(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
使い捨ておむつを着用したとき、この足周り弾性伸縮部材28が足周り29に沿って幅方向に縮むため、着用者の肌面と使い捨ておむつが密着し、尿漏れなどを防ぐことができる。しかし、着用者が歩行のために足を動かすとき、前記弾性伸縮部材28の収縮方向と、着用者の足が動く方向(使い捨ておむつの前後方向)とが異なり、それら2つの方向は直角に近い角度で交差する。そのため、着用者が歩行時に足を上げることを弾性伸縮部材28が妨げてしまうという問題がある。また、前記弾性伸縮部材28は、その収縮によって着用者の足の付け根部分を締め付けるため、足の付け根の動きが不自由になり、この観点からも着用者が足を上げづらいという問題がある。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、歩きやすい使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<請求項1記載の発明>
前身頃及び後身頃を有する外装シートと、前身頃から後身頃にわたるように前記外装シートの内側に設けられた吸収体とを備え、
ウエスト開口部および左右一対の足開口部を有する使い捨ておむつにおいて、
前記前身頃の前記吸収体よりも幅方向外側において、前記足開口部から前記ウエスト開口部へ向かって延在する、伸長状態で固定された前後方向弾性伸縮部材が設けられ、
前記前後方向弾性伸縮部材の収縮により、前記足開口部が前記ウエスト開口部側へ向って持ち上げられる構成とされ、
前記前後方向弾性伸縮部材は、前記吸収体のウエスト開口部側端部よりもウエスト開口部側へ延在しているとともに、前記吸収体と交差して
おらず、
前記ウエスト開口部より下方のウエスト下部に、前身頃の幅方向に沿って、伸長状態で固定された腰周り弾性伸縮部材が設けられ、
前記腰周り弾性伸縮部材の収縮により、装着者の下腹部に使い捨ておむつを密着させる構成とされ、
前記前後方向弾性伸縮部材は、前記足開口部から少なくとも前記腰周り弾性伸縮部材と交差する位置まで延在しており、
その交差する部分において、前記腰周り弾性伸縮部材が切断されていることを特徴とする使い捨ておむつ。
【0009】
(作用効果)
前後方向弾性伸縮部材の収縮により、前記足開口部が前記ウエスト開口部側へ向って持ち上げられると、着用者の足の前側部分のうち、使い捨ておむつに覆われていない部分の面積が増える。その結果、使い捨ておむつの前身頃が邪魔となって、着用者が足を上げづらいという事態が解消され、歩行が容易になる。特に、使い捨ておむつの足周りに足周り弾性部材が配されている場合であっても、前後方向弾性伸縮部材の収縮に伴って、足周り弾性部材が上方へ引き上げられるため、足周り弾性部材による足の付け根部分の締め付けが緩やかになり、足の付け根が動かしやすく、歩行が容易になる。
【0010】
また、前後方向弾性伸縮部材が吸収体のウエスト開口部側端部よりもさらにウエスト開口部側へ延在していることで、前後方向弾性伸縮部材が収縮したときに、吸収体のウエスト開口部側端部が外側へ膨らむ。このように、吸収体のウエスト開口部側端部が肌面から離れることにより、男性がその生殖器を吸収体内面に収納しやすくなる。
【0011】
また、前後方向弾性伸縮部材を吸収体のウエスト開口部側端部よりもさらにウエスト開口部側へ延在させることで、前後方向弾性伸縮部材を吸収体のウエスト開口部側端部まで延在させない場合と比べて、前後方向弾性伸縮部材の全長が長くなるため、足開口部をウエスト開口部側へ向って持ち上げる効果が高くなり、足を上げやすく、歩行が容易になる。
【0012】
さらに、前後方向弾性伸縮部材の一部が吸収体と交差している場合、通常は吸収体と重なる部分は切断されてしまうため、前後方向弾性伸縮部材が収縮する部分は、前後方向弾性伸縮部材の全長のうち、足開口部から吸収体との交差部分までになる。他方、前後方向弾性伸縮部材の一部が吸収体と交差していない場合、前後方向弾性伸縮部材が収縮する部分は、前後方向弾性伸縮部材の全長となる。このように、前後方向弾性伸縮部材の一部を吸収体と交差させないことにより、前後方向弾性伸縮部材の無駄を無くすことができる。それとともに、吸収体と重なる部分を切断する手間を省くことができる。
【0013】
なお、前記「吸収体」の用語は、包装シートを含むものでない。すなわち、前後方向弾性伸縮部材が吸収体と重なっていなければ良く、前後方向弾性伸縮部材が包装シートと重なるような形態にしても良い。
【0014】
また、使い捨ておむつの前身頃の左側および右側の前後方向弾性伸縮部材が吸収体と重ならないようにする必要がある。すなわち、使い捨ておむつの前身頃の左側および右側のどちらか一方の前後方向弾性伸縮部材が吸収体と重なる形態にしても良い。このような形態にしたとしても、前後方向弾性伸縮部材の無駄を省くことができるという効果が得られるからである。
【0015】
(削除)
【0016】
前後方向弾性伸縮部材と前記腰周り弾性伸縮部材が交差する部分において、腰周り弾性伸縮部材が切断されていないと、使い捨ておむつの幅方向かつ前後方向に外装シートが収縮するため、その交差部分の剛性が上がり、ごわつきが生じる。前身頃にこのような硬い部分があると、柔らかい場合と比べて、足が上げづらいという問題がある。そこで本発明では、その交差部分において、腰周り弾性伸縮部材を切断することにより、その交差部分を柔らかくして、足を上げやすく、歩行が容易になっている。この切断は、例えば製造時にシャーリングカットを行うことにより、実現することができる。
【0017】
また、交差部分の腰周り弾性伸縮部材が切断されていない場合、腰周り弾性伸縮部材の収縮に影響を受けて、前後方向弾性伸縮部材の収縮方向が歪んでしまう。このような歪みが生じると、歪みが生じない場合と比べて、足開口部をウエスト開口部側へ向って持ち上げる効果が弱くなるという問題がある。そこで本発明では、その交差部分において、腰周り弾性伸縮部材を切断することにより、そのような歪みの発生を抑えて、足開口部をウエスト開口部側へ向って持ち上げる効果を高めることで、足を上げやすく、歩行が容易になっている。
【0018】
以上のとおり、本発明によれば、歩きやすい使い捨ておむつを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、「伸長率」の用語は、自然長を100%としたときの値を意味する。
【0021】
図1および
図2は、本発明にかかるパンツ式使い捨ておむつ1を示している。この使い捨ておむつ1(以下、単に製品ともいう。)は、前身頃F及び後身頃Bを有する外装シート20と、この外装シート20の内面に固定され一体化された内装体10と、内装体10の表面に固定された表面シート11を有する。内装体10は、裏面側に液不透過性の裏面側シート12を備え、肌面側に吸収体13を備えている。
【0022】
(外装シート)
外装シート20は、サイドシール部21を有する縦方向範囲(ウエスト開口から足開口の上端に至る縦方向範囲)として定まる胴周り部Tと、足開口を形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール部21を有する縦方向領域と後身頃Bのサイドシール部21を有する縦方向領域との間)して定まる足開口部Lとを有する。胴周り部Tは、概念的にウエスト開口の縁部を形成するウエスト部Wと、これよりも下側の部分であるウエスト下方部Uとに分けることができる。通常、胴周り部T内に幅方向伸縮応力が変化する境界(例えば弾性伸縮部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口側の境界よりもウエスト開口側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体13又は内装体10よりもウエスト開口側がウエスト部Wとなる。なお、外装シート20の平面形状は、中間両側部に夫々足部開口を形成するために形成された凹状の足周りライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。そのほか、外装シート20が足開口部Lには存在せず、胴周り部Tにのみ存在する形態にしても良い。
【0023】
外装シート20は、上層不織布20Aと下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートにすることができる。上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間及び下層不織布20Bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cの不織布の間には各種弾性伸縮部材がそれぞれ配置され伸縮性が付与されている。
【0024】
(弾性伸縮部材)
外装シート20の弾性部は、ウエスト開口部近傍に配置されたウエスト部弾性伸縮部材24と、前身頃F及び後身頃Bに、縦方向に間隔をおいて幅方向に沿って配置された複数の腰周り弾性伸縮部材25と、足開口部Lに配置された足開口部弾性部材27を有するとともに、これらとは別に、前身頃F及び後身頃Bのそれぞれにおいて、前身頃Fと後身頃Bとを連結する連結側部21、22から幅方向中央に向かうにつれて反対の身頃側へ向かうように湾曲しつつ、内装体10の両側部と重なる部位まで(又は両側部の近傍まで等、必ずしも重ならなくても良い)延在するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性伸縮部材26、28を備えている。これら、弾性部材24〜28は、それぞれその延在方向に沿って所定の伸長率で伸長された状態で固定されている。また、前記各弾性伸縮部材は、外装シート20の上層不織布20Aと下層不織布20Bの間に配され、いずれか一方の不織布20A、20Bと接合されている形態が通常である。なお、本外装シート20では、足周りライン29に沿って前身頃Fのサイドシール部から後身頃Bのサイドシール部まで連続する、所謂足周り弾性部材は設けられていない。
【0025】
ウエスト部弾性部材24は、装着者のウエストを伸縮性をもって締め付けるためのものであり、図示例ではウエスト部Wにおける層間に幅方向に沿って伸長状態で取り付けられた糸ゴム等の細長状弾性部材とされており、縦方向に間隔をおいて複数本設けられている。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。また、図示形態のウエスト部弾性部材24は、ウエスト部におけるバックシート20Bの折り返し部分20Cの不織布間に挟持されているが、押えシート20Aとバックシート20Bとの間に挟持しても良い。ウエスト部弾性部材24は、ウエスト部Wの幅方向全体に設けられることが望ましい。
【0026】
腰周り弾性伸縮部材25は、おむつを装着者の下腹部や臀部に伸縮性をもって密着させるためのものであり、図示例ではウエスト下方部Uにおける層間に幅方向に沿って伸長状態で取り付けられた糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材とされており、縦方向に間隔をおいて複数本設けられている。腰周り弾性伸縮部材25は、ウエスト下方部Uのうち少なくとも吸収体13の幅方向中間部の幅方向両側に設けられ、側縁はサイドシール部21まで設けられることが望ましい。
【0027】
足開口部弾性部材27は、主に脚開口に沿う部分に幅方向の伸縮性を与えるためのものであり、図示例では脚開口部Lにおける層間に幅方向に沿って伸長状態で取り付けられた複数本の糸ゴム等の細長状弾性部材とされており、縦方向に間隔をおいて複数本設けられている。足開口部弾性部材27は、足開口部Lのうち少なくとも吸収体13の幅方向中間部の幅方向両側に設けられ、側縁は足開口縁29まで設けられることが望ましい。
【0028】
外装体20における胴周り部Tから脚開口部Lにわたる範囲には、ウエスト部弾性部材24、腰周り弾性部材25、脚開口部弾性部材27とは別に、糸ゴム等の細長状弾性部材からなる湾曲弾性部材26、28が所定の曲線に沿って配置されている。湾曲弾性部材26は、一本であっても良いが複数本であるのが好ましく、図示例では4本の糸ゴム等の細長状弾性部材であり、これら湾曲弾性部材26、28は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この湾曲弾性部材26、28は、2,3本程度の弾性部材を間隔を密にして実質的に一束として配置される他、所定の伸縮ゾーンを形成するように3〜20mm、好ましくは6〜16mm程度の間隔を空けて、3本以上、好ましくは4本以上配置される。
【0029】
弾性部材24〜28の取付時の伸長率は適宜定めることができるが、通常の成人用の場合、ウエスト部弾性部材24は160〜320%程度、ウエスト下方部弾性部材25及び脚開口部弾性部材27は160〜320%程度、湾曲弾性部材26,28は230〜320%程度とすることができる。
【0030】
(内装体)
内装体10は、裏面側に設けたポリエチレン等からなる液不透過性裏面側シート12と、その液不透過性裏面側シート12の肌面側に吸収体13を備えた構造をしており、排泄液を吸収保持するものである。
【0031】
吸収体13の裏面側(非肌面側)を覆う液不透過性裏面側シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0032】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができ、図示例では平面形状を略方形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。吸収体13の形状は、長方形状とする他、背側及び腹側に対して股間部の幅が狭い砂時計形状(括れ形状)とすることもできる。
【0033】
(表面シート)
吸収体13の表面側(肌面側)を覆う表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0034】
(立体ギャザー)
内装体10の両側部には足周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。立体ギャザーBSは、立体ギャザーシート15の内側側部に、伸長状態で弾性伸縮部材16が固定されることにより形成される。そして、使用状態においてこの弾性伸縮部材16が収縮することにより、立体ギャザーBSの内側側部が起立する。
【0035】
ギャザー不織布としては、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、立体ギャザーシート15は、使い捨ておむつ1の長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
【0036】
二重シート不織布によって形成された立体ギャザーシート15の内部には、起立先端側部分に複数本の立体ギャザー弾性伸縮部材16が配設されている。立体ギャザー弾性伸縮部材16は、製品状態において、弾性伸縮力により吸収体13側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0037】
液不透過性裏面側シート12は、二重シート状の立体ギャザーシート15の内部まで進入し、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。この液不透過性裏面側シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0038】
弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、伸長率は150〜350%、間隔は10.0mm以下として配設するのがよい。なお、伸長率は伸長時の長さ/自然長×100で算出した値であり、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
【0039】
前述の立体ギャザーシート15を構成する素材繊維も前後漏れ防止シート2と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらに立体ギャザーシート15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0040】
(前後方向弾性伸縮部材3)
本発明では、歩行を容易にするために、使い捨ておむつ1の前身頃Fに前後方向弾性伸縮部材3を配している。この前後方向弾性伸縮部材3は、足開口部を起点として、ウエスト開口部へ向かって延在するように配されている。
【0041】
図示した形態では、足周りライン29のうち、吸収体13の幅方向端部とサイドシール部21の間の中間部分に前後方向弾性伸縮部材3の起点を設けている。この起点の位置は、吸収体13の近くに寄りすぎたり、サイドシール21の近くに寄りすぎたりすることは好ましくない。着用者の足の前側部分のうち、使い捨ておむつに覆われていない部分の面積を増やし、着用者の足を上げやすくするという目的からすると、着用者の足(ここでは片足を意味する)のうち、その中央部分を持ち上げることが、最も効果的だからである。そのため、吸収体13の幅方向端部とサイドシール部21の間を幅方向に3分割したときの真ん中1/3の範囲に設けることが好ましく、吸収体13の幅方向端部とサイドシール部21の間を幅方向に2分割したときの真ん中に設けることがより好ましい。また、前後方向弾性伸縮部材3の起点は、足開口部であれば良く、必ずしも使い捨ておむつの下端である必要はない。すなわち、使い捨ておむつ1の下端よりも少しウエスト側の位置を起点としても良い。
【0042】
次に、前後方向弾性伸縮部材3の延在方向についてであるが、幅方向内側に向かうようにすることが好ましい。歩行のために着用者が足を上げるとき、幅方向内側に向かって上げるのが一般的であるからである。具体的には、前後方向弾性伸縮部材3の起点Gを通るように、使い捨ておむつ1の前後方向と直角の方向に基準線Hを設け、その基準線Hのうちの幅方向内側部分を0度としたときに、基準線Hと前後方向弾性伸縮部材3との間の角度Iが、約65度〜85度の範囲に収まるようにするのが好ましい。しかし、本発明はこのような形態に限られるものではなく、最良の形態ではないが、前後方向弾性伸縮部材3を幅方向と直角の方向に延在させたり(前後方向に延在させたり)、幅方向外側へ向かって延在させることもできる。
【0043】
図示形態では、前後方向弾性伸縮部材3を腰周り弾性伸縮部材25と交差する位置まで延在している。具体的には、複数の腰周り弾性伸縮部材25のうち、ウエスト側に位置する腰周り弾性伸縮部材25まで延在している。このように前後方向弾性伸縮部材3をウエスト側近くまで延在させることで、前後方向弾性伸縮部材3の前後方向の距離が長くなり、足開口部をウエスト開口部側へ向ってより強力に持ち上げることができる。
【0044】
なお、前後方向弾性伸縮部材3は、前身頃Fの左側と右側の両方に設けることが好ましい。そして、足開口部からウエスト開口部側へ向って前後方向弾性伸縮部材3が延在した後に、ウエスト開口部側において、前身頃Fの左側に位置する前後方向弾性伸縮部材3と右側に位置する各前後方向弾性伸縮部材3を繋げるために、前後方向弾性伸縮部材3を幅方向内側へ向かって延在させることが好ましい。このように、前後方向弾性伸縮部材3を前身頃Fの左側から中央を通って右側へ移動する1本の線のようにすることで、製造時に前後方向弾性伸縮部材3を設けることが容易になる。前後方向弾性伸縮部材3をこのように配置した場合、例えば、前身頃Fの左側に位置する足開口部を前後方向弾性伸縮部材3の起点とし、右側に位置する足開口部を前後方向弾性伸縮部材3の終点とすることができる。なお、前記起点および終点の用語は、前後方向弾性伸縮部材3の配置位置を説明するために便宜的に用いたものであり、前後方向弾性伸縮部材3の製造時に、この用語のとおりに製造することを意味するものではない。
【0045】
前記のように、前身頃の吸収体13の周囲(吸収体13の上方、左方、右方)を取り囲むように、前後方向弾性伸縮部材3を配置することで、その前後方向弾性伸縮部材3が収縮したときに、吸収体13のウエスト側部分(吸収体13の上部)が肌面から離れて膨らむため、男性の生殖器を収納しやすくなるという利点がある。この効果は、吸収体13の左方および右方だけに前後方向弾性伸縮部材3を配置したときにも生じるが、吸収体13の上方にも配置することで、より顕著に膨らむため、その効果が高くなる。
【0046】
また、前後方向弾性伸縮部材3は、前後方向に所定の間隔を空けて複数設けることが好ましい。具体的には、1mm〜10mm程度の間隔を空けることが好ましい。複数設けることで、足開口部をウエスト開口部側へ向ってより強力に持ち上げることができる。このとき、各前後方向弾性伸縮部材3は、互いに交差しないように平行に設けることが好ましい。すなわち、複数の前後方向弾性伸縮部材3のうち、起点の位置がウエスト開口部の幅方向外側に位置する前後方向弾性伸縮部材3ほど、ウエスト開口部側へ向ってより長く延在する。反対に、起点の位置がウエスト開口部の幅方向内側に位置する前後方向弾性伸縮部材3ほど、ウエスト開口部側へ向ってより短く延在することになる。
【0047】
前後方向弾性伸縮部材3の素材としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、前後方向弾性伸縮部材3の取付時の伸長率は適宜定めることができるが、通常の成人用の場合は160〜320%程度とすることができる。
【0048】
腰周り弾性伸縮部材25と前後方向弾性伸縮部材3の交差する部分は、その交差部分において、腰周り弾性伸縮部材25が切断されている形態にすることが好ましい。図示形態では、前後方向弾性伸縮部材3が、足開口部からウエスト開口部側へ向って前後方向(前身頃の場合は前方向)に延在しており、その前後方向の延在部分が、腰周り弾性伸縮部材25と交差し、この交差部分で腰周り弾性伸縮部材25が切断されている。この交差部分のすべてを切断しても良いが、その一部分のみを切断しても良い。詳しくは、その交差部分の半分以上の箇所を切断することが好ましく、交差部分の2/3以上の箇所を切断することが好ましい。また、足開口部を持ち上げる効果を高めるため、複数の交差部分のうち、ウエスト開口部側よりも足開口部に近い側を切断することが好ましい。なお、腰周り弾性伸縮部材25を切断するとは、製造時において、外装シートに腰周り弾性伸縮部材25を伸長状態で固定した後、交差部分を切断する形態(シャーリングカットを行う形態)を含むことはもちろんのこと、予め短めに切断した腰周り弾性伸縮部材25を、前後方向弾性伸縮部材3と交差しないように、外装シートに固定する形態も含むものである。
【0049】
なお、前記の説明では、腰周り弾性伸縮部材25と前後方向弾性伸縮部材3の交差する部分について述べたが、前後方向弾性伸縮部材3は、前記足開口部弾性部材27や前記湾曲弾性部材26、28とも交差する。そのため、その交差部分において、足開口部弾性部材27や湾曲弾性部材26、28も同様に切断することが望ましい。これにより、足開口部をよりウエスト開口部側へ持ち上げることができる。
【0050】
以上の説明では、前後方向弾性伸縮部材3を前身頃Fに設けた場合について述べてきたが、前身頃Fと同様の形態で後身頃Bに設けても良い。後身頃Bに設けることにより、後身頃Bの足周り弾性部材がウエスト開口部側へ持ち上げられるため、足周り弾性部材による足の付け根部分の締め付けが緩やかになり、足の付け根が動かしやすく、歩行が容易になる。
【0051】
また、従来の使い捨ておむつは、排尿したときに吸収体13の重量が増えてズレ下がりやすくなる。そのため、使い捨ておむつの足周り部分と着用者の肌面との間に隙間が生じ、その隙間から尿漏れが生じやすい。そこで、本発明のように前後方向弾性伸縮部材3を収縮させて、足開口部をウエスト開口部側へ持ち上げることで、このような隙間の発生を防ぎ、尿漏れの発生を抑えることができる。
【0052】
また、従来の使い捨ておむつを装着する際、着用者の足先と使い捨ておむつの足周り部分がぶつかりやすく、装着のしづらさに繋がっている。そこで、本発明のように前後方向弾性伸縮部材3を収縮させて、足開口部をウエスト開口部側へ持ち上げることにより、ウエスト開口部端縁から足開口部端縁までの距離が短くなるため、使い捨ておむつを装着しやすくなる。
【0053】
なお、本発明では、先行技術文献の特許文献2のように、ウエスト開口部側から足開口部側へ向かって延在する前後方向弾性伸縮部材3を設けていない。このような逆方向に延在する前後方向弾性伸縮部材3を設けると、本発明の足開口部からウエスト開口部側へ向かって延在する前後方向弾性伸縮部材3の収縮力が打ち消されてしまうためである。
【0054】
また、本発明では、前記特許文献2のように、腰周り弾性伸縮部材25を斜めに傾斜するように配置していない。すなわち、腰周り弾性伸縮部材25が、前身頃Fおよび後身頃Bの幅方向両端部間を幅方向に沿って直線状に延在する構成にしている。そして、この25とは別の部材として、足開口部から吸収体13のウエスト開口部側端部よりもウエスト開口部側へ延在する前後方向弾性伸縮部材3を設けている。特許文献2のように、多数の腰周り弾性伸縮部材25をウエスト端部側または足開口部側へ傾斜させて設けると、使い捨ておむつの製造方法が極めて複雑になり、不良品が生じやすい。そこで、本発明では、腰周り弾性伸縮部材25は製造が容易な直線状とし、前後方向弾性伸縮部材3を複数本設けることで、構造をシンプルにして、製造を容易にしている。
【0055】
また、腰周り弾性伸縮部材25は複数本設けられ、各腰周り弾性伸縮部材25、25が前後方向に所定の間隔を空けて配置されており、それらは互いに交差することなく配置されている。特許文献2のように、複数の腰周り弾性伸縮部材25、25を複雑に交差する網目状にすると、各腰周り弾性伸縮部材25の収縮が互いに干渉し、本来望んでいた方向と異なる方向に収縮する可能性が高く、本来得ようとしていた効果が得づらくなる。また、その交差部分の剛性が高く、硬くなるため、着用者が不快感を受けやすい。本発明では、腰周り弾性伸縮部材25を交差させないことで、そのような不都合の発生を防いでいる。
【0056】
(その他)
図示形態では、前身頃の外装体の両側縁部と後身頃の外装体の両側縁部とが接合されてサイドシール部21が形成されることにより、ウエスト開口部及び左右一対の足開口部が形成されパンツ型使い捨ておむつについて述べてきたが、本発明はテープ型使い捨ておむつに用いることもできる。しかし、前後方向弾性伸縮部材3が収縮すると、テープが止めづらくなるため、パンツ型使い捨ておむつのほうが適している。