特許第6843090号(P6843090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843090
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】血清アルブミンに結合するタンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20210308BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210308BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20210308BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20210308BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20210308BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210308BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210308BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C07K16/18ZNA
   A61K39/395 D
   C12N15/13
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P21/08
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-76201(P2018-76201)
(22)【出願日】2018年4月11日
(62)【分割の表示】特願2014-516279(P2014-516279)の分割
【原出願日】2012年6月14日
(65)【公開番号】特開2018-127478(P2018-127478A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2018年5月7日
(31)【優先権主張番号】61/500,464
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ドンブレヒト,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】スホット,ピーテル
(72)【発明者】
【氏名】フェルフェルケン,セドリック・ヨーゼフ・ネオテレ
【審査官】 植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−539772(JP,A)
【文献】 特表2010−505435(JP,A)
【文献】 特表2010−518062(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/108937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/18
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直接的にか又は場合により1つ以上の適切なリンカーもしくはスペーサーを介してのいずれかで連結される、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する、アミノ酸配列Alb−23(配列番号1)又はAlb−23の変異体、及び1つ以上の別の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか又は本質的にからなるポリペプチドであって、変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と1〜7アミノ酸の相違を有し、CDR1が、アミノ酸配列SFGMS(配列番号29)であり、CDR2が、アミノ酸配列SISGSGSDTLYADSVKG(配列番号30)であり、CDR3が、アミノ酸配列GGSLSR(配列番号31)であり、位置5のアミノ酸が、Lであり、位置16のアミノ酸が、Gであり、位置44及び45のアミノ酸が、GPであり、位置74〜76のアミノ酸が、SKNであり、位置83のアミノ酸が、Rであり、位置は、カバットのナンバリングにしたがって配列番号1において規定されている、ポリペプチド。
【請求項2】
1つ以上の他の免疫グロブリン単一可変ドメインが、1つ以上の治療免疫グロブリン単一可変ドメインである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
1つ以上の他の免疫グロブリン単一可変ドメインが、1つ以上のナノボディである、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
1つ以上の他のナノボディが、一価ナノボディ、二価ナノボディ、多価ナノボディ、二重特異的ナノボディ、又は多重特異的ナノボディ構築物である、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
少なくとも1つ(〜全部)の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はナノボディが、少なくとも2つのジスルフィド架橋を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
少なくとも1つ(〜全部)のナノボディが、VHHクラス1のナノボディである、請求項3〜5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
場合により、遺伝子構築物の形態である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現し、及び/又は、請求項7に記載の核酸を含む、宿主又は宿主細胞。
【請求項9】
宿主が前記ポリペプチドを産生又は発現する条件下で請求項8に記載の宿主を培養又は維持する工程、及び場合により前記ポリペプチドを単離する工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチドを調製するための方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、及び場合により少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチドの薬学的に有効な量を、その必要がある対象に、投与することを含む、少なくとも1つの疾病又は疾患の予防及び/又は治療のための医薬組成物の製造における請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清アルブミンに結合することのできるアミノ酸配列;このようなアミノ酸配列を含むかまたは本質的にからなるタンパク質およびポリペプチド;このようなアミノ酸配列、タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸;このようなアミノ酸配列、タンパク質およびポリペプチドを含む組成物、特に薬学的組成物;並びに、このようなアミノ酸配列、タンパク質およびポリペプチドの使用に関する。
【0002】
本発明の他の局面、態様、利点および適用は、本明細書のさらなる記載から明らかとなろう。
【0003】
いずれの用語も本明細書において特に定義されていなければ、これらの用語は、国際公開公報第2009/068627号または国際公開公報第06/122787号においてそれらに与えられた意味を有する。本明細書において使用されるいずれの用語も、本明細書または国際公開公報第2009/068627号/国際公開公報第06/122787号において特に定義されていなければ、それらは当技術分野におけるその通常の意味を有し、例えばそれは標準的なハンドブックに言及されている。
【0004】
ヒト血清アルブミンに結合することのできるアミノ酸配列、並びに治療関連タンパク質およびポリペプチドの半減期を増加させるためのポリペプチド構築物におけるその使用は、当技術分野において公知である。
【0005】
例えば、出願人による国際公開公報第04/041865号は、他のタンパク質(例えば所望のターゲットに対して指向される1つ以上の他のナノボディ)の半減期を増加させるために前記タンパク質に連結させることのできる、血清アルブミンに対して(特にヒト血清アルブミンに対して)指向されるナノボディを記載している。
【0006】
国際出願の国際公開公報第06/122787号は、(ヒト)血清アルブミンに対する多くのナノボディを記載している。これらのナノボディとしては、Alb−1(国際公開公報第06/122787号における配列番号52)およびそのヒト化変異体、例えばAlb−8(国際公開公報第06/122787号における配列番号62)と呼ばれるナノボディが挙げられる。[Nanobody(登録商標)およびNanobodies(登録商標)はAblynx N.V.の商標である]。ここでも、これらを使用して、治療タンパク質およびポリペプチド並びに他の治療成分または部分の半減期を延長させることができる。
【0007】
本出願の最初の出願日において、ナノボディなどの治療部分の半減期を延長させるための(ヒト)血清アルブミンに対するナノボディの使用は、臨床試験によって検証されてきた。例えば、RANK−Lに対する2つのナノボディおよびヒト血清アルブミンに対する1つのナノボディを含むタンパク質構築物である、ALX−0141の安全性、耐容性、免疫原性および薬物動態(PK)が第I相臨床試験において確認された(データはロンドンにおける欧州リウマチ学会(EULAR)で2011年5月27日にAblynx N.V.によって提示された)。また、Ablynx N.V.の数多くの公開特許出願は、治療ターゲットに対する1つ以上のナノボディおよび血清アルブミンに対する1つ以上のナノボディ(例えばAlb−8)を含む半減期の増加した構築物の例を示す。例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号、国際公開公報第2009/068627号および国際公開公報第2009/147248号に言及されている。
【0008】
(ヒト)血清アルブミンに対するナノボディ(例えば国際公開公報第04/041865号および国際公開公報第06/122787号に記載のもの、特に国際公開公報第06/122787号に記載のAlb−1のヒト化変異体)の使用が、ナノボディ並びに他の治療部分および成分の半減期の延長のための良好で広範囲に適用可能な方法を提供することが確立されているが、これは、当業者がこの目的のためにヒト血清アルブミンに対するさらに改良されたナノボディを自由に使えることから利益が得られないことを意味するものではない。
【0009】
本発明は、ヒト血清アルブミンに対して指向されるこのような改良されたナノボディ(「Alb−23」と呼ばれる;配列番号1を参照されたい)、並びにこのナノボディの多くの変異体(本明細書においては「Alb−23様配列」または「Alb−23変異体」とも呼ばれる、いくつかの非限定的な例としては配列番号3〜11を参照されたい)、並びにそれを含む化合物、ポリペプチドおよび他の(タンパク質)構築物(本明細書においてさらに記載されているような)を提供する。
【0010】
配列番号1の改良されたナノボディおよびその変異体が、国際公開公報第04/041865号および国際公開公報第06/122787号に記載のナノボディを上回って提供することのできる利点は、本明細書におけるさらなる記載から明らかとなろう。例えばであって限定するものではないが、これらの利点は、
− 改良された安定性(例えばTmを測定することによって決定されるような改良された熱安定性);および/または
− および/または例えば実施例5に記載されたSEC実験で測定されるような、改良された保存安定性;および/または
− 特定の製剤化条件下で(例えば、特定の水性の製剤化バッファー中で高濃度で、ここでも例えば実施例5を参照されたい)二量体を形成する傾向が低いこと
を含み得る。
【0011】
さらに、配列番号1の改良されたナノボディおよびその変異体は、「VHH−1クラス」に属するVHHおよびナノボディなどの、1つを上回るジスルフィド橋を含む(本明細書においてさらに記載されているように、2つまたはさらには3つのジスルフィド橋を含み得る)免疫グロブリン単一可変ドメインの半減期を延長するのに特に適している。例えばであって限定するものではないが、VHH−1クラスの1つ以上の治療用VHH/ナノボディおよびナノボディAlb−23(またはAlb−23変異体)を含むポリペプチドは、特定の宿主または宿主細胞において、配列番号1のアミノ酸配列の代わりに「Alb−8」(国際公開公報第06/122787号における配列番号62)などの国際公開公報第06/122787号に記載の血清アルブミン結合ナノボディを含む対応するポリペプチドよりも、より良好な発現レベル(および/または一般的に、発現、精製および/または産生/製造の点において他の有利な特性)を有し得ることが判明した。ここでも、これは、本明細書におけるさらなる記載および実験部から明らかとなろう。
【0012】
本発明のこれらおよび他の利点、並びに種々の局面、態様、使用および適用は、本明細書におけるさらなる記載から明らかとなろう。
【0013】
ナノボディ、VHH、(単一)ドメイン抗体、dAb、IgNARドメインおよびマイクロボディ(例えば国際公開公報第00/29004号に記載のような)などの免疫グロブリン単一可変ドメインは、多くの宿主細胞および宿主生物、例えば細菌細胞、例えばE.coli、酵母株、例えばPichiaおよびSaccharomyces、並びに種々の哺乳動物細胞または細胞株において発現させることができることが知られている。例えば、欧州特許第0 656 946号および欧州特許第0 698 097号、並びにAblynx N.V.からの種々の公開特許出願、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号、国際公開公報第2009/068627号または国際公開公報第2009/147248号に言及されている。
【0014】
同様に、治療ターゲットに対して指向される1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを、(ヒト)血清アルブミンに対して指向されるナノボディ(国際公開公報第04/041865号および国際公開公報第06/122787号に記載のものなど)に連結させて、半減期の増加した(すなわち治療ドメイン単独と比較して)構築物を提供する場合、得られたポリペプチドおよび構築物も、多くの宿主細胞および宿主生物、例えば細菌細胞、例えばE.coli、酵母株、例えばPichiaおよびSaccharomyces、並びに種々の哺乳動物細胞または細胞株において発現させることができることが知られている。ここでも、国際公開公報第04/041865号、国際公開公報第06/122787号、国際公開公報第2010/056550号、および本明細書に記載されたAblynx N.V.の種々の公開特許出願に言及されている。
【0015】
また、全てのVHHおよびナノボディが22位のシステイン残基と92位のシステイン残基との間に少なくとも1つのジスルフィド橋を含むことが一般的に知られている(ナンバリングはKabatに従う、Ablynx N.V.の特許出願を参照されたい)。
【0016】
大半のVHHは、この単一のジスルフィド橋のみを含んでいるが、いくつかのVHHは全部で2つ(または例外的な場合では3つ)のジスルフィド橋を含むことも知られている。例えば、「VHH−1型」または「VHH−1クラス」と称されるVHHおよびナノボディのクラスは、一般的に、50位のシステイン残基(CDR2の最初のアミノ酸残基)とCDR3に存在するシステイン残基との間に第2のジスルフィド橋を有する(このようなVHHおよびナノボディは、また、44位から47位に配列モチーフEREGを有することが多い)。また、ラクダに由来するいくつかのVHHは、時に、CDR1に存在するシステイン残基とCDR3に存在するシステイン残基との間に1つのジスルフィド橋を有する。
【0017】
このようなVHH−1型ナノボディのいくつかの非限定的な例(説明のためだけに示される;他のターゲットに対する他のVHH−1型配列は、Ablynx N.V.のいくつかの他の特許出願に見られ得る)は、国際公開公報第2009/068627号からの配列P23ILPMP37D5(配列番号2490)およびP12ILPMP80F10(配列番号1954);国際公開公報第2008/020079号からの配列PMP30A2(配列番号419)、PMP31C5(配列番号413)およびPMP30G11(配列番号416);並びに国際公開公報第2009/147248号からの配列RSVPMP5A2(配列番号262)、RSVPMP5B2(配列番号263)およびRSVPMP5C3(配列番号264)である。
【0018】
前以て公開されていない米国特許出願第61/388,172号(2010年9月30日に出願および題名は「Biological materials related to c-Met」)および米国特許第61/451,869号(2011年3月11日に出願および題名は「Biological materials related to c-Met」)(両方共にAblynx N.V.に帰する)は、治療ターゲットc−Metに対して指向されるVHHおよびナノボディを記載し;そしてこれらのVHHおよびナノボディのいくつか(例えば4E09、米国特許第61/451,869号における配列番号26および本明細書における配列番号12、並びに米国特許第61/451,869号に記載された4E09のいくつかの変異体)もまた、VHH−1クラスに属する。
【0019】
米国特許第61/388,172号および米国特許第61/451,869号はまた、このようなVHH−1型ナノボディを、ヒト血清アルブミンに対するナノボディと連結させて、その半減期を増加させることができることを記載する(米国特許第61/388,172号および米国特許第61/451,869号において使用されたヒト血清アルブミンに対するナノボディは「Alb−11」と呼ばれ、そして米国特許第61/451,869号において配列番号5で示される。Alb−11は、Alb−8と同じアミノ酸配列を有し、これは国際公開公報第06/122787号において配列番号62である)。Alb−11および4E09を含むこのようなポリペプチドの一例が、米国特許第61/451,869号の配列番号9に示されている。
【0020】
VHH−1型のVHH/ナノボディ(またはより一般的には2または3つのジスルフィド橋を含むVHH/ナノボディ)、並びにそれを含むポリペプチドおよび他のタンパク質構築物(増加した半減期を提供するために血清アルブミンに対する少なくとも1つのナノボディをさらに含むこのようなポリペプチドを含む)は任意の適切な宿主または宿主生物において発現させることができるが、このようなVHH、ナノボディ、ポリペプチドまたは構築物について得られた発現レベルは、VHH−1クラスに属さないVHHまたはナノボディを含む(またはより一般的には、唯一つのジスルフィド橋を有するVHH/ナノボディを含む)類似/同等なVHH、ナノボディ、ポリペプチドまたは構築物について得られた発現レベルよりも有意により低い場合があることが判明した。例えばであって限定するものではないが、Pichiaにおいて、Alb−8およびVHH−1型ではない1つ以上の治療ナノボディを含むポリペプチドについて0.8g/l以上(例えば1g/l以上)の発現レベルを日常的に達成することができたが(ここでも、Ablynx N.V.のいくつかの公開特許出願を参照されたい)、抗c−Met VHH−1型ナノボディ4E09(米国特許第61/451,869号における配列番号26および本明細書における配列番号12)またはそのヒト化変異体およびAlb−8を含むポリペプチドについては0.5g/lを超える発現レベルを達成することは困難であることが判明した(以下の実験章を参照されたい)。驚くべきことに、今般、配列番号1のナノボディをこのようなポリペプチド中に(Alb−8の代わりに)使用すると、有意により高い発現レベルを得ることができることが判明した(以下の実験章を参照されたい)。
【0021】
記載されているように、第1の局面において、本発明は、本質的に以下のアミノ酸配列:
【化1】

からなるまたはである、(ヒト)血清アルブミンに対して指向されるアミノ酸配列に関する。
【0022】
このアミノ酸配列はまた、本明細書において「Alb−23」または「本発明のアミノ酸配列」と称される。Alb−23は、アミノ酸配列「Alb−1」のヒト化バージョンである(国際公開公報第06/122787号からの配列番号52、およびまた国際公開公報第06/122787号においては「PMP6A6」と称される)。
【0023】
便宜上、図1は、Alb−23と、国際公開公報第06/122787号の表IIIに開示されたAlb−1およびAlb−1のヒト化バージョン(国際公開公報第06/122787号においては「Alb−3」から「Alb−10」と呼ばれる、また、国際公開公報第06/122787号の配列番号57〜64も参照されたい)のアラインメントを示す。Alb−1のアミノ酸配列は:
【化2】

である。
【0024】
上の配列において、Alb1とAlb−23との間の主な差異は太文字で示し、強調している。これらは(ナンバリングはKabatに従う、例えば国際公開公報第2008/020079号の表A−5からA−8を参照されたい;各文字は、標準的な1文字アミノ酸コードに従ってアミノ酸残基を表示する、それは国際公開公報第2008/020079号の表A−2に言及されている)、5位においてVからLへ;16位においてNからGへ;44位および45位においてEPからGPへ;74位から76位においてAKTからSKNへ;83位においてKからRへである。
【0025】
従って、さらなる局面において、本発明は、配列Alb−1(配列番号2)の変異体であるアミノ酸配列に関し、前記変異体は:
(i)44位および45位においてアミノ酸モチーフGP;
(ii)74位から76位においてアミノ酸モチーフSKN;
(iii)アミノ酸配列SFGMS(配列番号29)であるCDR1;
(iv)アミノ酸配列SISGSGSDTLYADSVKG(配列番号30)であるCDR2;
(v)アミノ酸配列GGSLSR(配列番号31)であるCDR3
を含み、そして好ましくはまた、
(vi)16位にG
を含み、
そして好ましくは(しかし限定するものではなく):
(vii)83位はR(しかし場合によりKでもよい)であり;
そしてさらに(すなわち、16位、44位および45位、74位から76位および83位における前記のアミノ酸の相違に加えて、16位および83位におけるアミノ酸の相違は任意であるが好ましい)、配列番号2で示された配列に対して1〜7つ、例えば1〜5つのさらなる「アミノ酸の相違」(国際公開公報第2008/020079号に定義したような)を含み、これは、例えば、1つ以上のヒト化置換(国際公開公報第2008/020079号に定義したような;例えばここでも表A−5からA−8を参照されたい)および/または他の置換であり得る(このようなヒト化または他の置換の非限定的な例は、1位においてAからEへ、14位においてPからAへ、または108位においてQからLへである)。
【0026】
同様に、本発明は、配列Alb−23(配列番号1)の変異体であるアミノ酸配列に関し、前記変異体は:
(i)44位および45位においてアミノ酸モチーフGP;
(ii)74位から76位においてアミノ酸モチーフSKN;
(iii)アミノ酸配列SFGMS(配列番号29)であるCDR1;
(iv)アミノ酸配列SISGSGSDTLYADSVKG(配列番号30)であるCDR2;
(v)アミノ酸配列GGSLSR(配列番号31)であるCDR3
を含み、そして好ましくはまた、
(vi)16位にG
を含み、
そして好ましくは(しかし限定するものではなく):
(vii)83位はR(しかし場合によりKでもよい)であり;
そしてさらに配列番号1で示された配列に対して1〜7つ、例えば1〜5つのさらなる「アミノ酸の相違」(国際公開公報第2008/020079号に定義したような)を含み、これは、例えば、1つ以上のヒト化置換(国際公開公報第2008/020079号に定義したような;例えばここでも表A−5からA−8を参照されたい)および/または他の置換であり得る(このようなヒト化または他の置換の非限定的な例は、1位においてAからEへ、14位においてPからAへ、または108位においてQからLへである)。
【0027】
当業者には明らかであるように、そしてAlb−23(の使用)が一般的に本発明の文脈内で好ましいが、前の段落で記載された変異体は、Alb−23と、Alb−23に特徴的である(これもまた国際公開公報第06/122787号に記載のAlb−1のヒト化変異体と比較して)いくつかの同じアミノ酸置換(すなわちAlb−1と比較して)を共有し、従って、Alb−23について本明細書において記載された利点の少なくともいくつかまたはさらには全てを提供すると予期される。これらの理由から、これらの変異体もまた、本明細書において「Alb−23様配列」または「Alb−23変異体」と称される。
【0028】
1つの特定でしかし非限定的な局面において、Alb−23変異体は、実施例5に記載された保存安定性アッセイにおいて使用した場合(すなわち、IGE045および9GSリンカーをさらに含む構築物の一部として)、25℃で1ヶ月間(実施例5に示されたさらなる条件下において)保存した後のAlb−23変異体を含む構築物についてのSE−HPLCでのプレピークは、10%未満、好ましくは5%未満であり;そして/または40℃で1ヶ月間(実施例5に示されたさらなる条件下において)保存した後のAlb−23変異体を含む構築物についてのSE−HPLCでのプレピークは20%未満、好ましくは15%未満である。例えば、表8の比較の結果に言及されている。
【0029】
いくつかのAlb−23様配列のいくつかの非限定的な例は、配列番号3〜11に示されている。配列番号6〜11の変異体(または、天然に存在するアミノ酸残基から各々独立して選択され得、そして例えばA、G、V、LおよびIから独立して選択され得る、1〜3つのアミノ酸残基をC末端に有する他のAlb−23変異体)は、アルブミン結合ナノボディがポリペプチドまたはタンパク質構築物のC末端に付与された場合には特に使用され得る。Alb−23と、配列番号6〜11の配列とのアラインメントを図2に示す。
【0030】
【化3】

【0031】
従って、1つの特定であるが非限定的な局面において、本発明は、本質的にアミノ酸配列Alb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)からなるタンパク質またはポリペプチドを提供する。
【0032】
本明細書においてさらに記載されているように、本明細書において記載されたアミノ酸配列Alb−23およびさらなるAlb−23変異体は、ポリペプチド、タンパク質、化合物(小分子を含むがそれらに限定されない)または他の治療成分などの治療部分の半減期を増加させるために、部分、結合ユニットまたは融合対として有利に使用され得る。
【0033】
従って、別の局面において、本発明は、アミノ酸配列Alb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)および1つ以上の他のアミノ酸配列、(結合)ドメイン、結合ユニットまたは他の部分もしくは化学成分を含むまたは本質的にからなる、ポリペプチド、タンパク質、構築物、化合物または他の化学成分を提供する。
【0034】
特に、本発明は、互いに直接的にまたは1つ以上の適切なリンカーもしくはスペーサーを介してのいずれかで適切に連結された、アミノ酸配列Alb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)および1つ以上(例えば1または2つ)の治療部分(これは同じであってもまたは異なっていてもよく、そして例えば、同じターゲットに対して指向されていてもまたは異なるターゲットに対して指向されていてもよく、そして同じターゲットに指向されている場合には、前記ターゲットの同じまたは異なるエピトープ、部分、ドメインまたはサブユニットに対して指向され得る)を含む、ポリペプチド、タンパク質、構築物、化合物または他の化学成分を提供する。このようなポリペプチド、タンパク質または構築物は、例えばであってこれに限定されることはないが、本明細書においてさらに記載されているような、融合タンパク質であり得る。
【0035】
本発明はさらに、このようなポリペプチド、タンパク質、構築物または化合物の治療使用、およびこのようなポリペプチド、タンパク質、構築物または化合物を含む薬学的組成物に関する。
【0036】
1つの局面において、少なくとも1つの治療部分は、治療タンパク質、ポリペプチド、化合物、因子または他の成分を含むかまたは本質的にからなる。好ましい態様において、治療部分は、所望の抗原またはターゲットに対して指向され、所望の抗原に結合することができ(特に所望の抗原に特異的に結合することができ)、そして/または所望のターゲットと相互作用することができる。別の態様において、少なくとも1つの治療部分は、治療タンパク質またはポリペプチドを含むかまたは本質的にからなる。さらなる態様において、少なくとも1つの治療部分は、結合ドメインもしくは結合ユニット、例えば免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン配列(免疫グロブリンのフラグメントを含むがそれに限定されない)、例えば抗体もしくは抗体フラグメント(ScFvフラグメントを含むがそれに限定されない)、または別の適切なタンパク質骨格、例えばプロテインAドメイン(例えばAffibodies(登録商標))、テンダミスタット、フィブロネクチン、リポカリン、CTLA−4、T細胞レセプター、設計アンキリンリピート、アビマー(avimer)およびPDZドメイン(Binz et al., Nat. Biotech 2005, Vol 23:1257)、並びにDNAもしくはRNAに基づいた結合部分(DNAまたはRNAアプタマーを含むがそれらに限定されない)(Ulrich et al., Comb Chem High Throughput Screen 2006 9(8):619-32)を含むかまたは本質的にからなる。
【0037】
さらに別の局面において、少なくとも1つの治療部分は、抗体可変ドメイン、例えば重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインを含むかまたは本質的にからなる。
【0038】
好ましい局面において、少なくとも1つの治療部分は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」またはナノボディ(例えばVHH、ヒト化VHHまたはラクダ化VH)またはIgNARドメインを含むかまたは本質的にからなる。
【0039】
特定の態様において、少なくとも1つの治療部分は、少なくとも1つの一価ナノボディまたは二価、多価、二重特異的または多重特異的ナノボディ構築物を含むかまたは本質的にからなる。
【0040】
Alb−23(またはAlb−23変異体)および1つ以上の治療部分を含む、ポリペプチド、(融合)タンパク質、構築物または化合物は、一般的に上で引用された従来技術(例えば国際公開公報第04/041865号および国際公開公報第06/122787号)に記載されているように、しかし前記の従来技術に記載された半減期を増加させる部分の代わりにAlb−23またはAlb−23変異体を用いて(調製および使用)され得る。
【0041】
Alb−23(またはAlb−23変異体)および1つ以上の治療部分を含む、ポリペプチド、(融合)タンパク質、構築物または化合物は、一般的にそして好ましくは、治療部分または部分群単独と比較して、増加した半減期を有するだろう。
【0042】
一般的に、本明細書に記載された構築物または融合タンパク質は、好ましくは、対応する治療部分単独の半減期に対して(ヒトまたは適切な動物、例えばマウスまたはカニクイザルのいずれかで測定されるような)、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍、または20倍を超えた半減期を有する。
【0043】
また、好ましくは、任意のこのような融合タンパク質または構築物は、ヒトにおいて、対応する治療部分単独の半減期と比較して、1時間を超える、好ましくは2時間を超える、より好ましくは6時間を超える、例えば12時間を超えて増加した半減期を有する。
【0044】
また、好ましくは、任意の融合タンパク質または構築物は、ヒトにおいて、1時間を超える、好ましくは2時間を超える、より好ましくは6時間を超える、例えば12時間を超える、例えば約1日間、2日間、1週間、2週間または3週間、好ましくは2ヶ月間を超えない半減期を有するが、後者はあまり重要ではない場合がある。
【0045】
半減期は、一般的に、例えばリガンドの分解および/または自然機序によるリガンドのクリアランスまたは捕獲に因り、血清中ポリペプチド濃度が、in vivoにおいて50%減少する時間と定義することができる。特に、半減期は国際公開公報第2009/068627号に定義されている通りであり得る。
【0046】
薬物動態解析および半減期の決定のための方法は、当業者にはよく知られている。詳細は、Kenneth, A et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for PharmacistsおよびPeters et al, Pharmacokinete analysis: A Practical Approach (1996)に見出され得る。Marcel Dekkerによって刊行された「Pharmacokinetics」, M Gibaldi & D Perron、改訂第2版(1982)にも言及されている。
【0047】
記載されているように、1つの局面において、アミノ酸配列Alb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)を使用して、(1つ以上の)免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」、VHHまたはナノボディ(例えばVHH、ヒト化VHHまたはラクダ化VH、例えばラクダ化ヒトVH)の半減期を増加させることができる。
【0048】
特に、本明細書に記載されているように、アミノ酸配列Alb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)を有利に使用して、2つ以上(例えば2または3つ)のジスルフィド橋を含む免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばVHH−1クラスのVHH/ナノボディの半減期を増加させることができる。
【0049】
従って、本発明の1つの態様は、互いに直接的にまたは場合により1つ以上の適切なリンカーもしくはスペーサーを介してのいずれかで適切に連結された、アミノ酸配列Alb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)および1つ以上(例えば1または2つ)の免疫グロブリン単一可変ドメイン配列を含む、ポリペプチド、構築物または融合タンパク質に関する。本明細書に記載されているように、このようなポリペプチド、構築物または融合タンパク質に存在する各々のこのような免疫グロブリン単一可変ドメインは、独立して、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」またはナノボディ(例えばVHH、ヒト化VHHまたはラクダ化VH、例えばラクダ化ヒトVH)であり得;そして1つの特定であるが非限定的な局面によると、これらの免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つ(および最大全部)は、2または3つのジスルフィド橋を含む。
【0050】
好ましくは、各々のこのような免疫グロブリン単一可変ドメインはナノボディであり;そして1つの特定であるが非限定的な局面によると、これらの免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つ(および最大全部)は、VHH−1クラスのナノボディである。
【0051】
例えばであって限定するものではないが、このような構築物、融合タンパク質またはポリペプチドは:
− 1コピーのAlb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)および1つのこのような免疫グロブリン単一可変ドメイン配列;
− 1コピーのAlb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)および2つのこのような免疫グロブリン単一可変ドメイン配列(これは同じであっても異なっていてもよい);
またはさらには(通常必要とされずあまり好ましくはないが、なぜなら得られるタンパク質がより大きいからである)
− 2コピーのAlb−23(または本明細書に記載された2コピーのAlb−23変異体、これは同じであっても異なっていてもよい)および1つのこのような免疫グロブリン単一可変ドメイン配列;
− 2コピーのAlb−23(または本明細書に記載された2コピーのAlb−23変異体、これは同じであっても異なっていてもよい)および2つのこのような免疫グロブリン単一可変ドメイン配列(これは同じであっても異なっていてもよい);
− 1コピーのAlb−23および3つのこのような免疫グロブリン単一可変ドメイン配列(これは同じであっても異なっていてもよい)
を含み得る。
【0052】
本発明の構築物、融合タンパク質またはポリペプチドのいくつかの非限定的な例は、以下のように図で示され得、「[Alb−23]」はAlb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)を示し、「[治療部分1]」および「[治療部分2]」は治療部分(これは記載されているように、各々独立して、免疫グロブリン単一可変ドメインであり得る)を示し、「−」は適切なリンカー(これは任意である)を示し、そしてN末端は左手側であり、そしてC末端は右手側である:
[Alb−23]−[治療部分1]
[治療部分1]−[Alb−23]
[Alb−23]−[治療部分1]−[治療部分1]
[治療部分1]−[治療部分1]−[Alb−23]
[治療部分1]−[Alb−23]−[治療部分1]
[Alb−23]−[治療部分1]−[治療部分2]
[治療部分1]−[治療部分2]−[Alb−23]
[治療部分1]−[Alb−23]−[治療部分2]。
【0053】
2つ以上の異なる治療部分(例えば2つ以上の異なる免疫グロブリン単一可変ドメイン)が本発明の構築物またはポリペプチドに存在する場合、それらは同じであってもまたは異なっていてもよく、そしてそれらが異なっている場合には、同じターゲットに対して(例えば、前記ターゲットの同じまたは異なる部分、ドメイン、サブユニットまたはエピトープに対して)指向されていてもまたは異なるターゲットに対して指向されていてもよい。
【0054】
従って、別の局面において、本発明は、Alb−23(または本明細書に記載されたAlb−23変異体の1つ)並びに少なくとも1つの他のナノボディ(例えば1または2つの他のナノボディ、これは同じであってもまたは異なっていてもよい)(前記の少なくとも1つの他のナノボディは、好ましくは、所望のターゲット(これは好ましくは治療ターゲットである)に対して指向される)および/または別のナノボディ(治療、予防および/または診断目的に有用または適切である)を含む、多重特異的(特に二重特異的)ナノボディ構築物に関する。ここでも、Alb−23および他のナノボディは、互いに直接的にまたは場合により1つ以上の適切なリンカーもしくはスペーサーを介してのいずれかで適切に連結され得、そして1つの特定であるが非限定的な局面によると、他のナノボディの少なくとも1つ(および最大全部)は、VHH−1クラスであり得る。
【0055】
1つ以上のナノボディを含む多価および多重特異的ポリペプチドおよびその調製の一般的な記載については、Conrath et al., J. Biol. Chem., Vol. 276, 10. 7346-7350, 2001; Muyldermans, Reviews in Molecular Biotechnology 74 (2001), 277-302;並びに例えば国際公開公報第96/34103号、国際公開公報第99/23221号、国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号または国際公開公報第2009/068627号にも言及されている。
【0056】
本発明のいくつかの特定の多重特異的および/または多価ポリペプチドのいくつかの他の例は、本明細書に記載されたAblynx N.V.による出願にも見出すことができる。特に、半減期を増加させるための血清タンパク質に対する少なくとも1つのナノボディを含む多価および多重特異的構築物、それをコードする核酸、それを含む組成物、前記の調製、および前記の使用の一般的な記載については、上記の国際出願の国際公開公報第04/041865号および国際公開公報第06/122787号(本明細書に記載されたAlb−23およびAlb−23変異体は、一般的に、Alb−8などのそこに記載された半減期を延長するナノボディと同じように使用することができる)、並びに国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号または国際公開公報第2009/068627号に示されたこのような構築物の一般的な記載および具体例に言及されている。
【0057】
1つの非限定的な態様において、このようなポリペプチドまたはタンパク質構築物に存在する1つ以上の他のナノボディは、c−Metに対して指向され得、そして特に、c−−Metに対して指向されるI型ナノボディであり得る。このようなポリペプチドまたはタンパク質構築物に存在し得るc−Metに対するナノボディのいくつかの非限定的な例は、例えば、本明細書に記載された前以て公開されていない米国出願の米国特許第61/388,172号および米国特許第61/451,869号に見出され得る。
【0058】
このような多価および/または多重特異的ポリペプチドに存在し得るc−Metに対する1つの特に好ましいI型ナノボディ(Alb−23またはAlb−23変異体の次に)は、4E09(米国特許第61/451,869号の配列番号26および本明細書の配列番号12)またはその変異体である。このような4E09の変異体は、一般的に、米国特許第61/451,869号に記載されている通りであり得(そして一般的に、4E09に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%またはそれ以上、例えば95%またはそれ以上の配列同一性を有する)、そして好ましくは(i)それがc−Metへの結合に関して4E09と競合する(実施例7に記載されたalphascreenアッセイなどの適切な結合アッセイにおいて、しかし実施例7に使用されたようなHGFの代わりに4E09を使用して);および/または(ii)それがc−Met上の4E09と同じエピトープと結合する;および/または(iii)c−Metに対する4E09の結合を交差遮断する(国際公開公報第2009/068627号に定義されているように)ようなものである。このような4E09の変異体は、例えば、4E09のヒト化および/または配列最適化変異体(米国特許第61/451,869号にさらに記載されているような)であり得る。このようなタンパク質またはポリペプチドに存在し得る4E09の変異体のいくつかの好ましいが非限定的な例は、以下であり、これはまた米国特許第61/451,869号にも記載されている;04E09(L49S);04E09(C50S/C100bG);04E09(C22A/C92S);A00790067 =4E09(Q108L);A00790068=4E09(A74S,K83R,Q108L);A00790069=4E09(A74S,K83R,G88A,Q108L)およびA00790105=4E09(E1D,A74S,K83R,G88A,Q108L)(後者が特に好ましい)。4E09およびこれらの変異体のアミノ酸配列は、配列番号12〜19に示される。
【0059】
従って、1つの特定であるが非限定的な局面において、本発明は、c−Metに対する1または2つのナノボディに適切に連結された(直接的にまたは1つ以上の適切なリンカーを介してのいずれかで)、Alb−23(好ましい)またはAlb−23変異体(本明細書において記載したような)を含むかまたは本質的にからなるポリペプチドまたはタンパク質構築物に関する。記載されているように、特定であるが非限定的な局面によると、c−Metに対する前記の1または2つのナノボディは、2つのジスルフィド橋を含む(すなわち「クラスI」である)。
【0060】
特に、本発明は、4E09(配列番号12)または4E09の変異体(本明細書および米国特許第61/451,869号に記載されているような)、好ましくは4E09のヒト化または配列最適化変異体、より好ましくはA00790105(配列番号19)である、c−Metに対する1または2つ(好ましくは唯1つ)のナノボディに適切に連結された(直接的にまたは1つ以上の適切なリンカーを介してのいずれかで)、Alb−23(好ましい)またはAlb−23変異体(本明細書に記載されているような)を含むかまたは本質的にからなる、ポリペプチドまたはタンパク質構築物に関する。
【0061】
このようなタンパク質およびポリペプチドのいくつかの特定であるが非限定的な例は、構築物Alb23−9GS−4E09、4E09−9GS−Alb23、Alb23−9GS−A00790105、A00790105−9GS−Alb23、Alb23−35GS−4E09、4E09−35GS−Alb23、Alb23−35GS−A00790105、A00790105−35GS−Alb23およびA00790105−35GS−A00790105−35GS−Alb23である。これらの配列は、それぞれ配列番号20〜28に示される。これらの中で、構築物A00790105−9GS−Alb23(配列番号23)が特に好ましく、従って、本発明の1つの局面はまた、配列番号23のポリペプチドに対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチドに関する。
【0062】
本発明はまた、本明細書に記載されたアミノ酸配列、融合タンパク質および構築物をコードするヌクレオチド配列または核酸に関する。本発明はさらに、前記のヌクレオチド配列または核酸およびそれ自体公知である遺伝子構築物のための1つ以上のエレメントを含む遺伝子構築物を含む。遺伝子構築物は、プラスミドまたはベクターの形態であり得る。ここでも、このような構築物は、一般的に、Ablynx N.V.の公開特許出願、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号または国際公開公報第2009/068627号に記載された通りであり得る。
【0063】
本発明はまた、このようなヌクレオチド配列もしくは核酸を含む、および/または本明細書に記載されたアミノ酸配列、融合タンパク質および構築物を発現する(または発現することのできる)、宿主もしくは宿主細胞に関する。ここでも、このような宿主細胞は、一般的に、Ablynx N.V.の公開特許出願、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号または国際公開公報第2009/068627号に記載された通りであり得る。
【0064】
本発明はまた、本明細書に記載されたようなアミノ酸配列、融合タンパク質または構築物を調製するための方法に関し、前記方法は、本明細書に記載されたような宿主細胞を、前記宿主細胞が、本明細書に記載されたようなアミノ酸配列、融合タンパク質または構築物を産生または発現する条件下で培養または維持することを含み、そして場合によりさらに、このようにして産生されたアミノ酸配列、融合タンパク質または構築物を単離することを含む。ここでも、このような方法は、Ablynx N.V.の公開特許出願、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号または国際公開公報第2009/068627号に一般的に記載された通りに実施され得る。
【0065】
本発明はまた、本明細書に記載されたような少なくとも1つのアミノ酸配列、融合タンパク質または構築物、および場合により少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、薬学的組成物に関する。このような調製物、担体、賦形剤および希釈剤は、一般的に、Ablynx N.V.の公開特許出願、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号または国際公開公報第2009/068627号に記載された通りであり得る。
【0066】
しかしながら、本明細書に記載されたアミノ酸配列、融合タンパク質または構築物は増加した半減期を有するので、それらは好ましくは循環中に投与される。従って、それらは、アミノ酸配列、融合タンパク質または構築物が循環中に入ることを可能とする任意の適切な方法で、例えば注射または点滴を介して静脈内に、あるいは、アミノ酸配列、融合タンパク質または構築物が循環中に入ることを可能とする任意の他の適切な方法で(経口投与、皮下投与、筋肉内投与、皮膚を通した投与、鼻腔内投与、肺を介した投与などを含む)投与され得る。適切な投与法および投与経路は、ここでもまた、例えばAblynx N.V.の公開特許出願、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号または国際公開公報第2009/068627号の教義から当業者には明らかであろう。
【0067】
従って、別の局面において、本発明は、本明細書に記載されたような融合タンパク質または構築物の使用によって予防または治療することのできる少なくとも1つの疾病または疾患の予防および/または治療のための方法に関し、前記方法は、それを必要とする被験体に、薬学的に有効な量の本発明の融合タンパク質または構築物、および/またはそれを含む薬学的組成物を投与することを含む。本明細書に記載されたような融合タンパク質または構築物の使用によって予防または治療することのできる疾病および疾患は、一般的には、本発明の融合タンパク質または構築物に存在する治療部分の使用によって予防または治療することのできる疾病および疾患と同じである。
【0068】
本発明の文脈において、「予防および/または治療」という用語は、疾病を予防および/または治療することを含むだけでなく、一般的に、疾病の発症の予防、疾病の進行の遅延もしくは逆行、疾病に関連した1つ以上の症状の発症の予防もしくは遅延、疾病に関連した1つ以上の症状の低減および/または寛解、疾病および/またはそれに関連した任意の症状の重度および/または持続期間の低減、および/または疾病および/またはそれに関連した任意の症状の重度のさらなる増加の予防、疾病によって引き起こされた任意の生理学的損傷の予防、低減もしくは逆行、並びに一般的には処置される患者に対して有益なあらゆる薬理学的作用を含む。
【0069】
処置しようとする被験体は、任意の恒温動物であり得るが、特に哺乳動物であり、より特定するとヒトである。当業者には明らかであるように、処置しようとする被験体は、特に、本明細書に記載された疾病および疾患を患うまたはそのリスクがあるヒトである。
【0070】
別の態様において、本発明は、免疫療法のための、特に受動免疫療法のための方法に関し、前記方法は、本明細書に記載された疾病および疾患を患うまたはそのリスクのある被験体に、薬学的に有効な量の本発明の融合タンパク質もしくは構築物および/またはそれを含む薬学的組成物を投与することを含む。
【0071】
融合タンパク質もしくは構築物および/またはそれを含む組成物は、予防または治療しようとする疾病または疾患を予防および/または治療するに適した処置計画に従って投与される。臨床医は、一般的に、予防または治療しようとする疾病または疾患、処置しようとする疾病の重度および/またはその症状の重度、使用しようとする本発明の具体的なポリペプチド、具体的な投与経路、並びに使用しようとする薬学的製剤または組成物、患者の年齢、性別、体重、食事、全般的な状態、並びに臨床医には公知の類似の因子などの、因子に依存して、適切な処置計画を決定することができる。
【0072】
一般的に、処置計画は、1つ以上の薬学的に有効な量または投与量での、本発明の1つ以上の融合タンパク質もしくは構築物、またはそれを含む1つ以上の組成物の投与を含む。投与しようとする具体的な量または投与量は、ここでも上で引用した因子に基づいて臨床医によって決定され得る。
【0073】
一般的に、本明細書において記載された疾病および疾患の予防および/または処置のために、処置しようとする具体的な疾病または疾患、使用しようとする具体的な融合タンパク質または構築物の作用強度および/または半減期、具体的な投与経路、並びに使用される具体的な薬学的製剤または組成物に依存して、本発明のナノボディおよびポリペプチドは、一般的に、連続的に(例えば点滴によって)、1日1回量としてまたは1日の中に複数回分割した投与量としてのいずれかで、一日あたり1g〜0.01μg/kg(体重)、好ましくは一日あたり0.1g〜0.1μg/kg(体重)、例えば一日あたり約1、10、100または1000μg/kg(体重)の量で投与される。臨床医は、一般的に、本明細書に記載された因子に依存して適切な1日量を決定することができるだろう。また、特定の場合、臨床医は、例えば上に引用した因子および臨床医の専門的な判断に基づいて、これらの量から逸脱することを選択し得ることも明らかである。一般的には、投与しようとする量に対するいくつかのアドバイスを、同じ経路を本質的に介して投与される同じターゲットに対する同等な慣用的な抗体または抗体フラグメントのために通常投与される量から、しかしながら当業者には公知の親和性/結合力、効力、体内分布、半減期および類似の因子の差異を考慮して得ることができる。
【0074】
通常、上の方法において、本発明の単一のポリペプチドが使用される。しかしながら、本発明の2つ以上のポリペプチドを組み合わせて使用することも本発明の範囲内である。
【0075】
本発明のポリペプチドはまた、1つ以上のさらなる薬学的に活性な化合物または成分と組み合わせて、すなわち組合せ処置計画として使用されてもよく、これは相乗作用をもたらしてももたらさなくてもよい。ここでも臨床医は、このようなさらなる化合物または成分、並びに適切な組合せ処置計画を、上で引用した因子および臨床医の専門的な判断に基づいて選択することができるだろう。
【0076】
特に、本発明のポリペプチドは、本発明の融合タンパク質または構築物を用いて予防または治療することのできる疾病および疾患の予防および/または治療のために使用されるまたは使用することのできる他の薬学的に活性な化合物または成分と組合せて使用され得、その結果として、相乗作用が得られても得られなくてもよい。
【0077】
本発明に従って使用される処置計画の効力は、臨床医には明らかであるように、関与する疾病または疾患についてそれ自体公知である任意の方法で決定および/または追跡され得る。臨床医は、適宜またはケースバイケースで、特定の処置計画を変更または改変することができ、これにより、所望の治療効果を達成し、望ましくない副作用を回避、制限または減少させ、そして/または、一方で所望の治療効果を達成することと、他方で望ましくない副作用を回避、制限もしくは減少させることの間の適切なバランスを達成することができる。
【0078】
一般的には、処置計画は、所望の治療効果が達成されるまで、そして/または所望の治療効果を維持しようとする限り続けられる。ここでも、これは臨床医によって決定され得る。
【0079】
処置しようとする被験体は任意の恒温動物、特に哺乳動物、より特定するとヒトであり得る。当業者には明らかであるように、処置しようとする被験体は、特に、本明細書に記載された疾病および疾患を患うまたはそのリスクがあるヒトである。
【0080】
本発明の他の局面、態様、利点および適用は、本明細書のさらなる記載から明らかとなろう。
【0081】
本発明は、ここで、非限定的な実験部および図面によってさらに説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1図1は、Alb−23(配列番号1)と、国際公開公報第06/122787号に記載されたAlb−1およびその種々のヒト化変異体のアラインメントである。
図2図2は、Alb−23(配列番号1)と、本明細書に記載されたいくつかのAlb−23変異体のアラインメントである。
図3-1】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図3-2】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図3-3】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図3-4】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図3-5】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図3-6】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図3-7】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図3-8】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図3-9】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図3-10】図3は、本明細書に言及された種々の配列を示す。
図4図4は、低い(L=1)および高い(H=1を超える)コピー数(CN)の発現カセットを用いてPichiaクローンによって産生されたA007900009のSDS−PAGE分析を使用した発現プロファイルを示す。
図5図5は、低い(L=1)および高い(H=1を超える)コピー数(CN)の発現カセットを用いてPichiaクローンによって産生されたA007900171のSDS−PAGE分析を使用した発現プロファイルを示す。
図6図6は、低い(L=1)および高い(H=1を超える)コピー数(CN)の発現カセットを用いてPichiaクローンによって産生されたA007900057およびA007900058のSDS−PAGE分析を使用した発現プロファイルを示す。
図7図7は、低い(L=1)および高い(H=1を超える)コピー数(CN)の発現カセットを用いてPichiaクローンによって産生されたA007901219変異体のSDS−PAGE分析を使用した発現プロファイルを示す。
図8図8は、Pichia pastorisにおけるA00700171およびA00701219の発現の誘導終了時の発酵試料のSDS−Page(非還元条件)を示す。5μLの無細胞培地をゲル上にローディングする(レーン1〜4)。レーン5〜7は種々の量でローディングされた対照ナノボディを含む。左のレーンは分子量マーカーを含む。
【実施例】
【0083】
実験部:
実施例1:Alb11またはAlb23と組み合わせた4E09の発現プロファイル
表1は、Alb11およびAlb23と組み合わせた抗c−Met4E09VHH1ナノボディビルディングブロック(配列番号12)に基づいたフォーマットの概要を示す。種々のナノボディをpPiczalpha発現ベクターにクローニングし、そしてPichia pastoris X-33株(Invitrogen/RCTから市販されている発現系)において形質転換した。クローンを、ゼオシン含有プレート上で選択し、そしてqPCRを実施して、そのコピー数に従ってクローンを順位付けした。振とうフラスコ実験において低いコピー数のクローンと高いコピー数のクローンとの間の発現レベルを比較した。発現レベルとコピー数との間の逆相関がAlb11含有フォーマットにおいて観察された(図4および5)。対照的に、発現レベルとコピー数の間の正の相関が、Alb23ナノボディを含むナノボディフォーマットで観察された(図6および7)。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例2:Alb11またはAlb23と組み合わせた4E09の発酵収量
A007900171(最適化された4E9配列−9GS−Alb11)およびA007901219(最適化された4E9配列−9GS−Alb23)Nanobody(登録商標)の発現を、宿主生物としてPichia pastoris X33を使用して評価した。AOXプロモーター(MeOH誘導性プロモーター)およびGAPプロモーター(構成性誘導性プロモーター)の両方を評価した。
【0086】
ペプトンをベースとした複合培地を、発酵プロセスに使用した。AOXプロモーターを使用したX33クローンを用いての発酵のために、MeOHを、ナノボディの発現のために使用した。要するに、このプロセスは3つの期間に分類することができる:バッチ期、グリセロールフェッドバッチ期、およびMeOH誘導期。バッチ期およびグリセロールフェッドバッチ期の間、バイオマスは約40%まで構築された(湿重量/容量)。その後、MeOH適応期および誘導期を開始し、その間にNanobody(登録商標)が発現されそして培地中に分泌された。
【0087】
GAPプロモーターを使用したX33クローンを用いての発酵のために、グルコースを使用してNanobody(登録商標)の発現を誘導した。このプロセスもまた3つの期間に分類することができる:グリセロール上でのバッチ期、約40%(湿重量/容量)までバイオマスを構築する高いフィード速度を使用したグルコースフェッドバッチ期、およびNanobody(登録商標)の発現/分泌をさらに誘導するためのより低いフィード速度での2回目のグルコースフェッドバッチ期。
【0088】
全ての発酵を、Sartorius装置(Biostat(登録商標)Aplus、Biostat(登録商標)BplusおよびBiostat(登録商標)Bplusツインコントローラー、2L Univessel(登録商標)リアクター、MFCSwinソフトウェアを介してコントロール)を使用して2Lの発酵規模で実施した。発酵中、以下のパラメーターをモニタリング/導いた:DO(溶存酸素)、pH、気泡化、バイオマス(E.coliについてはOD600およびPichia pastorisについては湿細胞重量(WCW))、発現レベル、および産物の品質。DOは典型的には30%であり、そして撹拌カスケードを介してコントロールされ、そして必要に応じて純粋な酸素の添加によりさらに補われた。pHはpH電極を介してモニタリングされ、そしてベースポンプ(base pump)を介したアンモニアの添加を介して調整された。オフラインでのpH測定を行ない、オートクレーブ後に機能しているpH電極を確認した。
【0089】
表2は、宿主生物としてPichia pastorisを使用してA007900171およびA007901219の発現のために実施された発酵の操作の概要を示す。
【0090】
図8は、Pichia pastorisを用いての種々の発酵の誘導終了時の試料のSDS−Page分析(非還元条件)を示す。
【0091】
表3において、種々のPichia pastorisを用いての発酵と、そのそれぞれのパラメーター設定、発酵特徴、およびSDS−Page分析に基づいた誘導終了時の試料の推定される発現収量の概要が示されている。
【0092】
発酵終了時に産生されるNanobody(登録商標)の力価および純度は、小規模のプロテインAクリーンアップ手順、その後のRP−HPLC分析を介して決定された。要するに、試料の調製は、培地からNanobody(登録商標)を精製するプロテインAアフィニティクロマトグラフィーに基づく。溶出画分のタンパク質濃度は、UV分光光度法を使用して決定され、そして逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって追跡され、これにより産物の力価および産物の純度/不均一性の決定が可能となる。表4はRPCの結果を要約する。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
実施例3:A007900171およびA007901219の精製
A007900171分子およびA007901219分子の両方を、表5に示されたスキームに従って精製した。
【0097】
【表5】
【0098】
実施例4:Alb−1、Alb−8(=Alb−11)およびAlb−23の特性の比較
Alb−1、Alb−8およびAlb−23の種々の特性を決定し、そして比較した。結果を表6に示す。
【0099】
また、Alb−8およびAlb−23が二量体を形成する傾向の対照比較のために、PBSバッファー中での種々の温度における一価Alb−8(Ea=73.0kcal/mol)およびAlb−23(Ea=50.8kcal/mol)の二量体化動態を、アレニウスプロットから計算した。結果を表7に示し、そしてAlb−11について、動態は、特にAlb−23と比較して、室温から上昇し始めることを示す。
【0100】
【表6】
【0101】
【表7】
【0102】
実施例5:Alb−11と比較してAlb−23を含む構築物の保存安定性
Alb−8およびAlb−23をそれぞれ含む二重特異的構築物の保存安定性を比較するために、Alb−23(IGE045−9GS−ALB23;配列番号41)およびAlb−11(IGE045−9GS−ALB11;配列番号42)に連結されたIgE(IgE045、配列番号43)に対する同じナノボディを含む2つの二重特異的ナノボディ構築物を調製し、50mg/mlの濃度でD−PBSバッファー中で製剤化し、そしてプラスチックPCRチューブ中で暗闇下で1ヶ月間、種々の温度で保存した。その後、プレピークの量(二量体の形成に相当する)を決定し、そしてSE−HPLCを使用して比較した。SE−HPLC分析を、BioSep SEC−2000カラム(Phenomenex)およびランニングバッファーとしてD−PBSを使用して、0.2ml/分の流速で実施した。10μgの材料を注入し、そしてデータをChromeleonソフトウェアを使用して分析した。結果を表8に示す。
【0103】
類似の実験において、2つの三価二重特異的構築物の保存安定性を比較した(20mM Hisバッファー、pH6.5、8%スクロース中50mg/mlの濃度で)。構築物は、Alb−11およびOX40Lに対する2つのナノボディ(2010年12月14日に出願されたAblynx N.V.のPCT/EP2010/069606の配列番号229を参照されたい)を含む三価二重特異的ナノボディ構築物であるOX40L079(配列番号44)、およびOX40Lに対する同じ2つのナノボディと、Alb−11の代わりにAlb−23とを含む対応する構築物であるOX40L089(配列番号45)であった。結果をまた表8Aに示す。
【0104】
【表8】
【0105】
別の実験において、c−Metに対する4つの異なるナノボディ構築物(A007901222/配列番号46;A007901256/配列番号47;A007901259/配列番号48およびA007901260/配列番号49)の発酵収量と保存安定性を比較した。これらの構築物の中で、A007901222は、Alb−23アルブミン結合ナノボディ(本発明)並びに「VHH−1型」抗c−Metナノボディ(4E09−ここでも、上で言及した米国特許出願第61/388,172号および米国特許第61/451,869号を参照されたい)を含み、一方、他の構築物(比較参照として使用される)は、Alb−11アルブミン結合ナノボディおよびVHH−1型ではない抗c−Metナノボディを含む。使用される構築物のより詳細な説明については、2012年3月30日に出願された出願人による同時係属中の米国特許出願第13/435,567号(Beste et al.)に言及されている。
【0106】
種々のナノボディ構築物がPichia pastorisにおいて産生され(ここでも米国特許第13/435,567号、米国特許第61/388,172号および米国特許第61/451,869号を参照されたい)、そして幅広く同等な発酵収量をもたらし(1.03g/L;A007901256については1.43g/L;A007901259については0.91g/LおよびA007901260については1.45g/L)、このことは本発明が、VHH−1型ナノボディを含まない構築物の発現収量と同等である発現収量を有するVHH−1型ナノボディを含む構築物を提供することを可能とすることを確認する。
【0107】
その後、ナノボディ構築物を精製し(SECで99%超の純度およびRPCで90%超の純度)、そして−70℃、−20℃、5℃、25℃および40℃でD−PBS中約15mg/mlの濃度で7.5週間かけてインキュベーションした。試料を、濁度測定(OD500)、RP−HPLCおよびSE−HPLCによって評価した。結果を表8Bに要約する。安定性は、−70℃、−20℃または5℃で7.5週間保存した場合に試験した全ての試料について許容可能であった。
【0108】
【表9】
【0109】
実施例6:表面プラズモン共鳴を使用した親和性の決定
ヒト、カニクイザルおよびマウスの血清アルブミンに対する抗c−Metナノボディ−Alb融合構築物A007900171(配列番号40)およびA007901219(配列番号23)の動態解析を、Biacore T100装置で表面プラズモン共鳴を使用して実施した。HBS−EP+バッファー(0.15M NaCl、3mM EDTAおよび0.05%界面活性物質p20を含む0.01M HEPESバッファー、pH7.4)をランニングバッファーとして使用し、そして実験は25℃で実施された。血清アルブミンを、5μl/分の流速で流れる手作業による固定化によってカルボキシメチル化デキストラン表面を有するシリーズSセンサーチップチップCM5に化学的に結合させた。表面をまず、75mg/mlのEDCおよび11.5mg/mlのNHSの1:1混合物(Biacoreアミンカップリングキット)の7分間かけての注入を用いて活性化した。ヒト、カニクイザルおよびマウス血清アルブミンについてそれぞれ970RU(フローセル2)、890RU(フローセル3)および1360RU(フローセル4)のレベルに到達するまで、10mMアセテートpH4.5中10μg/mlの血清アルブミンを注入した。固定化後、表面を、1MエタノールアミンpH8.5の7分間かけての注入を用いて不活性化した。ブランクのリファレンス表面(フローセル1)を前記のように活性化および不活性化した。一連のナノボディ濃度をHBS−EP+(すなわち0nM、1.9nM、7.8nM、31.25nM、125nM、500nM、0nM、7.8nM、125nM)中で調製し、45μl/分で2分間かけて注入し(流路1、2、3および4)、そしてランニングバッファー中で10分間かけて解離させた。種々の試料の間では、表面を、45μl/分で100秒間かけて再生バッファー10mMグリシン−HCl(pH1.5)を用いて再生した。データは、リファレンスチャネルでの曲線およびブランクランニングバッファー注入曲線の減算によって二重参照した。加工された曲線は、Biacore T100評価ソフトウェアの結合曲線に1:1の結合モデルを当てはめることによって評価された。結合速度(on-rates)(ka)、解離速度(off-rates)(kd)および親和性(KD)を報告し、そして表9に示す。
【0110】
【表10】
【0111】
実施例7:AlphascreenアッセイにおけるMET−リガンドHGFの結合
抗c−MET/抗血清アルブミンナノボディ構築物を、HGF−cMET競合AlphaScreenアッセイにおいて特徴付けて、その遮断作用強度および効力を評価し、そしてこれを、基準抗体フラグメント(5D5 Fab v2)と比較した。250nMから始まり0.9pMまでの抗c−METナノボディおよび基準5D5 Fab v2の希釈シリーズを、100pMのビオチニル化hHGFと共に15分間かけて室温でインキュベーションした。この混合物に、抗ヒトFcコンジュゲートアクセプタービーズおよびc−MET/Fc(100pMの最終濃度)を加え、そして室温で2時間インキュベーションした。次に、ストレプトアビジンドナービーズを加え、そして混合物をさらに1時間インキュベーションした。680nmの励起波長および520nmの発光波長を使用してEnVisionマルチラベルプレートリーダーでプレートを解読することによって蛍光を測定した。
【0112】
2つの構築物が、用量依存的にc−METレセプターへのHGFの結合を効率的に阻害する。計算されたIC50値および対応する95%信頼区間を表10に示す。A007900171および2つのバッチのA007901219は、類似したIC50値を有し;その95%CIは重複し、このことは、差異が統計学的に有意ではないことを示唆する。ナノボディは、基準5D5 Fab v2と比較して5倍を超える改善された作用強度を示した。
【0113】
【表11】
【0114】
実施例8:A549ガン細胞株におけるHGFにより誘導されたMETリン酸化の遮断
精製された抗c−MET/抗血清アルブミンナノボディ構築物は、HGF依存性リン酸化アッセイにおいて特徴付けられた。1μMから開始して0.23nMまでの抗cMET構築物または抗cMET基準5D5 Fab v2の希釈シリーズを、1nMのHGFと共に、A549細胞上で15分間の間、37℃で共にインキュベーションした。その後、溶解細胞溶液の1/3をホスホc−MET MSDアッセイプレートにアプライした。細胞培養レベルに関して2つの同じものがMSDレベルにプールされた。結合していない材料を洗浄除去した後、スルホでタグ化した検出用cMET抗体は、リン酸化されたレセプター並びにリン酸化されていないレセプターの両方を検出した。解読は、sectorイメージャー2400を用いて実施された。
【0115】
2つの抗c−MET/抗血清アルブミンナノボディ構築物が、HGF依存性c−METレセプターリン酸化を用量依存的に効率的に阻害する。計算されたIC50値および対応する95%信頼区間を11に示す。A007900171および2つのバッチのA007901219は類似したIC50値を有し;その95%CIは重複し、このことは、差異が統計学的に有意ではないことを示唆する。ナノボディは、基準5D5 Fab v2と比較して約2倍の改善された作用強度を示した。さらに、95%信頼区間内で、刺激された細胞へのヒト血清アルブミンの添加は、試験されたナノボディのIC50値を変化させなかった。
【0116】
【表12】
【0117】
本出願全体を通して引用した全ての参考文献(参考文献、発行された特許、公開特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)の全内容が、特に本明細書において参照された教義のために、本明細書において参照により明確に組み入れられる。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図3-8】
図3-9】
図3-10】
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]