(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842880
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】水栓用ハンドル
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
E03C1/042 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-208863(P2016-208863)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-71082(P2018-71082A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤則
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−061241(JP,A)
【文献】
特開2002−356882(JP,A)
【文献】
特開2001−214481(JP,A)
【文献】
特開平11−256632(JP,A)
【文献】
特開2014−219073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/04−1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体に固定して使用される水栓用ハンドルであって、
前記水栓本体に取り付けられる取付部と、
前記取付部を遮蔽するカバーと、
前記取付部に設けられ、前記水栓本体に対する前記取付部の固定状態を調整する固定具と、
前記カバーの側面に設けられ、前記カバーの外部から前記固定具を操作するための開口部と、
前記開口部に装着されるキャップとを備え、
前記開口部は、外側に開口する大径部と、内側に開口するとともに前記大径部よりも内径の小さい小径部と、前記大径部及び前記小径部を接続する段部とを有し、
前記キャップは、前記大径部内に配置される蓋部と、前記小径部に配置されて前記小径部に係止される係止部とを有し、
前記キャップには、前記蓋部と前記係止部との間に、少なくとも前記小径部と前記段部とが接する角部に対して全周に亘って当接する当接部が設けられるとともに、前記蓋部には、該蓋部の縁部と前記大径部の周面との間に前記角部に達する隙間を形成する切欠き部が設けられていることを特徴とする水栓用ハンドル。
【請求項2】
前記切欠き部は、前記蓋部の裏面側において中心側に拡張された拡張部分を有し、
前記蓋部の径方向における前記隙間の幅は、前記蓋部の表面側よりも裏面側において大きくなるように構成されている請求項1に記載の水栓用ハンドル。
【請求項3】
前記当接部は、前記小径部の周面における前記角部からの所定範囲に対して全周に亘って面接触している請求項1又は2に記載の水栓用ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップを装着した水栓用ハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1等に開示された、螺子等の固定具によって水栓本体に固定される水栓用ハンドルには、外部から固定具を操作するための開口部が設けられている。また、こうした開口部には、開口部を通じた水栓用ハンドル内への水の浸入を抑制するために、取り外し可能なキャップが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4375872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1等の水栓用ハンドルにおいて、キャップには、水栓用ハンドル内への水の浸入を抑制する防水機能に加えて、固定具を操作する際の作業性を向上させるために、取り外しやすい構成であることが求められている。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水栓用ハンドルに関して、キャップによる防水機能の向上及びキャップの取り外しやすさの向上を簡易な構成で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための水栓用ハンドルは、水栓本体に固定して使用される水栓用ハンドルであって、前記水栓本体に取り付けられる取付部と、前記取付部を遮蔽するカバーと、前記取付部に設けられ、前記水栓本体に対する前記取付部の固定状態を調整する固定具と、前記カバーに設けられ、前記カバーの外部から前記固定具を操作するための開口部と、前記開口部に装着されるキャップとを備え、前記開口部は、外側に開口する大径部と、内側に開口するとともに前記大径部よりも内径の小さい小径部と、前記大径部及び前記小径部を接続する段部とを有し、前記キャップは、前記大径部内に配置される蓋部と、前記小径部に配置されて前記小径部に係止される係止部とを有し、前記キャップには、前記蓋部と前記係止部との間に、少なくとも前記小径部と前記段部とが接する角部に対して全周に亘って当接する当接部が設けられるとともに、前記蓋部には、該蓋部の縁部と前記大径部の周面との間に前記角部に達する隙間を形成する切欠き部が設けられていることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、キャップには、蓋部と係止部との間に、少なくとも小径部と段部とが接する角部に対して全周に亘って当接する当接部が設けられるとともに、蓋部には、蓋部の縁部と大径部の周面との間に角部に達する隙間を形成する切欠き部が設けられていることにより、蓋部の縁部と大径部の周面との間に隙間を形成しつつも、その隙間が小径部を連通することを抑制することができる。したがって、隙間を、キャップを取り外す際の工具等の差し込み口として用いることによって、キャップの取り外しやすさを向上させることができるとともに、キャップの防水機能を向上させることができる。
【0007】
上記水栓用ハンドルについて、前記切欠き部は、前記蓋部の裏面側において中心側に拡張された拡張部分を有し、前記蓋部の径方向における前記隙間の幅は、前記蓋部の表面側よりも裏面側において大きくなるように構成されていることが好ましい。この構成によれば、隙間の奥側において、隙間の幅が大きく構成されているため、工具等の可動範囲を大きくすることができる。これにより、梃子の原理を用いてキャップの取り外しやすさを向上させることができる。また、蓋部の表面側において、隙間を目立たなくすることができるため、水栓用ハンドルの外観を良くすることができる。
【0008】
上記水栓用ハンドルについて、前記当接部は、前記小径部の周面における前記角部からの所定範囲に対して全周に亘って面接触していることが好ましい。この構成によれば、当接部が接触する領域を大きくすることができるため、キャップの防水機能を効果的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャップの防水機能及び取り外しやすさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態の水栓用ハンドルと水栓本体の部分断面図及びキャップの拡大図。
【
図3】(a)は開口部の部分断面図、(b)はキャップが装着された開口部の部分断面図。
【
図4】(a)は実施形態のキャップの裏側の斜視図、(b)は実施形態のキャップの表側の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1及び
図2に示すように、水栓10は、キッチン流し台11の上面に設置された水栓本体12を備えている。水栓本体12の内部には、水栓本体12を流れる湯水の種類や流量等を制御する弁装置13が設けられるとともに、水栓本体12の上部には、弁装置13を操作するための水栓用ハンドル20が取り付けられている。
【0012】
水栓用ハンドル20は、把手を有する本体部21を備えている。本体部21の中央下部には、弁装置13の操作軸14に取り付けられる取付部22が設けられるとともに、取付部22には、取付部22を操作軸14に圧接させて、取付部22を操作軸14に固定する螺子23が設けられている。螺子23の締め付け状態を調整することによって、取付部22の固定状態を調整することができる。したがって、螺子23は、水栓本体12に対する取付部22の固定状態を調整する固定具として機能している。
【0013】
本体部21の下部外周には、取付部22を囲むカバー24が設けられている。カバー24における螺子23の外側に位置する部分には、カバー24を貫通する開口部30が設けられている。この開口部30に、カバー24の外部から螺子23の操作用工具を挿入することによって、螺子23の締め付け状態を調整することができる。また、開口部30には、水栓本体12の内部への水や洗剤の浸入を防止するためのキャップ40が装着されている。
【0014】
次に、開口部30及びキャップ40の具体的構成について説明する。
図2に示すように、開口部30は、水栓用ハンドル20のカバー24が、水栓本体12の鉛直方向上方に水栓本体12と並列して配置されているとき、すなわち、カバー24の側面が鉛直方向に配置されているとき、カバー24の内側に向かって上り勾配となるように構成されている。開口部30が上り勾配となっていることにより、カバー24に付着した水や洗剤がカバー24を伝って流れる際に、開口部30の内部に浸入しにくくなっている。
【0015】
図3(a)において、図中の上下方向が、カバー24の鉛直方向を示している。また、図中左側がカバー24の内側を示し、図中右側がカバー24の外側を示している。開口部30は、外側に開口する大径部30Aと、内側に開口するとともに大径部30Aよりも内径の小さい小径部30Bと、大径部30A及び小径部30Bを接続する段部30Cとを有している。
【0016】
図4(a)、(b)に示すように、キャップ40は、円形状の蓋部41と、蓋部41の裏面側に設けられた円筒状の係止部42と、蓋部41と係止部42との間に設けられた当接部43とを有している。蓋部41と係止部42と当接部43は、一体に構成されている。キャップ40の材質は特に限定されるものではないが、樹脂又は熱可塑性エラストマー製であると軽量で且つ耐久性に優れるため好ましい。蓋部41は、厚さが一端側から他端側に向かって徐々に厚くなるように構成され、他端側に切欠き部44を有している。ここで、「切欠き部」とは、蓋部41の厚さ方向において、蓋部41の一部が切り取られたような形状になっている箇所を意味するものとする。切欠き部44は、蓋部41の裏面側において中心側に拡張された拡張部分45を有しており、拡張部分45は、係止部42の外周面と同一平面を有するように構成されている。すなわち、係止部42の軸方向に直交する方向であって、蓋部41の一端と他端とを繋ぐ線に沿った方向を第1方向とし、係止部42の軸方向に直交するとともに、第1方向に直交する方向を第2方向とし、係止部42の軸方向を第3方向とすると、拡張部分45は、第3方向における蓋部41の表面側から裏面側において、第1方向における蓋部41の他端側から一端側に向かって拡張するように構成されている。切欠き部44と切欠き部44の拡張部分45とにおける第1方向の他端側の面によって縁部49が構成されている。
【0017】
図4(a)、(b)に示すように、係止部42は、第3方向に延びる2本のスリット46の間に弾性変形可能な部分47が形成されている。弾性変形可能な部分47の先端に、径方向外側に突出した凸部48が設けられている。弾性変形可能な部分47は、係止部42の径方向に対向する位置に2箇所設けられている。スリット46における蓋部41側の端部と、蓋部41との間の領域が当接部43として構成されている。
【0018】
図3(b)に示すように、開口部30にキャップ40が装着された際、キャップ40は、第1方向における蓋部41の一端側がカバー24の鉛直方向上方に位置するように装着される。蓋部41は大径部30Aに配置されるとともに、係止部42は小径部30Bに配置され、小径部30Bと段部30Cとが接する角部30Dに対して全周に亘って当接部43が接触した状態となる。当接部43は、角部30Dを含む小径部30Bの周面31に面接触した状態となる。また、切欠き部44により、蓋部41の縁部49と大径部30Aの周面31との間に隙間50が形成される。切欠き部44の拡張部分45により、蓋部41の径方向における隙間50の幅は、蓋部41の表面側よりも裏面側において大きくなっており、拡張部分45は、小径部30Bと段部30Cとが接する角部30Dに達している。すなわち、隙間50の幅は、第3方向における蓋部41の表面側から裏面側において、第1方向における蓋部41の他端側から一端側に向かって拡張するように構成されている。
【0019】
図5に示すように、開口部30にキャップ40が装着されると、係止部42に設けられた凸部48がカバー24の内周面に係合することによって、係止部42は係止される。弾性変形可能な部分47が弾性変形することにより、凸部48は第2方向に沿う係止部42の径方向内側に縮径した状態で小径部30Bの周面31を通過することができる。また、凸部48は小径部30Bの周面31を通過した後、第2方向に沿う係止部42の径方向外側に拡径して、カバー24の内周面に係合する。
【0020】
本実施形態の作用を説明する。
図3(b)に示すように、蓋部41の縁部49と大径部30Aの周面31との間に形成された隙間50が、開口部30における小径部30Bと段部30Cとが接する角部30Dに達していることにより、隙間50の形状が、開口部30の奥側まで延びた形状となる。そのため、この隙間50を、キャップ40を取り外す際の工具等の差し込み口として用いると、差し込み口の奥側まで工具を差し込んで操作することができるため、効率良く取り外し操作を行うことができる。また、当接部43が、小径部30Bと段部30Cとが接する角部30Dに対して全周に亘って接触した状態となるため、小径部30Bを隙間が連通することが抑制されている。
【0021】
本実施形態の効果を説明する。
(1)キャップ40には、蓋部41と係止部42との間に、少なくとも小径部30Bと段部30Cとが接する角部30Dに対して全周に亘って当接する当接部43が設けられるとともに、蓋部41には、蓋部41の縁部49と大径部30Aの周面31との間に角部30Dに達する隙間50を形成する切欠き部44が設けられている。これにより、蓋部41の縁部49と大径部30Aの周面31との間に隙間50を形成しつつも、その隙間50が小径部30Bを連通することを抑制することができる。したがって、隙間50を、キャップ40を取り外す際の工具等の差し込み口として用いることによって、キャップ40の取り外しやすさを向上させることができるとともに、キャップ40の防水機能を向上させることができる。
【0022】
(2)切欠き部44は、蓋部41の裏面側において中心側に拡張された拡張部分45を有し、蓋部41の径方向における隙間50の幅は、蓋部41の表面側よりも裏面側において大きくなるように構成されている。これにより、隙間50の奥側において、隙間50の幅を大きくすることができるため、工具の可動範囲を大きくすることができる。したがって、梃子の原理を用いてキャップ40の取り外しやすさを向上させることができる。また、蓋部41の表面側において、隙間50を目立たなくすることができるため、水栓用ハンドル20の外観を良くすることができる。
【0023】
(3)当接部43は、小径部30Bの周面31における角部30Dからの所定範囲に対して全周に亘って面接触していることにより、当接部43が接触する領域を大きくすることができる。したがって、キャップ40の防水機能を効果的に向上させることができる。
【0024】
本実施形態は、次のように変更して実施することも可能である。また、上記実施形態の構成や以下の変更例に示す構成を適宜組み合わせて実施することも可能である。
・蓋部41と係止部42の形状は、円形状と円筒状に限定されない。楕円形状や多角形状であってもよい。また、蓋部41の厚さは、一端側から他端側に向かって徐々に厚くなるように構成されていなくてもよい。部分的に厚い部分を設けてもよいし、厚さを一定にしてもよい。
【0025】
・係止部42の軸方向に沿った当接部43の幅は、特に限定されない。スリット46における蓋部41側の端部と蓋部41との間隔を調整することにより、当接部43の幅を調整することができる。
【0026】
・
図6に示すように、スリット46における蓋部41側の端部と蓋部41との間隔を小さくして、当接部43が線接触した状態にしてもよい。
・水栓本体12に対する取付部22の固定状態を調整する固定具は、螺子23に限定されない。クリップを用いて取付部22を操作軸14に固定してもよい。クリップの強度を変更すれば、取付部22の固定状態を調整することができる。
【0027】
・
図7に示すように、拡張部分45の形状は、第3方向における蓋部41の表面側から裏面側において、第1方向における蓋部41の他端側から一端側に向かって連続的に拡張するように構成されていてもよい。
【0028】
・
図8に示すように、拡張部分45の形状は、第3方向における蓋部41の表面側から裏面側において、第1方向における蓋部41の他端側から一端側に向かって同じ形状であってもよい。この場合、蓋部41の縁部49と大径部30Aの周面31との間に形成される隙間50の幅は、蓋部41の表面側と裏面側とで同じになる。蓋部41の表面側と裏面側とで隙間50の幅が同じであることにより、蓋部41の表面側に露出した工具等の差し込み口を大きくすることができるため、工具等が差し込みやすくなる。
【0029】
・大径部30Aと小径部30Bとを接続する段部30Cは、開口部30の全周に亘って設けられていなくてもよい。例えば、大径部30Aの周面31と小径部30Bの周面31とが、一部重なっている場合、重なった箇所において段部30Cは設けられない。この場合、他の段部30Cより仮想の段部30Cを想定して、仮想の段部30Cと小径部30Bとが接する角部30Dにキャップ40の当接部43が当接するようにすればよい。
【0030】
・係止部42は、凸部48が形成されていなくてもよい。係止部42を小径部30Bに嵌合させることによって係止してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に記載する。
【0031】
(イ)前記開口部は、カバーの側面が鉛直方向に配置されているとき、カバーの内側に向かって上り勾配となるように構成されている水栓用ハンドル。
(ロ)係止部に、凸部が形成されていない水栓用ハンドル。
【符号の説明】
【0032】
12…水栓本体、20…水栓用ハンドル、22…取付部、23…固定具(螺子)、24…カバー、30…開口部、30A…大径部、30B…小径部、30C…段部、30D…角部、31…周面、40…キャップ、41…蓋部、42…係止部、43…当接部、44…切欠き部、49…縁部、50…隙間。