特許第6843230号(P6843230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843230液体の電気脱イオン化のための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843230
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】液体の電気脱イオン化のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20060101AFI20210308BHJP
   B01D 61/48 20060101ALI20210308BHJP
   B01D 61/54 20060101ALI20210308BHJP
   B01D 61/52 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C02F1/469
   B01D61/48
   B01D61/54 500
   B01D61/52
【請求項の数】29
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-510944(P2019-510944)
(86)(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公表番号】特表2019-528171(P2019-528171A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(86)【国際出願番号】EP2016069886
(87)【国際公開番号】WO2018036612
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】509092409
【氏名又は名称】スワン・アナリティスク・インストゥルメント・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フレグハルト,アヒレス
(72)【発明者】
【氏名】ガト,ユリア
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−506895(JP,A)
【文献】 特開2001−239270(JP,A)
【文献】 特表平10−500617(JP,A)
【文献】 特開平09−210943(JP,A)
【文献】 国際公開第00/057165(WO,A1)
【文献】 特開2009−226315(JP,A)
【文献】 特開2004−034004(JP,A)
【文献】 特開2004−050017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/00−27/49
C02F1/42−1/48
B01J39/00−49/90
B01D61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液体の電気脱イオン化のための装置(1)であって、
2つの開口部(11、12)および陽極(13)を含む陽極室(10)と、
2つの開口部(21、22)および陰極(23)を含む陰極室(20)と、
前記陽極室(10)と前記陰極室(20)との間に位置し、2つの開口部(31、32)およびイオン交換体を含む処理室(30)とを含み、前記陽極室(10)および前記陰極室(20)は各々、選択透過膜(33)によって前記処理室(30)から分離されており、前記装置はさらに、
前記陽極(13)および前記陰極(23)に作動的に接続されたエネルギー源(40)を含み、
前記処理室(30)の前記開口部のうちの一方(31;32)、前記陰極室(20)の前記開口部(21、22)、および前記陽極室(10)の前記開口部のうちの一方(11;12)は、前記処理室(30)が前記陰極室(20)に作動的に接続され、前記陰極室(20)が前記陽極室(10)に作動的に接続されるように、互いに接続され
前記処理室(30)の一方の前記開口部(31;32)、前記陰極室(20)の開口部(21;22)、および陽極室(10)の一方の開口部(11、12)は、前記処理室(30)における供給された前記試料液体が実質的に重力の方向に誘導され、前記陽極室(10)および前記陰極室(20)において実質的に重力の方向に対抗して誘導されるように、互いに接続される、装置(1)。
【請求項2】
試料液体の電気脱イオン化のための装置(1)であって、
2つの開口部(11、12)および陽極(13)を含む陽極室(10)と、
2つの開口部(21、22)および陰極(23)を含む陰極室(20)と、
前記陽極室(10)と前記陰極室(20)との間に位置し、2つの開口部(31、32)およびイオン交換体を含む処理室(30)とを含み、前記陽極室(10)および前記陰極室(20)は各々、選択透過膜(33)によって前記処理室(30)から分離されており、前記装置はさらに、
前記陽極(13)および前記陰極(23)に作動的に接続されたエネルギー源(40)を含み、
前記処理室(30)の前記開口部のうちの一方(31;32)、前記陽極室(10)の前記開口部(11、12)、および前記陰極室(20)の前記開口部のうちの一方(21;22)は、前記処理室(30)が前記陽極室(10)に作動的に接続され、前記陽極室(10)が前記陰極室(20)に作動的に接続されるように、互いに接続され
前記処理室(30)の一方の前記開口部(31;32)、前記陽極室(10)の前記開口部(11、12)、および前記陰極室(20)の一方の前記開口部(21;22)は、前記処理室(30)における供給された前記試料液体が実質的に重力の方向に誘導され、前記陽極室(10)および前記陰極室(20)において実質的に重力の方向に対抗して誘導されるように、互いに接続される、装置(1)。
【請求項3】
前記処理室(30)の接続されていない前記開口部(31;32)の前に導電率センサ(51)が配置される、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記処理室(30)と前記陽極室(10)との間に導電率センサ(52)が配置される、請求項2〜のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記導電率センサ(52)の後に配置された脱気部(41)を含み、前記脱気部(41)の後にさらなる導電率センサ(53)が配置される、請求項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記導電率センサのうちの少なくとも1つ(51;52;53)は温度センサを含む、請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記処理室(30)の前記開口部のうちの一方(31;32)、
前記陽極室(10)の前記開口部のうちの一方(11;12)、
前記陰極室(20)の前記開口部のうちの一方(21;22)、
のうちの少なくとも1つの前に配置された、少なくとも1つの流量センサを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記イオン交換体は、陽イオン交換樹脂である、請求項2〜のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記イオン交換体は、呈色指示イオン交換体である、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記イオン交換体は、呈色指示陽イオン交換樹脂である、請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記処理室(30)は、少なくとも部分的に透明に形成される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記処理室(30)は、前記処理室(30)の前記開口部(31、32)に沿って少なくとも部分的に透明に形成される、請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記イオン交換体を監視するための光学センサを含む、請求項11または請求項12に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記導電率センサのうちの少なくとも1つからの信号、
前記温度センサのうちの少なくとも1つからの信号、
前記流量センサのうちの少なくとも1つからの信号、
少なくとも前記光学センサからの信号、
前記エネルギー源(40)の電圧、
前記エネルギー源(40)の電流、
のうちの少なくとも1つを記録して処理する、電子測定システムを含む、請求項13のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記処理室(30)の前記開口部(31、32)のうちの少なくとも一方は、フィルタ部を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記陽極(13)と前記陽極(13)に面する前記選択透過膜(33)との間の陽極室(10)、
前記陰極(23)と前記陰極(23)に面する前記選択透過膜(33)との間の陰極室(20)、
のうちの少なくとも1つに配置された、少なくとも1つのイオン伝導膜を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記処理室(30)は交換可能である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の装置(1)で使用される処理室(30)であって、略直方体の基本構造を有し、互いに間隔を置いた2つの開口部(31、32)と、各々選択透過膜(33)によって実質的に形成された、互いに対向する2つの側面とを含み、
互いに対向する前記側面は各々、選択透過膜(33)が接着適用される、前記基本構造の一部を形成する略矩形のフレームを含む、処理室(30)。
【請求項19】
イオン交換体を充填するためのさらなる開口部、および/または、脱気のためのさらなる開口部が、前記開口部のうちの一方(31;32)に隣接して設けられる、請求項18に記載の処理室(30)。
【請求項20】
前記さらなる開口部のうちの少なくとも1つは水密および気密の態様で閉鎖可能である、請求項19に記載の処理室(30)。
【請求項21】
前記開口部のうちの少なくとも1つは、フィルタ部によって覆われる、請求項1820のいずれか1項に記載の処理室(30)。
【請求項22】
選択透過膜(33)によって実質的に形成された前記側面の外側には各々、取り外し可能に固定された保護要素が設けられる、請求項1821のいずれか1項に記載の処理室(30)。
【請求項23】
前記取り外し可能に固定された保護要素は、硬質プレートである、請求項22に記載の処理室(30)。
【請求項24】
試料液体の電気脱イオン化のための方法であって、
2つの選択透過膜(33a、33b)によって互いから空間的に分離された陽極(13)および陰極(23)に電圧を印加するステップと、
イオン交換体で少なくとも部分的に充填され、前記2つの選択透過膜(33a、33b)によって境界された処理室(30)を通る前記試料液体の少なくとも部分的な流れのステップと、次に、
前記陽極(13)と前記選択透過膜のうちの一方(33a)との間に配置された陽極室(10)を通る前記試料液体の少なくとも部分的な流れのステップと、次に、
前記陰極(23)と他方の選択透過膜(33b)との間に配置された陰極室(20)を通る前記試料液体の少なくとも部分的な流れのステップとを含み、
イオン交換体で少なくとも部分的に充填された前記処理室(30)を通る前記少なくとも部分的な流れは、実質的に重力の方向に起こり、
前記陽極室(10)を通る前記少なくとも部分的な流れは、重力の方向に対抗して起こり、
前記陰極室(20)を通る前記少なくとも部分的な流れは、重力の方向に対抗して起こる、方法。
【請求項25】
試料液体の電気脱イオン化のための方法であって、
2つの選択透過膜(33a、33b)によって互いから空間的に分離された陽極(13)および陰極(23)に電圧を印加するステップと、
イオン交換体で少なくとも部分的に充填され、前記2つの選択透過膜(33a、33b)によって境界された処理室(30)を通る前記試料液体の少なくとも部分的な流れのステップと、次に、
前記陰極(23)と他方の選択透過膜(33b)との間に配置された陰極室(20)を通る前記試料液体の少なくとも部分的な流れのステップと、次に、
前記陽極(13)と前記選択透過膜のうちの一方(33a)との間に配置された陽極室(10)を通る前記試料液体の少なくとも部分的な流れのステップとを含み、
イオン交換体で少なくとも部分的に充填された前記処理室(30)を通る前記少なくとも部分的な流れは、実質的に重力の方向に起こり、
前記陽極室(10)を通る前記少なくとも部分的な流れは、重力の方向に対抗して起こり、
前記陰極室(20)を通る前記少なくとも部分的な流れは、重力の方向に対抗して起こる、方法。
【請求項26】
イオン交換体で少なくとも部分的に充填され、前記2つの選択透過膜(33a、33b)によって境界された前記処理室(30)を通る前記試料液体の前記少なくとも部分的な流れのステップの前に、前記試料液体の比導電率を測定するさらなるステップを含む、請求項2425のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
イオン交換体で少なくとも部分的に充填され、前記2つの選択透過膜(33a、33b)によって境界された前記処理室(30)を通る前記試料液体の前記少なくとも部分的な流れのステップの後に、前記試料液体の比導電率を測定するさらなるステップを含む、請求項2426のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記試料液体の少なくとも一部の脱気のさらなるステップと、次に、
前記試料液体の比導電率を測定するステップの後に、比導電率の追加の測定のさらなるステップとを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記試料液体の流量の一体化された連続的な測定のさらなるステップを含む、請求項2428のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体の電気脱イオン化のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気脱イオン化とは、イオン交換と電気透析との組合せであり、液体、特に水からイオンおよびイオン性物質を除去するよう機能する。目的は、脱イオン水または脱塩(demineralized:DM)水としても知られる無塩水を生成することであることが最も多い。別の応用領域は、火力発電所などの発電所における処理水回路の監視である。海水または地表水が供給される冷却水回路から液体が漏れを介して処理水回路へ浸透し得るかどうかを点検するために、処理水の比導電率測定が実行される。とりわけパイプの腐食を防止するためにアンモニアおよび/またはアミンが処理水に添加されるため、処理水はすでに比導電率を本質的に有しており、それは、冷却塩水、特に冷却水に溶解した塩化ナトリウム(NaCl)が浸透する場合には、あまり変化しないであろう。しかしながら、導電率測定が陽イオン交換後に行なわれる場合、本質的な導電率に寄与する添加物からの陽イオンの量が減少し、塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに塩酸(HCl)が存在する。同数のHCl分子の比導電率は同数のNaCl分子の比導電率よりも著しく高いため、処理水回路への冷却水の浸透は、陽イオン交換体後の処理水の比導電率の増加によって判断され得る。処理水への冷却水の浸透を検出するために水中の負イオンを検出するための装置および方法は、たとえばEP1167954B1に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の目的は、液体の電気脱イオン化のための改良された装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この問題は、試料液体の電気脱イオン化のための装置によって解決される。装置は、2つの開口部および陽極を含む陽極室と、2つの開口部および陰極を含む陰極室と、陽極室と陰極室との間に位置し、2つの開口部およびイオン交換体を含む処理室とを含む。前記装置では、陽極室および陰極室は、選択透過膜によって処理室から分離されており、エネルギー源が、陽極および陰極に作動的に接続される。
【0005】
これらの室間には、2つの代替的な接続可能性がある。一方では、処理室の開口部のうちの一方、陽極室の開口部、および陰極室の開口部のうちの一方は、処理室が陽極室に作動的に接続され、陽極室が陰極室に作動的に接続されるように、互いに接続されてもよい。他方では、処理室の開口部のうちの一方、陽極室の開口部のうちの一方、および陰極室の開口部は、処理室が陰極室に作動的に接続され、陰極室が陽極室に作動的に接続されるように、互いに相互接続されてもよい。
【0006】
エネルギー源は、たとえば電圧源、特に、電極、すなわち陽極および陰極間のDC電圧の複雑でない印可を可能にするDC電圧源である。その場合、陽極はDC電圧源の正極に接続され、陰極はDC電圧源の負極に接続される。電極はとりわけ、金属ワイヤ、金属メッシュ、または金属プレートであってもよく、それらはまた、エキスパンドメタルで作られてもよい。
【0007】
1つの室の開口部は互いから間隔を置いて配置されてもよく、特に、開口部のうちの一方は室の上部1/3に、他方は室の下部1/3にあってもよい。一方の開口部が室の上側に位置し、他方の開口部が室の下側に位置することも可能である。
【0008】
選択透過膜は、部分透過性または半透過性の物理的界面である。すなわち、それは、ある物質/物を保持し、他の物質/物を通過させる。たとえば、それは、陰イオン透過膜または陽イオン透過膜であり得る。そのような膜は、たとえば水、気体、および電子に対して実質的に不透過性であるものの、陰イオンまたは陽イオンを通過させる。次に、対イオンが引き止められ、膜を浸透できない。そのような選択透過膜は、たとえば、スルホン化テトラフルオロエチレンポリマーから構築され得る。好適な選択透過膜のさらなる例は、特許明細書US4324606およびUS4997567に記載されている。これらの室は、空間的に分離可能な3つのユニットであってもよく、それらはたとえば、3つの室をすべて含む小型ユニットを形成するために、通常のねじ込みタイロッドの代わりに、着脱が容易なシステムを介して接続され得る。たとえば、これらの室は直方体の基本構造を有しており、すべての室の、高さおよび幅などの2つの縁長さは同一であるものの、深さは変わり得る。中央の処理室は6つの側面を含むことができ、それらのうち、2つの対向する側面は各々、1つの選択透過膜によって実質的に形成される。しかしながら、陽極室および陰極室は、略平坦な側面を5つしか有しておらず、1つの選択透過膜が各々、第6の側面として機能するように、処理室に接続され得る。しかしながら、それはまた、部分的に覆われた槽に匹敵する構造であり得る。2つの対向する側において、そのような槽は、一方の側に陽極を、他方の側に陰極を含む。槽の覆われていない部分において陽極と陰極との間に処理室を挿入することによって、3つの室を含む装置を形成することもできる。この挿入された処理室はイオン交換体で充填され、各々選択透過膜によって実質的に形成された2つの対向する側面を含む。選択透過膜の面積は、タンクを処理室の方向に3つの別個の室へと液密および気密に分割するのに十分に大きい。これらの室の水圧作動接続は、たとえば管によって実現され得る。処理室の一方の開口部は、陽極室の一方の開口部に、ホースを介して接続され得る。陽極室の他方の開口部は、陰極室の開口部のうちの一方に、ここでもホースによって接続される。陽極室に接続されていない処理室の開口部は、試料液体のための入口開口部として機能し得る。陽極室に接続されていない陰極室の開口部は、試料液体のための出口として機能し得る。
【0009】
矛盾しない限り、挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、処理室の一方の開口部、陽極室の開口部、および陰極室の一方の開口部は、処理室における供給された試料液体が実質的に重力の方向に誘導され、陽極室および陰極室において実質的に重力の方向に対抗して誘導されるように、相互接続される。
【0010】
試料液体のそのような流れは、たとえば、処理室の上側に配置された開口部を介して処理室に試料液体を供給し、次に、試料液体が処理室を実質的にその長さに沿って流れ、試料液体が処理室の下側に配置された開口部を介して処理室を出ることによって、実現され得る。試料液体は次に、陽極室の下側の開口部を通って管によって導入され、陽極室を実質的にその長さに沿って流れ、陽極と陽極に面する選択透過膜との間を少なくとも部分的に流れ、陽極室の頂部で、頂部に配置された開口部を通って陽極室を出る。管により、試料液体は次に、陰極室の下側の開口部を介して陰極室へ導入され、陰極室を実質的にその長さに沿って流れ、陰極と陰極に面する選択透過膜との間を少なくとも部分的に流れ、陰極室の頂部で、そこに配置された開口部を介して出る。
【0011】
縦方向とは、実質的に上から下まで、およびその逆を意味する。選択透過膜に関しては、これらの室には横方向の試料液体の流れはなく、膜に対して縦方向のものしかない。
【0012】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、処理室の接続されていない開口部の前に導電率センサが配置される。
【0013】
陽極室の開口部のうちの一方に接続されていない処理室の開口部の前に配置された導電率センサは、処理室に入る前の試料液体の導電率を求めるために使用され得る。たとえば、蒸気生成用の水は一般にアルカリ化されている。なぜなら、水蒸気回路の内面上の酸化鉄の保護層は高pH値では溶解しにくく、したがって適所に固定されたままであるためである。これは、下にある金属を、高温水および蒸気によるさらなる腐食から保護する。アルカリ化剤の導電率、pH、および濃度といったパラメータは関連しているため、アルカリ化剤を有する超純水の導電率を測定することは、アルカリ化剤の濃度、および、超純水とアルカリ化剤との溶液のpHを計算することを可能にする。蒸気発生用の典型的な処理水導電率は、8マイクロジーメンス/cm〜45マイクロジーメンス/cmに及ぶ。液体の導電率を測定するための典型的なセンサは、特許US2611007「温度補償導電率セル」(Temperature Compensating Conductivity Cell)に記載されている。最近の導電率センサの別の例は、スワン・アナリティスク・インストゥルメント・アーゲー(SWAN ANALYTISCHE INSTRUMENTE AG)からの「スワンセンサ(Swansensor)UP−Con1000」である。
【0014】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、処理室と陽極室との間に導電率センサが配置される。
【0015】
処理室と陽極室との間に、たとえば前記室同士を接続する管に配置された導電率センサは、処理室を通過後の試料液体の導電率を求めるために使用され得る。
【0016】
処理室はイオン交換樹脂で少なくとも部分的に充填されるため、処理室を通過する際にイオン交換が起こり、それは、試料液体に溶解したイオンのタイプおよび量に依存して、試料液体の導電率に影響を及ぼす。
【0017】
選択透過膜による、陽極および陰極からのイオン交換体の分離により、陽極および陰極で電気分解によって生成された気体が処理室へ浸透して試料液体とともに導電率センサに搬送されることはない。このように、導電率の妥協のない測定が実現され得る。試料液体が電極を通過する前に導電率測定が行なわれるため、試料液体におけるイオンの酸化または還元は、導電率測定後にしか起こらない。
【0018】
試料液体の導電率が処理室の前および後で求められる場合、これは、拡張された分析可能性を提供する。たとえば、試料液体のpH値を求めることが可能である。
【0019】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、処理室と陽極室との間に位置する導電率センサの下流に脱気部が配置される。脱気部と陽極室との間に別の導電率センサが配置される。
【0020】
試料液体に存在し、処理室に供給される気体は、気泡として、すなわち溶解していない形または溶解した形で生じ得る。気泡は導電率測定自体を妨げ、不安定な信号をもたらす。荷電粒子(イオン)へと解離する、すなわち、少なくとも部分的に分解する溶解気体は、試料液体の比導電率を増加させる。たとえば、水に溶解した二酸化炭素(CO2)は、pH値に依存して、炭酸または重炭酸イオンおよび陽子を形成することができる。CO2は、沸騰または他の物理的方法によって試料液体から追い出され得る。この脱気後の試料液体の導電率測定は、たとえば、CO2含有量が求められることを可能にする。
【0021】
試料液体の一部のみが脱気部を通って供給され、他の部分が陽極室に直接供給される場合、脱気部を通って供給された試料液体は、直列または並列に供給し返される。すなわち、試料液体のこれら2つの部分は、まとめられてから陽極室へ供給されてもよく、または、これら2つの部分は、陽極室における別々の開口部を通って並列に供給されてもよい。処理室の後の試料流れ全体が、陽極室に向かう途中で、最初に導電率センサ、次に脱気部、次に別の導電率センサを通過することも可能である。部分流れを拒否することも可能である。
【0022】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、導電率センサのうちの少なくとも1つは温度センサを含む。
【0023】
温度センサが導電率センサに一体化される場合、試料液体の温度補償された比導電率を求めることができる。
【0024】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、装置は少なくとも1つの流量センサを含む。この少なくとも1つの流量センサは、たとえば、処理室の開口部のうちの一方、陽極室の開口部のうちの一方、および/または、陰極室の開口部のうちの一方に位置し得る。
【0025】
流量センサは連続的な流れの測定を可能にし、導電率測定の検証を提供することができる。流量がある場合、測定された比導電率は実際にオンラインで測定され、現在値を反映する。
【0026】
典型的な流量は、たとえば、毎時2リットルから毎時15リットルに及ぶ。
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、イオン交換体は、陽イオン交換樹脂である。
【0027】
好適な強酸性ゲル状イオン交換樹脂は、たとえば、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)からのアンバージェット(Amberjet)−1000−H−L(登録済)である。
【0028】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、イオン交換体は、呈色指示イオン交換体、特に呈色指示陽イオン交換樹脂である。
【0029】
たとえば、強酸性陽イオン交換樹脂が使用可能であり、それは、酸/塩基呈色指示薬で色付けられる。樹脂が「使い尽くされた」場合、すなわち、たとえば酸性陽子(H+)と交換された塩基アンモニウムイオン(NH4+)といった陽イオンが樹脂に装填された場合、pH値は増加し、陽イオン交換樹脂または指示薬はこれを可逆的変色によって示す。樹脂が再び生成されると、元の色が再び現われる。システムにとって典型的である色分布からのずれは、たとえば、機能不全の表示であり得る。
【0030】
指示薬を用いる好適な陽イオン交換樹脂の一例は、ランクセス(Lanxess)からのレバチット(Lewatit)S 100 G1(登録済)というタイプである。
【0031】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、処理室は、特に処理室の開口部に沿って少なくとも部分的に透明である。
【0032】
処理室の内部を見ることが可能である場合、たとえば、処理室を浸透した不純物が感知され得る。酸化鉄堆積物も、イオン交換体上で検出され得る。呈色指示イオン交換体が処理室に位置する場合、その状態を点検することができ、必要であれば、たとえば、使用されたイオン交換体を置き換えること、処理室全体を置き換えること、または他の好適な方策を取ることができる。
【0033】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、装置は光学センサを含む。光学センサは、イオン交換体を監視するために使用され得る。
【0034】
人間の目によって点検される代わりに、たとえばスペクトル選択的反射測定を行なうことができる光学センサはまた、処理室に位置する呈色指示イオン交換体イオン交換体の色、ひいては品質を監視することができるように搭載され得る。たとえば、ある臨界値を上回る場合、装置が完璧に機能することをもはや保証できないため、光学センサに接続された電子測定システムが警告をトリガすることができ、または、電子制御部が電気脱イオン化プロセスおよび/または試料流れを中断することができる。使用されたイオン交換体の自動交換をトリガする電子制御システムも考えられる。
【0035】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、装置は電子測定システムを含む。電子測定システムは、導電率センサのうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの信号、温度センサのうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの信号、流量センサのうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの信号、少なくとも光学センサからの少なくとも1つの信号、エネルギー源の電圧、および/または、エネルギー源の電流を記録して処理する。
【0036】
そのような電子測定システムは、装置に含まれるすべてのセンサの記録および/または評価を可能にする。同じことは、エネルギー源の電圧および電流といったパラメータにも当てはまる。電子測定システムはパネルに一体化されてもよく、パネルは測定値が読まれることを可能にし、外部コンピュータまたはデータキャリアへのインターフェイスを含む。たとえば、陽イオン交換の前または後に、もしくは脱気の後に導電率センサが試料液体の臨界比導電率を送信するやいなや、電子測定システムは警告をトリガすることができる。電子測定システムは、電子測定システムを介して供給された信号に従って装置を制御する電子制御システムと結合され得る。たとえば、流量の増加または入力導電率の増加とともに、陽極と陰極との間の電圧が、陽極でより多くの陽子を生成するために増加され得る。陽子は次に、選択透過膜を通って処理室へ移動し、そこでそれらは、より多量に装填されたイオン交換体を再生成するために、陽子に対する必要性の増加を保証する。
【0037】
電気脱イオン化装置は、電子測定システムに一体化され得る共通のエネルギー源から電力供給され得る。
【0038】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、処理室の開口部のうちの少なくとも一方は、フィルタ部を含む。
【0039】
試料液体のための入口として機能する処理室の開口部の前に配置されたフィルタ部は、処理室への不純物の浸透を防止するかまたは減少させる。それはまた、蒸気発生器が上下に駆動されている場合などの発電所の異常な運転状態時にイオン交換樹脂が洗い流されることを防止する。フィルタ部がなければ、水、ひいてはイオン交換樹脂も、装置の入口開口部を通って吸い戻されるかもしれない。陽極室の開口部に作動的に接続された処理室の開口部の前のフィルタ部は、イオン交換体が試料液体とともに処理室から洗い流されることを防止する。フィルタ部は、たとえば、焼結ポリエチレン、特に超高分子量焼結ポリエチレンで作られたフィルタプレートであってもよい。イオン交換体を確実に保持するために、フィルタ部の孔径は、たとえば、イオン交換体の最小径の5%〜50%であり得る。
【0040】
典型的な単分散イオン交換樹脂は、たとえば、分散範囲が+/−0.05mmである0.65mmのボール径を有する。
【0041】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、装置は少なくとも1つのイオン伝導膜を含む。これは、たとえばイオン伝導膜が、処理室から陽極室および陰極室を分離する選択透過膜に匹敵するかまたはそれらと同一である場合、別の選択透過膜であってもよい。これは、陽極とそれに面する選択透過膜との間の陽極室に、または、陰極とそれに面する選択透過膜との間の陰極室に配置され得る。イオン伝導膜はまた、陽極室に、および陰極室に配置され得る。
【0042】
そのようなイオン伝導膜は、発生期酸素またはオゾンといった、電極で生成される攻撃的物質から選択透過膜を保護する。イオン伝導膜はまた、エキスパンドメタルまたは金属スクリーンで作られた電極で生じ得るような、鋭い縁による損傷から選択透過膜を保護する。
【0043】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った装置の一実施形態では、装置の処理室は相互交換可能である。
【0044】
試料液体の電気脱イオン化のためのこの発明に従った装置で使用するために、処理室が提供され、それは略直方体の基本構造を有する。処理室は、互いに間隔を置いた2つの開口部と、各々選択透過膜によって実質的に形成された2つの対向する側面とを含む。
【0045】
開口部同士は間隔を置いていてもよい。たとえば、一方の開口部は処理室の上部に、一方の開口部は処理室の下部に位置していてもよい。室の上部または頂部、および下部または底部とは、別段の定義がない限り、室の下部1/3および上部1/3を意味する。また、開口部のうちの一方は処理室の上側に、一方は下側に位置していてもよい。選択透過膜によって形成されていない直方体の基本構造の表面は、たとえば、プラスチックプレート、特に機械的に強いプラスチックプレートによって形成されている。
【0046】
矛盾しない限り、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った処理室の一実施形態では、対向する側面は、基本構造の一部を形成し、選択透過膜が接着適用される、略矩形のフレームを各々含む。
【0047】
直方体の基本構造は、平行6面体の基本構造を完成させる4つのプレートと水密および気密に接続される、互いに平行に整列された2つのフレームから構成され得る。
【0048】
たとえば、フレームおよびプレートはプラスチックで作られ得る。フレームによって包囲された空洞を完全に覆う1つの選択透過膜が、気密および水密の態様で、特に接着または貼り合わせによって前記フレームに取付けられる。フレームは、たとえば、余分な接着剤を収容するための溝を有し得る。溝は周囲にあり、接着点の外部に位置するものの、依然として選択透過膜によって覆われるように配置され得る。
【0049】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った処理室の一実施形態では、イオン交換体を充填するためのさらなる開口部、および/または、脱気のためのさらなる開口部が、開口部のうちの一方に隣接して設けられる。特に、これらの追加の開口部のうちの少なくとも1つは水密および気密に閉鎖可能である。
【0050】
さらなる開口部は、処理室の上部1/3、特に処理室の上側に位置していてもよく、水密および気密の態様で(再)閉鎖可能および/または接続可能であってもよい。
【0051】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った処理室の一実施形態では、開口部のうちの少なくとも1つは、フィルタ部によって覆われる。フィルタ部は、開口部自体の内部に、開口部上に直接、または少なくとも1つの支持要素上に載って配置され得る。
【0052】
試料液体の入口用の開口部と脱気のための開口部とは、たとえば、別々のフィルタ部によって、または共通のフィルタ部によって覆われ得る。1つのフィルタ部が、処理室の内部および外部の双方で、開口部自体の内部および開口部上の双方に位置し得る。試料液体を放出するための処理室の下側の開口部はフィルタ部によって覆われてもよく、フィルタ部は処理室内に位置しており、たとえば、下側の表面と実質的に等しい表面を有する。処理室にはまた、処理室内で選択透過膜に対して実質的に面平行に配置されたフィルタ、たとえば丸いフィルタが装備され得る。
【0053】
そのような平坦なフィルタ部が処理室の下側に直接置かれることを避けたい場合、フィルタ部は、少なくとも1つの支持要素上に載って開口部を間接的に覆うことができる。フィルタ部の間接的接触は、フィルタ表面の一部が通流のためにブロックされることを防止する。たとえば、1つ以上の穿孔支持リング、螺旋体、または放射状チャネルが、支持要素として使用され得る。焼結ポリエチレンで作られたフィルタプレートの代わりに、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、および/またはフルオロポリマーで作られた目の細かいプラスチックネットも、フィルタ部として使用されてもよく、そのメッシュサイズは、使用されるイオン交換樹脂の樹脂ボールの最小径よりも少なくとも50%小さく、特に、メッシュサイズは、樹脂ボールの最小径の5%〜50%に対応する。好適なフルオロポリマーは、たとえば、PTFE、FEP、および/またはECTFEである。ネットは、たとえば、接着性のものであってもよく、または、締付け要素で締結されてもよい。ネットも、上述の支持要素上に載ることができる。
【0054】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った処理室の一実施形態では、選択透過膜によって各々実質的に形成された側面の外側には、取り外し可能に固定された保護要素、特に硬質プレートが設けられる。
【0055】
処理室を搬送および保管のために保護するために、機械的に安定したプレートといった保護要素を、処理室の直方体の基本構造の側面の外側に取り外し可能に取付けることができ、側面は各々、選択透過膜によって実質的に形成されている。保護要素を取付けるために、たとえば、接着テープまたは搭載ループが使用され得る。これに加えて、またはこれに代えて、処理室はまた、保護のために、たとえばプラスチックで作られた袋に、オプションで真空下で包まれ得る。
【0056】
問題はまた、試料液体の電気脱イオン化のための方法によって解決される。この発明に従った方法は、2つの選択透過膜によって空間的に分離された陽極および陰極への電圧の印加と、イオン交換体で少なくとも部分的に充填され、2つの選択透過膜によって境界された処理室を通る試料液体の少なくとも部分的な流れと、陽極と選択透過膜のうちの一方との間に位置する陽極室を通る試料液体の少なくとも部分的な流れと、陰極と他方の選択透過膜との間に位置する陰極室を通る試料液体の少なくとも部分的な流れとを含む。
【0057】
この発明によれば、これらの室を通る流れは、異なる順序で起こり得る。一方では、少なくとも部分的にイオン交換体で充填され、2つの選択透過膜によって境界された処理室を試料液体が少なくとも部分的に流れた後、試料液体は次に、陽極と選択透過膜のうちの一方との間に位置する陽極室を少なくとも部分的に流れることができ、次に、試料液体は、陰極と他方の選択透過膜との間に位置する陰極室を少なくとも部分的に流れることができる。
【0058】
他方では、少なくとも部分的にイオン交換体で充填され、2つの選択透過膜によって境界された処理室を試料液体が少なくとも部分的に流れた後、試料液体は、陰極と選択透過膜のうちの一方との間に位置する陰極室を少なくとも部分的に流れることができ、次に、試料液体は、陽極と他方の選択透過膜との間に位置する陽極室を少なくとも部分的に流れることができる。
【0059】
このプロセスは、溶解物質のための2つの搬送機構に実質的に関与する。一方では、対流、すなわち、試料液体の流れを用いたこれらの溶解物質の搬送が生じる。他方では、電子移動、すなわち、電荷を帯びた粒子の、電界に沿った移動が起こる。電界は、陽極と陰極との間の電圧によって生成される。対流は、これらの室を通る少なくとも部分的な流れに対応する。
【0060】
矛盾しない限り、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った方法の一実施形態では、イオン交換体で少なくとも部分的に充填された処理室を通る少なくとも部分的な流れは、実質的に重力の方向に起こり、陽極室を通る少なくとも部分的な流れは、重力の方向に対抗して起こり、陰極室を通る少なくとも部分的な流れは、重力の方向に対抗して起こる。
【0061】
電気分解により、気体生成が電極で、すなわち陽極室および陰極室で生じる場合、結果として生じる気体は、試料液体ストリームとともに室から放出され得る。
【0062】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った方法の一実施形態では、方法はさらに、試料液体の比導電率の測定を含む。試料液体の比導電率は、イオン交換体で少なくとも部分的に充填され、2つの選択透過膜によって境界された処理室を試料液体が少なくとも部分的に流れる前に測定される。
【0063】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った方法の一実施形態では、方法はさらに、試料液体の比導電率の測定を含む。試料液体の比導電率は、イオン交換体で少なくとも部分的に充填され、2つの選択透過膜によって境界された処理室を通る試料液体の少なくとも部分的な流れの後に、および、陽極と選択透過膜のうちの一方との間に位置する陽極室を通る試料液体の少なくとも部分的な流れの前に、測定される。
【0064】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれか、および、さらに挙げられる実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った方法の一実施形態では、方法はさらに、試料液体の少なくとも一部の脱気を含む。次に、陽極と選択透過膜のうちの一方との間に位置する陽極室を試料液体が少なくとも部分的に流れる前に、試料液体の比導電率が追加で測定される。
【0065】
矛盾しない限り、すでに述べられた実施形態のうちのいずれかと組合され得る、この発明に従った方法の一実施形態では、方法はさらに、試料液体の流量の一体化された連続的な測定を含む。
【0066】
本発明の実施形態例を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】この発明に従った装置の一実施形態の概略表示を示す図である。
図2】この発明に従った装置の一実施形態の概略表示を示す図である。
図3】2つの導電率センサを有する、この発明に従った装置の図2に従った一実施形態の概略表示を示す図である。
図4】3つの導電率センサを有する、この発明に従った装置の図3に従った一実施形態の概略表示を示す図である。
図5】この発明に従った処理室の一実施形態の概略表示を斜視図で示す図である。
図6】この発明に従った処理室の一実施形態の別の概略表示を側面図で示す図である。
図7図5に従った、この発明に従った処理室を側面図で示す図である。
図8】交換可能な処理室を有する、この発明に従った装置の一実施形態の概略表示を斜視図で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、試料液体の電気脱イオン化のための装置の一実施形態の概略表示を示す。
装置1は、陽極13および2つの開口部11、12を有する陽極室10と、陰極23および2つの開口部21、22を有する陰極室20と、2つの開口部31、32を有する処理室30とを含む。処理室30は、陽極室10と陰極室20との間に位置しており、イオン交換体で充填されている。これらの室は、選択透過膜33によって互いから空間的に分離されている。陽極13および陰極23は、エネルギー源40に作動的に接続される。エネルギー源40は、陽極と陰極との間に印加されるDC電圧を提供する。処理室の開口部31、32のうちの一方は、装置1または処理室30にそれぞれ試料液体を供給するよう機能し、一方、陰極室20の開口部21、22のうちの一方は、装置1または陰極室20からそれぞれ試料液体を放出するよう機能する。残りの開口部は、これらの室間に作動接続を築くために使用され得る。たとえば、試料液体を入れるために開口部31が使用される場合、開口部11または12のいずれかを用いて処理室30と陽極室10との間に作動接続を実現するために、開口部32が使用され得る。たとえば、前記作動接続が開口部12を介して作られた場合、陽極室10と陰極室20との間に作動接続を実現するために、開口部11が開口部21または22に接続され得る。たとえば、開口部12および22が互いに接続される場合、装置1から試料液体を放出するために開口部21が使用されてもよい。これに代えて、これらの開口部は、処理室が陰極室に作動的に接続され、次に陰極室が陽極室に作動的に接続されるように、互いに接続され得る。処理室の一方の開口部31、32はその場合、同様に試料液体を供給するよう機能し、一方、陽極室の一方の開口部11、12はその場合、試料液体を放出するよう機能する。図示された実施形態では、開口部はすべて、室の下側または上側に位置する。開口部が室の側壁のうちの1つに配置されること、たとえば、1室当たり1つの開口部が室の下部1/3に配置され、1室当たり1つの開口部が室の上部1/3に配置されることも考えられる。
【0069】
図2は、この発明に従った方法の一実施形態を説明するために使用される、図1に示すような、この発明に従った装置を示す。表示を明確にするために、すでに図1で参照符号を用いて紹介された要素は、それらが同じ要素であったとしても、図2でもすべてが称されるとは限らない。これは、図示された開口部11、12、21、22、31、および32に特に当てはまる。
【0070】
一例として示された、例示された装置1では、エネルギー源40によってDC電圧が陽極13と陰極23との間に印加される。試料液体50が開口部31を介して処理室30に供給され、少なくとも部分的に陽イオン交換樹脂で充填された処理室30を開口部31および32に沿って重力の方向に流れる。開口部32および11は作動的に接続されるため、試料液体50は、処理室30を流れた後に陽極室10に流れ込み、それを開口部11および12に沿って重力の反対方向に流れる。試料液体50は次に、開口部21を介して陰極室20に入り、それを開口部22および21に沿って重力の方向に対抗して流れる。試料液体は、開口部22を介して陰極室20から出現する。
【0071】
これに代えて、試料液体が最初に処理室30、次に陽極室10、次に陰極室20を流れることが保証されるならば、これらの室には試料液体が上述の方向とは反対方向に流されてもよく、これらの室の開口部は所望通り作動的に相互接続されてもよい。試料液体50は、それが陽極13と選択透過膜33aとの間を流れるように陽極室10を流れる。選択透過膜33aは陽イオンに対して透過性があり、陽極13に面している。陰極室20には試料液体50が、陰極23および膜33bに関して陽極室10と同様に流される。試料液体50は、膜33aおよび33bと平行に処理室30を流れる。試料液体は、陽極13と陰極23との間の電界を少なくとも部分的に3回横断する。処理室が陽イオン交換樹脂で少なくとも部分的に充填され、選択透過膜が陽イオン透過膜である場合、説明される陽イオン交換プロセスが使用され得る。
【0072】
図2に示す方法では、以下により詳細に説明されるプロセスが生じる。
処理室で、試料液体に溶解したイオンのイオン交換が起こる。イオン交換体がこの例でのように陽イオン交換樹脂である場合、陰イオン(たとえばCl-)は試料溶液に残るものの、陽イオン(たとえばNH4+、Na+)は、陽イオン交換樹脂によって提供される陽イオン(たとえばH+)と置き換えられる。陽イオン交換樹脂内で、陽イオン(たとえばNH4+、Na+)は次に、電界に沿って陰極の方向に動き、陽イオンに対して透過性があり、陰極に面する選択透過膜を通って、陰極室へ移動する。陽イオン交換された試料液体は、処理室から陽極室へ移送される。そこで、試料液体における水の電気分解によって陽子(H+)が生成される。これらの陽子(H+)は次に、まず陽極に面する陽イオン選択透過膜を通り、次に陰極に面する陽イオン選択透過膜を通って、陰極に向かって移動することができる。途中、陽子(H+)は処理室を通過し、そこでそれらはイオン交換体を再生成するために利用可能である。いったん陽イオン交換樹脂が再生成され、処理室の試料水に陽イオンが(もはや)なくなると、陽子はさらに陰極室へ移動する。陽極室での電気分解中に同様に形成された陰イオンおよび気体(たとえばO2)は、試料液体とともに陰極室へ搬送される。陰極室で、水の電気分解によって水酸化物イオン(OH-)および気体(たとえばH2)が形成される。水酸化物イオンは、陰極室へ移動された陽子(H+)を中和し、および/または、陰極室へ移動された陽イオン(たとえばNH4+、Na+)の対応する水酸化物(たとえばNH4OH、NaOH)を対イオンとして形成する。
【0073】
図3は、試料液体の電気脱イオン化のための、この発明に従った装置の一実施形態の概略表示を示す。試料液体の流路も示されている。
【0074】
試料液体50が処理室30に入る前に、それは、処理室30の開口部31の前に配置された導電率センサ51を通過する。導電率センサ51は、試料液体50を入れて試料液体50の比導電率を測定するよう機能する。導電率センサ51が温度センサを含む場合、温度補償された比導電率を求めることができる。別の導電率センサ52が、処理室30と陽極室10との間に位置する。温度センサが存在する場合、この導電率センサ52も、単なる比導電率ではなく、温度補償された比導電率を測定することができる。
【0075】
図4は、図3に匹敵する、試料液体の電気脱イオン化のための、この発明に従った装置の一実施形態の概略表示を示す。
【0076】
しかしながら、図示された装置1は、別の導電率センサ53を有する点で、図3に示す装置とは異なっている。この導電率センサ53を用いた導電率測定は、「脱気された」(温度補償された)比導電率を求めることができるという点で、導電率センサ51および52を用いた測定とは異なっている。これは、試料液体を脱気する脱気部41が導電率センサ53に先行することを意味する。脱気部および導電率センサ53に試料液体50の一部を供給するだけで完全に十分である。この分岐部分は次に、陽極室10に入る前の残りの試料液体に簡単に戻されてもよく、または、残りの試料液体と前もって混合することなく、さらに別個の開口部を介して陽極室10に供給されてもよく、または、簡単に廃棄、すなわち処分されてもよい。しかしながら、分割されない試料流れ全体が、導電率センサ51、脱気部41、および導電率センサ53を順次通され、次に陽極室に供給されてもよい。
【0077】
図5は、試料液体の電気脱イオン化のための装置で使用するための、この発明に従った処理室の一実施形態を概略的に示す。
【0078】
例示は、透明な正面および上側を有する処理室30の正面図である。上側は開口部31を含み、それはこの例では試料液体50を入れるために使用される。さらに、処理室30の上側は、イオン交換体を充填するための開口部34と、処理室30に位置する試料液体50を脱気するための開口部35とを含む。下側には開口部32もある。これは、陽極室10または陰極室20との作動的接続を築くために使用される。開口部32はフィルタ部36によって覆われる。フィルタ部36は、孔径が処理室30に充填されるイオン交換体の粒径のわずか5%から50%である焼結ポリエチレンで作られたフィルタプレートである。フィルタプレート36の面積および縁長さは、処理室30の下側の面積および縁長さに実質的に対応する。しかしながら、フィルタプレート36は、処理室の下側に直接載っておらず、支持要素上で、この例では断続支持リング上で支持される。処理室のすべての開口部31、32、34、35は、それらが水密および気密に閉鎖され得るように設計されている。
【0079】
図6は、試料液体の電気脱イオン化のための装置で使用するための、この発明に従った処理室の別の実施形態を概略的に示す。
【0080】
例示は、処理室30の互いに対向する2つの側面の図を示す。矩形のフレームが見え、それらの各々に、選択透過膜33が気密および水密の態様で接着適用される。加えて、2つの丸いフィルタ36が見え、それらは、側面に対して面平行であり、側面間に位置している。それらは一方では、脱気開口部35および試料液体の入口用の開口部31を覆い、他方では、試料液体の出口用の、もしくは試料液体を陽極室または陰極室へ通すための開口部32を覆う。上側には、イオン交換体60を充填するための開口部34もある。片側には、各フィルタ36の背後に、試料液体のための収集チャンバ39がある。試料液体の供給および放出は、それぞれの収集チャンバ39の短い穴を通して行なわれる。これらの穴の軸は、フレーム内で選択透過膜の表面と略平行に走り、フレームの狭い側で出る。
【0081】
図7は、図5からの、この発明に従った処理室の一実施形態の概略側面図を示す。
図示された処理室30の側面は、周囲溝28を有するプラスチックフレーム37と、このフレーム37に接着適用された選択透過膜33とを含む。膜33が接着剤によってフレーム37に取付けられる場合、余分な接着剤は溝38に流れ込むことができ、膜33の側縁に沿ってはみ出さない。膜33はまた、超音波溶接によってフレーム37に取付けられ得る。
【0082】
これに代えて、処理室30の側面はまた、合同配置された2つのフレーム37からなることができ、それらの間には、選択透過膜33が、たとえば接着または締付けによって取付けられる。フレーム37および膜33はまた、貼り合わせによって接続され得る。
【0083】
図8は、図5に示すものに匹敵する処理室を含む、この発明に従った試料液体の電気脱イオン化のための、この発明に従った装置の一実施形態を概略的に示す。
【0084】
装置は、陽極室10と、陰極室20と、交換可能な処理室30とを含み、処理室30は、陽極と陰極との間の空間にぴったり嵌まるように挿入され、このため、選択透過膜33を含むその側面によって、装置1を3つの室へと実際に空間的に再分割する。
【0085】
特に、処理室30の挿入のスナップショットが示される。真っすぐな破線は、処理室30が正確な配置後に陽極13と陰極23との間のどこに位置し、着脱が容易な留め具によって固定されるかを示す。
【0086】
この例では、陽極室10および陰極室20は、共通の下側によって一体的に接続される。この下側には、たとえば、平行な2つのレールを取付けることができ、それらは、選択透過膜33が設けられた処理室30の側面のための案内要素として機能し得る。
【0087】
同様に、陽イオン交換のために意図されたそれらの実施形態および例はまた、それらが陰イオン交換のために使用され得るように、この発明の枠内で修正され得る。たとえば、電気脱イオン化の形式として陰イオン交換が所望される場合、試料液体の入口用に意図されていない処理室の開口部が陰極室の一方の開口部に接続され、陰極室の他方の開口部が陽極室の開口部のうちの一方に接続され、陰極室に接続されていない陽極室の他方の開口部が次に、試料液体のための出口開口部として機能するであろう。
【0088】
たとえば、導電率センサと、脱気部がその前に配置されたオプションの別の導電率センサとが、処理室と陰極室との間に配置されるであろう。
【0089】
加えて、処理室において、陽イオン交換体の代わりに陰イオン交換体が使用されてもよい。処理室を限定する選択透過膜は、陽イオンの代わりに陰イオンに対して透過性があるであろう。
【0090】
発明の範囲内の類似したさらなる修正は、当業者によって容易に認識され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8