(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被膜形成工程では、ポリマーを含む液剤である被膜形成剤が用いられ、該被膜形成剤が前記ポリマー造形物に塗布され、塗布された前記被膜形成剤が乾燥されることによって前記ポリマー被膜が形成される請求項1記載のポリマー部材の製造方法。
前記硬化性組成物が光で硬化可能な液状の光硬化性組成物であり、前記硬化工程では、焦点位置を変更可能な光源を備えた光造形機が用いられ、該硬化工程では、前記光源より前記光硬化性組成物に光が照射され、該光によって光硬化性組成物が硬化されることによって前記ポリマー造形物が作製される請求項1乃至3の何れか1項記載のポリマー部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。
尚、以下においては、ポリマー部材として靴用部材を作製する場合を例示するが、本発明において製造されるポリマー部材は下記例示に何等限定されるものではない。
【0010】
図1は、本実施形態のポリマー部材が用いられている靴を示したものである。
尚、以下において
図1に示した靴1について説明する際に、踵の中心HCと爪先の中心TCとを結ぶシューセンター軸CXに沿った方向のことを長さ方向Xと称することがある。
また、シューセンター軸CXに沿った方向の内、踵から爪先に向けた方向X1を前方などと称し、爪先から踵に向けた方向X2を後方などと称することがある。
さらに、シューセンター軸CXに直交する方向の内、水平面HPに平行する方向を幅方向Yと称することがある。
この幅方向Yの内、足の第1指側に向けた方向Y1を内足方向などと称し、第5指側に向けた方向Y2を外足方向などと称することがある。
そして、水平面HPに直交する垂直方向Zを厚さ方向や高さ方向と称することがある。
さらに、以下においては、この垂直方向Zにおいて上方に向かう方向Z1を上方向と称し、下方に向かう方向Z2を下方向と称することがある。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の靴1は、アッパー2と靴底とを有している。
前記靴底は、複数の靴用パーツによって構成されている。
該靴1は、ミッドソール3、及び、アウトソール4を有している。
本実施形態の靴1は、最も下方にアウトソール4を備えている。
本実施形態のアウトソール4は、たとえばシート状であり、厚さ方向が垂直方向Zとなるように靴1の最下部に配されている。
前記靴1は、着用者の足を上側から覆うアッパー2と前記アウトソール4との間にミッドソール3を備えている。
【0012】
前記靴1には、後述する製造方法によって作製されたポリマー部材が靴用部材5としてさらに備えられている。
本実施形態の靴用部材5は、靴1の外足側に配されており、後足部13に配されている。
本実施形態の靴用部材5は、靴1の美観の向上に寄与しているだけでなくミッドソール3などとは機械的物性を異ならせて靴1の着用者の歩行をサポートする機能を有している。
【0013】
本実施形態の靴用部材5は、
図1示すよう、上下方向での位置がミッドソール3の配されている位置となるように備えられている。
本実施形態の靴用部材5は、
図1、
図2に示すように、靴1の上下方向に延びる壁部5aと壁部5aの上端部より水平方向に延びる天井部5bとを備えている。
【0014】
靴用部材5の壁部5aは、靴1の外周面の一部を構成するように配され、ミッドソール3の外周面の一部を外足側より覆うように配されている。
このように前記壁部5aが靴1の外表面に露出した状態で配されているのに対して前記天井部5bは靴1の内部へと延びてアッパー2とミッドソール3との間に挟まれている。
従って、前記靴用部材5の天井部5bは、靴1の外観には表れないように配されている。
【0015】
本実施形態の靴用部材5は、
図3に示すように靴用部材5よりも一回り小さな基体51と、該基体51の外表面を覆う表面層52とを備えている。
本実施形態における前記靴用部材5は、前記基体51がポリマー造形物によって構成されており、前記表面層52がポリマー被膜によって構成されている。
【0016】
前記基体51となっている前記ポリマー造形物は、エネルギー線によって硬化された硬化性組成物によって構成されている。
即ち、本実施形態における前記基体51は、エネルギー線によって反応する官能基を有する有機化合物を含む硬化性組成物をエネルギー線によって硬化させることによって作製されたものである。
より具体的に説明すると、前記基体51は、エネルギー線によって互いに結合反応を起こす官能基か、又は、エネルギー線によって別の官能基と結合反応を起こす官能基かを分子中に備えた有機化合物を含む硬化性組成物の硬化物によって構成されている。
【0017】
前記基体51の作製に用いる前記エネルギー線としては、例えば、電磁波、電子線、粒子放射線などがあげられるが、取り扱いが容易な電磁波が好ましい。
電磁波の中でも、X線やγ線などのような電磁放射線やマイクロウェーブなどよりも波長が10nm以上380nm未満の紫外線や波長が380nm以上760nm未満の可視光などの光が好適である。
【0018】
前記基体51の作製に用いる前記硬化性組成物に含まれる有機化合物が備える前記官能基としては、例えば、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基などが挙げられる。
該官能基を備える前記有機化合物は、常温において液状のモノマーやオリゴマーであってもよく、常温において固体状のポリマーであってもよい。
前記有機化合物は、1分子中に前記官能基を複数有していてもよい。
前記硬化性組成物には、上記のような官能基と反応可能なアミノ基や水酸基を有する有機化合物がさらに含まれていてもよい。
【0019】
前記有機化合物は、質量平均分子量(Mw)が1000以上15000以下のオリゴマーであることが好ましい。
前記有機化合物は、1分子中における平均官能基数が2以上15以下であることが好ましい。
【0020】
前記基体51の作製に用いる前記硬化性組成物に含まれる前記有機化合物としては、例えば、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマー、及び、これらの水素添加物などがあげられる。
前記有機化合物は、シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーやその水素添加物であってもよい。
前記有機化合物としては、前記ポリマー被膜との間に優れた接着性が発揮され得ることからウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーが好適である。
【0021】
前記硬化性組成物は、上記のようなオリゴマー以外に、各種ポリマーや各種フィラーなどを含有してもよい。
前記硬化性組成物は、重合開始剤、オイル、顔料、耐候剤などの各種成分をさらに含んでもよい。
【0022】
靴を製造する際は、通常、複数のサイズの製品が作製される。
また、靴を製造する際は、多くの場合、同じ形状でも色合いの異なる複数種類の製品が作製される場合がある。
そのため、前記靴用部材5としては、大きさや色合いなどが異なる複数種類のものを簡便に製造できることが好ましい。
インジェクション成形などで靴用部材5を作製しようとすると、成形型を数多く備える必要が生じる。
そのため、本実施形態における前記基体51は、エネルギー線によって硬化可能な官能基を有するポリマーを含む硬化性組成物をインジェクション成形することによって作製されてもよいが、成形型を用いない方法で作製されることが好ましい。
【0023】
本実施形態における前記基体51は、3Dプリントなどと称される方法で作製されることが好ましく、光造形機で作製されることが好ましい。
即ち、前記基体51は、光で硬化可能な光硬化性組成物によって構成されてもよい。
該光硬化性組成物に含有される前記有機化合物は、紫外線硬化可能な(メタ)アクリル酸化合物であることが好ましい。
【0024】
前記基体51を光硬化性組成物で構成する場合、前記重合開始剤として光重合開始剤を前記光硬化性組成物に含有させることが好ましい。
該光重合開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパノン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルフォリノブチロフェノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンなどのアルキルフェノン系光重合開始剤;3−メチルベンゾイルぎ酸メチルなどの分子内水素引き抜き型光重合開始剤;カチオン系光重合開始剤などがあげられる。
【0025】
本実施形態の前記光硬化性組成物は、後述する硬化工程や後硬化工程において良好な反応性を発揮する上で、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、又は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを含むことが好ましい。
【0026】
前記表面層52は、ポリマー被膜の主成分となるポリマーを含む粉体を使った静電塗装法などによって形成されてもよいが、前記基体51との良好な密着性を発揮させる上では、ポリマー被膜の主成分となるポリマーを含む液剤である被膜形成剤を用いて形成されることが好ましい。
【0027】
被膜形成剤に含まれる前記ポリマーとしては、ウレタン基を含む紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、湿気硬化樹脂などがあげられる。
前記ポリマーとしては、エステル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコーン系ポリマー、アクリル系ポリマーなどであってもよい。
なかでも、前記ポリマーはポリウレタン系ポリマーであることが好ましい。
【0028】
該被膜形成剤は、常温(23℃)において十分低粘度な液状であることが好ましく、粘度が3000mPa・s以下であることが好ましい。
該粘度は、例えば、ブルックフィールド回転粘度計によって20rpmの回転速度で測定することができる。
前記被膜形成剤が過度に低粘度では、厚さの厚い前記表面層52を形成することが難しくなる場合がある。
そのため、前記被膜形成剤の粘度は10mPa・s以上であることが好ましい。
【0029】
前記被膜形成剤を上記のような粘度とする上では、前記ポリマーの分散媒又は溶媒を当該被膜形成剤に含有させることが好ましい。
なお、該分散媒や該溶媒は、前記表面層52を形成する際の作業環境を良好なものとする上において水又は水系有機溶媒であることが好ましい。
該水系有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等の各種アルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどがあげられる。
【0030】
このような表面層52を備えた前記靴用部材5は、例えば、
図4に示す工程を備えた製造方法によって作製され得る。
前記靴用部材5として用いるポリマー部材は、前記エネルギー線によって反応する官能基を有する有機化合物を含む硬化性組成物をエネルギー線によって硬化させて前記ポリマー造形物を作製する硬化工程S1と、前記硬化工程S1で得られた前記ポリマー造形物に前記ポリマー被膜を形成させる被膜形成工程S2とを実施し、前記硬化工程S1では前記官能基が残存した前記ポリマー造形物を作製し、前記被膜形成工程S2の後に前記ポリマー造形物にエネルギー線を照射する後硬化工程S3をさらに実施する。
【0031】
前記硬化工程S1では、前記の通り、光造形機を利用した3Dプリントによって前記基体51となるポリマー造形物を作製することが好ましい。
図5に光造形機を利用した硬化工程S1の様子を示す。
該硬化工程S1では、常温において粘度が2000mPa・s以下の値となる液状の光硬化性組成物を用いることが好ましく、1000mPa・s以下の粘度を有する光硬化性組成物を用いることがより好ましい。
光硬化性組成物の粘度は、通常、1mPa・s以上とされる。
【0032】
該硬化工程S1では、
図5に示すように前記靴用部材5を収容可能な内容積を有する透明容器RBに光硬化性組成物HLを収容し、焦点位置を変更可能な光源LSより前記透明容器RBの外部より前記光硬化性組成物HLに光を照射し、該光によって光硬化性組成物HLを硬化させて前記基体51となるポリマー造形物510を形成させることができる。
【0033】
前記ポリマー造形物510は、光硬化性組成物が完全に硬化していない半硬化状態となるように作製することが好ましい。
作製されたポリマー造形物510が半硬化状態となっていることは、例えば、ポリマー造形物510に対して前記光硬化性組成物HLを硬化可能な光(例えば、紫外線)を照射し、該光の照射前後での前記官能基の増減を確認することで確かめることができる。
より詳しくは、前記ポリマー造形物510の表面に対してATR法でのFT−IRによる測定を実施し、前記官能基に帰属する赤外吸収ピークが光の照射後に減少すれば、当該ポリマー造形物が完全に硬化反応をしていない半硬化な状態であると確認することができる。
【0034】
該硬化工程S1では、透明性に優れたポリマー造形物510を形成することができる。
該ポリマー造形物510は、JIS K7136に基づいて求められる2mm厚さでのヘーズが20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
ポリマー造形物510がこのような透明性を有すると、靴用部材5に優れた美観を与える点において有利になる。
ポリマー造形物510がこのような透明性を有することは、半硬化状態から最終的な硬化状態へとする際の作業性(光硬化性)においても利点を発揮する。
【0035】
該硬化工程S1では、表面の付着物を除去するために得られた前記ポリマー造形物を洗浄することを実施してもよい。
前記ポリマー造形物を水や水系有機溶媒で洗浄することで、該ポリマー造形物の表面における前記官能基((メタ)アクリレート基など)の数を増大させる効果も発揮され得る。
該硬化工程S1で前記洗浄を行う場合は、前記被膜形成工程S2を実施する前に前記ポリマー造形物を乾燥する工程を実施してもよい。
【0036】
前記硬化工程S1は、光造形法に限らず、例えば、
図6に示すような材料押出堆積法による3Dプリントによっても実施可能である。
前記硬化工程S1で、材料押出堆積法でポリマー造形物510を作製する場合、
図6に示すように、作製するポリマー造形物510を高さ方向に複数の層に分けて各層を順次積層する方法にてポリマー造形物を作製することができる。
該方法においては、作製するポリマー造形物510を下端から所定ピッチで水平面によって切断した際の各断面での形状に対応する大きさを有し、且つ、前記ピッチに対応する厚みを有する板状体を前記硬化性組成物で形成し、該板状体を前記下端から順次積層する方法によって前記ポリマー造形物を作製することが好ましい。
【0037】
該材料押出堆積法は、硬化性組成物が常温で固体状である場合や、透明度の低い硬化性組成物を用いる場合に適しているといえる。
また、材料押出堆積法は、中空構造のポリマー造形物を作製することも容易である。
【0038】
該材料押出堆積法では、3DプリンタのノズルPNから、例えば、熱溶融状態の硬化性組成物を吐出して板状体を順次形成し、一つの板状体が冷え固まらない内に他の板状体を積層して作製された積層物510aが最終的なポリマー造形物510となる。
そのため、該方法で作製されるポリマー造形物510は、外表面に階段状の段差が形成される。
該段差は、前記被膜形成工程S2において被膜形成剤の表面保持を良好にする機能を発揮する。
前記段差は、ポリマー被膜とポリマー造形物との間に優れた接着性を発揮するのにも有効に機能する。
【0039】
尚、前記光造形法においてもポリマー造形物の表面に僅かながら段差が形成され得る。
【0040】
前記段差は、ポリマー造形物が形成される方向を高さ方向とした際に、高さが0.01mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.1mm以上であることがさらに好ましい。
前記段差は、高さが1mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0041】
前記板状体を半硬化状態とする点、及び、当該半硬化状態をFT−IRで確認できる点については光造形機を用いる場合と同じである。
【0042】
該硬化工程S1は、上記以外の他の3Dプリントによっても実施可能であり、3Dプリント以外の方法によっても実施可能である。
【0043】
該硬化工程S1では、ポリマー造形物を作製する際の硬化性組成物の硬化だけでは硬化の度合いが不十分であると考えられる場合は、前記被膜形成工程前に硬化を進行させることを実施してもよい。
即ち、該硬化工程S1では、被膜形成工程S2や後硬化工程S3を行うのに適した硬化状態となるように一旦作製したポリマー造形物に追加の硬化反応を生じさせるようにしてもよい。
この時の追加の硬化反応は、エネルギー線の照射による硬化反応だけでなく熱硬化反応などを利用するようにしてもよい。
【0044】
前記硬化工程S1で形成されたポリマー造形物の表面にポリマー被膜を形成するための被膜形成工程S2は、前記被膜形成剤を前記ポリマー造形物に刷毛塗りする方法などにより実施できる。
前記被膜形成工程S2では、前記被膜形成剤を前記ポリマー造形物にスプレーコートしてもよい。
前記被膜形成工程S2では、槽に収容した前記被膜形成剤に前記ポリマー造形物を浸漬して引き上げる方法を採用してもよい。
前記被膜形成工程S2は、これらの方法以外にも塗工方法として従来公知の方法を採用して実施することができる。
【0045】
該被膜形成工程S2では、被膜形成剤で被覆された前記ポリマー造形物を加熱したり、該ポリマー造形物に風を当てたりしてポリマー被膜の形成を促進してもよい。
【0046】
該被膜形成工程S2の後は半硬化状態の前記ポリマー造形物に紫外線などのエネルギー線を照射する後硬化工程が実施される。
該エネルギー線は、前記ポリマー造形物に被覆されている前記被膜形成剤を通じて照射される。
そのため、該被膜形成剤は、前記エネルギー線のエネルギー吸収性が低いことが好ましい。
該被膜形成剤や該被膜形成剤で形成されるポリマー被膜は、ポリマー造形物と同様に透明性に優れることが好ましく、ポリマー造形物と同様に2mm厚さでのヘーズが20%以下であることが好ましい。
被膜形成剤やポリマー被膜のヘーズは、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
被膜形成剤やポリマー被膜のヘーズは、ポリマー造形物のヘーズ以下であることが好ましく、ポリマー造形物のヘーズの80%以下であることがより好ましい。
【0047】
該被膜形成工程S2で用いる前記被膜形成剤は、作業環境面などを勘案すると、水を分散媒とした水エマルジョンタイプのものであることが好ましい。
【0048】
前記後硬化工程S3は、各種のエネルギー線源を用いて実施することができる。
前記後硬化工程S3用いられるエネルギー線は、硬化工程S1での硬化反応に用いるエネルギー線と同じであっても異なっていてもよい。
前記エネルギー線源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、LEDランプがあげられる。
前記後硬化工程S3は、前記エネルギー線として太陽光を用いてもよい。
【0049】
前記後硬化工程S3は、前記ポリマー造形物(基体51)の外表面に対してFT−IRによる測定を実施したときに前記官能基に特有のピーク高さが後硬化工程前の半分以下となるように実施されることが好ましい。
【0050】
前記後硬化工程S3は、当該後硬化工程後における前記ポリマー造形物(基体51)の表面エネルギーが、前記ポリマー被膜(表面層52)の表面エネルギーよりも低くなるように実施されてもよい。
本実施形態においては、前記官能基が残存した前記ポリマー造形物を用いて前記被膜形成工程が実施された後に前記ポリマー造形物にエネルギー線が照射されるため、基体51を構成する硬化性組成物に含まれるポリマーの分子鎖と、ポリマー被膜に含まれるポリマーの分子鎖とが絡み合った状態になったり、これらが化学結合した状態になったりする。
従って、表面エネルギーの関係が上記のようなものであると本来は剥離が生じ易いものの、本実施形態においては基体51と表面層52との間に高い接着性が発揮される。
【0051】
前記被膜形成工程で用いる被膜形成剤は、有機溶剤を含む方が水エマルジョンタイプよりもポリマー造形物との間に高い接着力を発揮する点においては有利である。
本実施形態のポリマー部材(靴用部材5)は、上記のような分子鎖の絡み合いによって基体51と表面層52との間に高い接着力が発揮されるため、水エマルジョンタイプの被膜形成剤を用いても基体51からの表面層52の剥離が抑制され得る。
【0052】
本実施形態のポリマー部材(靴用部材5)は、JIS K6253−3に規定のタイプAデュロメータ硬さ(瞬時値)が95以下であってもよく、該タイプAデュロメータ硬さが90以下であってもよい。
ポリマー部材(靴用部材5)の硬さが柔らかな場合は変形を生じ易く基体51と表面層52との間に剥離が生じ易くなるが、本実施形態においてはそのようなおそれを抑制できる。
即ち、本実施形態のポリマー部材(靴用部材5)は、上記のようなデュロメータ硬さを有することで本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0053】
前記表面層52は、エンピツ硬度が4H以上であることが好ましく、5H以上であることがより好ましい。
【0054】
なお、本実施形態においては、ポリマー部材を靴1のミッドソール3に配した状態で靴用部材5として利用する場合を例示しているが、該ポリマー部材は、アウトソール4の一部又は全部を構成するものであってもよい。
また、ポリマー部材は、アウトソール4などの靴用部材としてだけでなく他の用途にも幅広く用い得る。
該ポリマー部材は、人形などのおもちゃや、スポーツ用具、クッション材、防滑材、タタイヤ、シーリング材など各種用途に用いることができる。
その場合、ポリマー造形物やポリマー被膜の形成材料や形成方法は各用途に適したものに変更可能である。
即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(比較例1)
ポリエーテル型ポリウレタンの末端に(メタ)アクリル基を有するウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリルモノマー、及び、光重合開始剤を含む光硬化性組成物を用意した。
市販の3Dプリンタ(Phorozen社製、商品名「Shuffle XL」)を用い、半硬化状態の前記光硬化性組成物で構成された厚さが2mmで、大きさが一辺50mmの正方形である板状のポリマー造形物を作製した。
該ポリマー造形物をイソプロピルアルコールに浸漬した状態で超音波洗浄を2分間実施し、超音波洗浄後のポリマー造形物を60℃の恒温槽に10分間入れて乾燥した。
乾燥後のポリマー造形物に対して紫外線(UV−A)を積算エネルギーが8J/cm
2となるように照射して後硬化を実施した。
【0057】
ポリエーテル型ポリウレタンを含み、水を分散媒として含有するエマルジョンタイプの被膜形成剤を用意し、後硬化されたポリマー造形物の表面に該被膜形成剤を刷毛塗りし、60℃の恒温槽で10分間乾燥してポリマー造形物の表面にポリマー被膜を形成させた。
このポリマー被膜が形成されたポリマー部材の表面にウレタン系接着剤を塗布して60℃の恒温槽で5分間乾燥させた。
熱可塑性ポリウレタン製のシートに同じウレタン系接着剤を塗布して同じく60℃の恒温槽で5分間乾燥させた。
前記ポリマー部材と前記シートとをウレタン系接着剤を塗布した面が接するように重ね合わせて圧着機で圧着して積層体を作製し、該積層体を23℃の環境で3日程度放置した。
圧着から3日程度経過した前記積層体から2cm幅の短冊状試料を切り出し、前記ポリマー部材から前記シートを50mm/minの速度で剥離し、剥離に要する応力を測定した。
このときの応力は、0.1kgf以下であり、ポリマー被膜がポリマー造形物の表面から容易に剥離した。
なお、ポリマー造形物の表面エネルギーとポリマー被膜の表面エネルギーとを接触角法によって求めたところ、後記の表1に示す通りとなった。
【0058】
尚、表面エネルギーは、協和界面科学社の接触角測定装置(商品名「DMs−401」)を用いてポリマー造形物の表面やポリマー被膜の表面において標準液体(ジヨードメタン、エタノール、純水)との接触角を測定し、該接触角の測定結果から装置付属の解析ソフト(商品名「FAMAS」:算出方法「北崎・畑 理論式」)を使って算出した。
具体的には、ポリマー造形物の表面エネルギーについては各条件で硬化させたシート状硬化物(厚さ:2mm)を試料とし、ポリマー被膜の表面エネルギーについてはシート状硬化物の表面にポリマー被膜を形成したものを試料として測定を実施した。
そして、測定は、作製した試料を標準状態(23℃、50%RH)に調整された環境下で数時間保管した後に同環境下で実施した。
測定では、接触角測定装置(商品名「DMs−401」)のテーブル上に試料をセットして、シリンジから試料の上にジヨードメタン、エタノール、純水を滴下させて、接触角を測定し、設備付属の解析ソフト(商品名「FAMAS」)にて表面エネルギーを算出した。
【0059】
(比較例2)
紫外線による後硬化を実施しなかったこと以外は比較例1と同様にポリマー部材を形成し、比較例1と同様に評価した。
その結果、剥離時の応力は0.1kgf以下となり、比較例1と同様にポリマー被膜がポリマー造形物の表面から容易に剥離した。
【0060】
(実施例1)
・硬化工程
ポリエーテル型ポリウレタンの末端に(メタ)アクリル基を有するウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリルモノマー、及び、光重合開始剤を含む光硬化性組成物を用意した。
市販の3Dプリンタ(Phorozen社製、商品名「Shuffle XL」)を用い、半硬化状態の前記光硬化性組成物で構成された厚さが2mmで一辺50mmの正方形のポリマー造形物を作製した。
該ポリマー造形物をイソプロピルアルコールに浸漬した状態で超音波洗浄を2分間実施し、超音波洗浄後のポリマー造形物を60℃の恒温槽に10分間入れて乾燥した。
【0061】
・被膜形成工程
ポリエーテル型ポリウレタンを含み、水を分散媒として含有するエマルジョンタイプの被膜形成剤を用意し、洗浄・乾燥されたポリマー造形物の表面に該被膜形成剤を刷毛塗りし、60℃の恒温槽で10分間乾燥してポリマー造形物の表面にポリマー被膜を形成させた。
【0062】
・後硬化工程
乾燥後のポリマー造形物に対して紫外線(UV−A)を積算エネルギーが2J/cm
2となるように照射して後硬化を実施した。
【0063】
この後硬化の行われたポリマー部材の表面にウレタン系接着剤を塗布して60℃の恒温槽で5分間乾燥させた。
熱可塑性ポリウレタン製のシートに同じウレタン系接着剤を塗布して同じく60℃の恒温槽で5分間乾燥させた。
前記ポリマー部材と前記シートとをウレタン系接着剤を塗布した面が接するように重ね合わせて圧着機で圧着して積層体を作製し、該積層体を23℃の環境で3日程度放置した。
圧着から3日程度経過した前記積層体から2cm幅の短冊状試料を切り出し、前記ポリマー部材から前記シートを50mm/minの速度で剥離し、剥離に要する応力を測定した。
その結果、剥離に要する応力は、1.1kgfとなり、ポリマー被膜とポリマー造形物との間に良好な接着力が作用していることが確認できた。
【0064】
【表1】
【0065】
以上のことからも本発明によればポリマー被膜が剥離し難いポリマー部材を得られることがわかる。
ポリマー造形物の表面にポリマー被膜が設けられているポリマー部材でのポリマー被膜の剥離を抑制するために硬化性組成物をエネルギー線によって硬化させて前記ポリマー造形物を作製する硬化工程と、該ポリマー造形物に前記ポリマー被膜を形成させる被膜形成工程と、被膜形成工程後に前記ポリマー造形物にエネルギー線を照射する後硬化工程とを実施し、前記硬化工程では硬化性組成物に反応性の官能基が残存したポリマー造形物を作製する。