特許第6843075号(P6843075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許6843075生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法
<>
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000004
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000005
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000006
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000007
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000008
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000009
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000010
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000011
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000012
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000013
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000014
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000015
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000016
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000017
  • 特許6843075-生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843075
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】生体電位及び皮膚インピーダンス検出のための乾式電極及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/30 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   A61N1/30
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-560939(P2017-560939)
(86)(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公表番号】特表2018-515279(P2018-515279A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】IB2016052850
(87)【国際公開番号】WO2016189422
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】62/167,384
(32)【優先日】2015年5月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パストール サンダー テオドール
(72)【発明者】
【氏名】ベッカース ルカス ヨハネス アンナ マリア
(72)【発明者】
【氏名】グロブ ティモン ルトガー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー デニー
(72)【発明者】
【氏名】ベルベン エドワルド テオドルス マリア
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0088397(US,A1)
【文献】 特表2000−503009(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0066740(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/092290(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00− 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被術者の皮膚との電気的接触を提供する電極であって、
(a)(i)ポリジメチルシロキサンを含む伝導性シリコーン材料、(ii)導電性粒子、及び(iii)前記伝導性シリコーン材料を通るイオンの流れを促進する界面活性剤を備える、電極本体と、
(b)外部コンピューティングシステムへの前記電極の結合を容易にする電気結合部と、
を備える、電極。
【請求項2】
前記界面活性剤が、オレフィンスルホナートを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記界面活性剤が、重さで前記電極本体の約5から30%である、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記界面活性剤が、前記伝導性シリコーン材料と化学的に結合される、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記導電性粒子が、グラファイト、炭素、又は銀の薄片を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記導電性粒子が、重さで前記電極本体の約20から50%である、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記ポリジメチルシロキサンが、重さで前記電極本体の約25から75%である、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
前記電極本体は、重さで約25から75%の前記ポリジメチルシロキサン、重さで約20から50%の前記導電性粒子、及び重さで約5から25%の前記界面活性剤を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項9】
前記電極本体は、重さで50%の前記ポリジメチルシロキサン、重さで35%の前記導電性粒子、及び重さで15%の前記界面活性剤を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記電極本体は、被術者の前記皮膚からの水分の取り込み又は拡散を可能にし、また、前記被術者の前記皮膚から電気信号を受信するか、又は前記被術者の前記皮膚に電気信号を送信する、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記伝導性シリコーン材料は、前記電極本体が上に配置された前記被術者の前記皮膚からの水分の取り込み又は拡散を可能にする、請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記界面活性剤が、前記伝導性シリコーン材料内にイオンを提供し、前記水分と前記イオンとの相互作用が、前記伝導性シリコーン材料を通る前記イオンの流れを可能にする、前記電極内の塩橋をもたらす、請求項11に記載の電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01] 本開示は、被術者の皮膚との電気的接触を提供するように構成された電極に関する。
【背景技術】
【0002】
[02] 医療分野における多くの用途で、皮膚電極が使用される。電極は、概して、被術者の皮膚と医療デバイスとの間で電気信号を伝送するために、被術者の皮膚との電気的接触を提供する。電極は、概して、被術者に電気信号を送信し、被術者から電気信号を受信するために使用される伝導層又は材料を含む。電極は、概して、乾式電極又は湿式電極である。
【0003】
[03] 湿式電極は、ヒドロゲル又はゲルなどの電解質材料に依存して、電極と被術者の皮膚との間で伝導路を提供し、隙間を充填する。湿式電極は、ヒドロゲル又はゲルが乾燥し切ることに起因して、概して、より短い期間の場合に使用される。湿式電極はさらに、ゲル材料に起因して皮膚に刺激をもたらす。
【0004】
[04] 乾式電極は、被術者の皮膚上の天然の塩及び/又は汗に依存して、被術者の皮膚に送信される、及び/又は被術者の皮膚から受信される電気信号のための伝達経路を提供する。乾式電極は、乾燥し切らないので、より長い期間使用され得る。乾式電極は、隙間なく被術者の皮膚に結合することが困難であり、被術者が動いた場合には定位置に適切に留まらない場合がある。
【0005】
[05] 角質層はイオンを含む限られた量の体液を含有するので、皮膚の角質層(すなわち、死細胞からなる上層)は高インピーダンス障壁である。すなわち、角質層(上部の皮膚層)を通る最小であるが無視できないイオン伝達が存在し、このことは、非常に弱い電流が角質層を通ることを意味する。
【0006】
[06] 角質層の抵抗は、細胞外液とは異なる濃度のNa+、K+、及びCl−イオンを含む流体を分泌する汗腺及び汗腺管(並びに、脂腺などの他の経路、毛包及び皮膚の欠陥)の存在及び活動に大きく依存する。乾式電極インターフェースの場合、これは、あまり安定した電子−電解質の接触状態ではない。すなわち、発汗は局所的な微気候を生成するが、乾式電極インターフェースを使用する場合、これはあまり安定した電気的接触とはならない。
【0007】
[07] 乾式電極用途に関して、皮膚の変形が同じアーチファクトを引き起こすが、より低いレベルの皮膚接着に起因して、材料に応じた異なる程度で電極の相対的な滑動が発生する。電解質汗層が皮膚と乾式電極との間に蓄積されるにつれて、表皮にわたる電位差が上昇し、電極のインピーダンスが低下し、特定の値で安定する。乾式電極が皮膚上の位置を変更可能である場合、電極・皮膚インターフェースは、その時点で汗層を失い、動きによるアーチファクトが現れ、及び、汗が形成されることで電極・皮膚インターフェースが安定するための十分な期間が経過するまで電極のインピーダンスが高くなる。
【0008】
[08] 皮膚電極の用途は、体信号の異なる電気的な派生物を使用する。1つは、心電図ECG(Electrocardiogram)(心臓の活動)及び脳波図EEG(Electroencephalogram)(脳の活動)など、体状態情報を導くために使用される皮膚上の電位である。皮膚インピーダンスは、例えば、ストレス(皮膚電気反応、GSR(Galvanic Skin Response))、又は、電気インピーダンス断層撮影EIT(Electrical Impedance Tomography)(肺の監視)を測定するために使用される。別の用途は、経皮的電気神経刺激TENS(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)などの皮膚の電気刺激である。皮膚インピーダンス測定は、刺激電極が皮膚と良好な電気的接触状態にあることを確実にするために使用される。
【0009】
[09] これらのすべての用途において、良質な信号を得るために、皮膚とのガルバニックインピーダンスが低いことが望ましい。日常的な睡眠の監視、又は長期TENS治療などの用途の場合、使いやすい電極を使用することも重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[10] 湿式又は接着ゲル電極は、水分及び伝導性Ag/AgCl粒子に起因して低インピーダンスであることで知られる。これらのゲル電極の欠点として、使い捨てであること、限られた耐久性、はがすときの皮膚刺激、体及びデバイスに装着しやすいことなどが挙げられる。すべてをあわせると、このことにより、ゲル電極は、医療又は消費者用の健康用途のための家庭における日常的な長期使用にはあまり適さない。快適な乾式電極は、それらの問題の多くを解決するが、湿式又はヒドロゲル電極を使用して達成される信号品質及び低インピーダンスをほとんど達成しない。したがって、皮膚インターフェースのインピーダンスが低く、さらに、消費者用医療デバイス内に簡単に組み込み可能な改善された乾式電極が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[11] したがって、本開示の1つ又は複数の態様は、被術者の皮膚との電気的接触を提供するように構成された電極に関する。電極は、被術者の皮膚に取り外し可能に結合されるように、並びに、被術者の皮膚から電気信号を受信するように、及び/又は、被術者の皮膚に電気信号を送信するように構成された電極本体と、外部コンピューティングシステムへの電極の結合を容易にする電気結合部とを含む。電極本体は、電極本体が上に配置された被術者の皮膚からの水分の取り込み又は拡散を可能にするように構成された伝導性シリコーン材料と、伝導性シリコーン材料を通るイオンの流れを促進するように構成された界面活性剤とを含む。
【0012】
[12] 本開示のさらに別の一態様は、電極を介して被術者の皮膚との電気的接触を提供する方法に関する。電極は、電極本体と電気結合部とを含む。本方法は、電極本体を使用して被術者の皮膚に電極を取り外し可能に結合するステップであって、電極本体が上に配置された被術者の皮膚からの水分の取り込み又は拡散を可能にするための伝導性シリコーン材料と、伝導性シリコーン材料を通るイオンの流れを促進するための界面活性剤とを電極本体が含む、ステップと、電極本体の伝導性シリコーン材料を介して、被術者の皮膚から及び/又は被術者の皮膚に、電気信号を受信及び/又は送信するステップと、外部コンピューティングシステムに電極を結合するステップとを有する。
【0013】
[13] 本開示のまた別の一態様は、被術者の皮膚との電気的接触を提供するように構成された電極に関する。電極は、被術者の皮膚から電気信号を受信する、及び/又は、被術者の皮膚に電気信号を送信する手段と、外部コンピューティングシステムへの電極の結合を容易にする手段とを含む。受信及び/又は送信する手段は、受信及び/又は送信する手段が上に配置された被術者の皮膚からの水分の取り込み又は拡散を可能にするための伝導性シリコーン材料と、伝導性シリコーン材料を通るイオンの流れを促進するための界面活性剤とを含む。
【0014】
[14] 本開示のこれらの、及び他の目的、特徴、及び特性、並びに、動作の方法、構造物の関係する要素の機能、パーツの組み合わせ、及び、製造の経済性が、添付図面を参照した以下の説明及び付属の特許請求の範囲の検討により、より明らかとなり、添付図面のすべてが本明細書の一部を形成し、様々な図内において同様な参照符号は対応する部分を指すが、図面は例示及び説明のみを目的とし、本開示の限定の定義であることが意図されないことが明示的に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[15] 本特許出願の一実施形態に従った例示的な電極を示す図である。
図2】[16] 本特許出願の実施形態に従った電極の例示的な構成を示す図である。
図3】本特許出願の実施形態に従った電極の例示的な構成を示す図である。
図4】本特許出願の実施形態に従った電極の例示的な構成を示す図である。
図5】本特許出願の実施形態に従った電極の例示的な構成を示す図である。
図6】[17] 本特許出願の実施形態に従った電極の電気結合部の2つの例示的な構成を示す図である。
図7】[18] 本特許出願の一実施形態に従った例示的な電極を介して被術者の皮膚との電気的接触を提供する方法を示す図である。
図8】[19] 本特許出願の一実施形態に従った脳波図EEG測定のために使用される電極の構成、位置、及び固定を示す図である。
図9】本特許出願の一実施形態に従った脳波図EEG測定のために使用される電極の構成、位置、及び固定を示す図である。
図10】[20] 本特許出願の一実施形態に従ったヒドロゲル電極と乾式電極とから得られるEEG測定データの比較を示す図である。
図11】本特許出願の一実施形態に従ったヒドロゲル電極と乾式電極とから得られるEEG測定データの重ね合わせを示す図である。
図12】[21] 本特許出願の一実施形態に従った心電図ECG測定のために使用される乾式電極とそれらの位置とを示す図である。
図13】[22] 本特許出願の一実施形態に従ったヒドロゲル電極と乾式電極とから得られるECG測定データの比較を示す図である。
図14】本特許出願の一実施形態に従ったヒドロゲル電極と乾式電極とから得られるECG測定データの比較を示す図である。
図15】本特許出願の一実施形態に従ったヒドロゲル電極と乾式電極とから得られるECG測定データの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[23] 本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、他の意味に明示的に規定される場合を除き、複数形の参照を含む。本明細書で使用される場合、2つ以上のパーツ又はコンポーネントが「結合される(coupled)」という記述は、パーツが直接又は間接的に、すなわち、リンクが生じる限り1つ又は複数の中間パーツ又はコンポーネントを通して、一緒になって接続又は操作されることを意味する。本明細書で使用される場合、「直接結合された(directly coupled)」は、2つの要素が直接互いに接触することを意味する。本明細書で使用される場合、「固定して結合された(fixedly coupled)」又は「固定された(fixed)」は、互いに対する一定の向きを維持しながら一体となって動くように2つのコンポーネントが結合されることを意味する。
【0017】
[24] 本明細書で使用される場合、「単体の(unitary)」という用語は、コンポーネントが単一の部品又はユニットとして生成されることを意味する。すなわち、別々に生成された後にユニットとして一緒に結合された部品を含むコンポーネントは、「単体の(unitary)」コンポーネント又はボディではない。本明細書で使用される場合、2つ以上のパーツ又はコンポーネントが互いに「係合(engage)」するという記述は、パーツが互いに対して直接、又は1つ又は複数の中間パーツ又はコンポーネントを通して力を加えることを意味する。本明細書で使用される場合、「数(number)」という用語は、1又は1より大きな整数(すなわち、複数)を意味する。
【0018】
[25] 本明細書で使用される、例えば、限定されないが、上部、底部、左、右、上側、下側、前、後及びその派生語などの方向の表現は、図面に示される要素の向きに関係し、特許請求の範囲に明示的に記載されない限り特許請求の範囲に対する限定ではない。
【0019】
[26] 図1は、本特許出願の一実施形態に従った電極100を示す。電極100は、被術者106の皮膚104に取り外し可能に結合されるように、並びに、被術者106の皮膚104から電気信号を受信するように、及び/又は、被術者106の皮膚104に電気信号を送信するように構成された電極本体102と、外部コンピューティングシステム114への電極100の結合を容易にする電気結合部110とを含む。電極本体102は、電極本体102が上に配置された被術者106の皮膚104からの水分の取り込み又は拡散を可能にするように構成された伝導性シリコーン材料と、伝導性シリコーン材料を通るイオンの流れを促進するように構成された界面活性剤とを含む。本特許出願は、被術者106の皮膚104との最適な検出の電気的接触のための界面活性剤添加物を含む、伝導性粒子で充填された乾式シリコーン電極100を提供する。電極100は、水分調節の性質をもつ親水性シリコーン材料に起因して、柔らかくて皮膚にやさしい。
【0020】
[27] いくつかの実施形態において、電極本体102は、シリコーン材料、導電性粒子、及び界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、導電性粒子は、グラファイト、炭素、又は銀の薄片又は粒子を含む。いくつかの実施形態において、導電性粒子は、シリコーン材料と混合されて、伝導性シリコーン材料を形成する。いくつかの実施形態において、電極本体102は、重さで約25から75%の範囲のシリコーン材料、重さで約20から50%の範囲の伝導性粒子、及び重さで約5から25%の範囲の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、電極本体102は、重さで50%のシリコーン材料、重さで35%の伝導性粒子、及び重さで15%の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、電極本体102は、15gの界面活性剤と35gの伝導性粒子とに50gのシリコーン材料を混合することにより形成される。いくつかの実施形態において、シリコーン材料、伝導性粒子、及び界面活性剤は、約10から150℃の温度範囲において実施される混合押し出し高速混合工程を使用して混合される。いくつかの実施形態において、シリコーン材料、伝導性粒子、及び界面活性剤は、高速混合又は混合押し出しデバイスを使用して混合される。
【0021】
[28] いくつかの実施形態において、電極本体102は、伝導性シリコーン材料と界面活性剤とを含む。いくつかの実施形態において、電極本体102は、重さで約70から95%の範囲の伝導性シリコーン材料と、重さで約5から30%の範囲の界面活性剤とを含む。いくつかの実施形態において、電極本体102は、20gの界面活性剤と80gの伝導性シリコーン材料とを混合することにより形成される。いくつかの実施形態において、伝導性シリコーン材料と界面活性剤とは、約10から150℃の温度範囲において実施される混合押し出し高速混合工程を使用して混合される。いくつかの実施形態において、伝導性シリコーン材料と界面活性剤とは、混合押し出し機又は高速混合器デバイスを使用して混合される。
【0022】
[29] いくつかの実施形態において、追加的な材料(添加物)が、伝導性シリコーン材料と界面活性剤との混合、及び/又は、シリコーン材料と伝導性粒子と界面活性剤との混合を容易にするために追加される。いくつかの実施形態において、このような追加的な材料は、任意選択的である。いくつかの実施形態において、このような追加的な材料は、親水性シリコーン材料と界面活性剤添加物とにより形成された乾式電極のインピーダンスを変えない。
【0023】
[30] いくつかの実施形態において、伝導性シリコーン材料は、電極100に水分調節の性質を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、伝導性シリコーン材料は、親水性の伝導性シリコーン材料又はポリジメチルシロキサン材料である。伝導性シリコーン材料の追加された親水性の性質は、被術者の皮膚からの、及び被術者の皮膚の周辺における空気からの水分の取り込みをもたらす。したがって、電極の伝導性シリコーン材料は、皮膚に対して快適な層を提供する。いくつかの実施形態において、伝導性シリコーン材料は、伝導性液状シリコーンゴムを含む。いくつかの実施形態において、伝導性シリコーン材料は、市販のElastosil(登録商標)LR 3162材料を含む。
【0024】
[31] いくつかの実施形態において、石鹸又は界面活性剤はアルファオレフィンスルホナート、石鹸、ナトリウム(C14−16)オレフィンスルホナート、及びオレフィンスルホナートを含む。いくつかの実施形態において、石鹸又は界面活性剤は、伝導性シリコーン材料と混合されて、均質な材料を形成する。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、シリコーン材料と混合されるだけでなく、シリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン)材料の主鎖上に化学的に結合される。いくつかの実施形態において、石鹸又は界面活性剤は、二重結合、化学的架橋構造を含む。いくつかの実施形態において、シリコーン材料は、化学的架橋構造を含む。いくつかの実施形態において、石鹸又は界面活性剤と伝導性シリコーン材料とは、互いに化学的に結合される。いくつかの実施形態において、石鹸又は界面活性剤は、市販のBio−Terge(登録商標)AS−90ビーズを含む。いくつかの実施形態において、9%の界面活性剤(例えば、Bio−Terge(登録商標)AS−90ビーズ)が、伝導性シリコーン材料(例えば、Elastosil(登録商標)LR 3162)に追加される。
【0025】
[32] いくつかの実施形態において、界面活性剤は、シリコーン材料内に水を吸収するように構成される。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、重さで20%を上回る水を吸収するように構成される。水と(界面活性剤により追加された)イオンとの相互作用は、塩橋として機能するように構成される。いくつかの実施形態において、水及び/又は体の流体/体液と、(界面活性剤により追加された)イオンとの相互作用は、イオンリッチ電解質・電極ブリッジとして機能するように構成される。
【0026】
[33] いくつかの実施形態において、伝導性シリコーン材料内に混合された界面活性剤添加物は、伝導性シリコーン材料を通るイオン流を改善するように構成される。これは、乾式シリコーン電極の電極・電解質インターフェースを改善する。いくつかの実施形態において、電極は、電極・電解質インターフェースにわたって電流が流れることを可能にするように構成される。いくつかの実施形態において、シリコーン材料に追加された界面活性剤は、液状又は粉末/固体状である。
【0027】
[34] いくつかの実施形態において、シリコーン材料が伝導性粒子(炭素、グラファイト、又は銀)で充填されて、電気的な性質をもつ。いくつかの実施形態において、シリコーン材料に追加された伝導性粒子は、液状又は粉末/固体状である。これは、材料を電子に対して伝導性にするが、イオンに対して伝導性にしない。伝導性シリコーン材料内にイオンを付加することにより、皮膚と相互作用して電極経路のインピーダンスを下げるために役立つように2つの性質が変化する。まず、イオンの交換が可能となり、変更を加えられたシリコーンが皮膚に接触して汗から水を吸収/引き込むように構成される。いくつかの実施形態において、水の取り込みは、皮膚からだけでなく、例えば、空気の湿気、水道水、湿度管理貯蔵パッケージング、及び/又はシャワーからでもよい。水の吸収は、塩橋として機能するように構成される。シリコーンは、このようにバルク親水性化合物又はバルクイオン伝導性親水性化合物へと変更される。
【0028】
[35] いくつかの実施形態において、伝導性粒子(例えば、グラファイト、炭素、又は銀の薄片又は粒子)、及び、石鹸又は界面活性剤添加物を追加することにより、伝導性粒子のみが混合された他の電極組成物と比較して、電極のより良好な検出及び伝導性能を達成することができる。いくつかの実施形態において、導電性粒子(例えば、グラファイト、炭素又は銀粒子)、及び、石鹸又は界面活性剤添加物は、親水性シリコーン材料内により良好なイオン経路を提供する。
【0029】
[36] いくつかの実施形態において、親水性シリコーンの化学構造は、次のように与えられる。
【0030】
【化1】
【0031】
[37] いくつかの実施形態において、上の親水性シリコーン材料の化学構造におけるnは、3から28の範囲である。いくつかの実施形態において、nは10から18の範囲である。いくつかの実施形態において、nは12から16の範囲である。いくつかの実施形態において、上の親水性シリコーン材料の化学構造における反復単位の総数(m+o+1)は、少なくとも5であってよく、1000未満であってよく、n及びoは、互いに独立して選択された整数であり、少なくとも6であってよい。いくつかの実施形態において、上の親水性シリコーン材料の化学構造における末端基Rは、Si(CH及び/又は水素から構成される。
【0032】
[38] いくつかの実施形態において、本開示に従った親水性シリコーン材料の合成が次のように概略的に示される。
【0033】
【化2】
【0034】
[39] いくつかの実施形態において、Si−H反応基を含むシリコーン前駆体が、アルファオレフィンスルホナートなどの親水性モノマーと反応する。いくつかの実施形態において、上の化学構造におけるn及びmの値は、3から28の範囲である。いくつかの実施形態において、n及びmの値は、10から18の範囲である。いくつかの実施形態において、n及びmの値は、12から16の範囲である。いくつかの実施形態において、上の化学構造におけるoの値は、5から1000の範囲である。
【0035】
[40] いくつかの実施形態において、オレフィン成分は、イオン化して負に帯電した頭部基(S)と、荷電平衡のためのカチオン(Mn+)とを含むことができるので、オレフィン成分は強い親水性である。いくつかの実施形態において、親水性オレフィン成分と親水性シリコーン前駆体との混合は、親水性の差により妨げられてよい。いくつかの実施形態において、本開示に従った親水性シリコーン材料は、シリコーン前駆体の親水性母材内に懸濁されたアニオン性頭部基とカチオン性対イオンとから構成されるイオン対を含む。
【0036】
[41] いくつかの実施形態において、シリコーン材料の代わりに、電極は、伝導性添加物及びイオンリッチ界面活性剤添加物と混合された他のポリマー化合物材料を含む。いくつかの実施形態において、電極内のイオン流を促進するように構成された他の代替的な界面活性剤が使用される。いくつかの実施形態において、電極と被術者の皮膚との間の導電率を上げるように、及び電極材料のインピーダンスを下げるように構成された他の代替的な伝導性粒子/添加物が使用される。
【0037】
[42] 電極100は、電気結合部110を含む。電気結合部110は、外部コンピューティングシステム114への電極100の結合を容易にする。外部コンピューティングシステム114は、被術者に電気刺激を伝達するように、及び/又は、被術者の生理学的パラメータなどを監視するように構成されたシステムである。いくつかの実施形態において、外部コンピューティングシステムは、処理デバイス(例えば、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するように設計されたデジタル回路、情報を処理するように設計されたアナログ回路、状態機械、及び/又は、情報を電子的に処理するための他の機構)、1つ又は複数のセンサー、1つ又は複数のインターフェースデバイス(例えば、キーパッド、ボタン、スイッチ、キーボード、ノブ、レバー、ディスプレースクリーン、タッチスクリーン、スピーカー、マイクロホン、インジケーターライト、可聴警報、印刷機、触覚フィードバックデバイス、及び/又は他のインターフェースデバイス)、及び/又は他のコンポーネントのうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態において、外部コンピューティングシステムは、測定デバイスのうちの1つ又は複数を含む。例えば、測定デバイスのうちの1つ又は複数は、生体インピーダンス測定値、生体電位測定値、脳波図EEG(脳の活動)測定値、心電図ECG(心臓の活動)測定値、皮膚電気反応GSR(ストレス)測定値などを取得するように構成される。
【0038】
[43] 例えば、外部コンピューティングシステム114は、心電図記録(ECG)、脳波記録(EEG)、筋電図記録(EMG:electromyography)、電気眼球図記録(EOG:electrooculography)、及び/又は、他の生体検出用途のために使用される生体検出システムを含む。別の例として、外部コンピューティングシステム114は、経皮的電気神経刺激(TENS)、電気筋肉刺激(EMS:electrical muscle stimulation)、神経筋電気刺激(NMES:neuromuscular electrical stimulation)、機能的電気刺激(FES:functional electrical stimulation)、皮膚電気反応GSR(ストレス)、及び/又は、他の生体刺激用途のために使用される生体刺激システムを含む。
【0039】
[44] 被術者106の皮膚104から、及び/又は、被術者106の皮膚104に電気信号が受信及び/又は送信されることを電気結合部110が可能にするように、電気結合部110が電極本体102に電気的に結合される。いくつかの実施形態において、追加的な構成要素及び/又は材料の層が、電気結合部110及び/又は電極本体102の間に配置される。他の実施形態において、電気結合部110は、電極本体102に直接結合される。いくつかの実施形態において、電気結合部110は、スナップ組立体、磁気組立体、ボタン組立体、クリップ及び/又はクランプ組立体、ワイヤ組立体、及び/又は、外部コンピューティングシステム114への電極100の結合を容易にする他の組立体のうちの1つ又は複数を備える。例えば、電気結合部110は、外部コンピューティングシステム114から電極100に1つ又は複数のワイヤを接続するためのスナップ組立体の一部を含む。いくつかの実施形態において、電気結合部110の一部は、金属材料で作られる。いくつかの実施形態において、電気結合部110の一部は、親水性シリコーン材料(界面活性剤添加物を含む)により作られる。
【0040】
[45] 図2図5は、本特許出願の実施形態に従った電極の様々な例示的な構成を示す。
【0041】
[46] 図2を参照すると、電極200は、電極本体202と電気結合部又はスナップ210とを含む平面電極の形態である。いくつかの実施形態において、電極200は、心電図ECG(心臓の活動)測定のために使用される。
【0042】
[47] いくつかの実施形態において、界面活性剤添加物を含む親水性シリコーン材料は、ユーザー又は操作者が所望の形状に切り取る、及び/又は打抜く必要があるシートの形態である。いくつかの実施形態において、(界面活性剤添加物を含む)親水性シリコーン材料シートは、50×50ミリメートルの寸法をもつ。いくつかの実施形態において、(界面活性剤添加物を含む)親水性シリコーン材料シートは、1ミリメートルの厚さをもつ。いくつかの実施形態において、ユーザー又は操作者は、(界面活性剤添加物を含む)親水性シリコーン材料シートを所望の形状にレーザー切断し、及び/又は打抜きする。
【0043】
[48] いくつかの実施形態において、電気結合部210は、スナップのオス部であり、スナップの対応するメス部は、外部コンピューティングシステム114に電極200を結合するように構成された1つ又は複数のワイヤに結合される。いくつかの実施形態において、電気結合部又はスナップ210は、(界面活性剤添加物を含む)親水性シリコーン材料を通して穿孔されて、十分な機械的及び電気的接触を確立する。
【0044】
[49] 図3を参照すると、電極300は、電極本体302と電気結合部又はスナップ310とを含む平面電極の形態である。すなわち、電極300は、スナップ突出部310を含む平面形状の電極である。いくつかの実施形態において、スナップ310は、電極300上の中央に位置してよい。
【0045】
[50] 図4を参照すると、電極400は、電極本体402と電気結合部又はスナップ410とを含む構造化されたピン電極の形態である。いくつかの実施形態において、構造化されたピン電極400は、例えば、毛髪を通した測定のために使用されてよい。いくつかの実施形態において、構造化されたピン電極400は、被術者の皮膚との良好なガルバニック接触を確立するために、電極400が被術者の毛髪を通り抜けることを可能にする複数ピン(例えば、ピン450)設計を含む。いくつかの実施形態において、電極400は、25ミリメートルの直径をもつ。いくつかの実施形態において、電極400のピン450は、5ミリメートルの高さをもつ。いくつかの実施形態において、電極400のピン450は、2ミリメートルの直径をもつ。
【0046】
[51] 図5を参照すると、電極500は、電極本体502と電気結合部510とを含む絆創膏型電極500の形態である。
【0047】
[52] いくつかの実施形態において、電極550は、ロール560に巻かれた電極550a、550b、550cなどのストリップの形態である。いくつかの実施形態において、電極550a、550b、550cなどの各々は、電極本体と電気結合部とを含む。いくつかの実施形態において、電極のストリップは、ロール状にされて、ディスペンサーデバイス内に収容される。いくつかの実施形態において、電極550a、550b、550cなどの各々は、分離部(例えば、切り込み、孔開きライン)により他の電極から分離される。例えば、ユーザーは、切り込み又は孔開きラインを使用して、使用のためにストリップを個々の電極550a、550b、550cなどに分離する。
【0048】
[53] いくつかの実施形態において、本開示の電極は、被術者の皮膚に電極が接着することをもたらすように接着部材又は接着剤を含む。いくつかの実施形態において、接着剤は、電極の後面又は背面上に配置される。いくつかの実施形態において、電極は、異なる種類の接着剤とともに使用される。例えば、電極のための接着剤は、皮膚接着剤を含んでよい。いくつかの実施形態において、電極のための接着剤は、親水コロイド又は皮膚にやさしいシリコーン接着剤を含む。
【0049】
[54] 図6は、本特許出願の実施形態に従った電極100の電気結合部110の2つの例示的な構成を示す。いくつかの実施形態において、導線への異なる接続が、電極100内に一体化される。例えば、図6の左側に、外部コンピューティングシステム114から電極100に1つ又は複数のワイヤを接続するためのスナップ組立体625の一部を示し、図6の右側に、外部コンピューティングシステム114から電極100に1つ又は複数のワイヤを接続するための磁気アダプタ635に対するスナップの一部を示す。いくつかの実施形態において、使いやすい磁気接続体が電極100に一体化される。
【0050】
[55] 図7は、電極を介して被術者の皮膚との電気的接触を提供する方法700を示す。電極は、電極本体、電気結合部、及び/又は他のコンポーネントを含む。いくつかの実施形態において、2つ以上の電極が使用される。本明細書で提示される方法700の工程は、例示的であることが意図される。いくつかの実施形態において、方法700が、説明されない1つ又は複数の追加的な工程を含んで、及び/又は、説明される工程のうちの1つ又は複数を含まずに実現される。さらに、方法700の工程が図7に示され、本明細書において説明される順序は、限定することが意図されない。
【0051】
[56] 方法700の工程702において、電極の電極本体が、被術者の皮膚に結合される。工程702は、(図1を参照して示され、説明されるような)電極本体102と同じ又は同様の電極本体により実行される。電極本体は、電極本体が上に配置された被術者の皮膚からの水分の取り込み又は拡散を可能にするように構成された伝導性シリコーン材料と、伝導性シリコーン材料を通るイオンの流れを促進するように構成された界面活性剤とを含む。いくつかの実施形態において、伝導性シリコーン材料は、(図1を参照して説明される)伝導性シリコーン材料と同じ又は同様である。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、(図1を参照して説明される)界面活性剤と同じ又は同様である。
【0052】
[57] 方法700の工程704において、電極の結合部が、外部コンピューティングシステムに結合される。いくつかの実施形態において、外部コンピューティングシステムに電極を結合することは、(図1を参照して示され、説明されるような)電気結合部110と同じ又は同様の電気結合部を介することで容易にされる。
【0053】
[58] 方法700の工程706において、電気信号が、電極の電極本体を介して被術者の皮膚から受信、及び/又は被術者の皮膚に送信される。いくつかの実施形態において、工程706は、電極本体102と同じ又は同様の電極本体と、(図1を参照して示され、説明されるような)電極100と同じ又は同様の電極により実行される。
【0054】
[59] 本開示の電極は、患者が家に持ち帰るポータブル医療デバイス上で使用される。本開示の電極の他の用途は、例えば、生体インピーダンス、心電図ECG(心臓の活動)、脳波図EEG(脳の活動)、電気インピーダンス断層撮影EIT(肺の監視)、経皮的電気神経刺激TENS、皮膚電気反応GSR(ストレス)など、他のガルバニック皮膚電極用途を含む。いくつかの実施形態において、電極は、生体インピーダンス測定値、生体電位測定値、及び/又は電気刺激のために使用される伝導性皮膚インターフェースである。
【0055】
[60] いくつかの実施形態において、本開示の電極は、睡眠を改善するために使用される。日常睡眠監視及び改善デバイスは、睡眠に問題のある人により日常的に使用される。日常睡眠監視及び改善デバイスのためには、信号品質が良く、快適さと使いやすさとを提供する電極が望ましい。日常睡眠監視及び改善デバイスは、睡眠中の脳波図(EEG)測定データを手軽に監視し、さらに、聴覚刺激を伝達して徐波を誘起する高度な閉ループデバイスである。日常睡眠監視及び改善デバイスは、睡眠中に装着されるヘッドセット(すなわち、ヘッドギア)、本開示の乾式皮膚電極、生体信号(EEG)増幅器、及び無線オーディオデバイスを含む。日常睡眠監視及び改善デバイスにおいて使用される乾式電極は、良好なEEG信号品質を提供しながら、ユーザーに使いやすさと快適さとを提供する。すなわち、本開示の乾式電極は、良質なEEG信号を提供するために、皮膚とのガルバニックインピーダンスが低い。
【0056】
[61] 本特許出願の乾式シリコーン電極は、心電図ECG(心臓の活動)、脳波図EEG(脳の活動)、皮膚電気反応GSR(ストレス)などを含むガルバニック皮膚検出のための多くの電極用途において評価された。
【0057】
[62] 例えば、図8図11を参照すると、本特許出願の乾式シリコーン電極は、本特許出願の乾式シリコーン電極830とゲルベース電極840との比較がなされた脳波図EEG(脳の活動)用途において評価された。乾式シリコーン電極830とゲルベース電極840との両方が、被術者の頭の前頭部と耳の位置の後ろとに配置された。図8及び図9は、EEG測定のために使用される乾式シリコーン電極830及びゲルベース電極840の構成、位置、及び固定を示す。乾式シリコーン電極830及びゲルベース電極840からのEEG測定データは、同時に記録された。例えば、それぞれ、乾式シリコーン電極830からのEEG測定データは、チャンネルB上で記録され、ゲルベース電極840からのEEG測定データは、チャンネルA上に記録された。EEG測定工程中、さらに共通グランド電極850が使用された。EEG測定は、TMSI Nexus 10システムを使用して実施された。乾式シリコーン電極830は、電気結合部のためのスナップ相互接続部材を含む。いくつかの実施形態において、スナップ相互接続部材は、(皮膚から絶縁された)金属スナップ相互接続部材である。
【0058】
[63] 8人の被術者が測定された。各被術者につき、3回の記録が行われた。1回の記録は、目を閉じた3つの期間の繰り返しと、その後の目を開いた1つの期間とを含む。2回の記録は30秒の期間を使用し、3回目の記録は60秒の期間を使用する。30秒の期間の2回の記録が、照合確認として使用される。結果は、60秒の期間を使用して報告された。EEG測定データの性能指標は、時間領域における信号比較(例えば、アルファ波)であり、目を閉じた場合の0.5〜30Hz窓内におけるパワースペクトルの重なり、及び、目を開いた場合の0.5〜30Hz窓内におけるパワースペクトルの重なりである。
【0059】
[64] 図10及び図11は、ヒドロゲル電極840及び乾式シリコーン電極830から取得されたEEG測定データの比較及び重ね合わせを示す。図10及び図11に示されるように、EEG測定の10秒の区間は、最初の何秒かに明確なアルファ波を含み、測定データの終わりに、大きな目の動きによるアーチファクト(眼球運動)を含む。信号DSEは乾式シリコーン電極信号を示し、信号GEはゲル電極信号を表す。図11において、信号DSEと信号GEとが重ね合わされて、それらの間の類似点と差異点とを示す。ヒドロゲル電極840と乾式シリコーン電極830とから取得されたデータ間で、アルファ波と大きな目の動きによるアーチファクトとの両方が、非常に同等な結果を示す。
【0060】
[65] この実験/試験は、本特許出願の乾式シリコーン電極の性能が、湿式及びゲル電極の性能と同等である根拠を提供する。実験データは、良好な信号品質で知られる(が、上述のようにそれら独自の欠点も含む)湿式及びゲル電極の規格を使用して、比較及び評価された。実験データは、親水性の伝導性シリコーン材料と界面活性剤添加物とを含む本特許出願の乾式シリコーン電極がそれらの問題を解決して、良好な信号品質を維持することを示した。
【0061】
[66] これらの実験の結果は、ゲル電極と乾式シリコーン電極との高レベルの重なり(及び、それにともなう同様の電極特性)が現れることをさらに示した。これらの実験の結果は、乾式電極の場合の動きによるアーチファクトがゲル電極の場合と同様の量及び外観を見せることをさらに示した。
【0062】
[67] 水の取り込み実験と重量損失実験とがさらに行われ、これらの実験の結果は、本特許出願の電極材料(界面活性剤添加物を含む親水性の伝導性シリコーン)が例えば、ある期間(例えば、数か月)にわたって乾燥し切らないことを示した。さらに、これらの実験の結果は、本特許出願の電極が、オフィス環境内に開放状態で数カ月にわたり電極を保管した後でも、良好な信号品質を提供することを示した。さらに、自発的な試験中に(試験間に数日の間隔が存在した)、同じ電極が再使用され、電極に対して特殊なパッケージング要件は使用されなかった。これは、本特許出願の電極が何日間も使用しても乾燥し切らず、劣化もしないことのさらなる根拠を提供する。
【0063】
[68] いくつかの実施形態において、界面活性剤により提供される追加的なイオンは、電極本体の親水性シリコーン材料内の電荷移動、及び、電極の伝導性能の改善のために利用可能である。いくつかの実施形態において、界面活性剤添加物によりシリコーン材料に親水性の効果が導入される。本特許出願の乾式親水性シリコーン電極の良好な性能は、他の乾式電極材料と比較して改善されたイオン移動によりさらに説明される。
【0064】
[69] 図12図15を参照すると、本特許出願の乾式シリコーン電極1230の比較がゲルベース電極1240を使用して行われた心電図ECG(心臓の活動)用途において、本特許出願の乾式シリコーン電極がさらに評価された。図12に示す右側の写真は、乾式シリコーン電極1230を示し、図12に示す左側の写真は、ECG測定のために使用されるゲルベース電極1240及び乾式シリコーン電極1230を示す。ECG測定工程中、共通グランド電極1250がさらに使用された。共通グランド電極1250が、左胸上に配置された。乾式シリコーン電極1230とゲルベース電極1240とからのECG測定データが同時に記録された。乾式シリコーン電極1230のための第1のチャンネル、ゲルベース電極1240のための第2のチャンネル、及び共通グランド電極1250のための第3のチャンネルを含むECG測定のための3導線構成が使用された。例えば、乾式シリコーン電極1230からのECG測定データが1つのチャンネル上で記録され、ゲルベース電極1240からのECG測定データが第2のチャンネル上で記録された。TMSI Nexus 10システムを使用して、ECG測定が実施された。EK14030を使用して、乾式シリコーン電極1230が作られた。
【0065】
[70] 乾式シリコーン電極1230は、1ミリメートルの厚さと、18×50×1ミリメートルの寸法をもつ幾何学的構成をもつ。乾式シリコーン電極1230は、電気結合部のためのスナップ相互接続部材を含む。いくつかの実施形態において、スナップ相互接続部材は、(皮膚から絶縁された)金属スナップ相互接続部材である。
【0066】
[71] 4人の被術者は、休憩(座った状態)と、姿勢を正して座ることと、その場で歩くこととの期間を繰り返して約15分間測定された。一般品の三次の1Hz高域通過フィルタの後、乾式シリコーン電極1230とゲルベース電極1240とからのECGデータ信号は非常に似ているように見える。ECGの特徴的なピークP、Q、R、S、Tは、湿式電極1240と乾式シリコーン電極1230との両方において可視光であった。両方の種類の電極に対して、特に意図される動き期間中に、動きによるアーチファクトが観測された。
【0067】
[72] 図13図15は、ヒドロゲル電極1240と乾式シリコーン電極1230とから取得されたECG測定データの比較を示す。図13は、被術者が休憩位置にある(すなわち、椅子に座っている)ときの、湿式/ゲル電極1240及び乾式シリコーン電極1230からのECGのスナップショット(例えば、5秒)を示す。図14は、(図14に示されるように)被術者が胴の回転を実施しているときの、湿式/ゲル電極1240及び乾式シリコーン電極1230からのECGデータを示す。図15は、(図15に示されるように)被術者が上下動を実施しているときの、湿式/ゲル電極1240及び乾式シリコーン電極1230に対するECGのスナップショット(例えば、5秒)を示す。
【0068】
[73] 本特許出願の様々な実施形態の場合において、親水性物質は、適切な疎水性材料の架橋構造及び/又は架橋密度と同等の架橋構造及び/又は架橋密度をもつ親水性シリコーンである。親水性シリコーンは、通常のシリコーン主鎖を含むが、疎水性メチル又はフェニル基の代わりに、これらの基のいくつかはより親水側の基と置換される。親水側の基は、例えば、アルコール、カルボン酸、アミン、アミド、及びエチレングリコール官能基を含有する。
【0069】
[74] 特許請求の範囲において、括弧の間に位置するすべての参照符号は、請求項を限定すると解釈されてはならない。「備える(comprising)」又は「含む(including)」という用語は、請求項において列挙される要素及びステップではない要素及びステップのいずれの存在も排除しない。いくつかの手段を列挙したデバイスの請求項において、これらの手段のうちのいくつかは、ハードウェアにおける同じ1つの要素により具現化されてよい。要素に先行する「1つ(a)」又は「1つ(an)」という語句は、複数のこのような要素の存在を排除しない。いくつかの手段を列挙した任意のデバイスの請求項において、これらの手段のうちのいくつかは、ハードウェアにおける同じ1つの部材により具現化されてよい。特定の要素が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの要素が組み合わせて使用できないことを意味するわけではない。
【0070】
[75] ここまでの説明は、現時点で最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに基づいて例示を目的として詳細を提供するが、このような詳細はその目的のためだけであり、本開示が明示的に開示される実施形態に限定されず、むしろ、付属の請求項の趣旨及び範囲に入る変形例及び均等な構成を包含することが意図されることが理解される。例えば、本開示が可能な範囲において、任意の実施形態の1つ又は複数の特徴が任意の他の実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わされ得ることを意図することが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15