(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842910
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】水陸両用車
(51)【国際特許分類】
B60F 3/00 20060101AFI20210308BHJP
B63H 11/08 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
B60F3/00 A
B63H11/08 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-247074(P2016-247074)
(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公開番号】特開2018-99993(P2018-99993A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進一
(72)【発明者】
【氏名】尾上 光夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 徹也
(72)【発明者】
【氏名】松永 高志
(72)【発明者】
【氏名】中条 克彦
(72)【発明者】
【氏名】大村 太一
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕太
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−096341(JP,A)
【文献】
特表2016−505442(JP,A)
【文献】
特開2013−199217(JP,A)
【文献】
特表2007−503360(JP,A)
【文献】
実開平05−026572(JP,U)
【文献】
特表2008−516847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60F 3/00
B63H 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体中に配置されている原動機と、
前記原動機よりも前側に配置されている駆動輪と、
前記原動機よりも後側に配置されている水上推進装置と、
前記車体中で、前記原動機よりも前側に配置され、前記原動機からの動力を前記駆動輪に伝える駆動輪用変速機と、
前記車体中で、前記原動機よりも後側に配置され、前記原動機からの動力を前記水上推進装置に伝える推進用変速機と、
を備え、
前記推進用変速機は、前記原動機からの動力を前記駆動輪用変速機への動力と前記水上推進装置への動力とに分配する動力分配部を有し、
さらに、前記原動機から後側に延びて、前記原動機の動力を前記推進用変速機に伝える第一動力伝達軸と、
前記動力分配部から前側に延びて、前記動力分配部から前記駆動輪用変速機への動力を前記駆動輪用変速機に伝える第二動力伝達軸と、
を備え、
前記第一動力伝達軸と前記第二動力伝達軸とは、前記車体の左右方向の中央位置に配置されている、
る水陸両用車。
【請求項2】
請求項1に記載の水陸両用車において、
前記車体の前後方向で、前記車体の前縁と前記車体の後縁との中央位置を含む領域に、前記原動機が配置されている、
水陸両用車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水陸両用車において、
前記第二動力伝達軸は、前記原動機の下側を通る、
水陸両用車。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の水陸両用車において、
前記原動機は、前記原動機内の摺動部における摩擦を減らす潤滑油が貯められるオイルパンを有し、
前記第二動力伝達軸は、前記オイルパンを貫通する、
水陸両用車。
【請求項5】
車体と、
前記車体中に配置されている原動機と、
前記原動機よりも前側に配置されている駆動輪と、
前記原動機よりも後側に配置されている水上推進装置と、
前記車体中で、前記原動機よりも前側に配置され、前記原動機からの動力を前記駆動輪に伝える駆動輪用変速機と、
前記車体中で、前記原動機よりも後側に配置され、前記原動機からの動力を前記水上推進装置に伝える推進用変速機と、
を備え、
前記推進用変速機は、前記原動機からの動力を前記駆動輪用変速機への動力と前記水上推進装置への動力とに分配する動力分配部を有し、
さらに、前記原動機から後側に延びて、前記原動機の動力を前記推進用変速機に伝える第一動力伝達軸と、
前記動力分配部から前側に延びて、前記動力分配部から前記駆動輪用変速機への動力を前記駆動輪用変速機に伝える第二動力伝達軸と、
を備え、
前記原動機は、前記原動機内の摺動部における摩擦を減らす潤滑油が貯められるオイルパンを有し、
前記第二動力伝達軸は、前記オイルパンを貫通する、
水陸両用車。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の水陸両用車において、
前記車体は、前記原動機よりも前側であって前記駆動輪用変速機よりも上側に配置され、運転者が入る運転室を有する、
水陸両用車。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の水陸両用車において、
前記車体は、前記原動機よりも後側であって前記推進用変速機よりも上側に配置され、搭乗者が入る搭乗室又は荷が入る荷室を有する、
水陸両用車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上走行及び水上航行が可能な水陸両用車に関する。
【背景技術】
【0002】
水陸両用車としては、例えば、以下の特許文献1に記載されている水陸両用車がある。この水陸両用車は、一対の駆動輪と、水上推進装置と、エンジンと、変速機と、動力分配装置と、を備えている。一対の駆動輪は、エンジンよりも前側に配置されている。変速機は、エンジンよりも後側に配置されている。動力分配装置は、変速機よりも後側に配置されている。この動力分配装置は、変速機からの動力を駆動輪への動力と水上推進装置への動力とに分配する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016−505442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水陸両用車には、陸上走行安定性の他、水上航行安定性も求められる。
【0005】
そこで、本発明は、陸上走行安定性及び水上航行安定性の向上を図ることができる水陸両用車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための発明に係る一態様としての水陸両用車は、
車体と、前記車体中に配置されている原動機と、前記原動機よりも前側に配置されている駆動輪と、前記原動機よりも後側に配置されている水上推進装置と、前記車体中で、前記原動機よりも前側に配置され、前記原動機からの動力を前記駆動輪に伝える駆動輪用変速機と、前記車体中で、前記原動機よりも後側に配置され、前記原動機からの動力を前記水上推進装置に伝える推進用変速機と、を備える。
前記推進用変速機は、前記原動機からの動力を前記駆動輪用変速機への動力と前記水上推進装置への動力とに分配する動力分配部を有する。さらに、前記原動機から後側に延びて、前記原動機の動力を前記推進用変速機に伝える第一動力伝達軸と、前記動力分配部から前側に延びて、前記動力分配部から前記駆動輪用変速機への動力を前記駆動輪用変速機に伝える第二動力伝達軸と、を備える。前記第一動力伝達軸と前記第二動力伝達軸とは、前記車体の左右方向の中央位置に配置されている。
【0007】
車体内に配置される複数の部品のうち、原動機、駆動輪用変速機、及び推進用変速機は、いずれも重量物である。特に、原動機は、車体内に配置される複数の部品のうちで最も重い最重量物である。当該水陸両用車では、車体の前後方向における駆動輪用変速機と推進用変速機との間の位置に、最重量物である原動機が配置されている。このため、最重量物が車体の前後方向におけるほぼ中央に位置することになる。また、当該水陸両用車では、原動機の前側に重量物である駆動輪用変速機が配置され、原動機の後側に重量物である推進用変速機が配置されているので、水陸両用車の重心も車体の前後方向におけるほぼ中央に位置することになる。このため、当該水陸両用車では、車体の前後方向におけるバランスがとれる。
【0008】
車体に配置される複数の部品のうちで最重量物を中心にして車両が旋回する方が、最重量物を中心にしないで車両が旋回する場合よりも、旋回性を高めることができる。しかも、当該水陸両用車では、最重量物である原動機を基準にして、前側と後側に重量物が分配配置されている。このため、当該水陸両用車では、最重量物である原動機を基準にして前側又は後側に複数の重量物がまとめて配置されている場合に比べて、最重量物である原動機を基準にした車体の旋回性能を高めることができる。
【0009】
よって、当該水陸両用車では、陸上走行安定性のみならず、水上航行安定性も高めることができる。
【0010】
ここで、前記一態様の前記水陸両用車において、前記車体の前後方向で、前記車体の前縁と前記車体の後縁との中央位置を含む領域に、前記原動機が配置されていてもよい。
【0011】
当該水陸両用車では、車体の前後方向で、よりバランスすると共に、車体の旋回性能をより高めることができる。
【0012】
なお、原動機は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の往復内燃機関のほか、ガスタービンエンジンでもよい。
【0014】
前記動力分配部を有する前記水陸両用車において、前記第二動力伝達軸は、前記原動機の下側を通ってもよい。
【0015】
また、前記動力分配部を有する前記水陸両用車において、前記原動機は、前記原動機内の摺動部における摩擦を減らす潤滑油が貯められるオイルパンを有し、前記第二動力伝達軸は、前記オイルパンを貫通してもよい。
【0016】
当該水陸両用車では、第二動力伝達軸が原動機の下側ではなく、原動機の中を貫通する。言い換えると、当該水陸両用車では、第二動力伝達軸が、車体の高さ方向で原動機が存在する領域内に配置されている。このため、最重量物である原動機の位置を下げることができ、陸上走行安定性及び水上航行安定性をさらに高めることができる。
【0017】
前記目的を達成するための発明に係る他の態様としての水陸両用車は、
車体と、前記車体中に配置されている原動機と、前記原動機よりも前側に配置されている駆動輪と、前記原動機よりも後側に配置されている水上推進装置と、前記車体中で、前記原動機よりも前側に配置され、前記原動機からの動力を前記駆動輪に伝える駆動輪用変速機と、前記車体中で、前記原動機よりも後側に配置され、前記原動機からの動力を前記水上推進装置に伝える推進用変速機と、を備える。前記推進用変速機は、前記原動機からの動力を前記駆動輪用変速機への動力と前記水上推進装置への動力とに分配する動力分配部を有する。さらに、前記原動機から後側に延びて、前記原動機の動力を前記推進用変速機に伝える第一動力伝達軸と、前記動力分配部から前側に延びて、前記動力分配部から前記駆動輪用変速機への動力を前記駆動輪用変速機に伝える第二動力伝達軸と、を備える。前記原動機は、前記原動機内の摺動部における摩擦を減らす潤滑油が貯められるオイルパンを有する。
前記第二動力伝達軸は、前記オイルパンを貫通する。
【0019】
また、以上のいずれかの前記水陸両用車において、前記車体は、前記原動機よりも前側であって前記駆動輪用変速機よりも上側に配置され、運転者が入る運転室を有してもよい。
【0020】
また、以上のいずれかの前記水陸両用車において、前記車体は、前記原動機よりも後側であって前記推進用変速機よりも上側に配置され、搭乗者が入る搭乗室又は荷が入る荷室を有してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、陸上走行安定性及び水上航行安定性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る第一実施形態における水陸両用車の車体内の部品の配置を示す平面図である。
【
図2】本発明に係る第一実施形態における水陸両用車の車体内の部品を配置を示す側面図である。
【
図3】本発明に係る第一実施形態の変形例における水陸両用車の車体内の部品を配置を示す側面図である。
【
図4】本発明に係る第二実施形態における水陸両用車の車体内の部品の配置を示す平面図である。
【
図5】本発明に係る第二実施形態における水陸両用車の車体内の部品を配置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る水陸両用車の各種実施形態、及び変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
「第一実施形態」
本発明に係る水陸両用車の第一実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0025】
本実施形態の水陸両用車は、車体10と、エンジン20と、一対の駆動輪31と、一対の従動輪32と、水上推進装置40と、推進用変速機45と、駆動輪用変速機50と、第一動力伝達軸47と、第二動力伝達軸51と、輪駆動軸52と、を備えている。
【0026】
エンジン20は、車体10の左右方向の中央位置Ccを含む領域で、且つ車体10の前後方向Dfで車体10の前縁19fと後縁19rとの中央位置Cfを含む領域に配置されている。
【0027】
一対の駆動輪31は、車体10の前後方向Dfで、エンジン20よりも前側Dffに配置されている。一対の駆動輪31は、車体10の左右方向Dcに、間隔をあけて並んでいる。従動輪32は、一対の駆動輪31よりも後側Dfrに配置されている。従動輪32は、車体10の左右方向Dcに、間隔をあけて並んでいる。なお、水陸両用車は、複数対の従動輪32を備えてもよい。この場合も、各従動輪32は、一対の駆動輪31よりも後側Dfrに配置される。
【0028】
水上推進装置40は、車体10を船舶として、水上で推進させるための装置である。本実施形態の水陸両用車は、一対の水上推進装置40を備えている。この水上推進装置40は、例えば、ウォータジェット装置である。ウォータジェット装置は、ウォータージェット通水路41と、羽根車43及び推進駆動軸44を備えた推進機42とを備えている。ウォータージェット通水路41は、車体10の底面に形成された取込口41iと、車体10の後面に形成された噴出口41oと、を有する。羽根車43は、ウォータージェット通水路41内に配置されている。推進駆動軸44は、前後方向Dfに延びている。羽根車43は、この推進駆動軸44の後端に固定されている。この羽根車43は、エンジン20の動力によって駆動し、水上航行時に取込口41iから水を取り込み、噴出口41oからウォータージェットとして水を噴出させる。一対の水上推進装置40は、エンジン20よりも後側Dfrに配置されてる。また、一対の水上推進装置40は、車体10の左右方向Dcに、間隔をあけて並んでいる。なお、本実施形態の水陸両用車は、一対の水上推進装置40を備えているが、水上推進装置40を一基のみ、さらに3基以上備えてもよい。また、水上推進装置40は、一般的な船舶におけるスクリューを有する装置であってもよい。
【0029】
推進用変速機45は、車体10の左右方向Dcの中央位置Ccを含む領域で、且つ車体10中でエンジン20よりも後側Dfrの領域に配置されている。エンジン20からは、第一動力伝達軸47が後側Dfrに延びている。この第一動力伝達軸47の後端に推進用変速機45が接続されている。この第一動力伝達軸47は、エンジン20からの動力を推進用変速機45に伝える。水上推進装置40の推進駆動軸44の前端は、この推進用変速機45に接続されている。推進用変速機45は、第一動力伝達軸47の回転速度を変えて、第一動力伝達軸47からの動力の一部を推進駆動軸44に伝える機能を有する。また、この推進用変速機45は、エンジン20からの動力を駆動輪用変速機50への動力と水上推進装置40への動力とに分配する動力分配部46を有する。よって、この推進用変速機45は、動力分配装置でもある。
【0030】
駆動輪用変速機50は、車体10の左右方向Dcの中央位置Ccを含む領域で、且つ前後方向Dfで一対の駆動輪31と実質的に同じ領域に配置されている。よって、この駆動輪用変速機50は、車体10中でエンジン20よりも前側Dffに配置されている。第二動力伝達軸51は、動力分配部46から前側Dffに延びている。この第二動力伝達軸51の前端が駆動輪用変速機50に接続されている。この第二動力伝達軸51は、エンジン20よりも下側Dhuに配置されている。この第二動力伝達軸51は、動力分配部46からの動力を駆動輪用変速機50に伝える。輪駆動軸52は、駆動輪用変速機50から左右方向Dcに延びている。この輪駆動軸52の両端には、駆動輪31が取り付けられている。この駆動輪用変速機50は、第二動力伝達軸51の回転速度を変えて、第二動力伝達軸51からの動力を輪駆動軸52に伝える機能を有する。
【0031】
車体10は、車体10の外枠を構成する車体枠11と、第一前後仕切板12と、第二前後仕切板13と、第一上下仕切板14と、第二上下仕切板15と、を有する。第一前後仕切板12は、車体枠11内で、エンジン20よりも前側Dffに配置され、車体枠11内を前後二つの空間に仕切る。第二前後仕切板13は、車体枠11内で、エンジン20よりも後側Dfrに配置され、車体枠11内を前後の二つの空間に仕切る。車体枠11内で、第一前後仕切板12と第二前後仕切板13との間の空間は、エンジン室16を形成する。エンジン20は、このエンジン室16内に配置されている。第一上下仕切板14は、車体枠11内で、第一前後仕切板12よりも前側Dffの空間内に配置されている。この第一上下仕切板14は、車体枠11内で、第一前後仕切板12よりも前側Dffの空間を車体の高さ方向Dhで上下の二つの空間に仕切る。この二つの空間のうち、上側Dhhの空間は、運転者Mdが入る運転室17を形成する。この運転室17には、運転者Mdや運転補助者等が座る椅子17sや、運転のための各種操作端が配置されている。また、下側Dhuの空間には、駆動輪用変速機50や輪駆動軸52が配置されている。第二上下仕切板15は、車体枠11内で、第二前後仕切板13よりも後側Dfrの空間内に配置されている。この第二上下仕切板15は、車体枠11内で、第二前後仕切板13よりも後側Dfrの空間を上下二つの空間に仕切る。この二つの空間のうち、上側Dhhの空間は、複数の搭乗者Mpが入る搭乗室18を形成する。この搭乗室18には、複数の搭乗者Mpが座る椅子18sが配置されている。なお、本実施形態において、搭乗室18を形成する空間は、荷が入る荷室を形成してもよい。また、下側Dhuの空間には、推進用変速機45や水上推進装置40が配置されている。
【0032】
車体10内に配置される複数の部品のうち、エンジン20、駆動輪用変速機50、及び推進用変速機45は、いずれも重量物である。特に、エンジン20は、車体10内に配置される複数の部品のうちで最も重い最重量物である。本実施形態では、車体10の前後方向Dfにおける駆動輪用変速機50と推進用変速機45との間の位置に、最重量物であるエンジン20が配置されている。このため、本実施形態では、最重量物が車体10の前後方向Dfにおける中央位置Cfにほぼ位置することになる。事実、本実施形態では、エンジン20が車体10の前後方向Dfで車体10の前縁19fと後縁19rとの中央位置Ccを含む領域に配置されている。また、エンジン20の前側Dffに重量物である駆動輪用変速機50が配置され、エンジン20の後側Dfrに重量物である推進用変速機45が配置されているので、水陸両用車の重心も車体10の前後方向Dfにおける中央位置Cfにほぼ位置することになる。このため、本実施形態では、車体10の前後方向Dfにおけるバランスがとれる。また、本実施形態では、重量物であるエンジン20、駆動輪用変速機50、及び推進用変速機45のいずれもが、車体10の左右方向Dcの中央位置Ccを含む領域に配置されている。このため、本実施形態では、車体10の左右方向Dcのバランスがとれる。
【0033】
車体10に配置される複数の部品のうちで最重量物を中心にして車体10が旋回する方が、最重量物を中心にしないで車体10が旋回する場合よりも、旋回性を高めることができる。しかも、本実施形態では、最重量物であるエンジン20を基準にして、前側Dffと後側Dfrに重量物が分配配置されている。このため、本実施形態では、最重量物であるエンジン20を基準にして前側Dff又は後側Dfrに複数の重量物がまとめて配置されている場合に比べて、最重量物であるエンジン20を基準にした車体10の旋回性能を高めることができる。
【0034】
よって、本実施形態では、陸上走行安定性のみならず、水上航行安定性も高めることができる。
【0035】
また、本実施形態では、以上で説明したように、エンジン20の前側Dffに駆動輪用変速機50が配置され、エンジン20の後側Dfrに推進用変速機45が配置されている。このため、本実施形態では、エンジン20の前側Dff又は後側Dfrにまとめて駆動輪用変速機50及び推進用変速機45が配置されている場合に比べて、エンジン20から車体10の前縁19fまでの距離又はエンジン20から車体10の後縁19rまでの距離を短くすることができる。
【0036】
本実施形態では、第二動力伝達軸51をエンジン20よりも下側Dhuに配置した。本実施形態では、その上で、エンジン20より後側Dfrに配置されている推進用変速機45の動力分配部46と、エンジン20よりも前側Dffに配置されている駆動輪用変速機50とを第二動力伝達軸51で接続している。しかしながら、第二動力伝達軸51をエンジン20に対して左側又は右側に配置することにより、推進用変速機45の動力分配部46と駆動輪用変速機50とを第二動力伝達軸51で接続してもよい。
【0037】
「変形例」
本発明に係る水陸両用車の第一実施形態の変形例について、
図3を参照して説明する。
【0038】
上記第一実施形態の水陸両用車では、第二動力伝達軸51をエンジン20よりも下側Dhuに配置することにより、エンジン20より後側Dfrに配置されている推進用変速機45の動力分配部46と、エンジン20よりも前側Dffに配置されている駆動輪用変速機50とを第二動力伝達軸51で接続している。しかしながら、第二動力伝達軸51は、エンジン20aを貫通してもよい。
【0039】
本変形例のエンジン20aは、往復動するピストン21と、ピストン21が内部に配置されているシリンダ22と、クランクシャフト23と、コンロッド24と、クランクケース25と、オイルパン26と、を有する。クランクシャフト23は、ピストン21の下側Dhuに配置されている。コンロッド24は、ピストン21とクランクシャフト23とを連結する。クランクケース25は、クランクシャフト23を収容する。このクランクケース25は、シリンダ22の下側Dhuに固定されている。オイルパン26は、シリンダ22とピストン21と間の摩擦を減らす潤滑油Oが貯められる。このエンジン20aの摺動部は、シリンダ22とピストン21との間を含む。このオイルパン26は、クランクケース25の下側Dhuに固定されている。なお、潤滑油Oは、ピストン21やシリンダ22の冷却する役目や、これらの洗浄する役目も担っている。水陸両用車の原動機は、多くの場合、本変形例で示したタイプのエンジンであり、先に説明した第一実施形態及び以下で説明する第二実施形態の原動機もこのタイプのエンジンである。
【0040】
本変形例では、第二動力伝達軸51がエンジン20aのオイルパン26を貫通する。オイルパン26中で第二動力伝達軸51が貫通する部分には、オイルシールが設けられている。
【0041】
本変形例では、車体10に対する第二動力伝達軸51の高さ方向Dhの位置が第一実施形態と同じ場合、エンジン20aの最上位置を第一実施形態よりも低くすることができる。このため、本変形例では、最重量物の重心を下げることができ、陸上走行安定性及水上航行安定性をさらに高めることができる。
【0042】
「第二実施形態」
本発明に係る水陸両用車の第二実施形態について、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0043】
本実施形態の水陸両用車も、第一実施形態の水陸両用車と同様、車体10と、エンジン20bと、一対の駆動輪31と、従動輪32と、水上推進装置40と、駆動輪用変速機50と、推進用変速機45bと、第一動力伝達軸47bと、第二動力伝達軸51bと、輪駆動軸52と、を備えている。
【0044】
エンジン20bは、第一実施形態と同様、車体10の左右方向Dcの中央位置Ccを含む領域で、且つ車体10の前後方向Dfで車体10の前縁19fと後縁19rとの中央位置Cfを含む領域に配置されている。
【0045】
一対の駆動輪31は、第一実施形態と同様、車体10の前後方向Dfで、エンジン20bよりも前側Dffに配置されている。水上推進装置40は、第一実施形態と同様、エンジン20bよりも後側Dfrに配置されてる。
【0046】
推進用変速機45bは、第一実施形態と同様、車体10の左右方向Dcの中央位置Ccを含む領域で、且つ車体10中でエンジン20bよりも後側Dfrの領域に配置されている。エンジン20bからは、第一動力伝達軸47bが後側Dfrに延びている。この第一動力伝達軸47bの後端に推進用変速機45bが接続されている。水上推進装置40の推進駆動軸44の前端は、この推進用変速機45bに接続されている。本実施形態の推進用変速機45bは、第一動力伝達軸47bの回転速度を変えて、第一動力伝達軸47bからの動力を推進駆動軸44に伝える機能を有するものの、第一実施形態における推進用変速機45の動力分配部46を有していない。
【0047】
駆動輪用変速機50は、第一実施形態と同様、車体10の左右方向Dcの中央位置Ccを含む領域で、且つ前後方向Dfで一対の駆動輪31と実質的に同じ領域に配置されている。本実施形態の第二動力伝達軸51bは、エンジン20bから前側Dffに延びている。この第二動力伝達軸51bの前端が駆動輪用変速機50に接続されている。よって、本実施形態の第二動力伝達軸51bは、高さ方向Dhでエンジン20bが存在する領域内に配置されている。この第二動力伝達軸51bは、エンジン20bからの動力を駆動輪用変速機50に伝える。輪駆動軸52は、駆動輪用変速機50から左右方向Dcに延びている。この輪駆動軸52の両端には、駆動輪31が取り付けられている。この駆動輪用変速機50は、第二動力伝達軸51bの回転速度を変えて、第二動力伝達軸51bからの動力を輪駆動軸52に伝える機能を有する。
【0048】
以上で説明した第一動力伝達軸47bは、エンジン20bの出力軸の回転に伴って回転するよう、この出力軸の第一端に機械的に接続されている。また、以上で説明した第二動力伝達軸51bは、エンジン20bの出力軸の回転に伴って回転するよう、この出力軸の第二端に機械的に接続されている。
【0049】
本実施形態でも、第一実施形態と同様に、車体10の前後方向Dfにおける駆動輪用変速機50と推進用変速機45bとの間の位置に、最重量物であるエンジン20bが配置されている。このため、本実施形態でも、第一実施形態と同様に、前後方向Dfのバランスをとることができると共に、車体10の旋回性能を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、第二動力伝達軸51bが、高さ方向Dhでエンジン20bが存在する領域内に配置されている。このため、本実施形態では、最重量物であるエンジン20bの位置を下げることができ、陸上走行安定性及び水上航行安定性をさらに高めることができる。
【0051】
また、本実施形態では、エンジン20bから動力が、このエンジン20bに接続されている第一動力伝達軸47bに伝わる動力と第二動力伝達軸51bに伝わる動力とに分配される。このため、本実施形態では、エンジン20bの動力を駆動輪用変速機50への動力と前記水上推進装置40への動力とに分配する動力分配部が不要になる。このため、本実施形態では、第一実施形態よりも、推進用変速機45bのサイズを小さくすることができると共に、推進用変速機45bの構造が簡素化され製造コストを抑えることができる。
【0052】
なお、第一実施形態及び本実施形態の原動機は、第一実施形態の本変形例で示したタイプのエンジンであってもよいが、他のタイプのエンジンであってもよい。第一実施形態及び本実施形態の原動機は、例えば、ガスタービンエンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10:車体
11:車体枠
12:第一前後仕切板
13:第二前後仕切板
14:第一上下仕切板
15:第二上下仕切板
16:エンジン室
17:運転室
17s:椅子
18:搭乗室
18s:椅子
19f:前縁
19r:後縁
20,20a,20b:エンジン(原動機)
21:ピストン
22:シリンダ
23:クランクシャフト
24:コンロッド
25:クランクケース
26:オイルパン
31:駆動輪
32:従動輪
40:水上推進装置
41:ウォータージェット通水路
41i:取込口
41o:噴出口
42:推進機
43:羽根車
44:推進駆動軸
45,45b:推進用変速機
46:動力分配部
47,47b:第一動力伝達軸
50:駆動輪用変速機
51,51b:第二動力伝達軸
52:輪駆動軸
Cc:左右方向の中央位置
Cf:前後方向の中央位置
Df:前後方向
Dff:前側
Dfr:後側
Dc:左右方向
Dh:高さ方向
Dhh:上側
Dhu:下側
Md:運転者
Mp:搭乗者
O:潤滑油