特許第6842909号(P6842909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842909
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】消防設備及び消防用ホース
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/02 20060101AFI20210308BHJP
   A62C 35/20 20060101ALI20210308BHJP
   F16L 11/127 20060101ALI20210308BHJP
   F16L 11/02 20060101ALI20210308BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20210308BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A62C31/02
   A62C35/20
   F16L11/127
   F16L11/02
   F16L11/12
   B32B1/08 B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-246807(P2016-246807)
(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公開番号】特開2018-99282(P2018-99282A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 賢
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−148927(JP,A)
【文献】 特開2002−172183(JP,A)
【文献】 特開昭51−129919(JP,A)
【文献】 実開昭50−129671(JP,U)
【文献】 実開平01−126489(JP,U)
【文献】 特開平01−265977(JP,A)
【文献】 実開平06−025689(JP,U)
【文献】 実開昭51−012017(JP,U)
【文献】 実開昭52−024215(JP,U)
【文献】 実開昭57−079287(JP,U)
【文献】 実開昭63−177377(JP,U)
【文献】 実開昭63−075684(JP,U)
【文献】 実開昭52−056999(JP,U)
【文献】 実開平01−078785(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00 − 99/00
F16L 9/00 − 11/26
B32B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消防用ホースの一端部にノズル及び管鎗本体を有する管鎗接続され、前記消防用ホースの他端部、水源から延びる給水路の先端にある開閉弁に接続される消防設備であって、
前記消防用ホースは、電気的に接地されている前記開閉弁と前記管鎗とを電気的に接続するアース線を有し、
前記管鎗本体の外周面には、滑り止め機能を有する第1絶縁被覆層が被覆形成され
前記管鎗には、前記消防用ホースの差し金具が脱着自在に差込結合される受け金具が設けられ、前記受け金具の外周面の最大外径部位には、滑り止め機能を有する第2絶縁被覆層が被覆形成されている消防設備。
【請求項2】
消防用ホースの一端部にノズル及び管鎗本体を有する管鎗が接続され、前記消防用ホースの他端部が、水源から延びる給水路の先端にある開閉弁に接続される消防設備であって、
前記消防用ホースは、電気的に接地されている前記開閉弁と前記管鎗とを電気的に接続するアース線を有し、
前記管鎗本体の外周面には、滑り止め機能を有する第1絶縁被覆層が被覆形成され、
前記開閉弁の操作ハンドルの把持部には、滑り止め機能を有する第3絶縁被覆層が被覆形成されている消防設備。
【請求項3】
消防用ホースの一端部にノズル及び管鎗本体を有する管鎗が接続され、前記消防用ホースの他端部が、水源から延びる給水路の先端にある開閉弁に接続され、
前記消防用ホースは、電気的に接地されている前記開閉弁と前記管鎗とを電気的に接続するアース線を有し、
前記管鎗本体の外周面には、滑り止め機能を有する第1絶縁被覆層が被覆形成されている消防設備に用いられる前記消防用ホースであって、
前記消防用ホースのジャケットが、環状に配置された複数本の経糸と、当該経糸に対して螺旋状に織り込まれた1本又は複数本の緯糸とからなる筒状織物から構成され、この筒状織物の緯糸の1本又は複数本が、前記アース線に置き換えて織成され、前記ジャケットの外面には、樹脂製の保護層が密着状態で被覆形成されている消防用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防用ホースの一端部にノズルを接続し、前記消防用ホースの他端部を水源に接続する消防設備及びそれに用いられる消防用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーの一つである太陽熱を利用した太陽光発電システムが一般住宅において急速に普及が進み、住宅以外でも産業用分野や公共施設分野等において導入が進んでいる。この太陽光発電システムは、太陽電池モジュール(太陽光パネル)により光エネルギーを電気エネルギーに変換しているため、外部から発電を遮断できない。そのため、太陽光発電システム又はそれを備えた建物の火災が発生した際、水を使った消火活動が行われるが、このとき、非特許文献1の「5.2 消防活動の危険性」の「(1)感電の危険性」において、棒状放水で水が粒にならずに建物等に掛かる場合は、この棒状放水を伝わって消火活動者(消防隊員、建物使用者(施設管理人や保安員等))が感電する可能性が指摘されている。
【0003】
上述の消防活動時の感電の防止対策として、太陽電池モジュールの表面を不燃性の遮光シートで覆って遮光し、太陽電池モジュールの出力電圧を低下させてから消火活動を開始する対策案、或いは、太陽電池モジュール等を物理的に破壊してから消火活動を開始する対策案が考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】第16回消防防災研究講演会資料(平成25年2月)「太陽光発電システムを設置した住宅の火災と消防活動の問題点」消防研究センター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前者の対策案では、太陽電池モジュールの表面を遮光シートで覆うまでに火災が進行し、且つ、遮光シートによる被覆作業中の消火活動者の安全を確保することができない不都合がある。
また、後者の対策案では、太陽電池モジュール等の破壊時に感電するリスクがあり、且つ、太陽電池モジュール等の破壊完了までに火災が進行する不都合がある。さらに、消火後に、太陽電池モジュール等を含む太陽光発電システムの再設置によるコスト負担が増加する問題もある。
【0006】
そのため、現状での対策としては、放水時に距離をとる、噴霧放水を行う、絶縁性の高い手袋を使用する等の対策が講じられているが、いずれの対策も、太陽電池モジュールに放水したときに感電するリスクは残っている。
また、上述の消防活動時の感電の問題は、太陽光発電システム以外の電気設備や電気自動車、燃料電池自動車等の活線部を備えた消火対象域の放水時においても発生する可能性がある。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ノズルを含む管鎗を把持している消火活動者の感電を防ぐことのできる消防設備及びそれに用いられる有用な消防用ホースを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1特徴構成は、消防用ホースの一端部にノズルを接続し、前記消防用ホースの他端部を水源に接続する消防設備であって、
前記ノズルを電気的に接地する第1接地手段が備えられている消防設備である点にある
【0009】
上記構成によれば、消火対象域への放水消火時に、消火対象域中に存在する電気設備等の活線部とノズルとが棒状放水を介して電気的に接続状態になり、活線部から棒状放水を介してノズルに漏洩電流が流れる可能性がある。このとき、ノズルに流れた漏洩電流を第1接地手段で大地にスムーズに放電することができるので、ノズルを含む管鎗を把持している消火活動者の感電を防ぐことができる。
【0010】
本発明による第2特徴構成は、前記消防用ホースと前記水源との間の給水路に設けられた開閉部を電気的に接地する第2接地手段が備えられている点にある
【0011】
上記構成によれば、消火活動時に、消防用ホースと水源との間の給水路に設けられた開閉部に漏洩電流が流れる可能性がある。このとき、開閉部に流れた漏洩電流を第2接地手段で大地にスムーズに放電することができるので、開閉部を開閉操作している消火活動者の感電を防ぐことができる。
【0012】
本発明による第3特徴構成は、前記消防用ホースには、前記第1接地手段のアース用導電経路の一部を構成する状態で前記ノズルと前記開閉部とを電気的に接続するアース線が配設され、
前記第1接地手段のアース用導電経路の残部は、前記第2接地手段のアース用導電経路をもって構成されている点にある
【0013】
上記構成によれば、消火対象域への放水消火時に、ノズルに流れた漏洩電流を、第1接地手段のアース用導電経路の一部を構成する状態で消防用ホースに配設されたアース線、開閉部、第2接地手段のアース用導電経路を経由して大地に放電することができる。それ故に、ノズルを電気的に接地する第1接地手段及び開閉部を電気的に接地する第2接地手段をそれぞれ別系統で単独に構成する場合に比較して、消火活動者の感電を防ぐことのできる消防設備を構造面、コスト面で有利に構成することができる。
【0014】
本発明による第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれか1つに記載の消防設備に用いられる前記消防用ホースであって、
ホース径方向で層状に構成される複数のホース構成層の外面側又は内面側若しくは層間に前記第1接地手段のアース用導電経路の一部を構成するアース線が配設されている消防用ホースである点にある
【0015】
上記構成によれば、複数のホース構成層で構成される消防用ホースの外面側又は内面側若しくはホース構成層の層間を利用してアース線を適切に配設することができる。
【0016】
本発明による第5特徴構成は、前記複数のホース構成層は、ホース本体とこれの外面又は内面に密着状態で被覆形成される保護層とを備え、
前記ホース本体と前記保護層との層間に前記アース線が配設されている点にある
【0017】
上記構成によれば、ホース本体の外面又は内面を密着状態で保護する保護層でアース線も同時に保護することができるので、アース線の被覆構造の簡素化を図ることができ、且つ、保護層の密着力でアース線を所定位置に確実に保持することができる。
【0018】
本発明による第6特徴構成は、前記複数のホース構成層は、内側ホース体とこれに外套される外側ホース体とを備え、
前記内側ホース体と前記外側ホース体との層間に前記アース線が配設されている点にある
【0019】
上記構成によれば、消防用ホースの耐磨耗性を高めるための外側ホース体でアース線を保護することができるとともに、内側ホース体に外側ホース体を外套するときにアース線の配設を完了することができる
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】消防設備の第1実施形態を示す説明図
図2】消防設備の第1実施形態を示す要部の拡大図
図3図2におけるIII−III線での要部の拡大断面図
図4】消防設備の第2実施形態を示す説明図
図5】消防設備の第3実施形態を示す説明図
図6】消防設備の第4実施形態(a)〜第8実施形態(e)をそれぞれ示す拡大断面図
図7】消防設備の第9実施形態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
図1は、電気設備等の活線部の一例である太陽光発電システム200の太陽電池モジュール(太陽光パネル)201の火災を想定した本発明の消防設備100の説明図である。本実施形態の消防設備100では、水源として消火栓内蔵型格納箱1内に装備されている消火栓20が用いられ、消火栓20の給水管21には、建築物の地下等に設置されている図外の防火水槽や地中に埋設される水道管等から消火栓20の送水口に至る給水路を開閉する開閉部としての金属製の開閉弁22が設けられている。
この開閉弁22の送水口には、複数のホース構成層で構成される可撓性の消防用ホース30の基端部が接続され、消防用ホース30の先端部には、ノズル42を備えた金属製(アルミ合金製又は銅合金製等)の管鎗40が接続されている。
【0022】
そして、本実施形態の消防設備100には、図1図2に示すように、ノズル42を含む管鎗40を電気的に接地する第1接地手段50と、消火栓20の開閉弁22を電気的に接地する第2接地手段60とが備えられている。消防用ホース30には、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を構成する状態でノズル42を含む管鎗40と開閉弁22とを電気的に接続するアース線70が配設され、第1接地手段50のアース用導電経路51の残部は、第2接地手段60のアース用導電経路61をもって構成されている。
【0023】
そのため、消火対象域への放水消火時に、消火対象域中に存在する太陽光発電システム200の太陽電池モジュール201と管鎗40のノズル42とが棒状放水を介して電気的に接続状態になり、太陽電池モジュール201側から棒状放水を介して管鎗40のノズル42に漏洩電流が流れたときでも、管鎗40のノズル42に流れた漏洩電流を第1接地手段50のアース用導電経路51を経由して大地にスムーズに放電することができ、管鎗40を把持している消火活動者の感電を防ぐことができる。
また、消火活動時に、開閉弁22に漏洩電流が流れたときも、開閉弁22に流れた漏洩電流を第2接地手段60のアース用導電経路61を経由して大地にスムーズに放電することができ、開閉弁22を開閉操作している消火活動者の感電を防ぐことができる。
【0024】
しかも、管鎗40のノズル42に流れた漏洩電流を、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を構成する状態で消防用ホース30に配設されたアース線70、開閉弁22、第2接地手段60のアース用導電経路61を経由して大地に放電することができる。それ故に、消火活動者の感電を防ぐことのできる消防設備100を、ノズル42を含む管鎗40を電気的に接地する第1接地手段50と開閉弁22を電気的に接地する第2接地手段60とをそれぞれ別系統で独立して構成する場合に比較して構造面、コスト面で有利に構成することができる。
【0025】
管鎗40は、図2に示すように、先細り状のテーパーパイプ状に形成された金属製の管鎗本体41と、この管鎗本体41の先端部に水密状態で嵌合接続された先絞り状の金属製のノズル42と、管鎗本体41の基端部に水密状態で嵌合固定された金属製の円筒状の受け金具45とを主要構成として備えている。
ノズル42と管鎗本体41の先端部との嵌合接続部、及び管鎗本体41の基端部と受け金具45との嵌合固定部の各々は、通電可能な導電接続状態に構成されている。そのため、管鎗40のノズル42に流れた漏洩電流は、ノズル42→嵌合接続部→管鎗本体41→嵌合固定部→受け金具45に沿って流れる。
【0026】
消火活動時の管鎗40の把持部となる管鎗本体41の外周面には、滑り止め機能を有する紐やゴム等の電気絶縁材料で製作される第1絶縁被覆層43が被覆形成されているとともに、受け金具45の外周面の最大外径部位には、同じく滑り止め機能を有するゴム等の電気絶縁材料で製作される第2絶縁被覆層44が被覆形成されている。
また、消火栓20の開閉弁22の開閉用の操作ハンドル22Aの把持部にも、滑り止め機能を有するゴム等の電気絶縁材料で製作される第3絶縁被覆層24が被覆形成されている。
【0027】
そして、図1図2に示すように、消防用ホース30の一端部には金属製の円筒状の受け金具31が設けられ、消防用ホース30の他端部には金属製の円筒状の差し金具32が設けられている。
消防用ホース30の他端部の差し金具32は、図2に示すように、管鎗40の後端部の受け金具45に脱着自在に差込結合され、この差込結合状態では、消防用ホース30の差し金具32と管鎗40の受け金具45とが通電可能な導電接続状態に構成されている。この導電接続状態にある消防用ホース30の差し金具32と管鎗40の受け金具45とをもって、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部としてのホース先端結合側導電経路部51Aが構成されている。
【0028】
消防用ホース30の一端部の受け金具31は、図2に示すように、消火栓20の開閉弁22の送水口に設けた金属製の円筒状の差し金具23に脱着自在に差込結合され、この差込結合状態では、消防用ホース30の受け金具31と開閉弁22の差し金具23とが通電可能な導電接続状態に構成されている。この導電接続状態にある消防用ホース30の受け金具31と開閉弁22の差し金具23とをもって、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部としてのホース基端結合側導電経路部51Bが構成されている。
【0029】
また、消防用ホース30が継ぎ足される場合には、接続対象の一方の消防用ホース30の受け金具31が他方の消防用ホース30の差し金具32に脱着自在に差込結合され、この差込結合状態では、一方の消防用ホース30の受け金具31と他方の消防用ホース30の差し金具32とが通電可能な導電接続状態に構成されている。この導電接続状態にある一方の消防用ホース30の受け金具31と他方の消防用ホース30の差し金具32とをもって、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部としてのホース中間結合側導電経路部51Cが構成されている。
【0030】
本願発明が対象とする消防用ホース30は、消防用平ホースと消防用濡れホースと消防用保形ホースとに分類される。さらに、消防用平ホースは、平ホース、外面塗装ホース、ダブルジャケットホース、外面被覆ホースに分類される。本願発明の消防設備100においては、上述の何れの消防用ホース30も好適に用いることができるが、本実施形態においては、消防用ホース30として平ホースを用いている。
【0031】
この平ホースのホース本体は、図3に示すように、綿、合成繊維等の糸を経糸30aと緯糸30bにして交織(平織)した筒状のジャケット(筒状の織物)30Aから構成されている。このジャケット30Aの内面には、当該内面に密着状態で被覆形成される保護層の一例で、送水時に漏水を防ぐためのゴムや合成樹脂等の筒状のライニング層30Bが接着剤等で密着形成されている。また、ジャケット30Aの外面には、当該外面に密着状態で被覆形成される保護層の一例で、耐摩耗性の樹脂を塗布してなるコーティング層(又はカバリング層)30Cが密着形成されている。
そのため、上述の平ホースでは、コーティング層30Cとホース本体を構成するジャケット30Aとライニング層30Bとが外面側から内面側にかけて順番に配置された三層構造のホース構成層から構成されている。
【0032】
そして、図2図3に示すように、ジャケット30Aの外面とコーティング層30Cとの間には、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を構成するアース線70が、消防用ホース30の全長に亘って配設され、アース線70の両端部は、消防用ホース30の両端部の差し金具32及び受け金具31に通電可能に導電接続されている。
そのため、消防用ホース30の全長に亘って配設されたアース線70をもって、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部であるホース側導電経路部51Dが構成されている。
また、上述の構成により、ジャケット30Aの外面を密着状態で保護する耐摩耗性のコーティング層30Cでアース線70も同時に保護することができるので、アース線70の被覆構造の簡素化を図ることができる。
【0033】
尚、本実施形態においては、ジャケット30Aの外面とコーティング層30Cとの間にアース線70を配設したが、このアース線70を消防用ホース30のコーティング層30Cの外面に接着剤やバンド等で配設してもよい。
【0034】
そして、図2に示すように、第1接地手段50のアース用導電経路51における消火栓20の開閉弁22までの一部は、管鎗40、下流側の消防用ホース30における差し金具32、アース線70、受け金具31、上流側の消防用ホース30における差し金具32、アース線70、受け金具31をもって構成され、上流側の消防用ホース30の受け金具31は、開閉弁22の差し金具23に導電接続状態で差込結合されている。
そのため、第1接地手段50のアース用導電経路51の残部は、第2接地手段60のアース用導電経路61をもって兼用構成されている。
第2接地手段60のアース用導電経路61は、開閉弁22に導電接続されている第1接地線62と、地中の所定深さに埋設された接地電極63に導電接続されている第2接地線64とを端子箱65で通電可能に電気的に接続して構成されている。
【0035】
尚、図1中の202は太陽光発電システム200の接続箱、203は太陽光発電システム200のパワーコンディショナである。
【0036】
また、上述の実施形態では、第1接地手段50のアース用導電経路51における一部を、第2接地手段60のアース用導電経路61をもって兼用構成したが、ノズル42を含む管鎗40を電気的に接地する第1接地手段50のアース用導電経路51と、開閉弁22を電気的に接地する第2接地手段60のアース用導電経路61とをそれぞれ別系統で独立して構成してもよい。
【0037】
さらに、第1接地手段50のアース用導電経路51を独立して構成する場合において、上流側の消防用ホース30の差し金具32と下流側の消防用ホース30の受け金具31との差込結合をもって構成されるホース中間結合側導電経路部51Cを、地中の所定深さに埋設されている接地電極63に通電可能に導電接続して実施してもよい。
【0038】
また、上述の実施形態の消火栓内蔵型格納箱1は、屋内消火栓又は屋外消火栓のいずれでもよい。さらに、この消火栓内蔵型格納箱1の代わりに地上式消火栓や地下式消火栓等を用いてもよい。
【0039】
〔第2実施形態〕
図4は別実施形態の消防設備100を示す。この消防設備100では、水源として、地中に埋設された水道管10に接続され、且つ、マンホール11内に配置された金属製の地下式の消火栓20が用いられている。消火栓20には、水道管10から消火栓20の送水口に至る給水路を開閉する開閉部としての金属製の開閉弁22が設けられている。
消火栓20には、地中の所定深さに埋設された接地電極63に導電接続されている第3接地線66が通電可能に電気的に接続されている。
【0040】
また、消防ポンプ自動車300の給水口301と消火栓20の開閉弁22の送水口とは、第1実施形態で説明したアース線70を備えた消防用ホース30で接続され、消防ポンプ自動車300の放水口302には、アース線70を備えた二本(ホース本数は一本又は三本以上の複数本であってもよい)の消防用ホース30が接続されている。そのうち、下流側の消防用ホース30の先端部には、ノズル42を備えた金属製の管鎗40が接続されている。
給水側の消防用ホース30のアース線70と放水側となる上流側の消防用ホース30のアース線70とは、消防ポンプ自動車300側の導電接続部(図示せず)を介して通電可能に電気的に接続され、さらに、給水側の消防用ホース30のアース線70と消火栓20とも通電可能に電気的に接続されている。
【0041】
そして、ノズル42を含む管鎗40を電気的に接地する第1接地手段50のアース用導電経路51は、管鎗40、放水側となる下流側の消防用ホース30における差し金具32、アース線70、受け金具31、同じく放水側となる上流側の消防用ホース30における差し金具32、アース線70、消防ポンプ自動車300側の導電接続部(図示せず)、給水側の消防用ホース30のアース線70をもって主要部が構成されている。
また、消火栓20の開閉弁22を電気的に接地する第2接地手段60のアース用導電経路61は、消火栓20と第3接地線66と接地電極63とをもって主要部が構成されている。
この第2実施形態においても、第1接地手段50のアース用導電経路51の残部は、第2接地手段60のアース用導電経路61をもって兼用構成されている。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
また、消防ポンプ自動車300の代わりに水槽付消防車を用いてもよい。
【0042】
〔第3実施形態〕
図5は別実施形態の消防設備100を示す。この消防設備100では、水源として、地中に埋設された防火水槽80が用いられている。
消防ポンプ自動車300の給水口301には、第1実施形態で説明したアース線70を備えた消防用ホース30の基端部が接続され、この消防用ホース30の先端部側の差し金具32には、アース線70を備えていない通常の消防用ホース35の基端部に設けた受け金具31が接続されている。そのうち、通常の消防用ホース35の給水口部35Aを防火水槽80の取水口80Aから槽内の水中に挿入する。
また、防火水槽80の取水口80Aの周囲の所定部位には、地中の所定深さに埋設された接地電極63に第4接地線67を介して通電可能に電気的に接続された端子箱65を設け、この端子箱65に、給水側のアース線70を備えた消防用ホース30の差し金具32を通電可能に電気的に接続する。
【0043】
消防ポンプ自動車300の放水口302には、アース線70を備えた二本(ホース本数は一本又は三本以上の複数本であってもよい)の消防用ホース30が接続され、そのうち、下流側の消防用ホース30の先端部には、ノズル42を備えた金属製の管鎗40が接続されている。
給水側の消防用ホース30のアース線70と放水側における上流側の消防用ホース30のアース線70とは、消防ポンプ自動車300側の導電接続部(図示せず)を介して通電可能に電気的に接続され、さらに、給水側のアース線70を備えた消防用ホース30の差し金具32と端子箱65とが通電可能に電気的に接続されている。
【0044】
そして、ノズル42を含む管鎗40を電気的に接地する第1接地手段50のアース用導電経路51は、管鎗40、放水側となる下流側の消防用ホース30における差し金具32、アース線70、受け金具31、同じく放水側となる上流側の消防用ホース30における差し金具32、アース線70、消防ポンプ自動車300側の導電接続部(図示せず)、給水側の消防用ホース30のアース線70、差し金具32、第4接地線67、接地電極63をもって主要部が構成されている。
【0045】
尚、上述の第3実施形態の消防設備100では、ノズル42を含む管鎗40を電気的に接地する第1接地手段50のみが設けられた実施形態を提示している。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0046】
〔その他の実施形態〕
(1)図6は、消防用ホース30に対するアース線70の配置を代えた別実施形態を示す。
図6(a)に示す第4実施形態では、ジャケット30Aの内面を保護するライニング層30Bに、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を構成するアース線70を接着剤等で固着してある。
図6(b)に示す第5実施形態では、消防用ホース30の内部空間30Dに、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を構成するアース線70を挿入配置してある。
図6(c)に示す第6実施形態では、ジャケット30Aの内面とライニング層30Bとの間に、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を構成するアース線70が配置されている。
この実施形態の場合、ジャケット30Aの内面を密着状態で保護するライニング層30Bでアース線70も同時に保護することができるので、アース線70の被覆構造の簡素化を図ることができる。
図6(d)に示す第7実施形態では、消防用ホース30のジャケット30Aを構成する経糸30aの1本又は複数本が、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を構成するアース線70に置き換えて交織(平織)されている。
この実施形態の場合、ジャケット30Aの編成と同時にアース線70の配設が終了する。
図6(e)に示す第8実施形態では、消防用ホース30のジャケット30Aが、環状に配置された複数本の経糸30aと、当該経糸30aに対して螺旋状に織り込まれた1本又は複数本の緯糸30bとからなる筒状織物から構成され、この筒状織物の緯糸30bの1本又は複数本が、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を構成するアース線70に置き換えて織成されている。
この実施形態の場合も、ジャケット30Aの編成と同時にアース線70の配設が終了する。
【0047】
(2)図7は、消防用ホース30としてダブルジャケットホースを用いた第9実施形態を示す。この実施形態では、消防用ホース30を構成する複数のホース構成層を、内側ホース体の一例である内側ジャケット30Eとこれに外套される外側ホース体の一例である外側ジャケット30Fとから構成し、内側ジャケット30Eと外側ジャケット30Fとの層間には、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を構成するアース線70が配設されている。
この実施形態の場合、消防用ホース30の耐磨耗性を高めるための外側ジャケット30Fでアース線70を保護することができるとともに、内側ジャケット30Eに外側ジャケット30Fを外套するときにアース線70の配設を完了することができる。
【0048】
(3)上述の各実施形態では、水源として消火栓20、防火水槽80を例に挙げたが、プール等の他の人口水利であっても良く、さらに、河川、池、沼、海等の自然水利であってもよい。
【0049】
(4)上述の各実施形態では、水源側の地中に接地電極63が予め埋設されている場合を例示したが、接地電極63を備えたアース回路設備が存在しない場合には、水源側の現場において、地中の所定深さに接地電極63を埋設し、この接地電極63から導出されたアース栓と消防用ホース30側のアース線70とを接続する。
【0050】
(5)上述の各実施形態では、第1接地手段50のアース用導電経路51の一部を、消防用ホース30に設けられたアース線70で構成したが、アース線70を備えていない通常の消防用ホース35の場合は、ノズル42を備えた管鎗40と接地電極63とをアース線で直接電気的に接続するとよい。
【0051】
(6)上述の各実施形態では、活線部を備えた消火対象として太陽光発電システム200を例示したが、本発明の消防設備100は、太陽光発電システム200以外の電気設備や電気自動車、燃料電池自動車等の火災にも有効である。
【符号の説明】
【0052】
20 水源(消火栓)
22 開閉部(開閉弁)
30 消防用ホース
30A ホース構成層(ホース本体、ジャケット)
30B ホース構成層(保護層、ライニング層)
30C ホース構成層(保護層、コーティング層)
30E 内側ホース体(内側ジャケット)
30F 外側ホース体(外側ジャケット)
42 ノズル
50 第1接地手段
51 アース用導電経路
60 第2接地手段
61 アース用導電経路
70 アース線
80 水源(防火水槽)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7