特許第6843129号(P6843129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843129改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843129
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20210308BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20210308BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/36 C
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-515860(P2018-515860)
(86)(22)【出願日】2016年9月22日
(65)【公表番号】特表2018-533174(P2018-533174A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】CN2016099766
(87)【国際公開番号】WO2017054670
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年3月11日
(31)【優先権主張番号】201510628492.3
(32)【優先日】2015年9月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514029348
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、リャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、シュンイー
(72)【発明者】
【氏名】ウー、シャオチェン
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−225590(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0037680(US,A1)
【文献】 特表2013−539169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質した超疎水性材料により三次元網目状にリチウムイオン電池用ニッケル正極材料の粒子の表面及び前記粒子と前記粒子との間を被覆した改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料であって、
前記リチウムイオン電池用ニッケル正極材料が、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム又はニッケルコバルト酸リチウムのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記改質した超疎水性材料は、表面にナノ粉末材料が堆積された超疎水性材料であり、
前記ナノ粉末材料は、ナノアルミナ、ナノチタニア、ナノマグネシア、ナノジルコニア又はナノ酸化亜鉛のいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記超疎水性材料は、超疎水性導電高分子ナノファイバー、超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム、超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバー又は超疎水性カーボンファイバーフィルムのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記超疎水性材料と前記ナノ粉末材料との質量比が100:(0.01〜50)である、ことを特徴とする改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料。
【請求項2】
前記超疎水性材料と前記ナノ粉末材料との質量比が、100:(0.05〜10)である、ことを特徴とする請求項1に記載の改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料。
【請求項3】
前記超疎水性材料は、超疎水性カーボンファイバーフィルム、超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム又は超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料。
【請求項4】
前記ナノ粉末材料は、ナノチタニア、ナノジルコニアのいずれか1種又は2種の混合物であり、前記ナノ粉末材料のメディアン径が10〜200nmである、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料。
【請求項5】
前記リチウムイオン電池用ニッケル正極材料は、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム又はニッケルマンガン酸リチウムのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料。
【請求項6】
前記改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料は、表面に被覆層を有するニッケル正極材料及び/又はドーピングしたニッケル正極材料であり、
前記表面に被覆層を有するニッケル正極材料における被覆層は、アルミナ、チタニア、マグネシア又はジルコニアのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記ドーピングしたニッケル正極材料におけるドーピング元素は、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、チタン、バナジウム又はフッ素のいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項5に記載の改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料の調製方法であって、
反応釜にリチウムイオン電池用ニッケル正極材料と改質した超疎水性材料を加え、前記リチウムイオン電池用ニッケル正極材料が、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム又はニッケルコバルト酸リチウムのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、前記改質した超疎水性材料は、表面にナノ粉末材料が堆積された超疎水性材料であり、前記ナノ粉末材料は、ナノアルミナ、ナノチタニア、ナノマグネシア、ナノジルコニア又はナノ酸化亜鉛のいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、前記超疎水性材料は、超疎水性導電高分子ナノファイバー、超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム、超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバー又は超疎水性カーボンファイバーフィルムのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、前記超疎水性材料と前記ナノ粉末材料との質量比が100:(0.01〜50)である工程(1)、
前記改質した超疎水性材料と前記リチウムイオン電池用ニッケル正極材料をエタノール溶液に均一に分散させる工程(2)、及び、
工程(2)で得られた懸濁液を固液分離させ、熱処理で前記改質した超疎水性材料により被覆された改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料を得る工程(3)を含む、ことを特徴とする調製方法。
【請求項8】
工程(1)における前記リチウムイオン電池用ニッケル正極材料と前記改質した超疎水性材料との質量比は、100:(0.01〜5)であり、
前記改質した超疎水性材料は、前記ナノ粉末材料を前記超疎水性材料の表面に堆積することで得られたものであり、
前記堆積は、気相堆積、液相堆積又は電気化学的堆積のいずれか1種又は少なくとも2種の混合である、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(2)における分散は、超音波分散、機械撹拌又は噴霧分散のいずれか1種又は少なくとも2種の混合であり、
工程(3)における固液分離の方法は、吸引濾過、噴霧乾燥、蒸煮又は遠心分離のいずれか1種又は少なくとも2種の混合であり、
工程(3)における熱処理の温度は、120℃〜600℃であり、前記熱処理の時間は、4h〜24hである、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、
メディアン径が10〜200nmである前記ナノ粉末材料を前記超疎水性材料の表面に堆積することで改質した超疎水性材料を得て、前記超疎水性材料と前記ナノ粉末材料との質量比は、100:(0.01〜50)である工程(1)、
反応釜に前記リチウムイオン電池用ニッケル正極材料と前記改質した超疎水性材料を加え、前記リチウムイオン電池用ニッケル正極材料と前記改質した超疎水性材料との質量比は、100:(0.01〜5)である工程(2)、
前記改質した超疎水性材料を前記リチウムイオン電池用ニッケル正極材料間に超音波分散させる工程(3)、及び、
工程(2)で得られた懸濁液を遠心分離し、乾燥した後に、前記改質した超疎水性材料により被覆された改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料を得る工程(4)を含む、ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の改質リチウムイオン電池用ニッケル正極材料を含む、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用正極材料の分野に属し、具体的に、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料及びその調製方法に関し、特に、改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の適用範囲がだんだん拡大していくことに伴い、電池材料のエネルギー密度、安全性及びサイクル性能へのより高い要求が求められている。
【0003】
リチウムイオン電池用正極活性材料は、リチウムイオン電池のエネルギー密度、安全性及びサイクル性能に対して重大な影響を有し、通常のリチウムイオン電池用正極活性材料は、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム及びリチウム富化物質等が存在する。そのうち、高ニッケル正極材料は、最も応用見込みを有する正極材料の1つであると考えられている。
【0004】
高ニッケル正極材料は、低価格、低毒性、同時に高い放電比容量及び高いエネルギー密度の利点を有する。しかし、現在高ニッケル材料を正極材料とするリチウムイオン電池は、一般的に貯蔵や安全性能の問題があり、同時にサイクル性能を向上させる必要もある。研究によると、高ニッケル正極材料は、表面の遊離リチウムによって空気中の水分や二酸化炭素と反応するため、材料表面に残留するアルカリ含有量が高くなり、同時に高ニッケル正極材料における結晶水や痕跡量の水が存在するため、高ニッケル材料を正極材料とするリチウムイオン電池にガス発生や安全性能の問題が生じる。したがって、どのように水分に対する高ニッケル正極材料の敏感性と高ニッケル材料を正極材料とするリチウムイオン電池の安全性及びリサイクル性を向上させるかは、非常に重要な意味を持っている。
【0005】
現在、高ニッケル材料を正極材料とするリチウムイオン電池の貯蔵や安全性能及びサイクル性能の問題に対する解決方法は、主に金属酸化物の表面被覆、ポリマーの表面被覆及び表面処理等の改質手段に集中している。
【0006】
特許文献1において、無機粉体材料の表面での疎水処理方法が開示されている。そのうち、無機粉体材料は、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、コバルトニッケルマンガン酸リチウム又はニッケルコバルト酸リチウムのリチウムイオン電池用正極材料であってもよい。疎水剤を用いて無機粉体材料を処理した後に、湿粉体が得られ、その後に湿粉体を80〜150℃の条件で乾燥させ、即ち、無機粉体材料の表面に対する疎水処理を完成した。そのうち、疎水剤は、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、シランのいずれか1種又はそのうちの複数種の混合であり、無機粉末材料が常温・常圧の大気雰囲気や高湿度の条件で貯蔵、輸送、使用際に空気中の水分を吸収する問題を解決した。リチウムイオン電池用正極材料の表面での疎水処理方法を提供したが、この方法で選択可能な疎水性材料は、限られており、且つ材料の表面のみに対して疎水化処理可能であり、効果的な被覆層が形成されず、材料中の痕跡量の水と電解液との副反応を解決することは困難である。
【0007】
特許文献2において、リチウムイオン二次電池及びその調製方法が開示されている。その技術的な要点として、当該電池は、水系溶剤を含む組合物により形成された正極を備え、前記正極は、正極集電体と当該集電体に形成された正極合剤層を備え、前記正極合剤層は、少なくとも正極活性物質と接着剤を含み、前記正極活性物質は表面が疎水性被膜により被覆され、前記接着剤は水系溶剤に溶解/分散された接着剤であり、前記疎水性被膜は撥水性樹脂から形成されたため、正極活性物質と水系溶剤との接触を防止できる。同様にリチウムイオン電池用正極材料の表面での疎水処理方法を提供したが、この方法は、水系溶剤のみに限定される同時に、撥水性樹脂が正極活性物質の表面に簡単に被覆され、撥水性樹脂が正極活性物質の抵抗を増加するため、電子及びイオンの輸送に不利である。
【0008】
特許文献3において、リチウムイオン二次電池が開示されている。前記正極フィルムは、正極集電体と、正極集電体に設置された正極活性物質層を含み、正極フィルムや分離膜の表面に有機疎水剤コーティングが被覆され、当該リチウムイオン二次電池の正極フィルムの表面や分離膜の表面に有機疎水剤コーティングが被覆されるため、リチウムイオン電池の中の水含有量を効果的に低減させることで、リチウムイオン二次電池の作動過程における水による副反応を低減し、リチウムイオン二次電池のサイクル性能及び貯蔵性能を向上することができる。しかし、当該方法では、有機疎水層が正極フィルムに被覆され、正極活性物質の内部に被覆効果がないため、活性物質間の疎水性が制限される。
【0009】
特許文献4において、高比表面積カーボンナノチューブ/酸化物複合膜及びその調製方法が開示されている。当該複合膜は、比表面積が100〜1800m/gであり、超疎水性を有る網目状構造になり、細長い少層カーボンナノチューブはフレーム構造を形成するように相互に交差しており、欠陥のある多層カーボンナノチューブと酸化物とは、相互に混合してフレーム構造の隙間に載っており、その複合膜は、リチウムイオン電池に利用可能である。しかし、どのように当該複合膜をリチウムイオン電池に用いるかについて言及されておらず、且つそれを膜構造としてリチウムイオン電池に用いる場合には、正極活性物質の表面に被覆効果を形成することができないため、活性物質間の疎水性も制限される。
【0010】
そのため、被覆効果がより優れ、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の粒子の表面の疎水親電解液性とより高い導電性を実現するリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料が開発されることで、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の貯蔵性能、安全性及びサイクル性能を更に向上し、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料のより広い適用に対する技術的支援を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】中国特許出願公開第101301598号
【特許文献2】中国特許出願公開第103392249号
【特許文献3】中国特許出願公開第102709591号
【特許文献4】中国特許出願公開第102583321号
【発明の概要】
【0012】
従来技術の欠如に対し、本発明の第1の目的は、極片中の水含有量を減少することで高ニッケル材料を正極材料とするリチウムイオン電池の安全性能やサイクル性能を改善する、改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を提供する。
【0013】
本発明の第2の目的は、超疎水性材料を表面改質させることで超疎水性材料の疎水性親電解液性と導電性を向上し、そして改質した超疎水性材料を三次元網目状でリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の粒子の表面及び粒子と粒子との間に被覆させることにより、高ニッケル正極材料の表面での疎水性導電処理を効果的に実現し、環境水分と表面の遊離リチウムとの反応、及び痕跡量の水と電解液との副反応の発生を減少させ、電池におけるリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の安全性、サイクル性及び貯蔵性能を向上することができる、改質した超疎水性材料によるリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の被覆方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係る改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料の断面図である。
図2】本発明の実施例1に係る改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料のXRD図である。
図3】本発明の実施例1に係る改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料の初回充放電曲線である。
図4】本発明の実施例1に係る改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料のサイクル性能曲線である。
図5】本発明の実施例1に係る改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料の貯蔵性能曲線である。
図6】本発明の実施例1に係る改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料の吸液性能曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記目的を達するために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0016】
本発明の第1の態様は、表面に改質した超疎水性材料により被覆され、粒子と粒子との間は前記改質した超疎水性材料によりブリッジされているリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を提供する。
【0017】
本発明は、超疎水性材料を改質させることで、前記超疎水性材料の疎水親電解液性と導電性を向上した。改質した超疎水性材料は、三次元疎水性導電網目状でリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の粒子の表面及び粒子と粒子と間に分散され、それを被覆して改質させることで、改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の複合正極材料を形成した。改質した超疎水性材料による被覆は、電極材料と電解液との間の電気化学的安定な界面を構築し、高ニッケル正極材料の粒子による水分の再吸収を回避し、高ニッケル正極材料の粒子の疎水親電解液性を実現した。従って、改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料は、優れた疎水親電解液性と導電性を有し、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料のサイクル性と安全性を向上した。
【0018】
本発明において、前記改質した超疎水性材料は、表面にナノ材料が堆積された超疎水性材料である。
【0019】
本発明は、ナノ材料を超疎水性材料の表面に堆積してナノスケールの粗さを形成することで、改質した超疎水性材料の疎水親電解液性と導電性を向上した。
【0020】
本発明で提供したリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料は、表面にナノ粉末材料が堆積された改質した超疎水性材料をリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の表面に被覆すると同時に、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の粒子と粒子との間は改質した超疎水性材料によりブリッジされることで、改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料に形成された複合正極材料である。
【0021】
本発明において、前記超疎水性材料とナノ材料との質量比は、100:(0.01〜50)であり、例えば、100:0.01、100:0.02、100:0.05、100:0.1、100:0.5、100:1、100:5、100:10、100:20、100:30、100:40、100:50であってもよく、好ましくは、100:(0.05〜10)であり、更に好ましくは、100:0.05である。
【0022】
本発明において、超疎水性材料の質量比が大きくなるように、超疎水性材料とナノ材料との質量比を制御すべきである。超疎水性材料の割合が少なすぎると、疎水性が低下する。そのため、高ニッケル正極材料の表面での疎水化処理を達成するために、超疎水性材料の割合を適切に増加する必要があり、本発明において、具体的に、超疎水性材料とナノ材料との質量比が100:50以上であることが好ましい。
【0023】
本発明において、前記超疎水性材料は、超疎水性導電高分子ナノファイバー、超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム、超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバー、超疎水性カーボンファイバーフィルム又は導電性多孔質エーロゲルのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、好ましくは、超疎水性カーボンファイバーフィルム、超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム又は超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、更に好ましくは、超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムである。
【0024】
本発明における超疎水性材料は、例えば、超疎水性導電高分子ナノファイバー、超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム、超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバー、超疎水性カーボンファイバーフィルム又は導電性多孔質エーロゲルのいずれか1種のみを選択してもよく、2種又は複数種の組合せであってもよく、例えば、超疎水性導電高分子ナノファイバーと超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムとの組合せ、又は超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバー、超疎水性カーボンファイバーフィルム及び導電性多孔質エーロゲルの組合せ、又は超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムと超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーとの組合せ、又は超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムと超疎水性カーボンファイバーフィルムとの組合せ等であってもよい。
【0025】
異なる超疎水性材料の疎水性効は異なり、そのうち、超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムと超疎水性カーボンファイバーフィルムとの疎水性効果が最も良好であるため、本発明は、超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム及び/又は超疎水性カーボンファイバーフィルムを採用することが好ましい。
【0026】
本発明のさらなる改良として、前記ナノ材料は、ナノ粉末材料である。
【0027】
本発明のさらなる改良として、前記ナノ粉末材料は、ナノアルミナ、ナノチタニア、ナノマグネシア、ナノジルコニア又はナノ酸化亜鉛のいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、好ましくは、ナノチタニア、ナノジルコニアのいずれか1種又は2種の混合物であり、更に好ましくは、ナノチタニアである。
【0028】
本発明におけるナノ粉末材料は、例えば、ナノアルミナ、ナノチタニア、ナノマグネシア、ナノジルコニア又はナノ酸化亜鉛のいずれか1種のみを選択してもよく、2種又は複数種の組合せであってもよく、例えば、ナノアルミナとナノチタニアとの組合せ、ナノジルコニアとナノ酸化亜鉛との組合せ、ナノチタニアとナノジルコニアとの組合せ、ナノチタニア、ナノマグネシア、ナノジルコニア及びナノ酸化亜鉛の組合せ等であってもよい。
【0029】
異なるナノ酸化物の導電性は異なるが、本発明において、ナノチタニアとナノジルコニアを採用すると、導電性が相対的に良好である。本発明におけるナノ酸化物は、純ナノ酸化物又はドーピング類ナノ酸化物に更に分類してもよく、ドーピング類ナノ酸化物(例えば、酸化亜鉛にアルミナをドープして形成したN型導体等の、導電性が強化されるもの)の導電性がより良好である。
【0030】
本発明のさらなる改良として、前記ナノ粉末材料のメディアン径は、10〜200nmであり、例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、70nm、90nm、100nm、120nm、140nm、160nm、180nm、200nmであってもよく、好ましくは、30〜100nmであり、更に好ましくは、30nmである。
【0031】
本発明で選択したナノ粉末材料のメディアン径が10〜200nmであると、そのサイズ分散性は比較的良好であり、サイズはその範囲を上回ると、分散性が相対的に悪くなり、サイズはその範囲を下回ると、ナノ粉末材料のコストが高くなる。
【0032】
本発明において、前記高ニッケル正極材料は、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム又はニッケルコバルト酸リチウムのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、好ましくは、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム又はニッケルマンガン酸リチウムのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、更に好ましくは、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムである。
【0033】
本発明における高ニッケル正極材料は、例えば、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム又はニッケルコバルト酸リチウムのいずれか1種のみを選択してもよく、2種又は複数種の組合せであってもよく、例えば、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムとニッケルコバルトマンガン酸リチウムとの組合せ、ニッケルマンガン酸リチウムとニッケルコバルト酸リチウムとの組合せ、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム及びニッケルマンガン酸リチウムの組合せ等であってもよい。
【0034】
本発明のさらなる改良として、前記高ニッケル正極材料の粒径は、50nm〜100μmである。
【0035】
本発明のさらなる改良として、前記高ニッケル正極材料は、表面に被覆層を有する高ニッケル正極材料及び/又はドーピングした高ニッケル正極材料であり、好ましくは、表面に被覆層を有する高ニッケル正極材料である。
【0036】
本発明のさらなる改良として、前記表面に被覆層を有する高ニッケル正極材料における被覆層は、アルミナ、チタニア、マグネシア又はジルコニアのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、好ましくは、アルミナ、チタニア又はマグネシアのいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、更に好ましくは、アルミナである。
【0037】
本発明における表面に被覆層を有する高ニッケル正極材料における被覆層は、アルミナ、チタニア、マグネシア又はジルコニアから選ばれるいずれか1種であってもよく、2種又は複数種の組合せであってもよく、例えば、アルミナとチタニアとの組合せ、マグネシアとジルコニアとの組合せ、アルミナ、チタニア及びマグネシアの組合せ等であってもよい。
【0038】
本発明のさらなる改良として、前記ドーピングした高ニッケル正極材料におけるドーピング元素は、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、チタン、バナジウム又はフッ素のいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、好ましくは、アルミニウム、マグネシウム、チタン又はフッ素のいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、更に好ましくは、アルミニウムである。
【0039】
本発明におけるドーピングした高ニッケル正極材料におけるドーピング元素は、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、チタン、バナジウム又はフッ素から選ばれるいずれか1種であってもよく、2種又は複数種の組合せであってもよく、例えば、ナトリウムとアルミニウムとの組合せ、マグネシウムとチタンとの組合せ、チタン、バナジウム及びフッ素の組合せ、アルミニウム、マグネシウム、チタン及びフッ素の組合せ等であってもよい。
【0040】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の調製方法を更に提供した。
その調製方法は、
反応釜にリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料と改質した超疎水性材料を加える工程(1)、
前記改質した超疎水性材料とリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料をエタノール溶液に均一に分散させる工程(2)、及び、
工程(2)で得られた懸濁液を固液分離させ、熱処理で改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を得る工程(3)を含む。
【0041】
本発明において、工程(1)における前記リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料と改質した超疎水性材料との質量比は、100:(0.01〜5)であり、例えば100:0.01、100:0.015、100:0.02、100:0.025、100:0.05、100:0.1、100:0.2、100:0.3、100:0.4、100:0.5、100:0.6、100:0.8、100:1、100:2、100:3、100:4、100:5であってもよく、好ましくは、100:(0.25〜5)であり、更に好ましくは、100:0.25である。
【0042】
本発明のさらなる改良として、前記改質した超疎水性材料は、ナノ材料を超疎水性材料の表面に堆積することで得られたものである。
【0043】
本発明のさらなる改良として、前記堆積は、気相堆積、液相堆積又は電気化学的堆積のいずれか1種又は少なくとも2種の混合であり、好ましくは、液相堆積又は電気化学的堆積であり、更に好ましくは、液相堆積である。
【0044】
本発明において、工程(2)における分散は、超音波分散、機械撹拌又は噴霧分散のいずれか1種又は少なくとも2種の混合である。
【0045】
本発明のさらなる改良として、工程(3)における固液分離の方法は、吸引濾過、噴霧乾燥、蒸煮又は遠心分離のいずれか1種又は少なくとも2種の混合である。
【0046】
本発明のさらなる改良として、工程(3)における熱処理の温度は、120℃〜600℃であり、例えば、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、200℃、250℃、280℃、300℃、350℃、380℃、420℃、520℃、600℃であってもよく、好ましくは、200〜600℃であり、更に好ましくは、200℃であり、前記熱処理の時間は、4h〜24hであり、例えば、4h、8h、10h、12h、13h、15h、18h、20h、21h、22h、23h、24hであってもよく、好ましくは、4〜12hであり、更に好ましくは、12hである。
【0047】
本発明のさらなる改良として、前記方法は、具体的に、
メディアン径が10〜200nmであるナノ材料を超疎水性材料の表面に堆積することで改質した超疎水性材料を得て、前記超疎水性材料とナノ材料との質量比は、100:(0.01〜50)である工程(1)、
反応釜にリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料と改質した超疎水性材料を加え、前記リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料と改質した超疎水性材料との質量比は、100:(0.01〜5)である工程(2)、
改質した超疎水性材料をリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料間に超音波分散させる工程(3)、及び、
工程(2)で得られた懸濁液を遠心分離し、乾燥した後に、改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を得る工程(4)を含む。
【0048】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を含むリチウムイオン電池を提供した。
【0049】
本発明は、ナノ粉末材料を超疎水性材料の表面に堆積してナノスケールの粗さを形成することで、改質した超疎水性材料の疎水親電解液性と導電性を向上した。改質した超疎水性材料は、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の粒子の表面に被覆すると同時に、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の粒子と粒子との間は改質した超疎水性材料によりブリッジされている。本発明の改質した超疎水性材料は、三次元疎水性導電網目状でリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の粒子の表面及び粒子と粒子との間に分散され、それを被覆して改質させることで、改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の複合正極材料を形成した。改質した超疎水性材料による被覆は、電極材料と電解液との間の電気化学的安定な界面を構築し、高ニッケル正極材料の粒子による水分の再吸収を回避し、高ニッケル正極材料の粒子の疎水親電解液性を実現した。従って、改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料は、優れた疎水親電解液性と導電性を有し、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料のサイクル性と安全性を向上した。
【0050】
本発明は、従来の技術と比べると、少なくとも以下の有益な効果を奏する。
【0051】
(1)本発明で提供した改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料は、優れた疎水親電解液性と導電性を有し、且つリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料のサイクル性と安全性を向上した。超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料と被覆されていないリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料とを比較すると、本発明で提供したリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料は、親電解液性、貯蔵性能、サイクル性及び安全性のいずれにも顕著な利点を有する。測定したところ、本発明で提供した改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料は、1C倍率で40サイクル後の容量維持率が少なくとも97.2%に達し、80%相対湿度で60日間貯蔵すると、質量増加率が0.155wt%未満であり、その吸液時間も2.2min未満である。
【0052】
(2)本発明における改質した超疎水性材料により被覆されたリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の調製方法は、簡単で、効果が著しく、操作しやすく、再現性がよく、コストが低く、且つ環境に対する汚染が小さく、工業化生産に適している。
【実施例】
【0053】
本発明を理解しやすくさせるために、本発明は以下の実施例を挙げる。当業者は、下記実施例が本発明を理解するためのものに過ぎず、本発明を具体に制限するものと見なすべきではないということを理解すべきである。
【0054】
<実施例1>
液相フタル酸ブチルを気化した後に、キャリアガスNを用いて超疎水性カーボンナノチューブが収容された気相堆積反応器に導入し、ナノチタニアと超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムとの質量比を0.05:100に制御し、生成されたナノチタニア(TiO)を超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムの表面に均一に堆積させることで、改質した超疎水性カーボンナノチューブを得た。
【0055】
前記改質した超疎水性カーボンナノチューブ及び粒径が7〜60μmであるLiNi0.6Co0.2Mn0.2電極材料粉末、超疎水性カーボンナノチューブ及び粒径が7〜60μmであるLiNi0.6Co0.2Mn0.2電極材料粉末をそれぞれ0.25:100の質量比でエタノール溶液に分散して1h機械撹拌しながら、LiNi0.6Co0.2Mn0.2電極材料粉末をエタノール溶液に分散して1h機械撹拌した後に、前記3組のサンプルを、エタノール溶液が完全的に除去するまで200℃で蒸煮を行い、固体物質を400℃で12h乾燥させることで、改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料及び被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料を得た。
【0056】
被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料はブランク試験であり、ブランク試験は、改善原因が処理プロセスによる影響であることを排除し、被覆によって正極材料の性能を向上させることを証明するものである。
【0057】
貯蔵性能試験は、恒温(25℃)・恒湿(80%相対湿度)の実験室で1/10000の天秤を用いて3〜5gの正極材料のサンプルを秤取し、空気中に暴露された秤量瓶に入れ、サンプルの品質がもはや変化しないまで毎日1回で秤量し、その後半月1回で秤量する。サンプルの質量変化は質量増加率で表示する。質量増加率が低いほど、正極材料の貯蔵性能が優れる。
【0058】
極片吸液性能試験は、恒温(25℃)の実験室で10μLの電解液を調製した正極極片の表面に滴下し、電解液が全て正極極片に吸収されるのに要する時間が吸液時間であり、吸液時間が短いほど、正極材料の親電解液性能が優れる。
【0059】
図1は、本実施例に係る改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料を示す図である。図2図3図4図5及び図6は、それぞれ本実施例に係る改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料のXRD曲線、初回充放電曲線、サイクル性能曲線、貯蔵性能曲線及び極片吸液性能曲線の図である。
【0060】
図1において、ナノチタニアが超疎水性カーボンナノチューブ表面に堆積してナノスケールの粗さを形成し、改質した超疎水性カーボンナノチューブがリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の粒子の表面に被覆され、同時にリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の粒子と粒子との間は超疎水性カーボンナノチューブによりブリッジされている。
【0061】
図2から分かるように、改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料はいずれもLiNi0.6Co0.2Mn0.2の回折ピークを有する。
【0062】
図3から分かるように、改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料はいずれも比較的高い初回充放電比容量を有する。
【0063】
図4から分かるように、改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆的LiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料は、1C倍率で40サイクル後の容量維持率がそれぞれ97.2%、94.4%、90.6%及び91.8%である。よって、改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2のサイクル性能が最も優れ、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2材料のサイクル性能が二番目であり、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料サイクル性能はLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料に相当することが示される。
【0064】
図5から分かるように、改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料は、80%相対湿度で60日間貯蔵すると、質量増加率がそれぞれ0.155wt%、0.39wt%、1.525wt%及び1.685wt%である。これから分かるように、改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料が材料は貯蔵性能を著しく向上したことが示される。
【0065】
図6から分かるように、改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料及びLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料の吸液時間は、それぞれ2.2min、2.6min、4.2min及び4.5minである。これからように、改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料は、LiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料に比べて、より良好な親電解液性を有することが示される。
【0066】
<実施例2>
粒径が30nm〜100nmの0.01gナノジルコニアを100g超疎水性カーボンファイバーフィルムのエタノール分散液に加え、1.5h激しく機械撹拌し、ナノジルコニアを超疎水性カーボンファイバーフィルム表面に十分に分散させることで、ナノジルコニアにより改質した超疎水性カーボンファイバーフィルム材料を得た。3〜50μm粒径の0.5gLiNi0.815Co0.15Al0.035電極材料粉末を取って、20mL 10%の改質した超疎水性カーボンファイバーフィルム材料の分散液に分散させ、1時間超音波分散し、改質した超疎水性カーボンファイバーフィルムを電極材料表面に均一に被覆させ、遠心分離した後に、固体を200℃で12h乾燥させることで、改質した超疎水性カーボンファイバーフィルムにより被覆されたLiNi0.815Co0.15Al0.035正極材料を得た。
【0067】
<実施例3>
粒径が30nm〜100nmの0.01gナノMgOを100g超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーのエタノール分散液に加え、30min超音波分散した後に、エタノールが完全に除去されるまで、機械撹拌しながら200℃で蒸煮することで、ナノMgOにより表面改質した超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーを得て、前記改質した超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーと10〜100μm粒径のLiNi0.8Co0.1Mn0.1電極材料粉末を、0.25:100の質量比でエタノール溶液に分散させ、30min機械撹拌した後に、噴霧乾燥させることで、改質した超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーにより被覆されたLiNi0.8Co0.1Mn0.1電極材料を得て、その後、200℃で24h乾燥させることで、水分と比表面積が好適な改質した超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーにより被覆されたLiNi0.8Co0.1Mn0.1リチウムイオン電池正極材料を得た。
【0068】
<実施例4>
粒径が40〜100nmの0.01gナノジルコニアと粒径が30〜50nmの0.05gナノチタニアを100g超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムの分散液に加え、1h激しく機械撹拌し、ナノジルコニアとナノチタニアを超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムの表面に十分に分散させることで、ナノジルコニアとナノチタニアにより改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム材料を得た。3〜50μm粒径の0.5gLiNi0.815Co0.15Al0.035電極材料粉末を取って、20mL 10%の改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムの分散液に分散させ、1時間超音波分散し、改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムを電極材料の表面に均一に被覆させ、遠心分離した後に、固体を200℃で4h乾燥させることで、改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムにより被覆されたLiNi0.815Co0.15Al0.035正極材料を得た。
【0069】
<実施例5>
粒径が80〜100nmの0.02gナノジルコニアと、粒径が60〜80nmの0.25gナノチタニアと、粒径が60〜100nmの0.01gナノマグネシアを100g超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムの分散液に加え、1.5h激しく機械撹拌し、ナノジルコニア、ナノチタニア、ナノマグネシアを超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムの表面に十分に分散させることで、ナノジルコニア、ナノチタニア及びナノマグネシアにより改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム材料を得た。3〜50μm粒径の0.5gLiNi0.815Co0.15Al0.035電極材料粉末を取って、20mL 10%の改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムの分散液に分散させ、1時間超音波分散し、改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムを電極材料の表面に均一に被覆させ、遠心分離した後に、固体を200℃で4h乾燥させることで、改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムにより被覆されたLiNi0.815Co0.15Al0.035正極材料を得た。
【0070】
<実施例6>
粒径が40〜100nmの0.02gナノマグネシアと粒径が30〜100nmの0.1gナノチタニアを50g超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムと50g超疎水性カーボンファイバーフィルムとの分散液に加え、1h激しく機械撹拌し、ナノマグネシアとナノチタニアを超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムと超疎水性カーボンファイバーフィルムとの表面に均一に分散させることで、ナノマグネシア、ナノチタニアにより改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルム及び超疎水性カーボンファイバーフィルム材料を得た。3〜50μm粒径の0.5gLiNi0.815Co0.15Al0.035電極材料粉末を取って、20mL 10%の改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムと超疎水性カーボンファイバーフィルムとの分散液に分散させ、1時間超音波分散し、改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムと超疎水性カーボンファイバーフィルムを電極材料の表面に均一に被覆させ、遠心分離した後に、固体を400℃で8h乾燥させることで、改質した超疎水性カーボンナノチューブアレイフィルムと超疎水性カーボンファイバーフィルムにより被覆されたLiNi0.815Co0.15Al0.035正極材料を得た。
【0071】
<実施例7>
粒径が60nm〜150nmの10gナノMgOを60g超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーと40g超疎水性導電高分子ナノファイバーとのエタノール分散液に加え、30min超音波分散した後に、エタノールが完全に除去されるまで機械撹拌しながら200℃で蒸煮することで、ナノMgOにより表面改質した超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーと超疎水性導電高分子ナノファイバーを得て、前記改質した超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーと、超疎水性導電高分子ナノファイバーと、10〜100μm粒径のLiNi0.8Co0.1Mn0.1電極材料粉末を0.25:100の質量比でエタノール溶液に分散させ、30min機械撹拌した後に、噴霧乾燥させることで、改質した超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーと超疎水性導電高分子ナノファイバーにより被覆されたLiNi0.8Co0.1Mn0.1電極材料を得て、その後、300℃で12h乾燥させることで、水分と比表面積とが好適な改質した超疎水性ポリアクリロニトリルナノファイバーと超疎水性導電高分子ナノファイバーにより被覆されたLiNi0.8Co0.1Mn0.1リチウムイオン電池正極材料を得た。
【0072】
本発明は上記実施例によって本発明の詳しい方法を説明したが、本発明は上記詳しい方法に限られるものではない、即ち、本発明は上記詳しい方法によって実施しなければならないものではないと出願人は声明する。当業者にとって、本発明に対する如何なる改良、本発明の製品の各原料への等価置換及び補助成分の追加、具体的な実施形態の選択等はいずれも本発明の保護範囲及び開示範囲に入ることが明瞭である。
【符号の説明】
【0073】
1 正極材料、2 超疎水性カーボンナノチューブ、3 ナノチタニア、A 改質した超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、B 超疎水性カーボンナノチューブにより被覆されたLiNi0.6Co0.2Mn0.2複合正極材料、C 被覆されていないLiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料、D LiNi0.6Co0.2Mn0.2正極材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6