特許第6843024号(P6843024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843024
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】熱式流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/699 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   G01F1/699
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-177494(P2017-177494)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-52950(P2019-52950A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 吉夫
(72)【発明者】
【氏名】日比 秀則
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−279395(JP,A)
【文献】 特許第6518486(JP,B2)
【文献】 特許第5814884(JP,B2)
【文献】 米国特許第5313831(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の流体を加熱するヒータを備え、前記ヒータの温度と前記ヒータの熱影響を受けない位置における前記流体の温度との差が設定されている設定温度差となるように前記ヒータを駆動しているときの、前記ヒータに加熱された前記流体における熱拡散の状態に対応するセンサ値を出力するように構成されたセンサ部と、
前記センサ値=変換係数A×log(流量)2+変換係数B×log(流量)+変換係数Cによる流量算出式により、前記センサ値から前記流体の流量を算出するように構成された流量算出部と
を備えることを特徴とする熱式流量計。
【請求項2】
請求項1記載の熱式流量計において、
前記センサ部は、前記ヒータの温度と前記ヒータの熱影響を受けない位置における前記流体の温度との差が一定となるように前記ヒータを駆動しているときの前記ヒータの電力を前記センサ値として出力する
ことを特徴とする熱式流量計。
【請求項3】
請求項1記載の熱式流量計において、
前記センサ部は、前記ヒータの温度と前記ヒータの熱影響を受けない位置における前記流体の温度との差が前記設定温度差となるように前記ヒータを駆動しているときの、前記ヒータより上流の前記流体の温度と前記ヒータより下流の前記流体の温度との温度差を前記センサ値として出力する
ことを特徴とする熱式流量計。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱式流量計において、
前記流体を輸送する配管と、
前記配管の外壁に接して設けられて前記流体の温度を測定する温度測定部を備え、
前記ヒータは、前記配管の外壁に接して設けられている
ことを特徴とする熱式流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体における熱拡散の作用を利用して流量を測定する熱式流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
流路を流れる流体の流量や流速を測定する技術が工業・医療分野などで幅広く利用されている。流量や流速を測定する装置としては、電磁流量計、渦流量計、コリオリ式流量計、熱式流量計など様々な種類があり、用途に応じて使い分けられている。熱式流量計は、 気体の検出が可能であり、圧力損失が基本的にはなく、質量流量が測定できるなどの利点がある。また、流路をガラス管から構成することで、腐食性の液体の流量を測定可能とした熱式流量計も用いられている(特許文献1、2参照)。このような液体の流量を測定する熱式流量計は、微量な流量の測定に適している。
【0003】
熱式流量計には、ヒータの上下流の温度差により流量を測定する方法と、ヒータの消費電力により流量を測定する方法とがある。例えば、ヒータ温度を水温に対し、プラス10℃など一定の温度差となるようにヒータを加温駆動し、ヒータの上流と下流との温度差またはヒータの消費電力から、流量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−010322号公報
【特許文献2】特表2003−532099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、熱式流量計では、センサ部でヒータの上下流の温度差やヒータの消費電力などのセンサ値を測定し、測定したセンサ値より流量を算出している。このセンサ値と流量との相関関係は、簡易的には以下の式で表され、図5に示すような曲線で示されるものとなることが知られている。
【0006】
【数1】
【0007】
ここで、実際の熱式流量計においては、製品個々のばらつきにより、式(1)の定数A,Bが一意に決まらない。更に、現実には、流速分布/環境温度などにより、センサ値と流量との相関関係は式(1)では表せない特性を示す。このため、製品毎に、実際に流体を流し、実流量値に対するセンサ値を取得し、実際の流量とセンサ値の相関関係(定数A,B)を予め求めておく必要がある。
【0008】
しかしながら、センサ値と流量との相関関係は図5に示すような曲線であるため、定数を決定しておくためには、多くの実流量値とセンサ値との関係(調整点)が必要となる。このため、従来では、熱式流量計のセンサ値と実流量との相関関係を求めておくために、多くの時間を要するという問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、熱式流量計のセンサ値と実流量との相関関係を、より短時間で求めることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る熱式流量計は、測定対象の流体を加熱するヒータを備え、ヒータの温度とヒータの熱影響を受けない位置における流体の温度との差が設定されている設定温度差となるようにヒータを駆動しているときの、ヒータに加熱された流体における熱拡散の状態に対応するセンサ値を出力するように構成されたセンサ部と、センサ値=変換係数A×log(流量)2+変換係数B×log(流量)+変換係数Cによる流量算出式により、センサ値から流体の流量を算出するように構成された流量算出部とを備える。
【0011】
上記熱式流量計において、センサ部は、ヒータの温度とヒータの熱影響を受けない位置における流体の温度との差が一定となるようにヒータを駆動しているときのヒータの電力を第1の値として出力する。
【0012】
上記熱式流量計において、センサ部は、ヒータの温度とヒータの熱影響を受けない位置における流体の温度との差が設定温度差となるようにヒータを駆動しているときの、ヒータより上流の流体の温度とヒータより下流の流体の温度との温度差を第1の値として出力する。
【0013】
上記熱式流量計において、流体を輸送する配管と、配管の外壁に接して設けられて流体の温度を測定する温度測定部を備え、ヒータは、配管の外壁に接して設けられている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、センサ値=変換係数A×log(流量)2+変換係数B×log(流量)+変換係数Cによる流量算出式により、センサ値から流体の流量を算出するようにしたので、熱式流量計のセンサ値と実流量との相関関係を、より短時間で求めることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態における熱式流量計の構成を示す構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態における熱式流量計におけるセンサ部101のより詳細な構成を示す構成図である。
図3図3は、本発明の実施の形態における熱式流量計におけるセンサ部101のより詳細な他の構成を示す構成図である。
図4図4は、本発明の実施の形態における流量算出部102のハードウエア構成を示す構成図である。
図5図5は、熱式流量計のセンサ値と流量との相関関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態における熱式流量計について図1を参照して説明する。この熱式流量計は、センサ部101と流量算出部102とを備える。
【0017】
センサ部101は、測定対象の流体を加熱するヒータを備え、ヒータの温度とヒータの熱影響を受けない位置における流体の温度との差が設定されている設定温度差となるようにヒータを駆動しているときの、ヒータに加熱された流体における熱拡散の状態に対応するセンサ値を出力する。
【0018】
流量算出部102は、流量算出式「センサ値=変換係数A×log(流量)2+変換係数B×log(流量)+変換係数C」により、センサ値から流体の流量を算出する。
【0019】
次に、センサ部101について、より詳細に説明する。センサ部101は、例えば、図2に示すように、温度測定部111、ヒータ112、制御部113、電力計測部114を備える。温度測定部111は、測定対象の流体121を輸送する配管122の外壁に接して設けられている。配管122は、例えば、ガラスから構成されている。ヒータ112は、温度測定部111の下流の側の配管122の外壁に接して設けられている。温度測定部111は、流体121の温度を測定する。
【0020】
制御部113は、ヒータ112の温度と、温度測定部111で測定されるヒータ112の熱影響を受けない位置、例えばヒータ112より上流における流体121の温度との差が、予め設定されている所定の温度差となるように、ヒータ112を制御して駆動する。電力計測部114は、制御部113により制御されているヒータ112の電力を計測して出力する。この例では、センサ部101を構成する電力計測部114から出力される電力がセンサ値となる。電力計測部114が計測して出力したヒータ112の電力(センサ値)より、流体121の流量を算出することができる。
【0021】
よく知られているように、ヒータ112の温度とヒータ112の熱影響を受けない位置における流体121の温度との差が設定温度差となるようにヒータ112を駆動しているときの、ヒータ112が消費している電力と流体121の流量との間には相関がある。また、この相関関係は、同じ流体/流量/温度において再現性がある。従って、上述したように、ヒータ112が制御部113に制御されている状態で、電力計測部114が計測した電力より、所定の相関係数を用いることで流量が算出できる。
【0022】
また、図3に示すように、温度測定部111、ヒータ112、制御部113、温度測定部116、温度測定部117からセンサ部101’を構成してもよい。
【0023】
ここで、温度測定部111は、測定対象の流体121を輸送する配管122の外壁に接して設けられている。ヒータ112は、温度測定部111の下流の側の配管122の外壁に接して設けられている。温度測定部111は、流体121の温度を測定する。
【0024】
制御部113は、ヒータ112の温度と、温度測定部111で測定されるヒータ112の熱影響を受けない位置、例えばヒータ112より上流における流体121の温度との差が、予め設定されている設定温度差となるように、ヒータ112を制御して駆動する。
【0025】
温度測定部117は、温度測定部111より下流側でかつヒータ112の上流側において、配管122の外壁に接して設けられている。また、温度測定部117は、ヒータ112の下流側において、配管122の外壁に接して設けられている。温度測定部116,温度測定部117は、流体121の温度を測定する。
【0026】
温度測定部116が測定している流体の温度と、温度測定部117が測定している流体の温度との温度差より、流体121の流量を算出することができる。この例では、温度測定部116が測定している流体の温度と、温度測定部117が測定している流体の温度との温度差が、センサ値となる。
【0027】
よく知られているように、ヒータ112の温度とヒータ112の熱影響を受けない位置における流体121の温度との差が、予め設定されている設定温度差となるようにヒータ112を駆動しているときの、ヒータ112より上流の流体121の温度とヒータ112より下流の流体121の温度との温度差と、流体121の流量との間には相関がある。また、この相関関係は、同じ流体/流量/温度において再現性がある。従って、上述したように、ヒータ112が制御部113に制御されている状態で、温度測定部116が測定した温度と温度測定部117が測定した温度との差(温度差)より、所定の相関係数を用いることで流量が算出できる。
【0028】
ここで、実際の流量と熱式流量計におけるセンサ値との相関関係は、図5を用いて説明したように曲線となる。この曲線を対数軸に変換すると、おおよそ直線となる。言い換えると、式(1)を対数変換すれば、おおよそ直線に近似できる。この近似した直線の関係を用いれば、多く調整点を必要とせずに、関係式の定数を決定できる。しかしながら、実際には、流速分布の影響などで、直線近似では正確な変換はできないことが判明している。
【0029】
これに対し、発明者らの鋭意の検討の結果、以下の2次式で実際の流量と熱式流量計におけるセンサ値との相関関係が、全流量範囲で近似できることが判明した。
【0030】
【数2】
【0031】
ここで、変換係数A,変換係数B,変換係数Cは、測定対象の流体の各々異なる3つの第1流量、第2流量、第3流量の測定により第1センサ値、第2センサ値、第3センサ値を取得し、式(2)の流量算出式に、第1流量、第2流量、第3流量、第1センサ値、第2センサ値、第3センサ値を各々代入した3つの連立方程式より、求めておくことができる。このように、実施の形態によれば、多くの調整点を必要とせず、熱式流量計のセンサ値と実流量との相関関係を、より短時間で求めることができるようになる。
【0032】
ところで、変換係数A,変換係数B,変換係数Cを決定するに当たり、第1流量、第2流量、第3流量は、対数として等間隔となっていることが望ましい。例えば、第1流量は1(g/min)とし、第2流量は6(g/min)とし、第3流量は36(g/min)とすることが望ましい。
【0033】
なお、流量算出部102、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)201と主記憶装置202と外部記憶装置203となどを備えたコンピュータ機器であり、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作することで、上述した機能が実現される。
【0034】
以上に説明したように、本発明によれば、センサ値=変換係数A×log(流量)2+変換係数B×log(流量)+変換係数Cによる流量算出式により、センサ値から流体の流量を算出するようにしたので、熱式流量計のセンサ値と実流量との相関関係を、より短時間で求めることができる。
【0035】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0036】
101…センサ部、102…流量算出部。
図1
図2
図3
図4
図5