特許第6843040号(P6843040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843040
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 53/00 20060101AFI20210308BHJP
   B62D 61/10 20060101ALI20210308BHJP
   B62D 12/02 20060101ALI20210308BHJP
   B60K 7/00 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   B62D53/00 D
   B62D61/10
   B62D12/02
   !B60K7/00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-248205(P2017-248205)
(22)【出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-111983(P2019-111983A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−081639(JP,A)
【文献】 特開平10−059202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 53/00
B62D 12/02
B62D 61/10
B60K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置と、
夫々の前記走行装置を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、
複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更可能な複数の駆動操作手段と、が備えられ、
前記屈折リンク機構に、一端部が前記車両本体に横軸芯周りで揺動自在に支持された第1リンクと、一端部が前記第1リンクの他端部に横軸芯周りで揺動自在に枢支連結され且つ他端部に前記走行装置が支持された第2リンクと、が備えられ、
前記屈折リンク機構は、前記第1リンクの前記他端部が当該第1リンクの前記一端部よりも車体前後方向の内方側に配置される第1状態と、前記第1リンクの前記他端部が当該第1リンクの前記一端部よりも車体前後方向の外方側に配置される第2状態とに姿勢変更可能であり、
前記車両本体が、前部側に位置する左右の前記走行装置を備えた前部側本体部と、後部側に位置する左右の前記走行装置を備えた後部側本体部とに分割され、
前記前部側本体部と前記後部側本体部とが回動連係機構を介して折れ曲がり回動可能に連結されている作業車。
【請求項2】
前記前部側本体部と前記後部側本体部との折れ曲がり回動角を変更操作可能なアクチュエータが備えられている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記前部側本体部及び前記後部側本体部の少なくともいずれか一方における左右の前記走行装置の駆動速度の速度差により、前記前部側本体部と前記後部側本体部との折れ曲がり回動角を変更操作可能である請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記走行装置は、前記第2リンクの前記他端部に備えられた駆動輪と、前記第1リンクと前記第2リンクとを枢支連結する連結支軸に回動自在に支持された補助輪とを備え、
前記第1状態で前記各走行装置の前記駆動輪と前記補助輪とを接地させて旋回走行が可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸の多い路面を走行するのに適した作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、車両本体に、作業装置としての多関節マニピュレータ(ロボットアーム)と、複数の走行装置とが備えられ、複数の走行装置が夫々、2つの関節を備えるとともに、横軸芯周りで揺動自在に複数のリンクが枢支連結された屈折リンク機構を介して車両本体に支持されたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−142347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成は、屈折リンク機構を屈伸させながら、複数の走行装置を各別に車両本体に対する高さを変更させることにより、凹凸の多い路面であっても乗り越え走行することは可能であるが、複数のリンクは横軸芯周りで揺動する構成であり、走行装置は高さが変化しても向きは一定である。
【0005】
その結果、直進走行するときは、複数の走行装置を横軸芯周りで回転させることで対応できるが、車体を左右いずれかの方向に旋回走行させる場合には、左右の走行装置に速度差を付けるようにしたり、車両本体に備えられた多関節のマニピュレータ(ロボットアーム)を用いて車体の向きを変更することにより車体を旋回させる必要がある。このように旋回走行する構成では、走行装置が横滑りしながら走行することになり、走行装置に対して横方向に沿って無理な力が加わることがあり、耐久性が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、凹凸の多い路面であっても乗り越え走行することが可能でありながら、走行装置に無理な力が加わることがなく旋回走行できるようにすることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車の特徴構成は、
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置と、
夫々の前記走行装置を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、
複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更可能な複数の駆動操作手段と、が備えられ、
前記屈折リンク機構に、一端部が前記車両本体に横軸芯周りで揺動自在に支持された第1リンクと、一端部が前記第1リンクの他端部に横軸芯周りで揺動自在に枢支連結され且つ他端部に前記走行装置が支持された第2リンクと、が備えられ、
前記屈折リンク機構は、前記第1リンクの前記他端部が当該第1リンクの前記一端部よりも車体前後方向の内方側に配置される第1状態と、前記第1リンクの前記他端部が当該第1リンクの前記一端部よりも車体前後方向の外方側に配置される第2状態とに姿勢変更可能であり、
前記車両本体が、前部側に位置する左右の前記走行装置を備えた前部側本体部と、後部側に位置する左右の前記走行装置を備えた後部側本体部とに分割され、
前記前部側本体部と前記後部側本体部とが回動連係機構を介して折れ曲がり回動可能に連結されている点にある。
【0008】
本発明によれば、屈折リンク機構を伸縮させて、路面の凹凸に沿わせて複数の走行装置の車両本体に対する高さを変更することにより、凹凸の多い路面であっても乗り越え走行することが可能となる。
【0009】
そして、作業車を左右いずれかに旋回走行させるときは、車体を複数の走行装置によって走行しながら、前部側本体部と後部側本体部とを回動連係機構を介して折れ曲がり回動させる。このとき、車両本体が胴折れ状態になることで、前部側の左右の走行装置は、前部側本体部と共に一体的に後部側本体部に対して相対的に向き変更することになり、後部側の左右の走行装置は、後部側本体部と共に一体的に前部側本体部に対して相対的に向き変更することになる。その結果、走行装置に横向きの無理な力が加わることがない状態で、円滑に旋回走行することができる。
【0010】
従って、凹凸の多い路面であっても乗り越え走行することが可能でありながら、走行装置に無理な力が加わることがない状態で旋回走行することが可能となった。
【0011】
本発明においては、前記前部側本体部と前記後部側本体部との折れ曲がり回動角を変更操作可能なアクチュエータが備えられていると好適である。
【0012】
本構成によれば、アクチュエータの操作によって前部側本体部と後部側本体部とが折れ曲がり回動することになり、作業車を旋回することができる。又、アクチュエータの操作状態を調整することで、折れ曲がり回動角を任意の回動角に変更して旋回走行することができる。このように、アクチュエータを用いることで、速やかに且つ確実に、所望の旋回角にて旋回走行することが可能となる。
【0013】
本発明においては、前記前部側本体部及び前記後部側本体部の少なくともいずれか一方における左右の前記走行装置の駆動速度の速度差により、前記前部側本体部と前記後部側本体部との折れ曲がり回動角を変更操作可能であると好適である。
【0014】
本構成によれば、前部側本体部と後部側本体部のうちの進行方向の先頭に位置するものにおいて、左右の走行装置に速度差を付けることによって、作業車を旋回操作することができる。例えば、作業車が前進走行している場合であれば、前部側本体部に備えられる左右の走行装置の駆動速度に速度差を付けることで、前部側本体部が後部側本体部に対して折れ曲がりながら走行することになる。
【0015】
その結果、左右の走行装置の速度差によって旋回するものであるから、旋回用のアクチュエータ等の特別な装置は不要であり、走行装置に無理な力が加わることなく旋回走行を行うことが可能なものでありながら構成の簡素化を図ることができる。
本発明においては、前記走行装置は、前記第2リンクの前記他端部に備えられた駆動輪と、前記第1リンクと前記第2リンクとを枢支連結する連結支軸に回動自在に支持された補助輪とを備え、前記第1状態で前記各走行装置の前記駆動輪と前記補助輪とを接地させて旋回走行が可能であると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】作業車の全体側面図である。
図2】作業車の全体平面図である。
図3】屈折リンク機構の平面図である。
図4】屈折リンク機構の側面図である。
図5】取外した状態での屈折リンク機構の取付け状態を示す正面図である。
図6】取付けた状態での屈折リンク機構の取付け状態を示す正面図である。
図7】旋回走行状態を示す平面図である。
図8】平坦地走行状態を示す説明図である。
図9】法面走行状態を示す説明図である。
図10】別実施形態の作業車の全体平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る作業車の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
〔全体構成〕
図1,2に示すように、作業車には、車両全体を支持する略矩形枠状の車両本体1と、油圧モータ2により駆動される複数(具体的には4個)の走行装置3と、複数の走行装置3を各別に位置変更自在に車両本体1に支持する複数の屈折リンク機構4と、屈折リンク機構4を変更操作可能な複数の駆動操作手段5としての複数の油圧シリンダ6,7と、複数の油圧モータ2及び複数の油圧シリンダ6,7に作動油を供給する作動油供給装置8と、作動油供給装置8の動作を制御する制御装置9とが備えられている。図示はしていないが、車両本体1に、例えば、収穫装置や薬剤散布装置等、各種の作業装置を搭載支持することにより、移動走行しながら各種の作業を行うことができるように構成されている。
【0019】
この実施形態で、車体の前後を定義するときは、車体進行方向に沿う方向のうち予め設定された一方を前部とし、他方を後部として定義し、車体の左右を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。すなわち、図1に符号(F)で示す方向が車体前部側であり、符号(B)で示す方向が車体後部側であり、図2に符号(R)で示す方向が車体右側であり、符号(L)で示す方向が車体左側である。
【0020】
車両本体1の前後両側に夫々左右一対ずつ合計4組の屈折リンク機構4と走行装置3とが備えられている。走行装置3は、軸支部に油圧モータ2が内装される駆動輪10と、自由回転自在に支持される補助輪11とを備えている。複数の駆動輪10は、油圧モータ2を作動させることにより、各別に回転駆動することができる。複数の油圧シリンダ6,7は、複数の屈折リンク機構4の姿勢を各別に変更可能である。
【0021】
作動油供給装置8は、車両に搭載されるエンジン12にて駆動されて作動油を送り出す油圧ポンプ13、油圧ポンプ13からの作動油の供給状態を調整する油圧制御ユニット14、作動油を貯留する作動油タンク(図示せず)等が備えられている。制御装置9は、図示しない、例えばリモコン操縦器等の手動入力装置にて入力される指令情報、あるいは、予め設定して記憶されている指令情報等に基づいて、各油圧シリンダ6,7及び各油圧モータ2への油圧供給状態が所望の供給状態になるように油圧制御ユニット14を制御する。油圧制御ユニット14は、各油圧シリンダ6,7及び各油圧モータ2の夫々に対応して複数の油圧バルブ(図示せず)を備えている。
【0022】
〔車輪支持構造〕
次に、走行装置3を車両本体1に支持するための支持構造について説明する。
複数の走行装置3は、屈折リンク機構4を介して車両本体1に対して各別に昇降自在に支持されている。屈折リンク機構4は、車体側支持部15を介して車両本体1側の支持フレーム16に支持されている。
【0023】
図3,4,5に示すように、車体側支持部15は、支持フレーム16における横側箇所に備えられた上下一対の角筒状の前後向きフレーム体17(図5参照)に対して、横側外方から挟み込む状態で嵌め合い係合するとともに、取外し可能にボルト連結される連結部材18と、連結部材18の車体前後方向外方側箇所に位置する一端側枢支ブラケット19と、連結部材18の車体前後方向の内方側箇所に位置する他端側枢支ブラケット20と、一端側枢支ブラケット19に支持される縦向きの連結支軸21とを備えている。
【0024】
屈折リンク機構4には、車体側支持部15に支持される基端部22と、一端部が基端部22の下部に横軸芯X1周りで揺動自在に支持された第一リンク23と、一端部が第一リンク23の他端部に横軸芯X2周りで揺動自在に支持され且つ他端部に駆動輪10が支持された第二リンク24とが備えられている。
【0025】
基端部22は、平面視で矩形枠状に設けられ、車体横幅方向内方側に偏倚した箇所において車体側支持部15の一端側枢支ブラケット19に支持されている。車体側支持部15の他端側枢支ブラケット20と基端部22との間が連結リンク25で連結されている。このように基端部22が前後方向に広い間隔をあけて車体側支持部15に安定的に支持されている。
【0026】
基端部22の左右両側部に亘って第一リンク23の一端側に備えられた支持軸26が回動自在に架設支持され、第一リンク23は基端部22の下部に対して支持軸26の軸芯周りで回動自在に連結されている。
【0027】
図4に示すように、第一リンク23は、基端側アーム部23bと他端側アーム部23aとを有している。第一リンク23の一端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる基端側アーム部23bが一体的に形成されている。第一リンク23の他端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる他端側アーム部23aが一体的に形成されている。
【0028】
図3に示すように、第二リンク24は、左右一対の帯板状の板体24a,24bを備えて平面視で二股状に形成されている。第二リンク24の第一リンク23に対する連結箇所は一対の板体24a,24bが間隔をあけている。一対の板体24a,24bで挟まれた領域に、第一リンク23と連結するための連結支軸27が回動自在に支持されている。第二リンク24の第一リンク23に対する連結箇所とは反対側の揺動側端部には駆動輪10が支持されている。
【0029】
図3,4に示すように、車両本体1に対する第一リンク23の揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダ6と、第一リンク23に対する第二リンク24の揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダ7とが備えられている。第一油圧シリンダ6及び第二油圧シリンダ7は、夫々、第一リンク23の近傍に集約して配置されている。
【0030】
第一リンク23、第一油圧シリンダ6及び第二油圧シリンダ7が、平面視において、第二リンク24の一対の板体24a,24bの間に位置する状態で配備されている。第一油圧シリンダ6は、第一リンク23に対して車体前後方向内方側に位置して、第一リンク23の長手方向に沿うように設けられている。第一油圧シリンダ6の一端部が円弧状の第一連動部材28を介して基端部22の下部に連動連結されている。第一油圧シリンダ6の一端部は、別の第二連動部材29を介して第一リンク23の基端側箇所に連動連結されている。第一連動部材28及び第二連動部材29は、両側端部が夫々、相対回動可能に枢支連結されている。第一油圧シリンダ6の他端部は、第一リンク23に一体的に形成された他端側アーム部23aに連動連結されている。
【0031】
第二油圧シリンダ7は、第一油圧シリンダ6とは反対側、すなわち、第一リンク23に対して車体前後方向外方側に位置して、第一リンク23の長手方向に略沿うように設けられている。第二油圧シリンダ7の一端部が第一リンク23の基端側に一体的に形成された基端側アーム部23bに連動連結されている。第二油圧シリンダ7の他端部は、第3連動部材30を介して第二リンク24の基端側箇所に一体的に形成された基端側アーム部24aに連動連結されている。第二油圧シリンダ7の他端部は、別の第4連動部材31を介して第一リンク23の揺動端側箇所にも連動連結されている。第3連動部材30及び第4連動部材31は、両側端部が夫々、相対回動可能に枢支連結されている。
【0032】
第二油圧シリンダ7の作動を停止した状態で第一油圧シリンダ6を伸縮操作すると、第一リンク23、第二リンク24及び走行装置3の夫々が、相対姿勢を一定に維持したまま一体的に、基端部22に対する枢支連結箇所の横軸芯X1周りで揺動する。第一油圧シリンダ6の作動を停止した状態で第二油圧シリンダ7を伸縮操作すると、第一リンク23の姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク24及び走行装置3が、一体的に、第一リンク23と第二リンク24との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0033】
図1,2に示すように、補助輪11は走行装置3の駆動輪10と略同じ外径の車輪にて構成されている。図3に示すように、第一リンク23と第二リンク24とを枢支連結する連結支軸27が、第二リンク24よりも車体横幅方向外方側に突出するように延長形成されている。連結支軸27の延長突出箇所に補助輪11が回動自在に支持されている。つまり、第一リンク23と第二リンク24とを枢支連結する連結支軸27が、補助輪11の回動支軸を兼用する構成となっており、部材の兼用により構成の簡素化を図っている。
【0034】
前後向きフレーム体17に対する連結部材18のボルト連結を解除すると、屈折リンク機構4、走行装置3、第一油圧シリンダ6、及び、第二油圧シリンダ7の夫々が、一体的に組付けられた状態で、車両本体1から取り外すことができる。又、前後向きフレーム体17に対して連結部材18をボルト連結することで、上記各装置が一体的に組付けられた状態で、車両本体1に取付けることができる。
【0035】
作動油供給装置8から第一油圧シリンダ6及び第二油圧シリンダ7に作動油が供給される。油圧制御ユニット14により作動油の給排が行われて、第一油圧シリンダ6及び第二油圧シリンダ7を伸縮操作させることにより、屈折リンク機構4の姿勢を変更操作することができる。又、油圧制御ユニット14により作動油の給排が行われて、油圧モータ2への作動油の流量調整が行われることで、油圧モータ2すなわち駆動輪10の回転速度を変更することができる。
【0036】
〔車体分割構造〕
図2に示すように、車両本体1が、前部側に位置する左右の走行装置3を備えた前部側本体部1Aと、後部側に位置する左右の走行装置3を備えた後部側本体部1Bとに分割され、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとが回動連係機構32を介して折れ曲がり回動可能に連結されている。
【0037】
説明を加えると、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bには、夫々、全体を支持する矩形枠状の支持フレーム16が備えられ、前部側本体部1Aの支持フレーム16と後部側本体部1Bの支持フレーム16とが前後中間部の回動連係機構32によって連結されている。回動連係機構32は、上下軸芯周りでの前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの上下軸芯Y周りでの相対回動を許容するだけではなく、所定範囲内での前後軸芯周りでの相対回動、並びに、所定範囲内での横向き軸芯周りでの相対回動も許容する構成となっている。
【0038】
回動連係機構32は、図1,2に示すように、一般的なトレーラーの連結箇所に用いられる連結器と同様な構成のものを用いることができる。すなわち、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとのいずれか一方に、上下向きの連結ピン33が備えられ、他方に連結ピン33に外嵌して連動連結される丸形の連結部材34が備えられる。連結部材34の内径が連結ピン33の外径に対して大径であって、両者の間に融通が形成されており、上下軸芯周りでの前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの相対回動を許容するとともに、所定範囲内で前後軸芯周りでの前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの相対回動も許容する構成となっている。
【0039】
そして、エンジン12、油圧ポンプ13、及び、後部側本体部1Bに備えられる2本の第一油圧シリンダ6、2本の第二油圧シリンダ7、2個の油圧モータ2の夫々に対応する油圧バルブを備えた後部側油圧制御ユニット14Bが、後部側本体部1Bに備えられる。そして、前部側本体部1Aに備えられる2本の第一油圧シリンダ6、2本の第二油圧シリンダ7、2個の油圧モータ2の夫々に対応する油圧バルブを備えた前部油圧制御ユニット14Aが、前部側本体部1Aに備えられる。油圧ポンプ13から前部油圧制御ユニット14Aへの作動油の供給は図示しない油圧ホースを通して行われる。油圧ホースは、車両本体1の折れ曲がり回動を許容しながら作動油を供給することができる。
【0040】
図1に示すように、この作業車は種々のセンサを備える。具体的には、複数の第一油圧シリンダ6の夫々に、第一ヘッド側圧力センサS1及び第一キャップ側(反ヘッド側)圧力センサS2が備えられ、複数の第二油圧シリンダ7の夫々に、第二キャップ側圧力センサS3及び第二ヘッド側(反キャップ側)圧力センサS4が備えられている。第一ヘッド側圧力センサS1は、第一油圧シリンダ6のヘッド側室の油圧を検出する。第一キャップ側圧力センサS2は、第一油圧シリンダ6のキャップ側室の油圧を検出する。第二キャップ側圧力センサS3は、第二油圧シリンダ7のキャップ側室の油圧を検出する。第二ヘッド側圧力センサS4は、第二油圧シリンダ7のヘッド側室の油圧を検出する。又、図示はしていないが、上記各油圧シリンダ6,7は、伸縮ストローク量を検出可能なストロークセンサを内装しており、操作状態を制御装置9にフィードバックするように構成されている。
【0041】
なお、各圧力センサS1,S2,S3,S4の取り付け位置は上記した位置に限られるものではない。各圧力センサS1,S2,S3,S4は、対応するキャップ側室又はヘッド側室の油圧を検出(推定)可能であればよく、弁機構から対応するキャップ側室又はヘッド側室の間の配管に設けられてもよい。
【0042】
これらのセンサの検出結果に基づいて、車両本体1を支持するために必要な力が算出され、その結果に基づいて、それぞれの第一油圧シリンダ6及び第二油圧シリンダ7への作動油の供給が制御される。具体的には、第一ヘッド側圧力センサS1の検出値と第一キャップ側圧力センサS2の検出値とに基づき、第一油圧シリンダ6のキャップ側室とヘッド側室との差圧から、第一油圧シリンダ6のシリンダ推力が算出される。また、第二キャップ側圧力センサS3の検出値と第二ヘッド側圧力センサS4の検出値とに基づき、第一油圧シリンダ6と同様に、第二油圧シリンダ7のシリンダ推力が算出される。
【0043】
車両本体1には、例えば、三軸加速度センサ等からなる加速度センサS5が備えられている。加速度センサS5の検出結果に基づき、車両本体1の前後左右の傾きが検知され、その結果に基づいて車両本体1の姿勢が制御される。つまり、車両本体1の姿勢が目標の姿勢となるよう、それぞれの第一油圧シリンダ6及び第二油圧シリンダ7への作動油の供給が制御される。
【0044】
走行装置3には、駆動輪10の回転速度を検出する回転センサS6が備えられている。回転センサS6にて算出された駆動輪10の回転速度に基づいて、駆動輪10の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ2への作動油の供給が制御される。
【0045】
上述したように、本実施形態の作業車は、屈折リンク機構4を介して走行装置3を支持する構成とし、油圧シリンダ6,7により屈折リンク機構4の姿勢を変更操作する構成であり、しかも、走行駆動も油圧モータ2にて行う構成であるから、電動モータ等のように水分や細かな塵埃等による影響を受け難く、農作業に適したものになる。
【0046】
平坦地を走行する場合には、図8に示すように、4個の駆動輪10及び4個の補助輪1
1が全て接地する第1状態としての4輪走行状態で走行する。この場合には、第一リンク23を前後方向車体内方側に寄せた状態で走行する。このことにより、車体全体の前後幅をコンパクトにして旋回半径を小さくすることができる。
【0047】
図9に示すように、法面を走行する場合には、屈折リンク機構4の姿勢を、4個の駆動輪10及び4個の補助輪11の夫々が車体前後方向外端部よりも車体前後方向外側に位置する第2状態としての伸展姿勢に変更操作する。駆動輪10と補助輪11とが全て接地している状態で、第一リンク23及び第二リンク24をできるだけ水平姿勢に近付けて車両本体1の高さを低い位置に下げる。このような状態で、法面を乗り上がりながら走行する。この走行形態では、車体前後方向に沿う接地幅が広くなり、大きく傾斜している法面であっても、転倒することなく安定した状態で走行することができる。
【0048】
そして、平坦地での走行において、車体を左右いずれかの方向に旋回させるときは、前部側本体部1A及び後部側本体部1Bのうち進行方向先頭側のものにおける左右の走行装置3の駆動速度の速度差により、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの折れ曲がり回動角を変更操作するように構成されている。
【0049】
図7に示すように、車体進行方向に対して、左方向に旋回するときは、前部側本体部1Aにおける右側の駆動輪10の回転速度を大に設定し、左側の駆動輪10の回転速度を小に設定して速度差を付ける。又、車体進行方向に対して、右方向に旋回するときは、前部側本体部1Aにおける左側の駆動輪10の回転速度を大に設定し、右側の駆動輪10の回転速度を小に設定して速度差を付ける。その速度差の大きさは、目標とする旋回角の大きさに応じて設定される。
【0050】
平坦地を直進走行している場合には、左右の駆動輪10の回転速度は同じになるように設定するが、前部側本体部1A及び後部側本体部1Bのうち進行方向先頭側のものにおける駆動輪10の駆動速度は、後側に位置するものにおける駆動輪10の駆動速度よりも大きめに設定するとよい。それにより胴折れ式の車両本体1であっても直進状態で走行させ易いものになる。
【0051】
回動連係機構32が、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの所定範囲内での前後軸芯周りでの相対回動、並びに、所定範囲内での横向き軸芯周りでの相対回動も許容する構成となっているから、不整地を走行する場合等において、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの夫々の走行装置3が、地面の起伏や凹凸に対して滑らかに追従しながら走行することが可能となる。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、左右の走行装置3(駆動輪10)の駆動速度の速度差により、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの折れ曲がり回動角を変更操作するようにしたが、この構成に代えて、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの折れ曲がり回動角を変更操作可能なアクチュエータが備えられる構成としてもよい。例えば、図10に示すように、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの間の対向する箇所に、それらの両者に亘って旋回用油圧シリンダ40が枢支連結される構成である。旋回用油圧シリンダ40を伸縮操作することで、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの折れ曲がり回動角を変更操作することができる。そして、旋回用油圧シリンダ40の伸縮ストローク量が内装するストロークセンサにより検出され、制御装置9にフィードバックするように構成され、旋回用油圧シリンダ40は、指令情報に基づいて、旋回角度に対応する伸縮ストローク量になるように制御装置9によって制御される。油圧シリンダ40に代えて油圧モータを用いるようにしてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、第一油圧シリンダ6は、シリンダチューブ側が第一リンク側の被連結部(他端側アーム部23a)に枢支連結され、ピストンロッド側が車両本体側の被連結部(基端部22)に枢支連結される構成としたが、この構成に代えて、第一油圧シリンダ6は、シリンダチューブ側が車両本体側の被連結部(基端部22)に枢支連結され、ピストンロッド側が第一リンク側の被連結部(他端側アーム部23a)に枢支連結される構成としてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、駆動操作手段5として油圧シリンダ6,7を備える構成としたが、この構成に代えて、屈折リンク機構4の揺動支点部に油圧モータを備えて、その油圧モータによって屈折リンク機構4の姿勢を変更する構成でもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、回動連係機構32が、上下軸芯周りでの相対回動だけでなく、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとの所定範囲内での前後軸芯周りでの相対回動、並びに、所定範囲内での横向き軸芯周りでの相対回動も許容する構成としたが、この構成に代えて、前部側本体部1Aと後部側本体部1Bとが上下軸芯周りでの相対回動だけを許容し、前後軸芯周りでの相対回動、及び、横向き軸芯周りでの相対回動を許容しない構成としてもよい。この構成では、補助輪11を浮上させた状態で走行することが可能であり、屈折リンク機構4を長く伸展させ、車両本体1の地上高を高くした状態で走行することができる。
【0056】
(5)上記実施形態では、走行装置3が油圧モータ2により駆動される構成としたが、この構成に代えて、例えば、車両に搭載されたエンジンの動力がチェーン伝動機構等の機械式伝動機構を介して駆動輪10に供給される構成でもよい。
【0057】
(6)上記実施形態では、走行装置3に駆動輪10を備える構成としたが、この構成に代えて、走行装置として、複数の輪体にクローラベルトが巻回されたクローラ走行装置を備える構成としてもよい。
【0058】
(7)上記実施形態では、車両本体1が前後2分割に分割される構成としたが、この構成に代えて、車両本体が前後に3個以上の個数に分割され、それらが互いに連結される多連型の連結構造を採用するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、凹凸の多い路面を走行するのに適した作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 車両本体
1A 前部側本体部
1B 後部側本体部
3 走行装置
4 屈折リンク機構
5 駆動操作手段
32 回動連係機構
40 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10