方向に長い形状であり、従って、カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2の流入用開口部11aと略同方向に長い形状となる。カバー40の開口部41aは、該開口部41aの長手方向と交差する方向である左右方向に互いに間隔をあけて形成されている。
【0066】
また、カバー40の上板部41には、左右両側部に、貫通孔41cが形成されている。貫通孔41cも前後方向に長い形状とされており、空気をカートリッジ収容空間Rに吸入させるためのものである。
【0067】
カバー40は、装置本体5の上方に位置しているので、装置本体5の薬剤放散孔55の下流端開口は、薬剤放散装置1の使用者への取付状態でカバー40の開口部41aよりも使用者に近くなるように配置される。これにより、吸入用の開口部41aと薬剤放散孔55とを離して配置しながら、薬剤放散孔55から放散される薬剤を含んだ空気を使用者に近いところへ向けて供給することが可能になる。
【0068】
図2図3等に示すように、カバー40の後端部には、装置本体5の支軸35に支持される支持部43が設けられている。支持部43は、支軸35を囲むように形成された略筒状をなしている。尚、図示しないが、支軸をカバー40に設け、支持部を装置本体5に設けてもよい。
【0069】
図10図11に示すように、カバー40の前端部には係合部47が下方へ突出するように設けられている。係合部47には、係合孔47aが形成されている。一方、装置本体5の前端部には、係合爪38が突出するように設けられている。図8等に示すように、カバー40が全閉状態にあるときに、装置本体5の係合爪38がカバー40の係合孔47aに嵌入することによってカバー40が開方向に回動しないようにロックされる。カバー40を開放する場合には、カバー40や装置本体5を弾性変形させて装置本体5の係合爪38をカバー40の係合孔47aから離脱させてロックを解除すればよい。
【0070】
図2に示すように、カバー40の後部には、電源スイッチ配設孔41bが形成されている。電源スイッチ配設孔41bは、前後方向に長い形状である。電源スイッチ配設孔41bには、前後方向にスライド操作可能な電源スイッチ60がカバー40の表面に臨むように設けられている。また、電源スイッチ配設孔41bには、運転ランプ63もカバー40の表面に臨むように設けられている。
【0071】
すなわち、この薬剤放散装置1には、電池52、52、電動モーター51、電源スイッチ60、運転ランプ63及び抵抗器(図示せず)によって電気回路が構成されている。電源スイッチ60は、電池52、52の電力を電動モーター51に供給する供給状態と、供給しない非供給状態とに切り替えるためのスイッチである。運転ランプ63は、電動モーター51が作動しているか否かを周囲の者(使用者を含む)に光によって報知するための動作状態報知用発光体であり、例えばLED等で構成することができる。抵抗器は、例えば特開2011−130742号公報に開示されているように、電池52、52の寿命と、薬剤保持カートリッジ2の寿命とを略一致させるためのものである。
【0072】
図8に示すように、電源スイッチ60及び運転ランプ63は、フレキシブル基板62の一端部に実装されている。フレキシブル基板62は、従来から周知のものであり、柔軟性を有するフィルムとフィルム上に設けられた導電層とを有する基板であり、弱い力で変形させることができるとともに、変形させた後にも導電層による導通状態を維持でき、しかも、繰り返し変形させても断線しないように構成されている。電源スイッチ60及び運転ランプ63は、フレキシブル基板62と、フレキシブル基板62の他端部から延びる配線(図示せず)とを介して装置本体5の電動モーター51や電池52と接続されている。
【0073】
フレキシブル基板62の一端部は、カバー40の上板部41の内面において電源スイッチ配設孔41bの裏側に固定されている。この固定状態において、電源スイッチ60及び運転ランプ63が電源スイッチ配設孔41bの内部に配置される。尚、電源スイッチ60及び運転ランプ63の配設位置は、カバー40の後部以外であってもよく、例えば前部であってもよいし、前後方向の中央部であってもよいが、フレキシブル基板62の取り回しを考慮するとカバー40の後部が好ましい。
【0074】
フレキシブル基板62は、装置本体5の支軸35よりも装置本体5の内側を通ってベース部材30へ向かって延びている。フレキシブル基板62の他端部は、ベース部材30の内部において後側電池収容空間S2の下方に達している。このフレキシブル基板62の装置本体5側の端部は、装置本体5に対して非固定状態、即ち装置本体5に対して固定されておらず、フリーな状態とされている。フレキシブル基板62の長さは、カバー40を回動操作した際に、フレキシブル基板62の装置本体5側の端部が装置本体5から抜けないように十分な長さに設定されている。
【0075】
尚、上記実施形態では、電源スイッチ60及び運転ランプ63の両方をカバー4に設けているが、これに限らず、電源スイッチ60及び運転ランプ63の一方のみをカバー4に設けてもよい。また、電源スイッチ60及び運転ランプ63を別々に設けてもよい。
【0076】
(薬剤放散装置1の動作)
次に、薬剤放散装置1の動作について説明する。薬剤放散装置1は、図3に仮想線で示すバンドBを使用して使用者の腕等に取り付ける。そして、電源スイッチ60をスライドさせて「ON」にすると、電池52、52の電力が電動モーター51及び運転ランプ63に供給されて電動モーター51が作動するとともに、運転ランプ63が点灯する。電源スイッチ60をカバー40に設けているので、装置本体5を小型化し、かつ、カバー40を大型化して大きな薬剤保持体4を収容可能にする場合に、電源スイッチ60の視認性が良好になるとともに、操作性も良好になる。同様に、運転ランプ63をカバー40に設けているので、運転ランプ63の視認性が良好になる。
【0077】
電動モーター51が作動すると、ファン50が回転駆動され、ファン50の上方から空気を吸い込んで側方から流出させる。この空気の流れにより、図9に矢印ロで示すようにカバー40の上方の空気がカバー40の上板部41に形成されている開口部41a及び貫通孔41cからカートリッジ収容空間Rに吸入される。カートリッジ収容空間Rには、薬剤保持カートリッジ2が収容されているので、吸入された空気は、薬剤保持カートリッジ2に向けて流れて、薬剤保持カートリッジ2のケース3の上部に形成されている流入用開口部11a及び開口部11bからケース3の内部に流入する。ケース3の内部に流入した空気は、ケース3の下部に流出用開口部21a(図14に示す)が形成されているので、下方へ流れていき、この間に、薬剤保持体4を通過して薬剤を含んだ空気となり、流出用開口部21aからケース3の外部に流出する。
【0078】
空気がケース3に流入する際、図14に示すように、薬剤保持体4の周縁部がケース3の覆い部21bによって空気流れ方向下流側から覆われているので、空気は、ケース3の内面と薬剤保持体4の周縁部との隙間に向けて流れにくくなる。これにより、ケース3の内面と薬剤保持体4の周縁部との隙間を流れる空気、即ち、薬剤を含んでいない空気が減少するので、薬剤による効力の低下が抑制される。
【0079】
上述したように、薬剤保持体4におけるプリーツ4bの高さを低くし、この高さの低いプリーツ4bを覆い部21bによって覆っている。従って、薬剤保持体4におけるプリーツ4bは、プリーツ4aに比べて空気の通過しにくい部分となっている。よって、プリーツ4bの高さを低くしてその部分の空気の通過面積が狭くなっても、効力の低下は殆ど問題にならない程度である。
【0080】
薬剤保持カートリッジ2の流出用開口部21aからケース3の外部に流出した薬剤を含む空気は、装置本体5の左右の薬剤放散孔55、55にそれぞれ流入した後、図9に矢印イで示すように、各薬剤放散孔55の下流端開口から外部に放散される。このとき、各薬剤放散孔55の下流端開口の縁部のうち、使用者から離れている上縁部55aが、使用者に近い側の下縁部55bよりも空気流れ方向下流側に位置しているので、薬剤を含んだ空気が使用者へ向けて流れ易くなる。これにより、薬剤が使用者側に届きやすくなるので、薬剤による効力がより高まる。また、各薬剤放散孔55が装置本体5の下面31aに沿うように延びているので、薬剤を含んだ空気が装置本体5の広い範囲から放散される。
【0081】
また、装置本体5の前側の棒状部34及び後側の棒状部34の間に、各薬剤放散孔55の下流端開口が配置されているので、バンドBや棒状部34、34が、薬剤を含む空気の放散を阻害することはなく、薬剤を含む空気が所望の方向にスムーズに放散される。以上のことから、薬剤による効力が十分に得られる。
【0082】
(薬剤保持カートリッジ2の交換要領)
次に、薬剤保持カートリッジ2の交換要領について説明する。この実施形態に係る薬剤放散装置1では、電気回路に抵抗器を設けて薬剤保持カートリッジ2の寿命と電池52、52の寿命とを略一致させているので、薬剤保持カートリッジ2の交換時には、電池52、52も同時に交換することが前提となっている。
【0083】
まず、装置本体5の係合爪38をカバー40の係合孔47aから離脱させてカバー40のロックを解除する。そして、カバー40を支軸35周りに上方へ回動させてカートリッジ収容空間Rを開放状態にする。このとき、電源スイッチ60及び運転ランプ63がフレキシブル基板62に設けられているので、カバー40の回動動作はスムーズに行える。
【0084】
カバー40を開放状態にした後、カートリッジ収容空間Rに収容されている薬剤保持カートリッジ2を取り出す。薬剤保持カートリッジ2は、装置本体5に載置されているだけなので、取り出し作業は容易に行える。
【0085】
また、前側及び後側電池収容空間S1、S2に収容されている電池52、52を取り出す。前側電池収容空間S1から取り出す電池52及び後側電池収容空間S2から取り出す電池52のいずれにも、カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2が干渉するように配置されているので、仮に薬剤保持カートリッジ2を先に取り出さなかった場合には、電池52が薬剤保持カートリッジ2に干渉することになる。これにより、使用者は薬剤保持カートリッジ2も交換が必要であることに気づきやすくなり、電池52、52と薬剤保持カートリッジ2の同時交換を促すことができる。
【0086】
電池52、52を取り出した後、新しい電池52、52を前側及び後側電池収容空間S1、S2に収容する。その後、新しい薬剤保持カートリッジ2をカートリッジ収容空間Rに収容する。このとき、カバー40の開口部41a、41a、…の延びる方向と、薬剤保持カートリッジ2の流入用開口部11aの延びる方向とが略同方向であるため、薬剤保持カートリッジ2の流入用開口部11aの延びる方向がカバー40の開口部41a、41a、…の延びる方向と略一致するように、薬剤保持カートリッジ2を向ければよく、初めての者でも薬剤保持カートリッジ2の向きを直感的に、かつ、容易に判別することが可能になる。
【0087】
また、カバー40の開放状態でカバー4が支軸35を介して装置本体5に連結されるので、カバー40の開口部41a、41a、…の延びる方向と装置本体5のカートリッジ収容空間Rとの関係が変わることはなく、カバー40の開口部41a、41a、…の延びる方向を基準にして薬剤保持カートリッジ2の方向を容易に判別することが可能になる。
【0088】
また、カバー40の膨出形状と、薬剤保持カートリッジ2のケース3の膨出形状とが対応しているので、両者の膨出形状を利用して薬剤保持カートリッジ2の方向を容易に判別することが可能になる。
【0089】
薬剤保持カートリッジ2をカートリッジ収容空間Rに収容する際には、装置本体5の位置決め部57、57を薬剤保持カートリッジ2のケース3の切欠部12aに嵌合させる。これにより、薬剤保持カートリッジ2が所定位置で保持される。
【0090】
しかる後、カバー40を支軸35周りに回動させて閉じ、装置本体5の係合爪38をカバー40の係合孔47aに嵌入してカバー40をロックする。この状態で、カバー40の内面が薬剤保持カートリッジ2を上方から押圧して薬剤保持カートリッジ2のガタつきが抑制される。
【0091】
また、フレキシブル基板62のカバー40側の端部がカバー40に固定され、かつ、フレキシブル基板62が支軸35の内側を通っているので、カバー40の開閉動作に伴ってフレキシブル基板62が押されたり、引っ張られたりすることになる。このとき、フレキシブル基板62の装置本体5側は装置本体5に対してフリーな状態となっているので、カバー40の開閉動作時に容易に動くことができ、フレキシブル基板62に無理な力がかからないようにすることができる。
【0092】
(作用効果)
以上説明したように、カバー40に電源スイッチ60及び運転ランプ63を設けたので、装置本体5を小型化し、かつ、カバー40を大型化した場合に、電源スイッチ60の操作性及び視認性を良好にすることができ、また、運転ランプ63の視認性を良好にすることができる。
【0093】
また、カバー40が支軸35周りに回動可能に装置本体5に取り付けられ、電源スイッチ60及び運転ランプ63がフレキシブル基板62を介して装置本体5と接続されているので、薬剤保持カートリッジ2の交換時にカバー40を回動させる際、断線の恐れを無くすことができる。
【0094】
また、フレキシブル基板62が支軸35よりも装置本体5の内側を通っているので、フレキシブル基板62が外部に露出し難くなる。これにより、フレキシブル基板62の損傷を抑制できるとともに、薬剤放散装置1の見栄えを良くすることができる。
【0095】
また、フレキシブル基板52における装置本体5側の端部を、装置本体5に対して非固定状態にしてフリーな状態にしている。これにより、カバー40を回動させる際に、フレキシブル基板62におけるカバー40側の端部がカバー40と一緒に動いても、フレキシブル基板62に無理な力が作用しにくくなり、耐久性を向上させることができる。
【0096】
また、前側及び後側電池収容空間S1、S2から取り出す電池52、52に、カートリッジ収容空間Rに収容された薬剤保持カートリッジ2が干渉するように配置されているので、電池52、52の交換時に薬剤保持カートリッジ2も同時に交換するように促すことができ、薬剤の効力が使用者の気づかないうちに低下してしまっているのを未然に防止できる。
【0097】
また、前側電池収容空間S1と後側電池収容空間S2との間に電動モーター51を配置するようにしたので、薬剤放散装置1の重量バランスを良好にすることができる。
【0098】
また、電池52、52を薬剤放散装置1の下に配置して低重心化を図ることができる。この場合、交換時に少なくとも電池52の一部に薬剤保持カートリッジ2が確実に干渉するので、薬剤保持カートリッジ2の交換を効果的に促すことができる。
【0099】
また、カートリッジ収容空間R及び電池収容空間S1、S2の両方を覆うように形成されたカバー40が装置本体5に取り付けられているので、カバー40を開くことでカートリッジ収容空間R及び電池収容空間S1、S2の両方を開放することができ、薬剤保持カートリッジ2及び電池52、52の両方を容易に交換することができる。尚、電池52の本数は2本に限られるものではなく、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0100】
また、薬剤保持カートリッジ2の薬剤保持体4の周縁部を空気流れ方向から覆う覆い部21bをケース3に設けたので、薬剤保持体4とケース3の内面との隙間からの空気の流通を抑制して効力を高めることができる。そして、薬剤保持体4における覆い部21bによって覆われるプリーツ4bの高さを低く設定したので、効力を大きく低下させることなく、薬剤保持体4を小さくして薬剤保持カートリッジ2を小型化することができる。
【0101】
また、ケース3の外形状を薬剤保持体4のプリーツ高さに対応した形状にしたので、薬剤保持カートリッジ2をコンパクトにすることができる。
【0102】
また、カバー40の開口部41a、41a、…の延びる方向と、薬剤保持カートリッジ2の流入用開口部11aの延びる方向とが略同方向であるため、薬剤保持カートリッジ2を装置本体5に取り付ける際の向きを直感的に、かつ、容易に判別することができ、薬剤保持カートリッジ2を初めて交換する場合であっても戸惑うことなく、容易に交換できる。
【0103】
また、装置本体5の薬剤放散孔55における下流端開口の上縁部55aを、下縁部55bよりも空気流れ方向下流側に位置付けたので、薬剤放散孔55の下流端開口から放散される薬剤を含んだ空気が使用者へ向けて流れ易くなる。これにより、薬剤が使用者側に届きやすくなり、その結果、薬剤による効力を高めることができる。
【0104】
尚、薬剤放散装置1は、例えば置いて使用することもできるし、鞄等に取り付けて使用することもできる。
【0105】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明は、例えば、使用者に取り付けて使用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 薬剤放散装置
2 薬剤保持カートリッジ
3 ケース(収容体)
4 薬剤保持体
5 装置本体
11a 流入用開口部
21a 流出用開口部
21b 覆い部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18