特許第6842961号(P6842961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6842961-ハイブリッドヒートポンプシステム 図000002
  • 特許6842961-ハイブリッドヒートポンプシステム 図000003
  • 特許6842961-ハイブリッドヒートポンプシステム 図000004
  • 特許6842961-ハイブリッドヒートポンプシステム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842961
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】ハイブリッドヒートポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20210308BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20210308BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20210308BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20210308BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20210308BHJP
   F24F 11/41 20180101ALI20210308BHJP
   F24F 11/42 20180101ALI20210308BHJP
   F24F 11/84 20180101ALI20210308BHJP
【FI】
   F25B47/02 530C
   F25B47/02 530P
   F25B47/02 530L
   F25B47/02 570A
   F25B27/02 U
   F25B27/00 B
   F25B13/00 341E
   F25B1/00 321B
   F25B1/00 387K
   F24F11/41 100
   F24F11/42
   F24F11/84
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-53333(P2017-53333)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-155456(P2018-155456A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】酒井 寿成
(72)【発明者】
【氏名】村井 則通
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−117894(JP,A)
【文献】 特開2015−152246(JP,A)
【文献】 特開2002−243289(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0104576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
F25B 27/02
F25B 13/00
F25B 1/00
F24F 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環する冷媒循環路と、
前記冷媒循環路を循環する冷媒を膨張させる膨張弁と、
冷媒と室内空気とを熱交換させる室内熱交換器を前記冷媒循環路としての室内側冷媒循環路部位に設ける室内機ユニットと、
エンジンを駆動源として冷媒を圧縮するエンジン駆動式圧縮機と、冷媒と外気とを熱交換させるGHP室外熱交換器とを、前記冷媒循環路としてのGHP冷媒循環路部位に設けるGHP室外機ユニットと、
電動機を駆動源として冷媒を圧縮する電気駆動式圧縮機と、冷媒と外気とを熱交換させるEHP室外熱交換器とを、前記冷媒循環路としてのEHP冷媒循環路部位に設けるEHP室外機ユニットとを備え、
前記GHP冷媒循環路部位に、前記エンジン駆動式圧縮機と前記室内熱交換器と前記膨張弁と前記GHP室外熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させ暖房運転を行う暖房循環切換状態と、前記エンジン駆動式圧縮機と前記GHP室外熱交換器と前記膨張弁と前記室内熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させ冷房運転を行う冷房循環切換状態とで、冷媒の循環状態を切り替えるGHP冷媒循環状態切換手段を備え、
前記EHP冷媒循環路部位に、前記電気駆動式圧縮機と前記室内熱交換器と前記膨張弁と前記EHP室外熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させる前記暖房循環切換状態と、前記電気駆動式圧縮機と前記EHP室外熱交換器と前記膨張弁と前記室内熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させる前記冷房循環切換状態とで、冷媒の循環状態を切り替えるEHP冷媒循環状態切換手段を備えるハイブリッドヒートポンプシステムであって、
前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段が前記暖房循環切換状態にあるときに、前記電気駆動式圧縮機の出口の冷媒の少なくとも一部を、前記暖房循環切換状態の冷媒の通流方向での前記EHP室外熱交換器の出口へ導く第1冷媒通流路と、
前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の入口の冷媒を、前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の入口へ導く第2冷媒通流路と、
前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段が前記暖房循環切換状態にあるときに、前記電気駆動式圧縮機の出口の冷媒の少なくとも一部を、前記第1冷媒通流路と前記EHP室外熱交換器と前記第2冷媒通流路とに記載の順に導く流路形成機構と、
前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段が前記暖房循環切換状態にあるときに、前記流路形成機構を働かせる形態で、前記EHP室外熱交換器の霜取りを行う除霜運転を実行する運転制御部を備えるハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段を前記暖房循環切換状態として前記暖房運転を実行させると同時に、前記除霜運転を実行させる霜取暖房同時運転を実行する請求項1に記載のハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記第1冷媒通流路は、当該第1冷媒通流路を通流する冷媒の流量を制御する流量制御弁を備え、
前記運転制御部は、前記霜取暖房同時運転時に、少なくとも前記流量制御弁の開度を制御する形態で、前記除霜運転と前記暖房運転との負荷比率を調整する負荷比率調整制御を実行する請求項2に記載のハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の出口にて冷媒とオイルとを分離する第1オイルセパレーターと、
前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の出口にて冷媒とオイルとを分離する第2オイルセパレーターと、
前記第1オイルセパレーターにて分離されたオイルを貯留する第1オイル貯留部位と、前記第2オイルセパレーターにて分離されたオイルを貯留する第2オイル貯留部位とを連通接続するオイル共有路と、
前記オイル共有路と前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の入口とを接続する第1オイル通流路と、当該第1オイル通流路を開閉する第1オイル開閉弁と、
前記オイル共有路と前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の入口とを接続する第2オイル通流路と、当該第2オイル通流路を開閉する第2オイル開閉弁とを備え、
前記第2冷媒通流路は、前記オイル共有路の少なくとも一部と、前記第1オイル通流路と、前記第2オイル通流路とから構成され、
前記運転制御部は、前記除霜運転の実行時に、前記第1オイル開閉弁及び前記第2オイル開閉弁を開放状態に制御する請求項1〜3の何れか一項に記載のハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の入口と前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の入口とを接続する冷媒専用の流路である第3冷媒通流路を前記第2冷媒通流路として備え、
当該第3冷媒通流路を開閉する第4開閉弁を備え、
前記運転制御部は、前記除霜運転を実行時に、前記第4開閉弁を開放状態に制御する請求項1〜3の何れか一項に記載のハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項6】
前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の出口にて冷媒とオイルとを分離する第1オイルセパレーターと、
前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の出口にて冷媒とオイルとを分離する第2オイルセパレーターと、
前記第1オイルセパレーターにて分離されたオイルを貯留する第1オイル貯留部位と、前記第2オイルセパレーターにて分離されたオイルを貯留する第2オイル貯留部位とを連通接続するオイル共有路と、
前記オイル共有路と前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の入口とを接続する第1オイル通流路と、当該第1オイル通流路を開閉する第1オイル開閉弁と、
前記オイル共有路と前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の入口とを接続する第2オイル通流路と、当該第2オイル通流路を開閉する第2オイル開閉弁とを備え、
前記運転制御部は、前記第1オイル開閉弁と前記第2オイル開閉弁の開閉タイミングを制御して、前記エンジン駆動式圧縮機と前記電気駆動式圧縮機とのオイルバランスを制御するオイルバランス制御運転を実行可能であり、
前記運転制御部は、前記オイルバランス制御運転と前記除霜運転とを同時に実行する請求項5に記載のハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項7】
前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段が前記暖房循環切換状態にあるときに、少なくとも前記室内機ユニットを通過した後で前記GHP冷媒循環路部位の前記エンジン駆動式圧縮機を通過する前の冷媒と前記エンジンのエンジン冷却水とを熱交換する形態で加熱するサブエバポレーターを備え、
前記運転制御部は、少なくとも前記除霜運転を実行時の前記サブエバポレーターに冷媒を通流する請求項1〜6の何れか一項に記載のハイブリッドヒートポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒が循環する冷媒循環路と、
前記冷媒循環路を循環する冷媒を膨張させる膨張弁と、
冷媒と室内空気とを熱交換させる室内熱交換器を前記冷媒循環路としての室内側冷媒循環路部位に設ける室内機ユニットと、
エンジンを駆動源として冷媒を圧縮するエンジン駆動式圧縮機と、冷媒と外気とを熱交換させるGHP室外熱交換器とを、前記冷媒循環路としてのGHP冷媒循環路部位に設けるGHP室外機ユニットと、
電動機を駆動源として冷媒を圧縮する電気駆動式圧縮機と、冷媒と外気とを熱交換させるEHP室外熱交換器とを、前記冷媒循環路としてのEHP冷媒循環路部位に設けるEHP室外機ユニットとを備え、
前記GHP冷媒循環路部位に、前記エンジン駆動式圧縮機と前記室内熱交換器と前記膨張弁と前記GHP室外熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させ暖房運転を行う暖房循環状態と、前記エンジン駆動式圧縮機と前記GHP室外熱交換器と前記膨張弁と前記室内熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させ冷房運転を行う冷房循環状態とで、冷媒の循環状態を切り替えるGHP冷媒循環状態切換手段を備えると共に、
前記EHP冷媒循環路部位に、前記電気駆動式圧縮機と前記室内熱交換器と前記膨張弁と前記EHP室外熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させる暖房循環状態と、前記電気駆動式圧縮機と前記EHP室外熱交換器と前記膨張弁と前記室内熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させる冷房循環状態とで、冷媒の循環状態を切り替えるEHP冷媒循環状態切換手段を備えるハイブリッドヒートポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプシステムとして、エンジンを駆動源とするエンジン駆動式のヒートポンプ(以下、GHPと略称する場合がある)と、電動機を駆動源とする電気駆動式のヒートポンプ(以下、EHPと略称する場合がある)とを備えたハイブリッドヒートポンプシステムが知られている(特許文献1を参照)。
GHPは、運転の際にエンジンの排熱が発生するため、例えば、室外熱交換器に着霜するほど外気温度が低い場合等には、当該排熱を用いる等して除霜運転ができるため、低温での立ち上がり性や暖房能力が高い。また、駆動源としてエンジンを用いるためEHPに比して節電性が高いというメリットがある。一方で、低負荷における運転効率が低く、低負荷での省エネ性は高いとは言えない。
EHPは、低負荷での運転効率がGHPに比べ高く、低負荷での省エネ性に優れている。一方で、運転の際に排熱がほとんど発生しないため、低温での立ち上り性は高いとは言えない。また、電動機を駆動源とし、運転に際して電動機等のモータを駆動して電力を消費することから、GHPに比べ節電性が高いとも言えない。
【0003】
そこで、上記ハイブリッドヒートポンプシステムでは、GHPとEHPの優れた点を取り入れるべく、空調負荷率毎にGHPとEHPとの運転容量比率を設定した運転制御マップに従って夫々の運転を制御する運転制御部が設けられている。
【0004】
尚、当該運転制御部は、外気温度が室外熱交換器に着霜する程度に低い場合等に暖房運転を実行する場合、室外熱交換器への着霜を防止するため、例外的に、上述の運転制御マップに従わずに、立ち上がり時、及び一定時間毎等に、GHPとEHPとの双方での冷媒循環状態を、冷房運転時の冷媒循環状態として、室外熱交換器を加熱する、所謂、除霜運転を実行する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−132410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような除霜運転を実行する場合、室内熱交換器にて熱を回収することになるため、室内へ比較的低温の冷媒が導かれ、室内の使用者に不快感を与えることがあり、必ずしも快適であるとは言えなかった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低外気温条件下での暖房運転において、室外熱交換器への着霜を好適に防止しながらも、室内へ比較的低温の空調用空気が流入して快適性が損なわれることを好適に防止できるハイブリッドヒートポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのハイブリッドヒートポンプシステムは、
冷媒が循環する冷媒循環路と、
前記冷媒循環路を循環する冷媒を膨張させる膨張弁と、
冷媒と室内空気とを熱交換させる室内熱交換器を前記冷媒循環路としての室内側冷媒循環路部位に設ける室内機ユニットと、
エンジンを駆動源として冷媒を圧縮するエンジン駆動式圧縮機と、冷媒と外気とを熱交換させるGHP室外熱交換器とを、前記冷媒循環路としてのGHP冷媒循環路部位に設けるGHP室外機ユニットと、
電動機を駆動源として冷媒を圧縮する電気駆動式圧縮機と、冷媒と外気とを熱交換させるEHP室外熱交換器とを、前記冷媒循環路としてのEHP冷媒循環路部位に設けるEHP室外機ユニットとを備え、
前記GHP冷媒循環路部位に、前記エンジン駆動式圧縮機と前記室内熱交換器と前記膨張弁と前記GHP室外熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させ暖房運転を行う暖房循環切換状態と、前記エンジン駆動式圧縮機と前記GHP室外熱交換器と前記膨張弁と前記室内熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させ冷房運転を行う冷房循環切換状態とで、冷媒の循環状態を切り替えるGHP冷媒循環状態切換手段を備え、
前記EHP冷媒循環路部位に、前記電気駆動式圧縮機と前記室内熱交換器と前記膨張弁と前記EHP室外熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させる前記暖房循環切換状態と、前記電気駆動式圧縮機と前記EHP室外熱交換器と前記膨張弁と前記室内熱交換器とに記載の順に冷媒を循環させる前記冷房循環切換状態とで、冷媒の循環状態を切り替えるEHP冷媒循環状態切換手段を備えるハイブリッドヒートポンプシステムであって、その特徴構成は、
前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段が前記暖房循環切換状態にあるときに、前記電気駆動式圧縮機の出口の冷媒の少なくとも一部を、前記暖房循環切換状態の冷媒の通流方向での前記EHP室外熱交換器の出口へ導く第1冷媒通流路と、
前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の入口の冷媒を、前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の入口へ導く第2冷媒通流路と、
前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段が前記暖房循環切換状態にあるときに、前記電気駆動式圧縮機の出口の冷媒の少なくとも一部を、前記第1冷媒通流路と前記EHP室外熱交換器と前記第2冷媒通流路とに記載の順に導く流路形成機構と、
前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段が前記暖房循環切換状態にあるときに、前記流路形成機構を働かせる形態で、前記EHP室外熱交換器の霜取りを行う除霜運転を実行する運転制御部を備える点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、特に、運転制御部が除霜運転を実行しているときには、第1冷媒通流路を介して、電気駆動式圧縮機の出口の冷媒であって電気駆動式圧縮機で圧縮され昇温した冷媒の一部を、EHP室外熱交換器へ導くことができるから、EHP室外熱交換器での着霜を良好に防止することができると共に、着霜している場合にはその霜を積極的に取り除くことができる。
上述の如く構成する場合、GHP冷媒循環状態切換手段及びEHP冷媒循環状態切換手段が暖房循環切換状態にあるときに、電気駆動式圧縮機の出口の冷媒がEHP室外熱交換器の出口側へ導かれることになるから、暖房循環切換状態にあるときの冷媒通流方向でのEHP室外熱交換器の出口から入口へ向けて冷媒が通流することになり、当該冷媒は、EHP室外熱交換器を介してGHP冷媒循環路部位へ向けて導かれ、GHP冷媒循環路部位からEHP冷媒循環路部位へ、冷媒が還流できなくなる。
そこで、上記特徴構成にあっては、第2冷媒通流路を備えると共に、運転制御部が、流路形成機構を働かせて、除霜運転を実行する場合に当該第2冷媒通流路に冷媒を通流させて、GHP冷媒循環路部位におけるエンジン駆動式圧縮機の入口の冷媒を、EHP冷媒循環路部位における電気駆動式圧縮機の入口へ導くのである。
【0010】
更に、当該構成によれば、第2冷媒通流路にて冷媒を導くことで、GHP冷媒循環路部位でのエンジン駆動式圧縮機の入口と、EHP冷媒循環路部位での電気駆動式圧縮機の入口とを接続するため、冷媒の圧力バランスを大きく崩すことなく、GHP室外機ユニットとEHP室外機ユニットとで良好に、暖房運転を実行することができることになる。
以上の構成を採用することにより、低外気温条件下での暖房運転において、室外熱交換器への着霜を好適に防止しながらも、室内へ比較的低温の空調用空気が流入して快適性が損なわれることを好適に防止できるハイブリッドヒートポンプシステムを実現できる。
【0011】
尚、本発明において、EHP室外熱交換器の出口という文言は、冷媒循環路において、EHP室外熱交換器を通過した冷媒が、ヒートポンプの主要構成(圧縮機、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器)の何れも通過しない流路部位を意味するものとする。
また、エンジン駆動式圧縮機の出口、電気駆動式圧縮機の出口という文言についても、エンジン駆動式圧縮機又は電気駆動式圧縮機から吐出された冷媒が、ヒートポンプの主要構成の何れも通過しない流路部位を意味するものとする。
また、エンジン駆動式圧縮機の入口、電気駆動式圧縮機の入口という文言は、冷媒循環路での冷媒通流方向での直近のヒートポンプの主要構成を通過してから圧縮機までの間において、他のヒートポンプの主要構成の何れも通過しない流路部位を意味するものとする。
【0012】
ハイブリッドヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、
前記運転制御部は、前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段を前記暖房循環切換状態として前記暖房運転を実行させると同時に、前記除霜運転を実行させる霜取暖房同時運転を実行する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、運転制御部は、GHP冷媒循環状態切換手段及びEHP冷媒循環状態切換手段を暖房循環切換状態として暖房運転を実行させると同時に、除霜運転を実行させる霜取暖房同時運転を実行するから、暖房運転をしながらも、除霜運転を実行することができ、暖房と霜取りの同時実行による快適性の向上を図ることができる。
結果、従来技術の如く、暖房運転を実行すべきときに、室内に比較的低温の空調用空気が導かれ、使用者の快適性が悪化することを好適に防止できる。
【0014】
ハイブリッドヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、
前記第1冷媒通流路は、当該第1冷媒通流路を通流する冷媒の流量を制御する流量制御弁を備え、
前記運転制御部は、前記霜取暖房同時運転時に、少なくとも前記流量制御弁の開度を制御する形態で、前記除霜運転と前記暖房運転との負荷比率を調整する負荷比率調整制御を実行する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、第1冷媒通流路は、当該第1冷媒通流路を通流する冷媒の流量を制御する流量制御弁を備え、運転制御部が、霜取暖房同時運転時に、少なくとも流量制御弁の開度を制御する形態で、除霜運転と暖房運転との負荷比率を調整する負荷比率調整制御を実行するから、単一の流量制御弁の開度制御という比較的簡易な制御により、除霜運転と暖房運転との負荷比率を適切に調整することができる。
【0016】
ハイブリッドヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、
前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の出口にて冷媒とオイルとを分離する第1オイルセパレーターと、
前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の出口にて冷媒とオイルとを分離する第2オイルセパレーターと、
前記第1オイルセパレーターにて分離されたオイルを貯留する第1オイル貯留部位と、前記第2オイルセパレーターにて分離されたオイルを貯留する第2オイル貯留部位とを連通接続するオイル共有路と、
前記オイル共有路と前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の入口とを接続する第1オイル通流路と、当該第1オイル通流路を開閉する第1オイル開閉弁と、
前記オイル共有路と前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の入口とを接続する第2オイル通流路と、当該第2オイル通流路を開閉する第2オイル開閉弁とを備え、
前記第2冷媒通流路は、前記オイル共有路の少なくとも一部と、前記第1オイル通流路と、前記第2オイル通流路とから構成され、
前記運転制御部は、前記除霜運転の実行時に、前記第1オイル開閉弁及び前記第2オイル開閉弁を開放状態に制御する点にある。
【0017】
上記特徴構成よれば、通常のハイブリッドヒートポンプシステムにおいて設けられるオイル共有路の少なくとも一部と、第1オイル通流路と、第2オイル通流路とを、第2冷媒通流路として兼用する構成とし、更に、運転制御部は、従来オイルの流路に設けられている第1オイル開閉弁及び第2オイル開閉弁を開放状態に制御するのみで、除霜運転を実行できるから、構成を複雑化することなく、所望の除霜運転を実行できる。
【0018】
ハイブリッドヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、
前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の入口と前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の入口とを接続する冷媒専用の流路である第3冷媒通流路を前記第2冷媒通流路として備え、
当該第3冷媒通流路を開閉する第4開閉弁を備え、
前記運転制御部は、前記除霜運転を実行時に、前記第4開閉弁を開放状態に制御する点にある。
【0019】
上述したように、従来から設けられているオイルの流路を第2冷媒通流路として兼用する場合、構成が複雑化することを避けられると共に、それに伴う省コスト化を図ることができるというメリットがある。しかしながら当該構成を採用する場合、除霜運転実行時には、オイルの流路にオイルを通流させ、エンジン駆動式圧縮機と電気駆動式圧縮機との間でオイルのバランスをとるオイルバランス制御運転が実行できないという問題がある。
上記特徴構成によれば、オイルの流路とは別に、GHP冷媒循環路部位の冷媒をEHP冷媒循環路部位へ導く冷媒専用の流路である第3冷媒通流路を備えることで、除霜運転とオイルバランス制御運転が競合することを適切に避けることができる。
【0020】
冷媒専用の流路である第3冷媒通流路を前記第2冷媒通流路として備えるハイブリッドヒートポンプシステムでは、
前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の出口にて冷媒とオイルとを分離する第1オイルセパレーターと、
前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の出口にて冷媒とオイルとを分離する第2オイルセパレーターと、
前記第1オイルセパレーターにて分離されたオイルを貯留する第1オイル貯留部位と、前記第2オイルセパレーターにて分離されたオイルを貯留する第2オイル貯留部位とを連通接続するオイル共有路と、
前記オイル共有路と前記GHP冷媒循環路部位における前記エンジン駆動式圧縮機の入口とを接続する第1オイル通流路と、当該第1オイル通流路を開閉する第1オイル開閉弁と、
前記オイル共有路と前記EHP冷媒循環路部位における前記電気駆動式圧縮機の入口とを接続する第2オイル通流路と、当該第2オイル通流路を開閉する第2オイル開閉弁とを備え、
前記運転制御部は、前記第1オイル開閉弁と前記第2オイル開閉弁の開閉タイミングを制御して、前記エンジン駆動式圧縮機と前記電気駆動式圧縮機とのオイルバランスを制御するオイルバランス制御運転を実行可能であり、
前記運転制御部は、前記オイルバランス制御運転と前記除霜運転とを同時に実行することが好ましい。
【0021】
ハイブリッドヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、
前記GHP冷媒循環状態切換手段及び前記EHP冷媒循環状態切換手段が前記暖房循環切換状態にあるときに、少なくとも前記室内機ユニットを通過した後で前記GHP冷媒循環路部位の前記エンジン駆動式圧縮機を通過する前の冷媒と前記エンジンのエンジン冷却水とを熱交換する形態で加熱するサブエバポレーターを備え、
前記運転制御部は、少なくとも前記除霜運転を実行時の前記サブエバポレーターに冷媒を通流する点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、GHP室外機ユニット及びEHP室外機ユニット側において、エンジンにて発生する排熱を良好に利用する形態で、GHP室外熱交換器及びEHP室外熱交換器での着霜を良好に防止できる。
また、例えば、暖房循環切換状態にあるときに、冷媒を、サブエバポレーターとGHP室外熱交換器へ並列して通流させる場合、例えば、GHP室外熱交換器に対応する膨張弁の開度を閉める方向に調整し、サブエバポレーターで回収する熱量を増やし、GHP室外機熱交換器で冷媒が回収する熱量が低下することにより、着霜を良好に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係るハイブリッドヒートポンプシステムにおいて通常の暖房運転を実行している場合の冷媒の流れを示す図
図2】第1実施形態に係るハイブリッドヒートポンプシステムにおいて、霜取暖房同時運転を実行している場合の冷媒の流れを示す図
図3】第2実施形態に係るハイブリッドヒートポンプシステムにおいて通常の暖房運転を実行している場合の冷媒の流れを示す図
図4】第2実施形態に係るハイブリッドヒートポンプシステムにおいて、霜取暖房同時運転を実行している場合の冷媒の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係るハイブリッドヒートポンプシステム100は、低外気温条件下での暖房運転において、室外熱交換器への着霜を好適に防止しながらも、室内へ比較的低温の空調用空気が流入して快適性が損なわれることを好適に防止できるものに関する。
以下、図面に基づき当該ハイブリッドヒートポンプシステム100の実施形態について説明する。
【0025】
〔第1実施形態〕
ハイブリッドヒートポンプシステム100は、図1、2に示すように、室内熱交換器Exi1、Exi2が設けられる室内(図示せず)を空調するものであり、その運転を制御する運転制御部としての制御装置Sが設けられている。
ハイブリッドヒートポンプシステム100は、図1に示すように、冷媒が循環する冷媒循環路C1と、室内機ユニットIRU1、IRU2と、GHP室外機ユニットGUと、EHP室外機ユニットEUとを備える。
室内機ユニットIRU1、IRU2は、冷媒と室内空気とを熱交換させる室内熱交換器Exi1、Exi2を冷媒循環路C1としての室内側冷媒循環路部位C1cに設けて構成されている。
GHP室外機ユニットGUは、エンジンEを駆動源として冷媒を圧縮するエンジン駆動式圧縮機Cp1と、冷媒を膨張させる第1膨張弁Ve1(膨張弁の一例)と、冷媒と外気とを熱交換させるGHP室外熱交換器Exo1とを、冷媒循環路C1としてのGHP冷媒循環路部位C1aに設けて構成されている。
EHP室外機ユニットEUは、電動機Mを駆動源として冷媒を圧縮する電気駆動式圧縮機Cp2と、循環する冷媒を膨張させる第3膨張弁Ve3(膨張弁の一例)と、冷媒と外気とを熱交換させるEHP室外熱交換器Exo2とを、冷媒循環路C1としてのEHP冷媒循環路部位C1bに設けて構成されている。
【0026】
尚、当該第1実施形態では、冷媒循環路C1に手動弁Vh1、Vh2を備えると共に、後述するオイル共有路L3に手動弁Vh3、Vh4が備えられているが、ハイブリッドヒートポンプシステム100が運転中にあっては、これらの手動弁Vh1〜Vh4は、常に開放状態が維持されている。
更に、図1〜4において、開放状態にある弁は白抜きとして図示し、閉止状態にある弁は塗り潰して図示している。
【0027】
本実施形態において、EHP室外熱交換器Exo2の出口という文言は、冷媒循環路C1において、EHP室外熱交換器Exo2を通過した冷媒が、ヒートポンプの主要構成(圧縮機、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器)の何れも通過しない流路部位を意味するものとする。
エンジン駆動式圧縮機Cp1の出口、電気駆動式圧縮機Cp2の出口という文言についても、エンジン駆動式圧縮機Cp1又は電気駆動式圧縮機Cp2から吐出された冷媒が、ヒートポンプの主要構成の何れも通過しない流路部位を意味するものとする。
エンジン駆動式圧縮機Cp1の入口、電気駆動式圧縮機Cp2の入口という文言は、冷媒循環路C1での冷媒通流方向で直近のヒートポンプの主要構成を通過してから圧縮機までの間において、他のヒートポンプの主要構成の何れも通過しない流路部位を意味するものとする。
室内熱交換器Exi1、Exi2の出口という文言は、冷媒循環路C1において、室内熱交換器Exi1、Exi2を通過した冷媒が、ヒートポンプの主要構成の何れも通過しない流路部位を意味するものとする。
室内熱交換器Exi1、Exi2の入口という文言は、冷媒循環路C1での冷媒の通流方向で直近のヒートポンプの主要構成を通過してから室内熱交換器Exi1、Exi2までの間において、ヒートポンプの主要構成の何れかも通過しない流路部位を意味するものとする。
【0028】
GHP室外機ユニットGUに設けられるエンジンEは、冷却水循環路C3と、当該冷却水循環路C3にてエンジン冷却水を循環する冷却水ポンプPと、冷却水循環路C3を循環する冷却水でエンジンEの出口の冷却水の温度を計測する温度センサS1とを備えている。
【0029】
GHP室外機ユニットGUは、冷媒の循環状態を、暖房運転を行う暖房循環状態と冷房運転を行う冷房循環状態とで切り替える第1四方弁Vfw1(GHP冷媒循環状態切換手段の一例)が設けられている。説明を追加すると、当該第1四方弁Vfw1は、エンジン駆動式圧縮機Cp1と室内熱交換器Exi1、Exi2と第1膨張弁Ve1とGHP室外熱交換器Exo1とに記載の順に冷媒を循環させる暖房循環状態と、エンジン駆動式圧縮機Cp1とGHP室外熱交換器Exo1と第1膨張弁Ve1と室内熱交換器Exi1、Exi2とに記載の順に冷媒を循環させる冷房循環状態とで、冷媒の循環状態を切り替える。
【0030】
更に、GHP冷媒循環路部位C1aには、第1四方弁Vfw1が暖房循環状態にあるときに、GHP室外熱交換器Exo1及び第1膨張弁Ve1の双方をバイパスするバイパス路L1が設けられている。当該バイパス路L1は、当該バイパス路L1を通流する冷媒を膨張する第2膨張弁Ve2と、バイパス路L1を通流する冷媒と冷却水循環路C3を循環するエンジン冷却水とを熱交換するサブエバポレーターExsとを、暖房循環状態における冷媒の流れ方向で記載の順に備えている。
【0031】
GHP室外機ユニットGUは、GHP冷媒循環路部位C1aでエンジン駆動式圧縮機Cp1の入口において、液相の冷媒を分離して気相の冷媒を送出する第1気液分離装置VL1を備えると共に、GHP冷媒循環路部位C1aでエンジン駆動式圧縮機Cp1の出口において冷媒に含まれるオイルを分離する第1オイルセパレーターOs1を備えている。
【0032】
EHP室外機ユニットEUは、冷媒の循環状態を、暖房運転を行う暖房循環状態と冷房運転を行う冷房循環状態とで切り替える第2四方弁Vfw2(EHP冷媒循環状態切換手段の一例)が設けられている。説明を追加すると、当該第2四方弁Vfw2は、電気駆動式圧縮機Cp2と室内熱交換器Exi1、Exi2と第3膨張弁Ve3とEHP室外熱交換器Exo2とに記載の順に冷媒を循環させる暖房循環状態と、電気駆動式圧縮機Cp2とEHP室外熱交換器Exo2と第3膨張弁Ve3と室内熱交換器Exi1、Exi2とに記載の順に冷媒を循環させる冷房循環状態とで、冷媒の循環状態を切り替える。
【0033】
EHP室外機ユニットEUは、EHP冷媒循環路部位C1bで電気駆動式圧縮機Cp2の入口において、液相の冷媒を分離して気相の冷媒を送出する第2気液分離装置VL2を備えると共に、EHP冷媒循環路部位C1bで電気駆動式圧縮機Cp2の出口において冷媒に含まれるオイルを分離する第2オイルセパレーターOs2を備えている。
【0034】
当該第1実施形態に係るハイブリッドヒートポンプシステム100にあっては、GHP室外機ユニットGUとEHP室外機ユニットEUとの間でオイルのバランスをとるべく、以下の構成を備えている。
即ち、第1オイルセパレーターOs1にて分離されたオイルを貯留する第1オイル貯留部位(図示せず)と、第2オイルセパレーターOs2にて分離されたオイルを貯留する第2オイル貯留部位(図示せず)とを連通接続するオイル共有路L3と、オイル共有路L3の第1オイルセパレーターOs1の近傍流路部位とGHP冷媒循環路部位C1aにおけるエンジン駆動式圧縮機Cp1の入口とを接続する第1オイル通流路L6と、当該第1オイル通流路L6を開閉する第1オイル開閉弁Vo1と、オイル共有路L3の第2オイルセパレーターOs2の近傍流路部位とEHP冷媒循環路部位C1bにおける電気駆動式圧縮機Cp2の入口とを接続する第2オイル通流路L7と、当該第2オイル通流路L7を開閉する第2オイル開閉弁Vo2とを備えている。
【0035】
オイル共有路L3には、第1オイルセパレーターOs1と、オイル共有路L3と第1オイル通流路L6との接続部位との間において、オイル共有路L3と第1オイル通流路L6との接続部位から第1オイルセパレーターOs1の側へのオイルの流れを禁止する第1逆止弁Vr1が設けられている。
同様に、オイル共有路L3には、第2オイルセパレーターOs2と、オイル共有路L3と第2オイル通流路L7との接続部位との間において、オイル共有路L3と第2オイル通流路L7との接続部位から第2オイルセパレーターOs2の側へのオイルの流れを禁止する第2逆止弁Vr2が設けられている。
【0036】
更に、オイル共有路L3の第1オイルセパレーターOs1と第1逆止弁Vr1との間と、GHP冷媒循環路部位C1aにおけるエンジン駆動式圧縮機Cp1の入口とを接続する第3オイル通流路L8が設けられており、更に、当該第3オイル通流路L8には、第1オイルセパレーターOs1から流出したオイルの圧力を降圧するキャピラリーチューブL8aとが設けられている。当該第3オイル通流路L8を介して、第1オイルセパレーターOs1で分離されたオイルが、エンジン駆動式圧縮機Cp1へ補充される。
同様に、オイル共有路L3の第2オイルセパレーターOs2と第2逆止弁Vr2との間と、EHP冷媒循環路部位C1bにおける電気駆動式圧縮機Cp2の入口とを接続する第4オイル通流路L9が設けられており、更に、当該第4オイル通流路L9には、第2オイルセパレーターOs2から流出したオイルの圧力を降圧するキャピラリーチューブL9aとが設けられている。当該第4オイル通流路L9を介して、第2オイルセパレーターOs2で分離されたオイルが、電気駆動式圧縮機Cp2へ補充される。
【0037】
尚、エンジン駆動式圧縮機Cp1の入口に関し、第1四方弁Vfw1が暖房冷媒循環状態に切り換えられているときに、第1気液分離装置VL1、第1オイル通流路L6とGHP冷媒循環路部位C1aとの接続部位、第3オイル通流路L8とGHP冷媒循環路部位C1aとの接続部位が、冷媒の流れ方向で記載の順に設けられている。
また、電気駆動式圧縮機Cp2の入口に関し、第2四方弁Vfw2が暖房冷媒循環状態に切り換えられているときに、第2気液分離装置VL2、第2オイル通流路L7とEHP冷媒循環路部位C1bとの接続部位、第4オイル通流路L9とEHP冷媒循環路部位C1bとの接続部位が、冷媒の流れ方向で記載の順に設けられている。
【0038】
運転制御部としての制御装置Sは、第1オイル開閉弁Vo1と第2オイル開閉弁Vo2の開閉タイミングを制御して、エンジン駆動式圧縮機Cp1と電気駆動式圧縮機Cp2とのオイルバランスを制御するオイルバランス制御運転を実行する。
説明を追加すると、例えば、GHP室外機ユニットGU側にてオイルが余剰でEHP室外機ユニットEU側にてオイルが不足している場合、制御装置Sは、第1オイル開閉弁Vo1を閉止状態とすると共に、第2オイル開閉弁Vo2を開放状態とする。これにより、エンジン駆動式圧縮機Cp1の出口の高圧が第1オイルセパレーターOs1に付加されることにより、第1オイルセパレーターOs1にて分離されたオイルが、オイル共有路L3、第2オイル通流路L7を介して、EHP冷媒循環路部位C1bの電気駆動式圧縮機Cp2の入口へ導かれることとなる。
一方、EHP室外機ユニットEU側にてオイルが余剰でGHP室外機ユニットGU側にてオイルが不足している場合、制御装置Sは、第2オイル開閉弁Vo2を閉止状態とすると共に、第1オイル開閉弁Vo1を開放状態とする。これにより、電気駆動式圧縮機Cp2の出口の高圧が付加されることにより、第2オイルセパレーターOs2にて分離されたオイルが、オイル共有路L3、第1オイル通流路L6を介して、GHP冷媒循環路部位C1aのエンジン駆動式圧縮機Cp1の入口へ導かれることとなる。
【0039】
当該第1実施形態においては、複数(当該実施形態では、2つ)の室内機ユニットIRU1、IRU2が、室内側冷媒循環路部位C1cにおいて、互いに並列に冷媒を通流する状態で設けられている。
室内機ユニットIRU1は、室内側冷媒循環路部位C1cを通流する冷媒と空調用空気とを熱交換する室内熱交換器Exi1と、室内側冷媒循環路部位C1cにおいて室内熱交換器Exi1の入口又は出口での冷媒の通流量を制御する第1流量制御弁Vs1とを備えている。
室内機ユニットIRU2は、室内側冷媒循環路部位C1cを通流する冷媒と空調用空気とを熱交換する室内熱交換器Exi2と、室内側冷媒循環路部位C1cにおいて室内熱交換器Exi2の入口又は出口での冷媒の通流量を制御する第2流量制御弁Vs2とを備えている。
尚、第1流量制御弁Vs1及び第2流量制御弁Vs2は、冷房運転時には、膨張弁として機能する。
【0040】
冷媒循環路C1は、GHP冷媒循環路部位C1a及びEHP冷媒循環路部位C1bの夫々から送出された冷媒を第2接続部位Sp2で合流した後、室内側冷媒循環路部位C1cを通流し、複数の室内機ユニットIRU1、IRU2へ並列(空調負荷によっては何れか一方)に冷媒を通流させ、通流後の冷媒を第1接続部位Sp1で合流した後、分岐部位Sp4を介してGHP冷媒循環路部位C1a及びEHP冷媒循環路部位C1bの夫々へ、冷媒を導くように配設されている。
【0041】
さて、当該第1実施形態に係るハイブリッドヒートポンプシステム100にあっては、特に、EHP室外熱交換器Exo2での着霜を好適に防止するべく、第1四方弁Vfw1及び第2四方弁Vfw2が暖房循環状態にあるときに、電気駆動式圧縮機Cp2の出口の冷媒の少なくとも一部をEHP室外熱交換器Exo2の出口(暖房冷媒循環状態における冷媒通流方向での出口)へ導く第1冷媒通流路L2を備えている。
上記第1冷媒通流路L2は、当該第1冷媒通流路L2を通流する冷媒の流量を制御する第3流量制御弁Vs3(流量制御弁の一例)を備える。
更に、EHP冷媒循環路部位C1bのうち、第2四方弁Vfw2が暖房冷媒循環状態にあるときで、冷媒通流方向において、EHP室外熱交換器Exo2の出口から電気駆動式圧縮機Cp2の入口までの流路部位で、第1冷媒通流路L2との接続部位Sp3より下流側には、当該流路部位を開閉する第4開閉弁Vs4が備えられている。
【0042】
制御装置Sは、EHP室外熱交換器Exo2の除霜運転を実行する場合、図2に示すように、第3流量制御弁Vs3を開放状態とすると共に、第4開閉弁Vs4を閉止状態とする。これにより、電気駆動式圧縮機Cp2にて圧縮され吐出された冷媒の一部は、第1冷媒通流路L2、EHP室外熱交換器Exo2、第3膨張弁Ve3を記載の順に通流し、EHP冷媒循環路部位C1bとGHP冷媒循環路部位C1aと室内側冷媒循環路部位C1cとの接続部位(分岐部位)である分岐部位Sp4まで導かれることとなる。一方、電気駆動式圧縮機Cp2にて圧縮され吐出された冷媒の残部、及びエンジン駆動式圧縮機Cp1にて圧縮され吐出された冷媒は、暖房循環切換状態にあるEHP冷媒循環路部位C1b及び室内側冷媒循環路部位C1cを介して、室内機ユニットIRU1、IRU2へ導かれた後、EHP冷媒循環路部位C1bとGHP冷媒循環路部位C1aと室内側冷媒循環路部位C1cとの接続部位である第2接続部位Sp2まで導かれることとなる。
このような状態にあっては、冷媒は、GHP冷媒循環路部位C1aの側へ導かれるしかなく、電気駆動式圧縮機Cp2の入口へ戻ることができない。
そこで、制御装置Sは、図2に示すように、第1オイル通流路L6に設けられる第1オイル開閉弁Vo1を開放状態とすると共に、第2オイル通流路L7に設けられる第2オイル開閉弁Vo2を開放状態とする。これにより、GHP冷媒循環路部位C1aの冷媒が、第1オイル通流路L6、オイル共有路L3、第2オイル通流路L7を記載の順に通流し、冷媒を電気駆動式圧縮機Cp2の入口へ戻ることになる。
制御装置Sが、以上の如く、第1流量制御弁Vs1、第2流量制御弁Vs2、第3流量制御弁Vs3、第4開閉弁Vs4、第1オイル開閉弁Vo1、第2オイル開閉弁Vo2の開閉状態を制御することで、EHP室外熱交換器Exo2の除霜運転が実行される。尚、上述した制御にあっては、除霜運転と同時に暖房運転が実行される、霜取暖房同時運転が実行されることになる。
【0043】
即ち、制御装置S、第1流量制御弁Vs1、第2流量制御弁Vs2、第3流量制御弁Vs3、第4開閉弁Vs4、第1オイル開閉弁Vo1、及び第2オイル開閉弁Vo2が、流路形成機構として機能する。
そして、第1オイル通流路L6、オイル共有路L3、第2オイル通流路L7が、第2冷媒通流路として機能する。当該第1実施形態にあっては、第1オイル通流路L6、オイル共有路L3、第2オイル通流路L7に冷媒が通流するため、通常のオイルバランス管に比べて、その管径が大径に構成されており、具体的には、空調能力が85kW級のハイブリッドヒートポンプシステムで、GHPとEHPの空調能力比が2:1の場合、オイル共有路L3及び第1オイル通流路L6及び第2オイル通流路L7は、15.9mm以上22.2mm以下に設定することが好ましく、接続通流路L12は、28.6mm以上31.8mm以下に設定することが好ましい。
【0044】
因みに、運転制御部としての制御装置Sは、上述の如く、除霜運転と暖房運転とを同時に実行する場合、除霜運転と暖房運転との負荷比率を調整するべく、第3流量制御弁Vs3の開度を制御する負荷比率調整制御を実行可能に構成されている。
【0045】
また、制御装置Sは、上述の除霜運転において、GHP室外熱交換器Exo1においても、着霜を抑制するべく、第1膨張弁Ve1の開度を閉じ側へ制御すると共に、第2膨張弁Ve2を開き側に制御して、サブエバポレーターExsにて熱を回収する。これにより、GHP室外熱交換器Exo1にて冷媒が回収する熱量が低減し、着霜が抑制されることになる。ここで、制御装置が、第1膨張弁Ve1を閉止状態とし第2膨張弁Ve2を開放状態とする場合、GHP室外熱交換器Exo1での着霜が確実に防止される。
制御装置Sは、例えば、冷却水循環路C3のエンジンEの出口の冷媒温度(温度センサS1にて計測される温度)が、下限閾値(例えば、60℃以上70℃以下程度で決定される温度)以上である場合に、上記サブエバポレーターExsによる熱回収を実行する。
【0046】
因みに、制御装置Sは、通常の冷房運転及び暖房運転時にあっては、エンジンEの点火時期を、軸出力(圧縮機の駆動出力)が、排熱出力よりも優先となるように制御する。
一方、制御装置Sは、上記除霜運転を実行しているときで、熱不足が発生する場合、例えば、エンジンEの点火時期を遅角化する形態で、排熱出力が増加するように制御する。
【0047】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態にあっては、第1オイル通流路L6、オイル共有路L3、第2オイル通流路L7が、第2冷媒通流路として機能する構成例を示した。当該第2実施形態にあっては、当該第2冷媒通流路に関する構成が、上記第1実施形態とは異なる。
以下、当該相違点について重点的に説明し、上記第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すこととし、その説明を割愛する。
【0048】
当該第2実施形態にあっては、図3、4に示すように、第2冷媒通流路として、GHP冷媒循環路部位C1aにおけるエンジン駆動式圧縮機Cp1の入口(当該第2実施形態にあっては、第1気液分離装置VL1への冷媒流入部位)とEHP冷媒循環路部位C1bにおける電気駆動式圧縮機Cp2の入口(当該第2実施形態にあっては、第2気液分離装置VL2への冷媒流入部位)とを接続する冷媒専用の流路である第3冷媒通流路L10を第2冷媒通流路として備えている。
当該第3冷媒通流路L10には、当該第3冷媒通流路L10を開閉する第5開閉弁Vs5を備えると共に、当該第3冷媒通流路L10を手動で開閉する手動弁Vh5、Vh6を備えている。当該手動弁Vh5、Vh6については、手動弁Vh1〜Vh4と同様に、ハイブリッドヒートポンプシステムが運転中は、常に、開放状態とされる。
【0049】
運転制御部としての制御装置Sは、第1流量制御弁Vs1、第2流量制御弁Vs2、第3流量制御弁Vs3、第5開閉弁Vs5を開放状態とすると共に、第4開閉弁Vs4を閉止状態とすることで、図4に示す冷媒循環状態が実現され、EHP室外熱交換器Exo2の除霜運転が実行される。尚、上述した制御にあっては、上記第1実施形態と同様に、除霜運転と同時に暖房運転が実行される、霜取暖房同時運転が実行されることになる。
即ち、第1流量制御弁Vs1、第2流量制御弁Vs2、第3流量制御弁Vs3、第4開閉弁Vs4、及び第5開閉弁Vs5が、流路形成機構として機能する。
【0050】
更に、当該第2実施形態にあっては、除霜運転において、冷媒が、第1オイル通流路L6、第2オイル通流路L7、オイル共有路L3を通流することはない。このため、制御装置Sは、除霜運転と同時に上述したオイルバランス制御運転を実行可能に構成されている。
【0051】
また、当該第2実施形態にあっては、上述したように、第1オイル通流路L6、第2オイル通流路L7、オイル共有路L3に、冷媒が通流しないため流路径(具体的には、配管内径)を、第1実施形態の如く大径にせず、通常通りの流路径を採用している。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、サブエバポレーターExsは、暖房運転時において、GHP冷媒循環路部位で、第1膨張弁Ve1及びGHP室外熱交換器Exo1をバイパスするバイパス路L1に設けられている構成例を示した。
しかしながら、サブエバポレーターExsに係る構成は、当該構成に限定されず、例えば、暖房運転時において、GHP冷媒循環路部位C1aで、GHP室外熱交換器Exo1とエンジン駆動式圧縮機Cp1との間の流路部位に設ける構成等を採用しても構わない。
【0053】
(2)上記実施形態において、膨張弁は、GHP室外機ユニットGU及びEHP室外機ユニットEUに備える構成例を示したが、別に、室内機ユニットIRUに備える構成を採用しても構わない。
【0054】
(3)上記実施形態において、GHP冷媒循環状態切換手段及びEHP冷媒循環状態切換手段の夫々は、四方弁により実現する構成例を示したが、夫々は、複数の開閉弁により切り換える構成を採用しても構わない。
【0055】
(4)上記第1実施形態では、除霜運転と暖房運転とを同時に実行する霜取暖房同時運転を実行する制御について説明したが、上記第1実施形態においては、除霜運転を単独で実行する制御も実行可能である。
除霜運転を単独で実行する場合、室内側冷媒循環路部位C1cにおいて、室内熱交換器Exi1、Exi2の双方をバイパスする室内側バイパス路(図示せず)と、当該室内側バイパス路を開閉するバイパス路開閉弁(図示せず)とを備える構成を採用すると共に、
制御装置Sは、上記第1実施形態に係る霜取暖房同時運転において、室内機ユニットIRU1、IRU2に設けられる第1流量制御弁Vs1及び第2流量制御弁Vs2の双方を閉止状態に制御すると共に、バイパス路開閉弁を開放状態とする形態で、冷媒を通流させる。
【0056】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のハイブリッドヒートポンプシステムは、低外気温条件下での暖房運転において、室外熱交換器への着霜を好適に防止しながらも、室内へ比較的低温の空調用空気が流入して快適性が損なわれることを好適に防止できるハイブリッドヒートポンプシステムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 :ハイブリッドヒートポンプシステム
C1 :冷媒循環路
C1a :GHP冷媒循環路部位
C1b :EHP冷媒循環路部位
C1c :室内側冷媒循環路部位
C3 :冷却水循環路
Cp1 :エンジン駆動式圧縮機
Cp2 :電気駆動式圧縮機
EU :EHP室外機ユニット
Exi1 :室内熱交換器
Exi2 :室内熱交換器
Exo1 :GHP室外熱交換器
Exo2 :EHP室外熱交換器
Exs :サブエバポレーター
GU :GHP室外機ユニット
IRU1 :室内機ユニット
IRU2 :室内機ユニット
L1 :バイパス路
L10 :第3冷媒通流路
L2 :第1冷媒通流路
L3 :オイル共有路
L6 :第1オイル通流路
L7 :第2オイル通流路
L8 :第3オイル通流路
L9 :第4オイル通流路
M :電動機
Os1 :第1オイルセパレーター
Os2 :第2オイルセパレーター
S :制御装置
Ve1 :第1膨張弁
Ve2 :第2膨張弁
Ve3 :第3膨張弁
Vfw1 :第1四方弁
Vfw2 :第2四方弁
Vo1 :第1オイル開閉弁
Vo2 :第2オイル開閉弁
Vs1 :第1流量制御弁
Vs2 :第2流量制御弁
Vs3 :第3流量制御弁
Vs4 :第4開閉弁
Vs5 :第5開閉弁
図1
図2
図3
図4