特許第6842995号(P6842995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスアールジータカミヤ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000002
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000003
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000004
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000005
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000006
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000007
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000008
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000009
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000010
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000011
  • 特許6842995-制振装置付き構造物 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842995
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】制振装置付き構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20210308BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20210308BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20210308BHJP
   E04B 1/10 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   E04H9/02 311
   F16F15/02 L
   F16F7/12
   E04H9/02 321C
   E04H9/02 321F
   !E04B1/10 C
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-104432(P2017-104432)
(22)【出願日】2017年5月26日
(65)【公開番号】特開2018-199923(P2018-199923A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 武
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】南雲 隆司
(72)【発明者】
【氏名】平田 春彦
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−000893(JP,A)
【文献】 特開2015−194212(JP,A)
【文献】 特開2011−144556(JP,A)
【文献】 特開2011−190620(JP,A)
【文献】 特開2009−228276(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0229509(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106499249(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00−9/16
F16F 7/00−7/14
F16F 15/00−15/36
E04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本の部材を含む部材により正面視で四角形に形成されている四角形フレームを有し、この四角形フレームの内側に配設された制振手段が、この制振手段から放射状又は略放射状に延出している4本のブレース部材により前記四角形フレームに連結され、前記四角形フレームが変形する振動エネルギを、この振動エネルギが前記4本のブレース部材を介して伝達される前記制振手段により吸収して振動を抑制する制振装置付き構造物であって、
前記四角形フレームの内側に正面視で前記制振手段と重なる部分を有する棒状の中間部材が、この中間部材の長さ方向両端部が前記四角形フレームに結合されて配置され、前記重なる部分を含む箇所が、前記中間部材と前記制振手段が干渉しない前記中間部材の切欠部となっている制振装置付き構造物において、
前記制振手段には、正面視で前後方向となっているこの制振手段の厚さ方向に貫通した開口部が設けられているとともに、前記中間部材には、前記箇所において、この開口部を貫通した貫通部が設けられ、前記四角フレームに、前記制振手段及び前記4本のブレース部材を覆って配設された面材が釘打ちで固定され、この面材が前記中間部材に、前記貫通部に打たれた釘を含む釘打ちにより固定されていることを制振装置付き構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の制振装置付き構造物において、前記中間部材は、長さ方向が上下方向となっている中間柱部材であることを特徴とする制振装置付き構造物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制振装置付き構造物において、前記制振手段は、前記振動エネルギの伝達により塑性変形する金属製の制振具であることを特徴とする制振装置付き構造物。
【請求項4】
請求項3に記載の制振装置付き構造物において、前記制振具は、本体部と、この本体部に前記4本のブレース部材を連結するために、前記本体部から突出した状態で設けられている4個の連結部とを有し、前記本体部に前記開口部が形成されていることを特徴とする制振装置付き構造物。
【請求項5】
請求項4に記載の制振装置付き構造物において、前記本体部は、前記開口部の周囲を囲んでいる上辺部と下辺部と右辺部と左辺部とを有し、これらの辺部のうち、互いに対向する2つの辺部が挿入された2個の凹部が、前記貫通部の両側において、前記中間部材に形成されていることにより、前記中間部材と前記制振手段が干渉していないことを特徴とする制振装置付き構造物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の制振装置付き構造物において、前記中間部材の左右両側面のうち、少なくとも一方の面には、前記中間部材における前記切欠部が設けられている箇所の強度を補強するための補強部材が取り付けられていることを特徴とする制振装置付き構造物。
【請求項7】
請求項6に記載の制振装置付き構造物において、前記補強部材には、前記貫通部と対応する凸状部が設けられていることを特徴とする制振装置付き構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等による振動を抑制するための制振装置を備えた制振装置付き構造物に係り、例えば、ツーバイフォー(2×4)工法による木造建築物を含む各種の構造物に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、地震等による振動を抑制するための制振装置を備えた構造物が示されている。この制振装置付き構造物は、4本の部材を含む部材により正面視で四角形に形成されている四角形フレームを有し、この四角形フレームの内側に配設された制振手段が、この制振手段から放射状又は略放射状に延出している4本のブレース部材により四角形フレームに連結され、この四角形フレームが地震等で変形する振動エネルギを、この振動エネルギが4本のブレース部材を介して伝達される制振手段により吸収して振動を抑制するものとなっている。そして、四角形フレームの内側には、正面視で制振手段と重なる部分を有する棒状の中間部材が、この中間部材の長さ方向両端部が四角形フレームに結合されて配置されているとともに、この中間部材には、前記重なる部分を含む箇所となっている長さ方向の中央箇所において、切欠部が形成されており、この切欠部により、中間部材の前記重なる部分を含む箇所が制振手段と干渉しないようになっている。
【0003】
なお、特許文献1における前記制振手段は、地震等による振動エネルギが伝達されることにより塑性変形するものとなっている。また、下記の特許文献2にも、振動エネルギを吸収して振動を抑制するための制振手段が示されており、この制振手段は粘弾性ダンパーによるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−893号公報
【特許文献2】特開2014−148859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の制振装置付き構造物において、制振装置が配置された箇所を壁とするために、四角フレームには、制振手段及び4本のブレース部材を覆って配設される面材が釘打ちにより固定される。このように四角形フレームに面材を釘打ちで固定する際において、この構造物を準耐火構造や耐力壁構造とするためには、中間部材にも、面材を法令や規則等で定められた間隔で釘打ちを行うことが求められるため、上述したように中間部材に、この中間部材と制振手段が干渉しないようするための前記切欠部を設けても、中間部材に面材を法令や規則等で定められた間隔により釘打ちできるようにする工夫が求められる。
【0006】
本発明の目的は、中間部材に、この中間部材が制振手段と干渉しないための切欠部を設けても、中間部材に面材を法令や規則等で定められた間隔により釘打ちできるようになる制振装置付き構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制振装置付き構造物は、4本の部材を含む部材により正面視で四角形に形成されている四角形フレームを有し、この四角形フレームの内側に配設された制振手段が、この制振手段から放射状又は略放射状に延出している4本のブレース部材により前記四角形フレームに連結され、前記四角形フレームが変形する振動エネルギを、この振動エネルギが前記4本のブレース部材を介して伝達される前記制振手段により吸収して振動を抑制する制振装置付き構造物であって、前記四角形フレームの内側に正面視で前記制振手段と重なる部分を有する棒状の中間部材が、この中間部材の長さ方向両端部が前記四角形フレームに結合されて配置され、前記重なる部分を含む箇所が、前記中間部材と前記制振手段が干渉しない前記中間部材の切欠部となっている制振装置付き構造物において、前記制振手段には、正面視で前後方向となっているこの制振手段の厚さ方向に貫通した開口部が設けられているとともに、前記中間部材には、この開口部を貫通した貫通部が設けられ、前記四角フレームに、前記制振手段と前記4本のブレース部材を覆って配設された面材が釘打ちで固定され、この面材が前記中間部材に、前記貫通部に打たれた釘を含む釘打ちにより固定されていることを特徴するものである。
【0008】
このように本発明に係る制振装置付き構造物では、制振手段には、正面視で前後方向となっているこの制振手段の厚さ方向に貫通した開口部が設けられ、そして、中間部材には、この開口部を貫通した貫通部が設けられ、四角フレームに、制振手段と4本のブレース部材を覆って配設された面材が釘打ちで固定されているとともに、この面材が中間部材に、貫通部に打たれた釘を含む釘打ちにより固定されているため、中間部材に、この中間部材が制振手段と干渉しないための切欠部を設けても、中間部材に面材を、準耐火構造や耐力壁構造に関する法令や規則等で定められた間隔により釘打ちして固定できるようになる。
【0009】
以上の制振装置付き構造物において、中間部材の長さ方向は任意であり、この中間部材は、長さ方向が上下方向となっていて、長さ方向両端部が四角形フレームに結合される中間柱部材でもよく、あるいは、長さ方向が左右方向となっていて、長さ方向両端部が四角形フレームに結合される桟部材でもよい。
【0010】
また、上述した四角形フレームを形成する4本の部材を含む部材は、例えば、上下2本の梁部材と左右2本の柱部材のように、4本の部材でもよい。
【0011】
さらに、制振手段は、振動エネルギが伝達されることにより塑性変形する金属製の制振具でもよく、あるいは、粘弾性ダンパーによるものでもよい。
【0012】
制振手段を、振動エネルギが伝達されることにより塑性変形する金属製の制振具とする場合には、この制振具を、本体部と、この本体部に前記4本のブレース部材を連結するために、本体部から突出した状態で設けられている4個の連結部とを有するものとし、本体部に前記開口部を形成してもよい。
【0013】
これによると、本体部に、4個の連結部に影響されることなく、大きな開口部を設けることができ、これにより、中間部材に設ける貫通部も大きくすることができて、面材を中間部材に固定するための釘打ちを容易に行えるようになる。
【0014】
また、このように制振具の本体部に開口部を形成すると、この本体部は、開口部を囲んでいる上辺部と下辺部と右辺部と左辺部とを有するものとなるため、これらの辺部のうち、互いに対向する2つの辺部が挿入される2個の凹部を、前記貫通部の両側において、中間部材に形成することにより、中間部材と制振手段が干渉しないようにすることができる。
【0015】
さらに、以上の本発明に係る制振装置付き構造物において、中間部材の左右両側面のうち、少なくとも一方の面には、中間部材における前記切欠部が設けられている箇所の強度を補強するための補強部材を取り付けてもよい。
【0016】
これによると、中間部材に切欠部を設けても、この切欠部が設けられている中間部材の箇所を補強部材により補強できるため、この箇所を必要とされる充分の強度にすることができる。
【0017】
なお、補強部材には、前記貫通部と対応する凸状部を設けることが好ましく、これによると、前述した釘打ちが行われる貫通部についても強度の向上を図ることができる。
【0018】
以上説明した本発明は、任意の構造物に適用することができ、この構造物は、建築物や地下建造物等でもよい。
【0019】
また、建築物は、ツーバイフォー工法による木造建築物でもよく、パネル工法による木造建築物でもよく、木軸組み式の木造建築物でもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、中間部材に、この中間部材と制振手段が干渉しないための切欠部を設けても、中間部材に面材を法令や規則等で定められた間隔により釘打ちできるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る制振装置が内側に配置されている四角形フレームの正面視の形状を示す図であって、面材が釘打ちにより固定される以前の状態を示す正面図である。
図2図2は、図1で示された中間部材となっている中間柱部材の一部を示す拡大斜視図である。
図3図3は、図1の一部拡大図であって、制振装置の制振手段となっている制振具の部分を示す正面図である。
図4図4は、図1のS4−S4線断面図である。
図5図5は、図1の一部拡大図であって、制振装置のブレース部材を四角形フレームに連結するためのブラケットの部分を示す正面図である。
図6図6は、図1のS6−S6線断面図である。
図7図7は、制振装置の制振具が振動エネルギにより塑性変形したときを示す図3と同様の図である。
図8図8は、四角形フレームに面材を釘打ちにより固定したときを示す図1と同様の図である。
図9図9は、図8のS9−S9線断面図である。
図10図10は、図8のS10−S10線断面図である。
図11図11は、中間柱部材に補強部材である補強板を取り付けた実施形態を示す図2と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本実施形態に係る制振装置付き構造物となっているツーバイフォー工法による木造建築物の一部の正面図が示されており、この図1に示されている部分は、本実施形態における4本の部材となっている上下2本の梁部材1,2と左右2本の柱部材3,4が主要部材となって形成されている四角形フレーム7の正面視の部分である。柱部材3,4に隣接してこれらの柱部材3,4と同じ長さ寸法の補助用柱部材5,6が立設されており、それぞれ木製の棒状部材となっている梁部材1,2と柱部材3,4と補助用柱部材5,6により、正面視で四角形となっている四角形フレーム7が形成されているとともに、これらの梁部材1,2と柱部材3,4と補助用柱部材5,6のうち、互いに隣接している部材同士は、釘打ちにより結合されている。
【0023】
四角形フレーム7の内側には制振装置10が配設され、この制振装置10は、四角形フレーム7の内側中央部に配置された制振手段となっている制振具11と、この制振具11から正面視で放射状に延出している4本のブレース部材12とを有するものとなっており、それぞれのブレース部材12は、四角形フレーム7のそれぞれの角部に配設されたブラケット13を介して四角形フレーム7に連結されている。
【0024】
図3には、制振具11の拡大された正面視の形状が示されており、この制振具11は、全体がアルミ又はアルミ合金又は軟鉄で形成されている金属製の一体成形品である。また、制振具11は、正面視で4個の角部11Bを有する四角形又は略四角形となっている本体部11Aと、この本体部11Aのそれぞれの角部11Bに、本体部11Aからブレース部材12の延出方向に突出した状態で形成された連結部11Cとからなる。それぞれの連結部11Cには、ブレース部材12の制振具11側の端部を連結するためのリング状部11Dが設けられ、これらのリング状部11Dには孔14が貫通形成されている。
【0025】
図4は、図1のS4−S4線断面図であり、この図4から分かるように、制振具11の連結部11Cの厚さ寸法は、言い換えると、図1で示されている正面視で前後寸法となっている連結部11Cの見込み寸法は、本体部11Aよりも小さくなっている。図1に示されているように、それぞれのブレース部材12は、パイプ材による棒状のブレース本体15と、このブレース本体15の制振具11側の端部に溶接で結合された連結部材16とを含んで形成されている。図4に示されているように、板金の折り曲げによりU字状又は略U字状となっている連結部材16は、制振具11の連結部11Cの外側に嵌合され、連結部材16に形成されている孔と連結部11Cの孔14とにピン17が挿入されることにより、それぞれのブレース部材12が制振具11の連結部11Cにピン17を中心に回動自在に連結されている。
【0026】
なお、図4に示されているように、U字状又は略U字状の連結部材16の幅寸法は、言い換えると、図1で示されている正面視で前後寸法となっている連結部材16の見込み寸法は、制振具11の本体部11Aと同じ又は略同じであり、このため、制振具11の連結部11Cの外側に嵌合されたときの連結部材16は、制振具11の本体部11Aと面一(つらいち)又は略面一となっている。
【0027】
図3及び図4に示されているように、制振具11のそれぞれの連結部11Cには、押しねじ18をねじ込むためのねじ孔が形成されており、この押しねじ18をピン17に圧接するまでねじ込むことにより、ピン17が連結部材16及び連結部11Cから抜け出ることが防止されている。
【0028】
なお、ピンが連結部材16及び連結部11Cから抜け出ることを防止して、このピンを中心にブレース部材12の連結部材16を連結部11Cに回動自在に連結するためには、ピンを軸方向の一方の端部にフランジが設けられたフランジ付きピンとするとともに、軸方向の端部に設けられた溝に係止リングを係止し、これらのフランジと係止リングとにより、ピンが連結部材16及び連結部11Cから抜け出ることを防止するようにしてもよい。
【0029】
図5には、ブレース部材12を四角形フレーム7に連結するための前述したブラケット13の正面視の形状が示されている。このブラケット13は、鉛直方向に延びる鉛直部20と、水平方向に延びる水平部21とを有するものになっているとともに、鉛直部20の長さ方向の両端部のうち、水平部21側の端部と、水平部21の長さ方向の両端部のうち、鉛直部20側の端部とを斜めに連結している傾斜連結部22を有するものになっている。鉛直部20及び傾斜連結部22は、前述した連結部材16と同様のU字状又は略U字状となっているため、底部20A,22Aと、これらの底部20A,22Aの幅方向両側、言い換えると、図5で示されている正面視では、底部20A,22Aの前後方向両側から立ち上がったそれぞれ一対のフランジ部20B,22Bとからなり、また、水平部21は、傾斜連結部22の底部22Aと連続した板状のものとなっている。
【0030】
図1に示されているように、ブラケット13は四角形フレーム7の4個の角部に配置され、これらのブラケット13の鉛直部20は、図5から分かるように、四角形フレーム7を構成する柱部材3,4と補助用柱部材5,6に、鉛直部20の底部20Aに形成されている釘孔に挿入された釘23により止着され、また、ブラケット13の水平部21は、梁部材1,2に、水平部21に形成されている釘孔に挿入された釘24により止着されている。
【0031】
図5には、それぞれのブレース部材12における四角形フレーム7側の端部とブラケット13との連結構造も示されている。図5から分かるように、それぞれのブレース部材12における前述したパイプ材による棒状のブレース本体15の四角形フレーム7側の端部は、ブラケット13の鉛直部20を形成している前述した一対のフランジ部20Bの間に挿入され、この端部には、ピン26が挿通される孔が形成されている連結部材27が結合されており、ピン26が、一対のフランジ部20Bに形成された孔28と連結部材27の孔とに挿入されることにより、それぞれのブレース本体15の四角形フレーム7側の端部は、ブラケット13を介して四角形フレーム7にピン26を中心に回動自在に連結されている。
【0032】
なお、連結部材27には、図示しない押しねじをねじ込むためのねじ孔が形成されているため、この押しねじをピン26に圧接するまでねじ込むことにより、ピン26が連結部材27及び一対のフランジ部20Bから抜け出ることが防止されている。
【0033】
以上により、制振装置10の主要部材であって、制振装置10の制振手段となっている制振具11は、この制振具11から放射状に延びる4本のブレース部材12と、これらのブレース部材12ごとに設けられたブラケット13を介して四角形フレーム7に連結されていることになり、四角形フレーム7における制振具11の配設位置は、図1に示されているように、正面視で四角形フレーム7の上下方向及び左右方向の中央位置である。
【0034】
なお、本実施形態では、4本のブレース部材12のうち、上側の2本のブレース部材12の連結部材27を、四角形フレーム7の上側に配置されている2個のブラケット13の鉛直部20にピン26により連結した後に、下側の2本のブレース部材12の連結部材27を、四角形フレーム7の下側に配置されている2個のブラケット13の鉛直部20にピン26により連結できるようにするために、下側の2本のブレース部材12には、図1に示されているように、これらのブレース部材12の長さ寸法を調整できるようにするためのターンバックル式の長さ調整手段29が設けられている。上側の2本のブレース部材12の連結部材27を、四角形フレーム7の上側に配置されている2個のブラケット13の鉛直部20にピン26により連結した後に、下側の2本のブレース部材12の長さ寸法を長さ調整手段29で調整することにより、これらのブレース部材12の連結部材27に形成されている孔の位置と、四角形フレーム7の下側に配置されているブラケット13の鉛直部20の一対のフランジ部20Bに形成されている孔28の位置とを一致させることができ、この後に、これらの孔にピン26を挿入することにより、下側の2本のブレース部材12を、下側に配置されているブラケット13を介して四角形フレーム7に連結することができる。
【0035】
また、本実施形態では、図5に示されているように、それぞれのブラケット13において、鉛直部20の一対のフランジ部20Bに形成されている孔28は、上下方向に間隔をあけて複数個28A,28B,28Cが設けられており、これにより、上下2本の梁部材1,2の間の寸法が異なる木造建築物について、制振具11とブレース部材12とブラケット13を共通して用いることができるようになっている。
【0036】
図1に示されているように、四角形フレーム7の内側には、本実施形態の棒状の中間部材となっている木製の中間柱部材30が立設されており、長さ方向が上下方向となっていて、柱部材3,4と同じ長さ寸法を有するこの中間柱部材30の長さ方向両端部は、四角形フレーム7の構成部材となっている上下2本の梁部材1,2に釘打ちにより結合されている。
【0037】
四角形フレーム7における中間柱部材30の配設位置は、四角形フレーム7の左右中央位置であり、このため、図1で示されている正面視において、中間柱部材30の長さ方向中央の部分には、制振装置10の制振手段となっている制振具11と重なる部分が生じている。このような重なる部分において、中間柱部材30が制振具11と干渉しないようにするために、中間柱部材30には、この重なる部分を含む箇所において、図3及び図4にも示されている切欠部31が形成されており、この切欠部31は、図4で示されている中間柱部材30の表裏両面30A,30Bのうち、表面30A側から裏面30B側へ切り込まれたものとなっている。
【0038】
図3に示されているように、制振具11の前述した本体部11Aには、この本体部11Aよりも小さく、かつ正面視で本体部11Aと相似形又は略相似形となっている四角形又は略四角形の開口部32が形成されている。この開口部32は、正面視で前後方向となっている本体部11Aの厚さ方向に貫通しているため、本体部11Aは、開口部32を囲んでいる上辺部32Aと下辺部32Bと右辺部32Cと左辺部32Dとを有するものとなっている。
【0039】
中間柱部材30には、上辺部32Aと下辺部32Bと右辺部32Cと左辺部32Dのうち、互いに対向する2つの辺部となっている上辺部32Aと下辺部32Bが挿入された2個の凹部33,34が形成されており、本実施形態では、これらの凹部33,34が上述した切欠部31となっている。また、中間柱部材30には、2個の凹部33,34の間において、これらの凹部33,34の底部から上述した表面30Aまで突出している貫通部35(図4も参照)が形成されており、中間柱部材30における制振具11と重なる部分を含む前述した箇所に設けられているこの貫通部35は、制振具11の本体部11Aに形成されている開口部32を貫通し、本体部11Aから少し突出している。
【0040】
図2は中間柱部材30の一部を拡大した斜視図であり、上述した説明から分かるように、中間柱部材30には、表面30A側から裏面30B側へ切り込まれた2個の凹部33,34が、中間柱部材30の長さ方向に離間して形成されており、これらの凹部33,34の間は、凹部33,34の底部から表面30A側へ突出した貫通部35となっており、この貫通部35の表面35Aの突出位置は、中間柱部材30の表面30Aの位置と一致している。そして、これらの凹部33,34と貫通部35が形成されている箇所が、正面視において、中間柱部材30における制振具11と重なる部分を含む前述した箇所となっている。
【0041】
以上の中間柱部材30は、この中間柱部材30となるべき素材に貫通部35を残して2個の凹部33,34を形成するための切除加工を行うことにより、製造されている。そして、本実施形態では、中間柱部材30が制振具11と干渉しないようにするために、この中間柱部材30に設けられる前記切欠部31は、2個の凹部33,34によるものとなっている。
【0042】
図1に示されているように、四角形フレーム7の内側には、2本の補強用柱部材38,39が立設され、これらの補強用柱部材38,39の長さ方向両端部は、釘打ちにより上下2本の梁部材1,2に結合されている。図6は、図1のS6−S6線断面図であり、この図6に示されているように、制振装置10の制振具11とブレース部材12及び中間柱部材30は、正面視で前後方向となっている四角形フレーム7の厚さ方向中央位置に配置されておらず、この中央位置から厚さ方向の一方側にずれて配置され、これに対して補強用柱部材38,39は、四角形フレーム7の厚さ方向中央位置からこの厚さ方向の他方側にずれて配置されている。このため、図1に示されているように、正面視において、補強用柱部材38,39に制振装置10のブレース部材12と重なる部分が存在していても、補強用柱部材38,39はブレース部材12と干渉していない。
【0043】
図7には、四角形フレーム7に地震等による横荷重が作用した場合における制振装置10の制振具11が示されている。横荷重による四角形フレーム7の変形は、前述したそれぞれのブラケット13とそれぞれのブレース部材12を介して制振具11に伝達され、この制振具11が、図7に示されているように、正面視で菱形状又は略菱形状に塑性変形することにより、四角形フレーム7を変形させる振動エネルギが制振具11で吸収され、これにより、四角形フレーム7の変形、振動は抑制される。
【0044】
そして、このように制振具11が正面視で菱形状又は略菱形状に塑性変形しても、制振具11の本体部11Aの互いに対向する2つの辺部となっている上辺部32Aと下辺部32Bは、中間柱部材30の2個の凹部33,34に挿入されており、これらの凹部33,34についての中間柱部材30の長さ方向の寸法は、上辺部32Aと下辺部32Bの上下厚さ寸法よりも充分に大きいため、本体部11Aの開口部32がこの開口部32を貫通している中間柱部材30の貫通部35と干渉することなく、制振具11は塑性変形することになる。
【0045】
図8は、四角形フレーム7に面材40を釘打ちより固定し、この面材40により、四角形フレーム7の内側に配置された制振装置10の制振具11と4本のブレース部材12とを覆ったときを示しており、図9は、図8のS9−S9線断面図である。図9に示されているように、面材40には、正面視で前後方向となっている四角形フレーム7の厚さ方向の両側の面に固定されている面材40A,40Bがあり、表面側の面材40Aは、四角形フレーム7を構成している4本の部材となっている上下2本の梁部材1,2と左右2本の柱部材3,4に釘50により固定されているとともに、中間柱部材30にも釘50により固定されている。また、裏面側の面材40Bは、上下2本の梁部材1,2と左右2本の柱部材3,4に釘50により固定されているとともに、補強用柱部材38,39に釘50により固定されている。
【0046】
図10は、図8のS10−S10線断面図であり、これらの図8及び図10に示されているように、表面側の面材40Aを中間柱部材30に固定している複数の釘50のなかには、この中間柱部材30に設けられている前述の貫通部35に打たれている釘50Aが含まれている。このため、この釘50Aと、この釘50Aから上下に離れて中間柱部材30に打たれている直近の釘50B,50Cとの間の間隔を、制振装置10の制振具11の上下寸法よりも小さくすることができる。
【0047】
ところで、本実施形態に係る木造建築物を準耐火構造や耐力壁構造とするためには、面材40を、準耐火構造や耐力壁構造に関する法令や規則等で規定された石膏ボードや合板等としなければならないとともに、木造建築物を構成する梁部材や柱部材に面材40を固定するための釘の間隔も、上述の法令や規則等で定められた間隔としなければならない。
【0048】
本実施形態では、中間柱部材30が制振装置10の制振具11と干渉することを防止するために、この中間柱部材30には切欠部31が設けられているが、この切欠部31は、制振具11の本体部11Aを形成している上辺部32Aと下辺部32Bを挿入するための2個の凹部33,34によるものとなっており、また、これらの凹部33,34の間は、本体部11Aに形成されている開口部32を貫通した貫通部35となっているため、この貫通部35に上述の釘50Aを打つことにより、木造建築物を構成する部材に面材40を固定するための釘の間隔を、正面視において、制振具11と重なる部分を有している中間柱部材30におけるこの重なる部分においても、準耐火構造や耐力壁構造に関する法令や規則等で定められた間隔とすることができる。
【0049】
また、制振具11は、前述したように、本体部11Aと、この本体部11Aに4本のブレース部材12を連結するために、本体部11Aから突出した状態で設けられている4個の連結部11Cとを有するものとなっており、本体部11Aの一部がこれらの連結部11Cとなっていないため、本体部11Aに、中間柱部材30の貫通部35を貫通させるために設ける前述の開口部32を、正面視において、大きく形成することができるようになり、このため、貫通部35も、正面視において、大きくすることができるため、この貫通部35に対して行う釘50Aを打つ作業を容易に行えるようになる。
【0050】
図11には、中間柱部材30の左右両面に補強部材となっている補強板60を釘61で取り付けた実施形態が示されている。これらの補強板60は、中間柱部材30の2個の凹部33,34から中間柱部材30の長さ方向の外側へ延びる長さ寸法を有し、この長さ方向の途中において、これらの凹部33,34に対応する2個の窪み部63,64と、貫通部35と対応する凸状部65が形成されている。このため、中間柱部材30に前述した切欠部31となっている2個の凹部33,34が形成されていても、中間柱部材30における切欠部31が設けられている箇所を必要とされる強度にすることができる。また、補強板60には、中間柱部材30の貫通部35と対応する凸状部65が設けられているため、図8及び図10で示した釘50Aが打たれる貫通部35についても強度の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、ツーバイフォー工法による建築物を含む制振装置付きの各種の構造物に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1,2 四角形フレームを形成する部材である梁部材
3,4 四角形フレームを形成する部材である柱部材
7 四角形フレーム
10 制振装置
11 制振具
11A 本体部
11C 連結部
12 ブレース部材
13 ブラケット
30 中間部材である中間柱部材
31 切欠部
32 開口部
32A 上辺部
32B 下辺部
32C 右側辺部
32D 左側辺部
33,34 凹部
35 貫通部
40,40A,40B 面材
50,50A,50B,50C 釘
60 補強部材である補強板
65 凸状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11