【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は独立請求項の主題によって解決され、さらなる実施形態が従属請求項に組み込まれる。以下で説明する本発明の態様は、組織検査のための装置、システム、及び方法、並びにコンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体にも適用されることに留意されたい。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、組織検査のための装置が提供される。装置は、データ入力部と、組織マイクロアレイ分析ユニットと、出力部とを備える。データ入力部は、組織サンプルブロックから得られた参照スライスの参照画像を受け取り、少なくとも組織サンプルブロックから得られた少なくとも1つの組織コアを含むマイクロアレイスライスのマイクロアレイ画像を受け取り、参照画像及びマイクロアレイ画像を組織マイクロアレイ分析ユニットに供給するように構成される。組織マイクロアレイ分析ユニットは、組織サンプルブロック内のそれぞれの組織コアの空間的配置に基づいて少なくとも1つの組織コアの組織コア画像を参照画像に位置合わせするように構成される。出力部は、さらなる分析目的のために組織マイクロアレイ分析ユニットから得られた位置合わせ結果を供給するように構成される。
【0007】
その結果、組織コア画像は、組織の参照画像(例えば、スライド画像全体)において対応する位置に配置される。これにより、オペレータ、例えば、病理医は、元の組織のスライド画像全体との関連で組織コアの染色結果を解釈することができる。
【0008】
本発明の一例によれば、組織マイクロアレイ分析ユニットは、位置合わせされた組織コア画像の形態学的情報に基づいて位置合わせされた組織コア画像内の注目する特徴を識別するようにさらに構成される。追加として、組織マイクロアレイ分析ユニットは、形態学的情報に基づいて参照画像の周辺区域における一致する特徴を認識するように構成される、ここにおいて、周辺区域はそれぞれの位置合わせされた組織コア画像を囲む。さらに、組織マイクロアレイ分析ユニットは、染色パターンがそれぞれの位置合わせされた組織コア画像の周囲を通って、及び越えて続くように、位置合わせされた組織コア画像内の注目する特徴の染色パターンを周辺区域における一致する特徴中に伸展させるように構成される。
【0009】
その結果、1つ又は複数の組織コアの外側の区域への染色結果の伸展又は外挿が、組織コアの周りにデジタル染色を作り出し、それにより、マニュアルのスコアリング及び解釈が容易になる。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、組織検査のためのシステムが提供される。システムは、画像供給装置と、上記の例及び以下の例のうちの1つに従った組織検査のための装置とを備える。画像供給装置は、組織サンプルブロックから得られた参照スライスの参照画像を供給するように構成される。画像供給装置は、少なくとも組織サンプルブロックから得られた少なくとも1つの組織コアを含むマイクロアレイスライスのマイクロアレイ画像を供給するようにさらに構成される。加えて、画像供給装置は、組織検査のための装置に参照画像及びマイクロアレイ画像を供給するように構成される。
【0011】
その結果、システムは、組織コア画像と、元の組織の参照画像、例えばスライド画像全体との形態学的情報の組合せを可能にし、それにより、例えば全腫瘍のサンプル全体の組織コア画像の状況を理解することがより容易になる。
【0012】
本発明の一例によれば、システムはディスプレイをさらに備える。ディスプレイは、分析目的のために、位置合わせされた組織コア画像を参照画像と組み合わせて表示するように構成される。
【0013】
その結果、位置合わせ結果は、染色結果のよりよい解釈のために、オペレータ、例えば病理医に視覚的に提示される。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、組織検査のための方法が提供される。この方法は、
a)組織サンプルブロックから得られた参照スライスの参照画像を供給するステップと、
b)少なくとも組織サンプルブロックから得られた少なくとも1つの組織コアを含むマイクロアレイスライスのマイクロアレイ画像を供給するステップと、
c)組織サンプルブロック内のそれぞれの組織コアの空間的配置に基づいて少なくとも1つの組織コアの組織コア画像を参照画像と位置合わせするステップと、
d)分析目的のために、位置合わせされた組織コア画像を参照画像と組み合わせて供給するステップと
を有する。
【0015】
その結果、これにより、全組織における組織コアの状況を理解しやすくなる。
【0016】
組合せは、いくつかの方法で実現される。例えば、位置合わせされた組織コア画像は、重ね合わせて参照画像と組み合わされる。さらなる例では、位置合わせされた組織コア画像は参照画像に挿入される。
【0017】
本発明の一例によれば、ステップa)に対して、
a1)組織サンプルブロックから参照スライスを生成するステップと、
a2)参照スライスから画像を参照画像として生成するステップと
が提供される。
【0018】
ステップa1)において、コントラストを増強し、特定の形態学的特徴を見えるようにするために、画像を生成する前に、参照スライスは、例えば、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)染料で染色される。例えば、参照画像は、検査されるべき組織のスライド画像全体である。
【0019】
本発明の一例によれば、ステップb)に対して、
b1)ブロック構造内に配置された少なくとも1つの組織コアを含むマイクロアレイブロックを作り出すステップと、
b2)マイクロアレイブロックの少なくとも1つのマイクロアレイスライスを生成するステップと、
b3)マイクロアレイスライスの画像を組織マイクロアレイ画像として生成するステップと
が提供される。
【0020】
本発明の一例によれば、ステップb2)において、少なくとも1つのマイクロアレイスライスが染色される。オプションとして、少なくとも1つのマイクロアレイスライスは、参照スライスと違うように染色される。
【0021】
言い換えれば、少なくとも1つのマイクロアレイスライスは、注目する特定の特徴の形態学的情報を見えるようにするために少なくとも1つの染色プロトコルにより染色される。さらに、タンパク質又は核酸などのバイオマーカーは染色対象物である。
【0022】
本発明の一例によれば、この方法は、
f)位置合わせされた組織コア画像の形態学的情報に基づいて、位置合わせされた組織コア画像内の注目する特徴を識別するステップと、
g)形態学的情報に基づいて参照画像の周辺区域における一致する特徴を認識するステップであって、周辺区域はそれぞれの位置合わせされた組織コア画像を囲むステップと、
h)染色パターンがそれぞれの位置合わせされた組織コア画像の周囲を通って、及び越えて続くように、位置合わせされた組織コア画像内の注目する特徴の染色パターンを周辺区域における一致する特徴中に伸展させるステップと
をさらに有する。
【0023】
組織コア画像の周りの周囲区域に染色パターンを伸展させることによって、組織コアの外側の一致する特徴も着色又はマークされる。これにより、ユーザ、例えば病理医は、組織コア画像の内側だけでなく外側の注目する特徴も識別することができる。言い換えれば、染色パターンの伸展は染色結果を拡大し、それにより、例えば、特定の特徴のマニュアルのスコアリング及び解釈が容易になる。
【0024】
本発明の一例によれば、ステップg)は、
g1)周辺区域における一致する特徴に品質指数を付与するステップと、
g2)付与された品質指数に基づいて周辺区域の範囲を決定するステップと
をさらに含む。
【0025】
言い換えれば、伸展(又は外挿)の範囲は、特徴一致の信頼性に関連する品質指数によって決定される。これにより、ユーザは、組織コア画像の外側の特徴一致プロセスの範囲を制御することができる。
【0026】
本発明の一例によれば、一致する特徴中に伸展する染色パターンは、
付与された品質指数
及び/又は
位置合わせされた組織コア画像からの距離
に応じた透明度及び/又は強度を有する。
【0027】
一例では、強度は、組織コアからの距離の増加とともに徐々に変化する。強度の減少は、特徴伸展の信頼性に関連する品質指数にも依存する。その結果、ユーザ(例えば病理医)は、一致する特徴のそれぞれの強度及び/又は透明度に応じて特徴伸展(又は特徴一致)の信頼性を識別する。
【0028】
本発明の一例によれば、少なくとも2つの組織コアが、異なる染色プロトコルで染色される。ステップc)において、少なくとも2つの組織コアの組織コア画像が、参照画像と位置合わせされる。
【0029】
その結果、多重染色は、同じ参照画像(例えば、スライド画像全体)において異なる位置で同時に視覚化及び分析される。これは、例えば、腫瘍診断のために腫瘍を細分類するのを容易にする。異なる位置で多数のコアを取り出すのは、さらに、例えば腫瘍の不均質態様を理解するのに有用である。
【0030】
本発明の一例によれば、この方法は、
b4)マイクロアレイブロックから得られたさらなるマイクロアレイスライスのさらなるマイクロアレイ画像を供給するステップであって、さらなるマイクロアレイスライスはマイクロアレイスライスと異なるように染色されるステップと
c1)さらなるマイクロアレイ画像の少なくとも1つの組織コアのさらなる組織コア画像を参照画像と位置合わせするステップと
をさらに有する。
【0031】
マイクロアレイスライスは第1のマイクロアレイスライスとも呼ばれ、一方、さらなるマイクロアレイスライスは第2のマイクロアレイスライスとも呼ばれる。
【0032】
言い換えれば、連続するスライドは、異なる染色及び/又は異なるバイオマーカーのための染色を受け入れる。その結果、病理情報をよりよく理解するために、異なる染色プロトコルで同じ組織コアを染色することが可能である。
【0033】
本発明の一例によれば、ステップc1)において、さらなる組織コア画像が、以前に位置合わせされた組織コア画像のうちの少なくとも1つに基づいて位置合わせされる。
【0034】
組織マイクロアレイの方向に対する個々の組織コアの方位などの特定の情報は、同じマイクロアレイブロックからのすべてのマイクロアレイスライスに対して不変である(又はほとんど不変である)ので、そのような情報が、一致プロセスを改善するために使用される。
【0035】
本発明の第4の態様によれば、処理ユニットによって実行されたとき本発明の方法を実行するように構成された上述の実施形態及び以下の実施形態のうちの1つに従って装置を制御するコンピュータプログラム要素が提供される。
【0036】
本発明の第5の態様によれば、プログラム要素を格納したコンピュータ可読媒体が提供される。
【0037】
「参照画像」という用語は、「スライド画像全体」、デジタル画像、又はデジタルスライドとも呼ばれる。参照画像は、スキャニングデバイスを使用して(例えばガラス)スライドから作り出された画像データに関連する。参照画像(スライド画像全体、デジタル画像、又はデジタルスライド)は、デスクトップスライドスキャナのようなスキャニングデバイスによって直接供給される。代替として、参照画像は、インターネットを介してアーカイバル及びインテリジェント検索をローカル又は遠隔のいずれかで可能にする画像管理システムによって供給される。
【0038】
ドナーブロックとも呼ばれる「組織サンプルブロック」という用語は、人間又は人間以外の領域から得られた組織に関連する。組織サンプルブロックは、生きている生物から、又はさらに生きていない(死んでいる)生物から得られ、それは、後の使用のためのパラフィンに埋め込まれる。例えば、疑いのある癌タイプに応じて、組織サンプルブロックは、パンチ/コア生検、摘出/切開生検、切除などのような様々な手法で得られる。
【0039】
「サンプルスライス」又は「スライス」という用語は、病理的サンプルブロックの薄いスライスに関連し、それは、パラフィンに埋め込まれた病理的サンプルブロック(例えば、化学的固定、処理、及び埋込み手順の後の)を薄いスライス(厚さは数マイクロメートルの程度に関連する)に薄片化することによって得られる。
【0040】
「サンプルスライド」という用語は、画像化目的で、及びさらにサンプルスライスを格納するためのアーカイブ目的で、サンプルスライスを支持する(それにより、運搬する)ために設けられた運搬体に関連する。一例では、サンプルスライドはガラス基板を含み、その上にサンプルスライスが設けられる。カバー、例えば、薄いガラス又はポリマーの層又はプレートが、サンプルスライスを保護し保持するために設けられる。
【0041】
レシピエントブロックとも呼ばれる「マイクロアレイブロック」という用語は、同じ組織サンプルブロックの異なる位置及び/又は異なる組織サンプルブロックに属し、それから生じる組織コアのアレイに関連する。
【0042】
「組織コア」という用語は、マイクロアレイブロックの内側のサンプル切片に関連する。組織コアは、組織サンプルブロック(又はドナーブロック)から異なる位置で打ち抜かれ、規則的なパターンでマイクロアレイブロック(又はレシピエントブロック)に配置される。組織コアは、0.6〜2mmの直径、又は任意の他の好適な値を有する。したがって、マイクロアレイブロックは、何百もの組織コアを、単一のスライド上にスポットの形態で含む。例えば、組織コアは、サンプル切片が組織切片である場合には組織コアとも呼ばれる。
【0043】
「マイクロアレイスライス」という用語は、マイクロアレイブロックを薄いスライスに薄片化することによって得られるマイクロアレイブロックの薄いスライスに関連する。
【0044】
「マイクロアレイ画像」という用語は、デジタル画像取得又はスキャニングデバイスを使用してマイクロアレイスライスから作り出された画像データに関連する。マイクロアレイ画像は、各画像内の元のサンプル及び様々な画像を追跡するための注記を含む別個のファイルを、含んだり及び/又はリンクされてもよい。
【0045】
本発明の一態様によれば、組織マイクロアレイの組織コアの画像は、対応する位置で組織の元のスライド画像全体に位置合わせされる。組織コアの画像を元のスライド画像全体と位置合わせすることにより、全組織、例えば全腫瘍の組織コアの状況を理解しやすくなる。位置合わせは、画像と参照画像との間の最小数の一致する特徴を得るために、画像の面内変位、回転、及び伸ばしを含む。一致する特徴の数は、50と500との間、又は別の所望の数とすることができる。
【0046】
位置合わせされた画像の表示により、ユーザは、参照画像のビューと、異なる染色手順の結果を供給する、対応する組織コアのビューとの間を切り換えることができる。ユーザが異なる画像間を切り換えることができるように、多数の染色画像は、同じコアからすべてが互いに位置合わせされて入手可能である。代替として、半透明な画像が、観察の解釈を支援するために参照画像に重ね合わされる。オプションとして、組織コアの染色パターンが、位置合わせされた参照画像の周辺区域に伸展されるように、デジタル染色が組織コアの画像の外側の区域で実行される。デジタル染色強度は、それが関係する組織コアからの不確実性及び/又は距離の増加とともに退色する(すなわち、透明度が上がる)。染色パターンの伸展はマニュアルのスコアリング及び解釈を容易にする。さらなるオプションとして、例えば、腫瘍の不均質態様を理解するために、腫瘍診断に向けて腫瘍を細分類するために、又は他の分析目的のために、異なる位置の多数のコア及び/又は多重染色が、元のスライド画像全体とともに位置合わせされる。
【0047】
参照画像は、患者サンプルのヘマトキシリン−エオシン染色(H&E)で染色された組織切片であることが好ましい。この切片は、マイクロアレイの製造の前に取得されることが好ましい。ドナー組織ブロックから取り出されるべきコアの位置は、参照画像上で決定される。コア位置の座標は、ファイルに格納され、それぞれのコアからの画像を参照画像に位置合わせするための開始位置として使用される。コアのアレイを含む切片は、例えば、腫瘍を細分類し、患者の症例の診断をサポートする情報を得るために、異なる、好ましくは、バイオマーカー指向染色アッセイを受ける。
【0048】
元の同じ組織ブロックに対応するコアの画像は、単一の画像に組み合わされ、参照画像に位置合わせされる。これは、異なる染色からの画像である。コアの区域の外側の仮想染色は、情報の組合せを表す異なる画像からの組合せ染色である。一例として、例えば、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の細胞膜染色を、例えばエストロゲン受容体(ER)の核染色と組み合わせ、オプションとして、それを、乳房腫瘍サンプルのHer2−neu遺伝子増幅のための蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)染色と組み合わせる。このようにして、すべての情報は、染色の各々を個々に強調するか又は暗くすることができる単一のビューで表示される。コア区域の外側に染色を重ね合わせて伸展させることによって、病理医は、腫瘍特性のよりよい所感を得る。オーバレイの染色画像を強調するか又は暗くすることによって、仮想染色が、コアを囲む区域に加えてコア区域にも提示される。仮想染色は、重なっている区域の観察を容易にするために元の染色と異なる色を使用することができる。
【0049】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、以下に記載される実施形態を参照して説明される。
【0050】
本発明の例示的な実施形態は、以下の図面を参照して以下で説明される。