特許第6843208号(P6843208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843208ヒトIL−4受容体に対する高親和性ヒト抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843208
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】ヒトIL−4受容体に対する高親和性ヒト抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20210308BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20210308BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20210308BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   A61K39/395 NZNA
   A61P37/08
   A61K9/08
   !C07K16/28
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-191643(P2019-191643)
(22)【出願日】2019年10月21日
(62)【分割の表示】特願2018-209345(P2018-209345)の分割
【原出願日】2009年10月27日
(65)【公開番号】特開2020-7378(P2020-7378A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年10月21日
(31)【優先権主張番号】12/260,307
(32)【優先日】2008年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョウエル・エイチ・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】タミー・ティー・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジャネット・エル・フェアハースト
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ジェイ・パパドプロス
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/054606(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/047331(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/092340(WO,A1)
【文献】 J. Mol. Biol., (1992), 224, [2], p.487-499
【文献】 Immunol. Today, (1993), 14, [6], p.243-246
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
C12N 15/00−15/90
C07K 16/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー反応を処置するための、ヒトインターロイキン−4受容体(hIL−4R)(配列番号274)に特異的に結合する、ヒト抗体又はその抗原結合フラグメントを含む注射用調製物であって、
ここで、前記抗体又は抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)とを含み、ここで、
HCVRのアミノ酸配列が、配列番号162又はそれと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含み
LCVRのアミノ酸配列が、配列番号164又はそれと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含み、
HCVRは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、HCDR3)を含み、LCVRは、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号148、150、152で表わされるアミノ酸配列であり、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号156、158、160で表わされるアミノ酸配列であり、
前記抗体又は抗原結合フラグメントは、STAT6ルシフェラーゼバイオアッセイにより測定した場合に、30pM若しくはそれ以下のIC50でhIL−4活性を遮断する、前記注射用調製物。
【請求項2】
静脈内、皮下、皮内又は筋内に投与される、請求項1に記載の注射用調製物。
【請求項3】
滅菌水性媒体、可溶化剤、及び/又は非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の注射用調製物。
【請求項4】
油性媒体、及び/又は可溶化剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の注射用調製物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インターロイキン−4(IL−4、B細胞刺激因子又はBSF−1としても知られる)は、表面免疫グロブリンに特異的な低濃度の抗体に応答してB細胞の増殖を刺激するその能力でもともと特徴付けられていた。IL−4は、T細胞、肥満細胞、顆粒球、巨核球及び赤血球の増殖刺激を含む広範囲の生物学的活性を有することが示されている。IL−4は、休止B細胞におけるクラスII主要組織適合複合体分子の発現を誘導し、そして刺激されたB細胞によるIgE及びIgG1アイソタイプの分泌を増強する。
【0002】
IL−4の生物学的活性は、IL−4の特異的細胞表面受容体により媒介される。ヒトIL−4受容体アルファ(hIL−4R)(配列番号274)は、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載される。hIL−4Rに対する抗体は特許文献4及び特許文献5に記載される。
【0003】
ヒト治療剤として有用な抗体の製造方法には、キメラ抗体及びヒト化抗体を生成することが含まれる(例えば特許文献6を参照のこと)。例えば、ヒト抗体を産生することができる非ヒトトランスジェニックマウスを生成する方法を記載する、特許文献7及び特許文献8を参照のこと。
【0004】
hIL−4Rに対する抗体を使用する方法は、特許文献9;特許文献10;及び特許文献11に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,599,905号
【特許文献2】米国特許第5,767,065号
【特許文献3】米国特許第5,840,869号
【特許文献4】米国特許第5,717,072号
【特許文献5】米国特許第7,186,809号
【特許文献6】米国特許第6,949,245号
【特許文献7】WO94/02602
【特許文献8】米国特許第6,596,541号
【特許文献9】米国特許第5,714,146号
【特許文献10】米国特許第5,985,280号
【特許文献11】米国特許第6,716,587号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の局面において、本発明は、ヒトインターロイキン−4受容体(hIL−4R)に特異的に結合するヒト抗体、好ましくは組み換えヒト抗体を提供する。本ヒト抗体は、高い親和性でhIL−4Rに結合すること及びhIL−4活性を中和する能力を特徴とする。特定の実施態様において、本ヒト抗体は、hIL−4RへのhIL−13/hIL−13R1複合体の結合を遮断することができ、従ってhIL−13によるシグナル伝達を阻害する。本抗体は全長(例えばIgG1又はIgG4抗体)であっても、抗原結合部分(例えばFab、F(ab’)2又はscFvフラグメント)のみを含んでいてもよく、そ
して機能を達成するように、例えば残ったエフェクター機能をなくすように改変され得る(Reddy et al.(2000)J.Immunol.164:1925−1933)。
【0007】
一般的実施態様において、モノマー又はダイマーアッセイにおいて表面プラズモン共鳴により測定した場合に約300pM又はそれ以下のKDでhIL−4R(配列番号274
)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。より特定の実施態様において、抗体又はその抗原結合部分は、約200pM若しくはそれ以下、約150若しくはそれ以下、約100pM若しくはそれ以下、又は約50pMのKDを示す。種々の
実施態様において、抗体又は抗原結合フラグメントは、ルシフェラーゼバイオアッセイにより測定した場合に約100pM若しくはそれ以下のIC50でhIL−4活性を遮断する。より特定の実施態様において、抗体又は抗原結合フラグメントは、STAT6ルシフェラーゼバイオアッセイにより測定した場合に約50pM若しくはそれ以下、約30pM若しくはそれ以下、又は約25pM若しくはそれ以下のIC50を示す。種々の実施態様において、抗体又は抗原結合フラグメントは、STAT6ルシフェラーゼバイオアッセイにより測定した場合に、約100pM若しくはそれ以下、約90pM若しくはそれ以下、約50pM若しくはそれ以下、又は約20pM若しくはそれ以下のIC50でhIL−13活性を遮断する。
【0008】
第二の局面において、本発明の抗体は、配列番号2、18、22、26、42、46、50、66、70、74、90、94、98、114、118、122、138、142、146、162、166、170、186、190、194、210、214、218、234、238、242、258及び262からなる群より選択される重鎖可変領域(HCVR)配列、又はそれらと実質的に類似の配列を含む。
【0009】
第三の局面において、本発明の抗体は、配列番号10、20、24、34、44、48、58、68、72、82、92、96、106、116、120、130、140、144、154、164、168、178、188、192、202、212、216、226、236、240、250、260及び264からなる群より選択される軽鎖可変領域(LCVR)配列、又はそれらと実質的に類似の配列を含む。
【0010】
一実施態様において、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、配列番号2/10、18/20、22/24、26/34、42/44、46/48、50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、98/106、114/116、118/120、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、166/168、170/178、186/188、190/192、194/202、210/212、214/216、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260及び262/264からなる群より選択されるHCVR及びLCVR配列対(HCVR/LCVR)を含む。好ましい実施態様において、本抗体又は抗体フラグメントは、HCVR/LCVR配列対 配列番号162/164、210/212又は18/20を含み;これらのHCVR/LCVR配列対を有する典型的な抗体としては、H4H098P(配列番号:162/164)、H4H083P(配列番号:210/212)、及びH4H095P(配列番号:18/20)と呼ばれる抗体が挙げられる。
【0011】
第四の局面において、本発明はHCVRをコードする核酸分子を提供し、本核酸分子は、配列番号1、17、21、25、41、45、49、65、69、73、89、93、97、113、117、121、137、141、145、161、165、169、185、189、193、209、213、217、233、237、241、257及び261からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は少なくとも95%の相同性を有するそれらの実質的に同一な配列である。
【0012】
第五の実施態様において、本発明は、LCVRをコードする核酸分子を提供し、本核酸
分子は、配列番号9、19、23、33、43、47、57、67、71、81、91、95、105、115、119、129、139、143、153、163、167、177、187、191、201、211、215、225、235、239、249、259及び263からなる群より選択される配列、又は少なくとも95%の相同性を有するそれらの実質的に同一な配列である。
【0013】
一実施態様において、本発明の抗体は、配列番号1/9、17/19、21/22、25/33、41/43、45/47、49/57、65/67、69/71、73/81、89/91、93/95、97/105、113/115、117/119、121/129、137/139、141/143、145/153、161/163、165/167、169/177、185/187、189/191、193/201、209/211、213/215、217/225、233/235、237/239、241/249、257/259及び261/263からなる群より選択されるヌクレオチド配列対によりコードされるHCVR及びLCVRを含む。好ましい実施態様において、本抗体又は抗体フラグメントは、配列番号161/163、209/211及び17/19より選択される核酸配列によりコードされるHCVR/LCVR配列を含む。なおさらに好ましい実施態様において、本抗体又は抗体フラグメントは核酸配列 配列番号161/163によりコードされるHCVR/LCVRを含む。
【0014】
第六の局面において、本発明は、HCDR3及びLCDR3を含む抗体又は抗原結合フラグメントを提供し、ここでHCDR3ドメインは、配列番号8、32、56、80、104、128、152、176、200、224及び248からなる群より選択され;そしてLCDR3ドメインは、配列番号16、40、64、88、112、136、160、184、208、232及び256からなる群より選択される。好ましい実施態様において、HCDR3/LCDR3配列は、配列番号152/160、8/16又は200/208である。なおより好ましい実施態様において、HCDR3及びLCDR3配列は配列番号152及び160である。
【0015】
さらなる実施態様において、抗体又は抗体フラグメントは、配列番号4、28、52、76、100、124、148、172、196、220及び244からなる群より選択されるHCDR1配列、又はその実質的に類似の配列;配列番号6、30、54、78、102、126、150、174、198、222及び246からなる群より選択されるHCDR2配列、又はその実質的に類似の配列;配列番号8、32、56、80、104、128、152、176、200、224及び248からなる群より選択されるHCDR3配列、又はその実質的に類似の配列;配列番号12、36、60、84、108、132、156、180、204、228及び252からなる群より選択されるLCDR1配列、又はその実質的に類似の配列;配列番号14、38、62、86、110、134、158、182、206、230及び252からなる群より選択されるLCDR2配列、又はその実質的に類似の配列;並びに配列番号16、40、64、88、112、136、160、184、208、232及び256からなる群より選択されるLCDR3配列又はその実質的に類似の配列をさらに含む。好ましい実施態様において、抗体又は抗原結合フラグメントは、HCDR配列 配列番号148、150及び152並びにLCDR配列 配列番号156、158及び160;HCDR配列 配列番号4、6及び8並びにLCDR配列 配列番号12、14及び16;並びにHCDR配列 配列番号196、198及び200並びにLCDR配列 配列番号204、206及び208を含む。
【0016】
特定の実施態様によれば、本発明は、配列番号:148/150/152/156/158/160;4/6/8/12/14/16;及び196/198/200/204/206/208からなる群より選択されるHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3配列を有する、抗hIL−4R抗体又はその抗原結合フラ
グメントを提供する。これらのHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3配列を有する典型的な抗体としては、H4H098P(配列番号:148/150/152/156/158/160)、H4H083P(配列番号:196/198/200/204/206/208)、及びH4H095P(配列番号:4/6/8/12/14/16)と呼ばれる抗体が挙げられる。
【0017】
第七の局面において、本発明は、HCDR3及びLCDR3を含むヒト抗体又は抗体フラグメントを特徴とし、ここでHCDR3は、配列番号7、31、55、79、103、127、151、175、199、223及び247からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に同一な配列によりコードされ;そしてLCDR3は、配列番号15、39、63、87、111、135、159、183、207、231及び255からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に同一な配列によりコードされる。
【0018】
さらなる実施態様において、本発明は、配列番号3、27、51、75、99、123、147、171、195、219及び243からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に同一な配列によりコードされるHCDR1ドメイン;配列番号5、29、53、77、101、125、149、173、197、221及び245からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に同一な配列によりコードされるHCDR2ドメイン;配列番号7、31、55、79、103、127、151、175、199、223及び247からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に類似の配列によりコードされるHCDR3ドメイン;配列番号11、35、59、83、107、131、155、179、203、227及び251からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に類似の配列によりコードされるLCDR1ドメイン;配列番号13、37、61、85、109、133、157、181、205、229及び253からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に類似の配列によりコードされるLCDR2ドメイン;並びに配列番号15、39、63、87、111、135、159、183、207、231及び255からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に類似の配列によりコードされるLCDR3ドメインを含むヒト抗体又は抗体フラグメントを特徴とする。好ましい実施態様において、抗体又は抗原結合フラグメントは、ヌクレオチド配列 配列番号147、149、151、155、157及び159;195、197、199、203、205及び207;並びに3、5、7、11、13及び15によりコードされるHCDR配列及びLCDR配列を含む。
【0019】
特定の実施態様において、本発明の抗hIL−4R抗体又は抗原結合フラグメントは、配列番号162で示されるアミノ酸配列を含むHCVR及び配列番号164で示されるアミノ酸配列を含むLCVRを含み、かつ25℃及び37℃でそれぞれ約100pM若しくはそれ以下のKD(モノマー基質)又は70pM若しくはそれ以下のKD(ダイマー基質);約160pM若しくはそれ以下(モノマー基質)又は40pM若しくはそれ以下のKD
(ダイマー基質);及び約10pM若しくはそれ以下(25pMダイマー基質)又は約100pM若しくはそれ以下(200pMモノマー基質)のIC50を特徴とし、これはhIL−4及びhIL−13活性の両方を約30pM若しくはそれ以下のIC50(バイオアッセイで測定された場合)で遮断することができ、そしてサルIL−4Rと交差反応する。
【0020】
特定の実施態様において、本発明の抗hIL−4R抗体又は抗原結合フラグメントは、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含むHCVR及び配列番号20で示されるアミノ酸配列を含むLCVRを含み、かつ約450pM若しくはそれ以下のKD(モノマー又は
ダイマー基質);及び約40pM若しくはそれ以下(25pMダイマー基質)又は約100pM若しくはそれ以下(200pMモノマー基質)のIC50を特徴とし、これはhIL−4及びhIL−13活性の両方を約100pM若しくはそれ以下のIC50(バイオアッセイで測定された場合)で遮断することができる。
【0021】
特定の実施態様において、本発明の抗hIL−4R抗体又は抗原結合フラグメントは、配列番号210で示されるアミノ酸配列を含むHCVR及び配列番号212で示されるアミノ酸配列を含むLCVRを含み、かつ25℃及び37℃でそれぞれ約50pM若しくはそれ以下のKD(モノマー基質)又は30pM若しくはそれ以下のKD(ダイマー基質);約200pM若しくはそれ以下(モノマー基質)のKD又は40pM若しくはそれ以下の
D(ダイマー基質);並びに約10pM若しくはそれ以下のIC50(25pMダイマー
基質)又は約90pM若しくはそれ以下のIC50(200pMモノマー基質)を特徴とし、これは、hIL−4及びhIL−13活性の両方を約25pM若しくはそれ以下のIC50(バイオアッセイで測定された場合)で遮断することができ、そしてサルIL−4Rと交差反応しない。
【0022】
第八の局面において、本発明は、3つの重鎖相補性決定領域及び3つの軽鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む、hIL−4Rに特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを特徴とし、ここでHCDR1は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号265)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gly;X2=Phe;X3=Thr;X4=Phe;X5
=Asp又はArg;X6=Asp又はSer;X7=Tyr;そしてX8=Ala又はG
lyであり;HCDR2は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号266)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Ile又はLeu、X2=Ser、X3=Gly、T
yr又はArg、X4=Ser、Asp又はThr、X5=Gly又はSer、X6=Gl
y、Ser又はVal、X7=Ser又はAsn、そしてX8=Thr、Lys又はIleであり;HCDR3は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11
12−X13−X14−X15−X16−X17−X18(配列番号267)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Ala、X2=Lys、X3=Asp、Glu又はTrp、X4=Gly又はArg、X5=Leu、Thr又はArg、X6=Gly、Arg又はSer、X7=Ile又
はGly、X8=Thr、Phe又はTyr、X9=Ile、Asp又はPhe、X10=Arg、Tyr又はAsp、X11=Pro、Tyrであるか又は存在せず、X12=Argであるか又は存在せず、X13=Tyrであるか又は存在せず、X14=Tyrであるか又は存在せず、X15=Glyであるか又は存在せず、X16=Leuであるか又は存在せず、X17=Aspであるか又は存在せず、そしてX18=Valであるか又は存在せず;LCDR1は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11(配列番号268)の
アミノ酸配列を含み、式中X1=Gln、X2=Asp、Ser又はVal、X3=Ile
又はLeu、X4=Ser、Leu又はAsn、X5=Asn、Tyr又はIle、X6
Trp、Ser又はTyr;X7=Ileであるか又は存在せず;X8=Glyであるか又は存在せず;X9=Tyrであるか又は存在せず;X10=Asnであるか又は存在せず;
そしてX11=Tyrであるか又は存在せず;LCDR2は式X1−X2−X3(配列番号2
69)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Leu、Ala又はVal、X2=Ala又はGly、そしてX3=Serであり;そしてLCDR3は式X1−X2−X3−X4−X5−X6
−X7−X8−X9(配列番号270)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gln又はMet、X2=Gln、X3=Ala又はTyr、X4=Leu又はAsn、X5=Gln又はSer、X6=Thr、Phe又はHis、X7=Pro、X8=Tyr、Ile又はTrp、
そしてX9=Thrである。
【0023】
より特定の実施態様において、HCDR1は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7
8(配列番号265)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gly;X2=Phe;X3=T
hr;X4=Phe;X5=Arg;X6=Asp又はSer;X7=Tyr;そしてX8
Ala又はGlyであり;HCDR2は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号266)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Ile、X2=Ser、X3=Gly又
はTyr、X4=Ser又はThr、X5=Gly、X6=Gly又はSer、X7=Asn、そしてX8=Thr又はLysであり;HCDR3は式X1−X2−X3−X4−X5−X6
−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18(配列番号
267)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Ala、X2=Lys、X3=Asp又はGl
u、X4=Gly又はArg、X5=Leu又はArg、X6=Gly又はSer、X7=Ile又はGly、X8=Thr又はPhe、X9=Ile又はAsp、X10=Arg又はTyr、X11=Proであるか又は存在せず、X12=Argであるか又は存在せず、X13=Tyrであるか又は存在せず、X14=Tyrであるか又は存在せず、X15=Glyであるか又は存在せず、X16=Leuであるか又は存在せず、X17=Aspであるか又は存在せず、そしてX18=Valであるか又は存在せず;LCDR1は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11(配列番号268)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gln、X2=Ser又はVal、X3=Ile又はLeu、X4=Leu又はAsn、
5=Asn又はTyr、X6=Ser又はTyr;X7=Ileであるか又は存在せず;
8=Glyであるか又は存在せず;X9=Tyrであるか又は存在せず;X10=Asnであるか又は存在せず;そしてX11=Tyrであるか又は存在せず;LCDR2は式X1
2−X3(配列番号269)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Leu又はAla、X2=Ala又はGly、そしてX3=Serであり;そしてLCDR3は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号270)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gl
n又はMet、X2=Gln、X3=Ala又はTyr、X4=Leu又はAsn、X5=Gln又はSer、X6=Thr又はHis、X7=Pro、X8=Tyr又はTrp、そし
てX9=Thrである。
【0024】
別のより特定の実施態様において、HCDR1は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号265)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gly;X2=Phe;X3
=Thr;X4=Phe;X5=Asp又はArg;X6=Asp;X7=Tyr;そしてX8=Alaであり;HCDR2は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号
266)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Ile又はLeu、X2=Ser、X3=Gl
y又はArg、X4=Ser又はThr、X5=Gly又はSer、X6=Gly又はVa
l、X7=Ser又はAsn、そしてX8=Thr又はIleであり;HCDR3は式X1
−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18(配列番号267)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Ala、X2=Lys、X3=Asp又はTrp、X4=Gly又はArg、X5=Leu又はThr、X6=Arg又はSer、X7=Ile又はGly、X8=Thr又はTyr、X9=Ile又はP
he、X10=Arg又はAsp、X11=Pro、Tyrであるか又は存在せず、X12=Argであるか又は存在せず、X13=Tyrであるか又は存在せず、X14=Tyrであるか又は存在せず、X15=Glyであるか又は存在せず、X16=Leuであるか又は存在せず、X17=Aspであるか又は存在せず、そしてX18=Valであるか又は存在せず;LCDR1は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11(配列番号26
8)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gln、X2=Asp又はSer、X3=Ile又
はLeu、X4=Ser又はLeu、X5=Tyr又はIle、X6=Trp又はSer;
7=Ileであるか又は存在せず;X8=Glyであるか又は存在せず;X9=Tyrで
あるか又は存在せず;X10=Asnであるか又は存在せず;そしてX11=Tyrであるか又は存在せず;LCDR2は式X1−X2−X3(配列番号269)のアミノ酸配列を含み
、式中X1=Leu又はVal、X2=Ala又はGly、そしてX3=Serであり;そ
してLCDR3は式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号270)
のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gln又はMet、X2=Gln、X3=Ala、X4=Leu又はAsn、X5=Gln又はSer、X6=Thr又はPhe、X7=Pro、X8
=Tyr又はIle、そしてX9=Thrである。
【0025】
第九の局面において、本発明は、HCVR及びLCVR対からのHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3配列を含む抗体又は抗原結合フラグメントを提供し、ここでHCVR/LCVR配列は、配列番号162/164、210/212及び18/20からなる群より選択される。より特定の実施態様において、重鎖及び軽鎖CDR配列は、HCVR配列番号162及びLCVR配列番号164に含有される配列である。別のより特定の実施態様において、重鎖及び軽鎖CDR配列は、HCVR配列番号18及びLCVR配列番号20に含有される配列である。さらに別の特定の実施態様において、重鎖及び軽鎖CDR配列は、HCVR配列番号210及びLCVR配列番号212に含有される配列である。
【0026】
本発明は、改変されたグリコシル化パターンを有する抗hIL−4R抗体を包含する。いくつかの適用では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための改変、又は例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)機能を増大させるためにオリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠失した抗体が有用であるかもしれない(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照のこと。他の適用では、ガラクトシル化の改変が、補体依存性細胞傷害性(CDC)を改変するために行われ得る。
【0027】
第十の局面において、本発明は、本発明の核酸分子を有する組み換えベクター、及びこのようなベクターが含まれている宿主細胞を提供し、本発明の宿主細胞を培養することにより得られる本発明の抗体又は抗原結合フラグメントを製造する方法も同様である。本宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよく、好ましくは宿主細胞はE.coli細胞又は哺乳動物細胞、例えばCHO細胞である。
【0028】
第十一の局面において、本発明は、hIL−4Rに特異的に結合する組み換えヒト抗体及び許容しうる担体を含む組成物を特徴とする。
【0029】
第十二の局面において、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合部分を使用してhIL−4活性を阻害する方法を特徴とする。特定の実施態様において、本発明の抗体はまた、hIL−13/hIL−13R1複合体のhIL−4Rへの結合を遮断する。一実施態様において、本方法は、hIL−4又はhIL−4/hIL−13活性が阻害されるようにhIL−4Rを本発明の抗体又はその抗原結合部分と接触させることを含む。別の実施態様において、本方法は、本発明の抗体又はその抗原結合部分を、hIL−4又はhIL−4/hIL−13活性の阻害により軽減される障害に罹患したヒト被験体に投与することを含む。処置される障害は、hIL−4又はhIL−4/hIL−13活性の除去、阻害又は低減により改善、軽減、抑制又は予防されるいずれかの疾患又は状態である。
【0030】
本発明の抗体又は抗体フラグメントにより処置されるIL−4関連障害としては、例えば関節炎(化膿性関節炎を含む)、疱疹状疾患(herpetiformis)、慢性特発性蕁麻疹、強皮症、肥厚性瘢痕化、ウィップル病、良性前立腺肥大、肺障害、例えば軽度、中程度又は重度の喘息、炎症性障害、例えば炎症性腸疾患、アレルギー反応、川崎病、鎌状赤血球症、チャーグ・ストラウス症候群、グレーブズ病、子癇前症、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ブドウ膜炎、結核、及びネフローゼが挙げられる。
【0031】
他の目的及び利点は、次の詳細な説明を検討することから明らかとなるだろう。
【0032】
詳細な説明
本発明の方法を説明する前に、当然のことながら、本発明は記載される特定の方法及び
実験条件に限定されず、そのようなものとして方法及び条件は変動し得る。また当然のことながら、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を記載する目的のためのみのものであって、限定することを意図されない。
【0033】
そうではないと定義されていなければ、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と同様か又は等価ないずれの方法及び材料も本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料をここで記載する。
【0034】
定義
本明細書で使用される用語「ヒトIL4R」(hIL−4R)は、インターロイキン−4(IL−4)、IL−4Rα(配列番号274)に特異的に結合するヒトサイトカイン受容体を指すことを意図される。用語「ヒトインターロイキン−13」(hIL−13)は、IL−13受容体に特異的に結合するサイトカインを指し、そして「hIL−13/hIL−13R1複合体」は、hIL−13R1複合体にhIL−13が結合することにより形成される複合体を指し、この複合体はhIL−4受容体に結合して生物学的活性を開始する。
【0035】
本明細書で使用される用語「抗体」は、ジスルフィド結合で相互連結された、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を指すことを意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVR又はVH)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(LCVR又はVL)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL1)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域とともに組み込まれている相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。VH及びVLはそれぞれ3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。
【0036】
本明細書で使用される、用語抗体の「抗原結合部分」(又は簡単に「抗体部分」又は「抗体フラグメント」)は、抗原(例えば、hIL−4R)に特異的に結合する能力を保持している、抗体の1つ又はそれ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原に結合する機能は全長抗体のフラグメントにより果たされ得ることが示されている。用語抗体の「抗原結合部分」に包含される結合フラグメントの例には、(i) Fabフラグメント、VL、VH、CL1及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii) F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのF(ab)’フラグメントを含む二価フラグメント;(iii) VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv) 抗体のシングルアームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v) dAbフラグメント(Ward et al.(1989)Nature 241:544−546)、これはVHドメインからなる;並びに(vi) CDRが含まれる。さらに、Fvフラグメント、VL及びVHの2つのドメインは別々の遺伝子でコードされるが、これらは組み換え方法を使用して、VL及びVH領域対が一価の分子を形成するようにそれらを単一の連続した鎖にすることができる合成リンカーにより結合され得る(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423−426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照のこと)。このような単鎖抗体もまた、用語抗体の「抗原結合部分」に包含されることを意図される。単鎖抗体の他の形態(例えば二重特異性抗体)も包含される(
例えば、Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444−6448を参照のこと)。
【0037】
本明細書で使用される「中和」抗体又は「遮断」抗体は、hIL−4Rへのその結合がhIL−4及び/又はhIL−13の生物学的活性の阻害をもたらす抗体を指すことを意図される。hIL−4及び/又はIL−13の生物学的活性のこの阻害は、hIL−4及び/又はIL−13誘導細胞活性化並びにhIL−4RへのhIL−4の結合のような、当該分野で公知のhIL−4及び/又はhIL−13生物活性の1つ又はそれ以上の指標を測定することにより評価することができる(以下の実施例を参照のこと)。
【0038】
「CDR」又は相補性決定領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存された領域内に点在する超可変性の領域である。本発明の抗hIL−4R抗体又はフラグメントの様々な実施態様において、FRはヒト生殖系列配列と同一であってもよいし、天然若しくは人工的に改変されていてもよい。
【0039】
本明細書で使用される用語「表面プラズモン共鳴」は、例えばBIACORETMシステム(Pharmacia Biosensor AB)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより実時間相互作用分析を可能にする光学現象を指す。
【0040】
用語「エピトープ」は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域における特定の抗原結合部位と相互作用する抗原決定基 である。単一の抗原が1つより多くのエピトープを有していてもよい。エピトープは立体構造的であっても線状でもよい。立体構造的エピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なる部分から空間的に並置されたアミノ酸により生成される。線状エピトープはポリペプチド鎖において隣接するアミノ酸残基により生成されるものである。特定の状況では、エピトープは糖類、ホスホリル基、又はスルホニル基の部分を抗原上に含み得る。
【0041】
核酸又はそのフラグメントに言及する場合の用語「実質的な同一性」又は「実質的に同一」は、適切なヌクレオチド挿入又は欠失を含んで別の核酸(又はその相補鎖)と最適に整列される場合に、以下に考察されるようにいずれかの周知の配列同一性アルゴリズム、例えばFASTA、BLAST又はGapにより測定された場合に少なくとも約95%、そしてより好ましくは少なくとも約96%、97%、98%又は99%のヌクレオチド塩基においてヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。
【0042】
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な類似性」又は「実質的に類似の」は、2つのペプチド配列が、例えばプログラムGAP又はBESTFITによりデフォルトギャップ重みを使用して最適に整列された場合に、少なくとも95%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した化学特性(例えば電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換されているものである。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変更しない。2つ又はそれ以上のアミノ酸配列が互いに保存的置換により異なる場合、配列同一性パーセント又は類似性度は、その置換の保存適性質に関して補正するために上方に調整され得る。この調整を行う手段は当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307−331を参照のこと。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸のグループの例には、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、
及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、そして(7)硫黄含有側鎖はシステイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換グループは:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸及びアスパラギン−グルタミンである。あるいは、保存的置換は、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443−1445に開示されるPAM250対数尤度行列(log−likelihood matrix)において正の値を有するいずれかの変化である。「中程度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度行列において負でない値を有するいずれかの変化である。
【0043】
ポリペプチドについての配列類似性(配列同一性とも呼ばれる)は、典型的には配列解析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、種々の置換欠失及び他の改変(保存的アミノ酸置換を含む)に割り当てられた類似性の尺度を使用して類似の配列を対応させる。例えば、GCGソフトウェアはGap及びBestfitのようなプログラムを含み、これらは密接に関連するポリペプチド間(例えば異なる生物種由来の相同ポリペプチド又は野生型タンパク質とその変異体との間)の配列相同性又は配列同一性を決定するためにデフォルトパラメータを用いて使用することができる。例えばGCGバージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列はまた、デフォルト又は推奨のパラメータを使用するFASTAを使用して比較することができ、GCGバージョン6.1におけるプログラム(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列との間の最高のオーバーラップの領域の整列及び配列同一性パーセントを提供する(Pearson(2000)前出)。本発明の配列を様々な生物由来の多数の配列を含むデータベースに対して比較する場合に好ましい別のアルゴリズムは、デフォルトパラメータを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTP又はTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410及びAltschul et al.(1997) Nucleic Acids Res.25:3389−402を参照のこと。
【0044】
ヒト抗体の製造
ヒト抗体を生成する方法としては、例えばUS 6,596,541、Green et al.(1994) Nature Genetics 7:13−21)、US 5,545,807、US 6,787,637に記載される方法が挙げられる。
【0045】
齧歯動物を当該分野で公知のいずれかの方法により免疫することができる(例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual 1988 Cold Spring Harbor Laboratory;Malik and Lillehoj (1994) Antibody
Techniques、Academic Press、CAを参照のこと)。本発明の抗体は、好ましくはVELOCIMMUNETM 技術(US6,596,541)を使用して製造される。内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖可変領域が対応するヒト可変領域で置き換えられているトランスジェニックマウスを、目的の抗原で攻撃し、そして抗体を発現するマウスからリンパ球(例えばB細胞)を回収する。リンパ球を骨髄腫細胞株と融合させて不死ハイブリドーマ細胞株を製造し得、そしてこのようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニング、そして選択し、目的の抗原に対して特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、重鎖及び軽鎖の所望のアイソタイプ定常領域に連結し得る。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞で産生され得る。あるいは、抗原特異的キメラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変領域をコードするDNAは、抗原特異的リンパ球から直接単離され得る。
【0046】
抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離してヒト重鎖及び軽鎖定常領
域をコードするDNAに作動可能に連結する。次いでこのDNAを完全ヒト抗体を発現することができる細胞において発現させる。特定の実施態様において、細胞はCHO細胞である。
【0047】
抗体は、補体の結合による細胞の殺傷(補体依存性細胞傷害)(CDC)及び抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)への関与よりもむしろ、リガンド−受容体相互作用の遮断又は受容体成分相互作用の阻害において治療的に有用であり得る。抗体の定常領域は、抗体が補体を結合し、そして細胞依存性細胞傷害を媒介する能力において重要である。従って、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害を媒介することが望ましいかどうかに基づいて選択され得る。
【0048】
ヒト免疫グロブリンはヒンジ異質性に関連する2つの形態で存在し得る。1つの形態では、約150〜160kDaの安定な4つの鎖の構築物を含み、ここではダイマーが鎖間重鎖ジスルフィド結合でつなぎ合わされている。第二の形態では、ダイマーは鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、共有結合で連結された軽鎖及び重鎖から構成される約75〜80kDaの分子が形成される(半抗体(half−antibody))。これらの形態は親和性精製後でさえ分離することが非常に困難である。種々のインタクトなIgGアイソタイプにおける第二の形態の出現頻度は、限定されないが、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造的差異に起因する。実際に、ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、第二の形態の出現を、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観測されるレベルまで有意に減少させ得る(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)。本発明は、ヒンジ、CH2又はCH3領域に1つ又はそれ以上の変異を有する抗体を包含し、これは例えば所望の抗体形態の収率を改善するために製造において望ましいかもしれない。
【0049】
最初に、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。以下に記載されるように、これらの抗体は、hIL−4Rに対する結合親和性、hIL−4のhIL−4Rに対する結合を遮断する能力、及び/又はヒトタンパク質に関する選択性を含む望ましい特徴で特徴づけられ、そしてこれらに関して選択される。マウス定常領域は、望ましいヒト定常領域と置き換えられて本発明の完全ヒト抗体、例えば野生型又は改変されたIgG4又はIgG1(例えば、配列番号271、272、273)を生成する。選択される定常領域は具体的な用途によって変わり得るが、高親和性抗原結合及び標的特異性の特徴は可変領域に存在する。
【0050】
エピトープマッピング及び関連技術
特定のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Harlow and
Lane(前出)に記載されるアッセイのような交差遮断(cross−blocking)アッセイを行うことができる。他の方法としては、アラニンスキャニング変異体、ペプチドブロット(Reineke(2004) Methods Mol Biol 248:443−63)、又はペプチド切断分析が挙げられる。さらに、エピトープ切除、エピトープ抽出及び抗原の化学的改変のような方法を使用することができる(Tomer(2000) Protein Science:9:487−496)。
【0051】
改変援用プロファイリング(Modification−Assisted Profiling)(MAP)(抗原構造ベースの抗体プロファイリング(Antigen Structure−based Antibody Profiling)(ASAP)としても知られる)は、同じ抗原に特異的な多数のモノクローナル抗体(mAb)を、化学的に又は酵素により改変された抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性にしたがって分類する方法である(米国特許出願公開第2004/0101920号)。各カテゴリは、別のカテゴリで示されるエピトープと明らかに異なるか又は部分的にオーバ
ーラップしている特異エピトープを反映し得る。この技術により遺伝子学的に同一の抗体を迅速に選別することが可能となるので、遺伝子学的に異なる抗体に対して特徴付けを集中させることができる。ハイブリドーマスクリーニングに適用される場合、MAPは所望の特徴を有する稀なハイブリドーマクローンの同定を容易にし得る。MAPを使用して、本発明のhIL−4R抗体を抗体に結合する様々なエピトープのグループに選別し得る。
【0052】
固定化抗原の構造を変更するために有用な薬剤は、酵素、例えばタンパク質分解酵素及び化学薬品である。抗原タンパク質は、バイオセンサーチップ表面又はポリスチレンビーズのいずれに固定してもよい。後者は、例えば多重LUMINEXTM検出アッセイ(Luminex Corp.、TX)のようなアッセイを用いて処理され得る。100までの様々な型のビーズを用いて多重分析を取り扱うLUMINEXTMの能力のために、LUMINEXTMは種々の改変を有するほとんど非限定的な抗原表面を提供し、抗体エピトーププロファイリングにおいて抗体エピトープにおけるバイオセンサーアッセイよりも改善された分解能をもたらす。
【0053】
二重特異性(Bispecifics)
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、又は多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的でもよいし、1つより多くの標的ポリペプチドに対して特異的な抗原結合ドメインを含有していてもよい。例えば、Tutt et al.(1991)J.Immunol.147:60−69を参照のこと。ヒト抗IL−4R抗体を、別の機能的分子、例えば別のペプチド又はタンパク質に連結しても、又は別の機能的分子と同時発現(co−expressed)してもよい。例えば、抗体又はそのフラグメントは、1つ又はそれ以上の他の分子実体、例えば別の抗体又は抗体フラグメントに(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合又はその他により)連結されて、第二の結合特異性を有する二重特異性又は多重特異性抗体を生じ得る。
【0054】
治療的投与及び製剤
本発明は、本発明の抗IL−4R抗体又はその抗原結合フラグメントを含む治療用組成物を提供する。本発明に従う治療用組成物の投与は、適切な担体、添加剤及び改善された輸送、送達、耐性などをもたらすために製剤に組み込まれる他の薬剤と共に投与される。多数の適切な製剤が、全ての薬剤師に知られる処方集:Remington's Pha
rmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAにおいて見出され得る。これらの製剤としては、例えば、散剤、ペースト剤、軟膏、ゼリー、ろう、オイル、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)含有小胞(例えばLIPOFECTINTM)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油及び油中水乳剤、carbowax(種々の分子量のポチエチレングリコール)乳剤、半固形ゲル、並びにcarbowaxを含有する半固形混合物が挙げられる。Powell et al.「Compendium of excipients for parenteral formulations」 PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238−311も参照のこと。
【0055】
用量は、投与される被験体の年齢及び大きさ、標的疾患、状態、投与経路などによって変わり得る。本発明の抗体が成人患者においてIL−4Rに関連する種々の状態および疾患を処置するために使用される場合、本発明の抗体を通常は約0.01〜約20mg/体重kg、より好ましくは約0.02〜約7、約0.03〜約5、又は約0.05〜約3mg/体重kgの単回用量で静脈内投与することが有利である。状態の重症度に依存して、処置の頻度及び期間は調節され得る。
【0056】
種々の送達系が公知であり、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができ
る、例えば、リポソーム中への封入、微小粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu et
al.(1987)J.Biol.Chem.262:4429−4432を参照のこと)。導入方法としては、限定されないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口の経路が挙げられる。本組成物は、いずれかの都合の良い経路により、例えば注入又はボーラス注射により、上皮又は粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸の粘膜など)を通した吸収により投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤とともに投与され得る。投与は全身でも局所的でもよい。
【0057】
本医薬組成物はまた、小胞で、特にリポソームで送達することもできる(Langer
(1990) Science 249:1527−1533;Treat et al.(1989) Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez Berestein and Fidler(編)、Liss、New York、pp.353−365;Lopez−Berestein、同書、pp.317−327を参照のこと;一般的に同書を参照のこと。
【0058】
特定の状況において、本医薬組成物を制御放出系で送達することができる。一実施態様において、ポンプを使用してもよい(Langer、前出;Sefton(1987) CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照のこと)。別の実施態様において、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release、Langer and
Wise (編)、CRC Pres.、Boca Raton、Florida (1974)を参照のこと)。さらに別の実施態様において、制御放出系は、組成物の標的に近接して配置することができ、それ故、全身用量のごく一部しか必要としない (例えばGoodson、Medical Applications of Controlled Release、前出、vol.2、pp.115−138、1984を参照のこと)。他の制御放出系はLanger(1990)による総説Science 249:1527−1533において考察されている。
【0059】
注射用調製物には、静脈内、皮下、皮内及び筋内注射、点滴などのための投薬形態が含まれ得る。これらの注射用調製物は、一般的に知られている方法により製造され得る。例えば、注射用調製物は、例えば上記の抗体又はその塩を滅菌水性媒体又は注射に従来使用される油性媒体中に溶解、懸濁又は乳化させることにより製造され得る。注射用の水性媒体としては、例えば生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張液などがあり、これらは適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO−50(硬化ひまし油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などと組み合わせて使用され得る。油性媒体としては、例えばゴマ油、大豆油などが使用され、これらは可溶化剤、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと組み合わせて使用され得る。このようにして製造された注射剤は好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0060】
有利には、上記の経口又は非経口用途の医薬組成物は、活性成分の用量に適合するように適した単位用量の投薬形態に製造される。このような単位用量の投薬形態としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。含まれる上述の抗体の量は、一般的には単位用量の投薬形態あたり約5〜500mg;特に注射剤の形態において、上述の抗体が約5〜100mg及び他の投薬形態に関して約10〜250mgで含有されることが好ましい。
【0061】
単剤療法及び組み合わせ療法 本発明の抗体及び抗体フラグメントは、IL−4活性を低減することにより改善、抑制又は軽減される疾患及び障害を処置するために有用である。これらの障害には、IL−4の異常若しくは過剰な発現、又はIL−4産生に対する異常な宿主応答を特徴とする障害が含まれる。本抗体又は抗体フラグメント(of the)により処置されるIL−4関連障害としては、例えば、関節炎(化膿性関節炎を含む)、疱疹状疾患、慢性特発性蕁麻疹、強皮症、肥厚性瘢痕化、ウィップル病、良性前立腺肥大、肺障害、例えば喘息(軽度、中程度又は重度)、炎症性障害、例えば炎症性腸疾患、アレルギー反応、川崎病、鎌状赤血球症、チャーグ・ストラウス症候群、グレーブズ病、子癇前症、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ブドウ膜炎、結核、アトピー性皮膚炎(dermatatis)、潰瘍性大腸炎、線維症、及びネフローゼ(U.S.7,186,809を参照のこと)が挙げられる。
【0062】
本発明は、抗IL−4R抗体又は抗体フラグメントを第二の治療剤と組み合わせて投与する組み合わせ療法を包含する。共投与(Co−administration)及び組み合わせ療法は、同時の投与に限定されないが、少なくとも1つの他の治療剤を患者に投与することを含む処置の過程の間に抗IL−4R抗体又は抗体フラグメントを少なくとも1回投与する処置レジメンを含む。第二の治療剤は、別のIL−4アンタゴニスト、例えば別の抗体/抗体フラグメント、又は可溶性サイトカイン受容体、IgEアンタゴニスト、吸入若しくは他の適切な手段で送達され得る抗喘息治療薬(副腎皮質ステロイド、非ステロイド系薬剤、ベータアゴニスト、ロイコトリエンアンタゴニスト、キサンチン類、フルチカゾン、サルメテロール、アルブテロール)であり得る。特定の実施態様において、本発明の抗IL−4R抗体又は抗体フラグメントは、IL−1アンタゴニスト、例えばリロナセプト、又はIL−13アンタゴニストと共に投与され得る。第二の薬剤には、アレルギー炎症疾患、例えば喘息及びアレルギーのような障害を処置するための1つ又はそれ以上のロイコトリエン受容体アンタゴニストが含まれ得る。ロイコトリエン受容体アンタゴニストの例としては、限定されないが、モンテルカスト、プランルカスト、及びザフィルルカストが挙げられる。第二の薬剤には、サイトカイン阻害剤、例えばTNF(etanercept、ENBRELTM)、IL−9、IL−5又はIL−17アンタゴニストのうち1つ又はそれ以上が含まれ得る。
【0063】
本発明はまた、本明細書に記載されるいずれかの抗IL−4R抗体又は抗原結合フラグメントの、疾患又は障害の処置のための医薬の製造における使用も含み、ここで疾患又は障害は、ヒトインターロイキン−4(hIL−4)活性の除去、阻害又は低減により改善、軽減又は抑制される。このような疾患又は障害の例としては、例えば、関節炎、疱疹状疾患、慢性特発性蕁麻疹、強皮症、肥厚性瘢痕化、ウィップル病、良性前立腺肥大、肺障害、喘息、炎症性障害、アレルギー反応、川崎病、鎌状赤血球症、チャーグ・ストラウス症候群、グレーブズ病、子癇前症、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ブドウ膜炎、結核、ネフローゼ、アトピー性皮膚炎及び喘息(athsma)が挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物の作り方及び使い方の完全な開示及び記載を当業者に提供するために提示されるものであり、本発明者らが自らの発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば量、温度など)に関して正確さを保証するための努力がなされているが、いくらかの割合を実験誤差及び偏差が占めるはずである。別段示されていなければ、部は質量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、そして圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0065】
実施例1.ヒトIL−4受容体に対するヒト抗体の作成
VELOCIMMUNETMマウス(Regeneron Pharmaceuticals、Inc.;US6,596,541)をヒトIL−4R(hIL−4R、配列番号274)、又はhIL−4R及びサル(Macaca fascicularis)のIL−4R(mfIL−4R、配列番号275)タンパク質若しくはDNAの組み合わせで免疫した。最適な免疫応答を得るために、続いて動物を3〜4週ごとにブーストし、そして抗抗原応答の進行を評価するために各ブーストの10日後に採血した。
【0066】
マウスが最大の免疫応答に達した場合、抗体発現B細胞を採取し、そしてマウス骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成した。あるいは、米国特許出願公開2007/0280945A1(参照によりその全体が本明細書に具体的に加入される)において記載されるように、抗原特異的抗体を、骨髄腫細胞への融合なしに直接B細胞から単離した。安定な組み換え抗体発現CHO細胞株を単離された適切な組換え体から樹立した。機能的に望ましいモノクローナル抗体を、ハイブリドーマ又はトランスフェクトした細胞の馴化培地を特異性、抗原結合親和性及びhIL−4のhIL−4Rへの結合を遮断する効力(以下に記載される)についてスクリーニングすることにより選択した。
【0067】
いくつかの抗hIL−4R抗体を前述の方法により得、これらにはH4H083P、H4H094P及びH4H095P、H4H098P及びH4H099Pと命名した典型的な抗体が含まれていた。これらの典型的な抗hIL−4R抗体、及びそれらの生物学的特性を以下の実施例においてより詳細に記載する。
【0068】
実施例2.抗原結合親和性決定
25℃又は37℃のいずれかで、hIL−4Rに関して選択された抗体の結合親和性(KD)を、実時間バイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイ(BIACORETM200
0)を使用して決定した。手短には、抗体を、BIACORETMチップへの直接カップリングにより作出したヤギ抗hFcポリクローナル抗体表面上に捕捉して、捕捉抗体表面を形成した。種々の濃度(50nMから12.5nMの範囲)のモノマーhIL−4R(R&D Systems)又はダイマーhIL−4R−mFcを、25℃又は37℃のいずれかで捕捉抗体表面上に10μl/分で2.5分間注入した。抗体に対する抗原の結合及び結合複合体の解離を実時間でモニタリングした。平行解離定数(KD)及び解離速度定
数を、BIA評価ソフトウェアを使用して動態解析を行うことにより確認した。BIA評価ソフトウェアを、抗原/抗体複合体解離の半減期(T1/2)を計算するためにも使用し
た。結果を表1に示す。NB:抗体−抗原結合が実験条件下で観察されなかった。コントロール:完全ヒト抗IL−4R抗体(米国特許第7,186、809号;配列番号:10及び12)。
【0069】
【表1】
【0070】
カニクイザル(Macaca fascicularis)IL−4R(mfIL−4R)に関して選択された抗体の25℃又は37℃のいずれかでの結合親和性(KD)もま
た、種々の濃度(100nMから25nMの範囲)のモノマーmfIL−4R−myc−myc−his(mfIL−4R−mmh)又はダイマーmfIL−4R−mFcを用いて前記の実時間バイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイを使用して決定した。抗体H4H098Pのみがモノマー及びダイマー両方のmfIL−4Rに25℃にてそれぞれ552nM及び9.08nMのKDで結合することができた。さらに、抗体H4H098P
はまた、ダイマーmfIL−4Rに37℃にて24.3nMのKDで結合した。H4H0
83PはダイマーmfIL−4Rに対して非常に弱い結合を有していた。
【0071】
抗体−抗原結合親和性をELISAベースの溶液競合アッセイを使用することでも評価した。手短には、96ウェルMAXISORPTMプレートを最初に5μg/mlアビジンで終夜コーティングし、続いてBSAブロッキングを1時間行った。次いでアビジンでコーティングしたプレートを250ng/mlビオチン−hIL4とともに2時間インキュベートした。このプレートを使用して、抗体滴定サンプル溶液中の遊離hIL−4R−mFc(ダイマーhIL−4R)又は遊離hIL−4R−myc−myc−his(hIL4R−mmh、モノマーhIL4R)のいずれかを測定した。抗体滴定サンプルを作製するために、一定量25pMのhIL−4R−mFc又は200pMのhIL−4R−mmhのいずれかを0〜約10nMの範囲の段階希釈で種々の量の抗体と予め混合し、続いて1時間室温でインキュベーションして抗体−抗原結合を平衡に到達させた。次いで平衡化サンプル溶液を、遊離hIL−4R−mFc又は遊離hIL−4R−mmhのいずれかの測定のためにhIL−4でコーティングしたプレートに移した。1時間の結合の後、プレートを洗浄し、そして結合したhIL−4R−mFcを、HRP結合マウス抗mFcポリクローナル抗体又はHRP結合ヤギ抗mycポリクローナル抗体のいずれかを使用して検出した。IC50値を決定した(表2)。
【0072】
【表2】
【0073】
ELISAベースの溶液競合アッセイを使用して抗体のサルIL−4Rに対する交差反応性も決定した。抗体H4H098Pは、mfIL−4R−mFcについて300pMのIC50、そしてmfIL−4R−mmhについて20nMのIC50を示した。
【0074】
実施例3.インビトロでのhIL−4及びhIL−13の生物学的作用の中和
精製した抗hIL−4R抗体のhIL−4R仲介細胞機能を中和する能力をインビトロで決定するためにヒトSTAT6及びSTAT6ルシフェラーゼレポーターを含有するよう操作したHK293細胞株を使用するバイオアッセイを開発した。hIL−4R誘導ルシフェラーゼ活性の阻害を以下のように決定した:細胞を96ウェルプレートに培地中1×104細胞/ウェルで播種し、そして終夜37℃、5%CO2でインキュベートした。段階希釈で0〜20nMの範囲の抗体タンパク質を、10pMのhIL−4又は40pMのhIL−13のいずれかとともに細胞に加えた。次いで細胞を37℃、5%CO2で6時
間インキュベートした。細胞応答の程度をルシフェラーゼアッセイ(Promega Biotech)で測定した。結果を表3に示す。NB:ルシフェラーゼ活性が上記の実験条件下で遮断されなかった。さらに、H4H098PはmfIL−4R仲介細胞機能を360fM mfIL−4の存在下で150nMのIC50で遮断することができた。
【0075】
【表3】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]