特許第6843297号(P6843297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843297
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】超音波画像処理
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-514719(P2020-514719)
(86)(22)【出願日】2018年9月10日
(65)【公表番号】特表2020-534891(P2020-534891A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(86)【国際出願番号】EP2018074352
(87)【国際公開番号】WO2019052968
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2020年11月12日
(31)【優先権主張番号】17191027.6
(32)【優先日】2017年9月14日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コレン アレクサンダー フランシスカス
(72)【発明者】
【氏名】ベルト ハルム ヤン ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ハルクス ゴットフリート アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】ハイスベルス ゲラルドゥス ヘンリクス マリア
(72)【発明者】
【氏名】リウ ホン
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−503906(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2064991(EP,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/005679(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/167801(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像プロセッサ装置を含む超音波画像処理装置であって、
前記画像プロセッサ装置は、超音波画像内に侵襲的医療機器がない状態で、第1の完全な心周期中の関心の解剖学的特徴を撮像する超音波画像の第1のシーケンスを受信し、各超音波画像は、前記第1の完全な心周期の異なる位相に対応し、
前記画像プロセッサ装置は、超音波画像内に前記侵襲的医療機器がある状態で、更なる完全な心周期中に前記関心の解剖学的特徴を撮像する超音波画像の更なるシーケンスを受信し、各超音波画像は、前記更なる完全な心周期の異なる位相に対応し、前記侵襲的医療機器は、前記関心の解剖学的特徴を少なくとも部分的に見えにくくし、
前記画像プロセッサ装置は、前記更なるシーケンスの各超音波画像について、
当該超音波画像内の前記侵襲的医療機器の位置を追跡し、
当該超音波画像から前記侵襲的医療機器を分離し、
心周期の対応する位相にある前記第1のシーケンスの超音波画像内に、追跡された前記位置で、分離された前記侵襲的医療機器を挿入し、
挿入された前記侵襲的医療機器を含む超音波画像の前記第1のシーケンスを表示するように表示デバイスを制御する、超音波画像処理装置。
【請求項2】
前記心周期の特定の点を示す外部刺激に応えて、少なくとも超音波画像の前記更なるシーケンスの捕捉をトリガする、請求項1に記載の超音波画像処理装置。
【請求項3】
超音波画像の前記第1のシーケンス及び前記更なるシーケンスのそれぞれが、シネループを規定する、請求項1又は2に記載の超音波画像処理装置。
【請求項4】
前記画像プロセッサ装置は、物体認識アルゴリズムを使用して、前記更なるシーケンスの超音波画像内の前記侵襲的医療機器の前記位置を決定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波画像処理装置。
【請求項5】
前記物体認識アルゴリズムは、光学形状検知アルゴリズムである、請求項4に記載の超音波画像処理装置。
【請求項6】
前記侵襲的医療機器は、前記侵襲的医療機器に沿って所定の配置にある複数の電磁送信器を含み、
前記画像プロセッサ装置は、前記複数の電磁送信器から受信した電磁送信に基づいて、前記更なるシーケンスの超音波画像内の前記侵襲的医療機器の前記位置を決定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波画像処理装置。
【請求項7】
前記電磁送信器は、超音波送信器である、請求項6に記載の超音波画像処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波画像処理装置と、
前記超音波画像処理装置と通信可能に結合可能であり、前記超音波画像処理装置に少なくとも超音波画像の前記更なるシーケンスを提供する超音波プローブと、
を含む、超音波撮像システム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波画像処理装置の画像プロセッサ装置上で実行されると、前記画像プロセッサ装置に、
超音波画像内に侵襲的医療機器がない状態で、第1の完全な心周期中の関心の解剖学的特徴を撮像する超音波画像の第1のシーケンスを受信させ、各超音波画像は、前記第1の完全な心周期の異なる位相に対応し、
超音波画像内に前記侵襲的医療機器がある状態で、更なる完全な心周期中に前記関心の解剖学的特徴を撮像する超音波画像の更なるシーケンスを受信させ、各超音波画像は、前記更なる完全な心周期の異なる位相に対応し、前記侵襲的医療機器は、前記関心の解剖学的特徴を少なくとも部分的に見えにくくし、
前記更なるシーケンスの各超音波画像について、
当該超音波画像内の前記侵襲的医療機器の位置を追跡させ、
当該超音波画像から前記侵襲的医療機器を分離させ、
心周期の対応する位相にある前記第1のシーケンスの超音波画像内に、追跡された前記位置で、分離された前記侵襲的医療機器を挿入させ、
挿入された前記侵襲的医療機器を含む超音波画像の前記第1のシーケンスを表示するように表示デバイスを制御させるコンピュータ可読プログラム命令が具現化されたコンピュータ可読記憶媒体に含まれる、コンピュータプログラム。
【請求項10】
前記画像プロセッサ装置に、前記心周期の特定の点を示す外部刺激に応えて、少なくとも超音波画像の前記更なるシーケンスの捕捉をトリガさせる、請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
超音波画像の前記第1のシーケンス及び前記更なるシーケンスのそれぞれが、シネループを規定する、請求項9又は10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記画像プロセッサ装置に、物体認識アルゴリズムを使用して、前記更なるシーケンスの超音波画像内の前記侵襲的医療機器の前記位置を決定させる、請求項9から11のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
前記物体認識アルゴリズムは、光学形状検知アルゴリズムである、請求項12に記載のコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記侵襲的医療機器は、前記侵襲的医療機器に沿って所定の配置にある複数の電磁送信器を含み、
前記コンピュータプログラムは更に、前記画像プロセッサ装置に、前記複数の電磁送信器から受信した電磁送信に基づいて、前記更なるシーケンスの超音波画像内の前記侵襲的医療機器の前記位置を決定させる、請求項9から11のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の超音波画像を受信して処理する画像プロセッサ装置を含む超音波画像処理装置に関する。
【0002】
本発明は更に、上記超音波画像処理装置を含む超音波撮像システムに関する。
【0003】
本発明は更に、超音波画像処理装置を構成するためのコンピュータプログラムプロダクトに関する。
【背景技術】
【0004】
超音波撮像は、独立した技術として又はX線撮像技術といった他の撮像技術と組み合わせて介入処置を支援する撮像技術として急速に人気を集めている。このような介入処置中に、カテーテル、ガイドワイヤ、針等といった侵襲的医療機器が医療専門家によって患者に挿入され、超音波撮像といった撮像ツールを使用して侵襲的医療機器を患者内の関心の解剖学的領域に向けて又は通過するように誘導する。具体的には、3D又はボリュメトリック超音波撮像は、侵襲的医療機器を患者の解剖学的構造に誘導する際に医療専門家を支援する強力なツールである。
【0005】
このような介入処置中によく見られる問題は、患者の関心の解剖学的特徴の一部が、侵襲的医療機器によって視界から遮られることである。これは、通常、侵襲的医療機器が超音波トランスデューサ又はプローブと、関心の解剖学的特徴との間にあるときに発生する。このとき、侵襲的医療機器は、関心の解剖学的特徴上に音響陰影を投影することにより、関心の解剖学的特徴の視界が不完全になる。当然ながら、これは、医療専門家が、不完全に撮像された関心の解剖学的特徴に対して侵襲的医療機器を正しく操作又は誘導することを妨げるので望ましくない。
【0006】
関心の解剖学的領域の一部へのこのような音響陰影の問題に対処する解決策が存在する。例えば米国特許出願公開第2014/0100439A1号は、超音波画像からガイドワイヤアーチファクトを除去する方法及びシステムを開示している。撮像面の少なくとも2つの超音波画像が取得される。取得された各超音波画像は、一連のデータを含む。少なくとも2つの画像の1つの画像にガイドワイヤアーチファクトが検出される。当該ガイドワイヤアーチファクトは、少なくとも2つの画像のもう1つの画像から得られる撮像面を表すデータに置換される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この技術は、取得された様々な超音波画像間で撮像面が同じであることを前提とする。しかし、これは多くの場合、過度の単純化であり、アーチファクトを正確に除去することができない場合がある。多くの侵襲的医療機器は、例えば患者の心臓又は動脈に近づくために、患者の心血管系に挿入される。それ自体はよく知られているように、心周期は、拡張期や収縮期といった様々な位相で構成され、その間、心血管系の様々な部分、特に心臓は形状が変わる。この理由から、心周期中に形状が変わる関心の解剖学的特徴の超音波画像における陰影アーチファクトを補正することは簡単ではない。というのは、関心の解剖学的特徴の形状の変化は、心周期中に捕捉された様々な超音波画像の一部が組み合わされた合成超音波画像において解剖学的構造の様々な部分が組み合わされていることにより、当該合成超音波画像にアーチファクトを導入する可能性があるからである。
【0008】
本発明は、撮像された関心の解剖学的領域から陰影領域をよりロバストに除去する超音波画像処理装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は更に、上記超音波画像処理装置を含む超音波撮像システムを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は更に、上記超音波画像処理装置を構成するためのコンピュータプログラムプロダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様によれば、画像プロセッサ装置を含む超音波画像処理装置が提供される。画像プロセッサ装置は、超音波画像内に侵襲的医療機器がない状態で、第1の完全な心周期中の関心の解剖学的特徴を撮像する超音波画像の第1のシーケンスを受信する。各超音波画像は、上記心周期の異なる位相に対応する。画像プロセッサ装置は、超音波画像内に侵襲的医療機器がある状態で、更なる完全な心周期中の関心の解剖学的特徴を撮像する超音波画像の更なるシーケンスを受信する。各超音波画像は、上記心周期の異なる位相に対応する。侵襲的医療機器は、関心の解剖学的特徴を少なくとも部分的に見えにくくする。画像プロセッサ装置は、更なるシーケンスの各超音波画像について、超音波画像内の侵襲的医療機器の位置を追跡し、超音波画像から侵襲的医療機器を分離し、心周期の対応する位相にある第1のシーケンスの超音波画像内に、追跡された位置で、分離された侵襲的医療機器を挿入し、挿入された侵襲的医療機器を含む超音波画像の第1のシーケンスを表示するように表示デバイスを制御する。
【0012】
このようにして、関心の解剖学的特徴の過去の視界が、関心の解剖学的特徴の前のカテーテル、ガイドワイヤ、針等といった侵襲的医療機器の実際の視界と融合された超音波画像のシーケンスが生成される。これは、侵襲的医療機器が関心の解剖学的特徴の視界の一部を遮ることによる音響陰影なしに関心の解剖学的特徴が完全に見える超音波画像のシーケンス、例えばシネループ等をもたらす。
【0013】
超音波画像処理装置は、心周期の特定の点を示す外部刺激に応えて、少なくとも超音波画像の更なるシーケンスの捕捉をトリガし、これにより、超音波プローブを用いて捕捉された超音波画像の各シーケンスが、心周期の同じ時点に開始することが確実にされ、したがって、これらのシーケンスにおける超音波画像は、すべて心周期の設定された位相において取得される。
【0014】
一実施形態では、画像プロセッサ装置は、物体認識アルゴリズムを使用して、更なるシーケンスの超音波画像内の侵襲的医療機器の位置を決定する。この実施形態では、侵襲的医療機器の位置は、更なるシーケンスの超音波画像を処理することにより決定される。例えば物体認識アルゴリズムは、更なるシーケンスの超音波画像内の侵襲的医療機器を検出する光学形状検知アルゴリズムである。
【0015】
別の実施形態では、侵襲的医療機器は、侵襲的医療機器に沿って所定の配置にある複数の電磁送信器(例えば超音波送信器)を含む。画像プロセッサ装置は、複数の電磁送信器から受信した電磁送信に基づいて、更なるシーケンスの超音波画像内の侵襲的医療機器の位置を決定する。この実施形態では、別個の位置検出技術を使用して位置情報を取得することができるため、超音波画像を分析する必要なく、更なるシーケンスの超音波画像内の侵襲的医療機器の位置を決定することができる。
【0016】
別の態様によれば、本明細書に説明される実施形態のいずれかによる超音波画像処理装置と、超音波画像処理装置に通信可能に結合可能であり、超音波画像処理装置に少なくとも超音波画像の更なるシーケンスを提供する超音波プローブとを含む超音波撮像システムが提供される。このような超音波画像システムには、他の関心の解剖学的特徴に対するカテーテル、ガイドワイヤ、針等といった侵襲的医療機器の前進が超音波撮像システムを使用して撮像される手順中に、ユーザに画質が向上された超音波画像を提供することができるという利点がある。
【0017】
更に別の態様によれば、本明細書に説明される実施形態のいずれかの超音波画像処理装置の画像プロセッサ装置上で実行されると、当該画像プロセッサ装置に、超音波画像内に侵襲的医療機器がない状態で、第1の完全な心周期中の関心の解剖学的特徴を撮像する超音波画像の第1のシーケンスを受信させ、各超音波画像は、上記心周期の異なる位相に対応し、超音波画像内に侵襲的医療機器がある状態で、更なる完全な心周期中の関心の解剖学的特徴を撮像する超音波画像の更なるシーケンスを受信させ、各超音波画像は、上記心周期の異なる位相に対応し、侵襲的医療機器は、関心の解剖学的特徴を少なくとも部分的に見えにくくし、更なるシーケンスの各超音波画像について、超音波画像内の侵襲的医療機器の位置を追跡させ、超音波画像から侵襲的医療機器を分離させ、心周期の対応する位相にある第1のシーケンスの超音波画像内に、追跡された位置で、分離された侵襲的医療機器を挿入させ、挿入された侵襲的医療機器を含む超音波画像の第1のシーケンスを表示するように表示デバイスを制御させるコンピュータ可読プログラム命令が具現化されたコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトが提供される。
【0018】
したがって、このようなコンピュータプログラムプロダクトを用いて、超音波画像処理装置の画像プロセッサ装置は、上でより詳細に説明したように、拍動する心臓や心周期中に形状が変化する心血管系の別の部分といった心周期の様々な位相中に形状が変化する関心の解剖学的特徴から陰影領域を正確に除去することができる。
【0019】
コンピュータプログラムプロダクトは更に、画像プロセッサ装置に、心周期の特定の点を示す外部刺激に応えて、少なくとも超音波画像の更なるシーケンスの捕捉をトリガさせて、超音波画像の様々なシーケンス、例えばシネループは同期されて捕捉されることが確実にされる。
【0020】
一実施形態では、コンピュータプログラムプロダクトは更に、画像プロセッサ装置に、光学形状検知アルゴリズムといった物体認識アルゴリズムを使用して、更なるシーケンスの超音波画像内の侵襲的医療機器の位置を決定させる。この実施形態では、侵襲的医療機器の位置は、更なるシーケンスの超音波画像から決定され、これにより、すべての必要な情報が超音波プローブで捕捉された超音波画像から取り出される方法が提供される。
【0021】
代替実施形態では、侵襲的医療機器は、侵襲的医療機器に沿って所定の配置にある複数の電磁送信器を含む。コンピュータプログラムプロダクトは更に、画像プロセッサ装置に、複数の電磁送信器から受信した電磁送信に基づいて、更なるシーケンスの超音波画像内の侵襲的医療機器の位置を決定させる。これにより、計算集約的となる可能性のある位置を決定するための超音波画像評価を行う必要がないため、侵襲的医療機器の位置の特に高速な決定が容易になる。
【0022】
このようなコンピュータプログラムプロダクトを使用して、例えば既存の超音波画像処理装置を再構成(例えばアップグレード)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の実施形態を、添付図面を参照して、より詳細にかつ非限定的な例として説明する。
【0024】
図1図1は、一実施形態による超音波画像処理装置を概略的に示す。
図2図2は、上記超音波画像処理装置による処理のための超音波画像の最初の時間的シーケンスを概略的に示す。
図3図3は、上記超音波画像処理装置による処理のための超音波画像の更なる時間シーケンスを概略的に示す。
図4図4は、超音波画像の最初の時間的シーケンス中の撮像装置を概略的に示す。
図5図5は、超音波画像の更なる時間的シーケンス中の撮像装置を概略的に示す。
図6図6は、一実施形態による方法のフローチャートを示す。
図7図7は、本発明の実施形態における使用のための侵襲的医療機器を概略的に示す。
図8図8は、本発明の一実施形態による方法から得られる超音波画像を概略的に示す。
図9図9は、1つの例示的な実施形態による超音波撮像システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図は単なる概略図であり、縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。また、同じ又は類似の部分を示すために、図面全体を通して同じ参照符号が使用されることも理解されたい。
【0026】
図1は、本発明の1つの例示的な実施形態による超音波画像処理装置5を概略的に示す。超音波画像処理装置5は、少なくとも画像プロセッサ30を含む超音波画像プロセッサ装置50を含むが、超音波画像プロセッサ装置50は、非限定的な例として以下により詳細に説明するように、更なるプロセッサを含んでもよい。超音波画像プロセッサ装置50は、非限定的な例としてのみ超音波画像処理装置5の一部を形成するように示されているデータストレージ装置60に通信可能に結合される。例えばデータストレージ装置60が、リモートデータストレージ装置、例えばクラウドベースのデータストレージ装置60であることも等しく実現可能である。クラウドベースのデータストレージ装置60は、有線又は無線ネットワーク、例えばインターネット、ローカルエリアネットワーク、モバイル通信ネットワーク、ポイントツーポイント接続等を介して超音波画像プロセッサ装置50によってアクセスすることができる。この場合、超音波画像処理装置5は更に、ネットワークインターフェース(図示せず)、例えばイーサネット(登録商標)ポートといった有線ネットワークインターフェースや、超音波画像プロセッサ装置50に通信可能に結合されるブルートゥース(登録商標)又はWi−Fi(登録商標)トランシーバといった無線ネットワークインターフェースを含む。超音波画像プロセッサ装置50は、当該ネットワークインターフェースを介して、データストレージ装置60と通信することができる。データストレージ装置60は、任意の適切な形状、例えば1つ以上のメモリデバイス、1つ以上の磁気ストレージディスク、1つ以上のソリッドステートストレージディスク、1つ以上の光学ストレージディスク等又はこれらの任意の組み合わせの形をとることができる。
【0027】
超音波画像処理装置5は更に、表示デバイス(以下ディスプレイと呼ぶ)40を含むか、又は、少なくとも、超音波画像プロセッサ装置50を用いて生成された超音波画像処理結果が、超音波画像プロセッサ装置50の制御下でディスプレイ40に表示されるように、超音波画像プロセッサ装置50とディスプレイ40との間に通信結合を提供してもよい。
【0028】
超音波画像処理装置5は更に、超音波画像プロセッサ装置50と、典型的にはボリュメトリック又は3D超音波画像を生成する超音波トランスデューサである超音波トランスデューサ10との間に通信結合を提供する。上記超音波トランスデューサ10自体はよく知られているので、簡潔にするためだけに更に詳細には説明しない。超音波画像プロセッサ装置50は、図2に概略的に示す超音波画像150の時間的シーケンス100を受信する。本願のコンテキストでは、超音波画像150の時間的シーケンス100とは、同じ関心の解剖学的特徴151が一定期間にわたって(図5に様々な時間ラベルT=T、T=T、TT=T、T=Tで示されるように)撮像された一連の超音波画像を指す。したがって、シーケンス100は、関心の解剖学的特徴の経時的な変化が視覚化される複数の超音波画像150を含む。これは、例えば超音波画像150の時間的シーケンス100が、心周期中に形状が変化する(例えば心周期の異なる時点又は位相において異なる形状を有する)関心の解剖学的特徴151を撮像する場合に特に有用である。この場合、各超音波画像150は、心周期の特定の位相中の関心の解剖学的特徴151を捕捉する。関心の解剖学的特徴151は、患者の拍動する心臓や、心周期中に形状が変化する任意の他の関心の解剖学的特徴151、例えば心血管系の他の部分であってよい。
【0029】
各時間的シーケンス100は、通常、1回の心周期にわたって関心の解剖学的特徴151を撮像する一連の超音波画像150を構成し、異なる時間的シーケンス100が、異なる心周期中の関心の解剖学的特徴151を撮像する。例えば各時間的シーケンスは、超音波画像処理装置5によってディスプレイ40に表示されるシネループを規定してもよい。超音波画像プロセッサ装置50は、通常、関心の解剖学的特徴151の超音波画像150の複数のこのような時間的シーケンス10を受信する。超音波画像プロセッサ装置50は、超音波トランスデューサ10から超音波画像150の時間的シーケンス100を直接受信しても、又は、例えば後日の処理のために超音波画像処理装置5によって超音波画像150の時間的シーケンス100が前に保存されたデータストレージ装置60から超音波画像150の時間的シーケンス100を受信してもよい。超音波画像150の時間的シーケンス100は、2D超音波トランスデューサ10で取得された2D超音波画像フレームのシーケンスで構成されてもよいが、超音波画像150の時間的シーケンス100は、ボリュメトリック超音波画像のシーケンスを含むことが好適である。
【0030】
本発明の実施形態によれば、超音波画像処理装置5は、超音波画像150の第1のシーケンス100を受信する。その各超音波画像150は、第1のシーケンス100によって撮像された患者の心周期の異なる位相を捕捉している。この第1のシーケンス100では、超音波画像150内に侵襲的医療機器は存在せず、したがって、関心の解剖学的特徴151は、超音波画像150の第1のシーケンス100の生成に使用される超音波プローブの超音波ビームの一部を当該介入医療機器が遮ることにより引き起こされる音響陰影領域によって部分的に見えなくなっていない。
【0031】
超音波画像処理装置5は更に、超音波画像150の更なるシーケンス100’を受信する。その各超音波画像150はまた、図3に概略的に示すように、更なるシーケンス100’によって撮像される患者の心周期の異なる位相を捕捉している。超音波画像150の更なるシーケンス100’は、関心の解剖学的特徴151の視野内に侵襲的医療機器15があることにより、超音波画像150の第1のシーケンス100と区別される。したがって、関心の解剖学的特徴151の一部は、超音波プローブによって生成された超音波の一部を侵襲的医療機器15が遮ることによって生成された音響陰影領域によって視界から見えなくなっている。当然ながら、超音波画像150の第1のシーケンス100及び更なるシーケンス100’は、通常、侵襲的医療処置の開始前や介入医療機器15が患者に挿入され誘導される侵襲的医療処置中といった様々な時点で、1回の心周期(又は複数の心周期)を撮像する。
【0032】
一実施形態では、超音波画像処理装置5は、例えば心周期のRピークといった患者の心周期の特定の時点を示す外部刺激70に反応する。例えば外部刺激70は、ECGレコーダ等といった患者の心拍リズムをモニタリングするデバイスによって提供される。或いは、超音波画像処理装置5は、生の信号(例えば生のECG信号)の形で外部刺激を受信し、生の信号を処理して、生の信号から、Rピークといった心周期における基準点が抽出されてもよい。
【0033】
この実施形態では、超音波画像処理装置5は更に、超音波画像150の異なる時間的シーケンスが同期されるように、超音波プローブを用いて、超音波画像150のそれぞれの時間的シーケンスの捕捉をトリガする。即ち、超音波プローブは超音波画像処理装置5に反応する。これにより、特定の時間的シーケンスにおける各超音波画像150は、別の時間的シーケンスにおける超音波画像150と同じ心周期の位相において捕捉される。したがって、各時間的シーケンス100、100’は、心周期の同じ位相に対応する複数の超音波画像150を含む。更に、異なる時間的シーケンスの対応する超音波画像150間の関心の解剖学的特徴151の形状は、通常、心周期の位相に応じるため、ほぼ一定のままである。
【0034】
図4及び図5は、関心の解剖学的特徴151の形状が両方の図面において実質的に同じであることから認識できるように、異なる心周期の同じ位相中の関心の解剖学的特徴151の超音波プローブ10による撮像を概略的に示す。超音波プローブ10は、患者の心臓を撮像する場合は、患者の胸部といった患者の身体の一部に配置される。重要なことは、医療処置中、超音波プローブ10は、通常、静止した超音波照射源と見なされるように患者の身体上の同じ位置に居続けることである。このために、例えば患者の心血管系の動脈又は静脈を通して侵襲的医療機器15が患者の体内に挿入される医療処置中に、超音波プローブ10は、(患者の体の動きを追うこと以外に)確実に動かないようにプローブホルダ等に固定される。或いは、超音波プローブ10は、患者の内部にあってもよい。即ち、例えば更なる侵襲的医療機器の一部として、患者の身体に挿入されてもよい。例えばこのような内部超音波プローブ10は、ICEプローブ、TEEプローブ等であってよい。このような内部超音波プローブ10が使用される場合、当然ながら、プローブは、通常、異なる時間的シーケンスを互いに直接比較することができるように、超音波画像150のそれぞれの時間的シーケンスの捕捉中に静止状態に保たれる。
【0035】
図4では、生成された超音波画像150は第1のシーケンス100に属し、図5では、生成された超音波画像150は更なるシーケンス100’に属する。これは、図5に示すように、超音波プローブ10の超音波ビーム内の侵襲的医療機器15の存在によって関心の解剖学的特徴151の一部に音響陰影領域17が投影されていることによって反映される。侵襲的医療機器15は、超音波ビーム11の一部が関心の解剖学的特徴151に到達するのを遮り、これにより、超音波画像150内に捕捉されているように、関心の解剖学的特徴151上に音響陰影領域17をもたらす。対照的に、図4における関心の解剖学的特徴151の対応する領域19は、前述したように、超音波画像150の第1のシーケンス100に介入医療機器15がないことにより、生成された超音波画像150においてはっきりと可視である。本発明の実施形態に基づく重要な洞察は、異なる心周期であるが同じ時点で、即ち、同じ位相で撮られた超音波画像の融合操作によって、心周期中に解剖学的特徴の動きによって引き起こされる動きアーチファクトの導入が回避される点である。これは、関心の解剖学的特徴151が、異なる心周期の同じ時点において実質的に同じ形状を有するからである。対照的に、同じ又は異なる心周期の異なる位相において捕捉された超音波画像に融合操作を行うと、上記動きアーチファクトを回避又は相殺することは難しいことが多い。
【0036】
この洞察は、方法200の実施形態を実施する超音波画像処理装置5の超音波画像プロセッサ装置50によって利用される。図6に、方法200のフローチャートを示す。方法200は、例えば超音波画像処理装置5の電源を入れることによりステップ201で開始し、その後、方法200は、超音波画像処理装置5が、超音波画像150の第1のシーケンス100を、例えば第1のシネループの形で受信するステップ203に進む。超音波画像150の第1のシーケンス100は、通常、正確に1つの完全な心周期又は複数の心周期にわたる。前述したように、超音波画像150の第1のシーケンス100は、侵襲的医療機器15によって妨げられていない関心の解剖学的特徴151の視界を提供し、したがって、関心の解剖学的特徴151の視界には、侵襲的医療域15が超音波プローブ10の超音波ビーム11の一部を遮ることにより引き起こされる任意の音響陰影領域が含まれない。超音波画像150の第1のシーケンス100は、任意の適切な時点、例えば侵襲的医療処置の開始前又は侵襲的医療機器15が超音波プローブ10の視野にまだ到達していない侵襲的医療処置の段階の間に捕捉される。他の適切な時点は、当業者には明らかであろう。超音波画像150の第1のシーケンス100は、超音波プローブ10から直接受信されても、又は、例えば超音波画像150の第1のシーケンス100が超音波プローブ10から受信された後に一時的に格納されるデータストレージ装置60から取り出されてもよい。
【0037】
一実施形態では、超音波画像150の第1のシーケンス100の記録は、超音波画像150の第1のシーケンス100及び超音波画像150の更なるシーケンス100’の記録間の時間差が最小になるように、定期的に(例えば20秒毎に)繰り返されて、超音波画像150の第1のシーケンス100を定期的に更新することができる。時間差が最小になることにより、例えば侵襲的医療処置中の超音波プローブ10の偶発的な動きによって、超音波画像150のシーケンス100、100’が関心の解剖学的特徴151の異なる視野角を提供するリスクが低減される。
【0038】
ステップ205において、超音波画像処理装置5は、超音波画像150の更なるシーケンス100’を、例えば更なるシネループの形で受信する。第1のシーケンス100と同様に、超音波画像150の更なるシーケンス100’は、通常、正確に1つの完全な心周期又は複数の心周期にわたる。したがって、第1のシーケンス100の各超音波画像150について、心周期の同じ位相において撮られた対応する超音波画像150が更なるシーケンス100’に存在し、したがって、関心の解剖学的特徴151は、両方の超音波画像において実質的に同じ形状を有する。このような対応する超音波画像150間の違いは、第1のシーケンス100に属する超音波画像150では、侵襲的医療機器15が超音波プローブ10の視野に存在しないのに対して、更なるシーケンス100’に属する超音波画像150では、侵襲的医療機器15又は少なくともその一部が超音波画像150において可視で、図3及び図4を用いて上でより詳細に説明したように、関心の解剖学的特徴151上に音響陰影領域17が投影されている点である。
【0039】
ステップ207において、超音波画像プロセッサ装置50は、更なるシーケンス100’の超音波画像150内の侵襲的医療機器15の位置を追跡して、モニタリングされた心周期中の侵襲的医療機器15の位置の変化をモニタリングする。このような位置追跡は、任意の適切なやり方で実施することができる。例えば侵襲的医療機器15は、例えば米国特許第9,282,946B2号に説明されているように、現場技術を使用して追跡される。或いは、侵襲的医療機器15は、超音波画像プロセッサ装置50に実装された光学形状検知アルゴリズムを使用して追跡されてもよい。光学形状検知アルゴリズムでは、侵襲的医療機器15の形状がアルゴリズムに知らされ、アルゴリズムによって、更なるシーケンス100’の超音波画像150におけるこの形状が認識され、また、その位置が、超音波画像150内の画像座標の形で決定される。
【0040】
更なる代案として、侵襲的医療機器15は、図7に概略的に示す所定の空間装置で複数の電磁送信器115を含んでもよい。この場合、超音波プロセッサ装置50は、電磁送信器115から受信された送信から、侵襲的医療機器15の向きを決定することができる。例えば電磁送信器115は、超音波プローブ10によって受信可能である超音波を送信することができ、これにより、超音波画像プロセッサ装置50は、超音波プローブ10によって受信された信号から、各電磁送信器115の位置を決定することができる。侵襲的医療機器のこのような位置特定技術自体はよく知られているので、簡潔にするためだけに更に詳細には説明しない。
【0041】
ステップ209において、超音波画像プロセッサ装置は、ステップ207において決定された更なるシーケンス100’の超音波画像150内の侵襲的医療機器15の画像の位置に基づいて、当該超音波画像150から侵襲的医療機器15の画像を抽出する。このような抽出操作は、例えばその中の侵襲的医療機器15の画像に関連付けられた超音波画像150の画像座標に基づいていてよい。抽出された侵襲的医療機器15の画像は、次に、第1のシーケンス100の対応する超音波画像150、即ち、侵襲的医療機器15の画像が抽出された更なるシーケンス100’の超音波画像150と同じ心周期の位相において捕捉された第1のシーケンス100の超音波画像150に挿入される。
【0042】
したがって、第1のシーケンス100の超音波画像150は、図8に概略的に示すように増強される。ここでは、更なるシーケンス100’の対応する超音波画像150から抽出された侵襲的医療機器15が挿入されるが、音響陰影領域17は存在しない。というのは、この超音波画像150は、超音波プローブ10の視野に侵襲的医療機器15が存在しない状態で捕捉されたものだからである。したがって、音響影領域17が予想された位置は、関心の解剖学的特徴151の非陰影領域19を示し、これにより、超音波プローブ10の視野に侵襲的医療機器15が存在していても、関心の解剖学的特徴151が完全に可視である合成又は増強超音波画像150が生成される。
【0043】
このプロセスは、ステップ213によって象徴されるように、更なるシーケンス100’の各超音波画像150について繰り返される。ステップ213において、更なるシーケンス100’の各超音波画像150がこのように処理されたかどうかがチェックされる。まだ処理されていない場合、方法200はステップ207に戻る。そうでなければ、方法200は、ステップ215に進み、超音波画像処理装置5は、ディスプレイ40を制御して、関心の解剖学的特徴151の撮像された心周期の超音波画像150の増強された第1のシーケンス100、例えば増強シネループを表示する。増強された第1のシーケンスでは、侵襲的医療機器15は、更なるシーケンス100’の対応する超音波画像150内の侵襲的医療機器15の決定された位置に基づいて、超音波画像150のそれぞれに挿入されている。これにより、医師は、視野に侵襲的医療機器15が存在する状態で、関心の解剖学的特徴151のはっきりとした視野を有する。したがって、前述から理解されるように、医師は、実際には、関心の解剖学的特徴151の超音波画像150の事前に記録されたシーケンス100を見る。したがって、ディスプレイ40に表示されるものは、超音波画像150の実際の(更なる)シーケンス100’ではなく、増強された事前に記録されたシーケンス100である。実際のシーケンス100’は実際には表示されないが、そこから侵襲的医療機器15の画像を抽出するために使用され、したがって、実際のシーケンス100’からの侵襲的医療機器15の画像のみが(事前に記録されたシーケンス内100内で)ディスプレイ40に表示される。
【0044】
図9は、例えばトランスデューサセル又は素子の1次元又は2次元アレイに配置される複数のトランスデューサ素子を含む超音波トランスデューサ素子タイル(トランスデューサ素子)のアレイである超音波プローブ又はトランスデューサ10を含む超音波撮像システム1の例示的な実施形態を概略的に示す。このために、任意の適切なタイプの超音波トランスデューサ素子を使用してよく、例えば圧電トランスデューサ(PZT)素子、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)素子、圧電マイクロマシントランスデューサ(PMUT)素子等であるが、CMUT素子は、その優れた(調整可能な)共振周波数範囲により、特にPZT素子よりも特に好適である。CMUT素子のこの優れた共振周波数範囲により、CMUT素子を患者モニタリング目的に特に適しているものにする。このようなトランスデューサ素子自体はよく知られているので、簡潔にするためだけにこれ以上詳細には説明しない。トランスデューサセルのアレイは、超音波トランスデューサ10で生成された超音波ビームのビーム操縦を容易にするためにフェーズドアレイとして配置されてもよい。ここでもこのようなビーム操縦自体はよく知られており、簡潔さのためだけに更に詳細には説明しない。好適には、超音波トランスデューサ10は、3D又はボリュメトリック超音波画像を生成することができる超音波トランスデューサ素子タイルの2Dアレイを有する。
【0045】
超音波プローブ10は、通常、超音波ビームが生成される送信モードと、超音波プローブ10で撮像される個人の身体内で上記生成された超音波ビームにより誘起されるエコー信号を受信するように超音波プローブ10が動作可能である受信モードとで動作可能である。超音波プローブ10は、通常、超音波画像処理装置5を含む端末3によって制御される。超音波プローブ10は、例えばTTEプローブである外部プローブであっても、例えばICE又はTEEプローブである内部プローブであってもよい。
【0046】
超音波プローブ10は、超音波プローブ10内に組み込まれてもよいマイクロビームフォーマ12に結合される。マイクロビームフォーマ12は、超音波プローブ10の超音波トランスデューサセル(又はそのクラスタ)による信号の送受信を制御する。マイクロビームフォーマは、例えば米国特許第5,997,479号(Savord他)、第6,013,032号(Savord)及び第6,623,432号(Powers他)に説明されているように、少なくとも、トランスデューサ素子タイルのグループ、即ち、「パッチ」によって受信された信号の部分ビーム形成が可能である。
【0047】
マイクロビームフォーマ12は、例えば同軸ワイヤであるプローブケーブルによって、送受信(T/R)スイッチ16を含む例えば患者インターフェースモジュール等である端末3に結合される。送受信(T/R)スイッチ16は、送信モードと受信モードとを切り替え、マイクロビームフォーマがないか又は使用されず、超音波プローブ10がメインシステムビームフォーマ20によって直接操作される場合に、高エネルギー送信信号からメインシステムビームフォーマ20を保護する。マイクロビームフォーマ12の制御下での超音波プローブ10からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ16によってマイクロビームフォーマに結合されるトランスデューサコントローラ18とメインシステムビームフォーマ20によって導かれる。トランスデューサコントローラ18は、ユーザインターフェース又は制御パネル38のユーザ操作から入力を受け取る。トランスデューサコントローラ18によって制御される機能の1つは、ビームが操縦され集束される方向である。ビームは、超音波プローブ10からまっすぐ前方に(直交して)又はより広い視野のために様々な角度に操縦することができる。トランスデューサコントローラ18は、超音波トランスデューサアレイ10の電圧源45を制御するために結合されてよい。例えば電源45は、CMUTプローブ10の場合、CMUTセルに印加されるDC及びACバイアス電圧を設定して、例えば、それ自体はよく知られているように、CMUT素子の1つ以上のCMUTセルを崩壊モードで動作させる。
【0048】
電源45は、例えば送信モードにおいて、CMUTセルの刺激のDC成分及びAC成分をそれぞれ提供する別個の段を任意選択的に含んでもよい。第1の段は、静的(DC)電圧成分を生成し、第2の段は、設定された交流周波数を有する交流可変電圧成分を生成し、この信号は、通常、全体の駆動電圧、即ち、刺激とその上記静的成分との差である。印加された駆動電圧の静的又はバイアス成分は、CMUT素子をそれらの崩壊状態に強制するとき、即ち、CMUT素子を崩壊モードで動作させるときに、閾値電圧を満たすか又は超えることが好適である。これには、第1の段が比較的大きいコンデンサ(例えば平滑コンデンサ)を含んで、全体の電圧の特に低ノイズの静的成分が生成されるという利点がある。この静的成分は、通常、全体の電圧信号のノイズ特性が上記静的成分のノイズ特性によって支配されるように全体の電圧を支配する。
【0049】
例えば電源45が、CMUT駆動電圧の静的DC成分を生成するの第1の段と、駆動電圧の可変DC成分を生成する第2の段と、信号の周波数変調成分を生成する第3の段(例えばパルス回路等)とを含む3つの別個の段を含む実施形態といったように、電源45の他の適切な実施形態は明らかであろう。つまり、電源45は、任意の適切なやり方で実現することができる。更に、電源45は、CMUT素子の操作に限定されないことが強調される。それ自体はよく知られているように、任意のタイプのトランスデューサ素子を、適切に適合された電源45によって制御することができる。
【0050】
マイクロビームフォーマ12によって生成された部分ビーム形成信号は、メインビームフォーマ20に転送され、そこでトランスデューサ素子の個々のパッチからの部分的ビーム形成信号は、完全なビーム形成信号に結合される。例えばメインビームフォーマ20は、128個のチャネルを有し、各チャネルは、数十又は数百の超音波トランスデューサセルのパッチから部分ビーム形成信号を受信する。このようにして、トランスデューサアレイ10の何千ものトランスデューサセルによって受信された信号は、単一のビーム形成信号に効率的に寄与することができる。
【0051】
ビーム形成信号は、画像処理装置5の画像プロセッサ装置50の一部を形成してもよい信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は、本実施形態では、非限定的な例として端末3内に組み込まれている。信号プロセッサ22は、バンドパスフィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、並びに、組織及びマイクロバブルから返された非線形(基本周波数の高調波)エコー信号の特定を可能とするために、線形信号と非線形信号とを分離する高調波信号分離といった様々なやり方で受信したエコー信号を処理することができる。
【0052】
信号プロセッサ22は、任意選択的に、スペックル低減、信号合成及びノイズ除去といった追加の信号強化を行ってもよい。信号プロセッサ22内の帯域通過フィルタは、トラッキングフィルタであってよく、その通過帯域は、エコー信号が受信される深度が深くなるにつれて高い周波数帯域から低い周波数帯域にスライドし、これにより、解剖学的情報がないより深い深度からの高い周波数におけるノイズが除去される。
【0053】
処理された信号は、Bモードプロセッサ26及び任意選択でドップラープロセッサ28に転送される。これらのプロセッサもまた、画像プロセッサ装置50の一部を形成してよい。Bモードプロセッサ26は、身体内の臓器や血管の組織といった身体内の構造の画像化のために、受信した超音波信号の振幅の検出を使用する。身体の構造のBモード画像は、例えば米国特許第6,283,919号(Roundhill他)及び第6,458,083号(Jago他)に説明されているように、高調波画像モード若しくは基本画像モードのいずれか又はその両方の組み合わせで形成される。
【0054】
ドップラープロセッサ28は、存在する場合、画像フィールド内の血球の流れといった物質の動きを検出するために、組織の動き及び血流からの時間的に異なる信号を処理する。ドップラープロセッサは、通常、身体内の選択された種類の材料から返されるエコーを通過させる及び/又は除去するように設定されたパラメータを有するウォールフィルタを含む。例えばウォールフィルタは、高速材料からの比較的低い振幅の信号は通過させる一方で、低速材料又はゼロ速度材料からの比較的強い信号は除去する通過帯域特性を有するように設定することができる。
【0055】
この通過帯域特性は、流れる血液からの信号は通過させる一方で、心壁といった近くの静止している又はゆっくりと動く物体からの信号は除去する。組織ドップラー撮像と呼ばれるものでは、心臓の動く組織からの信号は通過させる一方で、血流信号は除去して、組織の動きを検出し描写する逆の特性が使用される。ドップラープロセッサは、画像フィールド内の異なる点からの時間的に離散的なエコー信号のシーケンスを受信及び処理し、特定の点からのエコーのシーケンスはアンサンブルと呼ばれる。比較的短い間隔に亘って高速連続で受信されるエコーのアンサンブルを使用して、流れる血液のドップラーシフト周波数を推定することができ、ドップラー周波数の速度との対応関係が血流速度を示す。より長い期間に亘って受信されるエコーのアンサンブルは、よりゆっくりと流れる血液又はゆっくりと動く組織の速度を推定するために使用される。
【0056】
Bモード(及びドップラー)プロセッサによって生成された構造信号及び運動信号は、スキャンコンバータ32及びマルチプレーナリフォーマッタ44に結合される。これらもまた、画像プロセッサ装置50の一部を形成してよい。スキャンコンバータ32は、エコー信号を、それらを受信した元の空間関係で所望の画像フォーマットで配置する。例えばスキャンコンバータは、エコー信号を2次元(2D)セクタフォーマット、又は、ピラミッド状の3次元(3D)画像に配置することができる。
【0057】
スキャンコンバータは、画像フィールド内の点における動きに対応する色を有するBモード構造画像に、そのドップラー推定速度をオーバーレイして、画像フィールド内の組織の動き及び血流を表すカラードップラー画像を生成することができる。マルチプレーナリフォーマッタ44は、例えば米国特許第6,443,896号明細書(Detmer)に説明されているように、身体のボリュメトリック領域内の共通平面内の点から受信したエコーを、当該平面の超音波画像に変換する。ボリュームレンダラ42は、これも画像プロセッサ装置50の一部を形成してよいが、米国特許第6,530,885号(Entrekin他)に説明されているように、3Dデータセットのエコー信号を、所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。
【0058】
2D又は3D画像は、スキャンコンバータ32、マルチプレーナリフォーマッタ44及びボリュームレンダラ42から、画像ディスプレイ40での表示のための更なる強調、バッファリング及び一時記憶のために、画像プロセッサ装置50の一部を形成する画像プロセッサ30に結合される。ドップラープロセッサ28によって生成された血流値及びBモードプロセッサ26によって生成された組織構造情報は、画像化に使用されることに加えて、定量化プロセッサ34に結合される。定量化プロセッサは、血流の体積率といった様々な流動状態の尺度や、臓器の大きさ及び妊娠期間といった構造的測定値を生成する。定量化プロセッサは、測定が行われるべき画像の解剖学的構造内の点といった入力をユーザ制御パネル38から受信する。
【0059】
定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ40で画像と共に測定グラフィック及び値を再生するグラフィックプロセッサ36に結合される。グラフィックプロセッサ36はまた、超音波画像と共に表示するグラフィックオーバーレイを生成することができる。これらのグラフィックオーバーレイは、患者名、画像日時、撮像パラメータ等といった標準的な識別情報を含むことができる。このために、グラフィックプロセッサは、患者名といった入力をユーザインターフェース38から受信する。
【0060】
ユーザインターフェースはまた、送信コントローラ18に結合されて、超音波プローブ10からの超音波信号の生成、したがって、トランスデューサアレイ及び超音波システムによって生成される画像の生成を制御することができる。ユーザインターフェースはまた、マルチプレーナリフォーマッタ44に結合されて、MPR(マルチプレーナリフォーマット)画像の画像フィールド内で定量化された測定を行うために使用される複数のMPR画像の平面を選択及び制御することができる。
【0061】
当業者であれば理解されるように、超音波撮像システム1の上記実施形態は、超音波診断撮像システムの非限定的な例を与えることを目的としている。当業者であれば、本発明の教示から逸脱することなく、超音波撮像システム1の構造に幾つかの変形が実行可能であることを直ちに認識するであろう。例えば上記実施形態でも示したように、マイクロビームフォーマ12及び/又はドップラープロセッサ28は省略されてもよく、また、超音波プローブ10は3D撮像能力を有していなくてもよい。当業者には他の変形が明らかであろう。
【0062】
画像プロセッサ装置50によって実行される方法200の上記実施形態は、超音波画像処理装置5(例えば独立した超音波画像処理装置5又はユーザ端末3に組み込まれた超音波画像処理装置5)の画像プロセッサ装置50上で実行されると、当該画像プロセッサ装置50に方法200を実施させるコンピュータ可読記憶媒体上に具現化されたコンピュータ可読プログラム命令によって実現することができる。例えばCD、DVD又はブルーレイディスクといった光学的に読み取り可能な媒体、ハードディスクといった磁気的に読み取り可能な媒体、メモリスティック等といった電子データ記憶装置等といった任意の適切なコンピュータ可読記憶媒体を本目的に使用することができる。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読プログラム命令が、インターネットといったネットワークを介してアクセス可能であるように、当該ネットワークを介してアクセス可能な媒体であってよい。例えばコンピュータ可読記憶媒体は、ネットワーク接続型記憶装置、ストレージエリアネットワーク、クラウドストレージ等であってよい。コンピュータ可読記憶媒体は、そこからコンピュータ可読プログラム命令を取得することができるインターネットアクセス可能なサービスであってもよい。一実施形態では、超音波画像処理装置5は、このようなコンピュータ可読記憶媒体からコンピュータ可読プログラム命令を取り出し、取り出されたコンピュータ可読プログラム命令をデータストレージ装置60(例えばデータストレージ装置の一部を形成するメモリデバイス等)に格納することによって、新しいコンピュータ可読記憶媒体を作成する。
【0063】
なお、上述の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示するものであり、当業者であれば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計することができるであろう。請求項において、括弧内に配置されたいかなる参照符号も請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。「含む」の用語は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。単数形の要素は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。本発明は、幾つかの異なる要素を含むハードウェアによって実現することができる。幾つかの手段を列挙しているデバイスの請求項において、これらの手段の幾つかは同一のハードウェアアイテムによって具体化することができる。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているということだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9