(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
上述の天井膜施工方法では、天井材として可撓性を有する帯状の天井膜を用いるので、従来の天井材である石膏ボードや金属製パネルに比較して極めて軽量であり、地震等で天井膜が落下しても安全性を確保することができる。また、天井膜は印刷が可能であるため、天井意匠のデザイン自由度が向上し、ファスナー点検口等によるメンテナンス性も確保し易い利点がある。
【0003】
そして、従来では、例えば、特許文献1に示すように、天井膜として膜状のロールスクリーンを用いた天井構造が存在する。この従来の天井構造では、上階側の床スラブの下面に垂設された吊り材に、天井下地材を構成する複数のT形バーが平行に取付けられ、隣接する一対のT形バーのフランジには、ロールスクリーンを敷設するための溝部を備えた支持レールが一体形成されている。
【0004】
他方、ロールスクリーンの幅方向両側の側辺部の各々には、その側辺部の全長に渡る長さの芯材が挿入され、ロールスクリーンの先端部には、一対の支持レールの一端側から他端側に沿って敷設されたのちに、上階側の床スラブの下面に設けた被係止部に係脱自在に係止される係止部が設けられている。
このロールスクリーンは、巻き戻し機構を備えたロールボックスに巻き取られ、ロールボックスルは、上階側の床スラブの下面における両支持レールの一端側に取付けられている。
【0005】
そして、上述の天井構造による天井膜施工方法では、上階側の床スラブの下面に取付けられたロールボックスから繰り出されたロールスクリーンの先端部を、両支持レールの一端に対してレール長手方向から供給し、両支持レールの両側辺部を両支持レールの溝部内に挿入する。次に、両支持レールの一端に供給されたロールスクリーンは、両支持レールの溝部に沿って他端側に引き出して敷設する。その後、ロールスクリーンの先端部の係止部を上階側の床スラブの下面に設けた被係止部に係止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の天井膜施工方法では、上階側の床スラブの下面に、長尺なロールクリーンをロール状に巻き取ってある重量のある巻き戻し機構付きのロールボックスを取付ける必要があり、しかも、ロールボックスの取付け作業位置は天井下地材の両支持レールよりも高所の作業となるため、必ず足場を設置する必要がある。
そのため、天井下地材の両支持レールに沿った敷設作業以外に、重量のあるロールボックスの高所での取付け作業、及び、その高所作業のための足場の組付け・撤去作業が発生する。そのため、施工に多くの手間を有するとともに、工期の長期化とコストの高騰化を招来し易い。
しかも、ロールスクリーンの幅方向両側の側辺部の各々には、その側辺部の全長に渡る長さの芯材が挿入されているため、巻き取られたロールスクリーンのロール径が大きくなり、これを収納するロールボックスが大型化して嵩張り易い。特に、天井膜の敷設長さが長くなればなるほどロールボックスが大型化するため、天井裏空間内に大型化したロールボックスの収納空間を確保することは難しい。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、天井下地材に沿った天井膜の敷設を無足場で容易に行うことができ、工期の短縮とコストの削減を図ることのできる天井膜施工方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
天井下地材に、可撓性を有する帯状の天井膜を敷設する天井膜施工方法であって、
前記天井膜の両側辺部に線状体を付設した状態で当該天井膜を巻き取ってある巻取りロールを床上に設置し、
前記巻取りロールから繰り出された前記天井膜の両側辺部を、前記天井下地材を構成する一対の支持レールの一端側に供給し、
供給された前記天井膜の先端部を前記両支持レールに沿って他端側に引き出して敷設する
と好適である。
【0010】
上記構成によれば、天井下地材に沿って天井膜を敷設する場合、天井膜を巻き取ってある巻取りロールを床上に設置するので、天井膜の両側辺部に線状体を付設することによって大径化、重量化している巻取りロールを低所作業にて設置することができる。そして、その床上に設置した巻取りロールから帯状の天井膜を引き出し、引き出した天井膜の両側辺部を、天井下地材を構成する一対の支持レールの一端側に供給し、供給された天井膜の先端部を両支持レールに沿って他端側に引き出して敷設する作業を実行することにより、天井下地材に沿って天井膜を敷設することができる。
したがって、天井下地材に沿った天井膜の敷設を無足場で容易に行うことが可能となり、工期の短縮とコストの削減を図ることができる。
また、巻取りロールを床上の広い空間に設置するので、天井膜の敷設長さが長い場合でも、その長さ分の天井膜を巻き取った大径で重量のある巻取りロールを取り扱い易い状態で容易に設置することができ、施工性の向上を図ることができる。
【0011】
前記巻取りロールから上方に繰り出された前記天井膜を前記両支持レールの一端側に設けた供給ガイド部においてレール長手方向に方向転換し、且つ、前記両支持レールの一端側に供給案内する
と好適である。
【0012】
上記構成によれば、床上に設置した巻取りロールから上方に繰り出された天井膜は、供給ガイド部においてレール長手方向に方向転換されるので、両支持レールの一端側に対してレール長手方向から天井膜をスムーズに供給案内することができる。
【0013】
前記天井膜の先端部に連結された引張工具を介して、前記両支持レールの一端側に供給された前記天井膜の先端部を前記両支持レールに沿って他端側に引き出し操作する
と好適である。
【0014】
上記構成によれば、天井膜の先端部に連結された引張工具をもって作業者が床上を移動するだけで、天井膜の両側辺部を両支持レールに沿って他端側に簡単、確実に引き出し操作することができる。
【0015】
前記両支持レールに沿って引き出された前記天井膜の両側辺部の前記線状体を、それを幅方向外方側に移動させた状態で当該線状体に張力を付与する張力付与手段を介して膜固定部に固定する
と好適である。
【0016】
上記構成によれば、両支持レールに沿って敷設された天井膜の両側辺部の線状体と膜固定部との間に介装した張力付与手段によって、天井膜の両側辺部の線状体を幅方向外方側に移動させることにより、天井膜に対して幅方向で適切な張力を付与することができる。しかも、その状態で両線状体に張力を付与することにより、天井膜全体に適切な張力を付与することができる。それ故に、天井膜全体に対する張力付与作業と天井膜の固定作業とを能率良く実行することができる。
【0017】
前記天井膜の両側辺部は、前記両支持レールの溝部にレール長手方向から挿入され、
挿入された状態では、前記両支持レールの前記溝部の開口から外部に導出された前記天井膜の導出部位の下面は、前記両支持レールに設けられた突条に対して持上げられた状態で当接する
と好適である。
【0018】
上記構成によれば、線状体が付設されている天井膜の両側辺部を、両支持レールの溝部に対してレール長手方向から挿入することにより、天井膜の両側辺部の両支持レールの溝部からの抜け出しを防止することができる。しかも、天井膜の両側辺部が両支持レールの溝部に挿入された状態では、溝部の開口から外部に導出された天井膜の導出部位の下面は、両支持レールの突条に持上げられた状態で当接しているので、天井膜が風等で揺れても両支持レールと天井膜の導出部位との間に隙間が発生することを抑制することができる。
本発明による第1特徴構成は、天井下地材に、可撓性を有する帯状の天井膜を敷設する天井膜施工方法であって、
前記天井膜の両側辺部に線状体を付設した状態で当該天井膜を巻き取ってある巻取りロールを床上に設置する巻取りロール設置工程と、
前記巻取りロールから繰り出された前記天井膜の両側辺部を、前記天井下地材を構成する一対の支持レールの一端側に供給し、供給された前記天井膜の先端部を前記一対の支持レールの溝部に沿って他端側に引き出して敷設する天井膜敷設工程と、
敷設された前記天井膜の両側辺部に付設の前記線状体の両端部を壁面等の膜固定部に取付ける天井膜固定工程と、を備え、
前記天井膜敷設工程においては、前記天井膜の両側辺部に付設の前記線状体を、前記溝部内における膜幅方向の内方側の張力解除位置に配置し、
前記天井膜固定工程においては、前記天井膜の両側辺部に付設の前記線状体を、前記溝部内の前記張力解除位置から膜幅方向の外方側に移動させた設定膜張り位置に配置して前記膜固定部に取付ける点にある。
本発明による第2特徴構成は、前記天井膜固定工程においては、前記線状体の両端部を、張り位置保持部及び張力付与部を備えた張力付与手段を介して前記膜固定部に取付け、前記張り位置保持部により、前記線状体の両端部を前記設定膜張り位置に位置保持し、前記張力付与部により、前記線状体に所定張力を付与する点にある。
本発明による第3特徴構成は、前記一対の支持レールの各々は、上下方向に沿うウェブから側方に張り出すフランジと、当該フランジの上面との間に前記溝部を形成する上側フランジ部とを備え、前記上側フランジ部の先端部から前記フランジ側に突出する第1突条により、前記溝部に挿入された前記天井膜の側辺部の膜幅方向での抜け出し移動を当接阻止し、前記第1突条よりも膜幅方向の内方側に位置する前記フランジの先端部から上方に突出する第2突条により、前記溝部の開口部から外部に導出された前記天井膜の導出部位の下面を持ち上げ状態で支持する点にある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1、
図2は、建物の一例であるオフィスビルの天井構造を示す。この天井構造では、躯体としての上階側の床スラブ1の複数個所から垂設された吊りボルト2に、アルミ合金製やスチール製等の細長いバー材の一例である多数のTバー3が、直吊りハンガー等の各種のジョイント4を介して水平姿勢で吊下げ支持されている。
吊下げ支持された多数のTバー3は、同一水平面上において等間隔で連結され、この連結された多数のTバー3をもって天井下地材5が構成されている。この天井下地材5の下面側に形成される天井面は、隣接するTバー3間に沿って照明器具、空調空気の吹出口等の各種設備器具類7を配列する設備ラインL1と、隣接するTバー3間に沿って不燃性と可撓性を有する帯状の天井膜8を敷設する天井膜ラインL2とから構成されている。
【0021】
本実施形態で用いられるTバー3としては、
図2の右側に示すように、設備ラインL1と天井膜ラインL2との間に配置される第1Tバー3Aと、
図2の左側に示すように、両天井膜ラインL2間に配置される第2Tバー3Bとの二種類からなる。
第1Tバー3Aには、
図2の右側に示すように、上下方向に沿う板状のウェブ11と、このウェブ11の下端部から両側方に張り出す状態で一体形成されるフランジ12とが備えられている。そのうち、ウェブ11の天井膜ラインL2側の側面11aには、フランジ12の上面12aとの間に溝部13を形成する上側フランジ部14が一体的に突出形成され、溝部13には、天井膜8の幅方向中央側に向かって開口する開口部13a(
図6参照)が形成されている。この上側フランジ部14とフランジ12及びウェブ11の一部とをもって、天井膜8の幅方向両側の両側辺部8aを移動自在に載置支持する支持レール15が構成されている。
【0022】
第2Tバー3Bには、
図2の左側に示すように、上述の第1Tバー3Aと同様に、上下方向に沿う板状のウェブ11と、このウェブ11の下端部から左右の両側方に張り出す状態で一体形成されるフランジ12とが備えられている。そのうち、ウェブ11の両天井膜ライン側となる左右の両側面11aの各々には、各フランジ12の上面12aとの間に溝部13を形成する上側フランジ部14が一体的に突出形成され、各溝部13には、天井膜8の幅方向中央側に向かって開口する開口部13a(
図6参照)が形成されている。そして、各天井膜ラインL2側に位置する上側フランジ部14とフランジ12及びウェブ11の一部とをもって、天井膜8の幅方向両側の両側辺部8aを移動自在に載置支持する支持レール15がそれぞれ構成されている。
【0023】
天井膜8の両側辺部8aの各々は膜長手方向に沿って筒状に形成され、各側辺部8aの内部には、可撓性の線状体の一例である屈曲自在なワイヤー16が芯材として挿入されている。そのため、天井膜8の両側辺部8aの各々は、ワイヤー16の挿入分だけ厚肉に構成されている。
【0024】
一方、支持レール15の溝部13内の高さ寸法は、ワイヤー16が挿入されている天井膜8の側辺部8aの厚み寸法よりも大なる高さ寸法に構成され、支持レール15の溝部13に対して天井膜8の側辺部8aがレール長手方向から挿入自在に構成されている。
また、
図2、
図6に示すように、支持レール15の溝部13内の幅は、溝部13内の開口部13aの周縁に接触又は近接する天井膜8の側辺部8aが天井膜8の幅方向外方側に移動可能な余裕をもって構成されている。天井膜8の両側辺部8aが両支持レール15の溝部13内の開口部13aの周縁に接触する状態では、両溝部13の開口部13aから外部に導出された天井膜8の幅方向中間部が自重で緩やかに下方に湾曲して垂下する。
そのため、天井膜8の両側辺部8aが両支持レール15の溝部13内の開口部13aの周縁に接触する状態では、天井膜8の両側辺部8aの移動抵抗は小さく、両溝13内に供給された天井膜8の両側辺部8aをフランジ12の上面12aに沿って滑らかに引き出し移動することができる。
支持レール15の溝部13内の幅方向外側端部は、その外側位置へ天井膜8の側辺部8aが移動することによって当該天井膜8に膜幅方向での適正な張り(張力)を付与することが可能な位置に設定されている。
【0025】
さらに、
図6に示すように、支持レール15の上側フランジ部14の先端部には、レール長手方向の全域に亘ってフランジ12側に突出する第1突条17が一体形成され、この第1突条17の下端とフランジ12の上面12aとの間隔は、天井膜8の側辺部8aの厚み寸法よりも小なる寸法に構成され、支持レール15の溝部13内に挿入された天井膜8の側辺部8aの膜幅方向での抜け出し移動を当接阻止するように構成されている。
支持レール15のフランジ12の先端部には、レール長手方向の全域に亘って第1突条17の下端よりも上方に突出する第2突条18が一体形成されている。そのため、両支持レール15の溝部13内に天井膜8の側辺部8aが挿入された状態では、両支持レール15の溝部13の開口部13aから外部に導出された天井膜8の導出部位8bの下面は、両支持レール15に設けられた第2突条18に対して持上げられた状態で当接する。これにより、天井膜8が風等で揺れても両支持レール15と天井膜8の導出部位8bとの間に隙間が発生することを抑制することができる。
【0026】
次に、上述の天井構造の天井下地材5を構成する複数のTバー3のうち、天井面の天井膜ラインL2に対応する隣接の両Tバー3に沿って帯状の天井膜8を敷設する天井膜施工方法について説明する。
[1]巻取りロール設置工程
図1に示すように、両Tバー3の長手方向で相対向する両壁面21のうち、両Tバー3の一端部に対面する一方の壁面21近くの床上にロール支持台22を設置し、このロール支持台22の軸受け部22aに、天井膜8の両側辺部8aに線状体としてのワイヤー16を付設した状態で当該天井膜8を巻き取ってある巻取りロール23のロール軸23aを回転自在に載置する。
巻取りロール23に巻き取られている天井膜8の長さは、隣接するTバー3間の全長に亘る設定敷設長さに構成されている。また、天井膜8の先端部8cには、隣接するTバー3の対向間隔よりも小なる長さの芯材25が挿入されている。この芯材25が挿入された天井膜8の先端部8cには、天井膜8の先端部8cを両Tバー3の支持レール15に沿って他端側に引き出し操作する後述の引張工具26が脱着自在に連結される。
【0027】
[2]天井膜敷設工程
図1に示すように、ロール支持台22の巻取りロール23から引き出されて上方に繰り出された天井膜8を、一方の壁面21に架設された供給ガイド部27を経由して両Tバー3の支持レール15の溝部13の一端部に供給する。
供給ガイド部27は、一方の壁面21に脱着自在にボルト止めされたブラケット27Aに、両支持レール15の溝部13に対応する高さ位置において繰り出された天井膜8を屈曲案内するガイドローラ27Bを枢着して構成されている。そのため、巻取りロール23から上方に繰り出された天井膜8は、両支持レール15の一端側に位置する供給ガイド部27のガイドローラ27Bにおいてレール長手方向に沿う水平方向に方向転換され、且つ、両支持レール15の溝部13の一端側開口に対して水平方向から供給案内される。
【0028】
図2に示すように、両支持レール15の溝部13に供給された天井膜8の側辺部8aは、支持レール15のフランジ12の上面12aに載置された状態において、支持レール15の上側フランジ部14の先端部に一体形成された第1突条17に抜止め係止されている。そのため、天井膜8の側辺部8aは、溝部13のレール長手方向に沿う開口部13a(
図6参照)からの抜け出し移動が阻止された状態にあり、両支持レール15の溝部13の開口部13a(
図6参照)から外部に導出された天井膜8の幅方向中間部は自重で緩やかに下方に湾曲して垂下する。
【0029】
そして、
図1に示すように、両支持レール15の溝部13に供給された天井膜8の先端部8cに、床上の作業者の把持位置から天井膜8の先端部8cまでの長さよりも大なる長尺の引張工具26を連結する。この引張工具26の先端の連結部26aは、芯材25が挿入された天井膜8の先端部8cに対する脱着を許容する開き状態(連結解除状態)と、天井膜8の先端部8cを抱持する閉じ状態(連結状態)とに切り替え可能に構成されている。
天井膜8の先端部8cに連結された引張工具26を床上の作業者が把持し、引張工具26を連結部26aが後方側に位置する後ろ傾斜姿勢に保持する。この状態で作業者が他方の壁面21側に移動すると、両支持レール15の溝部13の一端部に供給された天井膜8の両側辺部8aは、支持レール15のフランジ12の上面12aに沿って摺動しながら他端側に引き出され、天井膜8の先端部8cが両Tバー3間の天井膜敷設領域の終端に到達した時点で引き出しが終了する。
図4に示すように、天井膜8の後端部8dは、天井膜8の先端部8cが天井膜敷設領域の終端に到達する前の段階で巻取りロール23から離脱し、天井膜8の先端部8cが天井膜敷設領域の終端に到達したときには、天井膜8の後端部8dは天井膜敷設領域の始端に位置するように設定されている。
この時点では、供給ガイド部27は不要となるため、供給ガイド部27のブラケット27Aを一方の壁面21から撤去する。
【0030】
[3]天井膜固定工程
図4、
図5に示すように、天井膜8の両側辺部8aに挿入されたワイヤー16の各端部16aは、天井膜8の両側辺部8aの端面よりも膜長手方向の外方に突出する。両ワイヤー16の各突出端部16aは、それを幅方向外方側に移動させた状態で当該ワイヤー16に張力を付与する張力付与手段30を介して膜固定部34の一例である壁面21に取付けられている。
張力付与手段30は、天井膜8の両側辺部8aに挿入されたワイヤー16を膜幅方向外方側に移動させた設定膜張り位置P2(
図6参照)に位置保持する張り位置保持部30Aと、設定膜張り位置P2(
図6参照)に位置保持されているワイヤー16に所定張力を付与する張力付与部30Bとから構成されている。そのうち、張力付与部30Bは、両ワイヤー16の各突出端部16aに取付けられたロックターミナルボルト31から構成され、張り位置保持部30Aは、ロックターミナルボルト31を壁面21に取付ける固定部材32に形成されている。
【0031】
ロックターミナルボルト31は、ワイヤー16の突出端部16aに外装されるケーシング31Aにターミナル31Bをねじ込むと、ケーシング31Aに内装されている図外の挟持爪が押圧されて縮径し、挟持爪がケーシング31Aとターミナル31Bとの間で固定されると同時にワイヤー16の突出端部16aを挟持固定する。
【0032】
そして、両ワイヤー16の各突出端部16aに取付けられているロックターミナルボルト31のターミナル31Bにはボルト31Cが一体形成されている。このターミナル31Bのボルト31Cを、壁面21にボルト止め固定されている固定部材32のボルト挿通孔32aに挿入し、ボルト31Cの先端側にナット31Dを螺合して抜け止めする。
【0033】
固定部材32のボルト挿通孔32aは、
図6に示すように、支持レール15の溝部13内の幅寸法と同一又はそれよりも大なる寸法で水平方向に沿う長孔に構成されている。
そのため、
図6の上図に示すように、両支持レール15の溝部13に供給された天井膜8の側辺部8aが、支持レール15の上側フランジ部14の第1突条17で抜止め係止され、両支持レール15の溝部13の開口部13aから外部に導出された天井膜8の幅方向中間部が自重で緩やかに下方に湾曲して垂下する状態では、両ワイヤー16に取付けられている各ロックターミナルボルト31のボルト31Cは、両固定部材32のボルト挿通孔32aおける膜幅方向内方側に位置する。このボルト挿通孔32aの膜幅方向内方側位置は張力解除位置P1となる。
【0034】
そして、
図6の下図に示すように、各ロックターミナルボルト31のボルト31Cを、両固定部材32のボルト挿通孔32aにおける張力解除位置P1から膜幅方向外方側端部に移動操作すると、各ロックターミナルボルト31に連動するワイヤー16により、天井膜8の両側辺部8aは、両支持レール15の溝部13内に沿って膜幅方向外方側に移動し、天井膜8に対して膜幅方向での適正な張り(張力)を付与することができる。
図6に示すように、両固定部材32のボルト挿通孔32aにおける膜幅方向外方側端部が、天井膜8に対して膜幅方向で張力を付与する設定膜張り位置P2になる。この設定膜張り位置P2には、ロックターミナルボルト31のボルト31Cを落とし込み状態で係合保持する係合保持溝32bが、ボルト挿通孔32aの膜幅方向外方側端部に連通形成されている。この係合保持溝32bをもって上述の張力付与手段30の張り位置保持部30Aが構成されている。
【0035】
そして、
図6の下図に示すように、各ロックターミナルボルト31のボルト31Cを、ボルト挿通孔32aの設定膜張り位置P2で係合保持溝32bに落とし込み係合させ、天井膜8に対して膜幅方向での張力を付与した状態で、各ロックターミナルボルト31のボルト31Cに螺合されているナット31Dをねじ込み操作する。このねじ込み操作によって設定膜張り位置に位置保持されているワイヤー16に所定張力が付与され、天井膜8全体が適切な張力で敷設される。
【0036】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、天井膜8の両側辺部8aに線状体としてのワイヤー16を挿入したが、このワイヤー16に換えてロープやチェーン等の他の線状体を用いてもよい。さらに、天井膜8の両側辺部8aの外面にワイヤー16等の線状体を付設してもよい。
【0037】
(2)上述の実施形態では、供給ガイド部27の一つのガイドローラ27Bにより、巻取りロール23から上方に繰り出された天井膜8をレール長手方向に沿う水平方向に方向転換して、両支持レール15の溝部13に供給案内するように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、複数のガイドローラ27Bを用いて、巻取りロール23から上方に繰り出された天井膜8を徐々に方向転換しながら、両支持レール15の溝部13の一端側開口に対して水平方向から供給案内するように構成してもよい。
【0038】
(3)上述の実施形態では、天井膜8の先端部8cに連結された引張工具26を床上の作業者が把持し、この状態で作業者が他方の壁面21側に移動することにより、両支持レール15の溝部13の一端部に供給された天井膜8を他端側に引き出すように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、天井膜8の先端部8cに連結したロープやワイヤー等をウインチで巻き取ることにより、両支持レール15の溝部13の一端部に供給された天井膜8を他端側に引き出すように構成してもよい。
【0039】
(4)上述の実施形態では、各ロックターミナルボルト31のボルト31Cを、両固定部材32のボルト挿通孔32aにおける張力解除位置P1から設定膜張り位置P2に人為力で移動操作したが、各ロックターミナルボルト31のボルト31Cをネジ機構や流体圧機構等の機械力で移動操作してもよい。
【0040】
(5)上述の実施形態では、少なくとも不燃性と可撓性を有する帯状の天井膜8を用いたが、さらに、通風性を備えた天井膜8を用いてもよい。
【0041】
(6)上述の実施形態では、張力付与手段30を、天井膜8の両側辺部8aに挿入されたワイヤー16を膜幅方向外方側に移動させた設定膜張り位置P2に位置保持する張り位置保持部30Aと、設定膜張り位置P2に位置保持されているワイヤー16に所定張力を付与する張力付与部30Bとから構成したが、この構成に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、固定部材32に、ボルト挿通孔32aと係合保持溝32bとを連通形成したが、固定部材32にボルト挿通孔32aのみを単独で形成し、ボルト挿通孔32aに挿入されたロックターミナルボルト31のボルト31Cを張力解除位置P1と設定膜張り位置P2との間で移動自在に構成してもよい。
また、固定部材32に、ロックターミナルボルト31のボルト31Cを設定膜張り位置P2で位置保持する係合保持溝32bのみを単独で形成してもよい。この場合、係合保持溝32bに挿通保持されたロックターミナルボルト31を締め込み操作して、ワイヤー16に所定張力を付与することにより、天井膜8の両側辺部8aを膜幅方向外方側に設定張力で引っ張ることができる。
設定膜張り位置P2に単独で形成される係合保持溝32bの形状としては、ボルト31Cに対応した真円の円形孔や上下方向に長い長孔であってもよく、さらには、その長孔の上部側を拡大した孔などであってもよい。
また、張力付与手段30を、天井膜8に膜幅方向での張力を付与する膜幅方向用張力付与手段と天井膜8に膜長手方向での張力を付与する膜長手方向用張力付与手段とから構成してもよい。