(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マスク本体が、2つ以上の呼吸空気の供給源構成要素を受容するように構成された2つ以上の吸気口を備え、前記遮断弁が、閉鎖位置において、前記2つ以上の清浄な吸気供給源と前記呼吸に適した空気ゾーンとの間の流体連通を阻止する、請求項1に記載の呼吸用マスク。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、装着者のための呼吸に適した空気ゾーンを画定するマスク本体を含み、かつ1つ以上の呼吸空気の供給源構成要素を受容するように構成された1つ以上の吸気口を有する呼吸保護装置を提供する。装着者による負圧フィットテストの実施を容易にするために、閉鎖位置と開放位置との間で動作可能な遮断弁が設けられている。遮断弁は、閉鎖位置において、1つ以上の吸気口の各々と呼吸に適した空気ゾーンとの間の流体連通を阻止する。呼吸保護装置が適切に密着しており、十分な封止が達成されている場合、装着者が息を吸い込むことにより、マスク内の内部気圧は負圧となる。
【0011】
図1a〜1dは、鼻及び口を覆い、装着者に呼吸に適した空気を提供することのできる例示的な呼吸保護装置100を図示している。呼吸保護装置100は、第1の吸気口103及び/又は第2の吸気口104のような1つ以上の吸気口を含むマスク本体120を含んでいる。1つ以上の呼吸空気の供給源構成要素を、マスク本体120の1つ以上の吸気口に配置することができる。例示的な一実施形態において、第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素101、102が設けられており、第1及び第2の吸気口103及び104に取り付けられるように構成されたフィルタカートリッジを含む。フィルタカートリッジ101、102は、外部環境から取り入れた空気が装着者に供給されるためにマスク本体の内部空間内に通過する前に、この空気を濾過する。
【0012】
マスク本体120は、剛性の又は半剛性の部分120a及び柔軟な顔面接触部分120bを有し得る。マスク本体の柔軟な顔面接触部分は、マスク本体が人の鼻及び口を覆って快適に支持されることを可能とし、並びに/又は装着者の顔面に十分な封止を提供して、例えば、マスク本体120の内部に望ましくない空気の侵入を制限するように、柔軟にできている。顔面接触部材120bは、装着者の鼻を覆って及び装着者の頬に対してマスクが快適にかつぴったりと密着できるように、折り返しカフを有してもよい。剛性の又は半剛性の部分120aは、例えばフィルタカートリッジ101、102のような呼吸空気の供給源構成要素を適切に支持することができるように、マスク本体120に構造的一体性を付与している。様々な例示的な実施形態において、マスク本体部分120a及び120bは、一体的に設けることもでき、又は後に恒久的に若しくは取り外し可能な方式で結合される別個に形成された部分として設けることもできる。
【0013】
呼気口130は、装着者が息を吐きだしている間にマスク本体の内部空間から空気を一掃することを可能とする。例示的な一実施形態において、呼気口130は、マスク本体120上の中央に位置している。呼気口には、呼気時にマスク本体120内に生じる正圧により空気が出ていくことを可能としながらも外部空気の侵入を阻止するための呼気弁が嵌め込まれている。いくつかの例示的な実施形態において、呼気口130は、マスク本体120の低い位置、例えば装着者の鼻及び口よりも下に位置している。
【0014】
ハーネス又はその他の支持体(図示せず)を設けて装着者の鼻及び口の周りの位置にマスクを支持することができる。例示的な一実施形態において、装着者の頭部の後ろを通る1つ以上のストラップを含むハーネスが設けられている。いくつかの実施形態において、ストラップは、装着者の頭部、安全帽用の懸架具、又は別のかぶり物の上に支持されている冠部材に取り付けることができる。
【0015】
マスク本体120の1つ以上の吸気口は、1つ以上の呼吸空気の供給源構成要素を受容するように構成されている。2つ以上の呼吸空気の供給源構成要素を含む例示的な一実施形態において、
図1aに示すように、マスク本体120は、マスク本体120の両側に第1及び第2の吸気口103、104を含み、マスク本体120の頬部分に隣接していてもよい。第1及び第2の吸気口103、104は、第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素101、102をマスク本体120にしっかりと取り付けることができるように、補完的な嵌合機構(図示せず)を含んでいる。当該技術分野において既知のその他の好適な接続を設けることもできる。嵌合機構は、呼吸空気の供給源構成要素の耐用寿命の終わりに、又は異なる呼吸空気の供給源構成要素の使用が望まれる場合に、呼吸空気の供給源構成要素101、102を取り外して交換することができるように、取り外し可能な接続とすることができる。あるいは、例えば、呼吸空気の供給源構成要素を損壊せずに呼吸空気の供給源構成要素を取り外すことができないように、恒久的な接続とすることもできる。
【0016】
呼吸保護装置100は、流体吸入連通構成要素を閉じるための遮断弁150を含んでいる。例示的な一実施形態において、遮断弁150は、閉鎖位置と開放位置との間で動作可能である。遮断弁150は、閉鎖位置において、フィルタカートリッジ101及び/又は102のような1つ以上の呼吸空気の供給源構成要素の各々とマスク本体120の呼吸に適した空気ゾーンとの間の流体連通を阻止する。
【0017】
遮断弁150は、装着者が、マスク本体の周縁部の周りの漏れの存在することの指標をもたらすための負圧フィットチェックを実施することを可能とする。遮断弁150が閉鎖位置にあるとき、空気のマスク本体120の呼吸に適した空気ゾーンへの侵入が阻止される。遮断バルブが閉鎖位置にあるときに装着者が息を吸い込むとマスク内が負圧となり、例示的な一実施形態では、マスク本体と装着者の顔面との間に十分な封止が達成されている場合、装着者が息を吸い込むことをより難しくし、又は柔軟な顔面接触部材を内向きに撓ませる。十分な封止が達成されていない場合、マスク本体の周縁部と装着者の顔面との間の呼吸に適した空気ゾーンに外部環境からの空気が結果として侵入することができる。このようにすれば、呼吸保護装置100を装着している装着者が負圧フィットチェックを容易に実施して、呼吸保護装置100と装着者の顔面及び/又は頭部との間に十分な封止が達成されているかどうかを決定することができる。
【0018】
図1bは、例示的なマスク本体120の、マスク本体120の中間部分を通る代表的な断面図を示している。例示的なマスク本体120は、第1のチャンバ121と第2のチャンバ122とを含んでいる。呼吸に適した空気ゾーンは、第2のチャンバ122によって画定されている。いくつかの実施形態において、フィルタカートリッジのような第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素101、102を第1及び第2の吸気口103、104に取り付けることができる。第1及び第2の吸気口103、104は、第1のチャンバ121と流体連通している。したがって、第1の呼吸空気の供給源構成要素101を通過した後第1の吸気口103を通ってマスク本体120に入る空気は、第2の呼吸空気の供給源構成要素102を通過した後第2の吸気口104を通ってマスク本体120に入る空気と連通している。このように、第1及び第2の呼吸空気の供給源101、102からの空気は、マスク本体120の第2のチャンバ122によって画定された呼吸に適した空気ゾーンに供給される前に、第1のチャンバ121内で混合することが可能である。
【0019】
例示的な一実施形態において、第1及び第2のチャンバ121、122は、流体吸入連通構成要素140を有する内壁124によって分離されている。流体吸入連通構成要素140は、第1のチャンバ121と第2のチャンバ122との間に流体連通を提供するための1つ以上の開口部を備えている。流体吸入連通構成要素140は、下記により詳細に説明するように、第1のチャンバ121と第2のチャンバ122との間の流体連通を選択的に可能とするための吸気弁を含むことができる。
【0020】
第1のチャンバ121は、マスク本体120の1つ以上の壁部によって画定されており、任意の所望の形状を呈することができる。例示的な一実施形態において、第1のチャンバ121は、部分的に、マスク本体120の外壁である外壁123及び内壁124によって画定されている。第1のチャンバ121は、外壁123を通って延在する第1及び第2の吸気口103、104のような1つ以上の吸気口を除いて、外部環境から実質的に封止されている。
【0021】
マスク本体120の壁部によって少なくとも部分的に画定され、マスク本体120又は剛性の若しくは半剛性の部分120aで一体的に形成されているチャンバは、マスク本体から分離しているチャンバに関連づけることのできる余剰の容積又は重量を最小限とするように構成することのできるマスク本体120の構造体内に、チャンバを提供している。更に、チャンバは、呼吸保護装置の輪郭が大きく増加せず、装着者に頚痛又はその他の不快感をもたらすと受け取られかねない、装着者の頭部から離れる方向の大きな慣性モーメントが最小限となるように、装着者の頭部にごく隣接して設けることができる。
【0022】
第2のチャンバ122は、マスク本体120の1つ以上の壁部によって同様に画定されており、装着者の鼻及び口の周りに呼吸に適した空気ゾーンを画定する任意の好適な形状を呈することができる。例示的な一実施形態において、第2のチャンバ122は、部分的に、内壁124、外壁123の一部、及び呼吸保護装置100が装着者上で使用されるように位置付けられているときは、装着者の顔面及び/又は頭部の一部によって画定されている。様々な実施形態において、内壁124が、外壁123によって画定された内部空間を、第1のチャンバ121を部分的に画定する内壁124の前方の外壁123の一部及び第2のチャンバ122を部分的に画定する装着者の顔面により近い外壁123の一部を含む、第1のチャンバ121及び第2のチャンバ122に分離している。
【0023】
例示的な一実施形態において、第1のチャンバ121は、空気を、例えば、第1及び/又は第2の吸気口103、104のような1つ以上の吸気口からマスク本体120内の異なる場所に向かわせるダクトとして機能することができる。多くの従来型の呼吸用マスクがカートリッジから吸気口を通じてマスク本体内の吸気口の位置に清浄な空気を供給するものの、第1のチャンバ121は、1つ以上の吸気口103、104を流体吸入連通構成要素140とは概ね無関係に位置付けることを可能とする。例示的な一実施形態において、吸気口103、104はマスク本体120の頬部分の付近に位置し、流体吸入連通構成要素140は中央に位置している。例えば、流体吸入連通構成要素は、マスクを通って延ばし、マスク本体120を仮想の右半分及び左半分に分割する、軸190のような中心軸に隣接して位置している。このような構成要素の幾つかの部分が軸190の各々の側に位置している場合、この構成要素は中央に位置していると言ってよい。1つ以上の吸気口103、104が頬部分付近に位置している一方で流体吸入連通構成要素140が中央に位置している構成は、呼吸空気の供給源構成要素を、例えば装着者の顔面に沿って後方に延ばして視野の妨害を最小限に抑え、又はカートリッジの質量中心をマスク本体120及び/又は装着者の顔面のごく近傍に維持するような、望ましい位置及び/又は向きで受容することを可能とする。しかし、流体吸入連通構成要素140は、それでも中央に位置して清浄な空気を装着者の鼻及び口のごく近傍に供給することができ、例示的な一実施形態では、中央上部の位置に設けられている。このように、第1のチャンバ121は、第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素を所望の人間工学的特性を提供するように位置付けることを可能とし、例えば、流体吸入連通構成要素140を装着者に所望の空気流を提供するように位置付けることを可能とする。更に、第1のチャンバ121は、第1及び第2の吸気口が単一の流体吸入連通構成要素と流体連通していることを可能とする。2つ以上の呼吸に適した空気の供給源構成要素及び単一の流体吸入連通構成要素を有する呼吸保護装置は、製造コストを低減し、より堅牢な呼吸保護装置を提供することができる。高価な流体吸入連通構成要素を最小限に抑えることができ、比較的脆弱なダイヤフラム又はフラップを縮小することができる。
【0024】
図1c及び1dは、呼吸保護装置100の例示的な遮断弁150を示す部分断面図を提供している。上述のように、マスク本体120は、内壁124によって分離された第1及び第2のチャンバ121及び122を含んでいる。例示的な一実施形態において、内壁124は、第1のチャンバ121と第2のチャンバ122との間の流体連通を可能とする吸入口141を含む流体吸入連通構成要素140を含んでいる。流体吸入連通構成要素140は、吸入時に第1のチャンバ121から第2のチャンバ122内へ空気を引き込むことを可能とするが、第2のチャンバ122から第1のチャンバ121に空気が通ることを不可能にする。例示的な一実施形態において、流体吸入連通構成要素140は、ダイヤフラム又はフラップ143を含んでいる。ダイヤフラム又はフラップ143は、例えば、1つ以上の中央ピン又はフランジによって中央位置144に、又は周縁部若しくは当該技術分野において既知のその他の好適な位置に固定することができる。例えば装着者が息を吐いているときのように、マスク本体120の第2のチャンバ122内に負圧が存在しない場合、ダイヤフラムは、シールリング145のような流体吸入連通構成要素の面に向かって付勢されている。装着者が息を吸い込んでいるとき、第2のチャンバ122内の負圧、即ち、外部の大気圧よりも低い気圧により、ダイヤフラム又はフラップ143を開放位置におくことができ、空気が第1のチャンバ121から第2のチャンバ122に入ることを可能とする。即ち、装着者が吸い込むことができるように空気が第2のチャンバ122内に通ることができるように、ダイヤフラム又はフラップ143がシールリング145から離れる方向に曲がるか又は移動する。様々な例示的な実施形態において、流体吸入連通構成要素140は、第2のチャンバ122内の気圧が負圧であるときに第1のチャンバ121から第2のチャンバ122への流体連通を選択的に可能とするための複数の吸入口及び/又は2つ以上のダイヤフラム若しくはフラップ143を含むことができる。
【0025】
例示的な一実施形態において、マスク本体120の遮断弁150は、アクチュエータ151と封止パッド152とを含んでいる。閉鎖位置において、封止パッド152が内壁124に接触し、吸入口141を遮断して2つ以上の呼吸空気の供給源と第2のチャンバ122によって画定された呼吸に適した空気ゾーンとの間の流体連通を阻止する。遮断弁150が閉鎖位置にあるとき、呼吸空気の供給源構成要素101、102からの空気が第1のチャンバ121と連通していても、流体吸入連通構成要素140を通って第2のチャンバ122によって規定された呼吸に適した空気ゾーンに入ることは阻止される。例示的な一実施形態において、封止パッド152が吸入口141を取り囲む封止面146と接触する。封止面146は、吸入口141の周縁部の周りに十分な封止を達成することを可能とするために、内壁124から外向きに延出する隆起又は突出部の形態であってよい。
【0026】
封止パッド152は、封止面146と接触すると封止パッドが曲がることができるように、柔らかい又は弾性の材料で形成することができる。例示的な一実施形態において、封止パッド152は、封止面146との十分な封止を容易にするために、角度又はフランジの付いた縁部(図示せず)など台座機構を含んでいる。また、封止パッド152の全体又は一部分は、封止面146に接触したときに関節接合又は回転することもできる。曲がることができ、及び/又は関節接合若しくは回転することのできる封止パッドは、吸入口141の周りの十分な封止部の形成を容易にすることができる。
【0027】
例示的な一実施形態において、封止パッド152が開放位置と閉鎖位置との間で直線的に移動するとき、シャフト154により、封止パッド152が誘導され、封止パッド152の吸入口141との適切な位置合わせが維持される。封止パッド152は、封止パッド152の回転又は位置ずれを阻止するために更に役立つボス、フランジ、又はその他の突出部153を含むことができる。シャフト154は、内壁124から、流体吸入連通構成要素140の中央部からのように延出している。その他の様々な実施形態において、シャフト154は、例えば、マスク本体120のその他の部分から延出していてもよい。
【0028】
遮断弁150は、開放位置(
図1c)と閉鎖位置(
図1d)との間で切り替わるように操作することができる。例示的な一実施形態において、アクチュエータ151は、外側被覆されたエラストマ製の押しボタン、摺動ボタンなどのようなボタンであり、封止パッド152が封止面146に接するまで封止パッド152を流体吸入連通構成要素140に向かって移動させるように、内向きに直線的に押圧されることができる。
図1cに示す開放位置において、ダイヤフラム又はフラップ143によって許容される場合、空気は、吸入口141を経由して第2のチャンバ122によって画定された呼吸に適した空気ゾーン内に通ることができる。
図1dに示す閉鎖位置において、封止パッド152は、封止面146と封止係合して空気が吸入口141を通過するのを阻止する。装着者がアクチュエータ151を解放すると、アクチュエータ151は、封止パッド152を封止面146との封止係合から離れる方向に付勢する弾性部材であるが故に開放位置に戻る。
【0029】
例示的な一実施形態において、エラストマ製のボタンの形態のアクチュエータ151は、例えば力が加えられていない場合に、封止面146との封止係合から離れる方向の開放位置に向かって封止パッドを付勢する弾性部材として機能する。アクチュエータ151は、マスク本体120の外壁123(
図1a、1b)に取り付けられ、アクチュエータ151を支持し、及び/又は遮断弁150を開放位置へと付勢する可撓性のウェブ156を含むことができる。ウェブは、例えば
図1dに示すように、装着者がアクチュエータ151を内向きに押圧したときに弾性的に変形することのできる可撓性の又は柔軟な材料で形成されている。可撓性のウェブ156は、閉鎖位置において、曲がり及び/又は変形し、封止パッド152が封止面146に向かって移動することを可能とする。可撓性のウェブ156の曲げ及び/又は変形は、望ましくは、可撓性のウェブ156が、遮断弁150の開放位置にある元の形状に繰り返し戻ることができるように、弾性領域内に限定される。
【0030】
可撓性のウェブの代わりに又はこれに加えて、その他の弾性部材を設けることができる。様々な例示的な実施形態において、アクチュエータ151及び/又は封止パッド152を開放位置へと付勢するために、コイルばね、板ばね、エラストマ製バンド、又は当該技術分野において既知のその他の好適な弾性部材を設けることもできる。別の方法として又は追加として、封止パッド152の表面にばね押し式の部材を設けて、アクチュエータ151及び遮断弁150を封止面146から離れる方向の開放位置に向かって付勢することもできる。いくつかの例示的な実施形態において、アクチュエータ151及び封止パッド152を封止面146から離れる方向の開放位置の方向に付勢するために、シャフト154の周りにコイルばね159が設けられている。コイルばねは、上述のエラストマ製ウェブのような1つ以上の追加的な弾性部材の代わりに又はこれに加えて、アクチュエータ151及び封止パッド152を付勢する力を提供することができる。
【0031】
例示的な一実施形態において、アクチュエータ151は、例えばマスク本体120上にアクチュエータを外側被覆することによりアクチュエータ151とマスク本体120との間に封止部が形成されるようにして、マスク本体120に取り付けられている。外部環境からの空気及び汚染物質がマスク本体120の隣接アクチュエータ151に侵入することができないように十分な封止を提供するために、ガスケット、フランジ、接着剤、締まり嵌め、成型技術、音波溶接、及び当該技術分野において既知のその他好適な技法を使用して、その他の好適な封止を設けることができる。マスク本体120内部の遮断弁150の部分を取り囲む容積は呼吸に適した空気ゾーン122と流体連通しているので、外部環境からの空気及び汚染物質の侵入を阻止する十分な封止があることが望ましい。このように、遮断弁150が開放位置、閉鎖位置、又は中間位置にあるときに、アクチュエータ151に隣接する十分な封止により、呼吸に適した空気ゾーン122内の空気の呼吸適用性が保護される。
【0032】
流体吸入連通構成要素140及び遮断弁150は、装着者が自由に呼吸できることと干渉しかねない気圧の低下の悪影響を最小限に抑えるように構成されている。様々な例示的な実施形態において、封止パッド152は、遮断弁150が開放位置にあるときに、封止面146から約8mmと1mmとの間、約6mmと2mmとの間、又は約3mmに位置付けられている。即ち、封止パッド152は、開放位置から閉鎖位置まで、約8mmと1mmとの間、約6mmと2mmとの間、又は約3mm移動する。このような距離により、開放位置にあるときに空気が通過するための十分な空間が提供される一方で、比較的小型とすることのできる遮断弁が提供される。
【0033】
様々な例示的な実施形態において、遮断弁150は、マスク内の負圧に起因して閉鎖位置に留まることができる。即ち、負圧フィットチェックを実施中、装着者はアクチュエータ151を内向きに押圧することによりアクチュエータ151を閉鎖位置に移動させ、息を吸い込み、次にアクチュエータ151を解放することができる。装着者がアクチュエータ151を解放した後、弾性部材は封止パッド152に印加された第2のチャンバ122内の負圧を克服することができない。したがって、遮断弁150は、装着者が息を吐くか、第2のチャンバ122内の気圧が弾性部材の力を克服するのに十分ではなくなるまで閉鎖位置に留まることができる。装着者はマスク本体120と装着者の顔面との間の封止に影響するかもしれない力をアクチュエータ151に加えていないので、装着者がアクチュエータ151を解放した後でも遮断弁150を閉鎖位置に留まることを可能とする弾性部材は、より正確なフィットチェックを可能とすることができる。しかし、マスク本体120の呼吸に適した空気ゾーン内の負圧によって、弾性部材が、遮断弁150の閉鎖位置に留まることを可能としている間であっても、遮断弁は、装着者によるアクチュエータ151への更なる入力を必要とせずに自動的に開放位置に戻ることができる。例えば、装着者が息を吐き出すことによるマスク本体内の気圧の上昇により、遮断弁150は、装着者が自由に呼吸することのできる開放位置に戻ることができる。このような機構は、アクチュエータ151への更なる入力なしで、装着者が安全に呼吸して遮断弁150を開放位置に戻すことを可能とする。
【0034】
他の実施形態において、遮断弁150は、第2のチャンバ122内の気圧に拘わらず閉鎖位置に留まることができ、装着者が更なる入力を与えると開放位置に戻ることができる。
【0035】
図2a及び2bは、自動位置合わせ式封止パッドを有する遮断弁250の例示的な実施形態を図示している。例示的な一実施形態において、遮断弁250は、アクチュエータ251と封止パッド252とを含んでいる。閉鎖位置において、封止パッド252が内壁224に接触し、吸入口241を遮断して2つ以上の呼吸空気の供給源と第2のチャンバ222によって画定された呼吸に適した空気ゾーンとの間の流体連通を阻止する。遮断弁250が閉鎖位置にあるとき、呼吸空気の供給源構成要素201、202(図示せず)からの空気が第1のチャンバ221と連通していても、流体吸入連通構成要素240を通って第2のチャンバ222によって画定された呼吸に適した空気ゾーンに入ることは阻止される。例示的な一実施形態において、封止パッド252が吸入口241を取り囲む封止面246と接触する。封止面246は、吸入口241の周縁部の周りに十分な封止を達成することを可能とするために、内壁224から外向きに延出する隆起又は突出部の形態であってよい。例示的な一実施形態において、封止面246は、吸入口241の外側周縁部を取り囲む第1の封止面部246aと吸入口241の内側周縁部を取り囲む第2の封止面部246bとを含んでいる。
【0036】
封止パッド252は、封止面246と接触すると封止パッド252が曲がることができるように、柔らかい又は弾性の材料で形成することができる。例示的な一実施形態において、封止パッド252は、封止面246との十分な封止を容易にするために、角度又はフランジの付いた縁部のような封止機構255を含んでいる。また、封止パッド252の全体又は一部分は、封止面246に接触したときに関節接合又は回転することもできる。曲がることができ、及び/又は関節接合若しくは回転することのできる封止パッドは、吸入口241の周りの十分な封止の形成を容易にすることができる。
【0037】
例示的な一実施形態において、封止パッド252は、アクチュエータ251に取り付けられており、これによって支持されている。封止パッド252は、例えば流体吸入連通構成要素240から突出しているシャフト上を移動するのではなく、アクチュエータ251によって誘導される。いくつかの例示的な実施形態において、封止パッド252及びアクチュエータ251は、単一の構成要素として一体形成することもできる。台座機構245が、封止面246との適切な位置合わせ及び/又は十分な封止を容易にする。いくつかの実施形態において、台座機構245は、封止パッド252を封止面246と位置合わせするための補完機構を含むこともできる。
【0038】
遮断弁250は、開放位置(
図2a)と閉鎖位置(
図2b)との間で切り替わるように操作することができる。例示的な一実施形態において、アクチュエータ251は、外側被覆されたエラストマ製の押しボタン、摺動ボタンなどのようなボタンであり、封止パッド252が封止面246に接するまで封止パッド252を流体吸入連通構成要素240に向かって移動させるように、装着者がこれを内向きに押圧することができる。
図2aに示す開放位置において、ダイヤフラム又はフラップ243が許容する場合、空気は、吸入口241を経由して第2のチャンバ222によって画定された呼吸に適した空気ゾーン内に通ることができる。
図2bに示す閉鎖位置において、封止パッド252は、封止面246と封止係合して空気が吸入口241を通過するのを阻止する。封止パッド252の少なくとも一部分がアクチュエータ251に加えられた力により曲がり及び/又は圧縮され、このような曲がり及び/又は圧縮が十分な封止を容易にすることができる。装着者がアクチュエータ251を解放すると、弾性部材が封止パッド252を封止面246との封止係合から離れる方向に付勢するので、アクチュエータ251は開放位置に戻ることができる。いくつかの例示的な実施形態において、例えば遮断弁150について上述したように、遮断弁250は、マスク内の負圧の故に、装着者が息を吐くか又は第2のチャンバ222内の気圧が弾性部材の力よりも大きくなくなるまで、閉鎖位置に留まることができる。
【0039】
例示的な一実施形態において、エラストマ製のボタンの形態のアクチュエータ251は、封止面246との封止係合から離れる方向の開放位置に向かって封止パッド252を付勢する弾性部材として機能する。アクチュエータ251は、アクチュエータ251を支持し及び/又は遮断弁250を開放位置へと付勢するためにマスク本体220の外壁223に取り付けられた可撓性のウェブ256を含むことができる。可撓性のウェブ256は、装着者がアクチュエータ251を内向きに押圧したときに弾性的に変形することのできる可撓性の又は柔軟な材料で形成されている。可撓性のウェブ256は、閉鎖位置において、曲がり及び/又は変形し、封止パッド252が封止面246に向かって移動することを可能とする。可撓性のウェブ256の曲げ及び/又は変形は、望ましくは、可撓性のウェブ256が、遮断弁の開放位置にある元の形状に繰り返し戻ることができるように、弾性領域内に限定される。
【0040】
可撓性のウェブ256の代わりに又はこれに加えて、その他の弾性部材を設けることもできる。様々な例示的な実施形態において、アクチュエータ251及び封止パッド252を開放位置へと付勢するために、コイルばね、板ばね、エラストマ製バンド、又は当該技術分野において既知のその他の好適な弾性部材を設けることもできる。別の方法として又は追加として、封止パッド252の表面にばね押し式の部材を提供してアクチュエータ251及び遮断弁250を封止面246から離れる方向の開放位置に向かって付勢することもできる。
【0041】
図3a及び3bは、枢軸旋回式封止パッド(pivotingsealing pad)を有する遮断弁350の例示的な実施形態を図示している。例示的な一実施形態において、遮断弁350は、アクチュエータ351と封止パッド352とを含んでいる。
図1a〜1dを参照して上述した呼吸保護装置100と同様に、遮断弁350は、例えば、第1のチャンバ321と、第2のチャンバ322によって画定された呼吸に適した空気ゾーンとを含む呼吸保護装置内に組み込むことができる。例示的な一実施形態において、第1及び第2のチャンバ321、322は、流体吸入連通構成要素340を含む内壁324によって分離されている。流体吸入連通構成要素340は、第1のチャンバ321と第2のチャンバ322との間に流体連通を提供するための1つ以上の開口部を備えている。流体吸入連通構成要素340は、第1のチャンバ321と第2のチャンバ322との間の流体連通を選択的に可能とするための吸気弁を含むことができる。例示的な一実施形態において、例えば流体吸入連通構成要素140について上述したように、流体吸入連通構成要素340は、吸気中に第1のチャンバから第2のチャンバへと空気を引き込むことはできても、第2のチャンバから第1のチャンバに空気が通ることを不可能にするように、ダイヤフラム又はフラップ(図示せず)を含んでいる。
【0042】
例示的な一実施形態において、遮断弁350は、アクチュエータ351と封止パッド352とを含んでいる。閉鎖位置において、封止パッド352が内壁324に接触し、吸入口341を遮断して2つ以上の呼吸空気の供給源と第2のチャンバ322によって画定された呼吸に適した空気ゾーンとの間の流体連通を阻止する。遮断弁350が閉鎖位置にあるとき、呼吸空気の供給源構成要素(図示せず)からの空気は、第1のチャンバ321と流体連通していても、流体吸入連通構成要素340を通って第2のチャンバ322によって画定された呼吸に適した空気ゾーンに入ることは阻止される。例示的な一実施形態において、封止パッド352が吸入口341を取り囲む封止面346と接触する。封止面346は、吸入口341の周縁部の周りに十分な封止を達成することを可能とするために、内壁324から外向きに延出する隆起又は突出部の形態であってよい。
【0043】
遮断弁350は、開放位置(
図3a)と閉鎖位置(
図3b)との間で切り替わるように操作することができる。例示的な一実施形態において、アクチュエータ351は、外側被覆されたエラストマ製の押しボタン、摺動ボタンなどのようなボタンであり、封止パッド352が封止面346に接するまで封止パッド352を枢軸位置359で枢軸旋回させるように、装着者がこれを内向きに押圧することができる。
図3aに示す開放位置において、例えばダイヤフラム又はフラップが許容する場合、空気は、吸入口341を経由して第2のチャンバ322によって画定された呼吸に適した空気ゾーン内に通ることができる。
図3bに示す閉鎖位置において、封止パッド352は、封止面346と封止係合して空気が吸入口341を通過するのを阻止する。封止パッド352の少なくとも一部がアクチュエータ351に加えられた力により曲がり及び/又は圧縮され、このような曲がり及び/又は圧縮が十分な封止を容易にすることができる。装着者がアクチュエータ351を解放すると、弾性部材がアクチュエータ351を開放位置へと付勢するので、アクチュエータ351は開放位置に戻ることができる。いくつかの例示的な実施形態において、例えば遮断弁150について上述したように、遮断弁350は、マスク内の負圧の故に、装着者が息を吐くか又は第2のチャンバ322内の気圧が弾性部材の力よりも大きくなくなるまで、閉鎖位置に留まることができる。
【0044】
例示的な一実施形態において、エラストマ製のボタンの形態のアクチュエータ351は、封止面346との封止係合から離れる方向の開放位置に向かって封止パッド352を付勢する弾性部材として機能する。アクチュエータ351は、アクチュエータ351を支持し及び/又は遮断弁350を開放位置へと付勢するためにマスク本体320の外壁(図示せず)に取り付けられた可撓性のウェブ356を含むことができる。ウェブ356は、例えば
図3bに示すように、装着者がアクチュエータ351を内向きに押圧したときに弾性的に変形することのできる可撓性の又は柔軟な材料で形成されている。いくつかの例示的な実施形態において、アクチュエータ351は、封止パッド352に取り付けられていない。可撓性のウェブ356のような弾性部材がアクチュエータ351を開放位置へと付勢し、ばね部材357のような1つ以上の追加部材が封止パッド352を開放位置へと付勢している。ばね部材357は、封止パッド352を開放位置へと付勢するために、コイルばね、板ばね、エラストマ製バンド、又は当該技術分野において既知の好適な弾性部材をはじめとする任意の好適なばねを備えることができる。他の例示的な実施形態において、アクチュエータ351は封止パッド352に取り付けられており、可撓性のウェブ及び/又はばね部材357のような弾性部材がアクチュエータ351及び封止パッド352の両方を開放位置に向けて付勢している。
【0045】
封止パッド352は、封止面346と接触すると封止パッド352の少なくとも一部が曲がるか又は圧縮されることができるように、柔らかい又は弾性の材料の少なくとも一部分を含むことができる。アクチュエータ351からの力を封止パッド352の封止面346に接する部分全体に伝達させることができるように、封止パッド352の少なくとも一部分を剛性又は半剛性としてもよい。アクチュエータ351が封止パッド352を閉鎖位置に移動させるときに封止パッド352が過剰に曲がると、封止パッド352と封止面346との間に空隙が生じる場合があり、この空隙から侵入することのできる空気が正確な負圧フィットチェックの実施を阻害する場合がある。
【0046】
図4a及び4bは、枢軸旋回式封止パッドと回転可能なアクチュエータとを有する遮断弁450の例示的な一実施形態を図示している。
図1a〜1dを参照して上述した呼吸保護装置100と同様に、遮断弁450は、例えば、第1のチャンバ421と、第2のチャンバ422によって画定された呼吸に適した空気ゾーンとを含む呼吸保護装置内に組み込むことができる。例示的な一実施形態において、第1及び第2のチャンバ421、422は、流体吸入連通構成要素440を含む内壁424によって分離されている。流体吸入連通構成要素440は、第1のチャンバ421と第2のチャンバ422との間に流体連通を提供するための1つ以上の開口部を備えている。流体吸入連通構成要素440は、第1のチャンバ421と第2のチャンバ422との間の流体連通を選択的に可能とするための吸気弁を含むことができる。例示的な一実施形態において、例えば、流体吸入連通構成要素140について上述したように、流体吸入連通構成要素440は、吸気中に第1のチャンバから第2のチャンバへと空気を引き込むことはできても、第2のチャンバから第1のチャンバに空気が通ることを不可能にするように、ダイヤフラム又はフラップ(図示せず)を含んでいる。
【0047】
例示的な一実施形態において、遮断弁450は、回転可能なアクチュエータ451と封止パッド452とを含んでいる。閉鎖位置において、封止パッド452が内壁424に接触し、吸入口441を遮断して2つ以上の呼吸空気の供給源と第2のチャンバ422によって画定された呼吸に適した空気ゾーンとの間の流体連通を阻止する。遮断弁450が閉鎖位置にあるとき、呼吸空気の供給源構成要素(図示せず)からの空気は、第1のチャンバ421と連通していても、流体吸入連通構成要素440を通って第2のチャンバ422によって画定された呼吸に適した空気ゾーンに入ることは阻止される。例示的な一実施形態において、封止パッド452が吸入口441を取り囲む封止面446と接触する。封止面446は、吸入口441の周縁部の周りに十分な封止を達成することを可能とするために、内壁424から外向きに延出する隆起又は突出部の形態であってよい。
【0048】
遮断弁450は、開放位置(
図4a)と閉鎖位置(
図4b)との間で切り替わるように操作することができる。例示的な一実施形態において、アクチュエータ451は、第1の位置と第2の位置との間で回転することのできる回転可能なアクチュエータである。回転可能なアクチュエータ451が第1の位置にあるときは遮断弁450は開放位置にあり、回転可能なアクチュエータ451が第2の位置にあるときは遮断弁450は閉鎖位置にある。例示的な一実施形態において、回転可能なアクチュエータ451は、開放位置と閉鎖位置との間で90度回転する。他の実施形態において、回転可能なアクチュエータ451は、開放位置と閉鎖位置との間で45度、180度、又はその他の好適な角度回転する。回転可能なアクチュエータ451は、カム458を含んでいる。回転可能なアクチュエータ451の回転により、カム458が封止パッド452を封止面446に向かって押し、枢軸位置459で、封止パッド452が封止面446に接するまで枢軸旋回させる。
図4bに示す閉鎖位置において、封止パッド452は、封止面446と封止係合して空気が吸入口441を通過するのを阻止する。封止パッド452の少なくとも一部分がアクチュエータ451に加えられた力により曲がり及び/又は圧縮され、このような曲がり及び/又は圧縮が十分な封止を容易にすることができる。例示的な一実施形態において、装着者が回転可能なアクチュエータを解放すると、回転可能なアクチュエータ451は、弾性部材(図示せず)によって開放位置に戻る。弾性部材は、例えばねじりばね、又は当該技術分野において既知のその他好適な弾性部材であってもよい。他の例示的な実施形態において、回転可能なアクチュエータ451は、装着者による更なる入力によってのみ開放位置に戻り、装着者が回転可能なアクチュエータ451を、例えば第1の位置に回転させるまで、遮断弁450が閉鎖位置にあるように、第2の位置に留まる。ばね部材457は、封止パッド452を開放位置へと付勢する。ばね部材457は、封止パッド452を開放位置へと付勢するために、コイルばね、板ばね、エラストマ製バンド、又は当該技術分野において既知の好適な弾性部材をはじめとする任意の好適なばねを備えることができる。
【0049】
封止パッド452は、封止面446と接触すると封止パッド452の少なくとも一部分が曲がるか又は圧縮されることができるように、柔らかい又は弾性の材料の少なくとも一部分を含むことができる。アクチュエータ451からの力を封止パッド452の封止面446に接する部分全体に伝達させることができるように、封止パッド452の少なくとも一部分を剛性又は半剛性としてもよい。開放位置と閉鎖位置との間で所定の角度を通して回転することができ、封止パッド452を閉鎖位置に移動させるカム458を有する回転可能なアクチュエータ451は、封止パッド452が閉鎖位置に移動する度に封止パッド452に均一な力を伝達する。このように、所望の封止を生じさせる適切な力を容易にかつ常に達成することができる。
【0050】
回転可能なアクチュエータは、使いやすさ及び負圧フィットチェックを実施中のマスク本体の密着具合に対する影響の小さいことをはじめとする、いくつかの利点を提供すると考えられる。回転可能なアクチュエータの回転は装着者の顔面に向かう方向の力を必要とせず、したがって、マスク本体と装着者の顔面との間の自然な接触に変化をきたさないかもしれない。したがって、正確な負圧フィットチェックを達成することができる。
【0051】
図5a〜5cは、鼻及び口を覆い、装着者に呼吸に適した空気を提供することのできる例示的な呼吸保護装置500を図示している。呼吸保護装置500は、第1及び第2の吸気口503及び504を含むマスク本体520を含んでいる。第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素(図示せず)は、マスク本体520の反対側に位置付けられることができる。例示的な一実施形態において、第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素は、第1及び第2の吸気口503及び504に取り付けられるように構成されたフィルタカートリッジである。フィルタカートリッジは、外部環境から取り入れた空気が装着者に供給されるためにマスク本体の内部空間内に通る前に、この空気を濾過する。
【0052】
マスク本体520は、剛性の又は半剛性の部分520a及び柔軟な顔面接触部分520bを有し得る。マスク本体の柔軟な顔面接触部分は、マスク本体が人の鼻及び口を覆って快適に支持されることを可能とし、並びに/又は装着者の顔面に十分な封止を提供して、例えば、マスク本体520の内部に望ましくない空気の侵入を制限するように、柔軟にできている。顔面接触部材520bは、装着者の鼻を覆って及び装着者の頬に対してマスクが快適にかつぴったりと密着できるように、折り返しカフを有してもよい。剛性又は半剛性の部分520aは、例えばフィルタカートリッジのような呼吸空気の供給源構成要素を適切に支持することができるように、マスク本体520に構造的一体性を提供している。様々な例示的な実施形態において、マスク本体部分520a及び520bは、一体的に設けることもでき、又は後に恒久的に若しくは取り外し可能な方式で結合される別個に形成された部分として設けることもできる。
【0053】
呼気口530は、装着者が息を吐きだしている間にマスク本体の内部空間から空気を一掃することを可能とする。例示的な一実施形態において、呼気口530は、マスク本体520の中央に位置している。呼気口には、呼気時にマスク本体520内に生じる正圧の故に空気が出ていくことを可能としながらも外部空気の侵入を防ぐための呼気弁が嵌め込まれている。
【0054】
第1及び第2の吸気口503、504は、第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素を受容するように構成されている。
図5aに示す例示的な一実施形態において、マスク本体520は、マスク本体520の両側に第1及び第2の吸気口503、504を含み、マスク本体520の頬部分に隣接することができる。第1及び第2の吸気口503、504は、第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素(図示せず)をマスク本体520にしっかりと取り付けることができるように、補完的な嵌合機構を含んでいる。当該技術分野において既知のその他の好適な接続を設けることもできる。嵌合機構は、呼吸空気の供給源構成要素の耐用寿命の終わりに、又は異なる呼吸空気の供給源構成要素の使用が望まれる場合に、呼吸空気の供給源構成要素を取り外して交換することができるように、取り外し可能な接続とすることができる。あるいは、例えば、呼吸空気の供給源構成要素を損壊せずに呼吸空気の供給源構成要素を取り外すことができないように、恒久的な接続とすることもできる。
【0055】
呼吸保護装置500は、複数の流体吸入連通構成要素を閉じるための遮断弁550を含んでいる。例示的な一実施形態において、遮断弁550は、閉鎖位置と開放位置との間で動作可能である。遮断弁550は、閉鎖位置において、吸気口503及び504にある両方の呼吸空気の供給源構成要素とマスク本体520の呼吸に適した空気ゾーンとの間の流体連通を阻止する。
【0056】
遮断弁550は、装着者が、マスク本体の周縁部の周りの漏れの存在することの指標をもたらすための負圧フィットチェックを実施することを可能とする。遮断弁550が閉鎖位置にあるとき、空気のマスク本体520の呼吸に適した空気ゾーンへの侵入が阻止される。遮断弁が閉鎖位置にあるときに装着者が息を吸い込むとマスク内が負圧となり、いくつかの例示的な一実施形態では、マスク本体と装着者の顔面との間に十分な封止が達成されている場合、柔軟な顔面接触部材を内向きに撓めることができる。十分な封止が達成されていない場合、マスク本体の周縁部と装着者の顔面との間の呼吸に適した空気ゾーンに外部環境からの空気が結果として侵入することができる。このようにすれば、呼吸保護装置500を装着している装着者が負圧フィットチェックを容易に実施して、呼吸保護装置500と装着者の顔面及び/又は頭部との間に十分な封止が達成されているかどうかを決定することができる。
【0057】
フィルタカートリッジのような第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素を第1及び第2の吸気口503、504に取り付けることができる。したがって、第1の呼吸空気の供給源構成要素を通過した後に第1の吸気口503を経由してマスク本体520に入る空気は、第1の流体吸入連通構成要素540aを経由して呼吸に適した空気ゾーン522に入ることができ、第2の呼吸空気の供給源構成要素を通過した後に第2の吸気口504を経由してマスク本体520に入る空気は、第2の流体吸入連通構成要素540bを経由して呼吸に適した空気ゾーン522に入ることができる。第1及び第2の呼吸空気の供給源501、502からの空気は、このように別個の流体吸入連通構成要素540a、540bを経由して呼吸に適した空気ゾーン522に入る。第1及び第2の流体吸入連通構成要素540a、540bの各々は、第1及び第2の吸気口503、504と呼吸に適した空気ゾーン522との間の流体連通を提供するための1つ以上の開口部を備えている。第1及び第2の流体吸入連通構成要素540a、540bの各々は、第1及び第2の吸気口503、504と呼吸に適した空気ゾーン522との間の流体連通を選択的に可能とする吸気弁を含むことができる。
【0058】
例示的な一実施形態において、遮断弁550は、アクチュエータ551と第1及び第2の封止パッド552a、552bとを含んでいる。アクチュエータが押し下げられると、第1及び第2の封止パッド552a、552bが第1及び第2の吸入口を遮断して2つ以上の呼吸空気の供給源と呼吸に適した空気ゾーン522との間の流体連通を阻止する。例示的な一実施形態において、第1及び第2の封止パッド552a、552bは、封止パッド552a、552bに第1及び第2の吸入口を遮断させるためにアクチュエータ551が接触する作動面547a、547bを含んでいる。例示的な一実施形態において、封止パッド552a、552bは、第1及び第2の吸入口541a、541bをそれぞれ取り囲む第1及び第2の封止面546a、546bと接触する。封止面546a、546bは、吸入口541a、541bの周縁部の周りに十分な封止の達成を可能とするために、マスク本体520の内壁面又は第1及び第2の流体吸入連通構成要素540a、540bから外向きに延出する隆起又は突出部の形態であってもよい。
【0059】
遮断弁550は、開放位置(
図5b)と閉鎖位置(
図5c)との間で切り替わるように操作することができる。例示的な一実施形態において、アクチュエータ551は、外側被覆されたエラストマ製の押しボタン、摺動ボタンなどのようなボタンであり、装着者がこれを内向きに押圧して、第1及び第2の封止パッド552a、552bが第1及び第2の流体吸入連通構成要素540a、540bの封止面546a、546bと接触するまで第1及び第2の封止パッド552a、552bを枢軸位置559a、559b(図示せず)の周りに枢軸旋回させることができる。
図5bに示す開放位置において、ダイヤフラム又はフラップ(図示せず)が許容する場合、空気は、吸入口541a、541bを経由して呼吸に適した空気ゾーン522内に通ることができる。
図5cに示す閉鎖位置において、封止パッド552aは、封止面546aと封止係合して空気が吸入口541aを通過するのを阻止する。装着者がアクチュエータ551を解放すると、弾性部材がアクチュエータ551を開放位置へと付勢するので、アクチュエータ551は開放位置に戻る。いくつかの例示的な実施形態において、例えば遮断弁150について上述したように、遮断弁550は、マスク内の負圧の故に、装着者が息を吐くか又は呼吸に適した空気ゾーン522内の気圧が弾性部材の力よりも大きくなくなるまで、閉鎖位置に留まることができる。
【0060】
例示的な一実施形態において、エラストマ製のボタンの形態のアクチュエータ551は、開放位置に向かってアクチュエータ551を付勢する弾性部材として機能する。アクチュエータ551は、アクチュエータ551を支持し及び/又は遮断弁550を開放位置へと付勢するためにマスク本体520の外壁523に取り付けられた可撓性のウェブ556を含むことができる。可撓性のウェブ556は、例えば
図5cに示すように、装着者がアクチュエータ551を内向きに押圧したときに弾性的に変形することのできる可撓性の又は柔軟な材料で形成されている。可撓性のウェブ556は、閉鎖位置において曲がり及び/又は変形して、例えばアクチュエータのタブ547a、547bに接触することにより、封止パッド552a、552bを枢軸旋回させる。エラストマ製ウェブの曲げ及び/又は変形は、望ましくは、エラストマ製ウェブが、遮断弁の開放位置にある元の形状に繰り返し戻ることができるように、弾性領域内に限定される。
【0061】
例示的な一実施形態において、アクチュエータ551は、アクチュエータ551とマスク本体520との間に封止が形成されるようにして、マスク本体520に取り付けられている。例えば、アクチュエータ551の一部分は、例えば外側被覆によって、十分な封止を提供するために、マスク本体520と接合することもできる。ガスケット、フランジ、接着剤、締まり嵌め、成型技術、音波溶接、及び当該技術分野において既知のその他好適な技法を使用して、その他好適な封止部を設けることもできる。遮断弁550が開放位置、閉鎖位置、又は中間位置にあるときに、アクチュエータ551に隣接する十分な封止により、外部環境からの濾過されていない空気の侵入が阻止される。
【0062】
アクチュエータ551の可撓性のウェブの代わりに又はこれに加えて、その他の弾性部材を提供することもできる。いくつかの例示的な実施形態において、アクチュエータ551は、封止パッド552a、552bに取り付けられていない。可撓性のウェブ556のような弾性部材がアクチュエータ551を開放位置へと付勢し、ばね部材558a、558bのような1つ以上の追加部材が封止パッド552a、552bを開放位置へと付勢している。ばね部材558a、558bは、封止パッド552a、552bを開放位置へと付勢するために、コイルばね、板ばね、エラストマ製バンド、又は当該技術分野において既知の好適な弾性部材をはじめとする任意の好適なばねを備えることができる。いくつかの例示的な実施形態において、アクチュエータ551は封止パッド552a、552bに取り付けられており、可撓性のウェブ及び/又は1つ以上のばね部材558a、558bのような弾性部材がアクチュエータ551及び封止パッド552a、552bの両方を開放位置に向けて付勢している。
【0063】
図6a〜6cは、鼻及び口を覆い、装着者に呼吸に適した空気を提供することのできる例示的な呼吸保護装置600を図示している。呼吸保護装置600は、第1及び第2の吸気口603及び604を含むマスク本体620を含んでいる。第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素(図示せず)は、マスク本体620の反対側に位置付けられることができる。例示的な一実施形態において、第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素は、第1及び第2の吸気口603及び604に取り付けられるように構成されたフィルタカートリッジである。フィルタカートリッジは、外部環境から取り入れた空気が装着者に供給されるためにマスク本体の内部空間内に通る前に、この空気を濾過する。
【0064】
マスク本体620は、剛性の又は半剛性の部分620a及び柔軟な顔面接触部分(図示せず)を有し得る。マスク本体の柔軟な顔面接触部分は、マスク本体が人の鼻及び口を覆って快適に支持されることを可能とし、並びに/又は装着者の顔面に十分な封止を提供して、例えば、マスク本体620の内部に望ましくない空気の侵入を制限するように、柔軟にできている。上述の実施形態と同様に、顔面接触部材は、装着者の鼻を覆って及び装着者の頬に対してマスクが快適にかつぴったりと密着できるように、折り返しカフを有してもよい。剛性の又は半剛性の部分620aは、例えばフィルタカートリッジのような呼吸空気の供給源構成要素を適切に支持することができるように、マスク本体620に構造的一体性を提供している。様々な例示的な実施形態において、マスク本体部分620a及び柔軟な顔面接触部分は、一体的に設けることもでき、又は後に恒久的に若しくは取り外し可能な方式で結合される別個に形成された部分として設けることもできる。
【0065】
第1及び第2の吸気口603、604は、第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素を受容するように構成されている。
図6aに示す例示的な一実施形態において、マスク本体620は、マスク本体620の両側に第1及び第2の吸気口603、604を含み、マスク本体620の頬部分に隣接していてもよい。第1及び第2の吸気口603、604は、第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素(図示せず)をマスク本体620にしっかりと取り付けることができるように、補完的な嵌合機構を含んでいる。当該技術分野において既知のその他の好適な接続を設けることもできる。嵌合機構は、呼吸空気の供給源構成要素の耐用寿命の終わりに、又は異なる呼吸空気の供給源構成要素の使用が望まれる場合に、呼吸空気の供給源構成要素を取り外して交換することができるように、取り外し可能な接続とすることができる。あるいは、例えば、呼吸空気の供給源構成要素を損壊せずに呼吸空気の供給源構成要素を取り外すことができないように、恒久的な接続とすることもできる。
【0066】
図6cは、マスク本体620の、マスク本体620の中間部分を通る代表的な断面図を示している。マスク本体620は、内壁623によって分離された第1のチャンバ621と第2のチャンバ622とを含んでいる。呼吸に適した空気ゾーンは、第2のチャンバ622によって画定されている。第1及び第2の吸気口603、604は、第1のチャンバ621と流体連通している。したがって、第1の呼吸空気の供給源構成要素を通過した後第1の吸気口603を通ってマスク本体620に入る空気は、第2の呼吸空気の供給源構成要素を通過した後第2の吸気口604を通ってマスク本体620に入る空気と連通している。このように、第1及び第2の吸気口603、604からの空気は、マスク本体620の第2のチャンバ622によって画定された呼吸に適した空気ゾーンに供給される前に、第1のチャンバ621内で混合することが可能である。このことを達成するために、内壁623は、第1のチャンバ621と第2のチャンバ622との間の流体連通を可能とする開口部624を含み又は画定している。一実施形態において、開口部624には、好適な吸気弁625を嵌め込むこともできる。吸気弁625は、開口部624に嵌め込まれており、吸入時にマスク本体620内に生じる負圧により空気が第2のチャンバ622に入ることを可能としながらも、呼気時には吐き出された空気が第1のチャンバ622に入るのを阻止する。
【0067】
呼気口630は、装着者が息を吐きだしている間にマスク本体の内部空間から空気を一掃することを可能とする。例示的な一実施形態において、呼気口630は、マスク本体620の中央に位置している。呼気口には、呼気時にマスク本体620内に生じる正圧の故に空気が出ていくことを可能としながらも外部空気の侵入を防ぐための呼気弁が嵌め込まれている。図示した実施形態において、マスク本体620の下部には二次呼気口631が設けられており、呼気時にマスク本体620内に生じる正圧によって空気が第2のチャンバ622から出ることを更に可能としている。呼気口630及び二次呼気口631の各々は、空気が第2のチャンバ622から出ることを可能としながらも外気の侵入は阻止する好適な逆止め弁を備えることができる。
【0068】
呼吸保護装置600は、第1のチャンバ621と第2のチャンバ622との間の流体連通を阻止する遮断弁650を含んでいる。例示的な一実施形態において、遮断弁650は、閉鎖位置と開放位置との間で動作可能である。遮断弁650は、閉鎖位置において、マスク本体620の第1のチャンバ621(即ち、吸気口603及び604にある両方の呼吸空気の供給源構成要素からの流体)と第2のチャンバ622との間の流体連通を阻止する。遮断弁650は、開放位置において、第1のチャンバ621と第2のチャンバ622との間の流体連通を可能とする。
【0069】
遮断弁650は、装着者が、マスク本体の周縁部の周りの漏れの存在することの指標をもたらすための負圧フィットチェックを実施することを可能とする。遮断弁650が閉鎖位置にあるとき、マスク本体620の第2のチャンバ622によって画定された呼吸に適した空気ゾーンへの空気の侵入が阻止される。遮断弁が閉鎖位置にあるときに装着者が息を吸い込むとマスク内が負圧となり、いくつかの例示的な一実施形態では、マスク本体と装着者の顔面との間に十分な封止が達成されている場合、柔軟な顔面接触部材を内向きに撓めることができる。十分な封止が達成されていない場合、マスク本体の周縁部と装着者の顔面との間の呼吸に適した空気ゾーンに外部環境からの空気が結果として侵入することができる。このようにすれば、呼吸保護装置600を装着している装着者が負圧フィットチェックを容易に実施して、呼吸保護装置600と装着者の顔面及び/又は頭部との間に十分な封止が達成されているかどうかを決定することができる。
【0070】
フィルタカートリッジのような第1及び第2の呼吸空気の供給源構成要素を第1及び第2の吸気口603、604に取り付けることができる。第1及び第2の吸気口603及び604から、第1の呼吸空気の供給源構成要素を通過した後に第1の吸気口603を経由してマスク本体620に入る空気は、第1の流体吸入連通構成要素640aを経由して第1のチャンバ621に入ることができ、第2の呼吸空気の供給源構成要素を通過した後に第2の吸気口604を経由してマスク本体620に入る空気は、第2の流体吸入連通構成要素640bを経由して第1のチャンバ621に入ることができる。具体的には、第1及び第2の吸気口603、604からの空気は、このように別個の流体吸入連通構成要素640a、640bを経由して第1のチャンバ621に入る。第1及び第2の流体吸入連通構成要素640a、640bの各々は、第1及び第2の吸気口603、604と第1のチャンバ621との間の流体連通を提供するための1つ以上の開口部を備えている。
【0071】
例示的な一実施形態において、遮断弁650は、アクチュエータ651と、封止部652と、保持具653とを含んでいる。アクチュエータ651及び封止部652は、好適な接続によって連結している。保持具653はアクチュエータ651と封止部652との間に位置付けられ、アクチュエータ651をマスク本体620に固定している。アクチュエータ651が押し下げられると、封止部652が内壁623に向かって作動し、最終的に開口部624を遮断して第1のチャンバ621と第2のチャンバ622との間の流体連通を阻止する。例示的な一実施形態において、封止部652は、接触封止面654を画定している。例示的な一実施形態において、封止面654は、開口部624を取り囲む。図示のように、封止面654は、内壁623に向かって外向きに延出する外側の隆起又は突出部を含んでいる。遮断弁650が閉鎖位置へと移動すると、この突出部が撓み、開口部624の周縁部の周りの封止面654との間の封止の改善が可能となる。
【0072】
下記により詳細に説明するように、遮断弁650を操作して開放位置と閉鎖位置との間での切り替えを行うことができる。例示的な一実施形態において、アクチュエータ651は、エラストマ製の押しボタン、摺動ボタンなどのようなボタンであり、封止面654が封止面の内壁623に接触して開口部624を封止するように、装着者がこれを内向きに押圧することができる。アクチュエータ651は、開放位置から閉鎖位置に移行するときに、操作者が感知することのできる触覚フィードバックを生じさせてもよい。例えば、アクチュエータ651は、加えられた力に応じて座屈し又は歪むことのできる可撓体で形成することができる。開放位置では、吸気弁625が許容する場合は、空気が開口部624を通過することができる。閉鎖位置においては、封止面654は、内壁623と封止係合して空気が開口部624を通過するのを阻止する。装着者がアクチュエータ651を解放すると、弾性構造体がアクチュエータ651を開放位置へと付勢するので、アクチュエータ651は開放位置に戻る。封止部652もまた、第1のチャンバ621と第2のチャンバ622との間の流体連通の阻止の形成を補助するために、所望であれば、エラストマ材料で形成することができる。
【0073】
例示的な一実施形態において、アクチュエータ651は、アクチュエータ651とマスク本体620との間に封止部が形成されるようにして、マスク本体520に取り付けられている。例えば、アクチュエータ651は、マスク本体620の突出部662と保持具653との間に位置付けられ、外向きに延出するフランジ660を含んでいる。この例示的な実施形態において、フランジ660はU字形をしているものの、その他の形状を使用することもできる。ガスケット、フランジ、接着剤、締まり嵌め、成型技術、音波溶接、及び当該技術分野において既知のその他好適な技法を使用して、その他好適な封止部を設けることもできる。遮断弁650が開放位置、閉鎖位置、又は中間位置にあるときに、アクチュエータ651に隣接する十分な封止により、外部環境からの濾過されていない空気の侵入が阻止される。保持具653と突出部662との間の協働により、アクチュエータ651の、アクチュエータ651が開放位置から閉鎖位置へと移動する間に固定されている領域664(フランジ660の全体又は大部分)がもたらされる。アクチュエータの外側表面665でアクチュエータ651を押圧すると、領域664はマスク本体620及び内壁623に対して固定されたまま、外側表面665が内壁623に向かって移動する。
【0074】
アクチュエータ651は、操作者に触覚フィードバックを提供して封止検査が実施されていることを示すことができる。アクチュエータ651の弾性は、外側表面665に力が加わっていないときは、アクチュエータ651が開放位置に戻るようになっている。触覚フィードバックを提供するために、一実施形態において、アクチュエータ651は、外側表面665に加えられた力に応じて、
図7のグラフ700に概略図示したものと同様の力応答を呈する。具体的には、アクチュエータ651が開放位置から閉鎖位置までの直線経路に沿って移動する(即ち、変位する)。アクチュエータ651の位置によって、対応する応答力がもたらされる。グラフ700は、力を示す縦軸702及びアクチュエータ651の変位を示す横軸704を含んでいる。負荷経路又は曲線706は、外側表面665を内壁623に向けて変位させるために外側表面665にかかる最小の力を示している。
【0075】
最初に、荷重曲線706は、初期位置708から始まる。位置708では、アクチュエータ651には力が加わっていないので、アクチュエータの応答力はゼロである。アクチュエータ651が押し下げられると、荷重曲線706は、第1の中間位置710に達するまで正の傾きを呈する。アクチュエータ651は、第1の中間位置710で座屈し又は歪み、「ポン」と又は「カチッ」と音を立てて(「オイルキャニング」とも呼ばれる)操作者に触覚フィードバックを提供する。荷重曲線706の初期位置708から第1の中間位置までの部分を、応答力の上昇を呈するアクチュエータ651の第1の移行と呼ぶことができる。荷重曲線706が示すように、応答力は、中間位置710の後、第2の中間位置712に達するまで低下する。荷重曲線のこの部分を、応答力の低下を呈する第2の移行と呼ぶことができる。第2の中間位置712に達した後、荷重曲線706は上昇し、封止面654と内壁623との間の接触を示す。荷重曲線706は、封止面654と内壁623との間に封止が形成されるに従って(即ち、封止面654の撓みにより)停止位置714に達するまで上昇し、面654と内壁623との間の封止が完了していることを示す。負荷経路706のこの部分を、応答力の上昇を呈する第3の移行と呼ぶことができる。アクチュエータ651が解放されると、復帰曲線又は復帰経路716が、応答力がゼロである初期位置708に戻り、アクチュエータ651に力が加わっていないことを示す。復帰曲線716は荷重曲線706に類似しているが、アクチュエータ651が閉鎖位置から開放位置に移動するときにわずかに小さな応答力を呈する。
【0076】
上述の荷重曲線706及び復帰曲線716の理解を念頭におき、
図8a〜8cは、開放位置(
図8a)、中間位置(
図8b)、及び閉鎖位置(
図8c)にあるアクチュエータ651を図示している。視点として、アクチュエータ651は、
図8a〜8cにエラストマ製の押しボタンとして実施されている可撓性のウェブ又は可撓体で形成されており、外側表面665は、操作者の指と相互作用するためにマスク本体620の外側表面よりも上に少なくとも部分的に延出するドーム状の構造体を形成している。別の方法の実施形態において、外側表面665は、その全体がマスク本体620の外側表面よりも下に形成されている。いずれにせよ、アクチュエータ651は、フランジ660から内向きに延在するスパン720を含み又は規定している。アクチュエータ651が押し下げられている間、フランジ660はほぼ固定されたままである一方で、スパン720は内壁623に向かって移動する。スパン720からは突出部722が延出しており、封止部652の開口部724と協働してアクチュエータ651を封止部652に固定している。この接続により、外側表面665に加えられた力に応じて、スパン720及び封止部652が互いに呼応して並進する。
【0077】
保持具653が、スパン720の外縁部に対向する面732で終端するリム730を規定している。面732が、平面734を規定している。例示的な一実施形態において、アクチュエータ651の動作中、スパン720の(突出部722を除く)少なくとも一部が平面734を通過する。具体的な一実施形態において、アクチュエータ651が
図8cに図示した閉鎖位置に達すると、外側表面665の部分736(即ち、先端)が平面734を通過する。言い換えるならば、アクチュエータが
図8aの開放位置にあるとき、スパン720の少なくとも一部分は、平面734の第1の側にある。閉鎖位置では、前記一部分が第1の側とは反対の、平面734の第2の側に位置付けられる。前記一部分は、アクチュエータ651の外側表面665上に配置することができ、又は外側表面665よりも内側に配置することもできる。
【0078】
アクチュエータ651は、所望の特性を呈する構造的特徴を含むことができる。その特性の例としては、アクチュエータ651を変位させるために必要な力の小ささ、力が加えられていないときの開放位置への自動復帰、操作者への有意味な触覚フィードバックの提供、マスク本体620に対するロープロファイル、マスク本体620との十分な封止の提供、力の積極的な低下、及びその他が挙げられる。一例において、アクチュエータ651を変位させるために必要な力は、0.1ポンド・フット〜5.0ポンド・フット(約0.14ニュートン・メートル〜6.8ニュートン・メートル)の範囲であってよい。より具体的な範囲において、力は、約0.25ポンド・フット〜0.75ポンド・フット(0.34ニュートン・メートル〜1.02ニュートン・メートル)の範囲であり、特定の一実施形態において、約0.5ポンド・フット(0.7ニュートン・メートル)である。更なる例において、アクチュエータ651は、異なる位置において異なる厚さを呈する材料で形成することができる。更なる例において、アクチュエータ651には、シリコーン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマ、及び直鎖低密度ポリエチレンをはじめとするエラストマ材料のような、異なる材料を選択することができる。様々な例示的な実施形態において、アクチュエータ651の材料は、低表面エネルギーの表面を提供するように選択されている。アクチュエータ651は、アクチュエータ651上に使用環境内の汚れ及び汚染物質を寄せつけず、そうでなければ堆積させず、あるいはその他のあり方でアクチュエータ651の作動と干渉させないことができるように、低表面エネルギーシリコーンで製作することができる。特定の一実施形態において、シリコーンはポリジメチルシロキサンである。アクチュエータ651の表面エネルギー値の範囲は、約10〜30ミリジュール/m
2であってよく、より具体的に15〜25ミリジュール/m
2の範囲であってもよい。
【0079】
一実施形態において、スパン720の変位の方向と平行な平面内の断面で見ると、スパン720は、異なる厚さを呈する2つ以上の区画を含んでいる。異なる厚さは、先細りするような方法で達成することができ、又は所望であればより分離している方法で達成することもできる。スパン720に特定して言及すると、スパン720は、第1の中央区画740と、第2の中間区画742と、第3の外側区画744とを含んでいる。第1の区画740は、第1の厚さ750(区画740の幅に沿った位置で選択)を含んでいる。同様に、第2の区画742は第2の厚さ752(区画742の幅に沿った位置で選択)を含み、第3の区画は第3の厚さ754(区画744の幅に沿った位置で選択)を含んでいる。
【0080】
一実施形態において、第1の厚さ750は区画740内の最大厚さとして選択され、第2の厚さ752は区画742内の最小厚さとして選択され、第3の厚さは区画744内の最大厚さとして選択されている。スパン720全域にわたる厚さの変動は本明細書内で開示されることが意図されているので、所望によりその他の厚さを選択することもできる。厚さの位置に拘わらず、一例として、第1の厚さ750及び第3の厚さ754が第2の厚さ752よりも大きいことが挙げられる。この実施形態において、アクチュエータ651の呈する歪みは、第2の区画742に集中する。
【0081】
第2の区画742は、アクチュエータ651内に切り欠きを形成することにより形成することができる。一実施形態において第2の区画742は環状である一方、その他の実施形態は厚さを減じた別個の部分を含む第2の区画742を含んでいる。様々な実施形態において、第2の区画742は、約1.5mm〜3.5mmの例示的な範囲の直径によって規定された、半円の断面を形成している。いずれにせよ、アクチュエータ651が
図8cに図示した閉鎖位置にあるとき、第2の区画742は、第1の区画740又は第3の区画742のいずれよりも大きな歪みを呈し、更に、第1の区画740又は第3の区画742と比較して低い剛性を有している。
【0082】
一実施形態において、第3の区画744は、スパン720からリム730の面732に向かって延出するリブ又は突出部760を形成している。リブ760は任意選択的に実施できるものの、リブ760はアクチュエータ651の動作中に変形し、上記に確認した(第1の中間位置710から第2の中間位置712への)第2の移行中の力のより急激な低下を招き、したがって、増強された触覚フィードバックを提供する。別の方法による一実施形態において、触覚フィードバックを増強するために、所望により、複数のリブを利用することができる。
【0083】
当業者であれば理解するであろうとおり、所望の特性を呈するように、様々な方法でアクチュエータ651に変更を施すことができる。例えば、様々な特性を呈するように、第2の区画742の位置付け(したがって最小厚さ752)を選択することができる。アクチュエータ651の応答を変更することのできるその他の変動要素としては、アクチュエータ651の直径(例えば、フランジ660の外形寸法及び/又はスパン720の外径)、アクチュエータ651の外側表面665の形状(例えば、ドーム、平坦、反転ドーム)、外側表面665の弧の高さ(ドーム形状を利用する場合の、スパン720とフランジ660との間の接続点から先端736までのアクチュエータ651の作動方向の高さ)、開放位置から閉鎖位置までのアクチュエータ651の変位量、スパン720の最大厚さに対する区画742の切り欠きの直径の比の選択、及びその他を挙げることができる。アクチュエータ651とマスク本体62の外側表面との間の分離を最小限に抑えることが、更に望ましい可能性がある。アクチュエータ651とマスク本体620の外側表面との間の間隙又は凹部が、汚染物質及び/又はくずを不必要に閉じ込める可能性がある。したがって、外側表面665とマスク本体620の外側表面との間の分離を最小限に抑えるために、外側表面665に類似したドーム形状が有利な場合がある。具体的には、外側表面665は、アクチュエータ651が動作すると圧縮状態になる。アクチュエータ651の変位量を上記に確認した外側表面665の弧の高さの2倍未満に限定することにより、マスク本体620の外側表面からの外側表面665の分離が最小限に抑えられる。アクチュエータ651の最大厚さに対する厚さを減じた区画742の切り欠きの直径の比の選択は、約1.50〜0.33の範囲であってよい。具体的な例の中で述べたように、区画742の切り欠きの直径として2mmを選択した場合、アクチュエータ651の最大厚さは、3.00mm〜0.67mmの範囲であってよい。
【0084】
図9a〜9dは、上述の装置600のような呼吸保護装置に使用するアクチュエータの4つの異なる実施形態を図示している。
図9aは、構造がアクチュエータ651に類似しているアクチュエータ800を図示している。アクチュエータ800において、アクチュエータ800のスパン804内に厚さを減じた区画802が設けられている。
図8a中の区画802は、第2の区画742と比較して、スパン802内により深く延伸しており、したがって、第2の区画742よりも薄い厚さを有している。更に、区画802は、第2の区画742と比較したときにより狭い幅を有している。
図9bにおいて、アクチュエータ810は、アクチュエータ810の突出部816に隣接したスパン814内に位置付けられた厚さを減じた区画812を含んでいる。アクチュエータ651の区画742と比較したときに、区画812は区画742よりもアクチュエータ810の中心により近く位置している。
図9cにおいて、アクチュエータ820は、厚さを減じた第1の内側区画822と厚さを減じた第2の外側区画824とを含んでいる。内側区画822がアクチュエータ820の突出部826に隣接して位置している一方、外側区画824は内側区画822から離間して配置され、アクチュエータ820のフランジ828により近く位置している。
図9dにおいて、アクチュエータ830は、中心区画834からフランジ836へと延在してアクチュエータ830の周縁部に位置付けられた厚さを減じた区画832を含んでいる。この実施形態において、厚さを減じた区画の厚さは、その長さに沿って均一である。
【0085】
装置600のような呼吸保護装置に有用であるアクチュエータ900に関する別の実施形態を、
図10a〜10cに図示する。具体的には、
図10aは第1の開放位置におけるアクチュエータ900を図示し、
図9bは第2の中間位置におけるアクチュエータ900を図示し、
図9cは第3の閉鎖位置におけるアクチュエータ900を図示している。アクチュエータ900は、フランジ904と連結している外側表面903を規定するスパン902を含んでいる。マスク本体と連結すると、フランジ904は外側リム906でマスク本体に固定される。フランジ904は、リム906から第1の区画908で下向きに、及び第2の区画910で上向きに広がりスパン902と連結している。下部のU字形状の区画912が、第1の区画908を第2の区画910と接続している。封止部914がスパン902と連結しており、流体連通がチャンバ918に達することを阻止するために、内壁916と協働する。
【0086】
封止部914は、動作中、外側表面903に加えられた力に応じて、
図10bに図示したように内壁916に向かって移動する。封止部914が壁部916に向かって移動すると、フランジ904に応力がかかり始める。具体的には、フランジ904が広がり、第1の区画908と第2の区画910との間により大きな角度を形成し始める。
図10cにおいて、アクチュエータ900は閉鎖位置にあり、封止部914が内壁916に接してチャンバ918への流体流れを阻止している。アクチュエータ900は装着者が負圧密着試験を実施することを可能とするために使用するうえで効果的であるものの、スパン902の縁部とリム906との間に開口部920が生じる。くず及びその他の汚染物質が開口部920を通って容易に侵入し、フランジ904の第1の区画908と第2の区画910との間にひっかかる可能性がある。くず及び/又は汚染物質の量の多い用途では、この構成が望ましくない場合がある。
【0087】
本開示による呼吸保護装置は、いくつかの利点を提供する。閉鎖位置と開放位置との間で動作可能な遮断弁は、装着者が負圧密着試験を容易に行うことを可能とする。例えば、吸気口を閉鎖する遮断弁は、マスクの周縁部と使用者の顔面との間の適切な封止の存在を確認するために、従来の正圧密着装置と比較してより効果的かつ再現可能なフィットチェックを提供すると考えられる。したがって、本開示による呼吸用マスクは、例えば従来の多くの装置ではアクセスできずに容易に閉鎖されなかった吸気口を閉鎖する解決策を提供することができる。上述の呼吸用マスクは、マスクが複数の呼吸空気の供給源構成要素又はより多くの吸気口を含むことができる場合であってさえ、単一の弁を閉鎖することにより負圧フィットテストを実施することを可能とし、装着者が、例えば、複数のアクチュエータを係合したり又は各吸気口若しくは呼吸空気の供給源構成要素について個別に試験を実施する必要がない。本明細書内で説明した遮断弁は、顔の半分を覆う呼吸用マスク、顔全体を覆う呼吸用マスク、電動又は正圧呼吸用マスク、及びその他好適な呼吸保護装置に好適であることができる。
【0088】
上記の発明を実施するための形態及び実施例は、あくまで明確に理解されるよう示したものである。詳細な説明及び実施形態から無用の限定はないと理解すべきである。本開示の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態において多くの変更を行うことができることが、当業者には明白であろう。上記の実施形態のいずれかに関して記載されたいずれかの特徴又は特性は、個々に、又は他のいずれかの特徴又は特性と組み合わせて組み込むことができ、単に明確性のために上記の順番及び組み合わせで提示される。したがって、本開示の範囲は、本明細書で説明した厳密な詳細及び構造に限定すべきではなく、むしろ請求項の言葉で説明されている構造及びこれらの構造の均等物によって限定すべきである。