特許第6843217号(P6843217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6843217
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/08 20060101AFI20210308BHJP
   H02P 9/30 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H02P9/08 A
   H02P9/30 A
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-228732(P2019-228732)
(22)【出願日】2019年12月19日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅博
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−065100(JP,U)
【文献】 特開昭61−266100(JP,A)
【文献】 実開昭62−019100(JP,U)
【文献】 特開平07−046900(JP,A)
【文献】 特開昭54−116615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/08
H02P 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁電流を流すことで磁界を発生するとともに回転部に結合されて回転する励磁コイル、および前記励磁コイルにより発生された前記磁界の変化により発電する発電コイル、を含む電磁石発電機と、
前記電磁石発電機による発電を制御する制御部と、
前記制御部による制御に基づいてON状態に切り替わることで、前記励磁電流を流す第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子がOFF状態のときに、前記励磁電流を前記励磁コイルに還流させる還流ダイオードと、
前記電磁石発電機の発電電圧により前記励磁電流を流すことのできる第2のスイッチング素子を有する励磁起動回路と
を備え、
前記第2のスイッチング素子は、前記第1のスイッチング素子と並列に接続され、前記発電電圧が、前記第1のスイッチング素子の駆動可能電圧よりも低い電圧V1により駆動可能であり、ON状態に切り替わることで前記励磁コイルに前記励磁電流を流すことができ
前記励磁起動回路は、
前記第2のスイッチング素子と並列に接続された第3のスイッチング素子をさらに有するとともに、
前記発電電圧が、前記電圧V1よりも大きい電圧V2c以上となった場合に、前記第2のスイッチング素子をOFF状態とし、
前記発電電圧が、前記電圧V1よりも大きく、かつ、前記電圧V2cよりも小さい電圧V3以上となった場合に、前記第3のスイッチング素子をON状態とし、
前記発電電圧が、前記電圧V2cよりも大きい電圧V2以上となった場合に、前記第3のスイッチング素子をOFF状態とする
回路をさらに有する
発電装置
【請求項2】
前記励磁起動回路は、前記制御部から出力される第1のOFF指令により、前記第3のスイッチング素子をOFFする回路をさらに有する
請求項に記載の発電装置。
【請求項3】
前記励磁起動回路は、前記制御部から出力される第2のOFF指令により、前記第2のスイッチング素子をOFFする回路をさらに有する
請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記励磁起動回路は、
前記第2のスイッチング素子をON状態とするために設けられた第4のスイッチング素子と、
前記第4のスイッチング素子をON状態とするために設けられた第5のスイッチング素子と、
前記第5のスイッチング素子をOFF状態とするために設けられた第6のスイッチング素子と、
をさらに有し、
前記第4のスイッチング素子は、P型のスイッチング素子として構成され、
前記第5のスイッチング素子は、前記発電電圧が前記電圧V1以上となることでON状態となり、前記第4のスイッチング素子をON状態とし、
前記第6のスイッチング素子は、前記発電電圧が前記電圧V2以上となることでON状態となり、前記第2のスイッチング素子、前記第4のスイッチング素子、および第5のスイッチング素子をOFF状態とする
請求項からのいずれか1項に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励磁電力を制御して発電を行う発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
励磁電流の供給を、バッテリからチャージランプを通じて、また、発電開始後では、第2整流器104を通じて、行う従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に係る装置では、励磁電流を流すためにバッテリが充分に充電されており、発電を起動する際にはバッテリから励磁電流を流すことができること、が前提である。例えば、自動車のオルタネータなどがその例にあたる。
【0004】
特許文献1に係る装置は、キーON時には、バッテリから励磁電流を流し、オルタネータが回転を始めることで発電を開始し、バッテリ電圧よりも高い電圧を発電した場合には、第2整流器を通して励磁電流を流すものである。
【0005】
そもそも、自動車の場合には、スターターを回し、エンジンを始動するだけのエネルギーがバッテリにあり、数アンペア程度の励磁電流を充分に流すことができる。従って、励磁電流が流れない場合について、特に考慮する必要はなかった。
【0006】
次に、このような電磁石発電機を用いた従来装置の動作について、図を用いて説明をする。図11は、電磁石発電機を用いた従来装置の全体構成図である。図11において、風または水で回転するプロペラ10には、電磁石発電機20の励磁コイル21が機械的に接続されている。
【0007】
プロペラ10の回転とともに励磁コイル21も回転する。励磁電流は、最初は、バッテリ41から電磁石発電機20のB端子、F端子、スイッチング素子Q1を経由するようにして励磁コイル21に流れる。励磁コイル21は、流れた電流値により電磁石になり、その電磁石の回転によって発電コイル22に磁界の変化が発生して、発電コイル22に起電力が発生する。
【0008】
発生した電力は、この場合には3相交流のため、整流器23を通して直流に変換される。このとき、整流器23で整流された電圧が、バッテリ41の電圧よりも高くなれば、電磁石発電機20からバッテリ41への充電が行われることになる。その場合には、整流器23の出力部から、励磁コイル21に接続されている配線によって、励磁電流が供給される。
【0009】
また、制御基板30内の制御部31では、バッテリ41の電圧をモニタし、モニタした電圧がバッテリ41の充電最適電圧VS(V)になるように、スイッチング素子Q1を制御して調整する。
【0010】
具体的には、バッテリ41の電圧が充電最適電圧VSより低い場合には、制御部31は、スイッチング素子Q1をONにすることで、励磁電流を流して発電をする。逆に、バッテリ41の電圧が充電最適電圧VS以上の場合には、制御部31は、スイッチング素子Q1をOFFして発電を停止する。この動作により、バッテリ41の電圧は、充電最適電圧VSにキープされ、最適な充電状態が維持される。
【0011】
また、プロペラ10の回転検出を行うために、発電コイル22の任意の1相からP端子を通して制御部31に接続されており、制御部31は、P端子を介した信号に基づいて回転検出を行う。そして、制御部31は、検出した回転数で最適な発電(すなわち、発電コイル22から励磁電流を差し引いた、実際にB端子の発電電力が最大になる発電)ができるように、スイッチング素子Q1をDUTY制御する。
【0012】
いずれの場合も、スイッチング素子Q1は、上記のようにON/OFF動作を行う。従って、スイッチング素子Q1のOFF時における急激な励磁電流変化を避ける目的、および急激な励磁電流変化によるサージ電圧を防止する目的で、励磁電流を還流させるための還流ダイオードD1が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−197471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
オルタネータと同等の電磁石式の発電装置を風力発電あるいは水力発電として用いる場合には、自然エネルギーを利用することとなる。このため、風が吹かない状態、あるいは水が流れない状態が長期間続くことがある。
【0015】
独立電源タイプの電源を用いるシステムとして、例えば、街路灯などでは、バッテリ蓄電された電力を、夜に街路灯電源として使用する。この場合、上記のように、長期間にわたり風が吹かない状態、あるいは水が流れない状態が継続した場合には、バッテリの充電が行われず、消費のみが増加し、最終的にはバッテリ41が放電してしまうことがあった。また、何等かの理由で、バッテリ41が接続されていない状態(バッテリレス状態)が発生することもあった。
【0016】
このように、バッテリが放電状態、あるいはバッテリレス状態であると、水が流れたり、風が吹いたりして、電磁石発電機20が回転したとしても、励磁電流を流すことができない。このため、自発的には、発電を開始することができなかった。
【0017】
よって、一旦バッテリ41が放電した後では、メンテナンス業者によるバッテリ41の充電、交換などの人為的な作業が必要となる。従って、発電装置のタイムリーなメンテナンスができず、また、メンテナンス費用も高いものになっていた。
【0018】
さらには、バッテリ放電状態あるいはバッテリレス状態で、強風が吹いた場合には、制御部31による回転制御ができない。このため、通常制御状態であれば、過回転防止のため電磁ブレーキをかけるなどの回転数制御を行うことができるが、そのような回転数制御ができない。このため、強風が吹いた場合には、無負荷状態でプロペラ10が高回転になり、破損する可能性もあった。
【0019】
また、一般的に、このような独立電源型の街路灯は、災害時、停電時などの避難路での明かり確保、あるいは避難場所での生活必需電源として使用されることが多い。従って、非常時の電源としてせっかく独立電源型を使用していても、災害時、停電時などで本来必要とされるときに、バッテリ41が放電状態であれば、街路灯の本来の機能を満足することができなかった。
【0020】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、バッテリを用いて励磁電流を流すことができない状態であっても、電磁石発電機が回転することで発電を開始できる回路構成を備えた発電装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る発電装置は、励磁電流を流すことで磁界を発生するとともに回転部に結合されて回転する励磁コイル、および励磁コイルにより発生された磁界の変化により発電する発電コイル、を含む電磁石発電機と、電磁石発電機による発電を制御する制御部と、制御部による制御に基づいてON状態に切り替わることで、励磁電流を流す第1のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子がOFF状態のときに、励磁電流を励磁コイルに還流させる還流ダイオードと、電磁石発電機の発電電圧により励磁電流を流すことのできる第2のスイッチング素子を有する励磁起動回路とを備え、第2のスイッチング素子は、第1のスイッチング素子と並列に接続され、発電電圧が、第1のスイッチング素子の駆動可能電圧よりも低い電圧V1により駆動可能であり、ON状態に切り替わることで励磁コイルに励磁電流を流すことができ、励磁起動回路は、第2のスイッチング素子と並列に接続された第3のスイッチング素子をさらに有するとともに、発電電圧が、電圧V1よりも大きい電圧V2c以上となった場合に、第2のスイッチング素子をOFF状態とし、発電電圧が、電圧V1よりも大きく、かつ、電圧V2cよりも小さい電圧V3以上となった場合に、第3のスイッチング素子をON状態とし、発電電圧が、電圧V2cよりも大きい電圧V2以上となった場合に、第3のスイッチング素子をOFF状態とする回路をさらに有するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、バッテリから励磁電流を流すことができない状態であっても、電磁石発電機が回転することで発電を開始できる回路構成を備えた発電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態1に係る発電装置の全体構成図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第1の回路を示す図である。
図3】本発明の実施の形態2に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第2の回路を示す図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る励磁起動回路の具体的な回路構成例を示した図である。
図5】本発明の実施の形態3に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第3の回路を示す図である。
図6】本発明の実施の形態3に係る励磁起動回路における、励磁コイル、スイッチング素子、およびスイッチング素子の各電流波形を示した例示図である。
図7】本発明の実施の形態4に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第4の回路を示す図である。
図8】本発明の実施の形態5に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第5の回路を示す図である。
図9】本発明の実施の形態5に係る発電装置の全体構成図である。
図10】本発明の実施の形態6に係る励磁起動回路の具体的な回路構成例を示した図である。
図11】電磁石発電機を用いた従来装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の発電装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
なお、以下の各実施の形態では、12Vの鉛バッテリを用い、充電最適電圧VSが14Vとしたときの例として説明する。なお、バッテリ電圧が24V、48Vなどに変化した場合にも、12Vバッテリ使用時と同様に考え、装置を構築することができる。
【0025】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る発電装置の全体構成図である。図1に示す全体構成図では、回転部に相当するプロペラ10、電磁石発電機20、制御基板30、バッテリ41、および負荷42が示されている。図11に示した従来の発電装置と比較すると、図1に示した本実施の形態1に係る発電装置は、制御基板30内に励磁起動回路32が設けられている点が異なっている。そこで、励磁起動回路32の機能を中心に、本実施の形態1に係る発電装置の動作について、詳細に説明する。
【0026】
励磁起動回路32は、電磁石発電機20の発電電圧VBによって駆動されるスイッチング素子Q2を有する電子回路である。ここで、スイッチング素子Q2(第2のスイッチング素子に相当)はスイッチング素子Q1(第1のスイッチング素子に相当)と並列に接続されている。
【0027】
プロペラ10に結合されて回転する励磁コイル21のインピーダンスは、通常は低く、数Ω以下であり、励磁電流は、数A以上流れる。このため、励磁電流を制御するスイッチング素子Q1は、その電流を流すことのできるよう、大きなスイッチング素子として構成されている。
【0028】
また、発電中にバッテリあるいは負荷が外れた場合に相当するロードダンプなどのような負荷の急変により、発電電圧VBには数10Vから100Vを超えるサージが発生する可能性がある。このため、スイッチング素子Q1は、耐圧60V程度の高耐圧のスイッチング素子として構成する必要がある。
【0029】
しかしながら、スイッチング素子で高耐圧、高電流のものは、駆動電圧が高い。このため、通常、Q1としては、発電電圧VBがV0(3V〜5V程度)でないと駆動できない素子を使用することが多い。すなわち、発電電圧VBがV0以上でないと、Q1を駆動することができず、励磁電流が流れない。このため、励磁コイル21が回転しても、電磁石発電機20で発電を開始することができなかった。
【0030】
通常、バッテリ41が放電状態である場合でも、バッテリ41の開放電圧(すなわち、負荷無し状態)はV0以上あることが多い。しかしながら、励磁コイル21に励磁電流を流そうとすると、電圧低下が発生し、結果として発電電圧VBがV0以下になり、発電機動作ができない状態が発生する。また、バッテリレス時にも、発電電圧VBはV0以下のため、発電動作ができない状態であった。
【0031】
そこで、本発明では、スイッチング素子Q1の駆動電圧V0よりも低い電圧V1で駆動可能なスイッチング素子Q2を有する励磁起動回路32を、スイッチング素子Q1と並列に接続した構成を備えている。この結果、スイッチング素子Q1で駆動できない低い電圧でも、励磁コイル21に励磁電流を流すことができる。
【0032】
この状況を説明するには、さらにもう一件の説明が必要になる。電磁石発電機20は、励磁コイル21に電流を流して電磁石を形成し、その電磁石の回転によって発電コイル22を通る磁界の変化を発生させ、発電させる。
【0033】
今回のように、バッテリ41が放電している状態では、発電開始できないことを説明した。しかしながら、実際には、励磁コイル21は、一度電流を流して電磁石にした後は、電流を流さない状態でも残留磁気が残っている。このため、その残留磁気による磁束変化が発生し、励磁コイル21がある程度の回転数で回転すれば、B端子には1V程度の電圧が発生する。しかしながら、上述したように、スイッチング素子Q1は、1V程度では駆動不可能である。
【0034】
これに対して、本実施の形態1のように、励磁起動回路32をスイッチング素子Q1と並列に接続することで、1V程度の発電であっても、バッテリ41を充電できるような正常発電状態まで起動することが可能になる。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態1に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第1の回路を示す図である。スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と比べて電流容量の小さいスイッチング素子を用いている。その場合、スイッチング素子Q2は、入力電圧が0.6V程度で駆動する。そのようなスイッチング素子は、市場には多くあり、素子選定が容易であるため、販売数量が多い安価なスイッチング素子を使うことができる。
【0036】
本発明によって、発電電圧VBがV1以上の時に、B端子の1V程度の発電電圧により、F端子、励磁起動回路のQ2経由で、励磁コイル21に励磁電流を流すことができる。
【0037】
実際には、発電したB端子電圧は1V程度の電圧のため、励磁コイル21への電流は微小である。しかしながら、その電流により、電磁石が残留磁気の磁力より少し強くなる。その結果、発電コイルでの発電電圧VBが上昇するため、励磁コイル21への電流は、さらに少し上昇する。そのため、電磁石がさらに強くなり、発電が増加する。この動作を繰り返し、発電電圧VB(すなわち、B端子電圧)を上昇させることができ、発電を開始することが可能となる。
【0038】
制御基板30の駆動可能電圧V5は、通常6V〜10V程度であることが多い。しかしながら、上述したアルゴリズムで発電を開始させることができれば、発電電圧VBをV5以上まで上昇させることができ、制御部31の駆動が可能になる。従って、バッテリレスの状態、あるいはバッテリ41が完全放電した状態でも、電磁石発電機20を自発的に起動させ、放電したバッテリ41の充電を開始すること、およびバッテリレスでも発電電圧をVSに保つことが可能になり、正常動作を復帰させることができる。
【0039】
これによって、制御部31の駆動が可能になり、強風が吹いたときでも、電磁ブレーキ制御などの回転数制御が可能になり、過回転破壊を防止できる。さらに、完全放電されたバッテリ41が接続されている場合には、自発的に発電を開始でき、バッテリ41の充電を開始できる。この結果、不要なメンテナンスをなくすことができ、メンテナンス費用の削減にも効果を発揮する。
【0040】
実施の形態2.
本実施の形態2では、励磁起動回路32に関する別の具体的な回路例について説明する。図3は、本発明の実施の形態2に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第2の回路を示す図である。
【0041】
先の実施の形態1に係る励磁起動回路32では、スイッチング素子Q2として、スイッチング素子Q1よりも電流容量の小さいものを使用した。このため、ある程度、発電電圧VBが上昇して励磁電流が増えてきた場合に、B端子電圧の電圧上昇に伴って増加した励磁電流による過電流によって、スイッチング素子Q2が破壊することがある。
【0042】
そこで、図3に示した本実施の形態2に係る励磁起動回路32は、発電電圧VBがある決められたV1よりも大きな電圧V2で、スイッチング素子Q2をOFFにさせる回路を追加することで、スイッチング素子Q2の破壊を防止する機能を有している。
【0043】
通常、V2は、スイッチング素子Q1の駆動可能電圧V0以上か、制御基板30の駆動可能電圧V5(6V〜10V程度)以上のある決められた電圧とする。
【0044】
前者の場合には、次のような動作が実行される。まず、スイッチング素子Q1の駆動可能電圧V0以上のある決められた電圧V2aでスイッチング素子Q2をOFFする。その後、スイッチング素子Q1をハードウェアのみで駆動し、励磁コイル21に励磁電流を流す。そして、発電電圧VBがV5以上になった時点で、制御基板30内の制御部31によりスイッチング素子Q1を制御して、発電を実施することができる。
【0045】
後者の場合には、次のような動作が実行される。まず、制御基板30の駆動可能電圧V5電圧以上のある決められた電圧V2bでスイッチング素子Q2をOFFする。すでに、発電電圧VBがV5以上であるため、制御基板内の制御部31によりスイッチング素子Q1を制御して、発電を実施することができる。
【0046】
後者を採用する場合には、V2bが、VS電圧の時より励磁電流が小さいため、スイッチング素子Q2として、スイッチング素子Q1より電流容量の小さい素子を使用することができる。
【0047】
前者を採用する場合には、V2a(≦V2b)でスイッチング素子Q2をOFFするため、励磁電流をさらに小さくできる。このため、スイッチング素子Q2として、さらに電流容量の小さい素子を選択することができる。
【0048】
この時、スイッチング素子Q2の許容電流は、B端子電圧がV2の時に流れる励磁電流で破壊しないような大きさの素子を選択する。
【0049】
また、V2でスイッチング素子Q2をOFFさせることは、別の理由でも必要になってくる。通常、スイッチング素子Q1は、ON/OFFのDUTY制御が行われる。スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と並列に接続されているため、スイッチング素子Q2がONのままだと、スイッチング素子Q1のDUTY制御ができない。そのため、起動後には、必ずスイッチング素子Q2をOFFにする必要がある。
【0050】
図4は、本発明の実施の形態2に係る励磁起動回路32の具体的な回路構成例を示した図である。一般的には、図4に示す回路例を採用することで、起動後に、スイッチング素子Q2をOFFすることができる。
【0051】
Q2のベースには、抵抗R6と抵抗R7が接続されている。発電電圧VBが抵抗R6と抵抗R7とで分圧された電圧が、前述のように所望の電圧V1(0.6V〜1.0V)でスイッチング素子Q2をONするように、抵抗R6と抵抗R7の抵抗値が調整される。このとき、抵抗R7を実装しない場合もある。
【0052】
また、スイッチング素子Q2のべースには、スイッチング素子Q6のコレクタがさらに接続されている。さらに、スイッチング素子Q6のベースは、抵抗R8と抵抗R9が接続されている。
【0053】
発電電圧VBがV2aまたはV2bのときに、抵抗R8と抵抗R9とで分圧された電圧で、スイッチング素子Q6がONされるように、抵抗R8と抵抗R9の抵抗値が調整される。このような回路構成によって、スイッチング素子Q2は、発電電圧VBがV1でONとなり、V2(V2aまたはV2b)でOFFとなることができる。
【0054】
実施の形態3.
本実施の形態3では、励磁起動回路32に関する別の具体的な回路例について説明する。図5は、本発明の実施の形態3に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第3の回路を示す図である。
【0055】
先の実施の形態2に係る励磁起動回路32では、発電電圧VBがV1(0.6V〜1.0V)のときにスイッチング素子Q2で起動開始した後、V2(V2aまたはV2b)でOFFする制御を行っていた。このため、V1でONするスイッチング素子Q2(耐圧は60V程度の高耐圧のスイッチング素子に相当)は、許容電流が小さく、上記の条件を成立させることができる発電を可能とする励磁電流を流すことができない場合があった。
【0056】
その場合には、スイッチング素子Q2で起動に必要な充分の励磁電流を流すことができないため、起動できない事象が発生することがあった。その解決策として、図5に示したような本実施の形態3に係る励磁起動回路32を採用することができる。
【0057】
具体的には、図5に示す励磁起動回路32は、先の実施の形態2で説明したものと同等の回路を有するとともに、発電電圧VBがある決められた電圧V1以上で、かつ小型のスイッチング素子Q2で励磁電流を流すことのできる電圧V2c以下の電圧V3でONするスイッチング素子Q3(第3のスイッチング素子に相当)を有している。スイッチング素子Q3は、スイッチング素子Q2と並列に接続されている。
【0058】
発電電圧VBがV1でQ2がONになり、発電電圧VBがV3になったときにスイッチング素子Q3がONする。スイッチング素子Q2は、許容電流以下の励磁電流となる電圧V2cで、OFFする。
【0059】
このとき、V1≦V3≦V2cの関係であれば、最初、V1以上でスイッチング素子Q2のみに励磁電流が流れる。次に、V3でスイッチング素子Q3がONし、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q3に励磁電流が流れる。その後、V2cでスイッチング素子Q2がOFFするため、スイッチング素子Q3のみに励磁電流が流れる。
【0060】
これにより、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q3が動作する電圧V3より少し高い電圧まで発電できる励磁電流を流せば良い。このため、先の実施の形態1、2よりも、さらに小型のスイッチング素子Q2を選択することができる。従って、スイッチング素子Q2は、さらに素子選定が容易であるため、販売数量が多い安価なスイッチング素子を使うことができる。さらに、スイッチング素子Q3も、受け持つ電流範囲が狭いため、回路構成を簡素化でき、かつ、素子選択が容易隣、安価なものを選択できる。
【0061】
図6は、本発明の実施の形態3に係る励磁起動回路32における、励磁コイル21、スイッチング素子Q2、およびスイッチング素子Q3の各電流波形を示した例示図である。図6において、横軸は発電電圧VBであり、縦軸は電流値である。
【0062】
図6に示すように、スイッチング素子Q2は発電電圧VBがV1=0.85V付近から励磁電流を流し始め、発電電圧VBがV2=3VのときにOFFしている。一方、スイッチング素子Q3は、発電電圧VBがV3=2.6VのときにONして励磁電流を流し始め、以降、スイッチング素子Q3のみで励磁電流を流していることがわかる。
【0063】
なお、図6には示していないが、以下の実施の形態4で説明するように、実際には、その後、発電電圧VBがV4(V4aまたはV4b)になった時点で、スイッチング素子Q3をOFFする。
【0064】
実施の形態4.
本実施の形態4では、励磁起動回路32に関する別の具体的な回路例について説明する。図7は、本発明の実施の形態4に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第4の回路を示す図である。
【0065】
先の実施の形態3に係る励磁起動回路32では、発電電圧VBがV3以上となることでスイッチング素子Q3をONにし、起動を行っている。上述したように、通常、スイッチング素子Q1は、ON/OFFのDUTY制御が行われる。
【0066】
従って、スイッチング素子Q3がONのままだと、スイッチング素子Q1のDUTY制御ができないため、起動後に、スイッチング素子Q3をOFFにする必要がある。その解決策として、図7に示したような本実施の形態4に係る励磁起動回路32を採用することができる。
【0067】
スイッチング素子Q3のOFFは、電圧V4に基づいて行う。前述したようなスイッチング素子Q2のV2(V2aまたはV2b)と同様に、スイッチング素子Q3は、次のような2通りの動作を行うことが考えられる。
【0068】
1つ目として、スイッチング素子Q3は、V0より少し高い電圧V4aでOFFし、その後、スイッチング素子Q1のハードウェアによるONによってV5以上になるまで、励磁電流を流す場合が考えられる。また、2つ目として、スイッチング素子Q3をV5電圧より少し高い電圧V4bでOFFし、OFFする前に、制御部31によってスイッチング素子Q1で励磁電流を流す場合が考えられる。
【0069】
いずれの場合にも、スイッチング素子Q3として、電圧V4が電圧VSより低く、スイッチング素子Q1より電流容量の小さい素子を選択できる。
【0070】
2つめの動作を行わせる場合には、V4bがVSのときより励磁電流が小さいため、スイッチング素子Q3は、スイッチング素子Q1より電流容量の小さい素子を使用することができる。一方、1つめの動作を行わせる場合には、V4a(≦V4b)でスイッチング素子Q3をOFFするため、励磁電流をさらに小さくできる。このため、スイッチング素子Q3として、さらに電流容量の小さい素子を選択することができる。
【0071】
実施の形態5.
本実施の形態5では、励磁起動回路32に関する別の具体的な回路例について説明する。図8は、本発明の実施の形態5に係る励磁起動回路の具体的な回路例としての第5の回路を示す図である。
【0072】
上述した実施の形態2〜4では、スイッチング素子Q2およびスイッチング素子Q3のON/OFF動作は、すべてハードウェアで実施する場合について説明した。
【0073】
すなわち、スイッチング素子Q2は、小型素子であり、大きな励磁電流を流せないため、最初の励磁電流を流し、その後、スイッチング素子Q3に切り変えて励磁電流を流した後でないと、制御部31が駆動電圧に至らない場合が多い。従って、スイッチング素子Q2をOFFするタイミングでは、まだ、制御部31が動作していないため、上述した実施の形態2〜4では、ハードウェアで閾値を決めて、スイッチング素子Q2およびスイッチング素子Q3をOFFしていた。
【0074】
図9は、本発明の実施の形態5に係る発電装置の全体構成図である。この図9に示すように、B端子とバッテリ41との間にアップコンバータ33を設け、バッテリ41を充電する場合がある。すなわち、図9に示す制御基板30の構成は、電磁石発電機20の回転が低回転のときには、バッテリ41を充電するために充分の発電電圧VBが得られないため、アップコンバータ33を用いて昇圧するシステムに相当する。
【0075】
その場合、バッテリ41の電圧をVBb、電磁石発電機20の電圧をBVg、スイッチング素子のONのデューティーをDutyとすると、下式(1)が成立する。
VBg=(1−Duty)× VBb (1)
【0076】
したがって、電磁石発電機20の電圧VBgは、バッテリ41の電圧VBbより低くなり、設定Dutyによっては、電圧VBgが低くなり、V2(スイッチング素子Q2をOFFする電圧に相当)以下、または、V4(スイッチング素子Q3をOFFする電圧に相当)以下になることがあった。
【0077】
その場合には、スイッチング素子Q2またはスイッチング素子Q3がONしてしまい、スイッチング素子Q1がOFFのときに、スイッチング素子Q2またはスイッチング素子Q3に励磁電流が流れ、スイッチング素子Q2またはスイッチング素子Q3が過電流破壊することがあった。また、スイッチング素子Q2またはスイッチング素子Q3が破壊しない場合であっても、スイッチング素子Q1のON/OFFのDUTY動作が妨害され、励磁電流が連続通電状態となってしまう。
【0078】
その解決策として、図8に示したような本実施の形態5に係る励磁起動回路32および制御部31を組み合わせた構成を採用することができる。具体的には、図8の構成では、スイッチング素子Q2およびスイッチング素子Q3は、ハードウェアでON/OFFするとともに、さらに制御部31からもスイッチング素子Q2およびスイッチング素子Q3をOFFするためのOFF指示(第1のOFF指令に相当)を出力することができる回路構成を準備する。なお、図8では、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q3を制御部31から個別のOFF指示の信号でOFFしている場合を励磁しているが、同じ信号でOFFしても同様の効果が得られる。
【0079】
このような図8の構成を採用することで、制御部31が起動後に、アップコンバータ33で昇圧制御を行う場合に、電圧VBgが低下して、スイッチング素子Q2またはスイッチング素子Q3のOFF電圧以下になった場合でも、スイッチング素子Q2またはスイッチング素子Q3のOFFを継続させる事ができる。この結果、一旦起動した後でも、スイッチング素子Q2またはスイッチング素子Q3の破壊を防止するとともに、スイッチング素子Q1のDUTY動作が妨害されることを防止でき、発電装置が正常に動作することとなる。
【0080】
スイッチング素子Q2は、前述のように、制御部31の起動前にOFFする必要がある。このため、ハードウェアでのOFF回路とせず、電圧VBgの低下による対応で制御部31によるOFF回路により、スイッチング素子Q2をOFFするためのOFF指示(第2のOFF指令に相当)を出力することが必須である。一方、スイッチング素子Q3は、制御部31の起動後にOFFすればよい。このため、必ずしもハードウェアと制御部31との両方のOFF回路を準備する必要はなく、制御部31によるOFF回路のみでも、同様の効果を得ることができる。
【0081】
なお、後述する実施の形態6では、制御部31のみでスイッチング素子Q3をOFFする回路例を示している。
【0082】
実施の形態6.
本実施の形態6では、制御部31からの制御信号を併用して、スイッチング素子Q2及びスイッチング素子Q3のON/OFF制御を行う場合について説明する。図10は、本発明の実施の形態6に係る励磁起動回路の具体的な回路構成例を示した図である。
【0083】
先の実施の形態2において、図4を用いて、スイッチング素子Q2を起動するハードウェア回路の動作について説明したが、起動時には、スイッチング素子Q6がONの状態、スイッチング素子Q2がOFFの状態を継続する。ここで、スイッチング素子Q2にある程度大きな電流を流さないと、先の実施の形態1で説明したように、自己発電によって励磁電流を増加させ、励磁電流の増加によってさらに発電を増加させる動作を発生させることができない。
【0084】
励磁コイルの抵抗値は、数Ω以下であることが多く、スイッチング素子Q2を使用する場合には、負荷抵抗(励磁コイル抵抗)の10〜30倍程度のベース抵抗を用いるのが一般的であり、抵抗R6は数10Ωになる場合がある。
【0085】
その場合、通常動作でスイッチング素子Q2をOFFするためには、スイッチング素子Q6がON状態のときに、発電電圧VBが14Vで負荷抵抗が数10Ωの電流をスイッチング素子Q6に流し続ける必要がある。すなわち、約1.4Aを無駄に流す必要があり、せっかく発電した電力を無駄に消費するとともに、抵抗R6には非常に大きな許容損失の抵抗を使用することが要求される。
【0086】
そこで、この解決策として、図10に示す回路では、抵抗R6、抵抗R7の分圧でスイッチング素子Q2をONできるように、P型のスイッチング素子Q4(第4のスイッチング素子に相当)を追加し、さらに、スイッチング素子Q4の駆動用としてスイッチング素子Q5(第5のスイッチング素子に相当)を追加している。
【0087】
このような図10の構成によって、抵抗R6、抵抗R7の分圧で設定された電圧V1でスイッチング素子Q2をONし、かつ、R4を数10Ωに設定してスイッチング素子Q2のベースに充分な電流を流し、起動に充分な励磁電流をスイッチング素子Q2に流すことができる。
【0088】
また、この図10の回路構成を採用することにより、次のような省電力化を図ることもできる。すなわち、スイッチング素子Q2がONのときに、スイッチング素子Q2の負荷電流(励磁電流)以外でも、比較的大きな電流が抵抗R4および抵抗R5に流れる。そして、スイッチング素子Q2をOFFする際に、スイッチング素子Q6(第6のスイッチング素子に相当)をONにすることで、スイッチング素子Q6には抵抗R6の電流のみを流せば良く、抵抗R6の抵抗値は大きくすることができる。この結果、無駄な電流消費を極力抑制することが可能になる。
【0089】
一例で説明すると、スイッチング素子Q2の負荷抵抗(励磁コイル)を4Ωとすると、スイッチング素子Q2のベース抵抗R4は、上記より、負荷抵抗の20倍とすると80Ωとなる。この場合、図4に示す回路では、Q2がOFFするときには、スイッチング素子Q6によって抵抗R6の電流を流す必要があり、14V時では、0.175A(14/80)の電流を、起動後、常時流しておく必要がある。従って、消費電力としては、2.45Wにもなる。
【0090】
しかしながら、図10に示す回路では、スイッチング素子Q4のベース抵抗は、スイッチング素子Q4の負荷抵抗80Ωの20倍で1.6kΩとなる。さらに、スイッチング素子Q5のベース抵抗は、1.6kΩの20倍で32KΩとなる。この結果、起動後、常時流しておく必要のある電流は、スイッチング素子Q2、Q4、Q5はOFFで、スイッチング素子Q6のみONのときとなる。従って、発電電圧VBが14V時に抵抗R6に流れる電流は約0.44mA程度となり、消費電力も6.2mW程度と非常に小さなものにすることができる。
【0091】
図10の回路について、動作の補足説明をする。まず、抵抗R6、抵抗R7でスイッチング素子Q5のON電圧をV1に設定する。スイッチング素子Q5がONすると、スイッチング素子Q4のベース電流が、抵抗R5およびスイッチング素子Q5を通り流れ、スイッチング素子Q4はONし、抵抗R4を経由してスイッチング素子Q2のベース電流として流れる。これによって、スイッチング素子Q2がONし、F端子経由で励磁電流を流し始めることができる。以後、発電が増加し、起動が始まる。起動が始まれば、発電電圧VBが上昇する。
【0092】
発電電圧VBが上昇し、V3になった時点で、抵抗R1、抵抗R2の分圧によって、スイッチング素子Q3がONする。その後、発電電圧VBがV2になった時点で、抵抗R8、抵抗R9の分圧によってスイッチング素子Q6がONし、スイッチング素子Q5のベース電流が流れなくなるため、スイッチング素子Q2、Q4、Q5がOFFする。
【0093】
その後、制御部31によって発電電圧VBがV5になったことを検知した後、スイッチング素子Q7をONするとともに、スイッチング素子Q3をOFFすることで、起動回路の役目は終了する。
【0094】
また、制御部31によって発電電圧VBがV5になったことを検知した際には、制御部31からスイッチング素子Q8をONすることによって、スイッチング素子Q5のベース電位はGNDになり、スイッチング素子Q5はOFFになる。このため、アップコンバータ33を用いて、電圧VBgが低下し、抵抗R8、抵抗R9の閾値以下になり、スイッチング素子Q6がOFFした場合でも、スイッチング素子Q8のONによってスイッチング素子Q2はOFF状態を継続することができる。
【0095】
上記では、制御部31によって、発電電圧VBがV5以上になったことを検知した場合を説明した。しかしながら、電圧をモニタすることなしに、制御部31が起動すれば、必ずスイッチング素子Q7、Q8をONするようにしても良い。これによって、電圧をモニタするためのA/Dコンバータを用いることもなく、起動後の制御開始までのソフトウェアによる起動時間のタイムラグもなくすことができる。
【0096】
ただし、このとき、スイッチング素子Q3においても、スイッチング素子としてトランジスタを使用した際には、上記で説明した抵抗R6と同様に、抵抗R1の抵抗値を10Ω程度にするする必要がある。このため、スイッチング素子Q2の駆動回路と同様にP型のスイッチング素子を用いて、スイッチング素子Q2の駆動回路と同様の回路構成にするか、または、スイッチング素子Q3を電圧駆動できるFETにすることが考えられる。
【0097】
このような回路構成を採用することで、スイッチング素子Q3においても、抵抗R1の抵抗値を大きくすることができ、通常動作時の消費電力を減らすことができる。
【0098】
なお、スイッチング素子Q2においては、0.6V程度で駆動でき、かつ、耐圧の数10V以上のFETは製造上困難である。従って、上述したように、スイッチング素子Q2にはトランジスタを使用するのが一般的であり、その場合、消費電力の低減効果を実現するためには、図10に示したようなP型スイッチング素子の使用が必要になる。
【符号の説明】
【0099】
10 プロペラ、20 電磁石発電機、21 励磁コイル、22 発電コイル、23 整流器、30 制御基板、31 制御部、32 励磁起動回路、33 アップコンバータ、41 バッテリ、42 負荷、Q1 スイッチング素子(第1のスイッチング素子)、Q2 スイッチング素子(第2のスイッチング素子)、Q3 スイッチング素子(第3のスイッチング素子)、Q4 スイッチング素子(第4のスイッチング素子)、Q5 スイッチング素子(第5のスイッチング素子)、Q6 スイッチング素子(第6のスイッチング素子)、Q7 スイッチング素子(第7のスイッチング素子)、Q8 スイッチング素子(第8のスイッチング素子)、R1〜R9 抵抗。
【要約】
【課題】バッテリを用いて励磁電流を流すことができない状態であっても、電磁石発電機が回転することで発電を開始できる回路構成を備えた発電装置を得る。
【解決手段】発電装置は、励磁コイル(21)および発電コイル(22)を含む電磁石発電機(20)と、電磁石発電機による発電を制御する制御部(31)と、制御部による制御に基づいてON状態に切り替わることで、励磁電流を流す第1のスイッチング素子(Q1)と、還流ダイオード(D1)と、電磁石発電機の発電電圧により励磁電流を流すことのできる第2のスイッチング素子(Q2)を有する励磁起動回路(32)とを備え、第2のスイッチング素子は、第1のスイッチング素子と並列に接続され、発電電圧が、第1のスイッチング素子の駆動可能電圧よりも低い電圧V1により駆動可能であり、ON状態に切り替わることで励磁コイルに励磁電流を流す。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11