(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842898
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】チタン含有シリカ材料の製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20210308BHJP
B01J 21/08 20060101ALI20210308BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
C01B33/18 E
B01J21/08 Z
!C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-237597(P2016-237597)
(22)【出願日】2016年12月7日
(65)【公開番号】特開2017-222560(P2017-222560A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年2月1日
【審判番号】不服2019-10072(P2019-10072/J1)
【審判請求日】2019年7月31日
(31)【優先権主張番号】105118552
(32)【優先日】2016年6月14日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】516368265
【氏名又は名称】東聯化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】許祐川
(72)【発明者】
【氏名】曾珈瑤
(72)【発明者】
【氏名】呉柏松
(72)【発明者】
【氏名】蔡▲錫▼津
【合議体】
【審判長】
日比野 隆治
【審判官】
岡田 隆介
【審判官】
後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−269031(JP,A)
【文献】
特開2002−273221(JP,A)
【文献】
特表平10−505785(JP,A)
【文献】
特開2012−006823(JP,A)
【文献】
特開昭62−246817(JP,A)
【文献】
米国特許第5162283(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
B01J 21/00 - 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶相シリカ、チタン源及び溶剤を含有する混合溶液を用意する工程と、
テンプレートを使用せずに前記混合溶液を非ゾルゲル反応した後、固液分離する工程と、
固液分離で得られた固体を30〜120℃で0.5〜6時間乾燥し、チタン含有シリカ材料を得る工程とを含み、
前記チタン含有シリカ材料は、無水状態で下記化学式(I)で表され、
xTiO2(1−x)SiO2 (I)
その内、xは0.002〜0.2であることを特徴とする、
チタン含有シリカ材料の製造方法。
【請求項2】
前記非晶相シリカは、シリカフューム、ホワイトカーボン、シリカゲル、又はシリカゾルであり、前記チタン源は、チタネート又は無機チタン源であり、前記溶剤は、アルコール類溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チタネートは、チタン酸テトラメチル、チタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトラプロピル、チタン酸テトライソプロピル、オルトチタン酸テトラブチル、チタン酸テトラ−sec−ブチル、イソチタン酸テトラブチル、及びチタン酸テトラ−tert−ブチルからなる群から選ばれたものであり、前記無機チタン源は、三塩化チタン又は四塩化チタンであり、前記アルコール類溶剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、及びtert−ブタノールからなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合溶液において、チタンとシリコンのモル比は0.002〜0.2の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合溶液において、チタンとシリコンのモル比は0.01〜0.1の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合溶液は、20〜100℃で0.5〜3時間反応させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記チタン含有シリカ材料をか焼し、か焼温度は300〜800℃であり、か焼時間は1〜9時間である工程、前記チタン含有シリカ材料をシリル化処理し、反応温度は25〜200℃であり、反応時間は0.5〜3時間である工程、及び遷移金属をチタン含有シリカ材料に併せて、前記遷移金属の濃度が前記チタン含有シリカ材料総量の0.01〜10重量%の範囲である工程の少なくとも一つの工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属の濃度は、前記チタン含有シリカ材料総量の0.05〜5重量%の範囲であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法により製造したチタン含有シリカ材料を触媒とし、オレフィン類化合物と酸化物を反応させることで、エポキシ化物を形成する工程を含むことを特徴とするエポキシ化物の製造方法。
【請求項10】
前記オレフィン類化合物は、モノオレフィン類、ジオレフィン類、又はポリオレフィン類化合物であり、前記酸化物は、有機過酸化物又はヒドロペルオキシドであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記モノオレフィン類化合物は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、スチレン、及びシクロヘキセンからなる群から選ばれたものであり、前記ジオレフィン類化合物は、ブタジエン又はイソプレンであり、前記有機過酸化物は、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、又はシクロヘキシルヒドロペルオキシドであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記オレフィン類化合物と前記酸化物のモル比は1:100〜100:1であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記オレフィン類化合物と前記酸化物のモル比は1:10〜10:1であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記オレフィン類化合物と前記酸化物の反応温度は0〜200℃であり、反応圧力は全ての反応物を液体状態以上とする圧力であり、反応の滞留時間は1分間〜48時間であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記オレフィン類化合物と前記酸化物の反応温度は25〜150℃であり、反応圧力は1〜100atmであり、反応の滞留時間は5分間〜8時間であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン含有シリカ材料の製造方法及びその使用に関し、特に、シリカを担体とし、かつテンプレートを使用しないチタン含有シリカ材料の合成方法、及び前記チタン含有シリカ材料を触媒とし、オレフィン類化合物(olefin)を直接酸化反応によりエポキシ化物を生成する使用に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン含有シリカ材料は、普通、高表面積の多孔構造を有し、優れた吸収剤、触媒又は触媒担体とする。現在、最も一般的なチタン含有シリカ材料の合成は、界面活性剤をテンプレート剤として水熱合成法で製造されており、その中でも、最も有名な例として、テンプレートとして電気陽性の第4級アンモニウム塩界面活性剤を使用する例がある。
例えば、米国特許US7018950、US688782及びUS6512128の何れにおいても、チタン含有シリカ触媒の製造方法が開示されており、その主な工程として、溶剤にシリコン源、チタン源、及びテンプレートとして第4級アンモニウムイオンを混合して撹拌することによって、触媒成分とテンプレートを含有する固体を得る。その後、溶媒抽出法で得られた固体からテンプレートを除去することで、所定孔径、所定孔径分布、及び所定容量比を有するチタン含有シリカ触媒を製造する。
【0003】
製造工程において、テンプレート剤は水溶液でミセルを形成し、添加されたシリコン化合物はミセルに囲まれ、そしてその上に集まってシリカ基材を形成する。前記テンプレート剤(すなわち界面活性剤)は、一般的には高温か焼により除去され、更にテンプレート剤のサイズ及び形状に類似する多孔構造材料を作る。
前記製造工程の利点として、テンプレート剤の分子サイズによって合成した材料の細孔容積を調整でき、また、テンプレート剤のミセルサイズによってその細孔サイズを調整できる。しかしながら、テンプレート剤の使用は毒性を生じる可能性があるため、環境汚染の問題を有する。
【0004】
チタン含有シリカ材料の製造に広く使われているもう一つの方法は、ゾルゲル法である。例えば、中国特許CN103861574において、チタン−シリコン複合酸化物の製造方法が開示されており、前記方法は、無機のチタン源、シリコン源を原料とし、一定量のテンプレート剤を添加して、ゾルゲル法を採用して、中和、エージング、洗浄、焼成などの工程を経することで、チタン−シリコン複合酸化物を得る方法である。
又、例えば米国特許US6,881,697において、チタン含有シリカ触媒の製造方法が開示されており、前記方法において、シリコン化合物とアルコキシチタン化合物を水及び/又はアルコール溶剤でゲル化させ、超臨界流体を利用し抽出することで、得られたゲル中の溶剤を除去する。シリコン化合物とアルコキシチタン化合物を水及び/又はアルコール溶剤でゲル化する方法としては、シリコン化合物とチタン化合物を溶解した水及び/又はアルコール溶液に、一般的な促進剤として使われる酸又はアルカリを添加し、シリコン化合物とチタン化合物の水解及び縮合反応を行い、それによってSi−C−Si結合、Si−O−Si結合、及びSi−O−Ti結合を含有する高分子縮合物ゲルを得る。テンプレート剤を使用するかどうかに関わらず、ゾルゲル法による製造工程は複雑であり、且つチタン含有シリカ材料の顆粒形状及び粒度は制御しづらい為、その触媒活性に影響を及ぼす。
【0005】
上記背景技術の種々な不足を改善するために、本発明者らは、テンプレート剤を使用しないはか、プロセスの簡素化、コストの節約を達成すると共に、製造されたチタン含有シリカ材料がエポキシ化反応において高触媒活性を有することを特徴とする、チタン含有シリカ材料の製造方法、及びその使用を開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、非晶相シリカ、チタン源、及び溶剤を混合して反応させた後、ろ別、乾燥する、すなわちテンプレートを使用しない条件で、高触媒活性を有するチタン含有シリカ材料を得て、前記チタン含有シリカ材料が、さらに触媒としてオレフィン類化合物のエポキシ化反応に触媒作用を及ぼすことで、エポキシ化物を生成することを特徴とする、チタン含有シリカ材料の製造方法、及びその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、本発明は、非晶相(amorphous)シリカ、チタン源、及び溶剤を混合して混合溶液とし、前記混合溶液を20〜100℃温度で0.5〜3時間反応させた後、固液分離を行い、最後に、固液分離で得られた固体を乾燥させることで、チタン含有シリカ材料を得ることを特徴とする、チタン含有シリカ材料の製造方法を提供する。前記チタン含有シリカ材料は、無水状態では下記化学式(I)で表す。
xTiO
2(1−x)SiO
2 (I)
式中、xは0.002〜0.2である。
【0008】
前記方法における非晶相シリカは、一般式がSiO
2であり、例えば、シリカは、シリカフューム、ホワイトカーボン、シリカゲル又はシリカゾルから選ばれるものが挙げられる。チタン源は、チタネート、又は無機チタン源からなるものが挙げられる。溶剤は、アルコール類化合物が挙げられ、アルコール類溶剤のアルコールとは、C1〜10アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、又はtert−ブタノールである。
【0009】
なお、本発明は、まず触媒として前記方法により製造したチタン含有シリカ材料を提供し、オレフィン類化合物と酸化物を反応させる工程を経て、エポキシ化物を形成することを特徴とする、エポキシ化物の製造方法を提供する。
【0010】
また、触媒反応を行う前に、か焼(calcination)及び/又はシリル化(silylation)の方法によって、触媒の触媒活性を向上することができる。
【0011】
前記方法において、触媒の使用量は特に制限されず、触媒量として、短い時間でエポキシ化反応を完全に行えればよい。反応に使用されたオレフィン類化合物と酸化物のモル比は1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1である。反応温度は特に制限されず、普通は0〜200℃、好ましくは25〜150℃である。反応圧力として、全ての反応物を液体状態以上とする圧力であればよく、好ましくは1〜100atmである。反応の滞留時間は1分間〜48時間、好ましくは5分間〜8時間である。前記工程は、任意の反応器又は器械に適用し、例えば固定床、搬送床、流動床、スラリー撹拌、又は連続流通撹拌反応器によるバッチ式、連続式、又は半連続式で行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法は、工程が簡単であり、コストが低いのみならず、製造した触媒が優れた触媒活性を有するなど利点を有するので、産業利用に役立つ。
【0013】
以下、本発明の目的、技術的な内容、特徴、及び達成できる効果について、具体的な実施例により詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のチタン含有シリカ材料の製造方法のフローチャートである。
【
図2】本発明のエポキシ化物の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照しながら本発明のチタン含有シリカ材料の製造方法の工程を説明する。図において、7つの工程S100〜S150を表示する。
工程S100〜S120において、チタン含有シリカ材料の製造方法を説明する。工程S130、S140、及びS150において、高触媒活性を有するチタン含有シリカ材料を提供するために、チタン含有シリカ材料の製造工程中に加える3つの工程を定義する。実際の実務において、一つの作製工程において、工程S130、S140、及びS150の一つ又は複数の工程に使用できるが、分かり易くする為、フローチャートに、それらの工程を共に表示(破線枠は、それらの特徴が選択的なものであることを表す)する。
【0016】
まず、工程S100のように、非晶相シリカ、チタン源、及び溶剤を混合して混合溶液を形成する。当該混合溶液の準備方法として、シリカ、チタン源、及び溶剤を直接混合して混合溶液を形成する。又は、チタン源と溶剤を混合して溶液Aを形成し、さらにシリカと溶液Aを混合して混合溶液を形成する。又は、チタン源と溶剤を混合して溶液Aを形成し、シリカと溶剤を混合して溶液Bを形成し、さらに溶液Aと溶液Bを混合して混合溶液を形成する。
【0017】
本発明に使用するシリカは、一般式がSiO
2であり、シリカフューム、ホワイトカーボン、シリカゲル、シリカゾルなどの非晶相シリカ材料が挙げられるが、これらに限定されない。本 発明に使用するチタン源は、チタネート又は無機チタン源が挙げられるが、これらに限定されない。具体的に言うと、チタネートは、チタン酸テトラメチル、チタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトラプロピル、チタン酸テトライソプロピル、オルトチタン酸テトラブチル、チタン酸テトラ−sec−ブチル、イソチタン酸テトラブチル、チタン酸テトラ−tert−ブチル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。無機チタン源は、三塩化チタン、四塩化チタンなどチタンハロゲン化物、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明に使用する溶剤は、アルコール類化合物が挙げられ、アルコール類溶剤のアルコールとは、C1−10アルコール類であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びtert−ブタノールなどの1種又は複数のアルコール類を混合した組み合わせである。
【0018】
また、混合溶液におけるチタンとシリコンのモル比は0.002〜0.2、好ましくは0.01〜0.1の範囲である。また、溶剤の使用量はシリカ材料を撹拌できる量であればよい。
【0019】
そして、工程S110のように、混合溶液を20〜100℃の温度で、0.5〜3時間反応させる。好ましくは、反応温度が30〜80℃であり、反応時間が1〜2時間である。その後、適切な固液分離方法により、反応溶液から固体を分取することで、溶剤を除去する。その内、固液分離方法は、ろ別、遠心、デカンテーション又はその他の類似方法を含む。
【0020】
最後に、工程S120のように、固液分離で得られた固体をオーブンにて乾燥させる。オーブンの温度は30〜120℃に制御し、乾燥時間は0.5〜6時間である。好ましくは、オーブンの温度を50〜100℃に制御させ、乾燥時間が1〜4時間である。これによって得られたチタン含有シリカ材料は、無水状態では下記化学式(I)で表す。
xTiO
2(1−x)SiO
2(I)
式中、xは0.002〜0.2である。
【0021】
本発明により製造したチタン含有シリカ材料は、触媒とすることができる。前記触媒は、触媒反応を行う前に、か焼及び/又はシリル化の方法でシラノール基含有量を低減するため、触媒それ自体の酸性を低減し、触媒の表面特性を変えることで、触媒の触媒活性を向上できる。
【0022】
選択的な手段として、工程S130のように、チタン含有シリカ材料をか焼(calcination)する。その内、か焼温度は300〜800℃であり、か焼時間は1〜9時間である。好ましくは、か焼温度が350〜650℃であり、か焼時間が3〜6時間である。
【0023】
もう一つの選択的な手段として、工程S140のように、チタン含有シリカ材料をシリル化(silylation)処理する。シリル化は、1種又は複数有機シランを使用して常法で行う。
【0024】
シリル化に使用する有機シランは、ハロゲンシラン(一般式はR
1R
2R
3SiX)、シラザン(一般式は[R
4R
5R
6Si]
2NH)、シリルイミダゾール(一般式はR
7R
8R
9Si[N
2C
3H
3])、又はシリルアミン(一般式は(R
10)
3SiN(R
11)
2)が挙げられる。その内、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、C1−6飽和アルキル又はフェニルを表する。R
4、R
5及びR
6は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、C1−6アルキル、ハロアルキル又はフェニルを表する。R
7〜R
11は、それぞれC1−3飽和アルキルである。好ましい有機シランとしては、ヘキサメチルジシラザン、シリルアミン、トリメチルクロロシラン、及びN−トリメチルシリルイミダゾール中の1種、又は複数の組み合わせである。
シリル化に必要となる溶剤は、C6−16からなる芳香族炭化水素、又はC6−16からなる飽和アルカンの1種又は複数種が挙げられ、好ましい溶剤としては、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、クメン中の1種又は複数の組み合わせ。
【0025】
シリル化する場合、有機シランとチタン含有シリカ材料の重量比は0.01〜1、好ましくは0.1〜0.8である。溶剤とチタン含有シリカ材料の重量比は1〜200、好ましくは1〜100である。なお、シリル化の反応温度は25〜200℃、好ましくは50〜150℃である。反応時間は0.5〜3時間、好ましくは1〜2時間である。
【0026】
また、もう一つの選択的な手段として、工程S150のように、遷移金属をチタン含有シリカ材料に併せる。
【0027】
本発明により製造したチタン含有シリカ材料は、必要に応じて、含浸法、沈殿法、混合法、又はその他の類似の方法で他の遷移金属を併せることができる。その内、含浸法は、遷移金属溶液を適切な溶剤に分散した後、チタン含有シリカ材料と混合して、遷移金属を含浸したチタン含有シリカ材料を形成し、必要に応じて、遷移金属を含浸したチタン含有シリカ材料をさらに乾燥、か焼する。
その内、遷移金属の濃度範囲としては、チタン含有シリカ材料の総量に対して0.01〜10wt%、好ましくは0.05〜5wt%である。前記方法により製造した遷移金属を含浸したチタン含有シリカ材料において、遷移金属は、チタン含有シリカ材料の骨格内又は骨格外に位置する。
【0028】
図2を参照しながら、本発明において、製造したチタン含有シリカ材料をエポキシ化物の製造方法に使用する工程を説明する。図面において、三つの工程S200〜S230を示す。工程S230において、エポキシ化物の製造方法を説明する。
工程S200、S210、S220において、触媒の触媒活性を向上するために、エポキシ化物の製造工程中に加える三つの工程を定義する。実際の実務において、一つの作製工程において、工程S200、S210及びS220の一つ又は複数工程を使用できるが、分かりやすくするために、フローチャートに、それらの工程を共に表示(破線枠は、それらの特徴が選択的なものであることを表する)する。
【0029】
工程S200、S210及びS220のように、触媒反応する前に、か焼、及び/又はシリル化、及び/又は遷移金属をチタン含有シリカ材料に併せる方法によって、触媒の触媒活性を向上できる。それらの工程の詳しい内容は、前記工程S130、S140、S150と同じであるため、説明を省略する。
【0030】
工程S230のように、前記方法により製造したチタン含有シリカ材料を触媒とし、オレフィン類化合物(olefin)と酸化物のエポキシ化反応に触媒作用を及ばすことで、エポキシ化物を形成する。
【0031】
上記エポキシ化反応に使用するチタン含有シリカ材料は、パウダー状、ペレット状、ミクロスフェア状、塊状であってもよく、押出成形、圧縮成形、又はその他の任意形式であってもよい。エポキシ化反応に使用するオレフィン類化合物は、脂肪族、及び単環、二環、多環を含む環状化合物が挙げられるが、これらに限定されない。モノオレフィン類(mono−olefin)、ジオレフィン類(di−olefin)、又はポリオレフィン類(poly−olefin)化合物であってもよい。
オレフィン類化合物の二重結合数が2より大きい場合、二重結合の種類は、共役二重結合でも、非共役二重結合でもよい。その内、モノオレフィン類化合物は、C2−60からなるオレフィン類化合物が挙げられ、これらに限定されない。オレフィン類化合物は一つの置換基を有してもよい。前記置換基は、相対的に安定な置換基であることが好ましい。前記モノオレフィン類化合物は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、スチレン、又はシクロヘキセンが挙げられるが、これらに限定されない。ジオレフィン類化合物は、ブタジエン又はイソプレンが挙げられるが、これらに限定されない 。
【0032】
また、エポキシ化反応に使用する酸化物は、有機過酸化物であってもよく、その一般式はR−O−O−H(Rはアルキル基を表す)である。アルキル基は、C3−20からなる基(好ましくはC3−10)であり、sec−又はtert−アルキル基(tertiary alkyl group)、或いはアラルキル基(aralkyl group)が挙げられ、例えばtert−ブチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、又は2−フェニル−2−プロピルが挙げられる。前記有機過酸化物は、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、又はシクロヘキシルヒドロペルオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
クメンヒドロペルオキシドを有機過酸化物とする場合、反応の生成物はα−クメンアルコール(alpha−Cumyl alcohol)である。α−クメンアルコールは、脱水によってα−メチルスチレン(alpha−methyl styrene)に転換できる。前記α−メチルスチレンは、工業上色々応用できる上、水素化によりクメンに転換し、クメンヒドロペルオキシドの前駆体となる。その他の種類の有機過酸化物も類似な特性を有する。
【0033】
エポキシ化反応に使用する酸化物は過酸化水素であってもよい、その一般式はH−O−O−Hである。過酸化水素は水溶液の形で得られ、オレフィン類化合物と反応することで、エポキシ化物及び水を生成できる。
【0034】
反応物として酸化物は、濃縮又は希釈された純粋な又は不純粋な物質であってもよい。
【0035】
エポキシ化反応でエポキシ化物を生産する場合、溶剤又は希釈剤を添加して液体状態で反応することができる。溶剤及び希釈剤は、エポキシ化反応の条件で液体状態となり、各反応物及び生成物に対して不活性である。前記溶剤は、エチルベンゼン、クメン、イソブタン、又はシクロヘキサンなどの1種又は混合組成が挙げられるが、これらに限定されない。
溶剤は、使用する酸化物溶液に存在する物質であってもよく、例えば、クメンヒドロペルオキシドと酸化物原料であるクメンとの混合溶液を酸化物とする場合、クメンを溶剤とすることができる為、わざわざ溶剤を添加する必要がない。
【0036】
前記方法において、触媒の使用量は特に制限されないが、短い時間でエポキシ化反応を完全に行えればよい。反応に使用されたオレフィン類化合物と酸化物のモル比は1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1である。反応温度は特に制限されず、普通は0〜200℃、好ましくは25〜150℃である。
反応圧力は、全ての反応物を液体状態以上とする圧力であればよく、好ましくは1〜100atmである。反応の滞留時間は1分間〜48時間、好ましくは5分間〜8時間である。前記工程は、任意の反応器又は器械に適用し、例えば固定床、搬送床、流動床、スラリー撹拌、又は連続流通撹拌反応器によるバッチ式、連続式又は半連続式で行う。
【0037】
以下、幾つかの具体的な実施例により、本発明において、どのようにチタン含有シリカ材料を有効に製造し、且つ前記材料を触媒としてオレフィン類化合物と酸化物のエポキシ化反応に触媒作用を及ばすことで、エポキシ化物を生成するかについて説明する。
【実施例1】
【0038】
[チタン含有シリカ材料の作製]
イソプロパノール(IPA)178.6gに、チタン酸テトライソプロピル(tetraisopropylorthotitanate)6.1gを投入する。上記溶液にシリカゲル(silica gel)(Sigma−Aldrich 236772に由来するものであり、孔径寸法は6nmであり、比表面積は500m
2/gであり、粒径は35〜75μmである)48.5gを添加して均一に混合し、当該溶液を80℃で2時間撹拌した後、ろ別する。溶液を除去した後、粉体を70℃で乾燥(乾燥時間は2時間以内)する。乾燥した粉体をか焼させる。そのか焼温度は500℃であり、昇温速度は3℃/minであり、前記温度で5時間維持した後、自然冷却する。
【0039】
[プロピレンオキシドの作製]
実施例1で得られたチタン含有シリカ材料を触媒とする。触媒16.5gをシリル化した後、前記触媒と、トルエン165gと、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)11.2gとを均一に混合し、120℃で1時間撹拌した後、ろ別、乾燥する。そして、前記触媒材料と、25wt%クメンヒドロペルオキシド溶液(溶剤はクメンである)225gと、プロピレン125gとを1リットルの密閉高圧反応器(autoclave)で均一に混合し、加熱して85℃で反応させる。その反応時間は1.5時間以内である。反応の結果は表1に示す。
【実施例2】
【0040】
[チタン含有シリカ材料の作製]
か焼処理を行わない以外は、実施例1と同様に作製する。
【0041】
[プロピレンオキシドの作製]
実施例2で得られたチタン含有シリカ材料を触媒とし、かつ触媒のシリル化を行わない以外は、その後の工程は実施例1と同様である。反応の結果は表1に示す。
【実施例3】
【0042】
[チタン含有シリカ材料の作製]
か焼処理を行わない以外は、実施例1と同様に作製する。
【0043】
[プロピレンオキシドの作製]
実施例3で得られたチタン含有シリカ材料を触媒とする以外は、その後の工程は実施例1と同様である。反応の結果は表1に示す。
【実施例4】
【0044】
[チタン含有シリカ材料の作製]
実施例1と同様に作製する。
【0045】
[プロピレンオキシドの作製]
実施例4で得られたチタン含有シリカ材料を触媒とし、かつ触媒のシリル化を行わない以外は、その後の工程は実施例1と同様である。反応の結果は表1に示す。
【実施例5】
【0046】
[チタン含有シリカ材料の作製]
シリカゲル(Sigma−Aldrich 236810に由来するものであり、孔径寸法は15nmであり、比表面積は300m
2/gであり、粒径は35〜75μmである)33.6g、チタン酸テトライソプロピル5.1g、及びイソプロパノール100gを使用する以外は、実施例1と同様に作製する。
【0047】
[プロピレンオキシドの作製]
実施例5で得られたチタン含有シリカ材料を触媒とする以外は、その後の工程は実施例1と同様である。反応の結果は表1に示す。
【実施例6】
【0048】
[チタン含有シリカ材料の作製]
シリカゲル(Oriental Silicas Corporation株式会社から生産したTXR−120−2に由来するものであり、比表面積は680〜760m
2/gである)12.1g、チタン酸テトライソプロピル1g、及びイソプロパノール59gを使用する以外は、実施例1と同様に作製する。
【0049】
[プロピレンオキシドの作製]
実施例6で得られたチタン含有シリカ材料7.5gを触媒とし、かつシリル化を行う以外は、その後の工程は実施例1と同様である。反応の結果は表1に示す。
【実施例7】
【0050】
[チタン含有シリカ材料の作製]
イソプロパノール(IPA)298gに、チタン酸テトライソプロピル(tetraisopropylorthotitanate)2.1gを投入、室温で撹拌して混合する。80℃のイソプロパノール(IPA)298gに、シリカゲル(Sigma−Aldrich 236802に由来するものであり、孔径寸法は6nmであり、比表面積は500m
2/gであり、粒径は250−500μmである)16.2gを投入し、撹拌して混合する。
上記2つの溶液を80℃で混合して2時間撹拌した後、ろ別する。溶液を除去した後、粉体を70℃で乾燥(乾燥時間は2時間以内)する。乾燥した粉体をか焼する。そのか焼温度は500℃であり、昇温速度は3℃/minであり、前記温度で5時間維持した後、自然冷却する。
【0051】
[プロピレンオキシドの作製]
実施例7で得られたチタン含有シリカ材料を触媒とする。触媒7.5gをシリル化した後、前記触媒と、トルエン75gと、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)5.1gとを均一に混合し、120℃で1時間撹拌した後、ろ別、乾燥する。
そして、前記触媒材料と、25wt%クメンヒドロペルオキシド溶液(溶剤はクメンである)225gと、プロピレン125gとを1リットルの密閉高圧反応器(autoclave)で均一に混合し、加熱して85℃で反応させる。その反応時間は1.5時間以内である。反応の結果は表1に示す。
【0052】
【表1】
注
1:クメンヒドロペルオキシドの転化率=クメンヒドロペルオキシドの消耗量/クメンヒドロペルオキシドの添加量×100%
注
2:プロピレンオキシドの選択率(selectivity)=プロピレンオキシドの生成量/クメンヒドロペルオキシドの消耗量×100%
【0053】
表1に示すように、本発明のチタン含有シリカ材料の製造方法は、種々の異なる物理的な性質を有する非晶相シリカ担体に適用できる。前記方法により製造したチタン含有シリカ材料は、エポキシ化反応に触媒作用を及ばす。また、前記チタン含有シリカ材料は、か焼又は/及びシリル化の方法によって、エポキシ化反応に対する触媒活性を向上できる。
【0054】
結論として、本発明のチタン含有シリカ材料の製造方法及びその使用によれば、テンプレートを使用する必要がないという条件で、チタン含有シリカ材料の作製工程をある程度簡素化できる。製造したチタン含有シリカ材料は高触媒活性を有し、さらに触媒としてオレフィン類化合物のエポキシ化反応に触媒作用を及ぼし、エポキシ化物の産率の向上に寄与する。
【0055】
上記説明した内容は、あくまで本発明の好ましい実施例であり、本願発明を限定するものではない。したがって、本発明の請求の範囲に記載の特徴、思想に基づいてなされた均等な変更および付加は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれるものとする。