(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の歯ブラシの実施の形態を、
図1ないし
図10を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る歯ブラシ1の平面図であり、
図2は歯ブラシ1の側面図である。
図1の歯ブラシ1は、長さ方向の先端側に配置された平面視略四角形のヘッド部2と、該ヘッド部2から後端側に延設されたネック部4と、該ネック部4から後端側に延設されたハンドル部6とを有する略長尺状のハンドル体10と、ヘッド部2に設けられた植毛部(不図示)とを備えるものである。
【0021】
ヘッド部2は、ハンドル体10の長さ方向が長手とされ、平面視においてネック部4側の頂部が曲線で隅切りされた略四角形の平板状とされ、
図2中の上面である植毛面20に、植毛穴22が複数形成されたものである。この植毛穴22に、用毛が束ねられた毛束(図示せず)が植設されて、複数の毛束からなる植毛部が形成されている。
【0022】
なお、本実施形態では、ハンドル体10の長さ方向をX方向とし、植毛面20と平行で且つハンドル体10の長さ方向に直交する幅方向をY方向とし、植毛面20に直交する厚さ方向をZ方向と称する。加えて、植毛面20が臨む側を表面、植毛面20が臨む側の反対側を裏面と称する。
【0023】
ヘッド部2の大きさは、口腔内での操作性等を勘案して決定できる。
ヘッド部2の幅は、大きすぎると口腔内での操作性が低下し、小さすぎると植毛される毛束の数が少なくなりすぎて、清掃効果が損なわれやすい。このため、ヘッド部2の幅は、例えば、5〜13mmとされる。
【0024】
ヘッド部2の厚さは、薄いほど口腔内での操作性を高められるが、薄すぎるとヘッド部2の強度が不十分になりやすい。このため、ヘッド部2の厚さは、ハンドル体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましい。ヘッド部2の長さは、長すぎると口腔内での操作性が損なわれやすく、短すぎると植毛される毛束の数が少なくなりすぎて、清掃効果が損なわれやすい。このため、ヘッド部2の長さは、10〜26mmの範囲で適宜決定される。
【0025】
植毛穴22の形状は、特に限定されず、真円又は楕円等の円形、三角形や四角形等の多角形等が挙げられる。植毛穴22の数量は、特に限定されず、例えば、10〜60とされる。植毛穴22の直径は、求める毛束23の太さに応じて決定され、例えば、1〜3mmとされる。植毛穴22の配列パターンは、特に限定されず、いわゆる碁盤目状や千鳥状等、いかなる配列パターンであってもよい。
【0026】
毛束23を構成する用毛としては、毛先に向かって漸次その径が小さくなる用毛(テーパー毛)、毛先の丸め部を除いて外径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)が挙げられる。用毛の材質は、例えば、6−12ナイロン、6−10ナイロン等のポリアミド、PET、PBT、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、PEN、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の合成樹脂材料を用いることができる。これらの樹脂材料は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。また、用毛は、芯部と該芯部の外側に設けられた少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造であってもよい。
【0027】
用毛の断面輪郭は、特に限定されず、例えば、真円形、楕円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等が挙げられる。
【0028】
用毛の太さは、特に限定されず、断面輪郭が円形の場合、例えば、3〜11mil(1mil=1/1000inch=0.025mm)とされる。毛束は、全てが同じ太さの用毛で構成されていてもよいし、2種以上の異なる太さの用毛が組み合わされていてもよい。
【0029】
用毛の毛丈は、例えば、大人用で8mm〜15mm、子供用で6mm〜12mmとすることが好ましい。また、口腔内の使用性や使用感の点から、選択された用毛の直径が小さいほど、用毛の毛丈を短くすることが好ましい。また、使用感や、刷掃感、清掃効果、耐久性などの目的に応じて、太さの異なる複数本の用毛を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ネック部4は、ヘッド部2とハンドル部6とを接続する。ネック部4は、ヘッド部2との前端側境界からハンドル部6に向かい略同一径で延び、次いで拡径して、ハンドル部6との後端側境界に至るものである。後端側境界は、一例として、ネック部4の拡径の終点(即ち、平面視において、拡幅する部分の両縁を形成する直線の終点又は拡幅する部分の両縁を形成する曲線の曲がり方向が変化する位置(変曲点))である。
【0031】
ネック部4の幅は、一例として、3.0〜4.5mmが好ましく、3.0〜4.2mmがより好ましい。ネック部4の幅が前記下限値以上であると、ネック部4の強度が低下するのを抑制しやすくなり歯ブラシ1の耐久性が高められる。さらに、歯ブラシ1が軟弱になりすぎず、良好な使用感が得られやすくなる。また、ネック部4の幅が前記上限値以下であると、歯ブラシ1の口腔内での操作性が高められる。さらに、口腔内の隅々まで用毛を届かせることができ、口腔内の汚れ除去効果がより高められる。
なお、ネック部4の幅が一定でない場合、ネック部4の幅とはネック部4の最小の幅を意味する。
【0032】
ネック部4の厚さは、一例として、3.0〜4.5mmが好ましく、3.0〜4.2mmがより好ましい。厚さが前記下限値以上であると、ネック部4の強度が低下するのを抑制しやすくなり歯ブラシ1の耐久性が高められる。さらに、歯ブラシ1が軟弱になりすぎず、良好な使用感が得られやすくなる。また、ネック部4の厚さが前記上限値以下であると、歯ブラシ1の口腔内での操作性が高められる。さらに、口腔内の隅々まで用毛を届かせることができ、口腔内の汚れ除去効果がより高められる。
なお、ネック部4の厚さが一定でない場合、厚さとはネック部4の最小の厚さを意味する。
【0033】
ネック部4の長さは、ヘッド部の長さ等を勘案して決定でき、例えば、30〜90mmとなる長さとされる。ネック部4の長さが上記下限値以上であると、口腔内の隅々まで用毛を届かせやすくなり、口腔内の汚れ除去効果がより高められる。ネック部4の長さが上記上限値以下であると、歯ブラシ1の口腔内での操作性をより高められる。
【0034】
ハンドル部6は、ネック部4との境界から分岐して後端側に延びる複数(本実施形態では3つ)の把持片31a、31b、31c(適宜、把持片31と総称する)と、長尺状に形成されて後端側に延びる軟質部41とを備えている。把持片31a、31b、31cは、長さ方向の両端に対して中央部が外側に凸形状となる略円弧形状に形成されている。上記の外側とは、長さ方向と直交する断面において、把持片31a、31b、31cで囲まれた領域の中心から離れる側を意味する。把持片31a、31b、31cは、後端側の端部が互いに分離して設けられている。
【0035】
図3は、
図2におけるA−A線視断面図である。
図3に示されるように、軟質部41のYZ平面と平行な断面形状は、Y軸方向が長軸となる略楕円形状である。また、
図1および
図2に示されるように、軟質部41の平面視形状および側面視形状は、長さ方向の中央部が最も厚く、長さ方向の外側に向かうに従って、略円弧形状の外形輪郭で漸次薄くなる形状である。
【0036】
軟質部41は、軟質樹脂で形成されている。軟質樹脂としては、例えば、その硬度が、JIS K 7215 ショアAの硬度が30以下である軟質樹脂を用いるとよい。このような軟質樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系のエラストマー等のエラストマー樹脂やシリコーン樹脂を例示することができる。
【0037】
把持片31a、31b、31cは、軟質部41の外側の周囲に配置されている。把持片31aは、軟質部41の+Z側でY方向の略中央部に配置されている。把持片31bは、軟質部41の−Z側でY方向の中央部よりも+Y側に配置されている。把持片31cは、軟質部41の−Z側でY方向の中央部よりも−Y側に、把持片31bと略対称に配置されている。
【0038】
把持片31a、31b、31cは、植毛面20と直交する方向(すなわちZ方向)に互いに重複しない位置に配置されている。すなわち、把持片31a、31b、31cは、Z方向視において、互いに重ならない位置に配置されている。把持片31a、31b、31cにおける軟質部41と対向する面は、それぞれ軟質部41の外周面(断面視で略楕円形状)と面一に形成されている。把持片31a、31b、31cにおける軟質部41と対向する面と逆側の面は、それぞれ断面形状が軟質部41と対向する面の曲率よりも大きな曲率で外側に膨らんだ略円弧形状である。
【0039】
把持片31aは、先端側の近傍にX方向に延びる指当て部51を有している。指当て部51は、中央部が最も深く、縁部に向かうのに従って漸次浅くなる断面輪郭が略円弧形状の凹状曲面で形成されている。把持片31aの先端側に指当て部51が設けられることにより、掌で把持片31を把持した際に、例えば、親指を指当て部51に当てることでハンドル部6を安定して把持することができ、ブラッシング時の操作性が向上する。
【0040】
把持片31は、ヘッド部2およびネック部4とともに硬質樹脂で一体成形された硬質部50を構成する。このような硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等のうち、上記ショアAの硬度が30以上である樹脂を例示することができる。上記硬質樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
特に、把持片31a、31b、31cの厚さは、軟質部41の硬度を勘案して設定可能であり、把持片31をポリプロピレン樹脂とした場合、厚さは0.8〜1.2mm、好ましくは0.9〜1.0mmとすることができる。
【0041】
上記構成の歯ブラシ1のハンドル体10は、第1金型を用いて硬質部50を射出成形により成形する第1工程と、第2金型を用いて軟質部41を射出成形により成形する第2工程を経て製造される。
【0042】
第1工程で用いられる第1金型は、一例として、XY平面と平行でヘッド部2における植毛面20と裏面との間の位置に、一対の金型(例えば、固定型と可動型、あるいは上型と下型、以下では上型と下型と称する)の接合面であるパーティングラインが設定される。
図4に示されるように、第1金型M1は、硬質部50のうち、ハンドル部6を成形する領域については、主として植毛面20側の表面を成形する上型M11と、主として植毛面20と逆側の裏面を成形する下型M12とを有する。上型M11と下型M12とは、把持片31a、31b、31cを成形する領域においては、軟質部41の外周面に沿った面をパーティングラインとしている。
【0043】
上型M11は、把持片31aの植毛面11側の面を成する面32aと、把持片31bの軟質部41と対向する面を成形する面32bと、把持片31cの軟質部41と対向する面を成形する面32cとを有している。
【0044】
下型M12は、把持片31aの裏面側の面を成する面33aと、把持片31bの軟質部41と対向する面と逆側の面を成形する面33bと、把持片31cの軟質部41と対向する面と逆側の面を成形する面33cとを有している。
【0045】
上型M11と下型M12とが型締めされた際には、面32aと面33aとで囲まれた把持片31aを成形するためのキャビティ34aと、面32bと面33bとで囲まれた把持片31bを成形するためのキャビティ34bと、面32cと面33cとで囲まれた把持片31cを成形するためのキャビティ34cとが形成される。なお、図示は省略しているが、上型M11と下型M12とが型締めされた際には、ヘッド部2、ネック部4をそれぞれ成形するためのキャビティが形成されている。
【0046】
上型M11と下型M12とが型締めされた状態で金型内のキャビティに溶融された硬質樹脂を充填し、所定時間冷却した後に上型M11と下型M12とから離型させることにより、硬質部50が成形される。
【0047】
第1工程で第1金型M1で成形された硬質部50は、第2金型M2の内部に収容される。すなわち硬質部50の一部は、第2金型M2とともに軟質部41を成形するためのキャビティを形成する。
図5は、歯ブラシ1の幅方向の略中央においてXZ平面で断面した第2金型M2の断面図である。
図6は、ハンドル部6の長さ方向の中央において、XZ平面で断面した第2金型M2の断面図である。
【0048】
図5に示されるように、第2金型M2の上型M21は、ヘッド部2およびネック部4の植毛面20側を収容する収容部2M、4Mの一部と、把持片31aを収容する収容部31aMと、
図6に示されるように、軟質部41の植毛面20側の外周面を成形する面35とを有している。面35は、収容部31aMに収容された把持片31aの軟質部41と対向する面と面一に形成されている。
【0049】
収容部31aMにおける下型22と逆側には、吸引口61が開口している。吸引口61には、図示しない負圧吸引装置が接続されており、収容部31aMに収容された把持片31aを負圧吸引する。
図5に示されるように、吸引口61は、長さ方向に間隔をあけて複数(
図5では二つ)配置されている。
【0050】
第2金型M2の下型M22は、ヘッド部2およびネック部4の植毛面20側を収容する収容部2M、4Mの一部と、把持片31bを収容する収容部31bMと、把持片31cを収容する収容部31cMと、軟質部41の植毛面20側と逆側の外周面を成形する面36とを有している。面36は、収容部31bMに収容された把持片31b、および収容部31cMに収容された把持片31cの軟質部41と対向する面と面一に形成されている。
【0051】
把持片31a、31b、31cと、上型M21の面35と、下型M22の面36とは、軟質部41を成形するためのキャビティ41Mを形成している。
【0052】
収容部31bMにおける上型21と逆側には、吸引口62が開口している。吸引口62には、図示しない負圧吸引装置が接続されており、収容部31bMに収容された把持片31bを負圧吸引する。収容部31cMにおける上型21と逆側には、吸引口63が開口している。吸引口63には、図示しない負圧吸引装置が接続されており、収容部31cMに収容された把持片31cを負圧吸引する。吸引口62、63は、吸引口61と同様に、長さ方向に間隔をあけて複数(例えば二つ)配置されている。
【0053】
硬質部50は、上型M21と下型M22との内部で収容部2M、4M、収容部31aM、収容部31bMおよび収容部31cMに収容される。上型M21と下型M22との内部に収容された硬質部50の把持片31aは、吸引口61を介して負圧吸引装置により負圧吸引されて上型M21(収容部31aM)に保持される。上型M21と下型M22との内部に収容された硬質部50の把持片31b、31cは、吸引口62、63を介して負圧吸引装置により負圧吸引されて下型M22(収容部31bM、31cM)にそれぞれ保持される。
【0054】
硬質部50を収容する上型M21と下型M22とが型締めされた状態で金型内のキャビティに溶融された軟質樹脂を充填し、所定時間冷却した後に上型M21と下型M22とから離型させることにより、外側の周囲に把持片31a、31b、31が配置された軟質部41を含むハンドル体10が成形される。
【0055】
次いで、得られたハンドル体10のヘッド部2に、毛束を植毛する。毛束の植毛方法としては、毛束を二つ折りにしその間に挟み込まれた平線を植毛穴22に打ち込むことにより毛束を植設する平線式植毛、毛束の下端を植毛部となる溶融樹脂中へ圧入して固定する熱融着法、毛束の下端を加熱して溶融塊を形成した後に金型中に溶融樹脂を注入して植毛部を成形するインモールド法等が挙げられる。
【0056】
上記構成の歯ブラシ1を使用するにあたっては、ヘッド部2、ネック部4および把持片31a〜31cが硬質部50を構成しているため、ブラッシング時の剛性が確保され清掃力を保持しつつ、ハンドル部6を握りこむと、把持片31a〜31cが弾性変形して撓り、その弾性復元力が手のひらに伝わることで高いフィット感が付与される。特に、歯ブラシ1における把持片31a〜31cは、後端側端部が互いに分離されて拘束されていないため、把持片31a〜31cの撓りに伴う弾性復元力が効率的に手のひらに伝わる。
【0057】
また、上記構成の歯ブラシ1は、ハンドル部6を握りこむと、把持片31a〜31cの弾性変形に加えて、軟質部41についても弾性変形する。そのため、把持片31a〜31cおよび軟質部41の弾性復元力が合わさってハンドル部6全体で高いフィット感を得ることができる。ここで、例えば、把持片31a〜31cの後端側が連結されている場合には、把持片31a〜31cが周囲に配置された軟質部41が後端側において変形する空間が規制されてしまう。これに対して、本実施形態の歯ブラシ1では、把持片31a〜31cの後端側端部が互いに分離されているため、軟質部41の後端側が規制されることなく自由に変形可能となり、柔軟性が向上し高いフィット感の創出に寄与できる。
【0058】
さらに、本実施形態の歯ブラシ1では、把持片31a〜31cが軟質部41の外側の周囲に配置されているため、軟質部41が露出して使用者に触れる面積を小さくすることができる。そのため、本実施形態の歯ブラシ1では、軟質材料の経時変化により発生するブルーム/ブリードアウトに起因するベタツキで使用感が低下することを抑制できる。
【0059】
加えて、本実施形態の歯ブラシ1では、把持片31a〜31cが植毛面20と直交する方向に互いに重複しない位置に配置されているため、一部の金型部品が型の開閉方向と交差する方向に移動させる機構を設けることなく、上述したように、Z方向に開閉する金型のみでハンドル体10を成形することが可能となり、製造コストの低減に寄与できる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、歯ブラシ1の第2実施形態について
図7および
図8を参照して説明する。
これらの図において、
図1乃至
図6に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
図7は、第2実施形態に係る歯ブラシ1におけるハンドル部6をYZ平面と平行な面で断面した図である。
図7に示すように、ハンドル部6は、把持片31aからZ方向に延びる軸状部37aと、把持片31bからZ方向に延びる軸状部37bと、把持片31cからZ方向に延びる軸状部37cとを有している。軸状部37bの先端および軸状部37cの先端は、軟質部41の植毛面20側の外周面と面一に配置されている。
他の構成は、上記第1実施形態の歯ブラシ1と同様である。
【0062】
図8は、第2実施形態に係る歯ブラシ1におけるハンドル部6の長さ方向の中央において、XZ平面で断面した第2金型M2の断面図である。
図8に示されるように、第1工程で得られた硬質部50が上型M21と下型M22との内部に収容されときに、軸状部37aの先端は下型M22の面36に当接する。これにより、把持片31aは、撓んでキャビティ41Mに突出することなく、収容部31aMに収容されて保持される。同様に、硬質部50が上型M21と下型M22との内部に収容されときに、軸状部37bの先端および軸状部37cの先端は、上型M21の面35に当接する。これにより、把持片31bは、撓んでキャビティ41Mに突出することなく、収容部31bMに収容されて保持される。また、把持片31cは、撓んでキャビティ41Mに突出することなく、収容部31cMに収容されて保持される。
軸状部37は、ハンドル部6の長さ方向に間隔を開けて1以上設けることが好ましい。
また、軸状部37の断面形状は、円、楕円、四角など所望の形状を選択できる。
【0063】
この後、上型M21と下型M22とが型締めされた状態で金型内のキャビティに溶融された軟質樹脂を充填し、所定時間冷却した後に上型M21と下型M22とから離型させることにより、外側の周囲に把持片31a、31b、31が配置された軟質部41を含むハンドル体10が成形される。
【0064】
このように、本実施形態の歯ブラシ1では、上記第1実施形態の歯ブラシ1と同様の作用・効果が得られることに加えて、軸状部37a〜37cが第2金型M2に当接することで把持片31a〜31cをそれぞれ収容部31aM〜31cMに収容して保持させることができるため、負圧吸引装置等の把持片31a〜31cをそれぞれ収容部31aM〜31cMに収容するための機構を別途設ける必要がなくなり、製造に係る装置の大型化および高価格化を回避することが可能になる。
【0065】
[第3実施形態]
次に、歯ブラシ1の第3実施形態について
図9および
図10を参照して説明する。
これらの図において、
図7および
図8に示す第2実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
図9は、第3実施形態に係る歯ブラシ1におけるハンドル部6をYZ平面と平行な面で断面した図である。
図9に示すように、軸状部37aの先端は、軟質部41の裏面側の外周面に形成された窪み38aの底面と面一に配置されている。軸状部37bの先端は、軟質部41の植毛面20側の外周面に形成された窪み38bの底面と面一に配置されている。軸状部37cの先端は、軟質部41の植毛面20側の外周面に形成された窪み38cの底面と面一に配置されている。
他の構成は、上記第2実施形態の歯ブラシ1と同様である。
【0067】
図10は、第2実施形態に係る歯ブラシ1におけるハンドル部6の長さ方向の中央において、XZ平面で断面した第2金型M2の断面図である。
図10に示されるように、上型M21の面35には、窪み38bに対応する凸部39bと、窪み38cに対応する凸部39cとが設けられている。下型M22の面36には、窪み38aに対応する凸部39aが設けられている。
【0068】
上記の第1工程で得られた硬質部50が上型M21と下型M22との内部に収容されときに、軸状部37aの先端は下型M22における凸部39aの表面に当接する。これにより、把持片31aは、撓んでキャビティ41Mに突出することなく、収容部31aMに収容されて保持される。同様に、硬質部50が上型M21と下型M22との内部に収容されときに、軸状部37bの先端は、上型M21における凸部39bの表面に当接する。これにより、把持片31bは、撓んでキャビティ41Mに突出することなく、収容部31bMに収容されて保持される。また、硬質部50が上型M21と下型M22との内部に収容されときに、軸状部37cの先端は、上型M21における凸部39cの表面に当接する。これにより、把持片31cは、撓んでキャビティ41Mに突出することなく、収容部31cMに収容されて保持される。
【0069】
この後、上型M21と下型M22とが型締めされた状態で金型内のキャビティに溶融された軟質樹脂を充填し、所定時間冷却した後に上型M21と下型M22とから離型させることにより、外側の周囲に把持片31a、31b、31が配置された軟質部41を含むハンドル体10が成形される。
【0070】
このように、本実施形態の歯ブラシ1では、上記第2実施形態の歯ブラシ1と同様の作用・効果が得られることに加えて、軸状部37a〜37cの先端が窪み38a〜38cの底面と面一に配置されているため、把持片31a〜31cを握りこんだ際に、軟質部41が圧縮されて薄くなることで軸状部37a〜37cの先端が軟質部41の外周面から突出してしまうことを抑制することが可能になる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、把持片31a〜31cの後端側端部が互いに分離して設けられている構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、少なくとも一つの把持片が分離していればよい。後端側の端部が他の把持片と分離された把持片は、上述したように、ハンドル部6を握りこむと弾性変形して撓り、その弾性復元力が手のひらに伝わることで、全ての把持片の後端側端部が連結された場合と比較して、高いフィット感が付与される。
【0073】
また、上記実施形態では、三つの把持片31a〜31cを有する構成を例示したが、把持片は二つ以上であればよい。上述したように、製造コストの観点からは、把持片は少ない方が好ましい一方で、ベタツキを含む使用感の観点からは、例えば、三つ以上、五つ以下の把持片を配置することが好ましく、特に、上記実施形態で示した三つの把持片を配置することが製造コストおよび使用感を両立させる点からより好ましい。
【0074】
また、上記実施形態では、硬質部50を収容した第2金型M2を用いて、硬質部50と軟質部41とを一体的に成形する構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、軟質部41を別工程で単独で成形し、接着剤等を用いて軟質部41を外側の周囲に把持片31a〜31cが配置される位置に固定する構成であってもよい。