(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記第1インバータ回路、前記第2インバータ回路、及び前記第3インバータ回路のうち少なくとも1つは、スイッチング素子が、ワイドバンドギャップ半導体材料により形成されている
  請求項1〜8の何れか一項に記載の誘導加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
  
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す分解斜視図である。
  
図1に示すように、誘導加熱調理器100の上部には、鍋等の被加熱物5が載置される天板4を有している。天板4には、被加熱物5を誘導加熱するための加熱口として、第1の誘導加熱口1及び第2の誘導加熱口2を備えている。第1の誘導加熱口1及び第2の誘導加熱口2は、天板4の手前側において、横方向に並設されている。また、本実施の形態1に係る誘導加熱調理器100は、3口目の加熱口として、第3の誘導加熱口3も備えている。第3の誘導加熱口3は、第1の誘導加熱口1及び第2の誘導加熱口2の奥側であって、天板4の横方向のほぼ中央位置に設けられている。
  第1の誘導加熱口1、第2の誘導加熱口2及び第3の誘導加熱口3のそれぞれの下方には、加熱口に載置された被加熱物5を加熱する第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13が設けられている。各々の加熱手段はコイル(
図2参照)で構成されている。
 
【0011】
  天板4は、全体が耐熱強化ガラス又は結晶化ガラス等の赤外線を透過する材料で構成されている。また、天板4には、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12、及び第3の誘導加熱手段13の加熱範囲に対応して、鍋の大まかな載置位置を示す円形の鍋位置表示が、塗料の塗布又は印刷等により形成されている。
 
【0012】
  天板4の手前側には、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13で被加熱物5等を加熱する際の投入電力及び調理メニュー等を設定するための入力装置として、操作部40が設けられている。なお、本実施の形態1では、誘導加熱コイル毎に操作部40を分けて、操作部40a、操作部40b及び操作部40cとしている。
  また、操作部40の近傍には、報知手段として、各誘導加熱コイルの動作状態、操作部40からの入力及び操作内容等を表示する表示部41が設けられている。なお、本実施の形態1では、誘導加熱コイル毎に表示部41を分けて、表示部41a、表示部41b及び表示部41cとしている。
 
【0013】
  なお、操作部40及び表示部41は、上述のように誘導加熱手段毎に設けられている場合、及び、各誘導加熱手段共通のものとして設ける場合等、特に限定するものではない。ここで、操作部40は、例えばプッシュスイッチ及びタクトスイッチ等の機械的なスイッチ、電極の静電容量の変化により入力操作を検知するタッチスイッチ等により構成されている。また、表示部41は、例えばLCD及びLED等で構成されている。
  なお、操作部40と表示部41とは、これらを一体に構成した操作表示部43としても良い。操作表示部43は、例えば、LCDの上面にタッチスイッチを配置したタッチパネル等によって構成される。
  なお、LCDは、Liquid  Crystal  Deviceの略称である。また、LEDは、Light  Emitting  Diodeの略称である。
 
【0014】
  誘導加熱調理器100の内部には、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12、及び第3の誘導加熱手段13のコイルに高周波電力を供給する駆動回路50と、駆動回路50を含め誘導加熱調理器全体の動作を制御するための制御部45とが設けられている。
 
【0015】
  駆動回路50により高周波電力が、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13に供給されることで、各誘導加熱手段のコイルからは高周波磁界が発生する。なお、駆動回路50の詳細構成については、後述する。
 
【0016】
  第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13は、例えば次のように構成されている。なお、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13は、同様の構成となっている。このため、代表して第1の誘導加熱手段11の構成を以下に説明する。
 
【0017】
  図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の第1の誘導加熱手段を示す平面図である。
  第1の誘導加熱手段11は、同心円状に径が異なる複数のリング状のコイルが配置されて構成されている。
図2では、第1の誘導加熱手段11が、3重のリング状のコイルのものを示している。第1の誘導加熱手段11は、第1の誘導加熱口1の中央に配置された内周コイル111と、内周コイル111の外周側に配置された中間コイル112と、中間コイル112の外周側に配置された外周コイル113とを有している。
 
【0018】
  内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113は、絶縁皮膜された金属からなる導線が巻き付けられることにより構成される。導線としては、例えば、銅又はアルミニウムなど任意の金属を用いることができる。また、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113は、それぞれ、導線が独立して巻かれている。
 
【0019】
  内周コイル111の平面視における面積は、中間コイル112の平面視における面積よりも小さい。また、中間コイル112の平面視における面積は、外周コイル113の平面視における面積よりも小さい。
 
【0020】
  なお、以下の説明において、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113を総称して、各コイルと称する場合がある。
 
【0021】
  図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示すブロック図である。
  
図3に示すように、第1の誘導加熱手段11は、駆動回路50a、駆動回路50b、及び駆動回路50cにより駆動制御される。即ち、内周コイル111は、駆動回路50aにより駆動制御される。また、中間コイル112は、駆動回路50bにより駆動制御される。また、外周コイル113は、駆動回路50cにより駆動制御される。
  駆動回路50aから内周コイル111に高周波電流が供給されることで、内周コイル111から高周波磁界が発生する。駆動回路50bから中間コイル112に高周波電流が供給されることで、中間コイル112から高周波磁界が発生する。駆動回路50cから外周コイル113に高周波電流が供給されることで、外周コイル113から高周波磁界が発生する。
 
【0022】
  制御部45は、専用のハードウェア、又はメモリ48に格納されるプログラムを実行するCPUで構成される。また、制御部45は、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113のそれぞれの上方に載置された被加熱物5の材質を判定する負荷判定部46を有している。
  なお、CPUは、Central  Processing  Unitの略称である。また、CPUは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、又はプロセッサともいう。
 
【0023】
  制御部45が専用のハードウェアである場合、制御部45は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。制御部45が実現する各機能部のそれぞれを、個別のハードウェアで実現しても良いし、各機能部を一つのハードウェアで実現しても良い。
  なお、ASICは、Application  Specific  Integrated  Circuitの略称である。また、FPGAは、Field−Programmable  Gate  Arrayの略称である。
 
【0024】
  制御部45がCPUの場合、制御部45が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ48に格納される。CPUは、メモリ48に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御部45の各機能を実現する。ここで、メモリ48は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。
  なお、制御部45の機能の一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしても良い。
  なお、RAMは、Random  Access  Memoryの略称である。また、ROMは、Read  Only  Memoryの略称である。また、EPROMは、Erasable  Programmable  Read  Only  Memoryの略称である。また、EEPROMは、Electrically  Erasable  Programmable  Read−Only  Memoryの略称である。
 
【0025】
  図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
  なお、駆動回路50は加熱手段毎に設けられているが、その回路構成は同一であっても良いし、加熱手段毎に変更しても良い。
図4では内周コイル111を駆動する駆動回路50aについて図示する。
 
【0026】
  図4に示すように、駆動回路50aは、直流電源回路22と、インバータ回路23と、共振コンデンサ24aとを備える。
  入力電流検出手段25aは、例えば電流センサで構成され、交流電源21から直流電源回路22へ入力される電流を検出し、入力電流値に相当する電圧信号を制御部45へ出力する。
 
【0027】
  直流電源回路22は、ダイオードブリッジ22a、リアクタ22b及び平滑コンデンサ22cを備え、交流電源21から入力される交流電圧を直流電圧に変換して、インバータ回路23へ出力する。
 
【0028】
  インバータ回路23は、スイッチング素子としてのIGBT23a及びIGBT23bが、直流電源回路22の出力に直列に接続されている。インバータ回路23は、フライホイールダイオードとしてダイオード23c及びダイオード23dが、それぞれIGBT23a及びIGBT23bと並列に接続されている。インバータ回路23は、いわゆるハーフブリッジ型のインバータである。
 
【0029】
  IGBT23aとIGBT23bは、制御部45から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。制御部45は、IGBT23aをオンさせている間はIGBT23bをオフ状態にし、IGBT23aをオフさせている間はIGBT23bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。これにより、インバータ回路23は、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜100kHz程度の高周波の交流電力に変換して、内周コイル111と共振コンデンサ24aからなる共振回路に電力を供給する。
 
【0030】
  共振コンデンサ24aは、内周コイル111に直列接続されており、この共振回路は内周コイル111のインダクタンス及び共振コンデンサ24aの容量に応じた共振周波数を有する。なお、内周コイル111のインダクタンスは、金属負荷である被加熱物5が磁気結合した際に金属負荷の特性に応じて変化し、このインダクタンスの変化に応じて共振回路の共振周波数が変化する。
 
【0031】
  このように構成することで、内周コイル111には数十A程度の高周波電流が流れる。内周コイル111に流れる高周波電流により発生する高周波磁束によって、内周コイル111の直上の天板4上に載置された被加熱物5を誘導加熱する。
 
【0032】
  なお、スイッチング素子であるIGBT23a及びIGBT23bは、例えばシリコン系からなる半導体で構成されているが、炭化珪素、あるいは窒化ガリウム系材料などのワイドバンドギャップ半導体を用いた構成でも良い。
 
【0033】
  スイッチング素子にワイドバンドギャップ半導体を用いることで、スイッチング素子の通電損失を減らすことができる。また、駆動周波数を高周波にしても、即ちスイッチングを高速にしても、駆動回路50aの放熱が良好であるため、駆動回路50の放熱フィンを小型にすることができ、駆動回路50aの小型化及び低コスト化を実現することができる。
 
【0034】
  コイル電流検出手段25bは、内周コイル111と共振コンデンサ24aとからなる共振回路に接続されている。コイル電流検出手段25bは、例えば、電流センサで構成され、内周コイル111に流れる電流を検出し、コイル電流値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
 
【0035】
  なお、
図4では内周コイル111を駆動する駆動回路50aについて説明したが、中間コイル112を駆動する駆動回路50b、及び外周コイル113を駆動する駆動回路50cについても同様の構成を適用することができる。
 
【0036】
  なお、内周コイル111は、本発明における「第1コイル」に相当する。
  また、中間コイル112は、本発明における「第2コイル」に相当する。
  また、外周コイル113は、本発明における「第3コイル」に相当する。
  また、駆動回路50aは、本発明における「第1インバータ回路」に相当する。
  また、駆動回路50bは、本発明における「第2インバータ回路」に相当する。
  また、駆動回路50cは、本発明における「第3インバータ回路」に相当する。
  また、駆動回路50aから内周コイル111へ供給される高周波電流は、本発明における「第1高周波電流」に相当する。
  また、駆動回路50bから中間コイル112へ供給される高周波電流は、本発明における「第2高周波電流」に相当する。
  また、駆動回路50cから外周コイル113へ供給される高周波電流は、本発明における「第3高周波電流」に相当する。
 
【0037】
(動作)
  次に、本実施の形態1における誘導加熱調理器の動作について説明する。
 
【0038】
  使用者により加熱口に被加熱物5が載置され、加熱開始(火力投入)の指示が操作表示部43に行われると、制御部45の負荷判定部46は負荷判定処理を行う。
 
【0039】
  図5は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器におけるコイル電流と入力電流の関係に基づく負荷判定特性図である。
  
図5に示すように、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113のそれぞれの上方に載置される負荷の材質によって、コイル電流と入力電流の関係が異なる。制御部45は、
図5に示すコイル電流と入力電流との関係をテーブル化した負荷判定テーブルを、予めメモリ48に記憶している。
 
【0040】
  負荷判定処理において、制御部45は、駆動回路50a〜50cのそれぞれについて、負荷判定用の特定の駆動信号でインバータ回路23を駆動し、入力電流検出手段25aの出力信号から入力電流を検出する。また同時に制御部45は、コイル電流検出手段25bの出力信号からコイル電流を検出する。制御部45の負荷判定部46は、検出したコイル電流及び入力電流と、
図5の関係を表した負荷判定テーブルから、コイルの上方に載置された負荷の材質を判定する。
 
【0041】
  ここで、負荷となる被加熱物5の材質は、鉄又はSUS430等の磁性体と、アルミニウム又は銅等の非磁性体とに大別される。さらに、被加熱物5の中には、非磁性体に磁性体を取り付けた複合体がある。
 
【0042】
  図6は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器が誘導加熱する複合体の被加熱物を示す図である。なお、
図6においては、被加熱物5を底面から見た図を示している。
  
図6に示すように、複合体の被加熱物5は、例えば、アルミニウムなどの非磁性体のフライパンの底の中央部に、ステンレスなどの磁性体6が取り付けられて形成されている。磁性体6の非磁性体への取り付けは、例えば、貼り付け、溶着、溶射、圧着、嵌め込み、かしめ、又は埋め込み等、任意の方法が用いられる。
 
【0043】
  一般に、複合体の被加熱物5は、非磁性体であるベースの、底面が平らとなる中央部分に磁性体6が取り付けられ、底面が湾曲する外周部には磁性体6が取り付けられていない。このような被加熱物5が加熱口に載置されると、コイルの上方に磁性体と非磁性体とが載置されることとなる。つまり、負荷判定において、磁性体と非磁性体とが上方に載置されたコイルの負荷特性は、
図5に示すように、磁性体の特性と非磁性体の特性との間の領域である「複合領域」の特性となる。
 
【0044】
  なお、負荷判定部46が判定する、コイルの上方に載置された負荷の材質は、コイルの直上の負荷の材質である。例えば
図6に示す複合体の被加熱物5においては、内周コイル111の直上に磁性体6が載置され、磁性体6のさらに上方に被加熱物5のベースとなる非磁性体が載置される。この場合、負荷判定部46は、内周コイル111の上方に載置された負荷の材質が磁性体であると判定する。
 
【0045】
  次に、制御部45は、負荷判定処理の結果に応じて駆動回路50a〜50cを制御して、誘導加熱させる火力に応じた高周波電力を供給する加熱動作を行う。
  以下、誘導加熱調理器100の加熱口に、複合体の被加熱物5が載置された場合の加熱動作と、磁性体のみで形成された被加熱物5が載置された場合の加熱動作とに分けて説明する。
 
【0046】
<複合体の被加熱物5>
  
図7は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと被加熱物を示す図である。なお、
図7においては、複合体の被加熱物5が加熱口に載置された状態の縦断面を模式的に示している。また、
図7においては、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の中心Cから右側のみを示し、天板4の図示は省略している。
 
【0047】
  図7に示すように、誘導加熱調理器100の加熱口に、複合体の被加熱物5が載置された場合、負荷判定部46は、内周コイル111の上方に磁性体6が載置された判定をする。また、負荷判定部46は、中間コイル112の上方には、一部に磁性体6が載置され、他の一部に非磁性体が載置されると判定する。つまり、負荷判定部46は、中間コイル112の上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体と非磁性体を含む複合体であると判定する。また、負荷判定部46は、外周コイル113の上方に非磁性体が載置された判定をする。
 
【0048】
  制御部45は、内周コイル111の上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体であり、中間コイル112の上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体と非磁性体とを含み、外周コイル113の上方に非磁性体が載置された場合、次の動作を行う。制御部45は、駆動回路50aの動作を停止させ、駆動回路50b及び50cを動作させる。すなわち、内周コイル111への高周波電流の供給を停止し、中間コイル112及び外周コイル113へ高周波電流を供給させる。
 
【0049】
  また、制御部45は、駆動回路50cから外周コイル113へ供給する高周波電流の周波数を、駆動回路50bから中間コイル112へ供給する高周波電流の周波数よりも高くする。例えば、制御部45は、駆動回路50cから外周コイル113へ供給する高周波電流の周波数を、非磁性体に対応する周波数、例えば90kHzに設定する。また、制御部45は、駆動回路50bから中間コイル112へ供給する高周波電流の周波数を、磁性体に対応して予め設定した周波数、例えば25kHzに設定する。
 
【0050】
  そして、制御部45は、インバータ回路23のスイッチング素子のオンデューティ(オンオフ比率)を変更することで火力(電力)を制御する。これにより、天板4上に配置された被加熱物5が誘導加熱される。
 
【0051】
  なお、駆動回路50cから外周コイル113へ供給する高周波電流の周波数を、中間コイル112へ供給する高周波電流の周波数よりも高くする理由は次の通りである。
  即ち、アルミニウムなどで構成された非磁性体を誘導加熱するには、被加熱物5に発生するうず電流の表皮深さを小さくし、浸透容積を小さくして電流のインピーダンスを大きくする必要がある。このため、非磁性体が上方に載置された外周コイル113には、高周波電流(例えば80kHz以上100kHz以下)を供給し、非磁性体に高周波のうず電流を発生させることにより、ジュール熱による被加熱物5の加熱が可能となる。
  一方、鉄などで構成された磁性体においては、うず電流に対するインピーダンスが大きい。このため、磁性体と非磁性体とを含む複合体が上方に載置された中間コイル112には、外周コイル113へ供給する高周波電流の周波数よりも低い周波数(例えば20kHz以上35kHz以下)を供給においても十分にうず電流による被加熱物5のジュール熱による加熱が可能である。
 
【0052】
  ここで、近接した複数のコイルを同時に駆動すると、お互いの駆動周波数の差分に相当する干渉音が発生する場合がある。このような干渉音を抑制するため、制御部45は、外周コイル113の駆動回路50cの駆動周波数を、中間コイル112の駆動回路50bの駆動周波数よりも可聴周波数以上(略20kHz以上)高くするようにしても良い。前述のオンデューティ可変制御の他に、例えば、外周コイル113の駆動回路50cの駆動周波数を予め設定した範囲内で可変する場合、外周コイル113の駆動回路50cの下限の駆動周波数が、中間コイル112の駆動回路50cの上限の駆動周波数よりも20kHz高く設定する。なお、外周コイル113の最高駆動周波数は例えば100kHzとする。
  これにより、近接する中間コイル112と外周コイル113を同時に駆動した場合に生じる干渉音の発生を抑制することができる。
 
【0053】
<磁性体の被加熱物5>
  
図8は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと被加熱物を示す図である。なお、
図8においては、磁性体のみで形成された被加熱物5が加熱口に載置された状態の縦断面を模式的に示している。また、
図8においては、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の中心Cから右側のみを示し、天板4の図示は省略している。
 
【0054】
  図8に示すように、誘導加熱調理器100の加熱口に、磁性体のみで形成された被加熱物5が載置された場合、負荷判定部46は、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の上方に磁性体が載置されたと判定する。
 
【0055】
  制御部45は、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体である場合、次の動作を行う。制御部45は、駆動回路50a及び50cを動作させ、駆動回路50bの動作を停止させる。すなわち、内周コイル111及び外周コイル113へ高周波電流を供給させ、中間コイル112への高周波電流の供給を停止する。
 
【0056】
  また、制御部45は、駆動回路50aから内周コイル111へ供給する高周波電流の周波数、及び駆動回路50cから外周コイル113へ供給する高周波電流の周波数を、磁性体に対応して予め設定した周波数、例えば25kHzに設定する。
 
【0057】
  そして、制御部45は、インバータ回路23のスイッチング素子のオンデューティ(オンオフ比率)を変更することで火力(電力)を制御する。これにより、天板4上に配置された被加熱物5が誘導加熱される。
 
【0058】
  なお、負荷判定部46の判定が無負荷である場合、制御部45は、無負荷であると判定された加熱コイルを駆動する駆動回路50の動作を停止させる。
 
【0059】
  ここで、被加熱物5の材質に応じて、上述したような駆動回路50の動作を行う理由について説明する。
 
【0060】
  被加熱物5が複数のコイルにより誘導加熱される場合、被加熱物5に発生する単位面積あたりの渦電流の大きさは、平面視におけるコイルの面積とコイルに流れるコイル電流とに依存する。
  例えば、内周コイル111と中間コイル112とに同じ高周波電流が供給される場合、内周コイル111の平面視における面積が、中間コイル112よりも小さいため、内周コイル111の直上の被加熱物5に発生する単位面積あたりの渦電流は、中間コイル112の直上の被加熱物5に発生する単位面積あたりの渦電流よりも大きくなる。
  即ち、内周コイル111と中間コイル112とに同じ高周波電流が供給される場合、内周コイル111の直上の被加熱物5に発生する電力密度が、中間コイル112の直上の被加熱物5に発生する電力密度よりも大きくなる、という物理事象となる。
  なお、電力密度とは、平面視におけるコイルの単位面積あたりの電力の割合をいう。
 
【0061】
  また、中間コイル112と外周コイル113とに同じ高周波電流が供給される場合、中間コイル112の平面視における面積が、外周コイル113よりも小さいため、中間コイル112の直上の被加熱物5に発生する単位面積あたりの渦電流は、外周コイル113の直上の被加熱物5に発生する単位面積あたりの渦電流よりも大きくなる。
  即ち、中間コイル112と外周コイル113とに同じ高周波電流が供給される場合、中間コイル112の直上の被加熱物5に発生する電力密度が、外周コイル113の直上の被加熱物5に発生する電力密度よりも大きくなる、という物理事象となる。
 
【0062】
  さらに、被加熱物5の熱容量は、その材質によって異なる。例えば、鉄又はSUS430等の磁性体の熱容量は、アルミニウム又は銅等の非磁性体の熱容量よりも大きい。
 
【0063】
  このため、被加熱物5を誘導加熱する際における加熱温度のムラを抑制するためには、各コイルから被加熱物5に投入される電力の電力密度と、被加熱物5の熱容量とに応じた加熱制御が必要となる。
 
【0064】
  被加熱物5が、熱容量が大きい磁性体のみで構成されている場合、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の全てを駆動させると、次のような事象が発生する。即ち、電力密度が大きい内周側の温度上昇量が、電力密度が小さい外周側と比較して大きくなる。また、熱容量が大きいため、被加熱物5の全体に熱が伝熱し難く、被加熱物5の外周側の温度が、内周側の温度に追従せず、内周側と外周側との加熱温度にムラが生じる。
 
【0065】
  このような、磁性体の被加熱物5の内周側と外周側との加熱温度のムラを抑制するために、被加熱物5の材質が磁性体のみで構成されている場合、中間コイル112の駆動を停止し、内周コイル111の駆動により発生する熱を中間コイル112の領域に熱伝達させる。即ち、内周コイル111及び外周コイル113の駆動により発生する熱を中間コイル112の領域に熱分散させる。
  これにより、磁性体の被加熱物5の内周側(中央部)と外周側との温度差を小さくすることを可能としている。つまり、内周コイル111と中間コイル112とを駆動することで磁性体の被加熱物5の中央部の温度が過昇してしまうのを回避するため、中間コイル112の駆動を停止することで、被加熱物5の加熱温度の均一化を図ることができる。
 
【0066】
  なお、内周コイル111は電力密度が大きいため、例えば、内周コイル111の駆動を停止し、中間コイル112を駆動させると、中央部の温度が上昇し難くなり、加熱温度のムラが生じることとなる。
 
【0067】
  一方、被加熱物5が、熱容量が小さい非磁性体に、磁性体を取り付けた複合体で構成されている場合、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の全てを駆動させると、次のような事象が発生する。即ち、電力密度が大きい内周側の温度上昇量が、電力密度が小さい外周側と比較して大きくなる。また、被加熱物5のベースとなる非磁性体の熱容量が小さいため、被加熱物5が局所的に発熱し易く、被加熱物5の内周側の温度が外周側と比較して上昇し、内周側と外周側との加熱温度にムラが生じる。
 
【0068】
  このような、複合体の被加熱物5の内周側と外周側との加熱温度のムラを抑制するために、被加熱物5の材質が複合体で構成されている場合、内周コイル111の駆動を停止し、中間コイル112の駆動により発生する熱を内周コイル111の領域に熱伝達させる。即ち、中間コイル112の駆動により発生する熱を内周コイル111の領域に熱分散させる。
  これにより、被加熱物5の内周側(中央部)と外周側との温度差を小さくすることを可能としている。つまり、内周コイル111と中間コイル112とを駆動することで複合体の被加熱物5の中央部の温度が過昇してしまうのを回避するため、内周コイル111の駆動を停止することで、被加熱物5の加熱温度の均一化を図ることができる。
 
【0069】
  なお、例えば、中間コイル112の駆動を停止し、内周コイル111を駆動させると、内周コイル111の電力密度が大きいため中央部の温度が上昇し易くなり、加熱温度のムラが生じることとなる。
 
【0070】
  以上のように本実施の形態1においては、内周コイル111の上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体であり、中間コイル112の上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体と非磁性体とを含む複合体であり、外周コイル113の上方に載置された被加熱物5の材質が非磁性体を含む場合、制御部45は、次の動作を行う。
  即ち、制御部45は、駆動回路50aの動作を停止させ、駆動回路50b及び駆動回路50cを動作させる。また、制御部45は、駆動回路50cから外周コイル113へ供給する高周波電流の周波数を、駆動回路50bから中間コイル112へ供給する高周波電流の周波数よりも高くする。
  このため、複合体の被加熱物5を誘導加熱する際、被加熱物5の材質に適した誘導加熱を行うことができ、加熱温度のムラを抑制することができる。
 
【0071】
  また、本実施の形態1においては、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体である場合、制御部45は、駆動回路50a及び駆動回路50cを動作させ、駆動回路50bの動作を停止させる。
  このため、磁性体の被加熱物5を誘導加熱する際、被加熱物5の材質に適した誘導加熱を行うことができ、加熱温度のムラを抑制することができる。
 
【0072】
(変形例)
  
図9は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと被加熱物の変形例を示す図である。なお、
図9においては、複合体の被加熱物5が加熱口に載置された状態の縦断面を模式的に示している。また、
図9においては、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の中心Cから右側のみを示し、天板4の図示は省略している。
 
【0073】
  図9に示すように、複合体の被加熱物5の磁性体6が、内周コイル111及び中間コイル112の上方の全てに載置された場合、即ち、磁性体6の端部が中間コイル112と外周コイル113との間に位置する場合、制御部45は以下の動作を行う。
  制御部45の負荷判定部46は、内周コイル111及び中間コイル112の上方に磁性体6が載置された判定をする。また、負荷判定部46は、外周コイル113の上方には、非磁性体が載置されると判定する。
 
【0074】
  制御部45は、内周コイル111の上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体であり、中間コイル112の上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体であり、外周コイル113の上方に非磁性体が載置された場合、次の動作を行う。制御部45は、駆動回路50aの動作を停止させ、駆動回路50b及び50cを動作させる。すなわち、内周コイル111への高周波電流の供給を停止し、中間コイル112及び外周コイル113へ高周波電流を供給させる。
 
【0075】
  また、制御部45は、駆動回路50cから外周コイル113へ供給する高周波電流の周波数を、駆動回路50bから中間コイル112へ供給する高周波電流の周波数よりも高くする。例えば、制御部45は、駆動回路50cから外周コイル113へ供給する高周波電流の周波数を、非磁性体に対応する周波数、例えば90kHzに設定する。また、制御部45は、駆動回路50bから中間コイル112へ供給する高周波電流の周波数を、磁性体に対応して予め設定した周波数、例えば25kHzに設定する。
 
【0076】
  そして、制御部45は、インバータ回路23のスイッチング素子のオンデューティ(オンオフ比率)を変更することで火力(電力)を制御する。これにより、天板4上に配置された被加熱物5が誘導加熱される。
 
【0077】
  このような動作においても、複合体の被加熱物5を誘導加熱する際、被加熱物5の材質に適した誘導加熱を行うことができ、加熱温度のムラを抑制することができる。
 
【0078】
実施の形態2.
  本実施の形態2では、被加熱物5に調理物等を投入していない状態で、被加熱物5の温度を予め設定した温度に上昇させる予熱モードについて説明する。なお、上記実施の形態1と同じ構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
 
【0079】
  図10は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の予熱モードの動作を示すフローチャートである。
  
図11は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の予熱モードにおける予熱動作を示すフローチャートである。
  以下、
図10及び
図11の各ステップに基づき、予熱モードの動作について説明する。
 
【0080】
  使用者により加熱口に被加熱物5が載置され、予熱モード開始の指示が操作表示部43に行われると、制御部45は、予熱モードの動作を開始する。制御部45の負荷判定部46は、各コイルの直上の負荷判定処理を行う(ステップS101)。負荷判定部46による負荷判定処理は、例えば、上記実施の形態1で説明した、コイル電流と入力電流の関係に基づき行う。
 
【0081】
  制御部45は、負荷判定部46の判定結果に基づき、加熱口に載置された被加熱物5の種類が、磁性体、複合体、及び非磁性体の何れであるかを判別する(ステップS102)。
  具体的には、負荷判定部46が、内周コイル111の上方に磁性体が載置され、中間コイル112の上方に磁性体と非磁性体とを含む複合体が載置され、外周コイル113の上方に非磁性体が載置されたと判定した場合、制御部45は、被加熱物5が複合体であると判別する。
  負荷判定部46が、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の上方に磁性体が載置されたと判定した場合、制御部45は、被加熱物5が磁性体であると判別する。
  負荷判定部46が、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の上方に非磁性体が載置されたと判定した場合、制御部45は、被加熱物5が非磁性体であると判別する。
 
【0082】
  次に、制御部45は、加熱口に載置された被加熱物5に調理物が投入されていない状態である空焼きであるか否かを判断する(ステップS103)。具体的には、制御部45は、図示しない温度センサによって被加熱物5の温度を検知し、予め設定した電力を所定時間投入した場合の温度上昇値によって、空焼きであるか否かを判断する。なお、空焼きであるか否かの判断の動作は、これに限定されない。
 
【0083】
  ステップS103において空焼きではないと判断した場合、制御部45は、予熱モードを終了する。即ち、被加熱物5に調理物等が投入されている状態である場合、制御部45は、予熱モードを終了させる。制御部45は、予熱モードを終了させたあと、通常の加熱モードに移行する。
 
【0084】
  一方、ステップS103において空焼きであると判断した場合、ステップS104へ進み予熱動作を行う。予熱動作の詳細を
図11に示す。
  なお、ステップS103の動作を省略し、操作表示部43からの操作に応じて予熱動作を開始しても良い。
 
【0085】
  制御部45は、ステップS102における被加熱物5の種類の判別結果に基づき、次の動作を行う。
 
【0086】
(磁性体)
  ステップS201において、被加熱物5の種類の判別結果が磁性体である場合、ステップS202に進む。
  ステップS202において、制御部45は、被加熱物5の径が閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、制御部45は、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113が無負荷でない場合、被加熱物5の径が閾値以上であると判定する。また、制御部45は、外周コイル113が無負荷であり、内周コイル111及び中間コイル112が無負荷でない場合、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定する。
 
【0087】
  ステップS202において、被加熱物5の径が閾値以上であると判定した場合、制御部45は、内周コイル111の駆動回路50a及び外周コイル113の駆動回路50cを、例えば20kHz以上35kHz以下の低周波にて駆動させる(ステップS203)。また、制御部45は、中間コイル112の駆動回路50bの動作を停止させる(ステップS204)。ステップS203及びステップS204の動作の詳細は、上記実施の形態1で説明した通りである。
 
【0088】
  ステップS202において、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定した場合、制御部45は、内周コイル111の駆動回路50a及び中間コイル112の駆動回路50bを、例えば20kHz以上35kHz以下の低周波にて駆動させる(ステップS205)。また、制御部45は、外周コイル113の駆動回路50cの動作を停止させる(ステップS206)。即ち、無負荷状態である外周コイル113の駆動を停止し、磁性体の負荷が載置されている内周コイル111と中間コイル112とによって、被加熱物5の誘導加熱を行う。
 
【0089】
(複合体)
  ステップS201において、被加熱物5の種類の判別結果が複合体である場合、ステップS207に進む。
  ステップS207において、制御部45は、被加熱物5の径が閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、制御部45は、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113が無負荷でない場合、被加熱物5の径が閾値以上であると判定する。また、制御部45は、外周コイル113が無負荷であり、内周コイル111及び中間コイル112が無負荷でない場合、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定する。
 
【0090】
  ステップS207において、被加熱物5の径が閾値以上であると判定した場合、制御部45は、中間コイル112の駆動回路50bを、例えば20kHz以上35kHz以下の低周波にて駆動させる。また、制御部45は、外周コイル113の駆動回路50cを、例えば80kHz以上100kHz以下の高周波にて駆動させる(ステップS208)。また、制御部45は、内周コイル111の駆動回路50aの動作を停止させる(ステップS209)。ステップS208及びステップS209の動作の詳細は、上記実施の形態1で説明した通りである。
 
【0091】
  ステップS207において、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定した場合、制御部45は、内周コイル111の駆動回路50aを、例えば20kHzから35kHzの低周波にて駆動させる。また、制御部45は、中間コイル112の駆動回路50bを、例えば80kHz以上100kHz以下の高周波にて駆動させる(ステップS210)。また、制御部45は、外周コイル113の駆動回路50cの動作を停止させる(ステップS211)。即ち、無負荷状態である外周コイル113の駆動を停止し、磁性体及び複合体の負荷が載置されている内周コイル111と中間コイル112とによって、被加熱物5の誘導加熱を行う。
 
【0092】
  なお、上記のように低周波の周波数範囲と高周波の周波数範囲を設定することにより、外周コイル113の駆動回路50cの下限の駆動周波数が、中間コイル112の駆動回路50cの上限の駆動周波数よりも可聴周波数以上(20kHz以上)高く設定することが可能となる。
  これにより、近接する中間コイル112と外周コイル113を同時に駆動した場合に生じる干渉音の発生を抑制することができる。
 
【0093】
(非磁性体)
  ステップS201において、被加熱物5の種類の判別結果が非磁性体である場合、ステップS212に進む。
  ステップS212において、制御部45は、被加熱物5の径が閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、制御部45は、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113が無負荷でない場合、被加熱物5の径が閾値以上であると判定する。また、制御部45は、外周コイル113が無負荷であり、内周コイル111及び中間コイル112が無負荷でない場合、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定する。
 
【0094】
  ステップS212において、被加熱物5の径が閾値以上であると判定した場合、制御部45は、中間コイル112の駆動回路50b及び外周コイル113の駆動回路50cを、非磁性体に適した高周波にて駆動させる(ステップS213)。非磁性体に適した高周波とは、例えば80kHz以上100kHz以下の周波数である。また、制御部45は、内周コイル111の駆動回路50aの動作を停止させる(ステップS214)。
 
【0095】
  ここで、被加熱物5が、熱容量が小さい非磁性体のみで構成されている場合、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113の全てを駆動させると、次のような事象が発生する。即ち、電力密度が大きい内周側の温度上昇量が、電力密度が小さい外周側と比較して大きくなる。また、非磁性体の熱容量が小さいため、被加熱物5が局所的に発熱し易く、被加熱物5の内周側の温度が外周側と比較して上昇し、内周側と外周側との加熱温度にムラが生じる。
 
【0096】
  このような、非磁性体の被加熱物5の内周側と外周側との加熱温度のムラを抑制するために、被加熱物5が非磁性のみで構成されている場合、内周コイル111の駆動を停止し、中間コイル112の駆動により発生する熱を内周コイル111の領域に熱伝達させる。即ち、中間コイル112の駆動により発生する熱を内周コイル111の領域に熱分散させる。
 
【0097】
  ステップS212において、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定した場合、制御部45は、内周コイル111の駆動回路50a及び中間コイル112の駆動回路50bを、非磁性体に適した高周波にて駆動させる(ステップS215)。非磁性体に適した高周波とは、例えば80kHz以上100kHz以下の周波数である。また、制御部45は、外周コイル113の駆動回路50cの動作を停止させる(ステップS216)。即ち、無負荷状態である外周コイル113の駆動を停止し、非磁性体の負荷が載置されている内周コイル111と中間コイル112とによって、被加熱物5の誘導加熱を行う。
 
【0098】
  次に、制御部45は、予熱動作開始からの経過時間が、設定時間を経過したか否かを判断する(ステップS217)。ここで、設定時間は、予め設定された値でも良いし、使用者が操作表示部43から入力した値に設定しても良い。
 
【0099】
  ステップS217において、予熱動作開始からの経過時間が設定時間を経過した場合、予熱動作を終了し、予熱モードから通常の加熱モードに移行する。
 
【0100】
  通常の加熱モードにおいては、制御部45は、各コイルのうち、負荷が載置されているコイルを駆動させ、操作表示部43から入力された設定火力などに応じた加熱動作を行う。
 
【0101】
  以上のように本実施の形態2においては、予熱モードにおいて、被加熱物5の種類に応じて各コイルの駆動状態とすることで、被加熱物5の種類に関わらず、加熱温度のムラを抑制することができる。即ち、熱容量の大きな磁性体の被加熱物5、及び熱容量の小さな複合体又は非磁性体の被加熱物5のいずれにおいても、予熱動作における被加熱物5の加熱温度のムラを抑制することができる。
 
【0102】
実施の形態3.
  本実施の形態3では、
図7に示した複合体の被加熱物5、及び
図8に示した磁性体の被加熱物5を加熱する際に、各コイルに供給する電力について説明する。なお、上記実施の形態1又は2と同じ構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
 
【0103】
<複合体の被加熱物5>
  
図7に示したように、誘導加熱調理器100の加熱口に、複合体の被加熱物5が載置された場合、上記実施の形態1と同様に、制御部45は、駆動回路50aの動作を停止させ、駆動回路50b及び50cを動作させる。
  また、制御部45は、駆動回路50bから中間コイル112に供給される電力と、駆動回路50cから外周コイル113に供給される電力とを同じにする。
 
【0104】
  ここで、本発明において、電力が同じとは、厳密に同一である場合に限らず、制御誤差又は部品の動作特性誤差などにより生じた誤差を含むものである。また、本発明において、電力が同じとは、略同じである場合も許容される。
 
【0105】
  このように、複合体の被加熱物5を加熱する場合においては、駆動回路50b及び駆動回路50cを駆動し、中間コイル112に供給される電力と外周コイル113に供給される電力とを同じにすることで、駆動回路50a〜50cの3つを駆動する場合と比較して、複合体の被加熱物5の温度を、より速く加熱することができ、且つ加熱温度ムラを抑制することができる。
 
【0106】
  例えば、各コイルへ合計1500Wの電力を供給する場合、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113のそれぞれに、500Wの電力を供給する場合と比較して、内周コイル111の駆動を停止し、中間コイル112及び外周コイル113にそれぞれ750Wの電力を供給する方が、より速い均一加熱が実現できる。
 
【0107】
  この理由は、次の通りである。即ち、外周コイル113と比較して周波数が低い中間コイル112の上方の磁性体(複合体)の温度上昇は、外周コイル113の上方の非磁性体の温度上昇よりも大きくなる。また、上述したように、中間コイル112の上方の磁性体は被加熱物5のベースとなる非磁性体に取り付けられている。被加熱物5のベースとなる非磁性体の熱容量が小さいため、中間コイル112の駆動により発生する熱を内周コイル111の領域に、速やかに熱伝達させることが可能となる。
  このため、複合体の被加熱物5の温度を、より速く加熱することができ、且つ加熱温度ムラを抑制することができる。
 
【0108】
<磁性体の被加熱物5>
  
図8に示したように、誘導加熱調理器100の加熱口に、磁性体のみで形成された被加熱物5が載置された場合、上記実施の形態1と同様に、制御部45は、駆動回路50a及び50cを動作させ、駆動回路50bの動作を停止させる。
  また、制御部45は、駆動回路50cから外周コイル113に供給される電力を、駆動回路50aから内周コイル111に供給される電力よりも大きくする。
 
【0109】
  このように、磁性体の被加熱物5を加熱する場合においては、駆動回路50a及び駆動回路50cを駆動し、外周コイル113に供給される電力を内周コイル111に供給される電力よりも大きくすることで、駆動回路50a〜50cの3つを駆動する場合と比較して、磁性体の被加熱物5の温度を、より速く加熱することができ、且つ加熱温度ムラを抑制することができる。
 
【0110】
  例えば、各コイルへ合計1500Wの電力を供給する場合、内周コイル111に300W、中間コイル112に300W、及び外周コイル113に900Wの電力を供給する場合と比較して、中間コイル112の駆動を停止し、内周コイル111に500W、及び外周コイル113に1000Wの電力を供給する方が、より速い均一加熱が実現できる。
 
【0111】
  この理由は、次の通りである。即ち、内周コイル111の平面視における面積は、外周コイル113の平面視における面積よりも小さい。このため、内周コイル111及び外周コイル113に同じ電力が供給された場合、内周コイル111の電力密度は外周コイル113の電力密度よりも大きくなる。
  このため、外周コイル113に供給される電力を内周コイル111に供給される電力よりも大きくすることで、外周コイル113の電力密度と内周コイル111の電力密度との差を軽減することができる。また、中間コイル112の駆動を停止し、内周コイル111及び外周コイル113の駆動により発生する熱を中間コイル112の領域に熱分散させることで、加熱温度のムラを抑制できる。
  したがって、磁性体の被加熱物5の温度を、より速く加熱することができ、且つ加熱温度ムラを抑制することができる。
 
【0112】
(変形例)
  誘導加熱調理器100の加熱口に、磁性体のみで形成された被加熱物5が載置された場合、制御部45は、内周コイル111の電力密度と外周コイル113の電力密度とが同じとなるように、駆動回路50a及び50cの駆動を制御しても良い。
  具体的には、制御部45は、内周コイル111の平面視における面積を予め記憶し、内周コイル111に供給する電力を除算することで、内周コイル111の電力密度を求める。また、制御部45は、外周コイル113の平面視における面積を予め記憶し、外周コイル113に供給する電力を除算することで、外周コイル113の電力密度を求める。そして、制御部45は、内周コイル111の電力密度と外周コイル113の電力密度とが同じとなるように、内周コイル111及び外周コイル113に供給する電力をそれぞれ制御する。
  このような動作においても、外周コイル113の電力密度と内周コイル111の電力密度との差を軽減することができ、加熱温度のムラを抑制できる。
 
【0113】
  なお、各コイルに供給する電力の値に代えて、電圧値が略一定であると想定してコイル電流値を用いて制御を行ってもよい。また例えば、予め、内周コイル111と外周コイル113との面積比率に応じて、電力密度が同じとなる電力の分配割合をテーブルとして記憶し、制御部45はこのテーブルを参照することで、各コイルに供給する電力を設定しても良い。
 
【0114】
実施の形態4.
  本実施の形態4では、中間コイル112に供給する高周波電流の周波数について説明する。なお、上記実施の形態1〜3と同じ構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
 
【0115】
  本実施の形態4における制御部45は、駆動回路50bから中間コイル112に供給される高周波電流の周波数を、駆動回路50aから内周コイル111に供給される高周波電流よりも高く、且つ、駆動回路50cから外周コイル113に供給される高周波電流よりも低くする。
 
【0116】
  具体的には、制御部45は、駆動回路50aから内周コイル111に供給される高周波電流の周波数を、例えば20kHz以上35kHz以下の低周波に設定する。また、制御部45は、駆動回路50bから中間コイル112に供給される高周波電流の周波数を、例えば55kHz以上60kHz以下の中間周波に設定する。また、制御部45は、駆動回路50cから外周コイル113に供給される高周波電流の周波数を、例えば80kHz以上100kHz以下の高周波に設定する。
 
【0117】
  ここで、中間周波を適用する理由について説明する。中間周波は、複合体の被加熱物5における磁性体と非磁性体との複合体の領域の誘導加熱に適用される。即ち、複合体の被加熱物5において、鉄などの磁性体とアルミニウムなどの非磁性体との境界領域の誘導加熱に適用される。
 
【0118】
  アルミニウムなどの非磁性体を誘導加熱するには、非磁性体に発生するうず電流の表皮深さを小さくし、浸透容積を小さくして電流のインピーダンスを大きくするために高周波電流(80kHz以上100kHz以下)を発生させる必要がある。このような高周波のうず電流発生により、ジュール熱による鍋底の加熱が可能となる。
 
【0119】
  一方、磁性体においては、うず電流に対するインピーダンスが大きく、低周波駆動(20kHz以上35kHz以下)においても十分に、低周波のうず電流により、ジュール熱による加熱が可能である。
 
【0120】
  図5に示した通り、複合体の被加熱物5における磁性体と非磁性体との複合体の領域(複合領域)は、磁性体と非磁性体との中間的な電気特性を示し、通電周波数に対するうず電流の表皮深さも、磁性体と非磁性体の中間値を得ることになる。したがって、うず電流に対する被加熱物5底面のインピーダンスを、磁性体又は非磁性体と同等程度に得るには、低周波と高周波の中間となる周波数による通電が最適である。
 
【0121】
  複合体に対して、高周波駆動を適用しても複合体の被加熱物5の誘導加熱は可能であるが、駆動回路50のインバータ回路23、及び各コイルの導線の損失が増大することから、極力、低い周波数で誘導加熱を行うことが望ましい。
  さらに、高周波化によりコイルから発生する磁束の集中が促され、より直上の被加熱物5底面にうず電流が集中する物理現象が生じる。このため、より低い周波数の方が均一加熱を促進することが可能となるため、極力、低い周波数で誘導加熱を行うことが望ましい。したがって、複合体に対しては中間周波を適用する。
 
【0122】
(動作)
  次に、本実施の形態4における誘導加熱調理器の動作について説明する。
 
【0123】
<複合体の被加熱物5>
  
図7に示したように、誘導加熱調理器100の加熱口に、複合体の被加熱物5が載置された場合、上記実施の形態1と同様に、制御部45は、駆動回路50aの動作を停止させ、駆動回路50b及び50cを動作させる。
  また、制御部45は、駆動回路50bから中間コイル112に供給される高周波電流の周波数を、例えば55kHz以上60kHz以下の中間周波に設定する。また、制御部45は、駆動回路50cから外周コイル113に供給される高周波電流を、例えば80kHz以上100kHz以下の高周波に設定する。
 
【0124】
  このような動作により、複合体の被加熱物5の加熱温度のムラを抑制することができる。また、被加熱物5の材質に適した誘導加熱を行うことができ、加熱効率の低下を抑制することができる。
 
【0125】
<磁性体の被加熱物5>
  
図8に示したように、誘導加熱調理器100の加熱口に、磁性体のみで形成された被加熱物5が載置された場合、上記実施の形態1と同様に、制御部45は、駆動回路50a及び50cを動作させ、駆動回路50bの動作を停止させる。
  また、制御部45は、駆動回路50aから内周コイル111に供給される高周波電流の周波数及び駆動回路50cから外周コイル113に供給される高周波電流の周波数を、例えば20kHz以上35kHz以下の低周波に設定する。
 
【0126】
  このような動作により、磁性体の被加熱物5の加熱温度のムラを抑制することができる。また、被加熱物5の材質に適した誘導加熱を行うことができ、加熱効率の低下を抑制することができる。
 
【0127】
(変形例)
  制御部45は、駆動回路50bから中間コイル112に供給される高周波電流の周波数を、駆動回路50aから内周コイル111に供給される高周波電流よりも可聴周波数以上高く、且つ、駆動回路50cから外周コイル113に供給される高周波電流よりも可聴周波数以上低くしても良い。
  例えば、上述した具体例のように、制御部45は、内周コイル111に供給される高周波電流の周波数を20kHz以上35kHz以下の低周波に設定する。また、制御部45は、中間コイル112に供給される高周波電流の周波数を55kHz以上60kHz以下の中間周波に設定する。また、制御部45は、外周コイル113に供給される高周波電流の周波数を80kHz以上100kHz以下の高周波に設定する。
  これにより、内周コイル111、中間コイル112、及び外周コイル113のそれぞれの高周波電流の周波数差を可聴周波数(20kHz)以上とすることができ、干渉音の発生を抑制することができる。
 
【0128】
実施の形態5.
  本実施の形態5においては、4つの加熱コイルを備えた構成について説明を行う。なお、以下の説明では、上記実施の形態1〜4と同一部分には同一の符号を付し、実施の形態1〜4との相違点を中心に説明する。
  なお、以下の説明では、第1の誘導加熱手段11が4つの加熱コイルを備えた構成について説明を行うが、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13についても、同様の構成としても良いし、上記実施の形態1〜4の何れかと同じ構成でも良い。
 
【0129】
(構成)
  
図12は、実施の形態5に係る誘導加熱調理器の構成を示すブロック図である。
  
図12に示すように、第1の誘導加熱手段11は、同心円状に径が異なる複数のリング状のコイルが配置されて構成されている。第1の誘導加熱手段11は、第1の誘導加熱口1の中央に配置された第1コイル121と、第1コイル121の外周側に配置された第2コイル122と、第2コイル122の外周側に配置された第3コイル123と、第3コイル123の外周側に配置された第4コイル124とを有している。
 
【0130】
  第1コイル121、第2コイル122、第3コイル123及び第4コイル124は、絶縁皮膜された金属からなる導線が巻き付けられることにより構成される。導線としては、例えば、銅又はアルミニウムなど任意の金属を用いることができる。また、第1コイル121、第2コイル122、第3コイル123及び第4コイル124は、それぞれ、導線が独立して巻かれている。
 
【0131】
  第1コイル121は、駆動回路50aにより駆動制御される。第2コイル122は、駆動回路50bにより駆動制御される。第3コイル123は、駆動回路50cにより駆動制御される。第4コイル124は、駆動回路50dにより駆動制御される。なお、駆動回路50a〜50dの構成は、上記実施の形態1で説明した駆動回路50aと同様である。
 
【0132】
  なお、以下の説明において、第1コイル121、第2コイル122、第3コイル123及び第4コイル124を総称して、各コイルと称する場合がある。
 
【0133】
  なお、駆動回路50dは、本発明における「第4インバータ回路」に相当する。
  また、駆動回路50dから第4コイル124へ供給される高周波電流は、本発明における「第4高周波電流」に相当する。
 
【0134】
  次に、被加熱物5の外径及び各コイルの外径の例について説明する。
  鍋又はフライパンなどの被加熱物5は、上面側の開口の径が約27cm、天板4の接触面となる底面の径が約24cmのものが、最大級のサイズとして市場に流通している。したがって、市場に流通する最大級のサイズの被加熱物5を、均一に誘導加熱するためには、約24cmの径の加熱コイルが必要となる。
 
【0135】
  複数の加熱コイルを分割して配置する場合、コイル間には磁束干渉を低減するためのフェライトコア、及びフェライトコアを配置するための空隙が必要となる。さらに、加熱口の中央部に配置されたコイル付近には、天板4の温度または被加熱物5の温度を検出する温度センサを配置するための空隙も必要となる。
 
【0136】
  一方、各コイルの各々により直上の被加熱物5の材質判別を行うにあたり、使用者が不慮に被加熱物5を移動すると、その度に材質判別結果が変化してしまう。このような、材質判別結果の変化が生じると、制御部45は、その都度、駆動周波数を切替える必要が生じる。このような駆動周波数の切り替えには、共振コンデンサの切り替え動作が伴うため、駆動回路50の一時停止が必要となる。これは加熱動作が一時停止することを意味しており、使い勝手の悪化につながる。誘導加熱調理器100での調理において、被加熱物5の振動等により、載置位置にずれが起きた際も、加熱動作の一時停止を回避することが望ましい。
 
【0137】
  このようなことから、各コイルの巻き幅は、2cm程度であることが望ましい。ここで、コイルの巻き幅とは、(コイルの外径−コイルの内径)÷2と定義する。即ち、4重コイルの各巻き幅2cm、コイル間の空隙0.5cm、温度センサ配置の空隙2cm、及び最内周の空隙径2cmとすると、コイルの最外径は24cm必要となる。即ち、巻き幅2cm確保するには4重構造が最適となる。
 
【0138】
  本実施の形態5においては、第1コイル121、第2コイル122、第3コイル123及び第4コイル124の巻き幅をそれぞれ2cmとし、第4コイル124の外径を24cmに構成されている。
  このような構成により、市場に流通している最大級のサイズの被加熱物5に対し、加熱温度のムラを抑制した誘導加熱を行うことができる。
 
【0139】
(動作)
  
図13は、実施の形態5に係る誘導加熱調理器の予熱モードにおける予熱動作を示すフローチャートである。
  以下、
図13の各ステップに基づき、本実施の形態5における予熱モードの動作について説明する。なお、予熱モードにおいて加熱動作を開始するまでの動作は、上記実施の形態2のステップS101〜S103(
図10)と同様であり、説明を省略する。
 
【0140】
  制御部45は、負荷判定部46の判定結果に基づき、加熱口に載置された被加熱物5の種類が、磁性体、複合体、及び非磁性体の何れであるかを判別する(ステップS301)。
  具体的には、負荷判定部46が、第1コイル121の上方に磁性体が載置され、第2コイル122及び第3コイル123の上方に磁性体又は複合体が載置され、第4コイル124の上方に非磁性体が載置されたと判定した場合、制御部45は、被加熱物5が複合体であると判別する。
  負荷判定部46が、第1コイル121、第2コイル122、第3コイル123、及び第4コイル124の上方に磁性体が載置されたと判定した場合、制御部45は、被加熱物5が磁性体であると判別する。
  負荷判定部46が、第1コイル121、第2コイル122、第3コイル123、及び第4コイル124の上方に非磁性体が載置されたと判定した場合、制御部45は、被加熱物5が非磁性体であると判別する。
 
【0141】
  制御部45は、ステップS301における被加熱物5の種類の判別結果に基づき、次の動作を行う。
 
【0142】
(磁性体)
  ステップS301において、被加熱物5の種類の判別結果が磁性体である場合、ステップS302に進む。
  ステップS302において、制御部45は、被加熱物5の径が閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、制御部45は、第1コイル121、第2コイル122、第3コイル123、及び第4コイル124が無負荷でない場合、被加熱物5の径が閾値以上であると判定する。また、制御部45は、第4コイル124が無負荷であり、第1コイル121、第2コイル122、及び第3コイル123が無負荷でない場合、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定する。
 
【0143】
  ステップS302において、被加熱物5の径が閾値以上であると判定した場合、制御部45は、第1コイル121の駆動回路50a及び第4コイル124の駆動回路50dを、例えば20kHz以上35kHz以下の低周波にて駆動させる(ステップS303)。また、制御部45は、第2コイル122の駆動回路50b及び第3コイル123の駆動回路50cの動作を停止させる(ステップS304)。
  なお、ステップS304において、第2コイル122の駆動回路50b及び第3コイル123の駆動回路50cの一方のみを停止させ、他方を低周波にて駆動させても良い。
 
【0144】
  ステップS302において、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定した場合、制御部45は、第1コイル121の駆動回路50a及び第3コイル123の駆動回路50cを、例えば20kHz以上35kHz以下の低周波にて駆動させる(ステップS305)。また、制御部45は、第2コイル122の駆動回路50b及び第4コイル124の駆動回路50dの動作を停止させる(ステップS306)。即ち、上記実施の形態1における3重コイルの構成と同様の動作となる。
 
【0145】
(複合体)
  ステップS301において、被加熱物5の種類の判別結果が複合体である場合、ステップS307に進む。
  ステップS307において、制御部45は、被加熱物5の径が閾値以上であるか否かを判定する。具体的な動作はステップS302と同様である。
 
【0146】
  ステップS307において、被加熱物5の径が閾値以上であると判定した場合、制御部45は、第2コイル122の駆動回路50b及び第3コイル123の駆動回路50cを、例えば20kHz以上35kHz以下の低周波にて駆動させる。また、制御部45は、第4コイル124の駆動回路50dを、例えば80kHz以上100kHz以下の高周波にて駆動させる(ステップS308)。また、制御部45は、第1コイル121の駆動回路50aの動作を停止させる(ステップS309)。
 
【0147】
  ステップS307において、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定した場合、制御部45は、第2コイル122の駆動回路50bを、例えば20kHzから35kHzの低周波にて駆動させる。また、制御部45は、第3コイル123の駆動回路50cを、例えば80kHz以上100kHz以下の高周波にて駆動させる(ステップS310)。また、制御部45は、第1コイル121の駆動回路50a及び第4コイル124の駆動回路50dの動作を停止させる(ステップS311)。即ち、上記実施の形態1における3重コイルの構成と同様の動作となる。
 
【0148】
  なお、上記実施の形態2と同様に、低周波の周波数範囲と高周波の周波数範囲を設定しても良い。例えば、ステップS308において、第4コイル124の駆動回路50dの下限の駆動周波数を、第2コイル122の駆動回路50b及び第3コイル123の駆動回路50cの上限の駆動周波数よりも可聴周波数以上(20kHz以上)高く設定する。また例えば、ステップS310において、第3コイル123の駆動回路50cの下限の駆動周波数を、第2コイル122の駆動回路50bの上限の駆動周波数よりも可聴周波数以上(20kHz以上)高く設定する。
  これにより、近接する第2コイル122と第3コイル123と第4コイル124とを同時に駆動した場合、又は第2コイル122と第3コイル123とを同時に駆動した場合に生じる干渉音の発生を抑制することができる。
 
【0149】
(非磁性体)
  ステップS301において、被加熱物5の種類の判別結果が非磁性体である場合、ステップS312に進む。
  ステップS312において、制御部45は、被加熱物5の径が閾値以上であるか否かを判定する。具体的な動作はステップS302と同様である。
 
【0150】
  ステップS312において、被加熱物5の径が閾値以上であると判定した場合、制御部45は、第2コイル122の駆動回路50b、第3コイル123の駆動回路50c、及び第4コイル124の駆動回路50dを、非磁性体に適した高周波にて駆動させる(ステップS313)。非磁性体に適した高周波とは、例えば80kHz以上100kHz以下の周波数である。また、制御部45は、第1コイル121の駆動回路50aの動作を停止させる(ステップS314)。
 
【0151】
  ステップS312において、被加熱物5の径が閾値以上でないと判定した場合、制御部45は、第2コイル122の駆動回路50b及び第3コイル123の駆動回路50cを、非磁性体に適した高周波にて駆動させる(ステップS315)。非磁性体に適した高周波とは、例えば80kHz以上100kHz以下の周波数である。また、制御部45は、第1コイル121の駆動回路50a、及び第4コイル124の駆動回路50dの動作を停止させる(ステップS316)。即ち、上記実施の形態1における3重コイルの構成と同様の動作となる。
 
【0152】
  次に、制御部45は、予熱動作開始からの経過時間が、設定時間を経過したか否かを判断する(ステップS317)。ここで、設定時間は、予め設定された値でも良いし、使用者が操作表示部43から入力した値に設定しても良い。
 
【0153】
  ステップS317において、予熱動作開始からの経過時間が設定時間を経過した場合、予熱動作を終了し、予熱モードから通常の加熱モードに移行する。
 
【0154】
  通常の加熱モードにおいては、制御部45は、各コイルのうち、負荷が載置されているコイルを駆動させ、操作表示部43から入力された設定火力などに応じた加熱動作を行う。
 
【0155】
  以上のように本実施の形態5においては、4重構造の各コイルにより被加熱物5の種類と径を検出し、被加熱物5の種類及び径に応じて、駆動コイルの選択と駆動周波数の切替えを行うことで、被加熱物5の種類によらず、加熱温度のムラを抑制することが可能となる。また、被加熱物5の径が閾値以上で無い場合には、第4コイル124の駆動を停止させることで無駄な通電を低減し、エネルギー消費量を削減することができる。
 
【0156】
  なお、本実施の形態5においても、上記実施の形態4と同様に、複合体を誘導加熱する駆動周波数に中間周波を適用しても良い。均一加熱のさらなる改善と、インバータ回路23とコイルの導線の損失低減を図ることができる。
 
【0157】
  なお、本実施の形態5では、加熱コイルが4つの場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、3つ以上の任意の加熱コイルに適用することができる。
 
【0158】
  複数の加熱コイルの上方に載置された被加熱物5の材質が、加熱口の内周側から外周側に向かって、磁性体、磁性体または磁性体と非磁性体とを含む複合体、及び非磁性体の順である場合、制御部45は、被加熱物5の種類が複合体であると判別する。
  制御部45は、最も内周側に配置された加熱コイルの駆動回路50の動作を停止させ、上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体または磁性体と非磁性体とを含む複合体である加熱コイルの駆動回路50の少なくとも1つを動作させ、上方に載置された被加熱物5の材質が非磁性体である加熱コイルの駆動回路50を動作させる。
  そして、制御部45は、上方に載置された被加熱物5の材質が非磁性体である加熱コイルの駆動回路50の高周波電流の周波数を、上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体または磁性体と非磁性体とを含む複合体である加熱コイルの駆動回路50の高周波電流の周波数よりも高くする。
 
【0159】
  また、隣り合う3つ以上のコイルの上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体である場合、制御部45は、被加熱物5の種類が磁性体であると判別する。
  制御部45は、上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体の加熱コイルのうち、最も内周側に配置された加熱コイルの駆動回路50、及び最も外周側に配置された加熱コイルの駆動回路50を動作させる。
  そして、制御部45は、上方に載置された被加熱物5の材質が磁性体の加熱コイルのうち、最も内周側に配置された加熱コイルと最も外周側に配置された加熱コイルとの間に配置された加熱コイルの駆動回路50の少なくとも1つの動作を停止させる。
 
【0160】
  このような構成においても、上記実施の形態1〜5と同様の効果を得ることができる。また、市場に流通する多様な種類の被加熱物5に適した誘導加熱を行うことができる。
 
【0161】
  なお、上記実施の形態1〜5では、複数の加熱コイルが同心円状に配置された構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、外周コイル113を、4つに分割し、それぞれ略1/4円弧状(バナナ状または胡瓜状)の平面形状を形成し、中間コイル112の外周にほぼ沿うようにして、中間コイル112の外側に配置しても良い。