(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール体及び前記ロータの外周面の少なくとも一方に、前記シール体と前記ロータの外周面との隙間を前記中心軸方向に沿って流れる作動流体を、前記分岐溝側に案内する案内面が形成されている請求項5に記載の軸シール装置。
前記連通溝に対し、前記ロータが前記中心軸周りに回転することで前記ロータの径方向外側で生じる作動流体の前記周方向の流れの下流側に、前記作動流体を前記連通溝に案内する周方向案内部材を備える請求項1から6の何れか一項に記載の軸シール装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシール部材は、シール体を迂回するように貫通孔を形成する必要があり、加工の手間がかかる。
また、貫通孔を通して高圧領域から低圧領域に流体が移動することで、シール部材の前後の差圧が小さくなる。すると、ロータの径方向外側の周方向において、貫通孔が設けられた部分の周囲と、それ以外の部分とで、高圧領域と低圧領域との差圧に分布が生じる。その結果、回転機械の効率等が低下する場合がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シール特性への影響を抑えるとともに、シール体への異物の影響を低減させることができる軸シール装置、回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、軸シール装置は、ロータと前記ロータを囲うステータとの間に設けられて、前記ロータと前記ステータとの間の空間を前記ロータの中心軸方向において高圧領域と低圧領域とに仕切る。軸シール装置は、互いに周方向の端面同士が隣接するように周方向に複数設けられたシールリング片からなるシールリングと、各前記シールリング片に固定されて前記ロータに対向するシール体と、を備える。
前記シールリングは、前記ステータの径方向内側に設けられたハウジングに保持され、少なくとも前記ハウジングの内周面よりも径方向内側に配置されたベース部を有する。少なくとも一つの前記シールリング片は、前記端面から凹むように形成されて、前記シール体を迂回するように前記高圧領域と前記低圧領域とを連通させる連通溝を備える。
前記中心軸方向における前記連通溝の一端部及び他端部は、それぞれ前記ベース部で前記中心軸方向に延びている。
【0008】
このように構成することで、ロータとステータとの間の空間に侵入してシール体に到達した異物は、連通溝を介して、シール体を迂回して排出される。これによって、異物によってシール体が影響を受けることを抑える。
このような連通溝は、シールリング片の端面に形成され、周方向で隣接する他のシールリング片との合わせ面に形成されている。シールリング片の端面同士が隣接する部分においては、互いに隣接するシールリング片の端面同士の隙間を通して、高圧領域と低圧領域との間で作動流体が漏れるので、高圧領域と低圧領域との差圧が小さい。このように差圧が小さい部分に設けた連通溝を通して作動流体が漏れても、そもそも差圧が小さいので、連通溝を通しての作動流体の漏れによる影響が小さくて済む。
さらに、連通溝をシールリング片の端面に形成することで、シールリング片に貫通孔を形成する場合に比較すると、連通溝を形成するための加工を容易に行うことができる。
【0009】
この発明の第二態様によれば
、軸シール装置は、
ロータと前記ロータを囲うステータとの間に設けられて、前記ロータの中心軸方向で高圧領域と低圧領域とを仕切る軸シール装置であって、互いに周方向の端面同士が隣接するように周方向に複数設けられたシールリング片からなるシールリングと、各前記シールリング片に固定されて前記ロータに対向するシール体と、を備え、少なくとも一つの前記シールリング片は、前記端面から凹むように形成されて、前記シール体を迂回するように前記高圧領域と前記低圧領域とを連通させる連通溝を備え、前記シールリング片に対し、前記高圧領域及び前記低圧領域の少なくとも一方に設けられ、前記シール体と前記ロータの外周面との隙間よりも径方向外方に作動流体を導く案内部材を備え
、前記案内部材は、前記ロータの外周面に設けられ、前記ロータと一体に回転することで前記作動流体を径方向外側に導く翼を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、案内部材によって作動流体がシール体とロータの外周面との隙間よりも径方向外方に案内される。これにより、異物は、作動流体とともにシール体とロータの外周面との隙間よりも径方向外方に導かれ、シール体とロータの外周面との隙間に異物が侵入することを抑える。したがって、シール体まで異物が到達することを抑える。
【0010】
さらに、ロータの外周面に設けられた翼がロータと一体に回転すると、翼によって生成された径方向外側に向かう作動流体の流れによって、異物は、シール体とロータの外周面との隙間よりも径方向外方に案内される。
【0011】
この発明の第
三態様によれば、
軸シール装置は、ロータと前記ロータを囲うステータとの間に設けられて、前記ロータの中心軸方向で高圧領域と低圧領域とを仕切る軸シール装置であって、互いに周方向の端面同士が隣接するように周方向に複数設けられたシールリング片からなるシールリングと、各前記シールリング片に固定されて前記ロータに対向するシール体と、を備え、少なくとも一つの前記シールリング片は、前記端面から凹むように形成されて、前記シール体を迂回するように前記高圧領域と前記低圧領域とを連通させる連通溝を備え、前記シールリング片に対し、少なくとも前記高圧領域側に設けられ、前記シール体と前記ロータの外周面との隙間よりも径方向外方に作動流体を導く案内部材を備え、前記案内部材は、前記ロータの外周面に設けられ、径方向外側に延びる壁体であるようにしてもよい。
このように構成することで、壁体によって、異物がシール体とロータの外周面との隙間に入り込むことが抑えられる。また、異物は、壁体に衝突した作動流体の流れとともに、径方向外方に案内される。
【0012】
この発明の第
四態様によれば、
軸シール装置は、ロータと前記ロータを囲うステータとの間に設けられて、前記ロータの中心軸方向で高圧領域と低圧領域とを仕切る軸シール装置であって、互いに周方向の端面同士が隣接するように周方向に複数設けられたシールリング片からなるシールリングと、各前記シールリング片に固定されて前記ロータに対向するシール体と、を備え、少なくとも一つの前記シールリング片は、前記端面から凹むように形成されて、前記シール体を迂回するように前記高圧領域と前記低圧領域とを連通させる連通溝を備え、前記シールリング片に対し、少なくとも前記高圧領域側に設けられ、前記シール体と前記ロータの外周面との隙間よりも径方向外方に作動流体を導く案内部材を備え、前記案内部材は、前記シールリング片に設けられ、径方向内側に延びる傘状部材であるようにしてもよい。
このように構成することで、傘状の案内部材によって、異物がシール体とロータの外周面との隙間に入り込みにくくなる。
【0013】
この発明の第
五態様によれば、第一から第
四態様の何れか一つの態様に係るシール体は、前記中心軸方向に間隔をあけて複数設けられてもよい。連通溝は、前記中心軸方向において互いに隣接する前記シール体同士の間に連通する分岐溝を備えるようにしてもよい。 このように構成することで、異物がシール体とロータの外周面との隙間に入り込んだ場合であっても、複数のシール体の間に設けられた分岐溝を通して、異物が連通溝を介して、シール体を迂回して排出される。
【0014】
この発明の第
六態様によれば、第
五態様に係る軸シール装置は、前記シール体及び前記ロータの外周面の少なくとも一方に、前記シール体と前記ロータの外周面との隙間を前記中心軸方向に沿って流れる作動流体を、前記分岐溝側に案内する案内面が形成されているようにしてもよい。
このように構成することで、シール体とロータの外周面との隙間に入り込んだ異物は、案内面によって分岐溝側に案内される。これによって、異物を、より確実に分岐溝を通して連通溝に送り込むことができる。
【0015】
この発明の第
七態様によれば、第一から第
六態様の何れか一つの態様に係る軸シール装置は、前記連通溝に対し、前記ロータが前記中心軸周りに回転することで前記ロータの径方向外側で生じる作動流体の前記周方向に沿った流れの下流側に、前記作動流体を前記連通溝に案内する周方向案内部材を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、作動流体とともに周方向に沿って流れる異物が、周方向案内部材によって、連通溝に案内される。これによって、異物を、より確実に連通溝に送り込むことができる。
【0017】
この発明の第
八態様によれば、回転機械は、第一から第
七態様の何れか一つの態様における軸シール装置を備える。
このように構成することで、異物を、連通溝を介して、シール体を迂回して排出することで、異物によってシール体が影響を受けることを抑える。また、高圧領域と低圧領域との差圧が小さいシールリング片の端面同士が対向する部分に連通溝を形成することで、連通溝による影響が小さくて済み、回転機械の作動効率の低下を抑えることができる。さらに、連通溝をシールリング片の端面に形成することで、連通溝を形成するための加工を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
上記軸シール装置、回転機械によれば、シール特性への影響を抑えるとともに、シール体への異物の影響を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の一実施形態における軸シール装置、回転機械を図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
図1は、この発明の一実施形態における回転機械に設けられた軸シール装置の構成を、ロータの中心軸方向から見た図である。
図2は、
図1のX−X矢視断面図である。
図3は、軸シール装置を構成するシールセグメントの端面に形成された連通溝を示す図である。
図4は、連通溝が形成されたシール部材本体の斜視図である。
図1、
図2に示すように、蒸気タービンやガスタービン等の回転機械100は、その車室(図示無し)に取り付けられたステータ103と、ステータ103の径方向Drの内側に配置され、軸受(図示無し)によって回転自在に設けられたロータ102と、を備えている。
【0021】
軸シール装置1Aは、ロータ102とステータ103との間の環状空間に設けられている。
図2に示すように、軸シール装置1Aは、環状空間を、ロータ102の中心軸方向Daの第一の側に形成された低圧領域S1と、中心軸方向Daの第二の側に形成された高圧領域S2とを区分する。
【0022】
図1に示すように、軸シール装置1Aは、円弧状に延びる複数(本実施形態では8つ)のシールセグメント(シールリング片)20Aを備えている。複数のシールセグメント(シールリング片)20Aは、周方向Dcに沿って環状に配置されている。軸シール装置1Aは、これら8つのシールセグメント20Aを周方向Dcに配置することで、全体として円環状のシールリング5を構成している。即ち、軸シール装置1Aのシールリング5は、ロータ102の周方向Dcに複数に分割された構造となっている。
【0023】
図2に示すように、シールセグメント20Aは、ステータ103の径方向Drの内側に設けられたハウジング104に保持されている。ハウジング104には、ロータ102の中心軸周りの周方向Dcに連続して延びる溝105が形成されている。
溝105は、収容凹部(高圧流体導入部)106と、連通部107と、を有している。収容凹部106は、断面矩形状に形成されている。連通部107は、収容凹部106とハウジング104の内周面104fとを連通する。連通部107に対し、中心軸方向Daの両側には、収容凹部106の内壁面106aよりも中心軸方向Daの内側に向かって突出する突出部108がそれぞれ形成されている。これら突出部108,108により、連通部107は、中心軸方向Daの開口寸法が、収容凹部106の中心軸方向Daの幅寸法よりも小さくなっている。
【0024】
シールセグメント20Aは、シール部材本体21と、薄板シール(シール体)25と、シールフィン(シール体)26と、を備えている。
シール部材本体21は、受圧部22と、ベース部23と、連結部24と、を一体に備えている。
【0025】
受圧部22は、収容凹部106内に収容されている。受圧部22の径方向Drの外側には、受圧面22fが形成されている。
ここで、シール部材本体21は、周方向Dcに間隔をあけた複数個所に、切欠き35を備えている。これら切欠き35は、受圧面22fと収容凹部106の径方向Drの外側に位置する内周面106gとの間の空間106sと、高圧領域S2とを連通する。
【0026】
ベース部23は、ハウジング104の内周面104fよりも径方向Dr内側に配置されている。ベース部23は、その中心軸方向Daの幅寸法が、連通部107の中心軸方向Daの幅寸法よりも大きくなっている。
連結部24は、連通部107を通して受圧部22とベース部23とを連結している。
【0027】
薄板シール25は、ロータ102の周方向Dcに互いに微少間隔を開けて多重に配列された複数枚の金属製の薄板シール片27を備える。複数枚の薄板シール片27は、径方向外側の基端部27aが、例えば溶接によって互いに固定されている。
【0028】
薄板シール片27は、径方向Drの外側の基端部27aが、保持部材28によって保持されている。保持部材28は、保持リング28a,28bと、接続部材28cと、を備えている。保持リング28a,28bは、断面U字型に形成されている。接続部材28cは、これらの保持リング28a,28b同士を接続している薄板シール片27の基端部27aには、中心軸方向Daの両側に延びる凸部27c,27dが形成されている。薄板シール片27は、凸部27c,27dが保持部材28の保持リング28a,28bに嵌め込まれることで、保持部材28に保持されている。これら薄板シール片27は、ロータ102の回転方向に対してロータ102の外周面となす角が鋭角となるよう、保持部材28に保持されている。
薄板シール片27の基端部27aと保持部材28との間には、各薄板シール片27のがたつきを抑制するためのスペーサ29が設けられている。
【0029】
薄板シール25及び保持部材28は、シール部材本体21に形成された凹溝30に収容されている。凹溝30は、外周溝部31と、内周溝部32と、を備えている。外周溝部31は、シール部材本体21の径方向Drの中間部に形成され、周方向Dc(
図1参照)に連続して延びている。内周溝部32は、外周溝部31から径方向Drの内側に向かって延び、ベース部23の内周面(言い換えれば、シール部材本体21の内周面21f)に開口している。外周溝部31は、内周溝部32よりも、中心軸方向Daの幅寸法が大きく形成されている。保持部材28は、この外周溝部31内に収容されている。薄板シール片27は、その径方向Drの内側の先端部27bが、内周溝部32を通してベース部23から径方向Drの内側に突出している。
【0030】
保持部材28の径方向Drの外側には、板バネ33が設けられている。板バネ33は、各薄板シール片27を径方向Drの内側のロータ102に向かって付勢する。
【0031】
このような薄板シール25は、ロータ102の停止時には、各薄板シール片27の先端部27bが、所定の予圧でロータ102に接触する。薄板シール25は、ロータ102の回転時には、ロータ102が回転することで生じる動圧効果によって、薄板シール片27の先端部27bが径方向外側に変位してロータ102から浮上する。その結果、薄板シール片27とロータ102とが僅かなシールクリアランスを介して非接触状態となる。これにより、薄板シール片27及びロータ102の磨耗が防止されるとともに高圧領域S2から低圧領域S1に向かっての作動流体(蒸気)の漏洩が抑制される。
【0032】
シールフィン26は、シール部材本体21のベース部23に設けられている。シールフィン26は、ロータ102の中心軸方向Daに互いに間隔をあけて複数設けられている。各シールフィン26は、シール部材本体21のベース部23から、径方向Drの内側に向かって突出している。シールフィン26は、薄板シール25を挟んで、中心軸方向Daの両側にそれぞれ複数設けられている。これらのシールフィン26によって、薄板シール25の高圧側及び低圧側にラビリンスシールが構成されている。
【0033】
シールセグメント20Aは、定格運転時においては、シールセグメント20Aに対して中心軸方向Daの両側の低圧領域S1と高圧領域S2とで流体の圧力に差が生じる。
図2に示すように、高圧領域S2の高圧流体は、切欠き35を通して、受圧面22fと収容凹部106の径方向外側の内周面106gとの間の空間106sに流れ込む。すると、
図1に示すように、流れ込んだ高圧流体によって、受圧面22fを径方向Drの外側から内側に向かって押圧する背面圧力Phが生じる。この背面圧力Phによって、シール部材本体21はロータ102側に移動する。これにより、薄板シール25及びシールフィン26とロータ102の外周面との間にクリアランスが減少し、高圧領域S2と低圧領域S1とが仕切られて、シール機能が発現する。
【0034】
上記したような軸シール装置1Aは、シールセグメント20Aに、連通溝50を備えている。この実施形態では、
図3、
図4に示すように、例えば、連通溝50を、シールセグメント20Aのシール部材本体21の周方向Dcの端部に位置する端面21sに形成した。
【0035】
連通溝50は、端面21sに沿って延び、端面21sから周方向Dcの内方に凹む溝状に形成されている。連通溝50は、その一端部50aが低圧領域S1に向かって開口し、他端部50bが高圧領域S2に向かって開口している。連通溝50は、一端部50a、他端部50bが、それぞれ中心軸方向Daに延びている。連通溝50は、一端部50aと他端部50bとの間に、径方向流路50c,50dと、軸方向流路50eと、を有する。径方向流路50c,50dは、一端部50a,他端部50bのそれぞれから径方向Drの外側に向かって延びている。軸方向流路50eは、薄板シール25の径方向Drの外側に位置する。軸方向流路50eは、中心軸方向Daに延び、径方向流路50c,50dの径方向Drの外側の端部同士を接続している。つまり、連通溝50は、薄板シール25を迂回するように形成されている。この連通溝50によって、高圧領域S2と低圧領域S1とが連通されている。
【0036】
この実施形態で例示する連通溝50は、中心軸方向Daにおいて互いに隣接するシールフィン26,26同士の間に連通する分岐溝51を備えている。分岐溝51は、シール部材本体21の内周面21fにおいて、径方向Drの内側に向かって開口している。分岐溝51は、径方向Drの外側に向かって延び、連通溝50の一端部50a,他端部50bに接続されている。
【0037】
このような連通溝50は、シールセグメント20Aのシール部材本体21の端面21sに形成される。シールセグメント20Aの端面21s同士が周方向Dcで隣接する部分においては、互いに隣接する端面21s同士の隙間を通して、高圧領域S2から低圧領域S1に向けて作動流体が漏れる。ステータ103とロータ102との間の空間に侵入した異物は、この端面21s同士の隙間を流れる作動流体の漏れ流れとともに、連通溝50を通過する。このようにして、ロータ102とステータ103との間の空間に侵入した異物は、連通溝50を介して、薄板シール25を迂回して低圧領域S1に排出される。
また、異物がシール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に入り込んだ場合、複数のシールフィン26の間に設けられた分岐溝51、連通溝50を通して、異物が薄板シール25を迂回して排出される。
【0038】
したがって、上述した第一実施形態の軸シール装置1A、回転機械100によれば、ロータ102とステータ103との間の空間に侵入した異物が、連通溝50を介して、薄板シール25を迂回して排出される。これによって、異物によって薄板シール25が影響を受けることを抑える。
また、シールセグメント20Aの端面21s同士の隙間を通して、高圧領域S2と低圧領域S1との間で作動流体が漏れるため、連通溝50が設けられた部分においては、そもそも高圧領域S2と低圧領域S1との差圧が小さい。このように差圧が小さい部分に設けた連通溝50を通して作動流体が漏れても、そもそもの差圧が小さいので、連通溝50における作動流体の漏れによる影響が小さくて済む。
さらに、連通溝50をシール部材本体21の端面21sに形成することで、シール部材本体21に貫通孔を形成する場合に比較すると、連通溝50を形成するための加工を、エンドミルや放電加工等を用いて容易に行うことができる。
【0039】
また、中心軸方向Daにおいて互いに隣接するシールフィン26同士の間に、連通溝50に連通する分岐溝51が設けられている。これによって、異物がシール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に入り込んだ場合であっても、分岐溝51を通して、及び連通溝50を介して、薄板シール25を迂回して異物を排出することができる。
【0040】
このようにして、軸シール装置1Aとしてのシール特性への影響を抑えるとともに、薄板シール25への異物の影響を低減させることができる。
【0041】
(第二実施形態)
次に、この発明に係る軸シール装置、回転機械の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態で示した構成に加えて、案内部材を備える構成のみが異なるので、
図1を援用するとともに、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。また第一実施形態と重複する説明は省略する。
【0042】
図1に示すように、軸シール装置1Bは、上記第一実施形態で示した軸シール装置1Aと同様、ロータ102とステータ103との間の環状空間に設けられている。軸シール装置1Bは、複数のシールセグメント(シールリング片)20Bを備える。
【0043】
図5は、軸シール装置の第二実施形態における構成を示す断面図である。
図5に示すように、軸シール装置1Bは、環状空間を、ロータ102の中心軸方向Daの第一の側に形成された低圧領域S1と、中心軸方向Daの第二の側に形成された高圧領域S2とを区分する。
シールセグメント20Bは、シール部材本体21と、薄板シール25と、シールフィン26とを有している。
【0044】
シールセグメント20Bは、シール部材本体21の端面21sに、連通溝50を備えている。
連通溝50は、端面21sに沿って延び、端面21sから周方向Dcの内方に凹む溝状に形成されている。連通溝50は、その一端部50aが低圧領域S1に向かって開口し、他端部50bが高圧領域S2に向かって開口している。連通溝50は、一端部50aと他端部50bとの間に、径方向流路50c,50dと、軸方向流路50eと、を有し、薄板シール25迂回するように形成されている。この連通溝50によって、高圧領域S2と低圧領域S1とが連通されている。
【0045】
また、連通溝50は、中心軸方向Daにおいて互いに隣接するシールフィン26,26同士の間に連通する分岐溝51を備える。
【0046】
シールセグメント20Bは、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間よりも径方向Drの外側に作動流体を導く案内部材60を備えている。この実施形態において、案内部材60は、複数の翼61からなる。翼61は、ロータ102の外周面102fに、周方向Dcに間隔をあけて複数設けられている。これら複数の翼61は、ロータ102と一体に回転することで、作動流体を径方向Drの外側に導く。
【0047】
このように構成することで、作動流体は、案内部材60によって、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間よりも径方向Drの外側に案内される。これにより、異物は、作動流体とともに径方向Drの外側に導かれ、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に入り込みにくくなる。
【0048】
したがって、上述した第二実施形態によれば、案内部材60によって作動流体の流れFbがシール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間よりも径方向Drの外側に案内される。これにより、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に異物が侵入することを抑える。また、径方向Drの外側に作動流体の流れFbが案内されることで、異物は作動流体とともに連通溝50に流入しやすくなる。その結果、薄板シール25まで異物が到達することを抑えることができる。
【0049】
また、上記第一実施形態と同様、ロータ102とステータ103との間の空間に侵入した異物が、連通溝50を介して、薄板シール25を迂回して排出される。これによって、異物によって薄板シール25が影響を受けることを抑えることができる。
さらに、シールセグメント20Bの端面21s同士の隙間を通して、高圧領域S2と低圧領域S1との間で作動流体が漏れる部分に連通溝50を設けた。これによって、連通溝50を通して作動流体が漏れても、連通溝50による影響が小さくて済む。
さらに、連通溝50をシール部材本体21の端面21sに形成することで、シール部材本体21に貫通孔を形成する場合に比較すると、連通溝50を形成するための加工を容易に行うことができる。
【0050】
このようにして、軸シール装置1Bとしてのシール特性への影響を抑えるとともに、薄板シール25への異物の影響を低減させることができる。
【0051】
(第二実施形態の第一変形例)
第二実施形態では、案内部材60として、翼61を備えるようにしたが、これに限るものではない。
図6は、軸シール装置の第二実施形態の第一変形例における構成を示す断面図である。
この
図6に示すように、軸シール装置1Cのシールセグメント(シールリング片)20Cは、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間よりも径方向Drの外側に作動流体を導く案内部材60を備える。この実施形態において、案内部材60は、ロータ102の外周面102fに設けられ、径方向Drの外側に延びる壁体62である。
この壁体62は、周方向Dcに沿って連続して延びている。壁体62は、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間よりも、径方向Drの外側に延びる高さに形成するようにしてもよい。
【0052】
このように構成することで、作動流体が壁体62に当たると、その流れFcが径方向Drの外側に向かって変わる。これによって、異物がシール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に入り込むことが抑えられる。また、径方向Drの外側に作動流体の流れFcが案内されることで、異物は作動流体とともに連通溝50に流入しやすくなる。したがって、薄板シール25まで異物が到達することを抑えることができる。
【0053】
(第二実施形態の第二変形例)
図7は、軸シール装置の第二実施形態の第二変形例における構成を示す断面図である。
この
図7に示すように、軸シール装置1Dのシールセグメント(シールリング片)20Dは、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間よりも径方向Drの外側に作動流体を導く案内部材60を備える。
【0054】
この実施形態において、案内部材60は、シール部材本体21に設けられ、径方向Drの内側に延びる傘状部材63である。傘状部材63は、ロータ102の中心軸周りの周方向Dcに連続して延びる円環状に形成されている。傘状部材63は、連通溝50の他端部50bに対して、ロータ102の中心軸を中心とする径方向Drの内側に設けられている。傘状部材63は、シール部材本体21のベース部23の側面から中心軸方向Daに向かって離間するにしたがって、そのロータ102の中心軸を中心とした外径が漸次窄まる傘状に形成されている。この傘状部材63は、ロータ102の外周面102fに接触しない。
【0055】
このように構成することで、傘状部材63からなる案内部材60によって、傘状部材63に当たった作動流体の流れFdは、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間よりも径方向Drの外側に導かれる。つまり、作動流体の流れFdは、連通溝50の他端部50bに向かって案内される。これにより、異物がシール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に入り込みにくくなる。また、径方向Drの外側に作動流体の流れFdが案内されることで、異物は作動流体とともに連通溝50に流入しやすくなる。したがって、薄板シール25まで異物が到達することを抑える。
【0056】
第二実施形態及びその各変形例においては、連通溝50及び分岐溝51を備えない構成とすることも可能である。
【0057】
(第三実施形態)
次に、この発明に係る軸シール装置、回転機械の第三実施形態について説明する。以下に説明する第三実施形態においては、第一実施形態で示した構成に加えて、案内面を備える構成のみが異なるので、
図1を援用するとともに、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。また、第一実施形態と重複する説明は省略する。
【0058】
図1に示すように、軸シール装置1Eは、第一実施形態の軸シール装置1Aと同様に、ロータ102とステータ103との間の環状空間に設けられている。軸シール装置1Eは、複数のシールセグメント(シールリング片)20Eを備える。
【0059】
図8は、軸シール装置の第三実施形態における構成を示す断面図である。
この
図8に示すように、軸シール装置1Eは、環状空間を、ロータ102の中心軸方向Daの第一の側に形成された低圧領域S1と、中心軸方向Daの第二の側に形成された高圧領域S2とを区分する。
【0060】
シールセグメント20Eは、シール部材本体21と、薄板シール25と、シールフィン26とを有している。
【0061】
シールセグメント20Eは、シール部材本体21の端面21sに、連通溝50を備えている。連通溝50は、端面21sに沿って延び、端面21sから周方向Dcの内方に凹む溝状に形成されている。連通溝50は、その一端部50aが低圧領域S1に向かって開口し、他端部50bが高圧領域S2に向かって開口している。連通溝50は、一端部50aと他端部50bとの間に、径方向流路50c,50dと、軸方向流路50eと、を有し、薄板シール25を迂回するように形成されている。この連通溝50は、高圧領域S2と低圧領域S1とを連通させる。
【0062】
また、連通溝50は、中心軸方向Daにおいて互いに隣接するシールフィン26,26同士の間に連通する分岐溝51を備える。
【0063】
シールセグメント20Eは、案内面64を備えている。案内面64は、シールフィン26において、作動流体の流れFの上流側を向いて形成されている。
ロータ102は、案内面65を備えている。案内面65は、ロータ102の外周面102fに形成された、径方向Drの内側に凹む円環状の凹部66に形成されている。案内面65は、凹部66において、作動流体の流れFの上流側を向いて形成されている。中心軸方向Daにおいて、凹部66が形成された部分に配置されるシールフィン26は、その先端部26aが凹部66内に配置されるような長さで形成されている。
【0064】
シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に流れ込んだ作動流体の流れFeは、シールフィン26とロータ102の外周面102fとの隙間を通過した後、案内面64又は案内面65に当たることで、渦状に巻き上がり、径方向外側に案内される。これにより、作動流体は、分岐溝51に効率良く流れ込む。このように構成することで、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に入り込んだ異物は、案内面64,65によって分岐溝51に案内される。これによって、異物を、より確実に分岐溝51を通して連通溝50に送り込むことができる。
【0065】
したがって、上述した第三実施形態の軸シール装置1E、回転機械100によれば、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に流れ込んだ異物は、案内面64,65によって径方向Drの外側の分岐溝51に向かう方向に導かれる。これにより、異物を、より確実に分岐溝51を通して連通溝50に送り込むことができる。
その結果、薄板シール25まで異物が到達することを抑え、薄板シール25が影響を受けることを抑えることができる。
【0066】
上記第一実施形態と同様、シールセグメント20Eの端面21s同士の隙間を通して、高圧領域S2と低圧領域S1との間で作動流体が漏れる部分に連通溝50を設けた。これによって、連通溝50を通して作動流体が漏れても、連通溝50による影響が小さくて済む。
さらに、連通溝50をシール部材本体21の端面21sに形成することで、シール部材本体21に貫通孔を形成する場合に比較すると、連通溝50を形成するための加工を容易に行うことができる。
【0067】
このようにして、軸シール装置1Eとしてのシール特性への影響を抑えるとともに、薄板シール25への異物の影響を低減させることができる。
【0068】
(第三実施形態の変形例)
第三実施形態では、ロータ102の外周面102fに形成した凹部66に案内面65を形成するようにしたが、これに限るものではない。
図9は、軸シール装置の第三実施形態の変形例における構成を示す断面図である。
この
図9に示すように、この第三実施形態の変形例では、軸シール装置1Fのシールセグメント(シールリング片)20Fは、シール部材本体21の内周面21fから径方向Drの内側に延びるシールフィン26と、ロータ102の外周面102fから径方向Drの外側に延びるシールフィン(シール体)26Fとが、中心軸方向Daに沿って交互に配列されている。
【0069】
シールセグメント20Fは、案内面64を備える。案内面64は、シールフィン26において、作動流体の流れFの上流側を向いて形成されている。ロータ102は、ロータ102の外周面102fから径方向Drの外側に延びるシールフィン26Fを備える。案内面67は、シールフィン26Fにおいて、作動流体の流れFの上流側を向いて形成されている。
【0070】
シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に流れ込んだ作動流体の流れFfは、シールフィン26とロータ102の外周面102fとの隙間を通過した後、案内面64又は案内面67に当たることで、渦状に巻き上がり、径方向Dr外側に案内される。これにより、作動流体は、分岐溝51に効率良く流れ込む。このように構成することで、シール部材本体21の内周面21fとロータ102の外周面102fとの隙間に入り込んだ異物を、より確実に分岐溝51を通して連通溝50に送り込むことができる。
【0071】
(第四実施形態)
次に、この発明に係る軸シール装置、回転機械の第四実施形態について説明する。以下に説明する第四実施形態においては、第一実施形態で示した構成に加えて、周方向案内部材を備える構成のみが異なるので、
図1を援用するとともに、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。さらに、第一実施形態と重複する説明は省略する。
【0072】
図1に示すように、軸シール装置1Gは、上記第一実施形態で示した軸シール装置1Aと同様、ロータ102とステータ103との間の環状空間に設けられている。軸シール装置1Gは、複数のシールセグメント(シールリング片)20Gを備える。
【0073】
図10は、軸シール装置の第四実施形態において、固定シール部材とシールセグメントとの対向部に設けられた周方向案内部材を、ロータの中心軸方向から見た図である。
図10に示すように、シールセグメント20Gは、シール部材本体21と、薄板シール25と、シールフィン26とを備えている。
【0074】
シールセグメント20Gは、シール部材本体21の端面21sに、連通溝50を備えている。連通溝50は、端面21sに沿って延び、端面21sから周方向Dcの内方に凹む溝状に形成されている。この連通溝50によって、高圧領域S2と低圧領域S1とが連通されている。
【0075】
シールセグメント20Gは、周方向案内部材68を備えている。周方向案内部材68は、連通溝50に対し、ロータ102が中心軸周りに回転することでロータ102の径方向Drの外側で生じる作動流体の周方向Dcの流れFgの下流側に設けられている。周方向案内部材68は、シールセグメント20Cのシール部材本体21の内周面21fに、径方向Drの内側に向かって突出するよう形成されている。
【0076】
ロータ102が回転すると、ロータ102の径方向の外側の作動流体は、ロータ102の外周面102fとの間に生じる摩擦力の影響などを受けて、ロータ102の回転方向R1と同方向に旋回する流れFgとなる。ロータ102の径方向Drの外側で生じる作動流体の周方向Dcに沿った流れFgは、周方向案内部材68に衝突することで、径方向外側の連通溝50に案内される。
【0077】
したがって、上述した第四実施形態によれば、ロータ102の径方向Drの外側で生じる作動流体の周方向Dcへの流れFgは、周方向案内部材68に衝突することで、径方向外側の連通溝50に案内される。これによって、異物を、より確実に連通溝50に送り込むことができる。その結果、薄板シール25まで異物が到達することを抑え、薄板シール25が影響を受けることを抑える。
【0078】
また、上記第一実施形態と同様、シールセグメント20Gの端面21s同士の隙間を通して、高圧領域S2と低圧領域S1との間で作動流体が漏れる部分に連通溝50を設けた。これによって、連通溝50を通して作動流体が漏れても、連通溝50による影響が小さくて済む。
さらに、連通溝50をシール部材本体21の端面21sに形成することで、シール部材本体21に貫通孔を形成する場合に比較すると、連通溝50を形成するための加工を容易に行うことができる。
【0079】
このようにして、軸シール装置1Gとしてのシール特性への影響を抑えるとともに、薄板シール25への異物の影響を低減させることができる。
【0080】
(その他の変形例)
この発明は、上述した各実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、軸シール装置1A〜1Gは、薄板シール25とシールフィン26とを備えるようにしたが、高圧領域S2と低圧領域S1との間でシール機能を発揮できるのであれば、適宜他のシール構造を採用してもよい。
【0081】
また、上記各実施形態で示した構成は、適宜組み合わせて採用することができる。
例えば、翼61、壁体62、傘状部材63を、ロータ102の中心軸方向に隣り合うシールフィン26の間、又はシールフィン26,26Fの間に形成して、流れFを分岐溝51側に導くようにしても良い。
【0082】
さらに、上記の軸シール装置1A〜1Gは、蒸気タービンやガスタービンに限らず、他の回転機械にも適用可能である。