特許第6843037号(P6843037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843037
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】コンバイン制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/00 20060101AFI20210308BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20210308BHJP
   A01F 12/32 20060101ALI20210308BHJP
   A01D 41/127 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A01D69/00 302L
   A01D69/00 303D
   A01D69/00 302K
   A01D69/00 302M
   A01B69/00 303Z
   A01F12/32 C
   A01D41/127
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-242049(P2017-242049)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2019-106928(P2019-106928A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】阪口 和央
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−86668(JP,A)
【文献】 特開2012−110305(JP,A)
【文献】 特開2013−48605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 69/00
A01B 69/00
A01D 41/127
A01F 12/32
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の植立穀稈を刈り取る刈取装置と、前記刈取装置により刈り取られた刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、を有するコンバインを制御するコンバイン制御システムであって、
圃場における刈取走行のための走行経路である刈取走行経路を算出する刈取走行経路算出部と、
前記刈取走行経路に沿った自動走行によって刈取走行が行われるように前記コンバインを制御する自動刈取走行制御部と、
前記コンバインが前記刈取走行経路から離脱した場合に、前記脱穀装置の脱穀効率が低下したか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記脱穀装置の脱穀効率が低下したと判定された場合に前記脱穀装置の駆動を停止させる脱穀装置停止部と、
前記脱穀装置停止部により前記脱穀装置の駆動が停止された後、前記刈取走行経路に沿った自動走行へ復帰するために前記コンバインが旋回するときに、前記脱穀装置の駆動を自動的に再開させる脱穀装置開始部と、を備えるコンバイン制御システム。
【請求項2】
前記脱穀装置は、脱穀処理により得られた処理物を選別処理する揺動選別部を有しており、
前記コンバインは、前記揺動選別部において選別処理されている処理物の量である選別処理物量を検知するシーブセンサを有しており、
前記判定部は、前記シーブセンサにより検知されている前記選別処理物量が減少した場合、前記脱穀装置の脱穀効率が低下したと判定するように構成されている請求項1に記載のコンバイン制御システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記刈取装置が非駆動状態である期間が継続した場合、前記脱穀装置の脱穀効率が低下したと判定するように構成されている請求項1に記載のコンバイン制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取装置と、刈取装置により刈り取られた刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、を有するコンバインを制御するコンバイン制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動走行するコンバインの発明が記載されている。このコンバインを利用した収穫作業において、作業者は、収穫作業の最初にコンバインを手動で操作し、圃場内の外周部分を一周するように刈取走行を行う。
【0003】
この外周部分での走行において、収穫機の走行すべき方位が記録される。そして、記録された方位に基づく自動走行によって、圃場における未刈領域での刈取走行が行われる。
【0004】
ここで、特許文献1に記載の発明においては、圃場内の外周部分に、収集タンクが配置される。この収集タンクは、コンバインの有する排出筒から排出された穀粒を受け、貯留することができるように構成されている。
【0005】
そして、特許文献1に記載のコンバインは、収集タンクの近傍を通過する周回走行を繰り返すことにより、未刈領域での刈取走行を行うように構成されている。この周回走行においては、コンバインが収集タンクに近接した際、穀粒を排出する必要があれば、コンバインは収集タンクの近傍に停止する。そして、コンバインの排出筒から収集タンクへ穀粒が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平2−107911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のコンバインにおいては、穀粒を排出する必要がない場合にも、コンバインは、収集タンクの近傍を通過するように自動走行する。このとき、コンバインは既刈領域を走行することとなる。
【0008】
即ち、特許文献1に記載のコンバインの自動走行においては、既刈領域での走行の割合が比較的大きくなる。これにより、作業効率が低くなりがちである。
【0009】
ここで、作業効率を向上させるべく、未刈領域において設定された刈取走行経路に沿ってコンバインを走行させ、穀粒排出等の必要が生じた場合には、その刈取走行経路から一時的に離脱させるようにコンバインを制御する構成が考えられる。
【0010】
この構成においては、コンバインが刈取走行経路から離脱した後、刈取走行経路に沿った走行に復帰するまでの間、コンバインは既刈領域を走行することとなる。即ち、この間、コンバインは植立穀稈の刈り取りを行わない。そのため、コンバインが刈取走行経路から離脱した後に、脱穀装置へ供給される刈取穀稈の量は減少することとなる。
【0011】
ここで、コンバインが刈取走行経路から離脱した後、刈取走行経路に沿った走行に復帰するまでの間、脱穀装置が駆動され続ける構成では、脱穀装置へ供給される刈取穀稈の量が減少するにもかかわらず、脱穀装置が駆動し続けることとなる。これにより、脱穀装置の駆動に無駄が生じ、脱穀効率が低下しやすくなる。これは、燃費の悪化に繋がる。
【0012】
本発明の目的は、コンバインの燃費が良好となるコンバイン制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴は、
圃場の植立穀稈を刈り取る刈取装置と、前記刈取装置により刈り取られた刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、を有するコンバインを制御するコンバイン制御システムであって、
圃場における刈取走行のための走行経路である刈取走行経路を算出する刈取走行経路算出部と、
前記刈取走行経路に沿った自動走行によって刈取走行が行われるように前記コンバインを制御する自動刈取走行制御部と、
前記コンバインが前記刈取走行経路から離脱した場合に、前記脱穀装置の脱穀効率が低下したか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記脱穀装置の脱穀効率が低下したと判定された場合に前記脱穀装置の駆動を停止させる脱穀装置停止部と、
前記脱穀装置停止部により前記脱穀装置の駆動が停止された後、前記刈取走行経路に沿った自動走行へ復帰するために前記コンバインが旋回するときに、前記脱穀装置の駆動を自動的に再開させる脱穀装置開始部と、を備えることにある。
【0014】
本発明であれば、コンバインが刈取走行経路から離脱した後、脱穀装置の脱穀効率が低下した場合には、脱穀装置停止部により、脱穀装置の駆動が停止される。従って、脱穀装置の駆動に無駄が生じにくくなる。これにより、コンバインの燃費が良好となる。
【0015】
さらに、本発明において、
前記脱穀装置は、脱穀処理により得られた処理物を選別処理する揺動選別部を有しており、
前記コンバインは、前記揺動選別部において選別処理されている処理物の量である選別処理物量を検知するシーブセンサを有しており、
前記判定部は、前記シーブセンサにより検知されている前記選別処理物量が減少した場合、前記脱穀装置の脱穀効率が低下したと判定するように構成されていると好適である。
【0016】
脱穀装置へ供給される刈取穀稈の量が減少すると、揺動選別部において選別処理されている処理物の量が減少する。このとき、脱穀装置の脱穀効率は低下しがちである。
【0017】
ここで、上記の構成によれば、揺動選別部において選別処理されている処理物の量が減少した場合、脱穀効率が低下したと判定される。従って、上記の構成によれば、脱穀効率が低下したことを精度良く判定できる。
【0018】
さらに、本発明において、
前記判定部は、前記刈取装置が非駆動状態である期間が継続した場合、前記脱穀装置の脱穀効率が低下したと判定するように構成されていると好適である。
【0019】
刈取装置が非駆動状態である期間が継続すると、脱穀装置へ供給される刈取穀稈の量が減少する。このとき、脱穀装置の脱穀効率は低下しがちである。
【0020】
ここで、上記の構成によれば、刈取装置が非駆動状態である期間が継続した場合、脱穀効率が低下したと判定される。従って、上記の構成によれば、脱穀効率が低下したことを精度良く判定できる。
【0021】
【0022】
【0023】
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】コンバイン制御システムの構成を示すブロック図である。
図3】脱穀装置の構成を示す縦断側面図である。
図4】圃場における周回走行を示す図である。
図5】刈取走行経路及び離脱復帰経路を示す図である。
図6】刈取走行経路に沿った刈取走行を示す図である。
図7】コンバインが刈取走行経路から離脱する様子を示す図である。
図8】コンバインが刈取走行経路に沿った自動走行へ復帰する様子を示す図である。
図9】再算出復帰経路を示す図である。
図10】第1別実施形態において走行制御部が離脱復帰経路を捕捉した場合のコンバインの走行を示す図である。
図11】第1別実施形態において走行制御部が刈取走行経路を捕捉した場合のコンバインの走行を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、図1及び図3に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。また、図1及び図3に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0026】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、普通型のコンバイン1は、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、収穫装置H、搬送装置16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0027】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。コンバイン1は、走行装置11によって自走可能である。
【0028】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12には、コンバイン1の作業を監視する作業者が搭乗可能である。尚、作業者は、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0029】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0030】
収穫装置Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送装置16は、収穫装置Hの後側に設けられている。また、収穫装置Hは、刈取装置15及びリール17を有している。
【0031】
刈取装置15は、圃場の植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。この構成により、収穫装置Hは、圃場の穀物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈取装置15によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0032】
刈取装置15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送装置16によって脱穀装置13へ搬送される。脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0033】
このように、コンバイン1は、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取装置15と、刈取装置15により刈り取られた刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置13と、を有する。
【0034】
また、図1に示すように、運転部12には、通信端末4が配置されている。通信端末4は、種々の情報を表示可能に構成されている。本実施形態において、通信端末4は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、通信端末4は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、通信端末4は、コンバイン1の機外に位置していても良い。
【0035】
また、図2に示すように、コンバイン1は、エンジン51、刈取クラッチC15、脱穀クラッチC13を備えている。
【0036】
エンジン51から出力された動力は、刈取クラッチC15、脱穀クラッチC13、走行装置11に分配される。走行装置11は、エンジン51からの動力により駆動する。
【0037】
また、刈取クラッチC15及び脱穀クラッチC13は、何れも、動力を伝達する入状態と、動力を伝達しない切状態と、の間で状態変更可能に構成されている。
【0038】
刈取クラッチC15が切状態であるとき、エンジン51から出力された動力は刈取装置15に伝達されない。このとき、刈取装置15は非駆動状態である。
【0039】
刈取クラッチC15が入状態であるとき、エンジン51から出力された動力は刈取装置15に伝達される。このとき、刈取装置15は、エンジン51からの動力により駆動する。即ち、このとき、刈取装置15は駆動状態である。
【0040】
脱穀クラッチC13が切状態であるとき、エンジン51から出力された動力は脱穀装置13に伝達されない。このとき、脱穀装置13は非駆動状態である。
【0041】
脱穀クラッチC13が入状態であるとき、エンジン51から出力された動力は脱穀装置13に伝達される。このとき、脱穀装置13は、エンジン51からの動力により駆動する。即ち、このとき、脱穀装置13は駆動状態である。
【0042】
〔脱穀装置の構成〕
図3に示すように、脱穀装置13は、脱穀処理部13aと、揺動選別部13bと、を有している。揺動選別部13bは、脱穀処理部13aの下方に位置している。
【0043】
脱穀処理部13aは、扱室30、扱胴31、受網32を有している。図3に示すように、扱胴31は扱室30の内側に位置している。また、受網32は、扱胴31の下方に位置している。
【0044】
刈取装置15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送装置16によって扱室30へ搬送される。そして、刈取穀稈は、扱室30において、エンジン51からの動力により回転する扱胴31と、受網32と、によって脱穀処理される。脱穀処理により得られた処理物は、受網32から揺動選別部13bへ落下する。
【0045】
以上の構成により、脱穀処理部13aは、刈取穀稈を脱穀処理する。
【0046】
揺動選別部13bは、揺動フレーム33、グレンパン34、篩い線部35、第1チャフシーブ36、グレンシーブ37、第2チャフシーブ38、唐箕39、1番回収部40、2番回収部41を有している。
【0047】
揺動フレーム33は、エンジン51からの動力によって揺動するように構成されている。また、グレンパン34、篩い線部35、第1チャフシーブ36、グレンシーブ37、第2チャフシーブ38は、揺動フレーム33に支持されている。
【0048】
この構成により、揺動フレーム33の揺動に伴って、グレンパン34、篩い線部35、第1チャフシーブ36、グレンシーブ37、第2チャフシーブ38も揺動する。
【0049】
図3に示すように、グレンシーブ37は、第1チャフシーブ36の下方に位置している。また、第2チャフシーブ38は、第1チャフシーブ36の後下方に位置している。1番回収部40及び2番回収部41は、揺動フレーム33の下方に位置している。
【0050】
受網32から落下した処理物は、グレンパン34、篩い線部35、第1チャフシーブ36、グレンシーブ37、第2チャフシーブ38によって揺すられると共に、唐箕39から送られる選別風を受ける。これにより、処理物は、穀粒と、ワラ屑などの塵埃と、に選別される。
【0051】
グレンシーブ37から落下した穀粒は、1番回収部40によって回収され、穀粒タンク14へ搬送される。
【0052】
第2チャフシーブ38から落下した未処理粒は、2番回収部41によって回収され、還元装置42によって、揺動選別部13bの前部へ搬送される。揺動選別部13bの前部へ搬送された未処理粒は、揺動選別部13bによって再び選別処理される。
【0053】
以上の構成により、揺動選別部13bは、脱穀処理により得られた処理物を選別処理する。
【0054】
このように、脱穀装置13は、脱穀処理により得られた処理物を選別処理する揺動選別部13bを有している。
【0055】
また、図3に示すように、第1チャフシーブ36の上側近傍に、シーブセンサS1が設けられている。シーブセンサS1は、第1チャフシーブ36上の処理物の厚みを検出する。これにより、シーブセンサS1は、選別処理物量を検知する。尚、選別処理物量とは、揺動選別部13bにおいて選別処理されている処理物の量である。
【0056】
本実施形態においては、シーブセンサS1は、選別処理物量を、レベル1からレベル5の5段階で検知する。尚、レベル1が選別処理物量の最も少ない状態に相当し、レベル5が選別処理物量の最も多い状態に相当する。即ち、レベル数が大きいほど、選別処理物量は多い。
【0057】
このように、コンバイン1は、揺動選別部13bにおいて選別処理されている処理物の量である選別処理物量を検知するシーブセンサS1を有している。
【0058】
尚、脱穀装置13が駆動状態であるとき、扱胴31はエンジン51からの動力により回転し、揺動フレーム33はエンジン51からの動力により揺動する。また、脱穀装置13が非駆動状態であるとき、扱胴31は回転せず、揺動フレーム33は揺動しない。
【0059】
ここで、コンバイン1は、図4に示すように圃場における外周側の領域で穀物を収穫しながら周回走行を行った後、図6に示すように圃場における内側の領域で刈取走行を行うことにより、圃場の穀物を収穫するように構成されている。
【0060】
そして、この収穫作業において、コンバイン1は、コンバイン制御システムAによって制御される。以下では、コンバイン制御システムAの構成について説明する。
【0061】
〔コンバイン制御システムの構成〕
図2に示すように、コンバイン制御システムAは、衛星測位モジュール80と、制御部20と、を備えている。尚、制御部20は、コンバイン1に備えられている。また、上述の通り、衛星測位モジュール80も、コンバイン1に備えられている。
【0062】
制御部20は、自車位置算出部21、経路算出部22、走行制御部23(本発明に係る「自動刈取走行制御部」に相当)、領域算出部24、判定部25、脱穀装置開始部26、脱穀装置停止部27、走行禁止領域記憶部28、刈取クラッチセンサS2を有している。また、上述のシーブセンサS1は、制御部20に含まれている。
【0063】
図1に示すように、衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GSからのGPS信号を受信する。そして、図2に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
【0064】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、走行制御部23及び領域算出部24へ送られる。
【0065】
領域算出部24は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、図5に示すように、外周領域SA及び作業対象領域CAを算出する。
【0066】
より具体的には、領域算出部24は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場の外周側における周回走行でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、領域算出部24は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が穀物を収穫しながら周回走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部24は、算出された外周領域SAの内側を、作業対象領域CAとして算出する。
【0067】
例えば、図4においては、圃場の外周側における周回走行のためのコンバイン1の走行経路が矢印で示されている。図4に示す例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行う。そして、この走行経路に沿った刈取走行が完了すると、圃場は、図5に示す状態となる。
【0068】
図5に示すように、領域算出部24は、コンバイン1が穀物を収穫しながら周回走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部24は、算出された外周領域SAの内側を、作業対象領域CAとして算出する。
【0069】
そして、図2に示すように、領域算出部24による算出結果は、経路算出部22へ送られる。
【0070】
図2に示すように、経路算出部22は、刈取走行経路算出部22a及び離脱復帰経路算出部22bを有している。刈取走行経路算出部22aは、領域算出部24から受け取った算出結果に基づいて、図5に示すように、作業対象領域CAにおける刈取走行のための走行経路である刈取走行経路LIを算出する。尚、図5に示すように、本実施形態においては、刈取走行経路LIは、互いに平行な複数の平行線である。
【0071】
このように、コンバイン制御システムAは、圃場における刈取走行のための走行経路である刈取走行経路LIを算出する刈取走行経路算出部22aを備えている。
【0072】
図2に示すように、刈取走行経路算出部22aにより算出された刈取走行経路LIは、走行制御部23へ送られる。
【0073】
走行制御部23は、走行装置11を制御可能に構成されている。そして、走行制御部23は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、刈取走行経路算出部22aから受け取った刈取走行経路LIと、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部23は、図6に示すように、刈取走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0074】
このように、コンバイン制御システムAは、刈取走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるようにコンバイン1を制御する走行制御部23を備えている。
【0075】
また、離脱復帰経路算出部22bは、領域算出部24から受け取った算出結果に基づいて、図5に示すように、外周領域SAにおける非刈取走行のための走行経路である離脱復帰経路LWを算出する。尚、図5に示すように、本実施形態においては、離脱復帰経路LWは、圃場の外形に沿う形状の線である。
【0076】
図2に示すように、離脱復帰経路算出部22bにより算出された離脱復帰経路LWは、走行制御部23へ送られる。
【0077】
走行制御部23は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、離脱復帰経路算出部22bから受け取った離脱復帰経路LWと、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部23は、図7に示すように、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した場合に、離脱復帰経路LWに沿った自動走行によって非刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0078】
また、シーブセンサS1は、上述の通り、脱穀装置13の揺動選別部13bにおいて、選別処理物量を検知する。図2に示すように、シーブセンサS1による検知結果は、判定部25へ送られる。
【0079】
また、刈取クラッチセンサS2は、刈取クラッチC15の入切状態を検知する。刈取クラッチセンサS2による検知結果は、判定部25へ送られる。
【0080】
判定部25は、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した場合に、脱穀装置13の脱穀効率が低下したか否かを判定する。より具体的には、図7に示すようにコンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した場合、図2に示すように、走行制御部23から、所定の信号が判定部25へ送られる。この信号は、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱したことを示す信号である。判定部25がこの信号を受け取った後、シーブセンサS1により検知されている選別処理物量が減少した場合、判定部25は、脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定する。
【0081】
本実施形態においては、判定部25は、選別処理物量がレベル1である状態が所定の第1期間以上継続した場合、脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定する。即ち、選別処理物量がレベル1である状態が第1期間以上継続することは、シーブセンサS1により検知されている選別処理物量が減少することに相当する。
【0082】
尚、この第1期間は、例えば10秒間であっても良いし、それ以外の長さの期間であっても良い。
【0083】
このように、コンバイン制御システムAは、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した場合に、脱穀装置13の脱穀効率が低下したか否かを判定する判定部25を備えている。また、判定部25は、シーブセンサS1により検知されている選別処理物量が減少した場合、脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定するように構成されている。
【0084】
また、上述の通り、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した場合、走行制御部23から、所定の信号が判定部25へ送られる。そして、判定部25がこの信号を受け取った後、刈取装置15が非駆動状態である期間が継続した場合、判定部25は、脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定する。
【0085】
より具体的には、刈取クラッチセンサS2から、刈取クラッチC15が切状態であることを示す検知結果が判定部25へ送られると、判定部25は、刈取クラッチC15が連続して切状態である期間をカウントする。そして、刈取クラッチC15が連続して切状態である期間が所定の第2期間に達した場合、判定部25は、脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定する。即ち、刈取クラッチC15が連続して切状態である期間が第2期間に達することは、刈取装置15が非駆動状態である期間が継続することに相当する。
【0086】
尚、この第2期間は、例えば10秒間であっても良いし、それ以外の長さの期間であっても良い。
【0087】
このように、判定部25は、刈取装置15が非駆動状態である期間が継続した場合、脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定するように構成されている。
【0088】
判定部25による判定結果は、脱穀装置停止部27へ送られる。
【0089】
脱穀装置停止部27は、判定部25により脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定された場合に、脱穀クラッチC13を入状態から切状態に切り替える。これにより、脱穀装置13の駆動は停止する。
【0090】
このように、コンバイン制御システムAは、判定部25により脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定された場合に脱穀装置13の駆動を停止させる脱穀装置停止部27を備えている。
【0091】
また、脱穀装置停止部27により脱穀装置13の駆動が停止された後、図8に示すように刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰するためにコンバイン1が旋回するとき、図2に示すように、走行制御部23から、所定の信号が脱穀装置開始部26へ送られる。この信号は、刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰するためにコンバイン1が旋回することを示す信号である。脱穀装置開始部26は、この信号を受け取ると、脱穀クラッチC13を切状態から入状態に切り替える。これにより、脱穀装置13の駆動は再開する。
【0092】
このように、コンバイン制御システムAは、脱穀装置停止部27により脱穀装置13の駆動が停止された後、刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰するためにコンバイン1が旋回するときに、脱穀装置13の駆動を再開させる脱穀装置開始部26を備えている。
【0093】
〔コンバイン制御システムを利用した収穫作業の流れ〕
以下では、コンバイン制御システムAを利用した収穫作業の例として、コンバイン1が、図4に示す圃場で収穫作業を行う場合の流れについて説明する。
【0094】
最初に、作業者は、コンバイン1を手動で操作し、図4に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線に沿って周回するように刈取走行を行う。図4に示す例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行う。この周回走行が完了すると、圃場は、図5に示す状態となる。
【0095】
領域算出部24は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、図4に示す周回走行でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、図5に示すように、領域算出部24は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が植立穀稈を刈り取りながら周回走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部24は、算出された外周領域SAの内側を、作業対象領域CAとして算出する。
【0096】
次に、刈取走行経路算出部22aは、領域算出部24から受け取った算出結果に基づいて、図5に示すように、作業対象領域CAにおける刈取走行経路LIを設定する。また、このとき、離脱復帰経路算出部22bは、領域算出部24から受け取った算出結果に基づいて、外周領域SAにおける離脱復帰経路LWを算出する。
【0097】
そして、作業者が自動走行開始ボタン(図示せず)を押すことにより、図6に示すように、刈取走行経路LIに沿った自動走行が開始される。このとき、走行制御部23は、刈取走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0098】
コンバイン1により刈取走行が行われている間、上述の通り、刈取装置15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送装置16によって脱穀装置13へ搬送される。そして、脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。
【0099】
尚、本実施形態においては、図4から図6に示すように、圃場外に運搬車CVが駐車している。そして、外周領域SAにおいて、運搬車CVの近傍位置には、停車位置PPが設定されている。図5及び図6に示すように、停車位置PPは、離脱復帰経路LWに重複する位置に設定されている。
【0100】
運搬車CVは、コンバイン1が穀粒排出装置18から排出した穀粒を収集し、運搬することができる。穀粒排出の際、コンバイン1は停車位置PPに停車し、穀粒排出装置18によって穀粒を運搬車CVへ排出する。
【0101】
コンバイン1が刈取走行を続け、穀粒タンク14内の穀粒の量が所定量に達すると、図7に示すように、走行制御部23は、刈取走行経路LIから離脱するようにコンバイン1の走行を制御する。また、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱することに伴い、刈取クラッチC15は入状態から切状態へ切り替えられる。
【0102】
尚、本実施形態においては、図7に示す刈取走行経路LI上の位置P1において、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱するものとする。
【0103】
図7に示すように、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した後、走行制御部23は、離脱復帰経路LWへ向かって走行するようにコンバイン1を制御する。そして、コンバイン1が離脱復帰経路LWの近傍に到達すると、走行制御部23は、離脱復帰経路LWに沿った自動走行によって非刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0104】
ここで、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した後、脱穀装置13へ供給される刈取穀稈の量は減少する。本実施形態においては、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した後、選別処理物量がレベル5からレベル1へ低下したものとする。そして、選別処理物量がレベル1である状態が第1期間継続した時点で、コンバイン1は図7に示す位置P2に位置しているものとする。
【0105】
この場合、コンバイン1が位置P2に到達した時点で、判定部25は、脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定することとなる。従って、位置P2において、脱穀装置停止部27は、脱穀クラッチC13を入状態から切状態に切り替える。これにより、脱穀装置13の駆動は停止する。
【0106】
図7に示すように、コンバイン1は、位置P2を通過した後、離脱復帰経路LWに沿った自動走行を続け、停車位置PPに停車する。そして、穀粒排出装置18によって穀粒を運搬車CVへ排出する。
【0107】
穀粒を排出した後、図8に示すように、コンバイン1は離脱復帰経路LWに沿った自動走行を再開する。そして、コンバイン1は、刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰するために、位置P3において旋回する。この旋回は走行制御部23の制御によって自動的に行われる。
【0108】
このとき、脱穀装置開始部26は、脱穀クラッチC13を切状態から入状態に切り替える。これにより、位置P3において脱穀装置13の駆動が再開する。また、これと同時に、刈取クラッチC15が切状態から入状態に切り替えられる。そして、コンバイン1は、刈取走行経路LI上の位置P4において、刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰する。
【0109】
尚、本発明はこれに限定されず、コンバイン1が作業対象領域CAにおける未刈部分に近接したタイミングで、脱穀クラッチC13及び刈取クラッチC15が切状態から入状態に切り替えられても良い。例えば、コンバイン1の刈取装置15と、作業対象領域CAにおける未刈部分と、の間の距離が2メートルとなった時点で、脱穀クラッチC13及び刈取クラッチC15が切状態から入状態に切り替えられても良い。
【0110】
また、コンバイン1が刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰する位置は、作業対象領域CAにおける未刈部分のうち、停車位置PPから最も近い位置に決定される。即ち、コンバイン1が刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰する位置は、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した位置にかかわらず決定される。そのため、上述の位置P1と位置P4とは異なっている。
【0111】
そして、作業対象領域CAにおける全ての刈取走行経路LIに沿った刈取走行が完了すると、圃場の全体が収穫済みとなる。
【0112】
尚、以上で説明したように、本実施形態においては、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱して離脱復帰経路LWに沿った走行を開始するまでの間、コンバイン1の走行は、走行制御部23の制御による自動走行によって行われる。
【0113】
また、本実施形態においては、コンバイン1が離脱復帰経路LWを離れて刈取走行経路LIに沿った走行を再開するまでの間、コンバイン1の走行は、走行制御部23の制御による自動走行によって行われる。
【0114】
〔再算出復帰経路について〕
ところで、コンバイン1が刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰する際、離脱復帰経路算出部22bは、離脱復帰経路LWとは異なる再算出復帰経路LRを算出することができる。再算出復帰経路LRは、コンバイン1が刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰するための走行経路である。以下では、再算出復帰経路LRについて説明する。
【0115】
上述の通り、制御部20は、走行禁止領域記憶部28を有している。走行禁止領域記憶部28は、圃場における走行禁止領域PAを記憶している。図2に示すように、離脱復帰経路算出部22bは、走行禁止領域記憶部28から、走行禁止領域PAを示すデータを取得する。
【0116】
尚、走行禁止領域PAとは、圃場において、樹木が存在する等の理由により、コンバイン1の走行が禁止されている領域である。
【0117】
また、図2に示すように、自車位置算出部21は、コンバイン1の経時的な位置座標を、離脱復帰経路算出部22bへ送る。
【0118】
そして、離脱復帰経路算出部22bは、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標と、領域算出部24から受け取った算出結果と、に基づいて、作業対象領域CAにおける未刈領域CA1及び既刈領域CA2を算出する。
【0119】
さらに、離脱復帰経路算出部22bは、走行禁止領域記憶部28から取得した走行禁止領域PAを示すデータと、コンバイン1の現在の位置座標と、領域算出部24から受け取った算出結果と、上述の通り算出された未刈領域CA1及び既刈領域CA2と、に基づいて、再算出復帰経路LRを算出する。
【0120】
ここで、再算出復帰経路LRの算出は、次の3つの条件に従って行われる。即ち、再算出復帰経路LRは、走行禁止領域PAを通過する走行経路であってはならない。また、再算出復帰経路LRは、圃場の外部を通過する走行経路であってはならない。また、再算出復帰経路LRは、既刈領域CA2を通過する走行経路であっても良い。
【0121】
以下では、再算出復帰経路LRの算出の例として、図9に示す圃場において再算出復帰経路LRが算出される場合の流れについて説明する。
【0122】
図9には、コンバイン1が、停車位置PPに停車している状態から、刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰する様子が示されている。
【0123】
コンバイン1が停車位置PPに停車している間に、離脱復帰経路算出部22bによる再算出復帰経路LRの算出が行われる。この算出においては、まず、作業対象領域CAにおける未刈領域CA1のうち、停車位置PPから最も近い位置が算出される。このとき算出された位置が、刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰するための位置として決定される。図9に示す例では、位置P5が、刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰するための位置として決定される。
【0124】
次に、離脱復帰経路算出部22bは、再算出復帰経路LRの候補となる走行経路を算出する。このとき算出される走行経路は、停車位置PPから位置P5までの走行経路である。
【0125】
詳述すると、離脱復帰経路算出部22bは、再算出復帰経路LRの候補として、まず、第1ルートRt1を算出する。第1ルートRt1は、停車位置PPから位置P5までの走行距離が比較的短くなるように算出されている。
【0126】
しかしながら、第1ルートRt1は、走行禁止領域PAを横切っている。即ち、第1ルートRt1は、走行禁止領域PAを通過する走行経路であるため、再算出復帰経路LRの候補から除外される。
【0127】
次に、離脱復帰経路算出部22bは、再算出復帰経路LRの候補として、第2ルートRt2及び第3ルートRt3を算出する。第2ルートRt2及び第3ルートRt3は、走行禁止領域PAを迂回するように算出されている。また、第2ルートRt2及び第3ルートRt3の長さは互いに同じである。
【0128】
ここで、第2ルートRt2の一部は、圃場の外部に位置している。即ち、第2ルートRt2は、圃場の外部を通過する走行経路であるため、再算出復帰経路LRの候補から除外される。
【0129】
また、第3ルートRt3の一部は、既刈領域CA2に位置している。即ち、第3ルートRt3は、既刈領域CA2を通過する走行経路である。また、第3ルートRt3は、走行禁止領域PAを通過する走行経路ではない。また、第3ルートRt3は、圃場の外部を通過する走行経路ではない。従って、第3ルートRt3は、再算出復帰経路LRの候補として残る。
【0130】
即ち、上述の3つのルートのうち、再算出復帰経路LRの候補として残るルートは第3ルートRt3のみである。そのため、図9に示すように、第3ルートRt3が再算出復帰経路LRとして選択される。
【0131】
離脱復帰経路算出部22bは、以上で説明したように、再算出復帰経路LRを算出する。そして、コンバイン1は、走行制御部23の制御による自動走行によって、再算出復帰経路LRに沿って走行する。これにより、コンバイン1は刈取走行経路LIに沿った自動走行へ復帰する。
【0132】
以上で説明した構成であれば、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した後、脱穀装置13の脱穀効率が低下した場合には、脱穀装置停止部27により、脱穀装置13の駆動が停止される。従って、脱穀装置13の駆動に無駄が生じにくくなる。これにより、コンバイン1の燃費が良好となる。
【0133】
〔第1別実施形態〕
上記実施形態においては、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱して離脱復帰経路LWに沿った走行を開始するまでの間、コンバイン1の走行は、走行制御部23の制御による自動走行によって行われる。
【0134】
また、上記実施形態においては、コンバイン1が離脱復帰経路LWを離れて刈取走行経路LIに沿った走行を再開するまでの間、コンバイン1の走行は、走行制御部23の制御による自動走行によって行われる。
【0135】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。以下では、本発明に係る第1別実施形態について、上記実施形態とは異なる点を中心に説明する。以下で説明している部分以外の構成は、上記実施形態と同様である。また、上記実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0136】
図10及び図11は、本発明に係る第1別実施形態におけるコンバイン1の走行を示す図である。
【0137】
この第1別実施形態においては、作業者がコンバイン1を手動で操作することによって、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱する。そして、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した後、走行制御部23が離脱復帰経路LWを捕捉した場合、走行制御部23の制御による自動走行が開始され、コンバイン1は離脱復帰経路LWに沿った自動走行を行う。
【0138】
また、この第1別実施形態においては、作業者がコンバイン1を手動で操作することによって、コンバイン1が離脱復帰経路LWを離れる。そして、コンバイン1が離脱復帰経路LWを離れた後、走行制御部23が刈取走行経路LIを捕捉した場合、走行制御部23の制御による自動走行が開始され、コンバイン1は刈取走行経路LIに沿った自動走行を行う。
【0139】
即ち、この第1別実施形態においては、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した後、走行制御部23が離脱復帰経路LWを捕捉するまでの間、作業者がコンバイン1を手動で操作する。同様に、コンバイン1が離脱復帰経路LWを離れた後、走行制御部23が刈取走行経路LIを捕捉するまでの間、作業者がコンバイン1を手動で操作する。
【0140】
以下では、走行制御部23が離脱復帰経路LW及び刈取走行経路LIを捕捉することについて詳述する。
【0141】
図10に示すように、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した後、走行制御部23は、第1捕捉領域Ct1を設定する。第1捕捉領域Ct1は、コンバイン1の前端部における機体幅方向中央位置から、進行方向前側に広がる扇形の領域である。また、この扇形の半径及び中心角は、半径X及び中心角w1である。
【0142】
コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した後、走行制御部23は、第1捕捉領域Ct1が離脱復帰経路LWに重なるか否かを監視する。また、コンバイン1が刈取走行経路LIから離脱した後、走行制御部23は、離脱復帰経路LWに対するコンバイン1の前進方向の傾きである角度w2が所定角度WA以下であるか否かを監視する。
【0143】
そして、第1捕捉領域Ct1が離脱復帰経路LWに重なり、且つ、角度w2が所定角度WA以下となったとき、走行制御部23は離脱復帰経路LWを捕捉した状態となる。即ち、走行制御部23が離脱復帰経路LWを捕捉することは、第1捕捉領域Ct1が離脱復帰経路LWに重なり、且つ、角度w2が所定角度WA以下となることと同義である。
【0144】
走行制御部23が離脱復帰経路LWを捕捉すると、走行制御部23の制御による自動走行が開始され、コンバイン1は離脱復帰経路LWに沿った自動走行を行う。
【0145】
また、図11に示すように、コンバイン1が離脱復帰経路LWを離れた後、走行制御部23は、第2捕捉領域Ct2を設定する。第2捕捉領域Ct2は、コンバイン1の前端部における機体幅方向中央位置から、進行方向前側に広がる扇形の領域である。また、この扇形の半径及び中心角は、半径Y及び中心角r1である。
【0146】
コンバイン1が離脱復帰経路LWを離れた後、走行制御部23は、第2捕捉領域Ct2が刈取走行経路LIに重なるか否かを監視する。また、コンバイン1が離脱復帰経路LWを離れた後、走行制御部23は、刈取走行経路LIに対するコンバイン1の前進方向の傾きである角度r2が所定角度RA以下であるか否かを監視する。
【0147】
そして、第2捕捉領域Ct2が刈取走行経路LIに重なり、且つ、角度r2が所定角度RA以下となったとき、走行制御部23は刈取走行経路LIを捕捉した状態となる。即ち、走行制御部23が刈取走行経路LIを捕捉することは、第2捕捉領域Ct2が刈取走行経路LIに重なり、且つ、角度r2が所定角度RA以下となることと同義である。
【0148】
走行制御部23が刈取走行経路LIを捕捉すると、走行制御部23の制御による自動走行が開始され、コンバイン1は刈取走行経路LIに沿った自動走行を行う。
【0149】
尚、図10及び図11に示すように、第2捕捉領域Ct2の半径Yは、第1捕捉領域Ct1の半径Xよりも小さい。また、第2捕捉領域Ct2の中心角r1は、第1捕捉領域Ct1の中心角w1よりも小さい。即ち、第2捕捉領域Ct2は、第1捕捉領域Ct1よりも狭く設定されている。
【0150】
また、所定角度RAは、所定角度WAよりも小さい角度に設定されている。
【0151】
即ち、走行制御部23が刈取走行経路LIを捕捉するための条件は、走行制御部23が離脱復帰経路LWを捕捉するための条件よりも厳しく設定されている。これにより、圃場における複数の刈取走行経路LIのうち、作業者が意図していない刈取走行経路LIが走行制御部23によって捕捉されてしまう事態を回避しやすい。また、作業者が刈取走行経路LIに沿った走行を望んでいない場合に刈取走行経路LIが走行制御部23によって捕捉されてしまう事態を回避しやすい。
【0152】
また、刈取走行経路LI及び離脱復帰経路LWは、仮想的に設定される走行経路であって、実際の圃場において作業者が目視可能なものではない。そのため、作業者は、走行制御部23に離脱復帰経路LWまたは刈取走行経路LIを捕捉させるようにコンバイン1を操作する際、離脱復帰経路LWまたは刈取走行経路LIの位置を想定し、その想定した離脱復帰経路LWまたは刈取走行経路LIに沿わせるようにコンバイン1を操作することとなる。
【0153】
即ち、作業者の想定した離脱復帰経路LWまたは刈取走行経路LIと、実際の離脱復帰経路LWまたは刈取走行経路LIと、がずれている場合、走行制御部23が離脱復帰経路LWまたは刈取走行経路LIを捕捉しにくくなる。
【0154】
ここで、刈取走行経路LIに沿った走行を開始する場合、その刈取走行経路LIは、圃場の作業対象領域CAにおける未刈部分の端部に位置しており、且つ、未刈部分と既刈部分との間の境界線に沿って延びていることが多い。そのため、作業者の想定した刈取走行経路LIと、実際の刈取走行経路LIと、のずれは比較的小さくなりやすい。
【0155】
これに対し、離脱復帰経路LWの近傍には、作業者が離脱復帰経路LWの位置を精度良く想定するための助けとなるような目印が存在しないことが多い。そのため、作業者の想定した離脱復帰経路LWと、実際の離脱復帰経路LWと、のずれは比較的大きくなりやすい。これにより、走行制御部23が離脱復帰経路LWを捕捉しにくくなる。
【0156】
そこで、上述の通り、走行制御部23が離脱復帰経路LWを捕捉するための条件は、走行制御部23が刈取走行経路LIを捕捉するための条件よりも緩く設定されている。これにより、走行制御部23が離脱復帰経路LWを捕捉できない事態を回避しやすい。
【0157】
尚、第1捕捉領域Ct1と第2捕捉領域Ct2とは、同時に設定されていても良い。即ち、コンバイン1が離脱復帰経路LW及び刈取走行経路LIの何れでもない位置を走行しているとき、走行制御部23が離脱復帰経路LW及び刈取走行経路LIを何れも捕捉可能であっても良い。この場合、離脱復帰経路LW及び刈取走行経路LIのうち、走行制御部23が先に捕捉した方の走行経路に沿った自動走行が行われるように構成されていても良い。
【0158】
尚、以上に記載した各実施形態は一例に過ぎないのであり、本発明はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0159】
〔その他の実施形態〕
(1)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。
【0160】
(2)上記実施形態においては、刈取走行経路算出部22aにより算出される刈取走行経路LIは、互いに平行な複数の平行線であるが、本発明はこれに限定されず、刈取走行経路算出部22aにより算出される刈取走行経路LIは、互いに平行な複数の平行線でなくても良い。例えば、刈取走行経路算出部22aにより算出される刈取走行経路LIは、渦巻き状の走行経路であっても良い。
【0161】
(3)上記実施形態においては、作業者は、コンバイン1を手動で操作し、図4に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線に沿って周回するように刈取走行を行う。しかしながら、本発明はこれに限定されず、コンバイン1が自動で走行し、圃場内の外周部分において、圃場の境界線に沿って周回するように刈取走行を行うように構成されていても良い。
【0162】
(4)上記実施形態においては、判定部25は、選別処理物量がレベル1である状態が所定の第1期間以上継続した場合、脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、判定部25は、選別処理物量のレベルが低下した場合、脱穀装置13の脱穀効率が低下したと判定するように構成されていても良い。即ち、選別処理物量のレベルが低下することは、シーブセンサS1により検知されている選別処理物量が減少することに相当する。
【0163】
(5)自車位置算出部21、経路算出部22、走行制御部23、領域算出部24、判定部25、脱穀装置開始部26、脱穀装置停止部27、走行禁止領域記憶部28のうち、一部または全てがコンバイン1の外部に備えられていても良いのであって、例えば、コンバイン1の外部に設けられた管理サーバに備えられていても良い。
【0164】
(6)離脱復帰経路算出部22bは設けられていなくても良い。
【0165】
(7)走行禁止領域記憶部28は設けられていなくても良い。
【0166】
(8)脱穀装置開始部26は設けられていなくても良い。
【0167】
(9)シーブセンサS1は設けられていなくても良い。
【0168】
(10)刈取クラッチセンサS2は設けられていなくても良い。
【0169】
(11)通信端末4は設けられていなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、普通型のコンバインだけでなく、自脱型のコンバインにも利用可能である。
【符号の説明】
【0171】
1 コンバイン
13 脱穀装置
13b 揺動選別部
15 刈取装置
20 制御部
22 経路算出部
22a 刈取走行経路算出部
23 走行制御部(自動刈取走行制御部)
25 判定部
26 脱穀装置開始部
27 脱穀装置停止部
A コンバイン制御システム
LI 刈取走行経路
S1 シーブセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11