(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プレートに直接的又は間接的に固定された第1の剛支持要素(4)と固体慣性要素(5)の間にフレクシャーベアリング機構(200)を有する計時器用機械式発振器(100)であって、
前記フレクシャーベアリング機構(200)は、前記固体慣性要素(5)を支持し前記固体慣性要素を待機位置に戻すように構成している少なくとも2つの第1の可撓性細長材(31、32)を有し、
前記固体慣性要素(5)は、振動平面内において前記待機位置を中心に角振動するように構成しており、
前記2つの第1の可撓性細長材(31、32)は、互いに接触せず、前記振動平面上への射影において待機位置にて交差点(P)で交差し、
この交差点(P)の近傍で前記振動平面に垂直な前記固体慣性要素(5)の回転軸が通り、
前記フレクシャーベアリング機構には、互いに重なり合っている少なくとも1つの上側レベル(28)及び少なくとも1つの下側レベル(29)があり、
前記上側レベル(28)には、上側支持体(48)と前記固体慣性要素(5)の間に、射影において上側交差点(PS)で交差している、第1の上側細長材の方向(DL1S)に延在している少なくとも1つの上側主細長材(318)及び第2の上側細長材の方向(DL2S)に延在している少なくとも1つの上側副細長材(328)があり、
前記下側レベル(29)には、下側支持体(49)と前記固体慣性要素(5)の間に、射影において下側交差点(PI)で交差している、第1の下側細長材の方向(DL1I)に延在している少なくとも1つの下側主細長材(319)及び第2の下側細長材の方向(DL2I)に延在している少なくとも1つの下側副細長材(329)があり、
前記上側レベル(28)と前記下側レベル(29)にはそれぞれ、前記プレートと、前記上側支持体(48)又は前記下側支持体(49)の間に、振動平面において1つ又は2つの自由度の軸に沿った少なくとも1つの弾性接続を有する並進運動台(308、309)があり、
この弾性接続の剛性は、前記上側レベル及び前記下側レベルのいずれよりも低く、
これによって、前記上側レベルと前記下側レベルの間の相対的な並進運動が可能になり、そして、前記固体慣性要素(5)の側で前記可撓性細長材(31、32)の前記2つの埋め込み点の相対的位置を調整することによって、前記並進運動台(308、309)の剛性を変えることができ、異方性の調整をすることができる
ことを特徴とする機械式発振器(100)。
前記振動平面内における1つ又は2つの自由度の軸に沿った、前記上側並進運動台(308)又は前記下側並進運動台(309)の前記弾性接続は、共通の平行な平面上への射影において前記フレクシャーベアリング機構の可撓性細長材の間で形成される角度の二等分線のX軸とY軸に沿った弾性接続である
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式発振器(100)。
前記2つの細長材の方向(DL1、DL2)は、前記振動平面に平行であり、かつ、互いの間に、待機位置において、前記振動平面上への射影において、頂角(α)を形成し、
前記交差点(P)の位置は、埋め込み点比X=D/Lによって定められ、
ここで、Dは、前記振動平面上への射影における前記第1の剛支持要素(4)における前記第1の細長材(31、32)の埋め込み点の1つと前記交差点(P)の間の距離であり、
Lは、前記振動平面上への射影における前記細長材(31、32)の全長であり、
待機位置における前記発振器(100)の重心は、オフセット(ε)の分、前記交差点(P)から離れており、
このオフセット(ε)は、前記振動平面上への射影における前記細長材(31、32)の前記全長Lの12〜18%であり、
前記埋め込み点比D/Lの値は、0〜1であり、
前記頂角(α)は、60°以下であり、
各第1の可撓性細長材(31、32)における前記埋め込み点比(D1/L1、D2/L2)は、0.15〜0.85である
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式発振器(100)。
当該発振器は、第1の細長材の方向(DL1)に延在している1つの前記主細長材(31)と第2の細長材の方向(DL2)に延在している1つの前記副細長材(32)によって形成された少なくとも1つの対を有し、
各対において、前記主細長材(31)は、向きを除いて前記副細長材(32)と同一である
ことを特徴とする請求項5に記載の機械式発振器(100)。
当該発振器は、第1の細長材の方向(DL1)に延在している1つの前記主細長材(31)と第2の細長材の方向(DL2)に延在している1つの前記副細長材(32)によって構成している前記対のみを有しており、
各対において、前記主細長材(31)は、向きを除いて前記副細長材(32)と同一である
ことを特徴とする請求項7に記載の機械式発振器(100)。
当該発振器は、第1の細長材の方向(DL1)に延在している1つの前記主細長材(31)と第2の細長材の方向(DL2)に延在している複数の前記副細長材(32)によって形成された少なくとも1つの細長材群を有し、
各細長材群において、前記主細長材(31)の弾性的ふるまいは、向きを除いて前記複数の副細長材(32)に起因する弾性的ふるまいと同一である
ことを特徴とする請求項5に記載の機械式発振器(100)。
【背景技術】
【0005】
ケイ素や酸化ケイ素のような微細機械加工可能な材料を加工するためのMEMS、LIGAのようなプロセスによって、計時器用機械式発振器において、フレクシャーベアリング、特に、可撓性細長材を有するもの、を使用することが可能になった。このようなプロセスは、時間が経過しても弾性特性が一定であり、温度や湿気のような外部物質の影響を受けにくい部品を非常に再現性よく製造することを可能にする。特に、同じ出願人による欧州特許出願EP1419039やEP16155039に開示されているようなフレクシャーピボットは、伝統的なバランスピボット及び通常これに関連づけられるバランスばねを置き換えることができる。また、ピボット摩擦をなくすことによって、発振器のクオリティーファクターQを相当に大きくすることができる。しかし、フレクシャーピボットには、一般的に、約10〜20°の限定された角ストロークしかない。この値は、バランス/バランスばねの振幅が通常300°であることと比べると非常に低く、このことは、これらのフレクシャーピボットを、適切に動作するために角ストロークが大きいことを必要とする、伝統的なエスケープ機構、特に、スイス式レバーのような通常の止めメンバー、と直接組み合わせることができないことを意味している。
【0006】
2016年9月28日及び29日にスイスのモントルーで開催された国際クロノメトリー会議(International Chronometry Congress)において、M. H. Kahrobaiyanのチームは、まず、論文「Gravity insensitive flexure pivots for watch oscillators」において、この角ストロークの増加について扱っている。しかし、この複雑な手法では等時性を達成できないように考えられる。
【0007】
同じ出願人、Swatch GROUP RESEARCH & DEVELOPMENT Ltdによる欧州特許出願EP3035127A1は、少なくとも2つの振動する可動部品を有する音叉によって形成される少なくとも1つの共振器を備えたタイムベースを有する計時器用発振器を開示している。これらの可動部品は、フレキシブル要素によって前記発振器に設けられた接続要素に固定され、このフレキシブル要素の幾何学的構成は、前記接続要素に対して所定の位置にある仮想回転軸を決める。各可動部は、前記仮想回転軸のまわりを振動し、待機位置において前記可動部の重心はその仮想回転軸と一致する。少なくとも1つの前記可動部に対して、前記フレキシブル要素は、互いから離れて2つの平行な平面内にて延在している交差している弾性細長材によって形成されており、これらの弾性細長材は、前記平行な平面の1つ上への射影において、対応する可動部の前記仮想回転軸において交差するような向きを有する。
【0008】
GRIBによる米国特許出願US3628781Aは、二重カンチレバー構造の形態である音叉を開示している。これは、固定基準面に対する可動要素の対の回転運動を目立たせる。この固定基準面には、少なくとも2つの弾性的に同様な細長い曲げ可能な部分を有する第1の弾性変形可能な本体と、第2の弾性変形可能な本体と、及び堅固に固定する手段とがある。各曲げ可能な部分の両端はそれぞれ、前記可動要素の大きくなっている堅固な部分と一体化されており、その第1の堅固な部分は、基準面を定めるように固定されており、第2の堅固な部分は、第1の堅固な部分に対する目立つ回転運動をするように弾性的に支持され、前記第2の弾性変形可能な本体は、第1の弾性変形可能な本体と実質的に同一である。前記堅固に固定する手段は、音叉構造を与えるように離れているように前記弾性変形可能な本体の第1の堅固な部分を堅固に固定する。前記音叉の各枝には、前記弾性変形可能な本体の1つの自由端がある。
【0009】
同じ出願人のSwatch GROUP RESEARCH & DEVELOPMENT Ltdによる欧州特許出願EP3324247A1は、ムーブメントのメインプレートに固定されたりメインプレートを形成したりするように構成している機械式腕時計用ムーブメントのための細長材共振器を開示している。この共振器は、メインプレートに固定されていたりメインプレートを形成したりするように構成している固定構造を有しており、このメインプレートの固定構造に対して、少なくとも1つの慣性要素が振動及び/又は発振するように構成しており、この共振器は、少なくとも1つの弾性細長材を有しており、この弾性細長材は、第1の端における、固定構造上に配置された第1のアンカー点と、第2の端における、少なくとも1つの慣性要素上に配置された第2のアンカー点との間に延在している。この細長材は、実質的に主平面内にて振動するように構成している。この細長材は、主平面内における慣性要素のためのベアリングを形成する。共振器1000は、自身が備える細長材を衝撃から保護するために、第1のアンカー点及び/又は第2のアンカー点上にて、衝撃を受けたときに損傷しないように各細長材を保護するように構成している少なくとも1つの平坦な衝撃対策デバイスを有する。この平坦な衝撃対策デバイスは、前記主平面内における予応力の力でプリロードされ所定の安全応力値にセットされた少なくとも第1のフレキシブル要素を有する。
【0010】
PATEK PHILIPPEによる欧州特許出願EP2998800A2は、少なくとも第1の弾性細長材によって接続している第1の堅固な部分と第2の堅固な部分を定める第1のモノリシック部品と、及び少なくとも第2の弾性細長材によって接続している第3の堅固な部分と第4の堅固な部分を定める第2のモノリシック部品とを有する、フレキシブルなピボットを備えた計時器用部品を開示している。この第1及び第2のモノリシック部品は、互いに組み付けられ、第1及び第3の堅固な部分は、互いに一体化されており、第2及び第4の堅固な部分は、互いに一体化されている。前記少なくとも1つの第1の弾性細長材及び少なくとも1つの第2の弾性細長材は、接触せずに交差し、第1及び第3の堅固な部分に対する第2及び第4の堅固な部分のための仮想回転軸を定める。この部品は、第2及び第4の堅固な部分と一体化されているベアリングを備え、このベアリングは、前記仮想回転軸とは異なり前記仮想回転軸と実質的に平行である軸のまわりを動く要素の回転をガイドするように意図されている。
【0011】
スイスのETA Manufacture Horlogereによる欧州特許出願EP3130966A1は、少なくとも1つのバレルと、このバレルによって一端において駆動されるギヤ車群と、及び計時器用ムーブメント用のバランス/バランスばね及び帰還システムの形態である共振器を備えるローカル発振器のエスケープ機構とを有する機械式計時器用ムーブメントを開示している。エスケープ機構は、前記ギヤ車群の他端にて駆動される。前記帰還システムは、2つの発振器のレートを比較するためにレートコンパレーターと組み合わさった少なくとも1つの精密基準発振器と、及び前記レートコンパレーターにおける比較の結果に基づいて共振器を減速させたり加速させたりするようにローカル発振器共振器を調整する機構とを有する。
【0012】
ETA SA Manufacture Horlogere Suisseによるスイス特許出願CH709536A2は、プレートに対して少なくとも回転運動をするようにマウントされギヤ列を介して駆動トルクを受けるように構成しているエスケープ車と、及び第1の弾性戻し手段によって前記プレートに接続される第1の剛構造を有する第1の発振器とを備える計時器調整機構を開示している。この調整機構は、第2の弾性戻し手段によって前記第1の剛構造に接続される第2の剛構造を有する第2の発振器を有しており、これは、前記エスケープ車が備える相補的なベアリング手段と連係するように構成しているベアリング手段を有しており、これによって、前記第1の発振器と前記第2の発振器が前記ギヤ列と同期する。
【0013】
同じ出願人による欧州特許出願EP17183666を参照によって本明細書に組み入れる。これは、角ストロークが大きいピボットを開示している。細長材の間の角度を約25〜30°にし、交差点がそれらの細長材の長さの約45%の位置にあることによって、(40°以上までにわたる)大きな角ストロークにわたって良好な等時性と姿勢の影響を受けない性質を同時に達成することができる。良好な面外剛性を維持しつつ、角ストロークを最大限にするために、細長材は薄く長くされる。アスペクト比、すなわち、細長材の厚みに対する高さの比、の値を用いることは、理論的に有利である。しかし、実際上、アンチクラスティックな曲がりの現象にしばしば遭遇する。この現象は、性能に悪影響を与える。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、プレート900に直接的又は間接的に固定された少なくとも1つの剛支持要素4と固体慣性要素5を有する計時器用機械式発振器100に関する。この発振器100は、剛支持要素4と固体慣性要素5の間に、フレクシャーベアリング機構200を有する。このフレクシャーベアリング機構は、固体慣性要素5を支持しその慣性要素5を待機位置に戻すように構成している少なくとも2つの第1の可撓性細長材31、32を有する。この固体慣性要素5は、前記待機位置を中心として振動平面内にて角振動するように構成している。
【0026】
2つの第1の可撓性細長材31及び32は、互いに接触せず、待機位置において、振動平面上への射影において、交差点Pで交差する。この交差点P又はそのすぐ近くを、固体慣性要素5の回転軸が振動平面に垂直に通る。以下に記載する幾何学的な要素はすべて、特に別の言及をしていなければ、止められた発振器の待機位置にあるものと考えるべきである。
【0027】
図1〜4は、2つの第1の可撓性細長材31、32によって接続された剛支持要素4と固体慣性要素を備える第1の変種を示している。
【0028】
剛支持要素4と第2の固体慣性要素5における第1の可撓性細長材31、32の埋め込み点が、振動平面に平行な少なくとも2つの細長材の方向DL1、DL2を定め、これらの細長材の方向DL1、DL2の間に、振動平面上への射影において、頂角αが形成される。
【0029】
交差点Pの位置は、埋め込み点比X=D/Lによって定められる。ここで、Dは、振動平面上への射影における第1の剛支持要素4における第1の細長材31、32の埋め込み点の1つと交差点Pとの間の距離であり、Lは、振動平面上への射影における対応する細長材31、32の全長である。また、埋め込み点比D/Lの値は0〜1であり、頂角αは70°以下である。
【0030】
好ましくは、頂角αは60°以下であり、同時に、各第1の可撓性細長材31、32に対して、埋め込み点比D1/L1、D2/L2は、0.15〜0.85である。
【0031】
具体的には、
図2〜4に示しているように、待機位置にある発振器100の重心は、振動平面上への射影における細長材31、32の全長Lの10〜20%であるオフセットεの分、交差点Pから離れている。特に、オフセットεは、振動平面上への射影における細長材31、32の全長Lの12〜18%である。
【0032】
特に、図に示しているように、第1の細長材31、32及びそれらの埋め込み点は一緒に、振動平面上への射影において、交差点Pを通り抜ける対称軸AAに対して対称的なピボット1を定める。
【0033】
特に、振動平面上への射影においてピボット1が待機位置にて対称軸AAに対して対称であれば、固体慣性要素5の重心はピボット1の対称軸AA上に位置する。射影において、この重心は、交差点Pと一致することもあり、一致しないこともある。
【0034】
特に、
図2〜4に示しているように、固体慣性要素5の重心は、固体慣性要素5の回転軸に対応する交差点Pから非ゼロの距離離れて位置している。
【0035】
具体的には、振動平面上への射影において、固体慣性要素5の重心は、ピボット1の対称軸AA上に位置しており、交差点Pから非ゼロの距離離れて位置している。この距離は、振動平面上への射影における細長材31、32の全長Lの0.1〜0.2倍である。
【0036】
特に、第1の細長材31及び32は、まっすぐな細長材である。
【0037】
特に、頂角αは、50°以下であり、又は40°以下であり、又は35°以下であり、又は30°以下である。
【0038】
特に、
図5に示しているように、埋め込み点比D1/L1、D2/L2は、0.15〜0.49又は0.51〜0.85である。
【0039】
変種の1つ、特に、
図5の実施形態において、頂角αは50°以下であり、埋め込み点比D1/L1、D2/L2は、0.25〜0.75である。
【0040】
変種の1つ、特に、
図5の実施形態において、頂角αは40°以下であり、埋め込み点比D1/L1、D2/L2は、0.30〜0.70である。
【0041】
変種の1つ、特に、
図5の実施形態において、頂角αは35°以下であり、埋め込み点比D1/L1、D2/L2は、0.40〜0.60である。
【0042】
好ましくは、
図5に示しているように、頂角α及び埋め込み点比X=D/Lは、以下の関係を満たす。
h1(D/L)<α<h2(D/L)、
ここで、0.2≦X<0.5に対して、
h1(X)=116−473*(X+0.05)+3962*(X+0.05)
3−6000*(X+0.05)
4、
h2(X)=128−473*(X−0.05)+3962*(X−0.05)
3−6000*(X−0.05)
4、
0.5<X≦0.8に対して、
h1(X)=116−473*(1.05−X)+3962*(1.05−X)
3−6000*(1.05−X)
4、
h2(X)=128−473*(0.95−X)+3962*(0.95−X)
3−6000*(0.95−X)
4
である。
【0043】
特に、図に示している実施形態(これに限定されない)において、第1の可撓性細長材31及び32は、同じ長さL及び同じ距離Dを有する。
【0044】
特に、これらの第1の可撓性細長材31及び32は、それらの埋め込み点の間で、同一である。
【0045】
図6〜8は、機械式発振器100の第2の変種を示しており、剛支持要素4は、発振器100が備える固定構造に対して直接的又は間接的に動くことができ、第1の可撓性細長材31、32と同様な形態で構成している2つの第2の可撓性細長材33、34を介して第3の剛体要素6によって担持される。
【0046】
特に、図に示している実施形態(これに限定されない)において、振動平面上への射影において、第1の可撓性細長材31、32と第2の可撓性細長材33、34は同じ交差点Pで交差する。
【0047】
別の特定の実施形態(図示せず)において、待機位置にて、振動平面上への射影において、第1の可撓性細長材31、32と第2の可撓性細長材33、34は、ピボット1が対称軸AAに対して対称である場合、両方ともピボット1の対称軸AA上に位置している2つの別個の点にて交差する。
【0048】
特に、剛支持要素4と第3の剛体要素6における第2の可撓性細長材33、34の埋め込み点は、振動平面に平行である2つの細長材の方向を定め、それらの間に、振動平面上への射影において、第1の可撓性細長材31、32の頂角αと同じ二等分線の頂角を形成する。特に、第2の可撓性細長材33、34のこれらの2つの方向は、第1の可撓性細長材31、32と同じ頂角αを有する。
【0049】
特に、図に示した例(これに限定されない)におけるように、第2の可撓性細長材33、34は、第1の可撓性細長材31、32と同一である。
【0050】
特に、振動平面上への射影において、ピボット1が待機位置にて対称軸AAに対して対称であれば、固体慣性要素5の重心はピボット1の対称軸AA上に位置する。
【0051】
同様に、特に、ピボット1が待機位置にて対称軸AAに対して対称であれば、剛支持要素4の重心は振動平面上への射影においてピボット1の対称軸AA上に位置する。
【0052】
特定の変種において、振動平面上への射影において、待機位置にてピボット1が対称軸AAに対して対称であれば、固体慣性要素5の重心及び剛支持要素4の重心の両方がピボット1の対称軸AA上に位置する。特に、ピボット1の対称軸AA上への射影において、固体慣性要素5の重心と剛支持要素4の重心は一致する。
【0053】
このような重なり合っているピボットに対応する図に示している特定の構成においては、振動平面上への射影において、第1の可撓性細長材31、32と第2の可撓性細長材33、34は、同じ交差点Pにて交差し、この交差点Pは、さらに、前記射影における固体慣性要素5の重心に対応しており又は少なくとも可能な限り近くにある。特に、この同じ点は、剛支持要素4の重心の射影にも対応している。特に、この同じ点は、さらに、発振器100全体の重心の射影に対応している。
【0054】
この重なり合っているピボット構成の特定の変種において、ピボット1が振動平面上への射影において待機位置にて対称軸AAに対して対称であれば、固体慣性要素5の重心は、ピボット1の対称軸AA上であって固体慣性要素5の回転軸に対応する交差点から非ゼロの距離離れている位置にあり、この非ゼロの距離は、
図2〜4のオフセットεと同様なオフセットで、振動平面上への射影における細長材33、34の全長Lの0.1〜0.2倍である。
【0055】
同様に、特に、ピボット1が対称軸AAに対して対称であれば、固体慣性要素5の重心は、振動平面上への射影において、ピボット1の対称軸AA上であって剛支持要素4の回転軸に対応する交差点から非ゼロの距離離れた位置にあり、この非ゼロの距離は、振動平面上への射影における細長材31、32の全長Lの0.1〜0.2倍である。
【0056】
同様に、特に、ピボット1が対称軸AAに対して対称であれば、剛支持要素4の重心は、振動平面上への射影において、ピボット1の対称軸AA上であって固体慣性要素5の回転軸に対応する交差点Pから非ゼロの距離離れた位置にある。具体的には、この非ゼロの距離は、振動平面上への射影における細長材33、34の全長Lの0.1〜0.2倍である。
【0057】
同様に、特に、ピボット1が対称軸AAに対して対称であれば、剛支持要素4の重心は、振動平面上への射影において、ピボット1の対称軸AA上であって剛支持要素4の回転軸に対応する交差点から非ゼロの距離離れた位置にあり、この非ゼロの距離は、振動平面上への射影における細長材31、32の全長Lの0.1〜0.2倍である。
【0058】
同様に、特に、剛支持要素4の重心は、ピボット1の対称軸AA上であって交差点Pから非ゼロの距離離れた位置にあり、この非ゼロの距離は、振動平面上への射影における細長材33、34の全長Lの0.1〜0.2倍である。
【0059】
特に、図の変種に示しているように、ピボット1が振動平面上への射影において対称軸AAに対して対称であれば、発振器100の重心は、待機位置にて対称軸AA上に位置する。
【0060】
特に、ピボット1が対称軸AAに対して対称であれば、固体慣性要素5は、ピボット1の対称軸AAの方向に長くなっている。これは、例えば、
図1〜4の場合である。これにおいては、慣性要素5に基礎部があり、この基礎部に、いくつかのリム区画が設けられた長いアーム又は円弧状の慣性ブロックを有する伝統的なバランスが固定されている。目標は、ピボットの対称軸のまわりの外的な角加速度の影響を最小限にすることである。なぜなら、角度αが小さいので細長材の前記対称軸のまわりの回転剛性が低いからである。
【0061】
本発明は、MEMS、LIGA又は同様のプロセスによって、細長材、そして、それらが連結する固体の部品が、モノリシック成形された態様に非常に適している。これらは、微細機械加工可能又は少なくとも部分的にアモルファスな材料によって作られる。具体的には、ケイ素の態様の場合には、発振器100は、好ましくは、フレキシブルなケイ素製細長材に二酸化ケイ素を付加することによって温度補償される。変種の1つにおいて、細長材は、溝内に埋め込まれることなどによって、組み付けられることができる。
【0062】
図6〜9の場合におけるように、直列構成の2つのピボットがあれば、望まない運動が互いに相殺するように構成が選ばれる場合に、重心を回転軸上に位置させることができる。これは、有利な変種(これに限定されない)を構成する。しかし、このような構成を選ぶことは必要ではなく、このような発振器は、重心を回転軸上に位置させる必要性なしに、2つのピボットが直列構成で機能する。もちろん、図示した実施形態は、特定の幾何学的なアライメント又は対称構成に対応しているが、異なる、又は異なる交差点を有する、又は重心がアライメントから外れている、2つのピボットを一方が他方の上になるように配置したり、あるいはバランスの振幅をさらに増加させるように中間質量体を有するように、直列構成の細長材のセットの数を多くしたりすることができる。
【0063】
図示した変種において、回転軸、細長材の交差点及び重心はすべて、共面である。これは、特定の有利な場合であり、これに限定されない。
【0064】
このようにして、以下のように大きな角ストロークを得ることができることがわかるであろう。いずれの場合にも角ストロークを30°よりも大きくすることができ、50°や60°に達するようにすることもできる。このことによって、スイス式レバー、移動止め、同軸などのすべての通常のタイプの機械式エスケープの組み合わせに対応できるようになる。
【0065】
また、細長材の高アスペクト比値の理論的な使用と等価な実際的な手法を決めることが課題となる。
【0066】
このために、単一の細長材の代わりに、組み合わさったふるまいが等価であり各基本的な細長材がアスペクト比をしきい値までに制限されるような複数の基本的な細長材によって置き換えることによって、細長材を長手方向にて分けることは有利である。このように、各基本的な細長材のアスペクト比は、単一の基準細長材と比較して減少し、これによって、最適な等時性及び姿勢の影響を受けない性質を達成する。
【0067】
各細長材31、32は、アスペクト比RA=H/Eを有する。ここで、Hは、振動平面と、長さLに沿った細長材31、32の長手方向との両方に垂直な細長材31、32の高さであり、Eは、長さLに沿った細長材31、32の長手方向に垂直な振動平面内における細長材31、32の厚みである。
【0068】
好ましくは、アスペクト比RA=H/Eは、各細長材31、32にて10未満である。より詳細には、このアスペクト比は8未満である。また、可撓性細長材31、32の総数は、厳密に2よりも大きい。
【0069】
特に、発振器100は、第1の細長材の方向DL1に延在している主細長材31と呼ぶ第1の細長材を第1の数N1有しており、第2の細長材の方向DL2に延在している第1の副細長材32を第2の数N2有しており、これらの第1の数N1と第2の数N2はそれぞれ2以上である。
【0070】
特に、第1の数N1は、第2の数N2と等しい。
【0071】
特に、発振器100は、第1の細長材の方向DL1に延在している1つの主細長材31と、及び第2の細長材の方向DL2に延在している1つの副細長材32とによって形成される少なくとも1つの対を有する。各対において、主細長材31は、向きを除いて副細長材32と同一である。
【0072】
特定の変種において、発振器100は、第1の細長材の方向DL1に延在している1つの主細長材31と、及び第2の細長材の方向DL2に延在している1つの副細長材32とによって形成された対のみを有し、各対において、主細長材31は向きを除いて副細長材32と同一である。
【0073】
別の変種において、発振器100は、第1の細長材の方向DL1に延在している1つの主細長材31と、及び第2の細長材の方向DL2に延在している複数の副細長材32とによって形成された少なくとも1つの細長材群を有する。各場合の各細長材群において、主細長材31の弾性的ふるまいは、向きを除いて複数の副細長材32の組み合わせに起因する弾性的ふるまいと同一である。
【0074】
また、1つの可撓性細長材のふるまいは、そのアスペクト比RAに依存するが、自身に与えられる曲がりの値にも依存することには注目される。その偏向される曲がりは、アスペクト比の値と、特に埋め込み点における、局所的な曲率半径の値との両方に依存する。このことが、平面上への射影における細長材の対称的な構成を採用することが好ましい理由である。
【0075】
本発明は、少なくとも1つのこのような機械式発振器100を有する計時器用ムーブメント1000に関する。
【0076】
本発明は、さらに、少なくとも1つのこのような計時器用ムーブメント1000を有する腕時計2000に関する。
【0077】
適切な製造方法は、下記の様々なタイプのピボットを得るために以下の操作を実行することを伴う。
【0078】
AABBタイプのピボットを得るために、以下を実行する。
(a)例として、2つのSOIウェハーのアセンブリーに起因する(これに限定されない)、少なくとも4つの層を備えた基材を用いる。
(b)AAを得るようにDRIEプロセスによって表側エッチングを行う。特に、一体化された2つの層に対してエッチングを行う。
(c)BBを得るようにDRIEプロセスによって裏側エッチングを行う。特に、一体化された2つの層に対してエッチングを行う。
(d)埋められた酸化物に対するエッチングによってこれらの4つの層を部分的に分離する。
【0079】
DRIE(深堀り反応性イオンエッチング)プロセスの精度が高いために、5μm以下の非常に高いポジショニングとアライメントの精度を達成することができる。これは、非常に良好なサイドツーサイドのアライメントを確実にする光学的アライメイトシステムに起因している。当然、選んだ材料に応じて同様のプロセスを用いることができる。
【0080】
例えば、2つのDSOIをアセンブルすることによって、より大きな数の層を備えた基材、特に、6つの利用可能な層を備えた基材、を用いて、AAABBBタイプの構造を得ることができる。
【0081】
同じAABBタイプのピボットを得るための1つの変種は以下によって構成している。
(a)2つの層を備える2つの標準的なSOI基材を用いる。
(b)Aを得るように表側、Aを得るように裏側にて、第1の基材に対してDRIEエッチングする。
(c)Bを得るように表側、Bを得るように裏側で、第2の基材に対してDRIEエッチングする。操作b及びcの代わりに、表側と裏側のエッチングを行わずに第1の基材と第2の基材に対して1つの操作で2つの層を通り抜けるようにエッチングすることができる。
(d)AABBを得るように、2つの基材のウェハーツーウェハーボンディング又は個々の部品のパートツーパートアセンブリーを行う。そして、当業者に周知の手法で、幾何学的構成の正確なアライメントが、ウェハーツーウェハーボンディングマシンの詳細又はパートツーパートプロセスにリンクされる。
【0082】
ABABタイプのピボットを得るために以下を行う。
(a)2つの層を備える2つの標準的なSOI基材を用いる。
(b)Aを得るように表側、Bを得るように裏側で、第1の基材に対してDRIEエッチングする。
(b)Aを得るように表側、Bを得るように裏側で、第2の基材に対してDRIEエッチングする。
(d)ABABを得るように、2つの基材のウェハーツーウェハーボンディング又は個々の部品のパートツーパートアセンブリーを行う。そして、上記のように、幾何学的構成の正確なアライメントが、ウェハーツーウェハーボンディングマシンの詳細又はパートツーパートプロセスにリンクされる。
【0083】
細長材の数と利用可能な装置に応じて、当該方法の他の多くの変種を実装することができる。
【0084】
DRIEケイ素エッチングによる標準的な製造方法によっては、2より大きい数の別個のレベルがあるモノリシックなピボットを容易に製造することが依然としてできない。したがって、別々のいくつかの部品を製造して、これらの部品を組み付ける方が容易である。しかし、組み付け時のエラーの影響を受けないようにするには、最適な等時性及び/又は姿勢の影響を受けない性質を得るように、1μmよりも良い精度が必要である。この課題を克服するために、以下に記載する製造上の戦略を採用することが必要である。
【0085】
第1のステップにおいて、異なる方向を有する2つの細長材が、非常に高い精度で組み付けられなければならない。本発明は、
図19に示しているように、フレクシャーベアリングないしピボットを、4つの細長材を有するフレクシャーベアリングの場合に、例えば、上側サブユニットと下側サブユニットである、2つの細長材を備えたピボットによって形成されているサブユニットに分割することを提案するものである。これにおいては、2つの細長材を備えた2つのピボットのサブユニットに分けることができる4つの細長材が交互構成となっている。
図21及び22は、交互構成の細長材ではなくフランク構成となっている細長材の場合における同様な細分化を示している。各サブユニットは、十分なアライメントの精度を確保するために、2つのレベルに対するDRIEエッチングによって作られる(SOIウェハーが両面にエッチングされる)。
【0086】
そして、上側サブユニットが下側サブユニットに組み付けられる。
【0087】
このアセンブリプロセスは、以下のいずれの伝統的な方法によっても行うことができる。すなわち、アライメントピンやねじ、ボンディング、ウェハー融解ボンディング、溶接、鑞付、又は当業者に知られた他のいずれの方法をも行うことができる。
【0088】
アセンブリエラーは、上側及び下側サブユニットの回転軸の小さなオフセットΔによって明らかになる。これによって、上側サブユニットによって与えられる共振器の回転運動が、下側サブユニットによって与えられる回転運動に対してアライメント外れになる。このオフセットが超過応力を発生させることを止めるために、当該機構は、少なくとも1つの並進運動台を有する。その制限運動は、2つの別個の軸の回転の間の不一致を吸収することができる。並進運動台の少なくとも1つは、等時性を害する運動における不一致を防ぐように十分にフレキシブルでなければならない。
図23に示しているように、2つの同一の並進運動台が実装される場合、それらの並進運動台は、等時性を害する運動における不一致を防ぐように十分にフレキシブルであり、かつ、ピボットの位置を明確に決めるために十分に堅くなければならない。計算することで、回転軸の間のオフセットが10μm未満である場合、これらの条件どうしが矛盾しないことがわかった。このような場合は、伝統的なアセンブリプロセスによって達成することができる。当然、このようなアセンブリーの精度は、ほぞ穴とほぞのタイプの相補的なエッチングによって、又は間に非ゼロの角度を形成する複数のほぞ穴とほぞのアセンブリー、又は精密機械工学において知られている他の構成によって、改善することができる。
【0089】
特に、図に示しているように、フレクシャーベアリング機構200には、互いに重なり合っている、少なくとも1つの上側レベル28及び少なくとも1つの下側レベル29がある。
【0090】
上側サブユニットには、上側レベル28がある。上側レベル28には、上側支持体48と上側慣性要素58の間にて、射影において上側交差点PSで交差している、第1の上側細長材の方向DL1Sに延在している少なくとも1つの上側主細長材318及び第2の上側細長材の方向DL2Sに延在している上側副細長材328がある。
【0091】
下側サブユニットには、下側レベル29がある。この下側レベル29には、下側支持体49と下側慣性要素59の間に、ずれによって射影において上側交差点PSから待機状態にて離れている下側交差点PIにて交差している、第1の下側細長材の方向DL1Iに延在している少なくとも1つの下側主細長材319及び第2の下側細長材の方向DL2Iに延在している下側副細長材329がある。
【0092】
また、少なくとも上側レベル28又は下側レベル29には、プレート900と上側支持体48又は下側支持体49の間に、それぞれ上側並進運動台308又は下側並進運動台309があり、これは、振動平面内における1つ又は2つの自由度の軸に沿った並進運動を可能にする少なくとも1つの弾性接続を有し、この弾性接続の2つの軸に沿ったその並進運動的な剛性は、フレクシャーベアリング機構200が備える各可撓性細長材31、32、333、34、318、319、328、329よりも低い。
【0093】
なお、この弾性接続によっては、共振器の軸に平行な軸のまわりの回転が可能にならない。
【0094】
なお、上側レベル28の上側方向DL1S及びDL2Sが、下側レベル29の下側方向DL1I及びDL2Iと同じであることは必要ではない。好ましくは、これらは同じ二等分線を有する。
【0095】
特に、フレクシャーベアリング機構200が、同一である2つの上側及び下側並進運動台308及び309を有する場合、慣性要素5の回転軸が通り抜ける点Pは、上側交差点PSと下側交差点PIの間の正確に中心に位置する。変種の1つにおいて、この点Pは、下側レベル29に並進運動台がなければ正確に下側交差点PI上に位置し、又は上側レベル28に並進運動台がなければ上側交差点PS上に位置する。
【0096】
好ましくは、発振器100は、自身が備える各フレクシャーベアリング機構200に対して、単一の固体慣性要素5を有する。特に、フレクシャーベアリング機構200を1つのみ有し、固体慣性要素5を1つのみ有する。
【0097】
当然、図に示している並進運動台308及び309の好ましい構成には限定されない。これらの並進運動台308及び309は、慣性要素5と、その慣性要素の側の埋め込み点の間に位置することができる。
【0098】
共通の平行な平面上への射影において可撓性細長材の間で形成される角度の二等分線の軸がXとYとして定められる場合、軸X及び軸Yに沿った並進運動台の組み合わせは、同じ軸に沿ったフレクシャーピボットよりもフレキシブルでなければならない。この規則は、レベルの数にかかわらず有効であり、軸X及び軸Yに沿った並進運動を行うすべての表の組み合わせに起因する蓄積は、フレクシャーピボットよりもフレキシブルでなければならない。このように、振動平面内における1つ又は2つの自由度の軸に沿った上側並進運動台308又は下側並進運動台309の弾性接続は、好ましくは、これらの軸X及びYに沿った弾性接続である。
【0099】
運動における不一致に起因する並進運動台における弾性エネルギーの付加的なストレージは、ピボットの主なエネルギーストレージに加えられ、その付加的なストレージの値が主ストレージよりもはるかに低くないかぎり、等時性を害する傾向がある。このために、並進運動台における弾性接続が、フレクシャーピボットよりもはるかにフレキシブルでなければならない。
【0100】
特に、本発明によると、上側レベル28と下側レベル29はそれぞれ、プレート900と、上側支持体48、そして、下側支持体49の間に、振動平面内における1つ又は2つの自由度の軸に沿った少なくとも1つの弾性接続を有する、上側並進運動台308又は下側並進運動台309を有し、この弾性接続の剛性は、各可撓性細長材よりも低い。
【0101】
1つのレベル当たり1つの並進運動台があるとき、これらの並進運動台どうしは必ずしも同一ではない。
【0102】
1つの変種においては、2つの異なる並進運動台を用い、第1の並進運動台はフレキシブルであり、これによって、運動における不一致が等時性を害さず、第2の並進運動台は、ピボットのポジショニングを確実にするために堅い。
【0103】
別の変種において、1つのレベルに、並進運動台があり、他のレベルに、堅固なアタッチメントを有することができる。
【0104】
上側慣性要素58と下側慣性要素59は、固体慣性要素5のすべて又は一部を形成し、互いに直接的又は間接的に堅く接続される。上側支持体48と下側支持体49は、場合に応じて、剛支持要素4又はプレート900に堅く接続される堅固な上側部分480又は堅固な下側部分490に、直接、又は上側並進運動台308又は下側並進運動台309を介して、接続される。
【0105】
図23及び24は、このような接続の例を示している。上側並進運動台308は、上側支持体48と上側中間質量体68の間に、方向Xに延在している第1の可撓性弾性接続78を有し、上側中間質量体68と上側剛部分480の間に、方向Yに延在している第2の可撓性弾性接続88を有する。同様に、上側並進運動台309は、上側支持体49と上側中間質量体69の間に、方向Xに延在している第1の可撓性弾性接続79を有し、上側中間質量体69と上側剛部分490の間に、方向Yに延在している第2の可撓性弾性接続89を有する。
【0106】
したがって、並進運動台の運動、好ましくは、複数の並進運動台の運動が、上側サブユニットと下側サブユニットの回転の間のいずれの相違をも吸収することができる。また、例えば、各並進運動台は、落下したときや衝撃を受けたときなどに、大きな加速度から機構を保護することに貢献する。
【0107】
もしアセンブリエラーΔが十分に小さければ、第1のステップに言及しながら上で説明したアセンブリーによって、いずれの付加された異方性をも無視できるようになることは明らかである。
【0108】
他方では、エスケープにおける損失を補償することなどのために制御された形態で異方性を導入するために、アセンブリエラーΔを意図的に誇張するように決めることができる。このとき、プレートにおける埋め込み点の少なくとも1つ、すなわち、図示している特定の変種(これに限定されない)の場合には上側支持体48及び/又は下側支持体49、を可動にし調整可能にすると有利である。実際に、これらの2つの埋め込み点の相対的位置を調整すると、並進運動台308、309の剛性が変わり、このことには、付加された異方性を調整する効果がある。このような調整は、カムと溝の組み合わせ、又は時計師に知られている他の手法によって、容易に行うことができる。
【0109】
短く書くと、
図24に示しているように、プレートにおける埋め込み点の少なくとも1つの位置を動かすことによって、アセンブリエラーΔによって発生する異方性を調整することができる。
【0110】
短く書くと、少なくとも1つの並進運動台を備えるこの特定の構成によって、上側段と下側段の間のアライメントを確実にし、上側段と下側段が同じ軌跡を追従しなかったときに細長材に与えられる大きな応力を回避することが可能になる。
【0111】
別の代替例は、当該機構に上側並進運動台308と下側並進運動台309を設け、これにおいて、上側支持体48と下側支持体49が剛支持要素4又はプレート900にもはや堅く接続されておらず、ブレースタイプ又は同等の接続によって、剛支持要素4又はプレート900の固定軸に対するXとYにおける反対側の平面的な運動に制限される。この手法には、共振器の回転軸をわずかに動かさずに異方性を調整することができるという利点がある。
【0112】
並進運動を行うフレクシャーベアリングを形成する並進運動台を様々な方法で作ることができることは明らかである。当業者であれば、以下の参考文献において例を探すことができるであろう。
[1] S.Henein, Conception des guidages flexibles. PPUR
[2] Larry L. Howell, Handbook of compliant mechanisms, WILEY
[3] Zeyi Wu and Qingsong Xu, Actuators 2018
図25〜27に、例(これに限定されない)を示している。
【0113】
図28は、ネック部を介して接続している並進運動台を備える単純化された例を示している。上側支持体48は、第2の中間要素889へと第1の弾性ネック部880によって懸架される中間要素488に接続される。第2のネック部890は、プレート900に堅く接続されている下側剛部分490と弾性接続を形成する。この例において、上側慣性要素58と下側慣性要素59は、別の中間要素589に接続されており、これによって、この中間要素589とともに固体慣性要素5を形成する。