(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0002】
現在のところ、微生物感染を防止するために銀の可溶性塩が使用されているが、遊離銀イオンが脱離又は錯体生成して失われるために、それらの可溶性塩は銀イオンを持続的には放出しない。この問題に対処するため、銀の可溶性塩は定期的に再適用されなければならない。例えば、埋込み医療デバイスを用いる場合には、再適用は負担になることもあり、実施できないことさえある。したがって、抗菌剤をより効果的に放出する抗菌性物品が望まれる。
【0003】
本明細書に記載の様々な例示的な実施形態では、本開示の物品は、微生物感染を防止するために使用できる。本開示の物品は、抗菌剤の放出を増強するのに、よって抗菌活性を増加させるのに有用であり得る。
【0004】
一態様では、本開示は、閉塞層と、ナノ構造表面を有する基材と、を含む物品を提供する。ナノ構造表面は金属酸化物層で被覆されており、金属酸化物層は金属酸化物を含む。
【0005】
本開示のいくつかの他の態様は、上記物品の使用方法を提供する。本方法は、物品を提供すること、及び物品を対象に適用することを含み得、物品は、7日以内に細菌増殖の4logを超える減少を呈する。
【0006】
本開示の他の特徴及び態様は、詳細な説明を考察することにより明らかとなる。
【0007】
定義
大部分は周知であるがいくらか説明を必要とするものもある、ある特定の用語が、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて使用されている。本明細書において使用する用語は以下のとおり理解されるべきである。
【0008】
数値又は形状に関する「約」又は「およそ」という用語は、数値又は特性又は特徴の+/−5パーセントを意味するが、数値又は特性又は特徴の+/−5パーセント以内の任意の狭い範囲もまた、ちょうどその数値とともに明確に含む。例えば、「約」100℃の温度は、95℃〜105℃の温度を指すが、任意のより狭い温度範囲又は更には、例えばちょうど100℃の温度といったその範囲内の単一の温度もまた明確に含む。
【0009】
「a]、「an」及び「the」という用語は、内容によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物(a compound)」を含有する材料という言及には、2つ以上の化合物の混合物が含まれる。
【0010】
「又は」という用語は、内容によってそうでない旨が明確に示されない限り、「及び/又は」を含む意味で一般に用いられる。
【0011】
本明細書の全体で使用される「分子量」という用語は、特に明確な記載がない限り、重量平均分子量を意味する。
【0012】
「モノマー」という用語は、1つ以上のラジカル重合性基を有する、比較的低い分子量の材料(すなわち、約500g/モル未満の分子量を有する)を意味する。
【0013】
「オリゴマー」という用語は、約500g/モル〜約10,000g/モルの範囲の分子量を有する、比較的中程度の分子量の材料を意味する。
【0014】
「(コ)ポリマー」という用語は、少なくとも約10,000g/モル(いくつかの実施形態では、10,000g/モル〜5,000,000g/モルの範囲)の分子量を有する、比較的高い分子量の材料を意味する。「(コ)ポリマー((co)polymer又は(co)polymers)」という用語は、ホモポリマー及びコポリマー、並びに、例えば共押出によって、又は例えばエステル交換反応を含む反応によって、相溶性ブレンドにおいて形成され得るホモポリマー又はコポリマーを含む。「(コ)ポリマー」という用語は、ランダム、ブロック及び星型(例えばデンドリティック)(コ)ポリマーを含む。
【0015】
モノマー、オリゴマーに関する「(メタ)アクリレート」という用語は、アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸との反応生成物として形成したビニル官能性アルキルエステルを意味する。
【0016】
「異方性」という用語は、約1.5:1以上(好ましくは、2:1以上、より好ましくは、5:1以上)の高さと幅(すなわち、平均幅)の比(アスペクト比)を有する形成部(feature)又は構造を指す。
【0017】
「ナノスケール」という用語は、1マイクロメートル(1,000ナノメートル)以下、例えば約1ナノメートル(nm)〜約1,000nm、より好ましくは約1nm〜500nm、最も好ましくは約5nm〜300nmの、特徴的長さ、幅又は高さを有する形成部又は構造を指す。
【0018】
「ナノ構造」又は「ナノ構造化」という用語は、少なくとも1つのナノスケールの形成部又は構造、好ましくは複数のナノスケールの形成部又は構造を有する物品を指す。
【0019】
「プラズマ」という用語は、電子、イオン、中性分子及び遊離基を含有する物質の部分的に電離した気体又は液体状態を指す。
【0020】
「フルオロポリマー」という用語は、以下のモノマーのうちの少なくとも1つの共重合された単位から得られるホモポリマー又はコポリマーを指す:テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(vinyl fluorine)(VF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フルオロアルキルビニルエーテル、フルオロアルコキシビニルエーテル、フッ素化スチレン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)、フッ素化シロキサン、又はこれらの組み合わせ。
【0021】
「濡れ時間」という用語は、着色した水の液滴が物品の表面に添加された時点から、その水滴が物品中に完全に吸収される時点までの時間を指す。
【0022】
「水接触角測定」という用語は、以下の測定を指す。静的接触角測定装置を用いて、水接触角を測定した。この装置は、デジタルカメラ、自動液体ディスペンサー、及び自動で水滴を置くことによりハンズフリーの接触角を可能にするサンプルステージを備えている。液滴形状を自動的に取得し、その後、コンピュータによるDrop Shape Analysisにより分析して静的接触角を決定する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明では、本明細書の説明の一部を形成し、いくつかの具体的な実施形態を例示して示す、添付の図面一式を参照する。本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想定され、実施され得ることを理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で理解すべきではない。
【0025】
特に指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用する加工寸法(feature size)、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語により修飾されていると理解すべきである。したがって、そうでない旨が示されない限り、上記の明細書及び添付の特許請求の範囲において記載されている数値パラメータは、本明細書に開示されている教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、また請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではないが、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の桁数を考慮し、端数処理技術を適用することによって、解釈されるべきである。加えて、端点を有する数値範囲の使用は、その範囲内の全ての数(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意のより狭い範囲又は単一の値を含む。
【0026】
以下に、本開示の様々な例示的な実施形態を、図面を具体的に参照しながら説明する。本開示の例示的な実施形態には、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を加えてもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることを理解すべきである。
【0027】
物品が本明細書に開示されている。
図1は、例示的な抗菌性物品100の断面図である。全体的にみて、物品100は、閉塞層200と、閉塞層に重ね合わせた基材400とを含む。基材400は多くの場合ナノ構造表面を有し、これはナノ構造405により提供される。基材400のナノ構造表面は、金属酸化物層300で被覆することができる。
図1に示される実施形態では、金属酸化物層300は閉塞層200に隣接している。あるいは、基材400が閉塞層に隣接していてもよい。任意選択の吸収層に、閉塞層200が提供されてもよい。
【0028】
記載される場合、更なる接着剤層(図示せず)を基材400に提供してもよい。いくつかの実施形態では、接着剤層は、基材400の表面全体を覆っている。しかしながら、接着剤層は、基材400の表面の一部のみを覆っていてもよいことが理解される。物品は、接着剤の汚れを防止するために接着剤の全部又は一部を覆う、任意の剥離ライナー(図示せず)を含んでいてもよい。物品が薄く可撓性が高い場合には、閉塞層200の全部又は一部を覆って構造的に支持するための、任意のキャリア(図示せず)を含んでいてもよい。キャリアは、物品を対象に貼り付けた後は、閉塞層200から取り外し可能であってもよい。
【0029】
図2は、別の例示的な抗菌性物品500の断面図である。全体的にみて、物品500は、閉塞層550と、閉塞層に重ね合わせた基材530とを含む。基材530は多くの場合、そのナノ構造表面上にナノ構造
535を有する。基材530のナノ構造表面は、金属酸化物層520で被覆することができる。記載される場合、更なる接着剤層540を基材530及び閉塞層550に提供してもよい。任意選択の剥離ライナー510を、金属酸化物層520に提供してもよい。剥離ライナー510は、物品を対象に貼り付ける前に、金属酸化物層520から取り外すことができる。
図2に示す実施形態では、金属酸化物層520は剥離ライナー510の表面全体を覆っており、基材530は接着剤層540の表面全体を覆っている。しかしながら、金属酸化物層は、剥離ライナーの表面の一部のみを覆っていてもよく、基材は、接着剤層の表面の一部のみを覆っていてもよいことが理解される。
【0030】
本開示の物品を使用して、抗菌効果をもたらすことができる。物品は、医療提供者に提供することができ、対象に適用して抗菌剤を放出することができる。
【0031】
閉塞層
閉塞層は、液体及び少なくとも一部の気体の通過に対する不透過性バリアを提供するのに有用である。閉塞層は、多孔性又は非多孔性であり得る。代表的なバリアとしては、不織布及び織布繊維ウェブ、編み布地、フィルム、発泡体、ポリマーフィルム並びに他の一般的なバッキング材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、下にある対象が見える透明な閉塞層が望ましい。好適な閉塞層としては、その開示が参照により本明細書に援用される国際公開第WO2014/149718号に記載のものが挙げられる。
【0032】
一実施形態では、閉塞層は高い透湿性を有するが、微生物及び他の汚染物質を物品に覆われた領域の中に入れないように、液体の水は一般に通さない。好適な材料の一例は、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第3,645,835号及び同第4,595,001号に記載のものなどの高透湿性フィルムである。一実施形態では、閉塞層は、エラストマーポリウレタン、ポリエステル、又はポリエーテルブロックアミドフィルムであり得る。これらのフィルムは、弾力性、弾性、高透湿性、及び透明性という望ましい特性を併せ持つ。閉塞層のこの特徴の説明は、その開示が参照により本明細書に援用される登録米国特許第5,088,483号及び同第5,160,315号において見出すことができる。
【0033】
閉塞層に好適である可能性がある材料の市販例としては、TEGADERM(3M Company)、OPSITE(Smith&Nephew)という商品名で販売されている薄いポリマーフィルムなどが挙げられる。流体は、物品を境界とする密閉環境から自発的に出ていく可能性があるため、透湿性が比較的高い閉塞層は必要とされないこともある。結果として、いくつかの他の有用な可能性のある閉塞層の材料としては、例えば、メタロセンポリオレフィンが挙げられ、SBS及びSISブロックコポリマー材料を使用できる。
【0034】
しかしながら、いずれにせよ、例えば追従性(conformability)を改善するために、閉塞層を相対的に薄くしておくことが望ましいであろう。例えば、閉塞層は、200マイクロメートル以下、又は100マイクロメートル以下、50マイクロメートル以下、又は25マイクロメートル以下の厚さを有するポリマーフィルムで形成されていてもよい。
【0035】
ナノ構造表面を有する基材
図2は、ナノ構造表面を有する例示的な基材の概略図である。基材600のナノ構造表面602は、典型的には、様々な高さ及びアスペクト比のナノ構造(ナノスケール形成部(nanoscale feature))605を含み得る。一般に、ナノ構造表面は、ナノ構造異方性表面を有し得る。ナノ構造異方性表面は典型的には、ナノスケール形成部を含み得る。いくつかの実施形態では、ナノ構造異方性表面は、異方性のナノスケール形成部を含み得る。いくつかの実施形態では、ナノ構造異方性表面は、ランダムな異方性のナノスケール形成部を含み得る。ナノ構造異方性表面は典型的には、約2:1以上、好ましくは約5:1以上の高さと幅の比(アスペクト比)を有するナノスケール形成部を含み得る。いくつかの実施形態では、高さと幅の比は、更には50:1以上、100:1以上、又は200:1以上であり得る。ナノ構造異方性表面は、例えば、ナノピラー若しくはナノカラム、又はナノピラー若しくはナノカラムを含む連続ナノウォールなどのナノスケール形成部を含み得る。典型的には、ナノスケール形成部は、基材に対して実質的に垂直な、急勾配の側壁を有する。
【0036】
ナノ構造表面を有する基材は、プラズマ処理工程を含む任意の好適な手段によって形成することができる。好適な工程としては、その開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第5,888,594号、同第8,460,568号、同第8,634,146号、及び国際公開第WO2015/013387号に記載されているものを挙げることができる。
【0037】
基材は、米国特許第5,888,594号、同第8,460,568号、同第8,634,146号及び国際公開第WO2015/013387号に開示されている方法によってエッチングすることができる任意の材料で製造することができる。例えば、基材は、(コ)ポリマー材料、無機材料、合金、又は固溶体であってもよい。いくつかの実施形態では、基材は、繊維、ガラス、複合材、又は微細孔膜を含み得る。
【0038】
(コ)ポリマー材料は、熱可塑性物質及び熱硬化性プラスチックを含む。典型的な熱可塑性物質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、熱可塑性ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレンアクリロニトリル、三酢酸セルロース、ナイロン、シリコーン−ポリオキサミドポリマー、フルオロポリマー、環状オレフィンコポリマー、及び熱可塑性エラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。好適な熱硬化性物質としては、アリル樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン、及びシリコーン又はポリシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの樹脂は、少なくとも1種のオリゴマーウレタン(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の反応生成物から形成することができる。典型的には、オリゴマーウレタン(メタ)アクリレートは、マルチ(メタ)アクリレートである。「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルを表すために使用され、「マルチ(メタ)アクリレート」は、一般に(メタ)アクリレートポリマーを表す「ポリ(メタ)アクリレート」と対比して、2つ以上の(メタ)アクリレート基を含む分子を表す。ほとんどの場合、マルチ(メタ)アクリレートはジ(メタ)アクリレートであるが、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレートなどを用いることもまた想定される。
【0039】
オリゴマーウレタンマルチ(メタ)アクリレートは、例えば、Sartomerから「Photomer 6010」及び「Photomer 6020」などの「Photomer 6000 Series」という商品名で、また「CN966B85」、「CN964」及び「CN972」などの「CN 900 Series」という商品名で、市販品を入手することができる。オリゴマーウレタン(メタ)アクリレートはまた、Surface Specialtiesからも入手可能であり、例えば「Ebecryl 8402」、「Ebecryl 8807」及び「Ebecryl 4827」という商品名で入手可能である。オリゴマーウレタン(メタ)アクリレートはまた、アルキレン又は式OCN−R
3−NCOの芳香族ジイソシアネートとポリオールとの初期反応によっても調製することができる。
【0040】
ほとんどの場合、ポリオールは、式HO−R
4−OHのジオール(式中、R
3はC
2〜100アルキレン基又はアリーレン基であり、R
4はC
2〜100アルキレン基である)である。その場合、中間生成物はウレタンジオールジイソシアネートであり、これは次にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと反応を起こし得る。好適なジイソシアネートとしては、2,2,4−トリメチルヘキシレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートが挙げられる。一般にはアルキレンジイソシアネートが有用である。このタイプの化合物は、2,2,4−トリメチルヘキシレンジイソシアネート、ポリ(カプロラクトン)ジオール及び2−ヘドロキシエチルメタクリレートから調製することができる。少なくとも一部の場合において、ウレタン(メタ)アクリレートは脂肪族であり得る。別の官能性を有する(メタ)アクリレートエステルもまた、挙げることができる。このタイプの化合物の例は、2−(N−ブチルカルバミル)エチル(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェニルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェノキシルエチルアクリレート、t−ブチルフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルチオアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、アルコキシ化フェニルアクリレート、イソボルニルアクリレート及びフェノキシエチルアクリレートである。テトラブロモビスフェノールAジエポキシドと(メタ)アクリル酸の反応生成物もまた好適である。
【0041】
別のモノマーはまた、モノマーN−置換又はN,N−二置換(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドであり得る。これらには、N−アルキルアクリルアミド及びN,N−ジアルキルアクリルアミド、特に、C
1〜4アルキル基を含有するものが含まれる。例は、N−イロプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルアクリルアミドである。
【0042】
更に別のモノマーは、ポリオールマルチ(メタ)アクリレートである。このような化合物は通常、2〜10個の炭素原子を含有する脂肪族ジオール、トリオール、及び/又はテトラオールから調製される。好適なポリ(メタ)アクリレートの例は、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールトリアクリレート(triacylate)(トリメチロールプロパントリアクリレート)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、対応するメタクリレート及び前述のポリオールのアルコキシ化(通常はエトキシ化)誘導体の(メタ)アクリレートである。
【0043】
2つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーは、架橋剤としての機能を果たすことができる。別のモノマーとして使用するのに好適なスチレン化合物としては、スチレン、ジクロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、4−メチルスチレン及び4−フェノキシスチレンが挙げられる。エチレン性不飽和窒素複素環としては、N−ビニルピロリドン及びビニルピリジンが挙げられる。
【0044】
基材として有用な無機材料としては、例えば、ガラス、金属、金属酸化物、及びセラミックが挙げられる。いくつかの実施形態では、無機材料には、ケイ素、酸化ケイ素、ゲルマニウム、ジルコニア、五酸化バナジウム、モリブデン、銅、チタン、二酸化チタン、ヒ化ガリウム、ダイヤモンド、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化インジウムスズ、及び炭化タングステンが含まれる。
【0045】
ナノ構造表面を有する基材は、反射防止特性、光吸収特性、防曇特性、接着力及び耐久性の向上などの1つ以上の望ましい特性を呈し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ナノ構造異方性表面は、上記の定義の項で説明した「水接触角測定」を使用して測定した、約20°未満、約15°未満、又は更には約10°未満の水接触角を有し得る。
【0046】
金属酸化物層
本開示の金属酸化物層は、金属酸化物を含む。金属酸化物は、抗菌効果を有することが知られているものであり得る。ほとんどの医療用途では、金属酸化物は生体適合性でもあり得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物層において使用される金属酸化物としては、酸化銀、酸化銅、酸化金、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。これらの実施形態のうちのいくつかでは、金属酸化物は、Ag
2Oを含むがこれに限定されない酸化銀であり得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、99重量%未満、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、40重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満の非酸化金属を含み得る。金属酸化物層が40重量%を超える非酸化金属を含む場合、物品は、導電性がより高くなり、すなわち、物品の抵抗率が減少し、抗菌剤の放出もまた減少する。
【0047】
金属酸化物層は、任意の好適な手段によって、例えば、物理蒸着法によって形成することができる。物理蒸着法としては、真空又はアーク蒸発、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング及びイオンプレーティングを挙げることができるが、これらに限定されない。好適な物理蒸着法としては、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第4,364,995号、同第5,681,575号及び同第5,753,251号に記載されているものを挙げることができる。
【0048】
反応材料の導入を制御すること、例えば、基材に金属を蒸着している間に、蒸着機器の金属蒸気流中に酸素を導入することにより、金属から金属酸化物への変換を制御することができる。したがって、導入される反応蒸気又は気体の量を制御することによって、金属酸化物層における金属酸化物に対する金属の割合を制御できる。層の所定のレベルで金属を金属酸化物に100%変換するためには、少なくとも化学量論量の酸素含有気体又は蒸気を、金属蒸気流の一部に導入する。酸素含有気体の量が増加すると、金属酸化物層は、より高い重量パーセントの金属酸化物を含有することになる。金属原子、イオン、分子又はクラスターの持続的な放出を達成する能力は、酸素含有気体の量を変化させることによって実現できる。導入される酸素含有気体のレベルが増加すると金属酸化物の量が増加するので、今度は物品から放出される金属イオンが増加する。したがって、より高い重量パーセントの金属酸化物は、例えば、金属イオンなどの抗菌剤の放出を増強することができ、抗菌活性を増加させることができる。
【0049】
金属酸化物層は、薄いフィルムとして形成できる。フィルムは、好適な期間にわたって金属イオンを持続的に放出するのに必要とされる厚さを超えない厚さを有し得る。その点に関して、厚さは、コーティング中の特定の金属(溶解性及び磨耗耐性を変化させる)、及び金属蒸気流に導入される酸素含有気体又は蒸気の量に応じて変化するはずである。金属酸化物層が、その意図された有用性のための物品の寸法許容差又は可撓性を妨げないよう、厚さは十分に薄くする。典型的には、金属酸化物層は、1ミクロン未満の厚さを有する。しかしながら、一定期間にわたって必要とされる金属イオン放出の程度に応じて、厚さを増加させて使用してもよいことが理解される。
【0050】
任意選択の成分
吸収層において使用される吸収材料は、織布又は不織布の綿又はレーヨンを含むが、これらに限定されない任意の好適な材料から製造できる。吸収パッドは、吸収層として使用でき、経皮薬物送達のための薬物、患者においてホルモン又は他の物質をモニタリングするための化学指標を含んでいてもよい、複数の物質を含有するのに有用であり得る。
【0051】
吸収層は、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第5,622,711号及び同第5,633,010号に記載の親水コロイド組成物などの親水コロイド組成物を含んでいてもよい。親水コロイド吸収剤は、例えば、天然親水コロイド、例えばペクチン、ゼラチン、又はカルボキシメチルセルロース(CMC)(Aqualon Corp.(Wilmington,Del.))、半合成親水コロイド、例えば架橋カルボキシメチルセルロース(X4ink CMC)(例えば、Ac−Di−Sol;FMC Corp.(Philadelphia,Pa.))、合成親水コロイド、例えば架橋ポリアクリル酸(PAA)(例えば、CARBOPOL(商標)No.974P;B.F.Goodrich(Brecksville,Ohio))、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい。吸収層は、ポリマーゲル及び発泡体を含む他の合成及び天然親水性材料から製造できる。
【0052】
物品において使用するために好適な接着剤としては、皮膚に対して許容される接着力を提供し、皮膚での使用が許容される(例えば、接着剤は、好ましくは非刺激性及び非感作性であるべきである)任意の接着剤が挙げられる。好適な接着剤は感圧性であり、ある特定の実施形態では、水分蒸発を可能にする比較的高い水蒸気透過率を有する。好適な感圧性接着剤としては、アクリレート系、ウレタン系、ヒドロゲル系、親水コロイド系、ブロックコポリマー系、シリコーン系のもの、ゴム系接着剤(天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴムなどを含む)、並びにこれらの接着剤の組み合わせが挙げられる。接着剤成分は、粘着付与剤、可塑剤、レオロジー調整剤、並びに例えば抗菌剤を含む活性成分を含有していてもよい。好適な接着剤としては、その開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第3,389,827号、同第4,112,213号、同第4,310,509号、同第4,323,557号、同第4,595,001号、同第4,737,410号、同第6,994,904号並びに国際公開第WO2010/056541号、同第WO2010/056543号及び同第WO2014/149718号に記載のものを挙げることができる。
【0053】
好適な剥離ライナーは、クラフト紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル又はこれらの材料のうちのいずれかの複合材からできたものであり得る。一実施形態では、接着被覆材が入っているパッケージが、剥離ライナーとして機能し得る。一実施形態では、ライナーは、フルオロ化合物又はシリコーンなどの剥離剤で被覆されている。例えば、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第4,472,480号は、低表面エネルギーペルフルオロ化合物ライナーを記載している。一実施形態では、ライナーは、シリコーン剥離材で被覆された紙、ポリオレフィンフィルム、又はポリエステルフィルムである。
【0054】
物品において使用されるキャリアは、織布若しくは編布である布地、不織布材料、紙、又はフィルムなどの任意の好適な材料で製造できる。一実施形態では、キャリアは、閉塞層の周縁部に沿っていて、閉塞層から取り外し可能であり、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能な3M Tegaderm(商標)Transparent Film Dressingに使用されているキャリアと類似している。
【0055】
特性
物品の抗菌効果は、例えば、物品をアルコール又は体液若しくは体組織などの水性電解質と接触させ、その結果、Ag
+などの金属イオン、原子、分子又はクラスターが放出されるときに達成され得る。抗菌効果を生じるのに必要な金属の濃度は、金属によって変わる。一般に、抗菌効果は、血漿、血清又は尿などの体液では、10ppm未満の濃度で達成される。いくつかの実施形態では、物品からのAg
+放出濃度は、0.1ppm、0.5ppm、1ppm、2ppm、2.5ppm、3ppm、4ppm、5ppm、6ppm、7ppm、8ppm、9ppm、10ppm又はこれらの値のうちの任意の2つの間の、それら2つの値を含む範囲であり得る。上で議論したとおり、金属酸化物層における金属酸化物の量が増加すると、今度は物品から放出される金属イオンが増加する。例えば、60重量%を超える金属酸化物は、物品からの金属イオンの放出を増強する。したがって、本開示の物品は、非常に効果的な抗菌効果を提供できる。いくつかの実施形態では、物品は、7日以内に細菌増殖の4logを超える減少を呈し得る。いくつかの実施形態では、物品は、7日以内に細菌増殖の6logを超える減少を呈し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示の物品は、50%を超える、100%を超える、150%を超える、200%を超える、300%を超える、400%を超える、500%を超える、又は600%を超える吸収力を有し得る。物品の吸収力は通常、物品が医療用被覆材として使用される場合、創傷液(滲出液)を吸収する能力に関する。吸収力が高い物品は、より多くの滲出液を吸収できる。このことは、例えば、創傷及び周囲の組織に対する浸軟及び刺激のリスク、並びに物品を交換する頻度を減少させるのに寄与し得る。いくつかの実施形態では、本開示の物品は、3分未満、2分未満、又は1分未満の濡れ時間を有し得る。物品の濡れ時間は通常、物品中への液体の吸収速度に関する。濡れ時間がより短ければ、体液管理プロファイル全体を増強することができ、例えば物品を交換する間のタイマー間隔を長くすることができる。創傷治癒の初期において、濡れ時間がより短い物品は液体を迅速に除去することができ、これは感染の潜在的リスクを最小限にする。
【0057】
本開示の様々な例示的な実施形態を、以下の実施形態の列挙により更に示すが、これらの実施形態を、本開示を過度に限定するものと解釈すべきではない。
【0058】
実施形態
1.
閉塞層と、
ナノ構造表面を有する基材と、を含む物品であって、
ナノ構造表面は、金属酸化物層で被覆されており、
金属酸化物層は、金属酸化物を含む、物品。
【0059】
2.金属酸化物層は、99重量%未満の非酸化金属を含む、実施形態1に記載の物品。
【0060】
3.金属酸化物層は、95重量%未満の非酸化金属を含む、実施形態2に記載の物品。
【0061】
4.金属酸化物層は、80重量%未満の非酸化金属を含む、実施形態3に記載の物品。
【0062】
5.金属酸化物層は、40重量%未満の非酸化金属を含む、実施形態4に記載の物品。
【0063】
6.金属酸化物層は、20重量%未満の非酸化金属を含む、実施形態5に記載の物品。
【0064】
7.金属酸化物層は、10重量%未満の非酸化金属を含む、実施形態6に記載の物品。
【0065】
8.金属酸化物層は、5重量%未満の非酸化金属を含む、実施形態7に記載の物品。
【0066】
9.金属酸化物層は、1重量%未満の非酸化金属を含む、実施形態8に記載の物品。
【0067】
10.ナノ構造表面は、異方性ナノ構造を含む、実施形態1に記載の物品。
【0068】
11.異方性ナノ構造は、2:1より大きいアスペクト比を有する、実施形態10に記載の物品。
【0069】
12.金属酸化物は、酸化銀、酸化銅、酸化金、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の物品。
【0070】
13.金属酸化物は酸化銀である、実施形態12に記載の物品。
【0071】
14.酸化銀はAg
2Oである、実施形態13に記載の物品。
【0072】
15.物品のAg
+放出濃度は、3.5ppmを超える、実施形態14に記載の物品。
【0073】
16.物品のAg
+放出濃度は、5ppmを超える、実施形態15に記載の物品。
【0074】
17.物品のAg
+放出濃度は、8ppmを超える、実施形態16に記載の物品。
【0075】
18.金属酸化物層は、物理蒸着により形成される、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の物品。
【0076】
19.基材に重ね合わせた接着剤層を更に含む、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の物品。
【0077】
20.金属酸化物層に重ね合わせた剥離ライナーを更に含む、実施形態1〜19のいずれか1つに記載の物品。
【0078】
21.7日以内に細菌増殖の4logを超える減少を呈する、実施形態1〜20のいずれか1つに記載の物品。
【0079】
22.7日以内に細菌増殖の6logを超える減少を呈する、実施形態1〜21のいずれか1つに記載の物品。
【0080】
23.物品の濡れ時間は3分未満である、実施形態1〜22のいずれか1つに記載の物品。
【0081】
24.物品の濡れ時間は2分未満である、実施形態1〜23のいずれか1つに記載の物品。
【0082】
25.物品の吸収力は50%を超える、実施形態1〜24のいずれか1つに記載の物品。
【0083】
26.
実施形態1に記載の物品を準備すること、及び
物品を対象に適用することを含む、実施形態1に記載の物品の使用方法であって、
物品は、7日以内に細菌増殖の4logを超える減少を呈する、方法。
【実施例】
【0084】
これらの実施例は単に例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲を過度に限定することを意図しない。本開示の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な実施例に記載されている数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、それらの各試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じる、一定の誤差を本質的に含む。少なくとも、また特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではないが、各数値パラメータは、報告される有効桁数に照らし、端数処理技術を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。
【0085】
特に記載のない限り、実施例及び本明細書の他の部分における全ての部、パーセンテージ、比などは、重量に基づき記載される。使用した溶媒及び他の試薬は、特に記載のない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手することができる。
【0086】
提供される本明細書に記載の物品は、スパッタリング堆積により調製した。銀のフィルムを、152mm×152mmの基材上に、マグネトロン物理蒸着により被覆した。フィルムを、バッチコーター内で76.2mmの円形銀ターゲットからスパッタした。真空チャンバー内に据え付けられた基材ホルダー上に基材をセットし、スパッタリング金属ターゲットは、基材ホルダーから上に228.6mmの高さに設置した。チャンバーを2×10−5トルのベース圧力まで排気したのち、アルゴン及び活性酸素のスパッタガスをチャンバー内に入れ、チャンバーの全圧を5ミリトル又は20ミリトルのいずれかに調整した。0.25キロワットの定電力レベルのDC電源を使用して、スパッタリングを開始した。スパッタリング持続時間を変えて、0.05mg/cm
2という単位面積当たりの同じコーティング重量をもたらした。
【0087】
ナノ構造前処理工程
米国特許第5,888,594号及び国際公開第WO2015/013387号に記載されている自作のプラズマ処理システムを本質的に使用して、ナノ構造を得た。全てのポンピングをターボ分子ポンプによって行い、それによりプラズマ加工で従来行われていたよりもはるかに低い作動圧力で作動させるために、円筒電極の幅を42.5インチ(108cm)まで大きくし、プラズマシステム内の2つのコンパートメント間の仕切りを取り外した。ポリマー基材のロールをチャンバー内に取り付け、基材を円筒電極周囲に巻き付け、円筒の反対側の巻取りロールに固定した。巻出し及び巻取り張力は、3ポンド(13.3N)に維持した。チャンバーのドアを閉め、0.5ミリトルのベース圧力までチャンバーをポンプダウンした。次に、酸素及びヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)などの気体をチャンバー中に導入した。作動圧力は、公称で(nominally)5ミリトル又は10ミリトルであった。高周波エネルギー6000ワットの電力を円筒電極に印加することによって、プラズマを発生させた。特定の実施例に記述されている特定の処理時間のために所望される速度でフィルムが送られるように、円筒電極を回転させた。基材片(piece−part substrate)に関しては、サンプルを、ウェブキャリア(web carrier)又は円筒電極表面のいずれかに貼り付けて、特定の実施例に記述されている特定のエッチング時間のために所望される速度で処理した。
【0088】
光透過率の測定
BYK Haze−Gard Plus(BYK Gardiner(Columbia,MD)製)を用いて、ASTM D1003及びD1004に従い、透過率の測定を実施した。
【0089】
表面抵抗率の測定
Fluke 175 True RMS Multimeter又は非接触式抵抗計、Delcomモデル717Bコンダクタンスモニタを使用して、表面抵抗率を測定した。
【0090】
Ag
+放出の測定
電極(Orion Sure−flow IonPlus Silver/Sulfide組み合わせイオン選択性電極、モデル9616BN)スロープを調べた。Ag
+標準溶液を調製した。電極は、0.3、1、10、及び100ppmのAg
+標準溶液中に浸漬することにより毎日校正した。物品の銀イオン放出を以下のとおり評価した。60mLの水、1mLのISA、及び50μLの1000ppm銀標準溶液を、100mLの使い捨てビーカーに加え、撹拌子を加えた。Ag ISE上の初期電位を記録した。3cm
2の物品をビーカーに加え、タイマーを開始した。溶液中の遊離銀イオン濃度を、10秒間隔で、Tiamo 2.4ソフトウェア(Metrohm(Herisau,Switzerland)製)により60分間記録した。
【0091】
log減少試験
修正JIS Z 2801試験法(日本工業規格、日本規格協会(東京、日本))を使用して、物品の抗菌活性を評価した。細菌接種材料を、一部のNutrient Broth(NB)及び499部のリン酸緩衝液の溶液中で調製した。細菌懸濁液の一部(150μl)を、物品の表面に置き、接種した物品を特定の接触時間、27+/−1℃でインキュベートした。インキュベーション後、物品を20mlのD/E Neutralizing Broth中に置いた。Neutralizing broth中の生存菌数を、3M Petrifilm(3M(St.Paul,MN))を使用して測定した。
【0092】
阻害領域試験
阻害領域試験(Kirby−Bauerディスク拡散感受性試験)を使用して、物品の抗菌性浸出化合物に対する細菌の感受性又は抵抗性を測定した。材料のディスクに含浸させた抗菌剤の存在下、Mueller−Hinton寒天培地上で、微生物を増殖させた。ディスクの周囲に領域が存在するか又は存在しないかが、その化合物がその微生物を阻害する能力の間接的な尺度である。
【0093】
吸収力試験
銀を被覆した吸収性物品を重量測定し[W(0)]、次に、T時間水中に浸漬した。特定の時間(T)で水中から物品を取り出し、再度重量測定した[W(T)]。吸収された水の重量[W(T)−W(0)]を、吸収性物品の初期重量[W(0)]で割って吸収力を計算し、これを特定の時間での吸収力%として報告した。
【0094】
基材濡れ時間(完全な浸漬までの時間)試験
着色した水の液滴を銀被覆吸収性物品に添加し、その水滴が物品に完全に吸収された時間を記録することにより、濡れ時間を測定した。
【0095】
実施例1及び比較例1
400gmの75nmシリカ粒子(Nalco Chemical Co.から「NALCO 2329K」という商品名で入手)を、1クォート(0.95リットル)の広口瓶に入れた。450グラムの1−メトキシ−2−プロパノール、9.2グラムの3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、及び0.23グラムのヒンダードアミン窒素酸化物阻害剤(BASF Specialty Chemicalsから「PROSTAB 5128」という商品名で入手)(水溶液、5重量%阻害剤)を一緒に混合し、撹拌しながら広口瓶に加えた。広口瓶を密封し、16時間80℃に加熱して、表面改質されたシリカ分散体を生成した。ロータリーエバポレーター(rotary evaporation)により混合物から水分を更に除去して、42.4重量%の75nm SiO2の1−メトキシ−2−プロパノール溶液を生成した。
【0096】
7.1gmの42.4%機能化75nm SiO2溶液、12gmのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(Sartomer製、商品名「SR351」)、31gmのイソプロパノール及び0.15gmのIGARCURE 184(BASF Specialty Chemicals製)をブレンドし、混合して、コーティング溶液を生成した。マイヤーロッド(Meyer rod)(#4バー)コーティング装置を使用して、コーティングを5milのPETに適用した。
【0097】
換気フード内で室温で5分間、被覆基材を乾燥させ、次に、ハロゲン電球(H−Bulb)を備えたUV処理装置を使用して、窒素雰囲気下で50fpm(15.24メートル/分)で硬化させた。次に、5ミリトルで180秒の処理時間にわたって、硬化した被覆基材を上記のO2プラズマナノ構造処理に供した。
【0098】
O2プラズマエッチング処理有り及び無しの被覆基材を、20ミリトルの流速で6.3%O2スパッタガスを使用して上記のスパッタリング堆積工程によって、銀で更に被覆した。Agイオン放出の結果を
表1に示す。
【表1】
【0099】
実施例2及び比較例2
ポリプロピレン布を、Midwest Filtration CoからUNIPRO 150 SMSという商品名で入手し、上記のナノ構造処理により前処理した。第1のガス種は、20sccmの流速で供給されたヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)蒸気であり、第2のガス種は、500sccmの流速で供給された酸素であった。曝露中の圧力はおよそ10ミリトルであり、6000ワットの電力でプラズマを発生させた。処理時間は約54秒であった。次に、ナノ構造処理有り及び無しのポリプロピレン布を、20ミリトルで6.8%O2のガス混合物を使用してスパッタリング堆積によって、銀で被覆した。それらのAg+放出及びlog増殖試験の結果を、
表2に示す。
【表2】
【0100】
実施例3
3MウレタンAeroフォームを、実施例2のプラズマ処理によって前処理し、20ミリトルで29%O2のガス混合物を使用してスパッタリング堆積によって、Agで更に被覆した。被覆サンプルをlog減少試験によって試験したところ、試験時間2時間の時点で4.5logを超える減少を達成し、4.5logを超える減少という殺菌効果を7日間まで維持した。被覆サンプルの吸収力は500%を超える。
【0101】
本明細書に引用した全ての参照文献及び刊行物は、それらの全体が参照により本開示に明示的に援用される。本発明の例示的な実施形態を論じ、本発明の範囲内の可能な変形形態に言及してきた。例えば、ある例示的な実施形態との関連で示した特徴は、本発明の他の実施形態との関連で使用できる。本発明におけるこれら及び他の変形形態及び修正形態は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者には明らかであり、本発明が本明細書に記載の例示的な実施形態に限定されないことを理解すべきである。したがって、本発明は、下に記載の特許請求の範囲及びそれらの均等物によってのみ、限定されるべきである。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1−15に記載する。
項目1
閉塞層と、
ナノ構造表面を有する基材と、
を含む物品であって、
前記ナノ構造表面は、金属酸化物層で被覆されており、
前記金属酸化物層は、金属酸化物を含む、物品。
項目2
前記金属酸化物層は、99重量%未満の非酸化金属を含む、項目1に記載の物品。
項目3
前記金属酸化物層は、95重量%未満の非酸化金属を含む、項目2に記載の物品。
項目4
前記ナノ構造表面は、異方性ナノ構造を含む、項目3に記載の物品。
項目5
前記異方性ナノ構造は、2:1より大きいアスペクト比を有する、項目4に記載の物品。
項目6
前記金属酸化物は、酸化銀、酸化銅、酸化金、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、及びこれらの組み合わせから選択される、項目1〜5のいずれか一項に記載の物品。
項目7
前記金属酸化物は酸化銀である、項目6に記載の物品。
項目8
前記酸化銀はAg2Oである、項目7に記載の物品。
項目9
前記物品のAg+放出濃度は、3.5ppmを超える、項目8に記載の物品。
項目10
前記物品のAg+放出濃度は、5ppmを超える、項目9に記載の物品。
項目11
前記物品のAg+放出濃度は、8ppmを超える、項目10に記載の物品。
項目12
前記金属酸化物層は、物理蒸着により形成される、項目1〜11のいずれか一項に記載の物品。
項目13
前記物品は、7日以内に細菌増殖の4logを超える減少を呈する、項目1〜12のいずれか一項に記載の物品。
項目14
前記物品は、7日以内に細菌増殖の6logを超える減少を呈する、項目1〜13のいずれか一項に記載の物品。
項目15
項目1に記載の物品を準備すること、及び
前記物品を対象に適用すること
を含む、項目1に記載の物品の使用方法であって、
前記物品は、7日以内に細菌増殖の4logを超える減少を呈する、方法。